JP2011521464A - 電解コンデンサを製造するためのプロセス - Google Patents

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Abstract

本発明は、高キャパシタンスおよび低等価直列抵抗を有する電解コンデンサを製造するための方法、当該方法によって製造される電解コンデンサ、ならびにこの種の電解コンデンサの使用に関する。当該方法によれば、多孔性電極体(2)の誘電体表面(3)は分散液(A)で覆われる。任意に置換されている電気伝導性のポリチオフェンの分散液粒子(B)は分散剤(D)を含有する。この分散液A)について、0.4%固形分〜5%固形分の積分範囲における固形分含量の関数として表される粘度の積分は2500mPas%未満であり、この粘度はレオメータを用いて20℃および100s−1のせん断速度においてmPas単位で測定され、固形分含量は%で求められる。
【選択図】図1

Description

本発明は、高キャパシタンスおよび低等価直列抵抗を有する電解コンデンサを製造するためのプロセス、当該プロセスによって製造される電解コンデンサ、ならびにこのような電解コンデンサの使用に関する。
従来の固体電解コンデンサは、一般に、多孔性金属電極と、その金属表面の上に配置された酸化物層と、この多孔性構造体の中へと導入された電気伝導性の固体と、外側電極(接点接続)、例えばセパレータを伴う銀層または金属箔と、さらなる電気接点と封入体とからなる。
固体電解コンデンサの例は、電荷移動錯体または二酸化マンガンまたはポリマー−固体電解質を含むタンタル、アルミニウム、ニオブおよび酸化ニオブコンデンサである。多孔質体を使用することは、大きい表面積に起因して、非常に高いキャパシタンス密度,すなわち小さな空間における高電気容量を成し遂げることができるという長所を有する。
特に適切な固体電解質は、高電気伝導率に起因して、π共役ポリマーである。π共役ポリマーは、導電性ポリマーまたは合成金属とも呼ばれる。π共役ポリマーは、ますます経済的重要性を増している。なぜなら、ポリマーは加工性、重量および化学修飾による特性の制御された調整に関して金属よりも有利な点を有するからである。公知のπ共役ポリマーの例は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンおよびポリ(p−フェニレン−ビニレン)であり、特に重要でかつ工業的に利用されるポリチオフェンはポリ−3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェンとも呼ばれることが多い)である。その理由は、それが、酸化された形態で、非常に高い電気伝導率を有することである。
電子工学における実用面での開発は、非常に低い等価直列抵抗(ESR)を有する固体電解コンデンサをますます必要としている。この理由は、例えばロジック電圧の低下、集積回路におけるより高い集積密度および上昇するクロック周波数である。さらに、低ESRは電力消費も下げ、これは、携帯型の、バッテリで動作する用途にとっては特に有利である。それゆえ、固体電解コンデンサのESRをできる限り低くするという要求がある。
特許文献1は、3,4−エチレン−1,2−ジオキシチオフェンからの固体電解質の製造、および電解コンデンサにおける固体電解質としての、酸化重合によって調製されたそのカチオン性ポリマーの使用を記載する。固体電解コンデンサにおける二酸化マンガンまたは電荷移動錯体の置き換え物としてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、コンデンサの等価直列抵抗を低下させ、かつより高い電気伝導率に起因して周波数挙動を改善する。
このプロセスおよび類似のプロセスの短所は、この導電性ポリマーが、電解コンデンサ中におけるその場での重合により得られるということである。この目的のために、単量体、例えば3,4−エチレン−1,2−ジオキシチオフェン、および酸化剤は、溶媒の存在下で一緒にまたは連続的に多孔性金属体の中へと導入されて、次いで重合される必要がある。しかしながらこのような化学反応は、電子部品の製造の過程では望まれない。なぜなら、同一の仕様のコンデンサを製造するために、この化学反応を数百万もの小さい多孔性構成要素の中で同一に進行させることは常に非常に困難であるからである。
コンデンサ用の固体電解質の製造におけるその場重合の別の短所は、酸化剤が金属電極上の誘電体(酸化物層)を損傷させる可能性があるということである。使用される酸化剤は、一般に、遷移金属塩、例えばFe(III)塩である。重合後にその電極体の中に留まるこの重合の反応生成物は、この場合、電気伝導性のポリマーだけではなく、還元された金属塩、例えばFe(II)塩もである。その後の洗浄工程によってこれらの塩を除去しようとすることは可能である。しかしながら、これは複雑であり、完全には成功しない。すなわちその金属塩の残渣は常に電極体の中に残る。周知のとおり、遷移金属は、特に当該誘電体を損傷させる可能性があり、そのため、結果として生じるリーク電流の増大は、当該コンデンサの寿命を著しく短くする可能性があり、または高温および/もしくは高大気湿度などの過酷な条件下での当該コンデンサの使用を不可能にする可能性さえある。
さらに、その場重合が用いられる場合の固体電解コンデンサの製造プロセスは非常に複雑である:重合プロセス(含浸、重合、洗浄)は一般に数時間時間続き、ある状況下では、爆発性であるかまたは有毒である可能性がある溶媒をこの重合で使用することが必要であり、そして非常に多くの重合プロセスが固体電解質を製造するために必要とされる。
単量体は、酸化剤の不存在下で電気化学的に重合させることもできる。しかしながら、この電気化学重合は、最初に金属電極の絶縁性酸化物層の上に導電性フィルムが堆積されるということを必要とする。その後これは、同様に、上記の短所のすべてを有するその場重合を必要とする。最後に、この層は、各々個々の金属電極について電気接点が設けられる必要がある。この接点接続は非常に費用がかかり、大量生産では不便であり、しかも酸化物層を損傷する可能性がある。さらに、多孔性金属電極の孔の中での電気化学的堆積は非常に困難である。なぜなら、電位プロファイルに起因して、堆積は電極体の外側で主に起こるからである。
特許文献2では、電解コンデンサの固体電解質は、1〜100nmの平均直径を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネートの粒子を含む分散液を用いて製造される。このプロセスは上記のその場重合の短所を克服するとはいえ、このプロセスはあまりに複雑であるということが見出されている。例えば、特許文献2の分散液は、より高い被覆およびより低いESRを成し遂げるために、含浸後ふたたび、電極体の外部表面から洗い流される必要がある。これは、かなりの物質の損失および費用がかかる製造プロセスにつながる。
このように、固体電解質によるより良好な被覆および従ってより高いキャパシタンスがより単純なプロセスで成し遂げられるように、固体電解コンデンサを製造するための特許文献2に記載されるプロセスを改善するというニーズがある。
欧州特許出願公開第340 512号明細書 国際公開第2007/031206(A1)号パンフレット
それゆえ、このようなプロセスおよびこれにより改善されたコンデンサを提供することが本発明の目的である。
驚くべきことに、本発明において、電気伝導性のポリチオフェンを含み、かつ固形分含量が増加した場合にも粘度がより少ない程度しか上昇しない分散液を用いると、著しく改善された固体電解質による被覆の程度、従ってより高いキャパシタンスを成し遂げ、かつ同時に使用しやすいコンデンサ用の固体電解質を製造することが可能であるということが見出された。
1つの例を使用する台形の面積Aである。 タンタルコンデンサを使用する固体電解コンデンサの構築の概略図である。 タンタルコンデンサの概略的な層構造の図2からの拡大した細部10である。 アルミニウム巻回型コンデンサの例を使用する固体電解コンデンサの構築の概略図である。 固形分含量の関数としての分散液a)、b)およびc)の粘度のプロットを示す。
固形分含量に対する粘度の依存性は、驚くべきことに、当該固体電解質による多孔性電極体の被覆の程度に非常に大きい影響を及ぼす。乾燥の過程で起こるように溶媒が除去されたときに、粘度がより少ない程度しか上昇しない分散液を用いると、粘度が著しく上昇する分散液を用いる場合よりも著しく高い程度の固体電解質の被覆を成し遂げることが可能である。電極体への付与の際には粘度および固形分含量に差がない分散液でさえ、分散液の粘度が固形分含量とともに異なる程度に上昇する場合は、異なる程度の被覆につながるので、これはとりわけ驚くべきことである。
それゆえ本発明は、電解コンデンサを製造するためのプロセスであって、少なくとも、
a)電極材料の多孔性電極体(2)およびこの電極材料の表面を覆う誘電体(3)を少なくとも含む多孔質体の上に、任意に置換されている電気伝導性のポリチオフェンの粒子B)および分散剤D)を少なくとも含む分散液A)が付与され、
b)この分散剤D)を少なくとも部分的に取り除くことにより、この誘電体表面を部分的にまたは完全に覆う固体電解質(4)が形成されることを含み、
