JP2011515073A - ヒト化抗C5aR抗体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ヒトC5a受容体に結合するヒト化抗体ならびに治療薬および診断薬としてのその使用を対象とする。本発明はさらに、前記ヒト化抗体をコードする核酸配列および組換え宿主細胞におけるその発現を対象とする。特に、本発明は、ヒトC5a受容体に特異的に結合するマウス抗体7F3に由来するヒト化抗体を対象とする。

Description

本発明は、ヒトC5a受容体に結合するヒト化抗体ならびに治療薬および診断薬としてのその使用を対象とする。本発明はさらに、前記ヒト化抗体をコードする核酸配列および組換え宿主細胞におけるその発現を対象とする。特に、本発明は、ヒトC5a受容体に特異的に結合するマウス抗体7F3に由来するヒト化抗体を対象とする。
補体タンパク質C3〜C5はそれぞれタンパク質分解されると、アナフィラトキシンと呼ばれるシグナル伝達分子を有するアミノ末端カチオン性断片が生じる。これらの中で最も強力であるC5aは、最も広範な応答を誘発する。白血球の辺縁趨向および浸潤、顆粒結合性タンパク質分解酵素の放出、活性化酸素および窒素由来ラジカルの生成、血流および毛細管漏出の変化、ならびに平滑筋の収縮能力などの炎症反応の要素を考慮すると、C5a分子は「完全な」前炎症性メディエータである。ナノモル以下からナノモルのレベルでは、C5a分子は、すべての骨髄細胞系列(好中球、好酸球および好塩基球、マクロファージおよび単球)の走化性を誘発し、プロスタグランジンによって著しく増強される血管透過性および白血球循環を引き起こす。より高いナノモル濃度では、脱顆粒およびNADPHオキシダーゼの活性化が誘発される。生物活性のこの幅は、他の炎症性メディエータとは対照的である。C5aは、関節リウマチ、乾癬、敗血症、再潅流傷害および成人呼吸窮迫症候群を含めた様々な発病に関与するとされている(GerardおよびGerard、1994;MurdochおよびFinn、2000)。
C5aの活性は、C5aがその受容体(C5aR)に結合することによって媒介される。C5aRは、7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体のファミリーに属する。C5aRは、約1nMのKdを有する、C5aの高アフィニティー受容体であり、白血球を含めたいくつもの様々な細胞型に位置する。細胞当たりの受容体数は極めて多く、白血球当たり最大200,000部位である。受容体の生物学的活性化は、結合が飽和する範囲を上回った場合に起こる。
C5aR構造は、7回膜貫通型の受容体ファミリーに従い、細胞外N末端を有し、その後に細胞内ループおよび細胞外ループとして交互に並ぶヘリックス間ドメインでつながれた7回膜貫通ヘリックスが続き、細胞内C末端ドメインで終結する。C5aRは、伸長したN末端細胞外ドメインを含む。この大きなN末端ドメインは、IL−8およびfMet−Leu−Phe(FMLP)受容体ファミリーを含めた、ペプチドと結合するGタンパク質共役受容体に典型的である。
C5aRアンタゴニストによってC5a応答が阻害されると、他の補体成分に影響を及ぼすことなくC5aを介して媒介される急性炎症反応が低減する。この目的のために、C5aRペプチドアンタゴニストおよび抗C5a受容体抗体が以前に報告されている(Watanabeら、1995;Pellasら、1998;Konteatisら、1994;Kanekoら、1995;Morganら、1993)。例えば、WO95/00164には、C5aRのN末端ペプチド(残基9〜29)に対する抗体が記載されている。
また、WO03/062278にはC5aRに対する抗体が記載されている。こうしたマウス抗体のうち3つは、7F3、6C12および12D4と呼んだ。こうした抗体は、C5aとその受容体の結合を遮断し、in vitroでのC5aによって誘導される好中球の遊走を停止し、動物モデルにおける炎症を抑える点で極めて有効であることなど、優れた特性を有することが示された。慢性疾患を制御するためには、この抗体を数カ月または数年にわたり継続的に投与することが必要である可能性がある。しかし、マウス抗体を投与することの1つの欠点は、ヒト免疫系が、マウス抗体に対してそれ自体の抗体を生成し得ること(HAMA応答)である。HAMA応答は、血液からマウス抗体を迅速に除去することによってマウス抗体を中和する可能性があり、したがってマウス抗体のその標的への結合が阻止される。
HAMA応答の発生を回避するために、採用されている1つの戦略は、非エピトープ結合領域中の多くの「外来性」残基をヒト配列で置き換えることにより、マウス抗体を「ヒト化」することである。しかし、このプロセスは抗原性の喪失をもたらすことが多い。さらに、抗体をヒト化する技術分野の研究者らは、ヒトの療法において使用するためのすべての必要要件を有するヒト化抗体を確実に産生するための適切なガイドラインを特徴付けることに取り組んだ。
ヒト化手順の主要な問題は、抗原に対するアフィニティーの喪失であり(Jonesら、1986)、ある例では、抗原がタンパク質である場合は特に10分の1以下である(Verhoeyenら、1988)。当然、いかなるアフィニティーの喪失も極めて望ましくない。少なくとも、それは、いっそう多くのヒト化抗体を患者に注射しなければならず、費用がさらにかかり、有害作用のリスクが高まることを意味する。さらに重要なことには、アフィニティーが低減された抗体は、補体溶解、抗体依存性細胞傷害またはウイルス中和などの生物学的機能に劣る可能性がある。したがって、ヒト化に基づく治療用途または診断用途に有用である決定的な抗体の構造は現在予測できず、有用なヒト化抗体を得るためには、何回かの反復といくつかの技法の使用が必要とされることが多い。
診断方法および/または治療方法に使用することができる、代替および/または改良のC5aRアンタゴニストが必要とされている。特に、ヒトにおける前記診断方法および/または治療方法に適したヒト化抗C5aR抗体の開発が必要とされている。
C5aRに結合するが、劣った結合特異性および/または他の望ましくない特徴を有する多数のヒト化抗体が作製されている。しかし、本発明者らは、ヒトにおける診断方法および/または治療方法に使用するのに適した活性を有する関連のヒト化抗体をいくつか作製した。
第1の態様において、本発明は、
i)配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号48の1つまたは複数と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖、および/または
ii)配列番号34、配列番号35、配列番号36および配列番号39の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む免疫グロブリン重鎖
を含み、ヒトC5aRに結合する、実質的に精製された、かつ/または組換えのヒト化抗体を提供する。
好ましい実施形態において、免疫グロブリン重鎖は、配列番号34、配列番号35および配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。より好ましくは、免疫グロブリン重鎖は、配列番号36として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。
別の好ましい実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。より好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号31として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。
特に好ましい実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号31として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号36として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号42、配列番号43、配列番号44または配列番号45として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。より好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号43または配列番号45、より好ましくは配列番号45として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
一実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号31として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号34として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号42または配列番号43として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
別の実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号32として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号34として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号42または配列番号43として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
さらなる実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号34として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号42、配列番号43または配列番号44として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
別の実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号34として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号42、配列番号43、配列番号44または配列番号45として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
別の実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号31として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号35として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号43として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
さらなる実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号35として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号43として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
別の実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号32として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号36として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号43として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
さらなる実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号36として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。好ましくは、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号43として示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
好ましい実施形態において、抗体は、ヒトC5aRの第2細胞外ループにあるエピトープEEYFPP(配列番号38)に結合する。さらなる実施形態において、抗体は、ヒトC5aRのN末端にあるエピトープPDYGHYDDKDTLDLNTPVDKT(配列番号59)に検出可能に結合しない。
好ましい実施形態において、抗体は、ヒトC5aRに7F3の少なくとも8倍以内、より好ましくは7F3の少なくとも4倍以内、さらに好ましくは7F3の少なくとも3倍以内のアフィニティーで結合する。
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、ヒトC5aRを発現するヒト好中球に対して4.5nM未満のEC50を有する。代替の実施形態において、本発明の抗体は、3nM未満、2nM未満または1nM未満のEC50を有する。C5aRを発現するヒト好中球に対する抗体のEC50は、実施例3に記載のとおり決定することができる。
別の実施形態において、本発明の抗体は、ヒト好中球遊走を少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%低減することができる。さらなる実施形態において、本発明の抗体は、C5aRによって誘発されるヒト好中球遊走を遮断する能力が7F3よりも高い、好ましくは7F3の少なくとも2倍、さらに好ましくは7F3の5倍である。ヒト好中球遊走の低減は、実施例5に記載のとおり決定することができる。
さらなる実施形態において、本発明の抗体は、ヒト好中球を検出可能に活性化しない。好中球活性化は、実施例7に記載のとおり、CD62LおよびCD11bの発現および/またはスーパーオキシド産生を分析するによって決定することができる。
さらに別の実施形態において、本発明の抗体は、ex vivoで血液から好中球または単球を検出可能に枯渇させない。ex vivoでの好中球または単球の枯渇は、実施例8および9に記載のとおり決定することができる。
さらなる実施形態において、本発明の抗体は、抗体濃度30μg/ml未満、より好ましくは10μg/ml未満、より好ましくは5μg/ml未満、より好ましくは1μg/ml未満で、C5aによって誘発されるヒト好中球中へのCa2+流入を遮断することができる。C5aによって誘発されるヒト好中球中へのCa2+流入の遮断は、実施例6に記載のとおり決定することができる。
一例を挙げると、本発明の抗体は、非枯渇型(non-depleting)および非活性化型(non-activating)である。本明細書に記載のこのような抗体の例は、hAb−Qである。代替の実施形態において、本発明の抗体は、枯渇型(depleting)および非活性化型である。本明細書に記載のこのような抗体の例は、hAb−Nである。
好ましい実施形態において、
i)免疫グロブリン軽鎖は、配列番号40および配列番号41の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、
ii)免疫グロブリン重鎖が、配列番号42、配列番号43、配列番号44および配列番号45の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。より好ましくは、
i)免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、
ii)免疫グロブリン重鎖は、配列番号45と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
ヒト化抗体は、当技術分野で知られている任意の適当な構造を有することができる。例としては、それだけに限らないが、2本の重鎖および2本の軽鎖からなる4ポリペプチド鎖構造、単鎖抗体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)またはテトラボディ(tetrabody)、ならびに抗体フラグメント、例えば、それだけに限らないが、Fabフラグメントまたは単一ドメイン抗体が挙げられる。
別の態様において、本発明は、配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号48の1つまたは複数と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、実質的に精製された、かつ/または組換えの免疫グロブリン軽鎖を提供する。
好ましい実施形態において、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号31と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。
さらなる態様において、本発明は、配列番号34、配列番号35、配列番号36および配列番号39の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、実質的に精製された、かつ/または組換えの免疫グロブリン重鎖を提供する。
好ましい実施形態において、免疫グロブリン重鎖は、配列番号36と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む。
別の態様において、本発明は、本発明の免疫グロブリン軽鎖および/または本発明の免疫グロブリン重鎖を含み、ヒトC5aRに結合する、実質的に精製された、かつ/または組換えの抗体を提供する。
さらに、本発明の抗体およびこの抗体に直接的または間接的に結合している治療薬を含むコンジュゲートも提供される。治療薬の例としては、それだけに限らないが、細胞毒、放射性同位体(例えば、ヨウ素−131、イットリウム−90もしくはインジウム−111)、免疫調節薬、抗血管新生薬、抗新血管形成薬および/または他の血管形成薬、毒素、抗増殖薬、アポトーシス促進剤、化学療法剤および治療用核酸が挙げられる。
一実施形態において、毒素は緑膿菌外毒素またはその誘導体である。
さらなる実施形態において、治療薬は、リンカーを介して抗体に間接的に結合している。例としては、それだけに限らないが、4−(4’アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)、3−アセチルフェニル酸性酸(AcPac)、4−メルカプト−4−メチル−ペンタン酸(アミド)およびその誘導体が挙げられる。
別の態様において、本発明は、本発明の抗体およびこの抗体に直接的または間接的に結合している検出可能な標識を含むコンジュゲートを提供する。適当な標識の例としては、それだけに限らないが、放射標識、蛍光標識、酵素標識および造影剤が挙げられる。
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体もしくはその鎖、本発明の免疫グロブリン軽鎖、本発明の免疫グロブリン重鎖、ならびに/または本発明のコンジュゲートをコードする単離および/もしくは外因性ポリヌクレオチドを提供する。