この分散液A)について、0.4%固形分〜5%固形分の積分範囲における固形分含量の関数として表される粘度の積分が2500mPas%未満、好ましくは2000mPas%未満、より好ましくは1500mPas%未満、さらにより好ましくは1100mPas%未満、特に好ましくは600mPas%未満であり、この粘度はレオメータを用いて20℃および100s−1のせん断速度においてmPas単位で測定され、固形分含量は%で測定されることを特徴とするプロセスを提供する。
固形分含量の関数としての粘度の積分は、次のようにして求められる:まず分散液の粘度が、0.4%〜5%の範囲の異なる固形分含量において、レオメータを用いて20℃および100s−1のせん断速度においてmPas単位で求められる。この目的のために、この固形分含量は、分散剤の添加またはエバポレーションによって変えられる。十分な精度でこの積分を求めるために、この粘度は、0.4%〜1%未満、1%〜2%未満、2%〜3%未満、3%〜4%未満、4%〜5%未満および5%の百分率範囲の各々について少なくとも1つの固形分含量に対して求められる。0.4%〜5%の積分範囲における粘度の積分は、与えられた固形分含量に対する粘度値から公知の数学の公式によって算出される。これは、例えば台形公式によって行うことができる:例えば上記の6つの百分率範囲からの各々1つの固形分含量xに対して粘度hが求められると、2つの隣り合う値h(x)とh(xi+1)との間の台形の面積Aは、式:
Figure 2011521464
によって算出される。次いで積分Iは、個々の台形の面積の和から算出される:
Figure 2011521464
図1は、1つの例を使用する台形の面積Aを示す。
分散液A)の粒子B)は、乾燥状態において100S/cmより大きい比電気伝導率を有する。
乾燥状態における粒子B)の比電気伝導率は、分散液A)が乾燥するにつれて粒子B)から形成される乾燥状態にある膜の比電気伝導率である。
乾燥状態にある粒子B)が、150S/cmより大きい、より好ましくは200S/cmより大きい、さらにより好ましくは250S/cmより大きい、特に好ましくは300S/cmより大きい、および特に好ましい実施形態では400S/cmより大きい比電気伝導率を有する分散液A)を使用することが好ましい。
分散液A)の粘度は、付与方法に応じて、0.1〜1000mPas(レオメータを用いて20℃および100s−1のせん断速度において測定される)であってもよい。この粘度は、好ましくは0.1〜500mPas、より好ましくは1〜200mPas、最も好ましくは1〜100mPas、特に好ましくは1〜50mPas、特に好ましい実施形態では1〜30mPasである。
分散液A)の固形分含量は、0.1〜90重量%、好ましくは0.1〜30重量%、最も好ましくは0.3〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%である。
固形分含量は、分散剤を除去するのに十分高いが、分散剤を除去する際にその固体を分解しない温度で分散液A)を乾燥することによって決定される。
当該プロセスでは、分散液A)の中の導電性のポリチオフェンの粒子B)は、1〜100nmの平均直径、好ましくは1〜80nm、より好ましくは1〜50nm、最も好ましくは5〜40nmの平均直径を有する。
粒子B)の直径は、超遠心分離分析によって測定される。一般的方法はColloid Polym. Sci.、267、1113−1116(1989)に記載されている。当該分散液の中で膨潤する粒子B)の場合、膨潤状態における粒径が測定される。粒子B)の直径分布は、粒子の直径の関数としてのその分散液中の粒子の質量分布を指す。
このプロセスでは、分散液A)中の導電性ポリマーの粒子B)は、好ましくは、150nm未満、特に好ましくは100nm未満、より特に好ましくは80nm未満、さらにより好ましくは50nm未満の直径分布のd90値を有する。
このプロセスでは、分散液A)中の導電性ポリマーの粒子B)は、好ましくは1nmより大きい、特に好ましくは3nmより大きい、より特に好ましくは5nmより大きい直径分布のd10値を有する。
直径分布のd10値は、分散液A)中の導電性ポリマーの全粒子B)の総質量のうちの10%がd10値以下の直径を有する粒子B)に帰属することができるということを意味する。直径分布のd90値は、分散液A)中の導電性ポリマーの全粒子B)の総質量のうちの90%がd90以下の直径を有する粒子B)に帰属することができるということを意味する。
分散液A)は、金属および遷移金属を含有しないか、またはごく少量の金属および遷移金属のみを含有することが好ましい。金属は、本願明細書においては、元素の周期表の主族または遷移族の金属の金属または金属イオンを意味すると理解され、遷移族の金属は、本願明細書中で遷移金属とも呼ばれる。周知のとおり、遷移金属は特に、当該誘電体を損傷させる可能性があり、そのため、結果として生じるリーク電流の増大は、当該コンデンサの寿命を著しく短くする可能性があり、または高温および/もしくは高大気湿度などの過酷な条件下での当該コンデンサの使用を不可能にする可能性さえある。
このプロセスにおける分散液A)は、好ましくは5000mg/kg未満、より好ましくは1000mg/kg未満、なおより好ましくは200mg/kg未満の金属含有量を有する。この場合の金属としては、例えば、Na、K、Mg、Al、Ca、Fe、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Ru、CeまたはZnが挙げられる。
このプロセスにおける分散液A)は、好ましくは1000mg/kg未満、より好ましくは100mg/kg未満、最も好ましくは20mg/kg未満の遷移金属の含有量を有する。この場合の遷移金属は、例えば、Fe、Cu、Cr、Mn、Ni、Ru、Ce、ZnまたはCoである。
このプロセスにおける分散液A)は、好ましくは1000mg/kg未満、より好ましくは100mg/kg未満、最も好ましくは20mg/kg未満の鉄含有量を有する。
当該分散液の中の金属の濃度が低いことは、固体電解質の形成の過程およびコンデンサのその後の動作の過程で当該誘電体が損傷されないという大きな長所を有する。
本発明に係るプロセスにより製造される電解コンデンサでは、電極材料は高表面積の多孔質体を形成し、例えば多孔性焼結体または粗面化された膜の形態で存在する。この多孔質体は、本願明細書中において略して電極体とも呼ばれる。
誘電体で被覆された電極体は、本願明細書中において、酸化された電極体とも呼ばれる。用語「酸化された電極体」は、当該電極体を酸化することによって製造されてはいない誘電体で覆われている電極体をも包含する。
誘電体で、および完全にまたは部分的に固体電解質で覆われた電極体は、本願明細書中で、略してコンデンサ体とも呼ばれる。
「コンデンサ体の外部表面」は、コンデンサ体の外部表面を意味すると理解される。
導電性のポリチオフェンは、酸化または還元後に電気伝導率を有するπ共役ポリマーの部類に属する。導電性のポリチオフェンは、好ましくは、酸化後に少なくとも1μScm−1の桁の電気伝導率を有するポリチオフェンを意味すると理解される。
分散液A)の中の電気伝導性のポリチオフェンの粒子B)は、好ましくは一般式(I)もしくは一般式(II)もしくは一般式(X)の繰り返し単位、または式(I)および(II)の繰り返し単位もしくは式(I)および(X)の繰り返し単位もしくは式(II)および(X)の繰り返し単位または式(I)、(II)および(X)の繰り返し単位を有する少なくとも1つのポリチオフェン
Figure 2011521464
(式中、
Aは任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカルであり、
Rは、互いに独立に、H、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC〜C18−アルキルラジカル、任意に置換されたC〜C12−シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC〜C14−アリールラジカル、任意に置換されたC〜C18−アラルキルラジカル、任意に置換されたC〜C−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルであり、
xは0〜8の整数であり、
複数のRラジカルがAに結合されている場合は、それらは同じであってもよいし異なっていてもよい)
を含む。
一般式(I)および(II)は、x個の置換基Rがアルキレン残基Aに結合されていてもよいというように理解されるべきである。
一般式(I)もしくは(II)の繰り返し単位、または一般式(I)および(II)の繰り返し単位を有するポリチオフェン(式中、Aは任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカルであり、xは0または1である)が特に好ましい。
粒子B)の導電性のポリチオフェンとして、任意に置換されているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)がなお特に好ましい。