好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号52から57のいずれか1つとして示される配列を含む。
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。好ましくは、ベクターは発現ベクターである。より好ましくは、ポリヌクレオチドは、プロモーターと作動可能に連結している。
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよび/または本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞または動物細胞などの任意の細胞型とすることができる。
さらに、本発明の細胞を含む非ヒトトランスジェニック生物も提供される。
さらに、本発明の抗体、本発明の免疫グロブリン軽鎖、本発明の免疫グロブリン重鎖、本発明のコンジュゲート、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターならびに/または本発明の宿主細胞および担体を含む組成物も提供される。
別の態様において、本発明は、抗体を産生するプロセスであって、ポリヌクレオチドが発現され、抗体が産生されるように、本発明の宿主細胞を培養することを含み、宿主細胞が、本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプロセスを提供する。
一実施形態において、免疫グロブリン軽鎖および免疫グロブリン重鎖は、一続きのポリヌクレオチド上の2つの別個のオープンリーディングフレームによってコードされる。
好ましくは、このプロセスは、宿主細胞培養物から抗体を回収することをさらに含む。
さらなる態様において、本発明は、ヒトC5aRとそのリガンドとの相互作用を阻害するための方法であって、細胞を、本発明の抗体または本発明のコンジュゲートに曝露することを含む方法を提供する。
好ましくは、リガンドはヒトC5aである。
好ましくは、抗体またはコンジュゲートは、細胞に対する少なくとも一部のリガンド結合を阻止する。
別の態様において、本発明は、細胞におけるヒトC5aR活性を阻害するための方法であって、細胞を、本発明の抗体または本発明のコンジュゲートに曝露することを含む方法を提供する。
2つの前述の態様に関して、これらの方法は、in vitroでもin vivoでも実施することができる。
別の態様において、本発明は、対象において障害を治療または予防する方法であって、本発明の抗体、本発明のコンジュゲート、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞および/または本発明の組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
一実施形態において、障害は、自己免疫疾患などの免疫病理学的障害である。
別の実施形態において、障害は、急性炎症または慢性炎症などの炎症性疾患である。
別の実施形態において、免疫病理学的障害または炎症性疾患に白血球遊走および/または白血球活性化が関与する。
さらなる実施形態において、免疫病理学的障害または炎症性疾患に補体活性化が関与する。
治療または予防することができる障害の例としては、それだけに限らないが、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、間質性肺炎、アナフィラキシー応答、過敏性応答、薬物アレルギー、虫刺されアレルギー、炎症性腸疾患、脊椎関節症、強皮症、乾癬、皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹、血管炎、関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、若年発症糖尿病、腎炎(nephritides)、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病、移植片拒絶、アテローム性動脈硬化症、皮膚または器官の白血球浸潤を伴う癌、再灌流傷害、卒中発作、成人呼吸窮迫症候群、血液学的悪性疾患、サイトカイン誘導毒性、多発性筋炎、皮膚筋炎、類天疱瘡、アルツハイマー病、肉芽腫性疾患、血友病性滑膜炎、痛風、感染に伴う有害な炎症反応、SAR、敗血症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ、抗リン脂質抗体症候群、加齢黄斑変性、膜性増殖性糸球体腎炎およびデンスデポジット病が挙げられる。
本発明の方法は、他の既知の療法と組み合わせて実施することができる。したがって、一実施形態において、この方法は、障害を治療または予防するための少なくとも1つの他の化合物を投与することをさらに含む。このような他の療法は、同時または順次に提供することができる。
当業者に理解されるように、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクターおよび/または宿主細胞は、対象に投与される場合、in vivoで抗体またはコンジュゲートが発現されるような適当な条件下に置かれる。
好ましくは、抗体、コンジュゲート、ポリヌクレオチド、ベクターおよび/または宿主細胞は、本発明の組成物として投与される。
別の態様において、本発明は、対象において治療薬を炎症部位に送達するための方法であって、本発明のコンジュゲートまたはそれをコードするポリヌクレオチドを対象に投与することを含む方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は、遺伝物質を、C5aRを提示する細胞に導入するための方法であって、この細胞を、本発明の抗体または本発明のコンジュゲートと接触させることを含み、抗体またはコンジュゲートが遺伝物質に結合している、またはそれと会合している方法を提供する。
遺伝物質の例としては、DNA、RNAまたはその組合せが挙げられる。好ましい実施形態において、遺伝物質は、少なくとも部分的に二本鎖のDNAまたは少なくとも部分的に二本鎖のRNAである。
好ましい実施形態において、C5aRを提示する細胞は、白血球、例えば、顆粒球(例えば、好中球、好塩基球、好酸球)、単球、肥満細胞および形質細胞様樹状細胞、ならびに組織中の免疫細胞、例えば、マクロファージ(例えば、小膠細胞、肝クッパー細胞、腎糸球体メサンギウム細胞)、Bリンパ球、Tリンパ球、血管内皮細胞、心筋細胞、星状細胞、神経幹細胞、希突起膠細胞、滑膜細胞、関節軟骨細胞、刺激肝細胞、気管支上皮細胞、角化細胞および胸腺細胞からなる群から選択される。特に好ましい実施形態において、C5aRを提示する細胞は、白血球、例えば、顆粒球(例えば、好中球、好塩基球、好酸球)、単球、肥満細胞および形質細胞様樹状細胞、ならびに組織中の免疫細胞、例えば、マクロファージ(例えば、小膠細胞、肝クッパー細胞、腎糸球体メサンギウム細胞)からなる群から選択される。
さらに別の態様において、本発明は、試料中のヒトC5aRの存在または非存在を検出する方法であって、試料を、本発明の抗体および/または本発明のコンジュゲートと接触させること、ならびに試料をヒトC5aRと抗体またはコンジュゲートとの結合について分析することを含む方法を提供する。
試験することができる適当な試料の例としては、必ずしもそれだけに限らないが、血液、血清、血漿ならびに細胞または組織生検が挙げられる。
別の態様において、本発明は、対象において障害を診断するための方法であって、対象またはそれから得られた試料を、本発明の抗体または本発明のコンジュゲートと接触させること、および対象または試料をヒトC5aRと抗体またはコンジュゲートとの結合について分析することを含む方法を提供する。
したがって、この方法は、in vitroでもin vivoでも実施することができる。
一実施形態において、この方法は、対象から得られた組織標本または組織もしくは体液の亜分画を使用してin vitroで実施される。
別の実施形態において、この方法は、対象において抗体とC5aRを提示する細胞との複合体が形成されるような条件下で、造影剤で標識した本発明の抗体を対象に投与すること、およびこの複合体をイメージングすることを含む。
好ましくは、障害は免疫病理学的障害である。
さらに、対象において障害を治療または予防するための医薬品を製造するための、本発明の抗体、本発明のコンジュゲート、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞および/または本発明の組成物の使用も提供される。
さらに、対象において治療薬を炎症部位に送達するための医薬品を製造するための、本発明のコンジュゲートまたはそれをコードするポリヌクレオチドの使用も提供される。
さらに、対象において障害を治療または予防するための医薬品としての、本発明の抗体、本発明のコンジュゲート、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞および/または本発明の組成物の使用も提供される。
さらに、対象において治療薬を炎症部位に送達するための医薬品としての、本発明のコンジュゲートまたはそれをコードするポリヌクレオチドの使用も提供される。
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体、本発明のコンジュゲート、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞および/または本発明の組成物を含むキットを提供する。
明らかであるように、本発明の一態様の好ましい特色および特徴は、本発明の多くの他の態様に適用可能である。
当業者に理解されるように、本発明の多くの態様において、定義済みの分子(抗体または免疫グロブリンなど)は、指定の配列番号の配列を含むこととは対照的に、前記配列から本質的になる、またはより好ましくはそれからなることが好ましい。
本発明は、以下の非限定的な実施例によって、また添付の図面を参照して以下に説明する。
図1は、マウス7F3軽鎖Vk領域に対する最大の相同性を有するヒトIg軽鎖配列のClustalWアラインメントを示す図である。7F3について規定されたCDRを四角で囲んだ。コンセンサスフレームワーク配列が示される(hVkFW Cons)。 図2は、マウス7F3重鎖Vh配列に対する最大の相同性を有するヒトIgの重鎖V領域配列(A)およびJ領域配列(B)のClustalWアラインメントを示す図である。7F3について規定されたCDRを四角で囲んだ。7F3 CDRを移植するために、示されたV領域(hVhvFW Cons)およびJ領域(hVhjFW Cons)に関するコンセンサスフレームワーク配列を連結して、コンセンサス配列(hVhFW Cons)を作製した(注意:D領域はCDR−H3内に含まれる)。 図2Aの続き 図3は、図1のコンセンサスヒトVkフレームワーク配列と、マウス7F3 Vk配列とのアラインメントを使用して、ヒト化7F3 Vk軽鎖配列、h7Vkを作製したことを示す図である。マウス7F3 CDR(囲み)を、hVkFWコンセンサスフレームワーク配列中に移植した。アスタリスク付の3つのアミノ酸を、マウス7F3フレームワーク配列に逆変異させた。 図4は、ヒト化RNOK203VL配列とマウス7F3 Vk配列とのアラインメントを使用して、ヒト化7F3 Vk軽鎖配列、h7aVkを作製したことを示す図である。マウス7F3 CDR(囲み)を、RNOK203VLフレームワーク配列中に移植した。 図5は、KV2F−HUMAN由来VLCD18−Q配列とマウス7F3 Vk配列とのアラインメントを使用して、ヒト化7F3 Vk軽鎖配列、h7bVkを作製したことを示す図である。マウス7F3 CDR(囲み)を、VLCD18−Qフレームワーク配列中に移植した。 図6は、ヒト化7F3 Vk配列とマウス7F3 Vk配列とのアラインメントを示す図である。コンセンサス配列h7F3 VkConsは、3つのヒト化配列のコンセンサスである。CDRを四角で囲んだ。ヒト化7F3 Vk配列間の差異を、黒の背景に白字で示した。 図7は、図2Aおよび2BのコンセンサスヒトVhフレームワーク配列と、マウス7F3 Vh配列とのアラインメントを使用して、ヒト化7F3 Vh重鎖配列、h7Vhを作製したことを示す図である。マウス7F3 CDR(囲み)を、hVhFWコンセンサスフレームワーク配列中に移植した。アスタリスク(*)付のアミノ酸を、マウス7F3フレームワーク配列に逆変異させた。#付のアミノ酸を、本文中で議論したような代替の残基に変異させた。 図8は、ヒトSGI−VH配列とマウス7F3 Vh配列とのアラインメントを使用して、ヒト化7F3 Vh重鎖配列、h7aVhを作製したことを示す図である。マウス7F3 CDR(囲み)を、SGI−VHフレームワーク配列中に移植した。アスタリスク(*)付のアミノ酸を、マウス7F3フレームワーク配列に逆変異させた。 図9は、ヒトHG3配列とマウス7F3 Vh配列とのアラインメントを使用して、ヒト化7F3 Vh重鎖配列、h7bVhを作製したことを示す図である。マウス7F3 CDR(囲み)を、HG3フレームワーク配列中に移植した。アスタリスク(*)付のアミノ酸を、マウス7F3フレームワーク配列に逆変異させた。 図10は、ヒト化7F3 Vh配列とマウス7F3 Vh配列とのアラインメントを示す図である。コンセンサス配列h7F3VhConsは、3つのヒト化配列のコンセンサスである。CDRを四角で囲んだ。ヒト化7F3 Vh配列間の差異を、黒の背景に白字で示した。 図11は、ヒト好中球上のhC5aRからの、ヒト化7F3抗体およびマウス7F3による125I−C5aの置換を比較する、競合的リガンド結合アッセイを示す図である。 図12は、L1.2/hC5aRトランスフェクタント上のhC5aRからの、ヒト化7F3抗体およびマウス7F3による125I−C5aの置換を比較する競合的リガンド結合アッセイを示す図である。 図12は、L1.2/hC5aRトランスフェクタント上のhC5aRからの、ヒト化7F3抗体およびマウス7F3による125I−C5aの置換を比較する競合的リガンド結合アッセイを示す図である。 図12は、L1.2/hC5aRトランスフェクタント上のhC5aRからの、ヒト化7F3抗体およびマウス7F3による125I−C5aの置換を比較する競合的リガンド結合アッセイを示す図である。 図13は、x軸上にlog10(上のパネル)および線形(下のパネル)スケールでプロットした、4℃でのヒト好中球に対する抗C5aR抗体の飽和結合を示す図である。 図14は、ペプチドELISAを示す図である:ヒトC5aRの第2細胞外ループ由来の12マー配列(各々1つずつずれた)を含む一連の重複するペプチド(1〜22番)および配列番号37由来の残基173〜205を含む33マー(23番)に対する、ヒト化抗C5aR抗体hAb−J(パネルA)およびhAb−Q(パネルB)の結合。ヒトC5aRの第2細胞外ループ由来の12マー配列(A1番)、単一のAla変異を有する12マーを含む一連の変異ペプチド(A2〜A13番)、およびスクランブル化ペプチド(A14番)に対する、hAb−J(パネルC)およびhAb−Q(パネルD)の結合。 図15は、種々の希釈でELISAプレート上を被覆したペプチドPEP1(配列番号37の残基9〜29)に対する、ヒト化抗C5aR mAbのhAb−JおよびQまたは抗C5aR mAb S5/1(5μg/m1)の結合を示す図である。 図16は、走化性アッセイを示す図である:5μg/mlの7F3および種々のヒト化7F3抗体の存在下での、1nMのC5aに対するヒト好中球の遊走。 図17は、抗C5aR抗体hAb−Q(閉じたひし形)および7F3(白い四角)による、C5aによって誘発されるヒト好中球の走化性の阻害を示す図である。4つの別個の実験からの平均(±標準誤差)結果を、抗体なしの対照試料の最大遊走の百分率(上パネル)として、または、遊走細胞の平均数(下パネル)として示す。x軸上の単位は、μg/m1でのlog10Ab濃度である。 図18は、親マウス抗体7F3ならびにヒト化抗体JおよびQによる、C5aによって駆動されるhC5aR/L1.2トランスフェクタント細胞遊走の阻害を示す図である。 図19は、C5aによって誘発されるヒト好中球の走化性が、高濃度のヒト化抗C5aR抗体hAb−Qとのプレインキュベーション後に抑制されたことを示す図である。 図20は、種々の濃度のヒト化抗C5aR抗体hAb−Qと共にプレインキュベートした細胞の、C5aによって誘発される走化性の前および後に、ヒト好中球上の未結合のC5aRのレベルと結合した抗C5aR抗体hAb−Qのレベルとの間で観察された、半比例の関係を示す図である。 図21は、種々の濃度のヒト化抗C5aR抗体hAb−Qと共にプレインキュベートした、ヒト好中球上の結合した抗C5aR抗体hAb−Qのレベル(C5aによって誘発される走化性の前および後)と細胞遊走の阻害との間で観察された関係を示す図である。 図22は、種々の濃度のヒト化抗C5aR抗体hAb−Qと共にプレインキュベートしたヒト好中球上の、C5aによって誘発されるCD11b発現の阻害を示す図である。 図23は、種々の濃度のヒト化抗C5aR抗体hAb−Qと共にプレインキュベートしたヒト好中球上の、C5aによって誘発されるCD62Lの下方制御の阻害を示す図である。 図24は、ヒト化抗C5aR抗体hAb−QおよびhAb−J、PBSまたは顆粒球活性化因子fMLPとヒト全血との1時間のインキュベーション後の、好中球上のCD11b(パネルA)およびCD62L(パネルB)の発現を示す図である。 図25は、ヒト化抗C5aR抗体hAb−GもしくはhAb−J、またはC5aとヒト全血との20分間のインキュベーション後の、PBS対照に対する好中球上のCD11b(パネルA)およびCD62L(パネルB)発現を示す図である。 図26は、hAb−Q、hIgGアイソタイプ対照抗体単独またはhIgG抗体+100nM ヒトC5aと共にインキュベートしたヒト全血における、相対的なCD11b発現(パネルA)およびCD62L発現(パネルB)の変化によって示される、好中球の活性化を示す図である。 図27は、hAb−Q(抗C5aR abともいう)それ自体は、固相に結合したヒト好中球がスーパーオキシドを産生するように刺激することはないが、C5aによる産生の惹起と反対の作用をすることを示す図である。 図28は、ヒト化抗C5aR抗体hAb−Qまたは対照(リツキシマブ、無関係のヒトIgG4、PBS)との4時間のex vivoインキュベーション後の、ヒト血液1ml当たりのB細胞、単球および好中球の平均数(±標準偏差)を示す図である。 図29は、ヒト化抗C5aR抗体hAb−Qまたは対照抗体(リツキシマブ、無関係のヒトIgG4)との4時間のex vivoインキュベーション後の、ヒト血液1ml当たりのB細胞、単球および好中球の、PBS対照に対する平均%枯渇(±標準偏差)を示す図である。 図30は、1%ウサギ補体の存在下での、100μg/mlのhAb−Q、リツキシマブおよびhIgG4、または20μg/mlのポリクローナル抗C5aR抗体とのインキュベーション後の、特異的CDC(%ToPro3+ve(溶解済み)Ramos E2細胞)を示す図である。 図31は、10%ヒト血清の存在下での、1〜100μg/mlのhAb−Q、リツキシマブおよびhIgG4とのインキュベーション後の、特異的CDC(%非生存Ramos E2細胞)を示す図である。10%熱不動化ウシ血清と共にインキュベートした各試料について、非特異的溶解が既に差し引かれている。 