本発明に関しては、接頭辞「ポリ」は、複数の同じまたは異なる繰り返し単位が当該ポリチオフェンの中に存在するということを意味すると理解されたい。当該ポリチオフェンは、全部でn個の、一般式(I)もしくは一般式(II)もしくは一般式(X)、または一般式(I)および(II)もしくは一般式(I)および(X)もしくは一般式(II)および(X)、または一般式(I)、(II)および(X)の繰り返し単位(ここで、nは2〜2000、好ましくは2〜100の整数である)を含む。一般式(I)もしくは一般式(II)もしくは一般式(X)の繰り返し単位、または一般式(I)および(II)の繰り返し単位もしくは一般式(I)および(X)の繰り返し単位もしくは一般式(II)および(X)の繰り返し単位、または一般式(I)、(II)および(X)の繰り返し単位は、ポリチオフェンの範囲内で各々同じであってもよいし異なっていてもよい。いずれの場合も同一の一般式(I)もしくは一般式(II)もしくは一般式(X)の繰り返し単位を有する、またはいずれの場合も同一の一般式(I)および(II)、もしくは一般式(I)および(X)、もしくは一般式(II)および(X)の繰り返し単位を有する、またはいずれの場合も同一の一般式(I)、(II)および(X)の繰り返し単位を有するポリチオフェンが好ましい。いずれの場合も同一の一般式(I)もしくは一般式(II)の繰り返し単位を有する、またはいずれの場合も同一の一般式(I)および(II)の繰り返し単位を有するポリチオフェンが特に好ましい。
末端基に、当該ポリチオフェンは、各々Hを有することが好ましい。
本発明に関しては、C〜C−アルキレンラジカルAは、好ましくは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレンまたはn−ペンチレンである。C〜C18−アルキルRは、好ましくは、メチル、エチル、n−またはイソプロピル、n−、iso−、sec−またはtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルなどの直鎖状もしくは分枝状のC〜C18−アルキルラジカルであり、C〜C12−シクロアルキルラジカルRは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルであり、C〜C14−アリールラジカルRは、例えば、フェニルまたはナフチルであり、C〜C18−アラルキルラジカルRは、例えば、ベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリルまたはメシチルである。上記の一覧は、本発明を例として記載する役割を果たすが、排他的なものであるとみなされるべきではない。
本発明に関しては、Aラジカルおよび/またはRラジカルの任意のさらなる置換基としては、多くの有機基、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシランおよびアルコキシシラン基、ならびにカルボキシアミド基が挙げられる。
本発明の範囲は、上記のおよび以下に特定されるすべてのラジカルの画定、パラメータ、および説明を、全般的にまたは好ましい範囲内において互いとともに、すなわち、特定の範囲と好ましい範囲との間の任意の組み合わせを含めて、包含する。
好ましいプロセスにおいて固体電解質として使用されるポリチオフェンは、電荷を帯びていなくてもよいし、またはカチオン性であってもよい。好ましい実施形態では、それらはカチオン性である。「カチオン性」は、単にこのポリチオフェン主鎖上に存在する電荷のみを指す。Rラジカルの置換基に応じて、当該ポリチオフェンは正電荷および負電荷をその構造単位の中に有することができ、この場合、この正電荷は当該ポリチオフェン骨格上に存在し、負電荷は、存在する場合、スルホネート基またはカルボキシレート基によって置換されたRラジカル上に存在する。当該ポリチオフェン骨格の正電荷は、Rラジカルに任意に存在するアニオン性基によって部分的にまたは完全に飽和されていてもよい。全体的に見ると、このポリチオフェンは、これらの場合にはカチオン性であってもよく、電荷を帯びていなくてもよく、またはアニオン性でさえあってもよい。とはいうものの、本発明に関しては、それらは、すべてカチオン性ポリチオフェンであると考えられる。なぜなら、このポリチオフェン骨格上の正電荷が非常に重要だからである。この正電荷は、上記式の中には示されていない。なぜなら、それらの正確な数および位置は明確に特定できないからである。しかしながら正電荷の数は、少なくとも1であり、多くともnである(nは、このポリチオフェン内のすべての(同じまたは異なる)繰り返し単位の総数である)。
任意にスルホネートまたはカルボキシレート置換された、従って負に帯電したRラジカルによってこの正電荷が打ち消されていない限りでは、この正電荷と均衡をとるために、このカチオン性ポリチオフェンは対イオンとしてアニオンを必要とする。
対イオンは、単量体アニオンであってもよくまたは高分子アニオンであってもよく、後者は、本願明細書ではポリアニオンとも呼ばれる。
高分子アニオンは単量体アニオンよりも好ましい。なぜなら、高分子アニオンは膜形成に寄与し、かつそのサイズに起因して、熱的により安定な、電気伝導性の膜を導くからである。
本発明においては、高分子アニオンは、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはポリマレイン酸などの高分子カルボン酸のアニオン、またはポリスチレンスルホン酸およびポリビニルスルホン酸などの高分子スルホン酸のアニオンであってもよい。これらのポリカルボン酸およびポリスルホン酸は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸と他の重合性単量体(アクリル酸エステルおよびスチレンなど)との共重合体であってもよい。
上記の粒子B)における好ましい高分子アニオンは、高分子カルボン酸またはスルホン酸のアニオンである。
特に好ましい高分子アニオンは、ポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオンである。
このポリアニオンを与えるポリ酸の分子量は、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは2000〜500000である。このポリ酸またはそのアルカリ金属塩は市販されており、例えばポリスチレンスルホン酸およびポリアクリル酸などは、公知の方法(例えばHouben Weyl、Methoden der organischen Chemie、第E20巻、Makromolekulare Stoffe、第2部、(1987)、1141頁以下参照)を使用して製造することができる。
高分子アニオン(1種または複数種)および電気伝導性のポリマーは、分散液A)の中に、とりわけ0.5:1〜50:1、好ましくは1:1〜30:1、より好ましくは2:1〜20:1の重量比で存在してもよい。当該電気伝導性ポリマーの重量は、本発明においては、当該重合において完全変換があると仮定して、使用される単量体の初期重量に相当する。
使用される単量体アニオンは、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのまたはより高級のスルホン酸(ドデカンスルホン酸など)などのC〜C20−アルカンスルホン酸の単量体アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸またはペルフルオロオクタンスルホン酸などの脂肪族ペルフルオロスルホン酸の単量体アニオン、2−エチルヘキシルカルボン酸などの脂肪族C〜C20−カルボン酸の単量体アニオン、トリフルオロ酢酸またはペルフルオロオクタン酸などの脂肪族ペルフルオロカルボン酸の単量体アニオン、およびベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸などのC〜C20−アルキル基によって任意に置換された芳香族スルホン酸の単量体アニオン、およびカンファースルホン酸などのシクロアルカンスルホン酸の単量体アニオン、またはテトラフルオロホウ酸の単量体アニオン、ヘキサフルオロリン酸の単量体アニオン、過塩素酸の単量体アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸の単量体アニオン、ヘキサフルオロひ酸の単量体アニオンまたはヘキサクロロアンチモン酸の単量体アニオンである。
好ましい単量体アニオンは、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはカンファースルホン酸のアニオンである。
電荷の均衡をとるための対イオンとしてアニオンを含有するカチオン性ポリチオフェンは、当該技術分野では、ポリチオフェン/(ポリ)アニオン錯体とも呼ばれることが多い。