図32は、特異的ADCC(「培地のみ」および「標的のみ」のバックグラウンドを差し引いた後の、「標的+エフェクター」試料における%標的細胞溶解):10%熱不動化胎児ウシ血清を含む培地中で、ヒトPBMCエフェクター細胞+100μg/ml抗体と共にインキュベートした後の、%非生存(TP3+ve)Ramos E2標的細胞を示す図である。 図33は、特異的ADCC(「培地のみ」および「標的のみ」のバックグラウンドを差し引いた後の、「標的+エフェクター」試料における%標的細胞溶解):10%ヒトドナー血清を含む培地中で、ヒトドナーPBMCエフェクター細胞+1〜100μg/mlの抗体と共にインキュベートした後の、%非生存(TP3+ve)Ramos E2標的細胞を示す図である。 図34は、炎症性関節炎のモデルにおける疾患の進行を示す図である。10mg/kg 抗hC5aR抗体G、MおよびNの5日目の腹腔内投与後の、hC5aRノックインマウス(1群当たりn=6)におけるK/BxN血清によって誘発される炎症の復帰が、群平均臨床スコアの変化によって示される。 図35は、炎症性関節炎のモデルにおける疾患の進行を示す図である。1〜10mg/kgの抗hC5aR抗体CおよびJの5日目の腹腔内投与後の、hC5aRノックインマウス(1群当たりn=4〜5)におけるK/BxN血清によって誘発される炎症の復帰が、群平均臨床スコアの変化によって示される。 図36は、炎症性関節炎のモデルにおける疾患の進行を示す図である。1〜10mg/kgのhAb−Qの5日目の腹腔内投与後の、hC5aRノックインマウス(1群当たりn=10+)におけるK/BxN血清によって誘発される炎症の復帰が、群平均の足サイズ(A)および臨床スコア(B)の変化によって示される。 図37は、種々の用量のヒト化抗C5aR抗体、対照抗体またはPBSのin vivo投与後の、占有されたC5aRの経時的なレベルを示す図である。 図38は、種々の用量のヒト化抗C5aR抗体、対照抗体またはPBSのin vivo投与後の、未結合のC5aRの経時的なレベルを示す図である。 図39は、関節の炎症を有するマウスに5日目に治療的に投与されたhAb−Qの、経時的な血清濃度を示す図である。 図40は、0日目および2日目にK/BxN血清を注射し、5日目に10mg/kgのヒト化抗C5aR抗体を注射したマウスにおける、臨床スコア(足および関節における炎症のレベル)と、占有されたC5a受容体のレベルと、hAb−Qの血清濃度との間の関係を示す図である。 図41は、0日目および2日目にK/BxN血清を注射し、5日目に3mg/kgのヒト化抗C5aR抗体を注射したマウスにおける、臨床スコア(足および関節における炎症のレベル)と、占有されたC5a受容体のレベルと、hAb−Qの血清濃度との間の関係を示す図である。 図42は、0日目および2日目にK/BxN血清を注射し、5日目に1mg/kg ヒト化抗C5aR抗体を注射したマウスにおける、臨床スコア(足および関節における炎症のレベル)と、占有されたC5a受容体のレベルと、hAb−Qの血清濃度との間の関係を示す図である。 図43は、トランスジェニックマウスでの毒物学研究および薬理学研究における、hAb−Qに関する統合されたPK/PDモデルの模式図を示す図である。 図44は、毒物学研究(注釈中Toxで示す)および薬理学研究(注釈中KRNで示す)における、hAb−Q(抗C5aR abともいう)の種々の静脈内、皮下および腹腔内投薬に関する、モデルが予測しそして観察された濃度(左)および占有率(右)対時間を示す図である。毒物学研究のために、PK試料を、投薬後1日目および投薬後43日目に採取した。43日目のデータを定常状態と仮定し、6回目の投薬を追跡するために考慮した。平均群値:ひし形、個々のマウス:白丸、標的コンパートメントを介してフィットさせたモデル:太線。 図45は、薬理学研究において実験的に誘発した関節炎の阻害に対するhAb−Qの影響に関する、PK/PDモデルの模式図を示す図である。このモデルは、図43中に示したPK/PDモデルで計算した占有率を組み込んでいる。 図46は、トランスジェニックマウスにおける、5日目に投与されたhAb−Qの種々の腹腔内投薬での、0日目の炎症チャレンジ後の占有率(左)および足サイズの変化(右)対時間を示す図である。平均郡測定値:色で塗りつぶしたひし形。個々のマウス値:色つきの中白の丸。各群におけるフィットしたモデル:色つき線。 図47は、ヒトでの予測のために適用したPK/PDモデルの模式図を示す図である。このモデルは、標的媒介性の体内動態で増強された、典型的なIgGパラメーターを使用する2コンパートメントモデルからなる。V=中央体積。V=末梢体積。CL=クリアランス。Q=分布クリアランス。koff/kon=会合/解離に関する速度定数。ターンオーバー=標的を刷新し、結合した抗体を除去するのにかかる時間。2標的コンパートメントを使用して、標的が血液の内側および外側の両方に分布すると考えられることを反映した。 図48は、抗C5aR(hAb−Q)の静脈内投薬後の、薬物動態(左)および占有率(右)に関するモデル予測を示す図である。定量化の下限を水平線によって示す。 図49は、抗C5aR(hAb−Q)の皮下投薬後の、薬物動態(左)および占有率(右)に関するモデル予測を示す図である。定量化の下限を水平線によって示す。
全般的な技術
別段に具体的な定義がなされない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、抗体技術、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学)により一般的に理解される意味と同じ意味を有すると理解されるものとする。
別段に示されない限り、本発明で用いられる組換えタンパク質法、細胞培養法、および免疫学的技法は、当業者によく知られた標準的な手順である。このような技法は、J.Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley and Sons(1984);J.Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989);T.A.Brown(編)、「Essential Molecular Biology:A Practical Approach」、第1巻および第2巻、IRL Press(1991);D.M.GloverおよびB.D.Hames(編)、「DNA Cloning:A Practical Approach」、第1〜4巻、IRL Press(1995および1996);ならびにF.M.Ausubelら(編)、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience(1988、現在までのすべての改定を含めた);HarlowおよびDavid Lane(編)、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory(1988);ならびにJ.E.Coliganら(編)、「Current Protocols in Immunology」、John Wiley & Sons(現在までのすべての改定を含めた)などの出典中の文献全体において記載および説明されている。
精選された定義
本明細書で用いられる「C5a受容体」、「C5aR」、「C5aR1」、または「ヒトC5aR」、およびその突然変異体は、当技術分野でC5aアナフィラトキシン受容体およびCD88抗原としても知られているヒト補体成分5受容体1を指す。C5aRは、7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体ファミリーに属し、C5aに結合する(GerardおよびGerard、1991)。ヒトC5aRのアミノ酸配列の例は配列番号37に示されているが、この分子の天然の対立遺伝子突然変異体もまた「C5aR」という用語によって包含されることを当業者は認識しているであろう。ヒトC5aRの各ドメインは、以下:
アミノ酸1〜37 細胞外ドメイン:N末端
アミノ酸38〜61 膜貫通ドメイン
アミノ酸62〜71 細胞内ドメイン
アミノ酸72〜94 膜貫通ドメイン
アミノ酸95〜110 細胞外ドメイン:細胞外ループ1
アミノ酸111〜132 膜貫通ドメイン
アミノ酸133〜149 細胞内ドメイン
アミノ酸150〜174 膜貫通ドメイン
アミノ酸175〜206 細胞外ドメイン:細胞外ループ2
アミノ酸207〜227 膜貫通ドメイン
アミノ酸228〜242 細胞内ドメイン
アミノ酸243〜264 膜貫通ドメイン
アミノ酸265〜283 細胞外ドメイン:細胞外ループ3
アミノ酸284〜307 膜貫通ドメイン
アミノ酸308〜350 細胞内ドメイン:C末端
のとおりに規定されている。
本明細書で用いられる「対象」という用語は、任意の動物、特に、ヒト、ウマ、ウシ、ネコ、およびイヌなどの哺乳動物を意味し、適切な場合は、「患者」という用語と互換的に用いることができる。対象はヒトであることが好ましい。
本明細書で用いられる「治療すること」、「治療する」、または「治療」、およびその変化形は、障害の少なくとも1つの症状を軽減または除去するのに十分な治療有効量の本発明の抗体を投与することを包含する。
本明細書で用いられる「予防すること」、「予防する」、もしくは「予防」、またはその変化形は、疾患の少なくとも1つの症状を発症することから対象を保護すること、または障害の症状の重症度を軽減することを指す。
本明細書で用いられる「細胞の曝露」という用語は、C5aRが細胞に存在する場合に、抗体がヒトC5aRに接触/結合することが可能であるように、抗体が供給されることを指す。
「50%の有効濃度」(「EC50」と略記する)という用語は、本発明の抗体が標的とする分子に対する所与の効果(例えば、ヒトC5aRに対するヒトC5aの結合を阻害/置換すること)の50%に必要とされる該抗体の濃度を表す。より低値のEC50はより強力な抗体に対応することが、当業者により理解される。
本明細書で用いられる「阻害すること」という用語は、規定の活性を低減すること、またおそらくは、完全に除去することを指す。規定の活性は、少なくとも50%低減されることが好ましく、より好ましくは少なくとも75%、またさらにより好ましくは少なくとも90%低減される。
本明細書で用いられる「約」という用語は、具体的な値の+/−5%の範囲を指す。
本明細書全体において、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変化形は、言及される要素、十進数、もしくはステップ、または複数の要素、複数の十進数、もしくは複数のステップの群の包含を含意するが、他の任意の要素、十進数、もしくはステップ、または複数の要素、複数の十進数、もしくは複数のステップの群の除外を含意するものではないと理解される。ある実施形態では、ある分子が規定の配列「から本質的になる」。別の実施形態では、ある分子が規定の配列「からなる」。
ヒト化抗C5aR抗体
免疫グロブリンという用語は、4本の鎖すべてがジスルフィド結合により相互に結合される、1対の低分子量の軽(L)鎖および1対の重(H)鎖である2対のポリペプチド鎖からなる、構造的に関連する糖タンパク質のクラスを指す。免疫グロブリンの構造は十分に特徴付けられており、例えば、「Fundamental Immunology」、第7章(Paul,W.編、第2版、Raven Press、N.Y.(1989))を参照されたい。略述すると、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略記する)および重鎖定常領域(本明細書ではCと略記する)を含むことが典型的である。重鎖定常領域は、3つのドメインC1、C2、およびC3を含むことが典型的である。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略記する)および軽鎖定常領域(本明細書ではCと略記する)を含むことが典型的である。軽鎖定常領域は、1つのドメインCを含むことが典型的である。V領域およびV領域は、相補性決定領域(CDR)とも称し、フレームワーク領域(FR)と称するより保存的な領域が間に散在する、超可変的な領域(または構造的に規定されるループの配列および/もしくは形態において超可変的であり得る超可変領域)へとさらに細分することができる。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、少なくともVドメインおよびVドメインを含む。
各VおよびVは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端へと並ぶ3つのCDRおよび4つのFRからなることが典型的である(ChothiaおよびLesk、1987も参照されたい)。この領域内にあるアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD.(1991)(本明細書では、Kabatにおける、またはKabatによる可変ドメイン残基の番号付け、などの表現は、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについてのこの番号付けシステムを指す)に記載の方法により実施される。この番号付けシステムを用いると、あるペプチドの実際の直鎖アミノ酸配列は、該可変ドメインのFRもしくはCDRの短縮または同FRもしくはCDRへの挿入に対応する、より少数であるかまたは追加のアミノ酸を含有する場合がある。
本明細書で用いられる「ヒト化抗体」という用語は、本明細書において、該親抗体の抗原結合特性を保持するかまたは実質的に保持するが、ヒトにおける免疫原性はより低度な非ヒト抗体、典型的にはマウス抗体に由来する抗体を指す。構造的および機能的な特色により定義される本発明の抗体により、「ヒト化抗体」という用語は、「抗体」と互換的に用いられる。
本明細書で用いられる相補性決定領域(CDR)という用語は、免疫グロブリン結合部位の可変フラグメント(Fv)領域の結合アフィニティーおよび結合特異性を共に規定するアミノ酸配列を指す。
本明細書で用いられるフレームワーク領域(FR)という用語は、CDRの間に挟み込まれるアミノ酸配列を指す。抗体のこれらの部分は、CDRを適切な指向性に保持する(CDRが抗原に結合することを可能とする)のに用いられる。軽鎖または重鎖の可変領域は、フレームワーク、また典型的に3つのCDRを含む。
本明細書で用いられる定常領域(CR)という用語は、エフェクター機能を付与する抗体分子の部分を指す。対象のヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。重鎖定常領域は、5つのアイソタイプ:アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミューのいずれかから選択することができる。さらに、各サブクラスの重鎖(重鎖のIgGサブクラスなど)が異なるエフェクター機能の一因となり、したがって、所望の重鎖定常領域を選択することにより、所望のエフェクター機能を有する抗体を産生することができる。好ましい重鎖定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、ガンマ3(IgG3)、およびガンマ4(IgG4)であり、より好ましくはガンマ4(IgG4)である。突然変異Ser228Pro(「P」突然変異と称する)および/またはLeu235Glu(「E」突然変異と称する)を伴うガンマ4(IgG4)アイソタイプの結晶化可能フラグメント(Fc)領域がより好ましい。特に好ましい重鎖定常領域配列は、配列番号42〜45として示される。軽鎖定常領域は、カッパ型またはラムダ型であり得、カッパ型であることが好ましい。特に好ましい軽鎖定常領域配列は、配列番号40および41として示される。
好ましい実施形態において、本明細書に記載の免疫グロブリン軽鎖可変領域は、本明細書に記載の免疫グロブリン軽鎖定常領域に直接的に接合される。同様に、さらに好ましい実施形態において、本明細書に記載の免疫グロブリン重鎖可変領域は、本明細書に記載の免疫グロブリン重鎖定常領域に直接的に接合される。したがって、好ましい実施形態において、配列番号31として示されるアミノ酸配列のC末端は配列番号41として示されるアミノ酸配列のN末端に直接的に接合され、配列番号36として示されるアミノ酸配列のC末端は配列番号45として示されるアミノ酸配列のN末端に直接的に接合される。
標準的な組換えDNA法を用いることにより、免疫グロブリン重鎖または軽鎖の可変領域および定常領域を記載のとおりに接合させて、((1つまたは複数の)前記免疫グロブリン鎖を産生するのに)適する宿主において発現し得る(接合された可変ドメインおよび定常ドメインをコードする)ポリヌクレオチドを作製することもでき、ペプチド化学反応を用いることにより、接合された可変ドメインおよび定常ドメインを合成することもできることを、当業者は理解するであろう。
本発明のヒト化抗体は、親抗体、すなわち、受託番号第00110609号の下に、2000年11月6日にECACCに寄託されたハイブリドーマにより産生された、7F3と称するモノクローナル抗体の結合特性の大部分を保持している。特に、本発明のヒト化抗体は、このようなヒト化抗体を産生するのに用いられた親抗体により認識される抗原に特異的に結合する能力を保持する。該ヒト化抗体は、該親抗体と同じであるかまたは実質的に同じ抗原結合アフィニティーおよび抗原結合アビディティを示すことが好ましい。理想的には、該抗体のアフィニティー(K)は、該親抗体のアフィニティーの10倍を超えず、より好ましくは約5倍を超えず、該アフィニティーは、該親抗体のアフィニティーの3倍を超えないことが最も好ましい。抗原結合アフィニティーをアッセイするための方法は当技術分野においてよく知られており、これには、最大半量結合アッセイ、競合アッセイ、およびスカチャード分析が含まれる。適切な抗原結合アッセイは、本出願において記載されている(例えば、実施例3を参照されたい)。
当業者が理解するとおり、「アビディティ」は、抗体および抗原など2つの分子間における相互作用の全体的な強さに関する。アビディティは、相互作用のアフィニティーおよび価数の両方に依存する。さらに、「アフィニティー」は、分子(例えば、抗体)およびリガンド(例えば、抗原)の単独の結合部位間における結合の強さに関する。リガンドYに対する分子Xのアフィニティーは、溶液中に存在する分子Xの半分の結合部位を占めるのに必要とされるYの濃度である解離定数(K)により表される。Kが小さければ、相互作用のアフィニティーがより強いかまたはより高度であり、該部位を占めるのに必要とされるリガンド濃度がより低度であることを示す。
本発明で用いられる「ヒト化抗体」または「抗体」という用語は、完全分子のほか、Fab、F(ab')2、およびFvなど、エピトープ決定基に結合可能なそのフラグメントを包含する。これらの抗体フラグメントは、ヒトC5aRに選択的に結合する一部の能力を保持し、その例としては、それだけに限らないが、以下:
(1)Fab:抗体分子の1価の抗原結合フラグメントを含有するこのフラグメントは、酵素パパインにより全抗体を消化して、完全な軽鎖および1本の重鎖の一部をもたらすことにより産生することができる;
(2)Fab’:抗体分子のこのフラグメントは、ペプシンにより全抗体を処理した後で還元反応を行い、完全な軽鎖および重鎖の一部をもたらすことにより得ることができる;抗体分子当たり2つのFab’フラグメントが得られる;