分散液A)は、1以上の分散剤D)を含んでもよい。分散剤D)の例として以下の溶媒が挙げられる:メタノール、エタノール、i−プロパノールおよびブタノールなどの脂肪族アルコール;アセトンおよびメチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン;酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどの塩素化炭化水素;アセトニトリルなどの脂肪族ニトリル;ジメチルスルホキシドおよびスルホランなどの脂肪族スルホキシドおよびスルホン;メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドなどの脂肪族カルボン酸アミド;ジエチルエーテルおよびアニソールなどの脂肪族エーテルおよび芳香環を含む脂肪族エーテル。加えて、水また水と上述の有機溶媒との混合物も分散剤D)として用いてもよい。
好ましい分散剤D)は、水、またはアルコール(例えばメタノール、エタノール、i−プロパノールおよびブタノール)などの他のプロトン性溶媒、ならびに水とこれらのアルコールとの混合物であり、特に好ましい溶媒は水である。
分散液A)は、表面活性物質、例えばイオン性および/または非イオン性の界面活性剤;接着促進剤、例えば有機官能性シランまたはその加水分解生成物、例えば3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはオクチルトリエトキシシラン;メラミン化合物、ブロック化イソシアネート、官能性シラン −例えばテトラエトキシシラン(例えばテトラエトキシシランに基づく)アルコキシシラン加水分解生成物、エポキシシラン(3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン)−、ポリウレタン、ポリアクリレートもしくはポリオレフィン分散液などの架橋剤、またはさらなる添加剤などのさらなる物質も含んでよい。
分散液A)は、電気伝導率を増大させるさらなる添加剤、例えばエーテル基を含む化合物(例えばテトラヒドロフラン);ラクトン基を含む化合物(g−ブチロラクトン、g−バレロラクトンなど);アミドまたはラクタム基を含む化合物(カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン(NMP)、N−オクチルピロリドン、ピロリドンなど);スルホンおよびスルホキシド(例えばスルホラン(テトラメチレンスルホン)、ジメチルスルホキシド(DMSO));糖類または糖類誘導体(例えばスクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース)、糖アルコール(例えばソルビトール、マンニトール);イミド(例えばスクシンイミドまたはマレイミド);フラン誘導体(例えば2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸)、および/またはジアルコールまたはポリアルコール(例えばエチレングリコール、グリセロールまたはジエチレングリコールまたはトリエチレングリコール)を含むことが好ましい。電気伝導率増大添加剤として、テトラヒドロフラン、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドまたはソルビトールを使用することが特に好ましい。このさらなる添加剤は、いずれも単独でまたはそれらの任意の所望の組み合わせで分散液A)の中に存在してもよい。
分散液A)はさらに、1以上の結合剤を含んでもよい。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリルアミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリルエステル、酢酸ビニル/アクリルエステルおよびエチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂またはセルロース誘導体などの高分子有機結合剤が好ましい。加えて、好ましい高分子有機結合剤としては、架橋剤、例えばメラミン化合物、ブロック化イソシアネートまたは官能性シラン、例えば3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、テトラエトキシシランおよびテトラエトキシシラン加水分解生成物、または架橋性ポリマー、例えばポリウレタン、ポリアクリレートもしくはポリオレフィンを加えること、およびその後の架橋によって得られる高分子有機結合剤も挙げられる。高分子結合剤として適切なこのような架橋生成物は、例えば加えられた架橋剤と、同様に分散液A)の中に存在してもよい高分子アニオンとの反応により形成されてもよい。完成したコンデンサが後で曝される熱ストレス、例えば220〜260℃というはんだ付け温度に耐えるのに十分な熱安定性を有する結合剤が好ましい。
分散液A)中のこの高分子結合剤の固形分含量は、0.1〜90重量パーセント(重量%)、好ましくは0.5〜30重量%、最も好ましくは0.5〜10重量%である。
分散液A)は1〜14のpHを有してもよく、1〜8のpHが好ましい。腐食に敏感な誘電体、例えばアルミニウムの酸化物またはニオブの酸化物については、その誘電体を損傷させないために、3〜8のpH,を有する分散液が好ましい。このpHを確立するために、例えば、酸または塩基をこの分散液に加えることが可能である。当該分散液の膜形成を損なわず、かつ比較的高温、例えばはんだ付け温度で不揮発性であり、むしろこれらの条件下で固体電解質の中に留まる添加剤、例えば塩基、2−ジメチルアミノエタノール、2,2’−イミノジエタノールまたは2,2’,2”−ニトリロトリエタノールおよび酸、ポリスチレンスルホン酸が好ましい。
図2は、以下のものを含むタンタルコンデンサの例を使用して、固体電解コンデンサの構築の概略図を記載する:
1 コンデンサ体
5 任意の導電性の外側層
6 グラファイト/銀層
7 電極体2へのワイヤ接点
8 外側接点
9 封入体
10 細部。
図3は、以下のものを含むタンタルコンデンサの概略的な層構造の図2からの拡大した細部10を記載する:
10 細部
2 多孔性電極体(アノード)
3 誘電体
4 固体電解質(カソード)
5 任意の導電性の外側層
6 グラファイト/銀層。
図4は、以下のものを含むアルミニウム巻回型コンデンサの例を使用して、固体電解コンデンサの構築の概略図を記載する:
11 多孔性アノード膜
12 アノード膜に対する接点ワイヤ
13 カソード膜
14 カソード膜に対する接点ワイヤ
15 セパレータ
16 粘着テープ。
原理上、このような本発明の電解コンデンサは、以下のようにして製造することができる:まず、例えば、高表面積を有するバルブ金属粉末が圧縮され、多孔性電極体へと焼結される。これがなされるとき、好ましくはバルブ金属、例えばタンタルの電気接点ワイヤも、典型的にその電極体の中へと圧縮される。あるいは、多孔性膜を得るために金属箔をエッチングすることも可能である。巻回型コンデンサの場合は、電極体を形成する多孔性アノード膜とカソード膜とはセパレータにより隔てられ、そして巻き取られる。
次いでこの電極体は、例えば電気化学的酸化によって誘電体、すなわち酸化物層でコーティングされる。
この後、本発明によれば、少なくとも電気伝導性のポリチオフェンの粒子B)および分散剤D)を含む分散液A)がこの酸化された電極体へと付与され、この分散剤D)を少なくとも部分的に取り除くことにより、固体電解質が形成される。必要に応じて、さらなる層(図2および図3では導電性の外側層(5)と呼ばれる)がこのコンデンサ体の外部表面へ付与される。グラファイトおよび銀などの良好な電気伝導率の層によるコーティング、または例えば巻回型アルミニウムコンデンサの場合におけるようなセパレータを有する金属カソード体は、電流を放電するための電極としての働きをする。最後に、このコンデンサは、任意に接点接続されて、最後に封入される。
電極材料がバルブ金属またはバルブ金属に匹敵する電気特性を有する化合物であることを特徴とする電解コンデンサを製造するためのプロセスは、さらに好ましい。
本発明に関しては、バルブ金属は、金属の酸化物層が両方向に等しく電流の流れを許容するわけではない、その金属を表すと理解される。電圧がアノードに印加されるときこのバルブ金属の酸化物層は電流の流れを遮断するが、他方、電圧がカソードに印加されるときその酸化物層を破壊する可能性がある大電流が流れる。バルブ金属としては、Be、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、TaおよびWならびにこれらの金属の少なくとも1つと他の元素との合金または化合物が挙げられる。バルブ金属の最も知られた例は、Al、TaおよびNbである。バルブ金属に匹敵する電気特性を有する化合物は、酸化することができかつその酸化物層が本願明細書にこれまでに記載された特性を有する、金属的な電気伝導率を呈する化合物である。例えばNbOは金属的な電気伝導率を呈するが、一般にはバルブ金属とは考えられない。しかしながら酸化されたNbOの層はバルブ金属酸化物層の典型的な特性を呈し、そのため、NbOまたはNbOと他の元素との合金もしくは化合物はバルブ金属に匹敵する電気特性を有するそのような化合物の典型例である。
タンタル、アルミニウムから構成される電極材料、およびニオブまたは酸化ニオブに基づく電極材料が好ましい。
ニオブまたは酸化ニオブに基づく電極材料は、ニオブまたは酸化ニオブが最大の量的割合の構成成分を構成する材料を意味すると理解される。
ニオブまたは酸化ニオブに基づく電極材料は、好ましくはニオブ、NbO、ニオブ酸化物NbO(xは、0.8〜1.2の値をとってもよい)、窒化ニオブ、ニオブ酸窒化物もしくはこれらの物質の混合物、またはこれらの物質のうちの少なくとも1つと他の元素との合金もしくは化合物である。
好ましい合金は、少なくとも1つのバルブ金属、例えばBe、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、TaまたはWとの合金である。
従って、用語「易酸化性の金属」は、金属だけでなく金属と他の元素との合金または化合物をも包含するが、ただしそれはその金属と他の元素との合金または化合物が金属的な電気伝導率を呈しかつ酸化することができる場合に限る。
この易酸化性の金属は、例えば粉末形態で多孔性電極体へと焼結されるか、または多孔性構造体が金属体に付与される。後者は、例えば膜をエッチングすることにより行うことができる。この多孔性電極体は、電圧を印加することにより、例えば適切な電解質中、例えばリン酸中で、酸化される。この形成電圧の大きさは、成し遂げられるべき酸化物層の厚さおよび/またはそのコンデンサののちに印加される電圧に依存する。好ましい形成電圧は、1〜800V、より好ましくは1〜300Vである。
当該電極体を製造するために、1000〜1000000μC/gの比電荷を有する金属粉末が好ましく、より好ましくは5000〜500000μC/gの比電荷、さらにより好ましくは5000〜300000μC/gの比電荷、特に好ましくは10000〜200000μC/gの比電荷を有する金属粉末が使用される。
この金属粉末の比電荷は次のようにして算出される:
金属粉末の比電荷=(キャパシタンス×アノード酸化電圧)/酸化された電極体の重量
このキャパシタンスは、電解質水溶液中で120Hzにおいて測定された、当該酸化された電極体のキャパシタンスから決定される。この電解質の電気伝導率は、120Hzにおいて、電解質の電気抵抗率に起因するキャパシタンスの減衰がまだ存在しないほどに十分大きい。例えば、18%硫酸電解質水溶液がこの測定のために使用される。
使用される電極体は、10〜90%、好ましくは30〜80%、より好ましくは50〜80%の多孔性を有する。
多孔性電極体は、10〜10000nm、好ましくは50〜5000nm、より好ましくは100〜3000nmの平均孔径を有する。
従って本発明は、より好ましくは、電解コンデンサを製造するためのプロセスであって、上記バルブ金属または匹敵する特性を有する化合物がタンタル、ニオブ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、これらの金属の少なくとも1つと他の元素との合金もしくは化合物、NbOまたはNbOと他の元素との合金もしくは化合物であることを特徴とする、プロセスを提供する。
当該誘電体は、好ましくは当該電極材料の酸化物からなる。それは、任意に、さらなる元素および/または化合物を含む。
当該コンデンサのキャパシタンスは、誘電体の種類だけでなく、誘電体の表面積および厚さにも依存する。比電荷は、酸化された電極体が単位重量あたりにどれくらい多くの電荷を収容することができるかの尺度である。この比電荷は次のようにして算出される:
コンデンサの比電荷=(キャパシタンス×定格電圧)/酸化された電極体の重量
このキャパシタンスは、120Hzにおいて測定された完成したコンデンサのキャパシタンスから決定され、定格電圧は、当該コンデンサの特定された使用電圧である。酸化された電極体の重量は、当該ポリマー、接点および封入体なしの誘電体がコーティングされた多孔性電極材料の単純な重量に基づく。
この新規なプロセスによって製造される電解コンデンサは、好ましくは500〜500000μC/gの比電荷、より好ましくは2500〜250000μC/gの比電荷、さらにより好ましくは2500〜150000μC/gの比電荷、特に好ましくは5000〜100000μC/gの比電荷を有する。
分散液A)の中での粒子B)の導電性のポリチオフェンの調製のための前駆体は、本願明細書において前駆体とも呼ばれ、この前駆体は、適切な単量体またはその誘導体を意味すると理解される。異なる前駆体の混合物を使用することも可能である。適切な単量体前駆体は、例えば、任意に置換されたチオフェン、好ましくは任意に置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−アルキレンオキシチアチオフェンまたはチエノ[3,4−b]チオフェンである。
任意に置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−アルキレンオキシチアチオフェンまたはチエノ[3,4−b]チオフェンの例としては、一般式(III)もしくは一般式(IV)もしくは一般式(XI)の化合物、または一般式(III)および(IV)のチオフェンの混合物、もしくは一般式(III)および(XI)のチオフェンの混合物、もしくは一般式(IV)および(XI)のチオフェンの混合物、または一般式(III)、(IV)および(XI)のチオフェンの混合物
Figure 2011521464
(式中、
Aは、任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカル、好ましくは任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカルであり、
Rは、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC〜C18−アルキルラジカル、好ましくは直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC〜C14−アルキルラジカル、任意に置換されたC〜C12−シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC〜C14−アリールラジカル、任意に置換されたC〜C18−アラルキルラジカル、任意に置換されたC〜C−ヒドロキシアルキルラジカル、好ましくは任意に置換されたC〜C−ヒドロキシアルキルラジカル、またはヒドロキシルラジカルであり、
xは、0〜8の整数、好ましくは0〜6の整数、より好ましくは0または1であり、
複数のRラジカルがAに結合されている場合、このRラジカルは同じであってもよいし異なっていてもよい)
が挙げられる。
特に好ましい単量体前駆体は、任意に置換された3,4−エチレンジオキシチオフェンである。
置換3,4−エチレンジオキシチオフェンの例としては、一般式(V)の化合物
Figure 2011521464
(式中、Rおよびxは、各々、一般式(III)および(IV)について画定されたとおりである)
が挙げられる。
本発明に関しては、これらの単量体前駆体の誘導体は、例えば、これらの単量体前駆体の二量体または三量体を意味するものと理解される。単量体前駆体のより高分子量の誘導体、すなわち四量体、五量体なども誘導体として可能である。
置換3,4−アルキレンジオキシチオフェンの誘導体の例としては、一般式(VI)の化合物
Figure 2011521464
(式中、
nは、2〜20の整数、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2または3であり、
A、Rおよびxは、各々、一般式(III)および(IV)について画定されたとおりである)
が挙げられる。
これらの誘導体は同一のまたは異なる単量体混合物から形成されてもよく、純粋な形態でまたは互いとのおよび/もしくは当該単量体前駆体との混合物として使用されてもよい。これらの前駆体の酸化された形態または還元された形態は、本発明に関しては用語「前駆体」に包含されるが、ただしそれは、それらの重合によって上に列挙した前駆体の場合と同じ導電性ポリマーが形成される場合に限る。上記の前駆体についての、とりわけチオフェンについての、好ましくは3,4−アルキレンジオキシチオフェンについての有用な置換基としては、一般式(III)、(IV)または(XI)においてRについて特定されるラジカルが挙げられる。
Aラジカルおよび/またはRラジカルの任意のさらなる置換基としては、一般式(I)、(II)または(X)に関連して特定される有機基が挙げられる。
導電性ポリマーおよびその誘導体の調製のための単量体前駆体を調製するためのプロセスは当業者に公知であり、例えばL.Groenendaal、F.Jonas、D.Freitag、H.PielartzikおよびJ.R.Reynolds、Adv.Mater.、12(2000) 481−494およびその中で引用される文献に記載されている。
使用されるべきポリチオフェンの調製のために必要とされる式(III)の3,4−アルキレンオキシチアチオフェンは当業者に公知であるか、または公知のプロセスによって(例えばP.Blanchard、A.Cappon、E.Levillain、Y.Nicolas、P.FrereおよびJ.Roncali、Org.Lett.、4(4)、2002、607−609頁に従って)調製することができる。