(3)(Fab’):後続の還元反応なしに酵素ペプシンで全抗体を処理することにより得ることができる抗体フラグメント;F(ab)2は、2つのジスルフィド結合により一体に保持される2つのFab’フラグメントの二量体である;
(4)Fv:2本の鎖として発現される軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有する、遺伝子改変されたフラグメントとして定義される;
(5)単鎖抗体(「SCA」):適切なポリペプチドリンカーにより、遺伝子融合された単鎖分子として連結された軽鎖可変領域、重鎖可変領域を含有する遺伝子改変分子として定義される;このような単鎖抗体は、多価特異的の場合もそうでない場合もあるダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディなどの多量体の形態(例えば、WO94/07921およびWO98/44001を参照されたい)であり得る;ならびに
(6)単一ドメイン抗体:軽鎖を欠く重鎖可変ドメインであることが典型的である;
が挙げられる。
ヒト化抗体フラグメントには、個別の重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、重鎖を欠く軽鎖可変ドメイン、軽鎖を欠く重鎖可変ドメイン、およびFvが含まれる。フラグメントは、組換えDNA法により産生され、または完全免疫グロブリンの酵素的分離または化学的分離により産生される。
本発明の「ヒト化抗体」または抗体はまた、ヘテロコンジュゲート抗体でもあり得る。ヘテロコンジュゲート抗体は、共有結合により接合された2つの抗体からなる。このような抗体は、例えば、望ましくない細胞を免疫系細胞の標的とするため(US4,676,980)、およびHIV感染の治療用(WO91/00360;WO92/200373;EP586505)に提起されている。該抗体は、架橋形成剤を伴う反応を含めた、タンパク質合成化学反応において知られている方法を用いて、in vitroで調製し得ることが意図されている。
例えば、関節炎など、本明細書に記載の障害の治療における抗体の有効性を増強するために、エフェクター機能の点で本発明の抗体を改変することが望ましい場合がある。例えば、(1つまたは複数の)システイン残基をFc領域内に導入して、これにより、この領域内における鎖間ジスルフィド結合の形成を可能とすることができる。こうして生成されたホモ二量体のヒト化抗体は、内部化能力を改善し、かつ/または補体媒介性細胞死滅作用および抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を増大させることができる(Caronら、1992;Shopes、1992)。活性を増強したホモ二量体の抗体はまた、Wolffら(1993)に記載のヘテロ二機能性架橋剤を用いても調製することができる。代替的に、二重Fc領域を有するように抗体を改変し、これにより、補体による溶解およびADCC能を増強させることもできる(Stevensonら、1989)。
本明細書で用いられる「非枯渇型抗体」とは、その標的に結合するが、標的細胞の溶解を実行する免疫系のエフェクター機能は動員しない抗体を指す。免疫系のエフェクター機能は、補体カスケードの第1成分であるC1qおよび/または受容体(FcR)とのFcドメインの相互作用に依存する。C1qとの複数のFcドメインの相互作用により補体依存性細胞傷害作用(CDC)が誘発され、最終的にはこの結果として、膜攻撃複合体(MAC)の形成を介して標的細胞の溶解がもたらされ得る。加えて、顆粒球、マクロファージ、およびNK細胞などの免疫系細胞は、FcRを介して、標的細胞に結合したmAbと相互作用し得る。標的細胞の溶解は、抗体依存性細胞媒介性傷害作用(ADCC)または食作用を介して誘発される。非枯渇型抗体には、例えば、1価フォーマット(例えば、Fab、scFv、ナノボディ、およびdAb)、2価フォーマット(例えば、F(ab’)およびダイアボディ)、および多価フォーマット(例えば、トリアボディおよびペンタボディ)を含めた、Fcドメインなしの抗体フラグメントが含まれる。加えて、非枯渇型抗体には、薬物動態に影響を与えることなくエフェクター機能を除去するように改変された抗体が含まれ、例えば、C1qおよびFcRとの相互作用において主要な役割を果たすFcドメイン内のアミノ酸残基ならば改変することもできようし、CH2ドメイン内のNが連結されたグリコシル化部位ならば除去することもできよう。当業者が理解するとおり、非枯渇型抗体を改変する可能性は、該抗体を産生するのに用いられる定常領域と関連する。IgG3定常領域がIgG1定常領域よりも枯渇型抗体を産生する可能性が高く、IgG1定常領域がIgG2定常領域よりも枯渇型抗体を産生する可能性が高いのに対し、IgG4定常領域は一般に、その抗体が非枯渇型であることを意味する。当業者はまた、定常領域に対して改変を行えば、枯渇型抗体を非枯渇型抗体へと転換することもでき、この逆も可能であることを理解するであろう。
本明細書で用いられる「非活性化型抗体」とは、細胞表面受容体に結合し、内因性リガンドの作用を無化または遮断する抗体を指す。
本発明のヒト化抗体は、人的な介入により産生される。したがって、これらは、自然発生することが期待されない。にもかかわらず、好ましい実施形態において、本発明の抗体鎖または免疫グロブリン鎖は、「実質的に精製」されているかまたは「精製」されている。本発明者らによれば、「実質的に精製」されているかまたは「精製」されているとは、1つまたは複数の脂質、核酸、他のポリペプチド、またはその天然状態ではそれが関連する他の夾雑分子から抗体が分離されていることを意味する。実質的に精製されているポリペプチドとは、天然ではそれが関連する他の成分を少なくとも60%含まず、より好ましくは少なくとも75%含まず、またより好ましくは少なくとも90%含まないことが好ましい。別の実施形態において、「実質的に精製」されているかまたは「精製」されているとは、該分子が、該組成物中において、それが属する分子クラスに関して見出される主要な分子種であることを意味する(すなわち、それが、該組成物中における分子の種類の少なくとも約50%を占め、該組成物中における分子種、例えば、ペプチドの少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%以上を占めることが典型的である)。
抗体鎖または免疫グロブリン鎖の関連における「組換え」という用語は、細胞または無細胞発現系により、その天然状態と比較して変化した量または変化した速度で産生される場合の抗体鎖または免疫グロブリン鎖を指す。一実施形態において、細胞は、天然では抗体鎖または免疫グロブリン鎖を産生しない細胞である。しかし、細胞は、産生されるポリペプチド量の変化、好ましくは増大を引き起こす非内因性遺伝子を含む細胞であり得る。本発明の組換えによる抗体鎖または免疫グロブリン鎖には、その中でそれが産生されるトランスジェニック(組換え)細胞または無細胞発現系の他の成分と分離されていないポリペプチドが含まれ、このような細胞または無細胞系内において産生される抗体鎖または免疫グロブリン鎖は、その後、少なくとも一部の他の成分から精製される。
ポリペプチド(免疫グロブリン鎖)の%同一性は、ギャップ創出ペナルティ=5、およびギャップ伸長ペナルティ=0.3とするGAP(NeedlemanおよびWunsch、1970)解析(GCGプログラム)により決定される。クエリー配列は少なくとも50アミノ酸の長さであり、GAP解析では、少なくとも50アミノ酸の領域にわたり2つの配列が整列される。クエリー配列が少なくとも100アミノ酸の長さであり、GAP解析では、少なくとも100アミノ酸の領域にわたり2つの配列が整列されることがさらにより好ましい。2つの配列がそれらの全長にわたり整列されることが最も好ましい。
規定された免疫グロブリン鎖に関しては、上記に示された数値よりも高値の%同一性の数値が好ましい実施形態に包含されると理解される。したがって、適切な場合、%同一性の最小値に照らすと、免疫グロブリン鎖は、命名された関連の配列番号と少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、さらにより好ましくは少なくとも99.9%同一のアミノ酸配列を含むことが好ましい。
別の実施形態では、命名された配列番号に1つの残基を付加するか、命名された配列番号から1つの残基を欠失させるか、命名された配列番号と比較して1つの残基を付加して1つの残基を欠失させるか、命名された配列番号に2つの残基を付加するか、命名された配列番号から2つの残基を欠失させるか、命名された配列番号から1つの残基を変化させるか、命名された配列番号から2つの残基を変化させるか、命名された配列番号から1つの残基を変化させて1つの残基を欠失させるか、もしくは命名された配列番号から1つの残基を変化させてこれに1つの残基を付加するか、またはこれらの任意の組合せを実施する。
好ましい実施形態において、アライメント内にはギャップが存在しない。より具体的に述べると、アルゴリズムは、アミノ酸の連続するつながりの中にギャップを創出して、最適な(%同一性が最大の)アライメントを得る必要がない。
本発明の抗体鎖および/または免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列突然変異体は、本発明の核酸内に適切なヌクレオチド変化を導入することによっても調製することができ、in vitroにおける所望のポリペプチドの合成によっても調製することができる。このような突然変異体は、例えば、該アミノ酸配列内において、残基の欠失、挿入、または置換を包含する。最終的なポリペプチド産物が所望の特徴を有する場合は、欠失、挿入、および置換の組合せを行って最終構築物に到達することができる。
突然変異(改変)ポリペプチドは、当技術分野で知られている任意の技法を用いて調製することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、in vitroの突然変異誘発にかけることができる。このようなin vitroの突然変異誘発法には、適切なベクター内へのポリヌクレオチドのサブクローニング、大腸菌(E.coli)XL−1レッド(Stratagene社製)などの「突然変異誘発」株内へのベクターの形質転換、および形質転換された細菌の増殖による適切な数の生成が含まれる。突然変異/改変DNAは、本明細書に記載の技法を用いて容易にスクリーニングし、これらが受容体結合活性および/または受容体阻害活性を有するかどうかを判定することができる。
アミノ酸配列の突然変異体を設計する場合、突然変異部位の位置および突然変異の性質は、改変される(1つまたは複数の)特徴に依存する。突然変異される部位は、例えば、(1)まず保存的アミノ酸の選択により、次いで、達成された結果に応じてより根本的な選択により置換すること、(2)標的残基を欠失させること、または(3)位置を特定した部位に隣接する形で他の残基を挿入することにより、個別にまたは連鎖的に改変することができる。
アミノ酸配列の欠失は一般に、約1〜15残基、より好ましくは約1〜10残基、また典型的には約1〜5の連続残基の範囲にわたる。
置換突然変異体では、抗体鎖および/または免疫グロブリン鎖分子中における少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その代わりに異なる残基が挿入される。置換的突然変異誘発にとって最大の対象部位には、抗原結合に重要であると同定される部位が含まれる。これらの部位、とりわけ、ヒト抗体鎖および/または免疫グロブリン鎖の少なくとも3カ所の他の同一保存部位の配列内に収まる部位は、比較的に保存的な形で置換することが好ましい。このような保存的置換は、「例示的な置換」の表題の下に、表1に示される。置換の具体例は、図6および10に示され、この場合、所与の部位におけるアミノ酸は、他のヒト化鎖内の同じ部位に存在する別のアミノ酸により置換することができる。
さらに、所望の場合、非天然アミノ酸または化学的なアミノ酸類似体を、本発明の抗体鎖および/または免疫グロブリン鎖内への置換または付加として導入することができる。このようなアミノ酸としては、それだけに限らないが、一般的なアミノ酸のD−異性体、2,4−ジアミノブチル酸、α−アミノイソブチル酸、4−アミノブチル酸、2−アミノブチル酸、6−アミノヘキサン酸、2−アミノイソブチル酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロ−アミノ酸;β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸などのデザイナーアミノ酸;およびアミノ酸類似体全般が挙げられる。
本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチドの産生および回収、ならびに該ポリペプチドの化学合成を含めた各種の方法により産生することができる。一実施形態において、本発明の単離ポリペプチドは、該ポリペプチドを産生するのに有効な条件下で該ポリペプチドを発現可能な細胞を培養し、該ポリペプチドを回収することにより産生される。培養に好ましい細胞は、本発明の組換え細胞である。有効な培養条件としては、それだけに限らないが、有効な培地、バイオリアクター、ポリペプチド産生を可能とする温度条件、pH条件、および酸素条件が挙げられる。有効な培地とは、そこにおいて細胞を培養して本発明のポリペプチドを産生する任意の培地を指す。このような培地は、同化可能な炭素供給源、窒素供給源、およびリン酸供給源、ならびに適切な塩、鉱物、金属、およびビタミンなど他の栄養素を有する水性培地を含むことが典型的である。本発明の細胞は、従来の発酵型バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロ滴定ディッシュ、およびペトリプレートにおいて培養することができる。培養は、組換え細胞に適切な温度、pH、および酸素含量で実行することができる。このような培養条件は、当業者の専門技術内にある。
ポリヌクレオチドおよびその発現
本発明者らによれば、DNA、RNA、あるいはセンス方向もしくはアンチセンス方向またはこれら両方の組合せにおける、1本鎖または2本鎖によるこれらの組合せ、dsRNA、あるいはその他の形を含めた「単離ポリヌクレオチド」とは、その天然状態においてそれが会合するかまたは連結されるポリヌクレオチド配列とは少なくとも部分的に分離されるポリヌクレオチドを意味する。単離ポリヌクレオチドは、これらが天然において会合する他の成分を少なくとも60%含まないことが好ましく、少なくとも75%含まないことが好ましく、少なくとも90%含まないことが最も好ましい。さらに、本明細書において、「ポリヌクレオチド」という用語は、「核酸」および「遺伝物質」という用語と互換的に用いられる。
ポリヌクレオチドの関連における「外因的な」という用語は、細胞または無細胞発現系内において、その天然状態と比較して変化した量で存在する場合のポリヌクレオチドを指す。一実施形態において、細胞は、天然では該ポリヌクレオチドを含まない細胞である。しかし、細胞は、結果としてコードされるポリペプチドの産生量が変化する、好ましくは増加する非外因性ポリヌクレオチドを含む細胞であり得る。本発明の外因性ポリヌクレオチドには、その中にそれが存在するトランスジェニック(組換え)細胞、または無細胞発現系の他の成分と分離されていないポリヌクレオチドが含まれ、このような細胞または無細胞発現系内において産生されるポリヌクレオチドは、その後、少なくとも一部の他の成分から精製される。外因性ポリヌクレオチド(核酸)は、天然で存在するヌクレオチドの連続的なつながりの場合もあり、接合されて単一のポリヌクレオチドを形成する、異なる供給源(天然および/または合成)に由来する2つ以上のヌクレオチドの連続的なつながりを含む場合もある。このようなキメラポリヌクレオチドは、対象細胞内におけるオープンリーディングフレームの転写を駆動するのに適するプロモーターに作動可能に連結される、本発明のポリペプチドをコードする少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含む。
本発明は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号48、配列番号34、配列番号35、配列番号36、および配列番号39の1つもしくは複数をコードするポリヌクレオチド、および/または配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号48、配列番号34、配列番号35、配列番号36、および配列番号39の1つもしくは複数をコードするポリヌクレオチドと少なくとも67%同一のポリヌクレオチドに関する。このようなポリヌクレオチドの例としては、それだけに限らないが、配列番号52〜57のいずれか1つにおいて示される配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
ポリヌクレオチドの%同一性は、ギャップ創出ペナルティ=5、およびギャップ伸長ペナルティ=0.3とするGAP(NeedlemanおよびWunsch、1970)解析(GCGプログラム)により決定される。別段の言及がない限り、クエリー配列は少なくとも45ヌクレオチドの長さであり、GAP解析では、少なくとも45ヌクレオチドの領域にわたり2つの配列が整列される。クエリー配列が少なくとも100ヌクレオチドの長さであり、GAP解析では、少なくとも100ヌクレオチドの領域にわたり2つの配列が整列されることが好ましい。2つの配列がそれらの全長にわたり整列されることが最も好ましい。
規定されたポリヌクレオチドに関しては、上記に示された数値よりも高値の%同一性の数値が、好ましい実施形態に包含されることが理解される。したがって、適切な場合、%同一性の最小値に照らすと、本発明のポリヌクレオチドは、命名された関連の配列番号と少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、さらにより好ましくは少なくとも99.9%同一の配列を含むことが好ましい。
本発明はまた、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号48、配列番号34、配列番号35、配列番号36、および配列番号39の1つまたは複数をコードするポリヌクレオチドに対して、厳密な条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドにも関する。本明細書で用いられる「厳密なハイブリダイゼーション条件」または「厳密な条件」などの用語は、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの長さによるハイブリダイゼーション温度の変化を含めた、当技術分野が精通するパラメーターを指す。核酸ハイブリダイゼーションのパラメーターは、このような方法を一括する参考文献であるSambrookら(前出);およびAusubelら(前出)において見出すことができる。例えば、本明細書で用いられる厳密なハイブリダイゼーション条件とは、ハイブリダイゼーション緩衝液(3.5倍濃度SSC、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mM NaHPO(pH7)、0.5%SDS、2mM EDTA)中における65℃でのハイブリダイゼーション、および各洗浄ステップを約30分間とする、65℃の0.2倍濃度SSC、0.1%SDS中における2回の洗浄を指すことができる。
本発明の抗体鎖および免疫グロブリン鎖は、組換え発現により産生されることが典型的である。場合によって定常領域に連結される軽鎖可変量異域および重鎖可変領域をコードする核酸は、発現ベクター内に挿入される。軽鎖および重鎖は、同じ発現ベクター内でクローニングすることもでき、異なる発現ベクター内でクローニングすることもできる。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確保する(1つまたは複数の)発現ベクター内における制御配列に作動可能に連結される。発現制御配列としては、それだけに限らないが、プロモーター(例えば、天然会合プロモーターまたは異種プロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント、および転写終結配列が挙げられる。発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換するかまたはトランスフェクションすることが可能なベクター内における真核生物のプロモーター系であることが好ましい。ベクターが適切な宿主内に組み込まれると、該宿主は、ヌクレオチド配列の高レベルの発現、ならびに抗体鎖および/または免疫グロブリン鎖の回収および精製に適する条件下で維持される。
これらの発現ベクターは、エピソームとして、または宿主染色体DNAの不可欠な部分として宿主細胞内で複製可能であることが典型的である。一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列により形質転換された細胞の検出を可能とする選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)、ADA(アデノシンデアミナーゼ)、GS(グルタミンシンセターゼ))(例えば、U.S.4,704,362を参照されたい)を含有する。
大腸菌は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、DNA配列)をクローニングするのに特に有用な1つの原核宿主である。使用に適する他の微生物宿主には、枯草菌(Bacillus subtilus)などの桿菌、およびサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)などの腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、および各シュードモナス属(Pseudomonas)菌種が含まれる。これらの原核宿主ではまた、該宿主細胞に適合する発現制御配列(例えば、複製起点)を含有することが典型的な発現ベクターも作製することができる。加えて、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系、T7プロモーター、またはファージラムダに由来するプロモーター系など、任意の数の各種のよく知られたプロモーターも存在する。プロモーターは、場合によってオペレーター配列により発現を制御し、リボソーム結合部位配列などを有し、転写および翻訳を開始および終結することが典型的である。
酵母など他の微生物もまた、発現に有用である。サッカロミセス属(Saccharomyces)は、好ましい酵母宿主であり、所望に応じて発現制御配列(例えば、プロモーター)、複製起点、終結配列などを有する適切なベクターを伴う。典型的なプロモーターには、3−ホスホグリセレートキナーゼおよび他の糖分解酵素が含まれる。誘導可能な酵母プロモーターには、特に、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソシトクロムC、ならびにマルトースおよびガラクトースの使用の一因となる酵素が含まれる。発現に有用な酵母の別の例は、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)である。
微生物に加えて、哺乳動物の組織細胞培養物もまた、本発明の抗体鎖および/または免疫グロブリン鎖を発現および産生するのに用いることができる(例えば、免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド)(Winnacker、「From Genes to Clones」、VCH Publishers,N.Y.、N.Y.(1987)を参照されたい)。異種タンパク質(例えば、完全免疫グロブリン)を分泌することが可能な多数の適切な宿主細胞株が当技術分野では開発されており、これには、CHO細胞株、各種のCos細胞株、NSO細胞、HEK293細胞、PerC6細胞、HeLa細胞、好ましくは骨髄腫細胞株、または形質転換されたB細胞もしくはハイブリドーマが含まれるので、真核細胞が実際には好ましい。細胞は非ヒト細胞であることが好ましい。これらの細胞の発現ベクターには、複製起点、プロモーター、およびエンハンサー(Queenら、1986)などの発現制御配列、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列など、必要なプロセシング情報部位が含まれ得る。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルスなどに由来するプロモーターである(Coら、1992を参照されたい)。
代替的に、抗体をコードする配列は、トランスジェニック動物のゲノム内への導入およびトランスジェニック動物のミルク中におけるその後の発現のためのトランス遺伝子内に組み込むことができる(例えば、U.S.5,741,957;U.S.5,304,489;およびU.S.5,849,992を参照されたい)。適切なトランス遺伝子には、カゼインまたはベータラクトグロブリンなど、哺乳動物の腺特異的遺伝子に由来するプロモーターおよびエンハンサーと作動可能に連結される軽鎖および/または重鎖のコード配列が含まれる。
対象のポリヌクレオチド配列(例えば、重鎖および軽鎖のコード配列ならびに発現制御配列)を含有するベクターは、細胞宿主の種類に応じて変化する、よく知られた方法により宿主細胞内に導入することができる。例えば、原核細胞には塩化カルシウムによるトランスフェクションが一般に用いられる一方、他の細胞宿主には、リン酸カルシウム処理、電気穿孔、リポフェクション、微粒子銃、またはウイルスベースのトランスフェクションを用いることができる(全般的に、Sambrookら、前出を参照されたい)。哺乳動物細胞を形質転換するのに用いられる他の方法には、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、電気穿孔、およびマイクロインジェクションの使用が含まれる。トランスジェニック動物を産生する場合、トランス遺伝子は、受精した卵細胞内にマイクロインジェクトすることもでき、胚性幹細胞のゲノム内に組み込んで、このような細胞の核を除核された卵細胞内に導入することもできる。
重鎖および軽鎖を個別の発現ベクターでクローニングする場合、該ベクターは、完全免疫グロブリンを発現および構築するように共トランスフェクトされる。発現したら、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動などを含めた、当技術分野の標準的な手順に従い、本発明の全抗体、それらの二量体、個々の軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリン形態を精製することができる(全般的に、Scopes、「Protein Purification」(Springer−Verlag、N.Y.(1982))を参照されたい)。
コンジュゲート
本発明の抗体に直接的または間接的に結合する治療薬にコンジュゲートする該抗体を含むコンジュゲート(免疫コンジュゲート)もまた提供される。治療薬の例としては、それだけに限らないが、細胞毒素、放射性同位体(例えば、ヨウ素131、イットリウム90、またはインジウム111)、免疫調節薬、抗血管新生薬、抗新血管形成薬、および/または他の血管形成薬、毒素、抗増殖薬、アポトーシス促進薬、化学療法薬、および治療用核酸が挙げられる。
細胞毒素には、細胞に対して有害な(例えば、これらを死滅させる)任意の薬剤が含まれる。当技術分野でよく知られたこれらのクラスの薬剤、およびこれらの作用機序の説明については、Goodmanら、「Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第8版、Macmillan Publishing Co.、1990を参照されたい。抗体免疫毒素の調製に関連するさらなる技法は、例えば、Vitetta (1993);およびUS5,194,594において示されている。
本発明の免疫コンジュゲートを形成するのに適する治療薬には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン;代謝拮抗剤(メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビンなど);アルキル化剤(メクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチンおよびカルボプラチンなど他の白金誘導体など);抗生剤(ダクチノマイシン(旧称アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ダウノルビシン(旧称ダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC)など);ジフテリア毒素および関連分子(ジフテリアA鎖およびその活性フラグメントならびにハイブリッド分子など);リシン毒素(リシンA鎖毒素または脱グリコシル化したリシンA鎖毒素など)、コレラ毒素、志賀様毒素(SLT−I、SLT−II、SLT−IIV)、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、大豆ボーマン−バークプロテアーゼ阻害薬、緑膿菌外毒素、アロリン、サポリン、モデクシン、ゲラニン、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファサルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ツルレイシ(Momordica charantia)による阻害薬、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィキナリス(Sapaonaria officinalis)による阻害薬、ゲロニン毒素、マイトゲリン毒素、レストリクトシン毒素、フェノマイシン毒素、およびエノマイシン毒素が含まれる。
適切な血管新生阻害薬(抗血管新生薬)の例としては、それだけに限らないが、ウロキナーゼ阻害薬;マトリックスメタロプロテアーゼ阻害薬(マリマスタット、ネオバスタット、BAY 12−9566、AG 3340、BMS−275291、および類似の薬剤など);内皮細胞の遊走および増殖に対する阻害薬(TNP−470、スクアラミン、2−メトキシエストラジオール、コンブレタスタチン、エンドスタチン、アンジオスタチン、ペニシラミン、SCH66336(Schering−Plough Corp、Madison、NJ)、R115777(Janssen Pharmaceutica,Inc、Titusville、NJ)、および類似の薬剤など);血管新生成長因子に対するアンタゴニスト(ZD6474、SU6668、血管新生物質および/またはこれらの受容体(VEGF、bFGF、およびアンジオポエチン−1など)に対する抗体、サリドマイド、サリドマイド類似体(CC−5013など)、Sugen 5416、SU5402、抗血管新生リボザイム(アンジオザイムなど)、インターフェロンα(インターフェロンα2aなど)、スラミン、および類似の薬剤など);VEGF−Rキナーゼの阻害薬および他の抗血管新生チロシンキナーゼ阻害薬(SU011248など);内皮特異的インテグリン/生存シグナル伝達に対する阻害薬(ビタキシンおよび類似の薬剤など);銅アンタゴニスト/キレート化剤(テトラチオモリブデート、カプトプリル、および類似の薬剤など);カルボキシアミド−トリアゾール(CAI)、ABT−627、CM101、インターロイキン12(IL−12)、IM862、PNU145156Eのほか;血管新生を阻害するヌクレオチド分子(アンチセンスVEGF−cDNA、アンジオスタチンをコードするcDNA、p53をコードするcDNA、および欠損のあるVEGF受容体−2をコードするcDNAなど);ならびに類似の薬剤が挙げられる。血管新生、新血管形成、および/または他の血管形成に対する阻害薬の他の例は、抗血管新生ヘパリン誘導体および関連分子(例えば、ヘパリナーゼIII)、テモゾロミド、NK4、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬、低酸素症誘導因子1に対する阻害薬、抗血管新生大豆イソフラボン、オリチプラズ、フマギリンおよびその類似体、ソマトスタチン類似体、ペントサンポリスルフェート、テコガランナトリウム、ダルテパリン、ツムスタチン、トロンボスポンジン、NM−3、コンブレスタチン、カンスタチン、アバスタチン、他の関連標的に対する抗体(抗アルファ−v/ベータ−3インテグリンおよび抗キニノスタチンmAbなど)、ならびに類似の薬剤である。
各種の放射性核種が放射性コンジュゲート抗体の産生に使用可能であり、その例としては、それだけに限らないが、212Bi、131I、90Y、および186Reが挙げられる。
それだけに限らないが、4−(4’アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)、3−アセチルフェニル酢酸(AcPac)、4−メルカプト−4−メチル−ペンタン酸(Amide)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCLなど)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレートなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トリエン2,6−ジイソシアネートなど)、およびビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)、ならびにこれらの誘導体など、各種の二機能性タンパク質結合剤を用いて、抗体および治療薬のコンジュゲートが作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら(1987)により記載されるとおりに調製することができる。炭素14で標識された1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、抗体に対する放射性ヌクレオチドのコンジュゲーションのための例示的なキレート化剤である(WO94/11026)。
別の実施形態において、抗体は、C5a発現細胞の予めの標的化において用いられる「受容体」(ストレプトアビジンなど)にコンジュゲートすることができ、この場合、抗体−受容体コンジュゲートを患者に投与した後で、除去剤を用いて未結合のコンジュゲートを循環から除去し、次いで、治療薬(例えば、放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えば、アビジン)を投与する。
一実施形態では、本発明の抗体を用いて、遺伝物質を送達することができる。遺伝物質を当技術分野で知られている任意の技術で抗体にコンジュゲートすることができる。例としては、それだけに限らないが、ビオチン−アビジン間の相互作用、ジスルフィド架橋の形成、アミン結合(例えば、Hendricksonら、1995を参照されたい)、チオール結合(例えば、Niemeyerら、2003を参照されたい)、またはアルデヒド−ヒドラジン間の相互作用(例えば、Kozlovら、2004を参照されたい)の使用が挙げられる。当技術分野で知られている他の結合剤には、m−マレイミドベンゾイルN−ヒドロキシスクシンイミドエステルまたは関連化合物、1−エチル−3−(3−ジエチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミド、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、およびグルタルアルデヒド架橋剤が含まれる。
シグナル伝達アッセイ
C5aRに対する、アゴニストまたはC5aなどのリガンドの結合は、このGタンパク質共役受容体によるシグナル伝達、およびGタンパク質の活性のほか、他の細胞内シグナル伝達分子の刺激を結果としてもたらす可能性がある。本発明の抗体の阻害活性は、適切なアッセイにおいてリガンドを用い、リガンドにより誘導される該活性を阻害する抗体の能力を評価して決定することができる。
GTPからGDPへの加水分解、または細胞内(細胞質)遊離カルシウム濃度の急速かつ一過性の上昇の誘導など、受容体の結合により誘発されるその後のシグナル伝達イベントなどのGタンパク質活性は、当技術分野で知られている方法または他の適切な方法(例えば、Neoteら、1993;Van Riperら、1993;およびDahindenら、1994を参照されたい)によりアッセイすることができる。
ハイブリッドのGタンパク質共役受容体を用いる、US5,284,746に記載の機能アッセイを用いて、受容体に結合し、Gタンパク質を活性化するリガンドの能力をモニタリングすることができる。
このようなアッセイは、評価される抗体の存在下において実施することができ、知られている方法および/または本明細書に記載の方法を用いて、該リガンドにより誘導される活性を阻害する抗体の能力が決定される。
走化性および細胞刺激アッセイ
本発明の抗体がC5aRに対するリガンドの結合を遮断し、かつ/または該受容体に対するリガンドの結合と関連する機能を阻害する能力を評価するには、走化性アッセイもまた用いることができる。これらのアッセイは、化合物(化学誘引物質)により誘導されるin vitroまたはin vivoにおける細胞の機能的遊走に基づく。走化性は、例えば、96ウェルの走化性プレートを用いるか、または走化性を評価するのに当技術分野で認知される他の方法を用いるアッセイにおいて、任意の適切な手段により評価することができる。例えば、in vitroにおける経内皮走化性アッセイの使用は、Springerら(WO94/20142);およびBermanら(1988)により説明されている。内皮を隔てたコラーゲンゲル内への遊走もまた説明されている(Kavanaughら、1991)。走化性アッセイでは、マウスL1.2プレB細胞または走化性が可能な他の適切な宿主細胞の安定的な形質転換体を用いることができる。
一般に、走化性アッセイでは、障壁(例えば、内皮、フィルター)内へまたは障壁を介して、障壁の第1の表面から向い側の第2の表面へと、化合物レベルの上昇に向かって方向づけられた適切な細胞(白血球(例えば、リンパ球、好酸球、好塩基球、好中球)など)の移動または遊走がモニタリングされる。フィルター内へまたはフィルターを介して、フィルターの第1の表面から向い側のフィルターの第2の表面へと、化合物レベルの上昇に向かって方向づけられた適切な細胞の移動または遊走がモニタリングされるように、膜またはフィルターが好都合な障壁を提供する。一部のアッセイにおいて、膜は、ICAM−1、フィブロネクチン、またはコラーゲンなど、付着を促進する物質により被覆される。このようなアッセイにより、白血球の「帰巣」についてのin vitroにおける近似が示される。