使用されるべきポリチオフェンの調製のために必要とされる式(XI)のチエノ[3,4−b]チオフェンは、当業者に公知であるか、または公知のプロセスによって(例えば米国特許出願公開第2004/0074779(A1)号明細書に従って)調製することができる。
当該分散液は、例えば、欧州特許出願公開第440 957号明細書で特定される条件と同様にして、上記の前駆体から調製される。この分散液の調製のための改良された変法は、無機塩含有量またはその一部を除去するためにイオン交換体を使用することである。このような変法は、例えば独国特許出願公開第19627071号明細書に記載されている。このイオン交換体は、例えば生成物とともに撹拌されてもよいし、または生成物をイオン交換樹脂を充填したカラムに通してもよい。イオン交換体の使用によって、例えば、上記の低金属含有量を成し遂げることが可能になる。
分散液A)中の粒子B)の粒径は、例えば高圧ホモジナイザーを用いて小さくすることができる。その効果を増大させるために、この操作を繰り返してもよい。特に、100〜2000bar(10〜200MPa)の圧力が粒径を小さくするために特に好都合であるということが見出された。
ポリチオフェン/ポリアニオン錯体の調製およびその後の1以上の溶媒への分散または再分散も可能である。
当該導電性ポリマーの粒子B)は、安定な分散液を形成することが好ましい。しかしながら、粒子B)の均質な分散を確実にするためにそれらを使用前に例えば撹拌し、横に揺らし、または振盪することによって、不安定な分散液を使用することも可能である。
分散液A)は、公知のプロセスにより、例えばスピンコーティング、含浸、キャスティング、液滴の塗布、噴霧、ナイフコーティング、塗装または印刷、例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷またはパッド印刷により当該電極体の誘電体へと付与される。
この分散液を当該多孔性電極体の中へと導入することは、例えば、昇圧または減圧、振動、超音波または熱によって促進されうる。
当該電極体の誘電体の付与は、直接に、あるいは接着促進剤、例えばシラン、例えば有機官能性シランもしくはその加水分解生成物、例えば3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランもしくはオクチルトリエトキシシラン、および/または1以上の他の官能性層を使用して行うことができる。
当該固体電解質の分散液の中の粒子B)および任意のさらなる添加剤が高分子の中間層または高分子外側層を形成することができるように、分散液A)が付与された後、分散剤D)は、除去されることが好ましい。しかしながら、分散剤D)のうちの少なくとも一部分が当該固体電解質の中に留まるようにすることも可能である。
分散剤D)は、この分散液が付与された後に、単純なエバポレーションにより室温で除去することができる。しかしながら、より高い処理速度を達成するために、分散剤D)を高温で、例えば20〜300℃まで、好ましくは40〜250℃までの温度で除去することがより有利である。熱的後処理は、溶媒の除去とともに直接、またはコーティングの完了とは異なる時期に行うことができる。
コーティングのために使用される分散液の種類に応じて、熱処理の継続期間は5秒〜数時間である。熱処理については、異なる温度および滞留時間の温度プロファイルを使用することもできる。
この熱処理は、例えば、コーティングされた酸化された電極体が、加熱されたチャンバーの中を所望の温度で、選択された温度での所望の滞留時間が達成されるような速度で移動されるか、または所望の滞留時間の間、所望の温度でホットプレートと接触されるようにして実施することができる。加えて、この熱処理は、例えば1つのオーブンまたは異なる温度のいくつかのオーブンの中で行うことができる。
酸化された電極体の種類に応じて、より厚いポリマーおよび/または当該誘電体表面層のより高い被覆を成し遂げるために、酸化された電極体に当該分散液を1回または2回以上含浸させることが有利である場合がある。
分散液A)の付与および分散剤D)の少なくとも部分的な除去は繰り返して行われる。
当該固体電解質による当該誘電体の被覆は、以下のようにして決定することができる:コンデンサのキャパシタンスが乾燥状態および湿状態で120Hzで測定される。被覆の程度は、湿状態でのキャパシタンスに対する乾燥状態でのキャパシタンスの、パーセントで表された比である。「乾燥状態」は、そのコンデンサが、分析される前に、高温(80〜120℃)で数時間にわたって乾燥されたということを意味する。「湿状態」は、そのコンデンサが、高められた圧力下で、例えば蒸気ボイラーの中で数時間にわたって飽和空気湿度に曝されたということを意味する。この過程で、水分は、当該固体電解質で覆われていない孔の中へと浸透して、そこで液体電解質として作用する。
当該固体電解質による誘電体の被覆は、好ましくは50%より大きく、より好ましくは70%より大きく、最も好ましくは80%より大きい。
固体電解質の導入後、さらなる導電性層、例えば導電性の外側層をそのコンデンサ体上に付与することができる。例えば欧州特許出願公開第1524678(A)号明細書に記載されているものなどの高分子の外側層を付与することが好ましい。良好な電気伝導率を有するさらなる層、例えばグラファイトおよび/または銀層は、電流コレクタとして作用する。巻回型コンデンサでは、セパレータによってコンデンサ体(アノード膜)から隔てられているカソード膜が集電器として作用する。最後に、このコンデンサは、任意に接点接続され、最後に封入される。
本発明はさらに、少なくとも、電気伝導性のポリチオフェン(任意に置換されている)を含む粒子、および分散剤を含む分散液であって、この分散液について、0.4%固形分〜5%固形分の積分範囲における、固形分含量の関数として表される粘度の積分が2500mPas%未満であり、この粘度はレオメータを用いて20℃および100s−1のせん断速度においてmPas単位で測定され、この固形分含量は%で求められること、およびポリチオフェンを含む当該粒子は、乾燥状態において、100S/cmより大きい比電気伝導率を有することを特徴とする、分散液を提供する。
分散液については、本発明に係るプロセスから得られる分散液A)について上に記載した好ましい範囲と同じ好ましい範囲が当てはまる。
このように、本発明に係るプロセスおよび本発明の分散液によって、その場重合が必要とはされない、低等価直列抵抗(ESR)および低いリーク電流を有する固体電解コンデンサの製造が可能になる。本発明に係るプロセスは国際公開第2007/031206(A1)号パンフレットに開示されるプロセスよりも単純であり、より高い程度の固体電解質による被覆およびそれゆえより高いキャパシタンスが成し遂げられる。従って、本発明に係るプロセスによって製造される電解コンデンサは、本発明の主題のさらなる一部を形成する。本発明に従って製造される電解コンデンサは、その低いリーク電流およびその低ESRのため、電子回路の中の構成要素として、例えばフィルターコンデンサまたはデカップリングコンデンサとして使用するのに極めて適している。この使用も本発明の主題の一部を形成する。例えば、コンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、サーバー)の中に、コンピュータ周辺機器(例えばPCカード)の中に、携帯用電子デバイス、例えば携帯電話、デジタルカメラまたは娯楽用電子機器の中に、娯楽用電子機器用装置の中に、例えばCD/DVDプレーヤおよびコンピューターゲーム用コンソールの中に、ナビゲーションシステムの中に、電気通信設備の中に、家電製品の中に、電圧源の中に、または自動車用電子機器の中に存在するような、電子回路が好ましい。以下の実施例は、本発明の例示的に説明する働きをするが、決して限定として解釈されるべきではない。
比較例1:導電性ポリマーの分散液a)の調製
撹拌機および内部温度計を具えた2リットルの3つ口フラスコに、最初に、868gの脱イオン水、330gの、70000の平均分子量および3.8重量%の固形分含量を有するポリスチレンスルホン酸水溶液を入れた。反応温度は20〜25℃に保った。撹拌しながら、5.1gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを加えた。この溶液を30分間撹拌した。その後、0.03gの硫酸鉄(III)および9.5gの過硫酸ナトリウムを加え、この溶液をさらに24時間撹拌した。
反応が終了した後、100mlの強酸性カチオン交換体(Lewatit S100、Lanxess AG)および250mlの弱塩基性アニオン交換体(Lewatit MP 62、Lanxess AG)を使用して無機塩を取り除き、この溶液をさらに2時間撹拌した。このイオン交換体を濾別した。このポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート分散液を、高圧ホモジナイザーを用いて700bar(70MPa)の圧力で10回均質化した。この分散液100gおよび4gのジメチルスルホキシド(DMSO)を、撹拌機を用いてビーカーの中で激しく混合し、分散液a)を得た。分散液a)の固形分含量は1.2%であり、粘度は15mPasであった。