例えば、第1のチャンバーから、微小孔性の膜内へまたはこれを介して、化学誘引物質および試験対象の抗体を含有し、該膜により該第1のチャンバーから分断される、第2のチャンバー内への、適切な容器(手段を含有する)内における細胞の遊走に対する阻害を検出または測定することができる。例えば、ニトロセルロース、ポリカルボネートを含めた、化合物に応答する特異的な遊走をモニタリングするのに適する小孔サイズを有する適切な膜が選択される。例えば、約3〜8ミクロン、また好ましくは約5〜8ミクロンの小孔サイズを用いることができる。小孔サイズは、フィルター上において、または適切な小孔サイズの範囲内において一様であり得る。
遊走および遊走の阻害を評価するため、フィルター内への遊走の距離、フィルターを横切り、フィルターの第2の表面に対する付着を保つ細胞の数、および/または第2のチャンバー内に蓄積する細胞の数を、標準的な技法(例えば、顕微鏡およびフローサイトメトリー)を用いて決定することができる。一実施形態では、細胞を、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、蛍光標識、抗原標識、またはエピトープ標識)により標識し、適切な方法を用いて(例えば、放射能、蛍光、イムノアッセイを検出することにより)膜に付着する標識および/または第2のチャンバー内に存在する標識の存在を決定することにより、抗体の存在下または不在下における遊走を評価することができる。適切な対照と比べて(例えば、抗体の不在下において決定されるバックグラウンドの遊走と比較して、第2の化合物(すなわち、基準化合物)により誘導される遊走の程度と比較して、抗体により誘導されるトランスフェクトされない細胞の遊走と比較して)、抗体アンタゴニストにより誘導される遊走の程度を決定することができる。一実施形態において、特にT細胞、単球、またはC5aRを発現する細胞の場合、経内皮遊走をモニタリングすることができる。この実施形態では、内皮細胞層を介する経内皮遊走が評価される。細胞層を調製するには、場合によって、内皮細胞の付着を促進するように、コラーゲン、フィブロネクチン、または他の細胞外マトリックスタンパク質などの物質により被覆した微小孔性のフィルターまたは膜上において内皮細胞を培養することができる。内皮細胞は、コンフルエントの単層が形成されるまで培養することが好ましい。単層の形成には、ヒト臍帯静脈内皮細胞(Clonetics Corp、San Diego、Calif.)など、例えば、静脈内皮細胞、動脈内皮細胞、または毛細血管内皮細胞を含めた各種の哺乳動物内皮細胞が入手可能である。特定の哺乳動物受容体に応答する走化性をアッセイするためには、同じ哺乳動物の内皮細胞が好ましいが、種または属の異なる哺乳動物に由来する内皮細胞もまた用いることができる。
C5aシグナル伝達に対する抗体による阻害薬についての試験に用いられる一実施形態では、遊走およびC5aRの発現が可能な細胞を含む組成物を第1のチャンバー内に入れることができる。第1のチャンバー内における細胞の走化性を誘導することが可能な(化学誘引物質機能を有する)1つまたは複数のリガンドまたはプロモーターを含む組成物を第2のチャンバー内に入れる。第1のチャンバー内に細胞を入れる少し前、または細胞と同時に、試験対象の抗体を含む組成物を、好ましくは第1のチャンバーに入れることが好ましい。抗体は、受容体に結合し、リガンドまたはプロモーターによる、C5aRを発現する細胞の走化性の誘導を阻害することが可能である。このアッセイにおいて、抗体は、受容体機能の阻害薬(例えば、刺激機能の阻害薬)である。抗体の存在下においてリガンドまたはプロモーターにより誘導される遊走の程度の低減は、阻害活性を示す。別個の結合試験を実施すれば、阻害が受容体に対する抗体の結合の結果であるのか、または異なる機構を介して発生するのかを判定することができるであろう。
組織内における化合物(例えば、ケモカインまたは抗体)の注射に応答する、組織に対する白血球の浸潤をモニタリングするin vivoアッセイが、以下(「炎症モデル」を参照されたい)に記載される。これらのin vivoにおける帰巣モデルでは、炎症部位への移出および走化性により、リガンドまたはプロモーターに応答する細胞の能力が測定され、この移出を遮断する抗体またはそのフラグメントの能力が評価される。
記載の方法に加えて、受容体を含有する適切な宿主細胞を用いて、活性受容体により誘導される細胞応答をモニタリングすることにより、C5aRの刺激機能に対する抗体の効果を評価することができる。
本明細書では走化性アッセイについての他の例も記載されており、例えば、実施例4を参照されたい。
炎症モデル
治療薬としてのin vivoにおける抗体の効果を評価するのに用い得る、炎症のin vivoモデルが使用可能である。例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、またはアカゲザルなどの適切な動物内へのケモカインおよびC5aR反応性抗体の皮内注射時における白血球の浸潤をモニタリングすることができる(例えば、Van Dammeら、1992;Zachariaeら、1990;Joseら、1994を参照されたい)。
一実施形態では、白血球(例えば、好酸球、顆粒球)の浸潤について、皮膚生検を組織学的に評価する。別の実施形態では、走化性および溢出が可能な標識された細胞(例えば、C5aRを発現する、安定的にトランスフェクトされた細胞)を動物に投与する。標識された細胞を試験動物に投与する前、これと同時、またはこの後において、評価される抗体を投与することができる。阻害薬の不在下における浸潤の程度と比較した、抗体の存在下における浸潤の程度の低下は、阻害を示す。
使用
本発明の抗体は、研究への適用、診断的適用、および治療的適用を含めた各種の適用において有用である。
C5aRは、白血球の輸送において重要な役割を果たす。C5aRは、好中球、好酸球、マスト細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、およびミクログリアを含めた自然免疫系細胞の化学誘引物質受容体であり、このため、抗C5aR抗体を用いて、白血球遊走、特に、灌流傷害および脳卒中など、好中球による組織傷害、またはアテローム性動脈硬化など、単球を介する障害と関連する白血球遊走を阻害(低減または阻止)することができる。
本明細書に記載の抗体は、(a)受容体に対する結合(例えば、リガンド、阻害剤の)、(b)受容体のシグナル伝達機能、および/または(c)刺激機能を阻害(低減または阻止であり得る)する阻害薬として作用し得る。受容体機能の阻害薬として作用する抗体は、直接的または間接的に(例えば、立体構造変化を引き起こすことにより)リガンド結合を遮断し得る。例えば、抗体は、リガンドの結合を阻害することにより受容体機能を阻害する場合もあり、脱感作(リガンドの結合に対する阻害を伴う場合であれそうでない場合であれ)により受容体機能を阻害する場合もある。
一態様において、本発明は、対象における障害を治療または予防する方法を提供する。本明細書で用いられる「障害」とは、正常な機能の破壊またはこれに対する干渉である。
ある実施形態において、障害とは、免疫病理学的障害である。
免疫病理学とは、免疫学的原因を有する疾患の研究であり、免疫学的疾患とは、抗原に対する抗体の反応により引き起こされる任意の状態である。したがって、「免疫学的障害」とは、抗原に対する抗体の反応から生じる障害と定義することができ、これには、自己免疫疾患および感覚過敏反応(例えば、I型:アナフィラキシー、蕁麻疹、食物アレルギー、喘息;II型:自己免疫性溶血性貧血、血液透析反応;III型:血清病、壊死性血管炎、糸球体腎炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス;IV型:接触皮膚炎、移植拒絶)が含まれる。
免疫系が自己反応性リンパ球を発生時において除去できず、その後の調節の破綻により、自己反応性T細胞クローンまたは自己反応性B細胞クローンが活性化して、自己抗原に対する体液性反応または細胞媒介性反応が生じ、これにより、細胞および臓器に対する重篤な損傷が引き起こされる場合に、自己免疫疾患は生じる。
別の実施形態において、障害は、炎症性疾患である。
炎症は、刺激または傷害に対する身体組織の防護反応であり、急性の場合もあり、慢性の場合もある。したがって、炎症性障害には、サイトカイン放出、ヒスタミン放出、酸化的バースト、食作用、他の顆粒酵素の放出、および走化性が生じる好中球、単球、マスト細胞、好塩基球、好酸球、マクロファージを伴う疾患が含まれる。感覚過敏反応(免疫病理学的障害の下に上記で定義された)は、補体の活性化、および好中球、マスト細胞、好塩基球など、各種の白血球の動員/浸潤を伴うことが多いため、これらもまた炎症性疾患(急性または慢性)と考えることができる。
したがって、本発明を用いて治療または予防し得るヒトまたは他の動物種の障害としては、それだけに限らないが、
i)虚血/再灌流傷害、再灌流傷害、脳卒中、成人呼吸逼迫症候群(ARDS)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、乾癬、移植拒絶、皮膚または臓器に対する白血球の浸潤を伴う癌、水泡性類天疱瘡、抗リン脂質抗体症候群(APS)など、白血球の遊走および/または白血球の活性化を伴う障害;
ii)全身炎症反応症候群(SIRS)、敗血症性ショック、内毒素性ショック、アナフィラキシー性ショック、アナフィラキシー、薬剤アレルギー、感覚過敏反応、急性肺傷害などの急性炎症;
iii)乾癬、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息などの慢性炎症;
iv)全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎、強皮症、糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、グッドパスチャー症候群、乾癬性関節炎、水泡性類天疱瘡、重症筋無力症、グレーブス病、I型/若年発症型/インスリン依存型糖尿病、自己免疫性貧血(例えば、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血)(これにはi)と重複する例が含まれる)などの自己免疫疾患;
v)i)またはii)で対象とされない障害のほか、間質性炎症性疾患、脊椎関節症、脊椎炎、血管炎(例えば、壊死性血管炎、皮膚性血管炎、感覚過敏性血管炎、アレルギー性血管炎)、皮膚筋炎、皮膚炎(例えば、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹)、アレルギー性鼻炎を含めた炎症性疾患;
vi)移植拒絶(移植、例えば、同種移植、異種移植の後における)、移植対宿主病(GVHD)など、i)〜iii)で対象とされない障害を含めた免疫病理学的障害;
vii)加齢黄斑変性、敗血症、膜性増殖性糸球体腎炎、デンスデポジット病、およびアルツハイマー病を含めた、上記で言及されない他の種類の障害
が挙げられる。
治療有効量の抗体を投与することが典型的である。「治療有効量」という表現は、対象における治療または他の治療的効果を促進、誘導、および/または増強するのに十分な量を指す。実施例節に記載の「治療有効量」の例は、10mg/kgである。
別の実施形態では、本発明の各種の抗体を用いて、例えば、好中球、単球、および/または受容体遺伝子をトランスフェクトした細胞上におけるC5aRを検出するか、または受容体の発現を測定することができる。したがって、これらはまた、診断または研究を目的とする細胞分類(例えば、フローサイトメトリー、蛍光活性化による細胞分類)などの適用においても有用である。
本発明の抗C5aR抗体は、特に、診断的適用のために、C5aRの存在または不在の検出において価値を有する。典型的には、診断的アッセイは、C5aRに対する抗体またはそのフラグメントの結合から生じる複合体の形成の検出を伴う。診断的目的の場合、抗体または抗原結合フラグメントは、標識される場合もあり、未標識の場合もある。抗体またはフラグメントは、直接的に標識することができる。それだけに限らないが、放射性核種、蛍光物質、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、およびリガンド(例えば、ビオチン、ヘプテン)が含まれる各種の標識を用いることができる。当業者には、多数の適切なイムノアッセイが知られている(例えば、US3,817,827;同3,850,752;同3,901,654;および同4,098,876を参照されたい)。本発明の診断法では、組織試料の免疫組織化学もまた用いることができる。未標識の場合、抗体またはフラグメントは、例えば、凝集アッセイにおけるとおり、適切な手段を用いて検出することができる。未標識の抗体またはフラグメントはまた、第1の抗体(例えば、未標識の免疫グロブリンに特異的な抗イディオタイプ抗体または他の抗体)または他の適切な試薬(例えば、標識されたプロテインA)と反応性の標識された抗体(例えば、第2の抗体)など、抗体を検出するのに用い得る別の(すなわち、1つまたは複数の)適切な試薬との組合せでも用いることができる。
造影剤については、用い得る任意の適切な薬剤としては、それだけに限らないが、MRI剤、CT造影剤、光学造影剤、超音波造影剤、paraCEST造影剤、およびこれらの組合せが挙げられる。ある実施形態において、該薬剤は、プロトンベースのMRI、またはスカンジウム、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、セリウム、インジウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、およびイッテルビウムからなる群から選択される常磁性金属キレートを含むparaCEST剤である。さらなる実施形態において、該薬剤は、ヨウ素化油ナノ粒子または封入型固体金属粒子を含むCT造影剤であり得る。本発明に有用な造影剤のさらなる例は、PFOBまたは他のフッ素ベースのMRI剤など、ハロカーボンベースのナノ粒子である。
生物学的試料中におけるC5aRタンパク質の存在を検出するのに用いられるキットもまた調製することができる。このようなキットは、C5aRに結合する本発明の抗体のほか、該抗体またはフラグメントとC5aRとの間における複合体の存在を検出するのに適する1つまたは複数の補助試薬も包含し得る。本発明の抗体組成物は、単独の、または他のエピトープに特異的なさらなる抗体と組み合わせた凍結乾燥形態で提供することができる。標識される場合もあり未標識の場合もある抗体は、付属成分(例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、および炭酸緩衝液などの緩衝液、安定化剤、賦形剤、殺生物剤、および/または不活性タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン)を伴うキット内に包含され得る。例えば、付属成分との凍結乾燥混合物として抗体を提供することもでき、付属成分を別個に提供して使用者が混合することもできる。一般に、これらの付属物質は、活性抗体量に基づく約5%未満の重量で存在し、通常、抗体濃度に基づく重量による少なくとも約0.001%の総量で存在する。該抗体に結合可能な第2の抗体を用いる場合、このような抗体はキット内、例えば、別個のバイアルまたは容器内において提供することができる。存在する場合、第2の抗体は、標識されることが典型的であり、本明細書に記載の抗体製剤と類似の形で処方することができる。
組成物および投与方式
投与される本発明の抗体の製剤は、選択される投与経路および組成物の性質(例えば、溶液、エマルジョン、カプセル)によって異なる。投与される本発明の抗体を含む適切な医薬組成物は、生理学的に許容される担体中において調製することができる。抗体の混合物もまた用いることができる。溶液またはエマルジョンの場合、適切な担体には、例えば、水溶液、アルコール/水溶液、生理食塩液および緩衝媒体を含めたエマルジョンまたは懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が含まれ得る。水、緩衝水、緩衝生理食塩液、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、デキストロース溶液、およびグリシンを含めた各種の適切な水性担体が当業者に知られている。静脈内媒体には、各種の添加剤、防腐剤、または流体、栄養素もしくは電解質補給剤が含まれ得る(全般的に、「Remington's Pharmaceutical Science」、第16版、Mack編、1980を参照されたい)。組成物は、場合によって、pH調整剤およびpH緩衝剤、ならびに毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウムなど、生理学的状態を近似するのに必要とされる薬学的に許容される補助物質を含有し得る。
本発明の抗体は、当技術分野で知られている凍結乾燥法および再構成法により、凍結乾燥させて保管し、使用前に適切な担体中で再構成することができる。選択された媒体中における(1つまたは複数の)有効成分の最適濃度は、当業者によく知られた手順により経験的に決定することができ、これは、所望される最終的な医薬製剤に依存する。吸入の場合、抗体またはフラグメントは、溶解させ、投与に適する分注器(例えば、噴霧器(atomizer、nebulizer)、または高圧エアゾール分注器)内に充填することができる。
治療される疾患または状態に応じて、必ずしもそれだけに限らないが、経口投与、食餌投与、局所投与、非経口投与(例えば、静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、皮下注射)、吸入投与(例えば、気管支内投与、眼内投与、鼻腔内投与、または経口吸入、鼻腔内滴下)を含めた各種の投与経路が可能である。他の適切な投与法にはまた、充電式デバイスまたは生体分解性デバイスおよび徐放ポリマーデバイスも含まれる。
本発明の医薬組成物はまた、他の薬剤との組合せ療法の一部としても投与することができる。このような他の療法/薬剤は、当業者によく知られている。一実施形態において、障害は、関節リウマチであり、他の治療薬は、それだけに限らないが、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、D−ペニシラミン、金塩(金チオリンゴ酸ナトリウム、アウラノフィン)、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、スルファサラジンおよびシクロホスファミドおよびグルココルチコステロイドを含めたATCコードM01Cクラスの抗リウマチ薬、およびATCコードL04クラスの免疫抑制薬から選択される。別の実施形態において、障害は、全身性エリテマトーデスであり、他の治療薬は、それだけに限らないが、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、D−ペニシラミン、金塩(金チオリンゴ酸ナトリウム、アウラノフィン)、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、スルファサラジンおよびシクロホスファミド、グルココルチコステロイド、マイコフェノール酸またはマイコフェノレート、およびタクロリムスを含めたATCコードM01Cクラスの抗リウマチ薬、およびATCコードL04クラスの免疫抑制薬から選択される。別の例において、本発明の抗体はまた、他の抗体と組み合わせて(例えば、それだけに限らないが、CCR2およびCCR3を含めたケモカイン受容体に結合する抗体と組み合わせて)、または抗TNF薬、または他の抗炎症薬、または予防的もしくは治療的処置において用いられる、市販のガンマグロブリン製品および免疫グロブリン製品など、既存の血漿製品と組み合わせても用いることができる。本発明の抗体は、抗生剤および/または抗微生物薬と共に施される、個別投与の組成物として用いることができる。
本発明の抗体を投与するための用量範囲は、免疫病理学的疾患の症状を改善するか、または感染症の可能性もしくは免疫系の過剰刺激を軽減する所望の効果をもたらすのに十分な高用量である。用量は、過粘稠度症候群、肺浮腫、うっ血性心不全などの有害な副作用を引き起こすほどの高用量ではないものとする。一般に、用量は、患者における年齢、状態、性別、および疾患の程度により異なり、当業者により決定され得る。用量は、合併症がある場合、個々の医師により調整され得る。用量は、約0.1mg/kg〜約300mg/kg、好ましくは約0.2mg/kg〜約200mg/kg、またより好ましくは約0.5mg/kg〜約20mg/kgで変化し得る。用量の投与は、毎日、毎週、もしくは隔週、または必要と判定される他の任意の頻度のほか、毎日複数回でもあり得、慢性疾患の場合、投与は、何カ月間(またはさらに何年間)にもわたり継続され得る。
本発明の抗体は、該抗体をコードする配列を含む核酸分子を投与することにより、対象内に導入し得ることを当業者は理解するであろう。核酸分子は、DNAまたはRNAの形態の場合もあり、DNAおよびRNAの両方を含むキメラ分子の場合もある。抗体をコードする(1つまたは複数の)ヌクレオチド配列は、該薬剤をコードする配列が発現制御エレメントと作動可能に連結される発現ベクター内にクローニングすることができる。発現制御エレメントは当技術分野においてよく知られており、これには例えば、プロモーター、エンハンサー、ならびに適切な開始コドンおよび終始コドンが含まれる。
in vivoの標的細胞内に抗体をコードする核酸を導入するには、各種の方法を用いることができる。例えば、裸の核酸を標的部位に注射することもでき、これをリポソーム内に封入することもでき、ウイルスベクターを介してこれを導入することもできる。
TSP−1をコードする核酸をin vivoの非分裂細胞または分裂細胞内へと安定的に遺伝子導入するには、単独の、または例えば、カチオンリポソーム内に封入した核酸分子の直接的な注射を用いることができる(Ulmerら、1993)。加えて、粒子照射法を用いて、in vivoの各種の組織内に核酸を導入することもできる(Williamsら、1991)。
抗体をコードする核酸分子をin vivoにおける特定の細胞型内へと遺伝子導入するには、ウイルスベクターが有用である。ウイルスは、特定の細胞型内において感染および増殖し得る特殊な感染性作用物質である。特定の細胞型に感染するこの特異性は、選択されたin vivoにおける細胞を抗体の標的とするのにとりわけ適する。ウイルスベクターの選択は、標的とされる細胞型に部分的に依存する。
当技術分野では、特定の細胞型を標的とし得る特殊なウイルスベクターがよく知られている。このようなベクターには、例えば、一般的プロモーターまたは組織特異的プロモーターを有する組換えアデノ関連ウイルスベクターが含まれる(US5,354,678)。組換えアデノ関連ウイルスベクターは、該組換えウイルスを、増殖しない休眠細胞のクロマチン内にも安定的に組み込み得るというさらなる利点を有する(Lebkowskiら、1988)。
組織特異的なプロモーターまたはエンハンサーをベクター内に組み込むことにより、コードされる抗体を発現する細胞型をさらに制御するようにウイルスベクターを構築することができる(Daiら、1992)。
レトロウイルスベクターもまた、in vivoにおいて抗体をコードする核酸分子を送達する方法に適する。このようなベクターは、感染性粒子として機能する可能性もあり、初回1回だけの感染ラウンドを経過する非感染性粒子として機能する可能性もある。
架橋形成分子を介して核酸分子と非共有結合的に複合体化する組織特異的なリガンドまたは抗体を用いて、抗体をコードする核酸分子を組織特異的な形で細胞内に送達するには、受容体を介するDNA送達法もまた用いることができる(Curielら、1992; WuおよびWu、1987)。
対象内において抗体を発現させる遺伝子導入はまた、例えば、ex vivoにおける自己細胞のトランスフェクションによっても実施することができる。血液細胞は、当技術分野でよく知られた方法による操作および対象内への再導入に容易に使用可能であるため、このようなex vivoにおけるトランスフェクションに適する細胞にはこれらの細胞が含まれる。
ex vivoにおける細胞のトランスフェクションを介する遺伝子導入は、例えば、リン酸カルシウム沈殿、ジエチルアミノエチルデキストラン、電気穿孔、リポフェクション、またウイルス感染を含めた各種の方法により実施することができる。このような方法は、当技術分野においてよく知られている(例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Springs Harbour Laboratory Press(1989)を参照されたい)。細胞は、トランスフェクトされると、治療される対象内に再移植(transplantまたはgraft)される。体内に導入された細胞は、抗体を産生することが可能であり、これが循環内に入り、疾患または状態の部位において血小板の凝集を阻害し得る。
ヒト化プロセス
CDRおよびフレームワークの残基を規定する
抗体のCDRおよびフレームワーク領域は、通常、Kabat、ChothiaまたはIMGT(ImMunoGeneTics information system(登録商標)http://imgt.cines.fr)などの種々の番号付けスキームに従って定義される。Kabatの定義は、配列可変性に基づき、最も一般に使用されるものである。しかし、Kabatにより規定されるような所与の抗体に関するCDRは、他の番号付けシステムによって規定されるCDRと必ずしも同一ではない。2つの番号付けシステムによって規定されたCDRは重複してもよく、一方が他方のいずれかの側に数残基伸びてもよい。
本発明者らは、KabatおよびIMGTの番号付けシステムの組合せを使用して、可変(V)ドメイン中のCDRおよびフレームワーク領域を規定した。本発明者らは、抗原結合ポケットの構造を保存するために、ヒトフレームワーク中に移植されたマウスCDR配列の範囲を最大化することを望んだ。そこで、C5aR抗体のCDRは、KabatおよびIMGTの両方の番号付けシステムによってCDRとして分類されたすべての残基を含んだ。残りの配列は、Vドメインフレームワークを含んだ。
適切なヒト抗体フレームワーク配列を選択する
マウスCDRを移植する適切なヒト抗体フレームワーク配列を選択するために、本発明者らは、多数のストラテジーを使用した:
i)配列データベースのBlast検索により、マウスC5aR抗体に対して最高の相同性を有するヒトIg V領域の軽鎖および重鎖の配列を同定した。最も相同性が高い配列をアラインさせ、軽鎖および重鎖についてコンセンサスフレームワーク配列を作製した。
ii)マウスC5aR抗体の重鎖または軽鎖に対して高い相同性を有する既知のヒト抗体を同定し、V領域フレームワーク(または改変バージョン)を使用して、マウスC5aR抗体のCDRを移植した。
iii)マウスC5aR抗体に類似するフレームワーク配列を利用する他の成功したヒト化抗体を同定し、マウスCDRをこれらのフレームワークに移植した。
配列データベースから相同な抗体を選択する
マウスC5aR抗体、7F3可変領域アミノ酸配列(重鎖および軽鎖の両方、配列番号1および2を参照のこと)を、SWISSPROTおよびGenbankデータベース中のヒト免疫グロブリンのBlastp検索においてクエリー配列として個々に使用した。
マウス7F3可変領域DNA配列(重鎖および軽鎖の両方をコードする、配列番号3および4を参照のこと)を、ヒト免疫グロブリン遺伝子のIMGTデータベースのBlast検索においてクエリー配列として個々に使用した。
クエリー配列に対して最高の相同性を有する配列のリストを、各検索から作製した(表2および3)。
コンセンサスフレームワーク配列−軽鎖7F3
7F3軽鎖CDRを移植するための軽鎖ヒトフレームワークコンセンサス配列を、表2中の以下の配列をアラインさせることによってClustalWを用いて生成した:KV2F_HUMAN、KV2D_HUMAN、KV2E_HUMAN、KV2B_HUMAN、KV2A_HUMANおよびDNA配列X12691、U41645、U41644、M31952のアミノ酸翻訳。このアラインメントおよびコンセンサス配列を図1中に示す。このヒトコンセンサスフレームワークは、マウスC5aR抗体7F3軽鎖フレームワーク配列に対して86%同一であった。
コンセンサスフレームワーク配列−重鎖7F3
7F3重鎖CDRを移植するためのコンセンサスヒトフレームワーク配列を、以下のように作製した:
a)V領域アミノ酸配列HV1C_HUMAN、HV1B_HUMAN、HV1G_HUMANおよびHV1A_HUMANならびにV遺伝子配列X92343、X62109、M99641、M99642およびZ12305のアミノ酸翻訳を、CLUSTALWを使用してアラインさせ、コンセンサスV領域フレームワーク配列を生成した。
b)J領域アミノ酸配列HV3K_HUMAN、HV2I_HUMAN、HV1C_HUMAN、HV3H_HUMANおよびHV3T_HUMANを、CLUSTALWを使用してアラインさせ、コンセンサスJ領域フレームワーク配列を生成した。
これらのアラインメントおよびコンセンサス配列を図2に示す。
相同なヒト化抗体を選択する
他の適切なフレームワーク配列を、マウス抗体配列と最も近く一致する成功したヒト化抗体に関する文献を検索することによって選択した。
2つの軽鎖フレームワーク配列を、7F3軽鎖CDRを移植するために同定した:
・Caldasら(2003)に記載されたKV2Fベースの配列
・Nisiharaら(2001)に記載されたHuVL−19ベースの配列
7F3重鎖CDRを移植するために同定された重鎖フレームワーク配列は以下のとおりであった:
・ Caldasら(2000)に記載されたHG3ベースの配列
・ Nisiharaら(2001)に記載されたSGI−VHベースの配列
フレームワーク配列へのCDRの移植ならびにヒト化軽鎖配列および重鎖配列の作製
ヒト化7F3軽鎖
3つのバージョンのヒト化7F3軽鎖可変領域を作製した。
第1のヒト化7F3軽鎖可変領域は、図1からコンセンサスヒトフレームワーク配列を取得し、この配列をマウス7F3フレームワーク配列と比較し、ヒトフレームワーク中の選択されたアミノ酸をマウス残基に逆変化させ、次いでマウス7F3軽鎖CDRに移植することによって設計した(図3)。マウス配列に逆変化させるために選択したヒトフレームワーク中の残基は以下のとおりであった:#2でIleからVal、#15でProからLeuおよび#92でTyrからPhe。最初の2つの変化は、マウスにおいて見出された残基が、マウス7F3に対して最も相同性が高いヒト配列(すなわち、KV2F_HUMAN)中のアミノ酸と一致したために行った。3番目の変化は、CDR3に近いこと、および抗体結合領域の構造への変化を最小化する必要性に起因して、行った。マウス7F3軽鎖CDRを、改変されたコンセンサスフレームワーク配列中に移植して、配列h7Vk(図3)(配列番号31)を作製した。
第2のヒト化7F3軽鎖可変領域は、マウス7F3軽鎖CDRをヒト化HuVL−19フレームワーク配列、RNOK203VL、上記(図4)に移植することによって作製した。これにより、配列h7aVk(図4)(配列番号32)が得られた。
第3のヒト化7F3軽鎖可変領域は、マウス7F3軽鎖CDRをKV2F由来のフレームワーク配列VLCD18−Q、上記(図5)に移植することによって作製した。KV2F_HUMANフレームワーク配列(図1および配列番号5を参照のこと)と比較して、2つのアミノ酸を、マウス7F3配列に逆変化させた:#51ではArgからLeuに変化して、2番目の荷電残基が除去された。このとき、マウスにおいてはただ1つの変異が存在し、#109でValからLeuであった。さらなる1つの差異は、嵩高い側鎖を除去する、残基#105でのGlnからGlyへの変化である。これにより、配列h7bVk(図5)(配列番号33)が得られた。
作製された3つのヒト化7F3 Vk配列の比較を図6に示す。これらの配列は、フレームワーク領域中の2〜5の位置でコンセンサス配列h7F3 VkConsから変化しており、これは、これらすべてが互いに93%同一であることを意味する。以下に示すデータは、特定の軽鎖を含むヒト化7F3抗体が、他のものよりも好ましいことを示している。特に、CDRループL1とL2との間の残基が重要であり、この領域中での特定の変化は有害な影響を有し得る(例えば、残基#41でのCys残基の導入)。さらなる荷電残基の導入などの他の変化は、相対的な影響をほとんど有さなかった。これらの変化を含む抗体の特性に対して有害でない他の変化が、ヒト化7F3 Vk配列に対してなされ得る。
ヒト化7F3重鎖
3つのバージョンのヒト化7F3重鎖可変領域を作製した。
第1のヒト化7F3重鎖可変領域は、図2からコンセンサスヒトフレームワーク配列を取得し、この配列をマウス7F3フレームワーク配列と比較し、ヒトフレームワーク中の選択されたアミノ酸を変化させ、次いでマウス7F3重鎖CDRに移植することによって設計した(図7)。ヒトコンセンサスフレームワーク中の変更させた残基は以下のとおりであった:#20でIleに、#43でLysに(荷電残基を保持するため)、#72でAlaに(荷電残基を除去するため)、#91でSerに、および#95でPheに。これらの残基はマウスフレームワークと同じであったが、少なくとも1つのヒトIg配列中にも見出された。さらに、F3中の比較的あいまいな領域を、この時点でHV1Av配列を選択することによって解消し、こうして残基#70でIleを、#74でGluを組み込んだ。マウス7F3重鎖CDRを改変されたコンセンサスフレームワーク配列中に移植することにより、配列h7Vh(図7)(配列番号34)を作製した。
第2のヒト化7F3重鎖可変領域は、マウス7F3重鎖CDRをSGI−VH由来のフレームワーク配列、上記(図8)に移植することによって作製した。SGI−VHフレームワーク中の6つの位置で、ヒト残基をマウス7F3残基に変化させた。これらの変化は、残基#38(ArgからLys)、#48(ValからIle)、#67(ArgからLys)、#68(ValからAla)、#72(LeuからAla)および#77(AsnからSer)で行った。これらの残基がCDRのH1またはH2に密に近接しており、結合ポケットの形成に重要であると考えられたために、これらの変化を行った。例えば、配列RNOK203VHを作製するためのSGI−VH中のこれらの位置での逆変異は、ヒト化抗FasL抗体の中和活性を改善することが示されている(Nisiharaら、2001)。これにより、配列h7aVh(図8)(配列番号35)が得られた。
第3のヒト化7F3重鎖可変領域は、マウス7F3軽鎖CDRをHG3由来のフレームワーク配列、上記(図9)に移植することによって作製した。HG3フレームワーク中の1つの位置、残基#71(Arg)を、マウス7F3残基(Ala)に逆変異させて、正に荷電した残基を除去した。これにより、配列h7bVh(図9)(配列番号36)が得られた。
作製された3つのヒト化7F3 Vh配列の比較を図10に示す。これらの配列は、フレームワーク領域中の1〜8の位置でコンセンサス配列h7F3VhConsから変化しており、これは、これらすべてが互いに90%同一であることを意味する。配列間のいくつかの重要な差異には、残基#43でのLys対Glnおよび#74でのGlu対Thrが含まれる。しかし、以下に示すデータは、3つの重鎖のいずれかを含むヒト化7F3抗体が、ヒトC5aRへのC5aの結合を遮断するのに有効であることを示している。従って、Vh配列間の差異は重要でないと思われ、このような改変配列を含む抗体の特性に有害でない他の変化が、ヒト化7F3 Vh配列になされ得る。それにもかかわらず、ヒト化7F3 Vh配列になされた特定の置換は抗体の特性を改善し得る可能性があり、他の置換は有害である可能性がある。
分子モデリング
背景
抗体結合部位のモデリングは、タンパク質相同性モデリング(多数の抗体構造が既知のデータベースとして機能し得る)とab initioモデリング(相同性法を適用するにはあまりに可変すぎる抗体の部分のために使用すべきもの)との組合せである。可変フラグメント(Fv)フレームワーク領域(FW)の大多数は、種々の抗体間で構造が十分保存されている。特にβ鎖で生じるバリエーションを考慮した後、このフレームワークは、モデリングするFvに配列が最も近い既知の構造の選択によって、モデリングできる。
抗体中のほとんどの配列および構造の可変性は、抗原に結合する超可変領域(CDR)に制限される。これら6つのループ(L1、L2、L3、H1、H2およびH3)は抗体表面に位置し、これらのCDRのモデリングは最大の困難となっている。H3以外のすべてのCDRは、通常、2〜6の構造的(カノニカル)クラスのうち1つに入る(ChothiaおよびLesk、1987;Chothiaら、1989)。カノニカルクラスのメンバーは、すべてほぼ同じ骨格コンフォメーションを有する。つまり、未知のCDRをモデリングするためには、配列を試験し、適切なカノニカルクラスを割り当て、最も配列が相同な既知のCDRを使用する。H3ループは、構造間でコンフォメーションがかなり異なるため、モデリングがより困難である。
現在の抗体モデリング方法は通常、相同性アプローチをとっている(例えば、Pulitoら、1996;Eigenbrotら、1993;Barryら、1994を参照のこと)。WAM(Web Antibody Modelling、http://antibody.bath.ac.ukを参照のこと)が使用するアルゴリズムは、既知の抗体構造のデータベースから選択された、モデリングする配列に対して最も配列が相同なフレームワークおよびカノニカルCDRループを使用する。
ノンカノニカルループには、異なる方法が使用される。これはMartinら(1989)のCAMAL(Combined Antibody Modelling Algorithm)であり、データベース/コンフォメーション検索の組合せからなる。
モデル作製
WAMを使用して、マウス7F3 Fv領域(重鎖および軽鎖の両方を有する)のモデルならびにヒト化7F3 Fv領域のモデルを作製した。