固形分含量を決定するために、この分散液5gを100℃で14時間乾燥した。
分散液a)は以下の粒子粒度分布を有していた:
10 20nm
50 28nm
90 47nm。
この導電性ポリマーの粒子の直径は、粒子の直径の関数としてのこの分散液の中の粒子の質量分布に基づく。この測定は、超遠心分離測定によって行った。粒径は、この粒子の膨潤状態で測定した。
分散液a)を、水を用いた希釈または濃縮によって異なる固形分含量へと調整し、この分散液の具体的な粘度を、レオメータ(Haake)を用いて100Hzのせん断速度および20℃で測定した。
それらの値は、表1に見出すことができる。
Figure 2011521464
0.4%〜5%の積分範囲における分散液a)の粘度の積分を台形公式によって求めると、2635mPas×%であった。
実施例1:導電性ポリマーの分散液b)の調製
分散液b)を、比較例1で得た分散液a)と同様にして調製した。しかしながら、この分散液は、高圧均質化後に2.2%固形分まで濃縮し、次いでさらに1500bar(150MPa)の圧力で5回均質化し、その後1.25%の固形分含量まで水で希釈した。この分散液100gおよび4gのジメチルスルホキシド(DMSO)を、撹拌機を用いてビーカーの中で激しく混合し、分散液b)を得た。分散液b)の固形分含量は1.2%であり、粘度は15mPasであった。
分散液b)は以下の粒子粒度分布を有していた:
10 20nm
50 29nm
90 45nm。
分散液b)の金属含有量のICP分析から以下の値を得た:
ナトリウム(Na):100mg/kg
マグネシウム(Mg):0.60mg/kg
アルミニウム(Al):1.0mg/kg
ケイ素(Si):1.1mg/kg
リン(P):6.2mg/kg
カリウム(K):0.63mg/kg
カルシウム(Ca):3.9mg/kg
クロム(Cr):0.18mg/kg
鉄(Fe):0.80mg/kg
亜鉛(Zn):<0.01mg/kg。
分散液b)の一部分を、スピンコーター(Chemat Technology KW−4A)を用いて顕微鏡用スライド(26mm×26mm×1mm)の上に広げた。この試料を120℃で10分間乾燥した。その後、この顕微鏡用スライドの2つの対向するエッジを導電性の銀でコーティングした。この導電性の銀が乾燥した後、この2つの銀のストリップを接点に接続し、Keithley 199 マルチメーターを使用して表面抵抗率を測定した。この層の厚さを、Tencor Alpha Step 500 Surface Profilerを用いて測定した。表面抵抗率および層の厚さdを使用して、σ=1/(R×d)に従って比電気伝導率σを求めた。この層の厚さは60nmであり、比電気伝導率は450S/cmであった。
分散液b)を、水を用いた希釈または濃縮によって異なる固形分含量へと調整し、この分散液の具体的な粘度を、レオメータ(Haake)を用いて100Hzのせん断速度および20℃で測定した。それらの値は表2に見出すことができる。
Figure 2011521464
0.4%〜5%の積分範囲における分散液b)の粘度の積分を台形公式によって求めると、1052mPas×%であった。
実施例2:導電性ポリマーの分散液c)の調製
分散液c)を、実施例1で得た分散液b)と同様に調製した。しかしながら、第2の均質化を2500bar(250MPa)の圧力で行った。分散液c)の固形分含量は1.2%であり、粘度は7mPasであった。
分散液c)は以下の粒子粒度分布を有していた:
10 19nm
50 27nm
90 48nm。
分散液c)を、水を用いた希釈または濃縮によって異なる固形分含量へと調整し、この分散液の具体的な粘度を、レオメータ(Haake)を用いて100Hzのせん断速度および20℃で測定した。それらの値は表3に見出すことができる。
Figure 2011521464
0.4%〜5%の積分範囲における分散液c)の粘度の積分を台形公式によって求めると、402mPas×%であった。
図5は、固形分含量の関数としての分散液a)、b)およびc)の粘度のプロットを示す。
すべての3つの分散液の粘度は、より高い固形分含量では著しく上昇した。しかしながら、分散液a)と比べて、本発明の分散液b)およびc)については著しくより高い固形分含量までは上昇は起こらない。0.4〜5%の積分範囲における分散液b)およびc)についての粘度の積分、それぞれ1052mPas×%および402mPas×%は、分散液a)についての対応する積分(2635mPas×%である)よりも著しく低い。
実施例3:
3.1. 酸化された電極体の製造:
2.2mm×1.1mm×1.1mmの寸法を有する電極体を形成するために、150000μFV/gの比容量を有するタンタル粉末を、タンタルワイヤを導入してペレットへと圧縮し、焼結した。この多孔性電極体を、リン酸電解質中で12Vまでアノード酸化し、誘電体を形成した。
3.2 固体電解質の製造
この酸化された電極体に、分散液b)を1分間含浸した。このあと、120℃で10分間乾燥した。含浸および乾燥をさらに19回実施した。
3.3 高分子の外側層の製造
分散液d):
撹拌機および温度計を具えた5リットルのガラス反応器に、最初に、2.5リットルの脱イオン水を入れた。撹拌しながら、214.2gのp−トルエンスルホン酸一水和物および2.25gの硫酸鉄(III)七水和物を導入した。すべてが溶解すると、85.8gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを加え、この混合物を30分間撹拌した。その後、192.9gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを撹拌しながら導入し、この混合物を室温でさらに24時間撹拌した。この反応が終了した後、形成されたPEDT/トルエンスルホネート粉末を磁器製の吸引漏斗上で濾別し、3リットルの脱イオン水で洗浄し、最後に100℃で6時間乾燥した。89gの青黒色のPEDT−トルエンスルホネート粉末を得た。
撹拌機および温度計を具えた5リットルのガラス反応器に、最初に、1736gの脱イオン水、660gの、70000の平均分子量Mおよび3.8重量%の固形分含量を有するポリスチレンスルホン酸水溶液を入れた。反応温度を20〜25℃に保った。撹拌しながら、10.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを加えた。この溶液を30分間撹拌した。その後、0.06gの硫酸鉄(III)および19gの過硫酸ナトリウムを加え、この溶液をさらに24時間撹拌した。反応が終了した後、200mlの強酸性カチオン交換体(Lewatit S100、Lanxess AG)および500mlの弱塩基性アニオン交換体(Lewatit MP 62、Lanxess AG)を使用して無機塩を取り除き、この溶液をさらに2時間撹拌した。このイオン交換体を濾別した。撹拌機を具えるビーカーに、最初に、180gのこのPEDT/PSS分散液を入れ、10gのスルホポリエステル(Eastek 1100、固形分含量30%、Eastman)、8gのジメチルスルホキシド、1gの3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−187、OSi Specialties)および0.4gの湿潤剤(Dynol 604、Air Products)を1時間激しく混合した。その後、2gの上記PEDT/トルエンスルホネート粉末を、ボールミル溶解装置を用いて分散させた。これに、300gの酸化ジルコニウムビーズ(φ 1mm)を加え、この混合物を、水で冷却しながら7000rpmで1時間撹拌した。最後に、この粉砕されたビーズを、0.8μmのスクリーンを用いて取り除いた。この得られた分散液d)は、4.7%の固形分含量および200mPasの粘度を有していた。比電気伝導率は90S/cmであった。
このコンデンサ体を、実施例1で得た分散液d)の中で含浸し、次いで120℃で10分間乾燥した。
最後に、この電極体をグラファイトおよび銀層でコーティングした。
上記のようにして製造した10個のコンデンサの平均の電気値は、表4に見出すことができる。LCR meter(Agilent 4284A)を用いてキャパシタンス(マイクロファラド単位)を120Hzで測定し、等価直列抵抗(ESR)(ミリオーム単位)を100kHzで測定した。
実施例4:
10個のコンデンサを、分散液b)の代わりに実施例2から得た分散液c)を使用して固体電解質を製造したことを除いて、実施例3と同様にして製造した。これらのコンデンサの平均の電気値は、表4に見出すことができる。
比較例2:
10個のコンデンサを、分散液b)の代わりに比較例1から得た分散液a)を使用して固体電解質を製造したことを除いて、実施例3と同様にして製造した。これらのコンデンサの平均の電気値は、表4に見出すことができる。
Figure 2011521464
分散液a)、b)およびc)は、酸化された電極体に付与されたとき類似の粘度を有するが、本発明の分散液b)およびc)を用いると本発明のものではない分散液a)よりも数倍高いキャパシタンス値を達成することができる。
実施例5:
5.1. 酸化された電極体の製造:
4mm×4mmのサイズの10個の多孔性アルミニウム箔を20Vでアノード酸化した。
5.2 固体電解質の製造
100gの分散液b)(実施例1から得た)および0.5gの3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−187、OSi Specialties)を、撹拌機を用いてビーカーの中で激しく混合した。その後、2−ジメチルアミノエタノールを加えることによりこの分散液のpHを6の値に調整した。
この酸化されたアルミニウム箔を、この分散液の中で1分間含浸した。このあと、120℃で10分間乾燥した。乾燥および含浸をさらに9回実施した。
5.3 高分子の外側層の製造
これらのコンデンサ体を、実施例3から得た分散液d)の中で含浸し、次いで120℃で10分間乾燥した。
最後に、この電極体をグラファイトおよび銀層でコーティングした。
上記のようにして製造した10個のコンデンサの平均の電気値は、表5に見出すことができる。LCR meter(Agilent 4284A)を用いてキャパシタンス(マイクロファラド単位)を120Hzで測定し、等価直列抵抗(ESR)(ミリオーム単位)を100kHzで測定した。
実施例6:
実施例2から得た分散液c)を使用したことを除いて実施例5のようにして、10個のコンデンサを製造した。
上記のようにして製造した9個のコンデンサの平均の電気値は、表5に見出すことができる。
比較例3:
比較例1から得た分散液a)を使用したことを除いて実施例5のようにして、10個のコンデンサを製造した。
上記のようにして製造した9個のコンデンサの平均の電気値は、表5に見出すことができる。
Figure 2011521464
実施例5および実施例6から得たコンデンサは、比較例3のコンデンサよりも有意に高いキャパシタンスを有する。
実施例7:
7.1. 酸化された電極体の製造:
92Vまでアノード酸化した、そして0.1mm×130mm×3mmの寸法を有する多孔性アルミニウム箔(アノード箔)および0.03mm×145mm×3mmの寸法を有する多孔性アルミニウム箔(カソード箔)に、各々、接点ワイヤを設け、次いで図4に示すように2つのセルロースのセパレータ紙と一緒に巻き取り、粘着テープで固定した。10個のこれらの酸化された電極体を製造した。次いでこの酸化された電極体のセパレータ紙を300℃のオーブン中で炭化させた。
7.2 固体電解質の製造
100gの分散液b)(実施例1から得た)および0.1gの湿潤剤(Dynol 604、Air Products)を、撹拌機を用いてビーカーの中で激しく混合した。その後、2−ジメチルアミノエタノールを加えることによりこの分散液のpHを6の値に調整した。
この酸化された電極体を、この分散液の中で15分間含浸した。このあと、150℃で40分間乾燥した。含浸および乾燥をさらに2回実施した。
上記のようにして製造した10個のコンデンサの平均の電気値は、表6に見出すことができる。LCR meter(Agilent 4284A)を用いてキャパシタンス(マイクロファラド単位)を120Hzで測定し、等価直列抵抗(ESR)(ミリオーム単位)を100kHzで測定した。
実施例8:
実施例2から得た分散液c)を使用したことを除いて実施例7のようにして、10個のコンデンサを製造した。
上記のようにして製造した10個のコンデンサの平均の電気値は、表6に見出すことができる。
比較例4:
比較例1から得た分散液a)を使用したことを除いて実施例6のようにして、10個のコンデンサを製造した。
上記のようにして製造した10個のコンデンサの平均の電気値は、表6に見出すことができる。
Figure 2011521464
実施例7および実施例8から得たコンデンサは、比較例4のコンデンサよりも有意に高いキャパシタンスおよび低いESRを有する。

Claims (15)

  1. 電解コンデンサを製造するためのプロセスであって、少なくとも、
    a)電極材料の多孔性電極体(2)およびこの電極材料の表面を覆う誘電体(3)を少なくとも含む多孔質体の上に、任意に置換されている電気伝導性のポリチオフェンの粒子B)および分散剤D)を少なくとも含む分散液A)が付与され、
    b)この分散剤D)を少なくとも部分的に取り除くことにより、前記誘電体表面を部分的にまたは完全に覆う固体電解質(4)が形成されることを含み、
    前記分散液A)について、0.4%固形分〜5%固形分の積分範囲における固形分含量の関数として表される粘度の積分が2500mPas%未満であり、前記粘度はレオメータを用いて20℃および100s−1のせん断速度においてmPas単位で測定され、前記固形分含量は%で求められることを特徴とするプロセス。
  2. 乾燥状態にある分散液A)の粒子B)は100S/cmより大きい比電気伝導率を有する、請求項1に記載のプロセス。
  3. 分散液A)の中の前記導電性ポリマーの前記粒子B)は1〜100nmの平均直径を有する、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
  4. 前記分散液A)は、5000mg/kg未満の金属含有量を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプロセス。
  5. 分散液A)中の前記粒子B)は、一般式(I)もしくは一般式(II)もしくは一般式(X)の繰り返し単位、または式(I)および(II)の繰り返し単位もしくは式(I)および(X)の繰り返し単位もしくは式(II)および(X)の繰り返し単位、または式(I)、(II)および(X)の繰り返し単位を有する少なくとも1つのポリチオフェン
    Figure 2011521464
    (式中、
    Aは任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカルであり、
    Rは、互いに独立にH、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC〜C18−アルキルラジカル、任意に置換されたC〜C12−シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC〜C14−アリールラジカル、任意に置換されたC〜C18−アラルキルラジカル、任意に置換されたC〜C−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルであり、
    xは0〜8の整数であり、
    複数のRラジカルがAに結合されている場合、それらは同じであってもよいし異なっていてもよい)
    を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロセス。
  6. 分散液A)の中の前記ポリチオフェンはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプロセス。
  7. 前記粒子B)は、少なくとも1つの高分子アニオンをさらに含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプロセス。
  8. 前記高分子アニオンは、高分子カルボン酸またはスルホン酸のアニオンである、請求項7に記載のプロセス。
  9. 前記分散液A)は、前記分散剤D)として、有機溶媒、水または有機溶媒および水の混合物を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプロセス。
  10. 分散液A)は、架橋剤および/または表面活性物質および/またはさらなる添加剤をさらに含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプロセス。
  11. 前記電極体(2)の前記電極材料は、バルブ金属またはバルブ金属に匹敵する電気特性を有する化合物である、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のプロセス。
  12. 任意に置換されている電気伝導性のポリチオフェンを含む粒子、および分散剤を少なくとも含む分散液であって、前記分散液について、0.4%固形分〜5%固形分の積分範囲における、固形分含量の関数として表される粘度の積分が2500mPas%未満であり、前記粘度はレオメータを用いて20℃および100s−1のせん断速度においてmPas単位で測定され、前記固形分含量は%で求められること、およびポリチオフェンを含む前記粒子は、乾燥状態において、100S/cmより大きい比電気伝導率を有することを特徴とする、分散液。
  13. 請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のプロセスによって製造される電解コンデンサ。
  14. 電子回路における、請求項13に記載の電解コンデンサの使用。
  15. 請求項14に記載の電解コンデンサを含む電子回路。
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