本発明者らは、ヒト化7F3の重鎖および軽鎖のそれぞれについていくつかの配列変異体を作製していたので、ヒト化Fv領域の多数のモデルを作成した(それぞれ、1つのV領域軽鎖およびV領域重鎖を含む)。各ヒト化Fvモデルをマウス7F3 Fv構造と比較し、CDRの構造をDeepView/SWISS−PdbViewerを使用して詳細に比較した。2つの構造間の差異を強調した。例えば、h7Vk−h7Vh構造を7F3 Fv構造と比較したとき、7F3 Vkへのh7Vk軽鎖の一致は非常に良好であり、ほぼ同一であったが、重鎖CDR H2およびH3は密にアラインしなかった。対照的に、h7aVk−h7aVh配列を含む別のモデルにおいて、7F3 Vhとの重鎖アラインメントはh7Vhとよりも良好であったが、軽鎖アラインメントはCDRがかなり異なっていた。この分析から、h7Vkとh7aVhとの組合せは、7F3に最も類似した抗体を生じ得ると推測された。h7bVk−h7bVh配列を含む抗体の分析により、CDR Ll、H1、H2およびH3が、他のh7F3重鎖および軽鎖と比較して、等価な7F3のCDRとは、構造的により異なっていることが明らかとなった。これは、h7bVkまたはh7bVh配列を含む抗体が、これらの配列を含まない7F3またはヒト化7F3抗体ほど有効ではない可能性があることを示唆している。これを考慮すると、h7bVh配列を含む1つの抗体が7F3に対する優れた活性を有していることが示されたことは、驚くべき予測できないことであった(例えば、実施例5、図17を参照のこと)。
次のステップは、in vitroおよびin vivoで試験するために、上記ヒト化7F3重鎖および軽鎖の配列を抗体へと変換することであった。
ヒト化抗体の発現および産生
抗体可変領域遺伝子を、定常領域遺伝子を含むベクター中にクローニングする
重鎖および軽鎖の可変アミノ酸配列を、上記のように設計した。これらのドメインを含む抗体を産生するために、各可変領域をコードするDNA配列を合成した(Genescript Corp.)。ベクターpUC18中へのクローニングを容易にするために、EcoR1部位およびHindIII部位を5’末端または3’末端に付加した。さらに、軽鎖可変遺伝子は、各末端に独自のBsmB1制限部位を有していた。重鎖遺伝子は5’末端にBsmB1部位を有し、3’末端にNhe1部位を有していた。
全長抗体遺伝子を構築するために、分泌シグナルおよび定常領域をコードするベクター中に可変領域遺伝子をサブクローニングした。軽鎖については、このベクターは、2つの独自のBsmB1部位によって分離された、分泌シグナル配列およびヒト定常κ(Cκ)領域遺伝子を含んでいた。重鎖ベクターは、BsmB1部位およびNhe1部位によって分離された、分泌シグナルおよびヒト定常γ(Cγ)領域遺伝子を含んでいた。重鎖ベクターは、γ1(Cγ)、γ2(Cγ)、γ3(Cγ)、γ4(Cγ)、γ4PE変異体(Cγ4PE)またはγ4変異体(Cγ4)遺伝子のいずれかを含んでいた。
クローニングプロセスは、標準的方法によるプラスミドDNAの調製、製造業者(New England BiolabsおよびPromega)が推奨するBsmB1(軽鎖ベクターおよびVk領域遺伝子)またはBsmB1およびNhel(重鎖ベクターおよびVh領域遺伝子)によるプラスミドDNAの消化、アガロースゲル電気泳動によるDNAフラグメントの分離、ゲル抽出キット(JetQuick、Genomed)を使用したゲルからのDNAフラグメントの回収、ベクターフラグメントへの可変遺伝子フラグメントのライゲーション(T4 DNAリガーゼ、Promega)、コンピテントE.coli細胞(TOP10、Invitrogen)中へのDNAの形質転換を含んでいた。形質転換細胞由来のプラスミドDNAを、制限消化によって分析し、プラスミド中の抗体配列を配列決定して、正しいリーディングフレームでサブクローニングされた可変領域を確認した。
抗体遺伝子を発現ベクター中にサブクローニングする
全長抗体遺伝子が正確な配列を有していることを確認した後で、それを発現ベクター中にサブクローニングした。使用できる発現ベクターの例には、pcDNA、pLENTI、pT−REX、pAd、pREPまたはpCEP哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)、pTriExlまたはpBacベクター(Novagen)、ZAPおよびpCMV発現ベクター(Stratagene)、GS発現系ベクター(例えば、pEE12.4およびpEE6.4(Lonza))、pCMV5 cumate発現系ベクター(Qbiogene)、UCOE発現系プラスミド(ML Laboratories)またはMARtech発現プラスミド(Selexis)のいずれかが挙げられる。この場合、重鎖遺伝子(5’末端にHindIII部位を有し、3’末端にEcoR1部位を有する)を、マウスDHFR遺伝子を含むpcDNA3由来ベクター(Invitrogen)中のCMVプロモーターの下流のHindIII−EcoR1部位および/またはGS発現ベクター(Lonza)中にサブクローニングした。軽鎖遺伝子(5’末端にSpe1部位を有し、3’末端にEcoR1部位を有する)を、pTracer−CMV/BSD(Invitrogen)のNhe1−EcoR1部位中にサブクローニングした。5’末端にHindIII部位を有し、3’末端にEcoRI部位を有する軽鎖遺伝子も、GS発現ベクター(Lonza)のHindIII−EcoRI部位中にサブクローニングした。ある場合には、重鎖発現カセット(プロモーター、軽鎖コード配列およびポリアデニル化シグナル)を軽鎖ベクター中にサブクローニングして、重鎖および軽鎖の両方を発現する単一のベクターを作製した。
哺乳動物細胞においてヒト化抗体を発現させる
ヒト化抗体を発現させるために、重鎖および軽鎖のベクターを、リポフェクタミン(Invitrogen)を使用してCHO細胞中に共トランスフェクトした。あるいは、ベクターDNAは、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接インジェクション、遺伝子銃または当業者に公知の別の方法によってトランスフェクトできる。あるいは、ベクターDNAは、任意の多数の細胞株(例えば、CHOK1SV、HEK293、PerC6またはNS0)中にトランスフェクトできる。ある場合には、重鎖および軽鎖の両方をコードする単一のベクターを、エレクトロポレーションにより、またはリポフェクタミンを使用して、細胞中にトランスフェクトした。
形質転換の一日前に、4×10のCHO dhfr細胞(ATCC)を、15mlの非選択的培地(ヌクレオシドを含むα−MEM(Invitrogen)、2mMのL−グルタミン、10%FBS)中でT175フラスコ中に播種し、5%CO中37℃でインキュベートした。トランスフェクションの直前に、800μlの増殖培地中のプラスミドDNA(15μg)を、800μlの増殖培地中の100μlのリポフェクタミン(Invitrogen)に添加し、室温で20分間インキュベートした。細胞単層をPBSでリンスし、DNA/リポフェクタミン混合物を、5mlの増殖培地を含むフラスコに添加した。5%CO中37℃で16時間インキュベートした後、もう10mlの培地を添加した。一日後、細胞をPBSで洗浄し、15mlの選択培地(ヌクレオシドを含まないα−MEMおよび5%透析FBS)を添加した。2日後、1ウェル当たり約2〜5細胞の平均密度で、接着細胞を96ウェルの組織培養プレート中に再プレートした。さらに2〜3週間の増殖の後、ヒトIgG特異的ELISAを使用して抗体産生を測定した。抗体を発現する細胞を、産生のためにT−フラスコ中に増殖させた。培養培地を回収し、以下に記載するように抗体を精製した。GS系発現ベクターをCHOK1SV細胞中にトランスフェクトし、抗体分泌細胞株を単離して、製造業者(Lonza)の推奨するとおりに産生のために増殖させた。
ヒト化抗体の精製
トランスフェクトされた細胞は、増殖培地中に抗体を分泌する。抗体を、プロテインAまたはプロテインGアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。SDS−PAGEまたはヒトIgG特異的ELISAによって同定した、抗体を含む画分をプールした。ヒトIgG特異的ELISAを使用して、回収された抗体の量およびその濃度を決定した。抗体純度を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって概算した。
産生しアッセイしたヒト化抗体のリスト
表4は、産生された種々の抗体を列挙し、抗体中に存在する重鎖および軽鎖の配列を示す。
ヒト化抗C5aR抗体を用いた結合研究
ヒトC5a受容体(hC5aR)に対するヒト化抗C5aR抗体の結合動態を特徴付けるために、2つのタイプの結合研究を本実施例に記載する。第1の結合研究は、競合的リガンド結合アッセイにおいてヒトC5aRに対する抗体およびC5aの結合を比較した。第2の結合研究は、ヒトC5aRを発現する細胞における飽和結合を含んだ。
A.ヒト化抗C5aRは、C5aRへのC5a結合を置換する−競合的リガンド結合アッセイ
hC5aR遺伝子をトランスフェクトしたL1.2細胞またはヒト好中球への125I標識C5aの結合を阻害するヒト化Abの能力を、以下に記載するとおり試験した。組換えヒトC5aは、Sigma Chemical Co.(St.Louis、MO)から取得した。2200Ci/mMの比活性を有する125I−Bolton−Hunter標識した補体C5aは、NEN−Dupont(Boston、MA)から購入した。簡潔に述べると、L1.2/hC5aR安定トランスフェクタントを数日間増殖させ、その後実験を5mM酪酸で一晩処理して、結合アッセイ前にhC5aR発現を刺激した。ヒト好中球を、健康なボランティアから採取した静脈血から精製した。好中球は、パーコール密度遠心分離によって他の白血球から分離し、その後赤血球溶解ステップを行った。両方の細胞型をPBSで1回洗浄し、結合緩衝液(50mM Hepes、pH7.5、1mM CaCl、5mM MgCl、0.5% BSA)中に1×10/mlの濃度で再懸濁した。40μl(4×10細胞)のアリコートを、96ウェルのマイクロタイタープレート中に分配し、その後非放射性競合物(抗体またはヒトC5a)を添加した。細胞および非放射性競合物を室温で15分間インキュベートし、その後、放射能標識したC5aを0.4nMの最終濃度になるよう添加した。最終反応体積は120μlであった。室温で60分間のインキュベーション後、0.15MのNaClを含む結合緩衝液150μlで、細胞を3回洗浄した。次いで、細胞ペレットを、TopCount Scintillation Counter(Packard)で計数した。試料を、各々6〜8の濃度で、3連でアッセイした。各抗体は、少なくとも3回の別々のアッセイで試験した。各試料中の計数を、バックグラウンドの差し引き後、非放射性競合物を添加していないウェルで観察された最大125I−C5a結合の百分率として表した。
ヒト好中球およびL1.2/hC5aRトランスフェクタントにおける、マウス抗体7F3と比較した各ヒト化抗体についてのこの分析の結果(置換曲線)を、それぞれ図11および12に示す。表5は、各抗体についてのEC50値を示す。これらの値は、Graphpad Prismソフトウェアを使用して、データを1部位での競合に関する非線形方程式にフィッティングさせて得た。データは、すべてのヒト化抗体が受容体から放射能標識C5aを置換するのに等しく有効であるわけではないことを示している。ヒト化抗体OおよびNは、ヒト好中球ではマウス7F3と同様に有効であったが、抗体C、J、M、N、OおよびQは、L1.2/hC5aRトランスフェクタントでは7F3と有意に異ならなかった。
B.精製されたヒト好中球に対する抗C5aR抗体の飽和結合
上記のように単離したヒト好中球を、dPBS中に再懸濁し、1×10細胞(25μl中)を、96ウェルプレートのウェル中に分配した。等体積(25μl)の2×抗体(PBS中に希釈)を、各ウェルに添加した。2倍連続希釈を使用した最終抗体濃度は、40〜0ug/ml(未標識のhAb−Q、hAb−Jおよび7F3を使用)の範囲であった。細胞と抗体とを、4℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、100μl PBS+1% BCSを各ウェルに添加し、プレートを2,000rpmで3分間遠心分離した。細胞を、PBS+1% BCS中で3回洗浄し、PBS中に1/300希釈した抗ヒトIgG−FITC(Sigma F1641)または抗マウスIgG−FITC(Jackson 195−115−003)中に再懸濁し、氷上で20分間インキュベートした。細胞を上記のように1回洗浄し、フローサイトメトリーによる分析のためにPBS+1% FCS中に再懸濁した。FSC対SSC散乱を使用して好中球を同定し、各試料について中央値蛍光強度(MFI)を決定した。GraphPad Prism(v4.0)ソフトウェアを用いてデータ(MFI−バックグラウンド対log10[抗体濃度])をシグモイド用量反応(傾き変動)(すなわち、4パラメーターのロジスティック方程式)にフィッティングさせることによって、EC50値を決定した。BmaxおよびKを、1部位結合双曲線方程式にデータをフィッティングさせることによって決定した。
図13は、2つの飽和結合グラフを示し、x軸はlog10(EC50を計算するため)および線形(BmaxおよびKを計算するため)スケールである。データは、4℃でのヒト好中球へのヒト化抗C5aR抗体NおよびQの結合のKおよびEC50値が、7F3よりも約2〜3倍高かったことを示している。ヒト化抗体についてのKおよびEC50は類似しており、それぞれ約20〜25nM(約3ug/ml)であるが、7F3についてのKおよびEC50は、このアッセイの条件下で約8〜10nMの範囲であった。
ヒト化抗C5aR抗体は、ヒトC5aRの第2細胞外ループ中のエピトープEEYFPP(配列番号38)に結合する。
方法
キメラ受容体に対する抗体結合
マウスおよびヒトのC5aRのセグメントを含む一連のキメラ受容体を構築して、抗体が結合するC5a受容体の領域を同定した。これらの受容体は、標準的な分子技術を使用して作製した(Leeら、2006)。種々のキメラ受容体をコードする各組換えベクター(DMEM中希釈で5μg)を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して、5×10のマウスL1.2細胞中にトランスフェクトした。細胞を、10%ウシ胎児血清(Hyclone)を含むDMEMまたはRPMI(Invitrogen)中で増殖させた。24時間または48時間の後、細胞を1,500rpmで5分間遠心分離することによって回収し、FACS緩衝液(2%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水)中に再懸濁した。hAb−Qでの染色のために、0.5×10のトランスフェクト細胞を、1ウェル当たり50μlの体積中5μg/mlまたは10μg/mlの抗体と共に、4℃で20分間インキュベートした。細胞を上記のとおりペレット化し、150μlのFACS緩衝液で3回洗浄し、その後、1:200または1:300希釈したFITCコンジュゲート化抗ヒトIgG(Sigma、F1641)50μlを添加した。この混合物を4℃で20分間インキュベートし、その後細胞をペレット化し、FACS緩衝液で3回洗浄し、最後に150〜200μlのFACS緩衝液中に再懸濁した。試料はFACS Calibur(BD Biosciences)で分析した。
第2細胞外ループ由来のペプチドへの抗体結合
ヒトC5aRの第2細胞外ループ(第3細胞外ドメイン)にわたる、各々次のペプチドから1残基ずつずれた22個の重複するペプチド(12マー)のセットを合成した(Mimotopes、Melbourne)。各ペプチドは、そのN末端にビオチン基および4アミノ酸リンカー(SGSG)を付けて作製した。合成した1つのペプチド23番は、hC5aRの第2細胞外ループの全長(配列番号37由来の残基173〜205)に相当する33マーであり、これもN末端にビオチン−SGSGを有していた。この実験で使用したペプチドは、Leeら(2006)に記載されている。
この実験は、384ウェルのストレプトアビジン被覆プレートにペプチドを結合させ、次いでこのペプチドと共に抗体をインキュベートし、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲート化した抗マウスIgGを用いて、結合した抗体を検出することによって以下のように実施した。各ペプチドを200μlの60% DMSO中に溶解させて、10mg/mlの濃度にした。ペプチドを、PBS/Tween20/アジド溶液(PBS/0.05% Tween20中0.1%w/vのアジ化ナトリウム)でさらに1:1000希釈して、10μg/mlの作業濃度にした。
384ウェルのストレプトアビジン被覆プレート(Nunc)を、1ウェル当たり20μlのブロッキング緩衝液(PBS中1%w/vのBSA)でブロッキングした。プレートをPBS/Tween20緩衝液(PBS中0.1%v/vのTween20)で4回洗浄した。20μlの希釈ペプチド溶液をウェルに移し、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを(上記のように)4回洗浄した後、20μlの抗体(0.5、1、1.25、2.5または5μg/ml)をウェルに添加し、プレートを20℃で1時間インキュベートした。このプレートを上記のように4回洗浄し、次いで20μlのHRPコンジュゲート化抗マウスIgG(PBS/Tween20中に1:5000希釈)を各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、このプレートを(上記のように)3回洗浄し、次いでPBSで2回洗浄して微量のTweenを除去した。ペルオキシダーゼの存在を、新たに調製したTMB Substrate試薬(BD Opt EIA)を各ウェルに20μl添加し、室温で20分間インキュベートすることによって検出した。最後に、プレートを650nm/450nmで読み取った。
第2細胞外ループ内の必須アミノ酸の同定:アラニンスキャニング変異ペプチド。
エピトープEEYFPP(配列番号37由来の残基179〜184)(配列番号38)中の必須結合残基をさらに規定するために、ヒトC5aRの第2細胞外ループ配列VREEYFPPKVLC(配列番号37由来の残基177〜188)(配列番号58)を含み、結合モチーフ中の種々の位置がアラニン置換された、一連の短いペプチド(12マー)を、そのN末端にビオチン基および4アミノ酸リンカー(SGSG)を付けて、上記のように合成した(Leeら、2006)。ペプチドA1はAla置換を有さず、ペプチドA14はペプチドA1のスクランブル化バージョンであった。ペプチドA2〜13は、12から1までの各アミノ酸位置に、それぞれ1つのアラニン置換を含んだ。ELISAプレート上を被覆したペプチドへの抗体の結合を、上記のように実施した。
N末端ペプチド(PEP1)ELISA
384ウェルのMaxiSorpプレート(Nunc)を、PBS/0.01% Tween−20中1〜15μg/mlの濃度の、ヒトC5aRの残基9〜29に対応するペプチド(PEP1)で37℃で1.5時間被覆し、次いで3回洗浄した。このプレートを、1ウェル当たり20μlのブロッキング緩衝液(PBS中1%w/vのBSA)で4℃で一晩ブロッキングした。プレートをPBS/Tween緩衝液(PBS中0.05%v/vのTween−20)で3回洗浄した。20μlの抗体(最終濃度5μg/ml)を各ウェルに添加し、プレートを37℃で2時間インキュベートした。プレートを上記のように3回洗浄し、次いで20μlのHRPコンジュゲート化抗ヒトIgGκ(PBS/Tween20中1:8000希釈)またはHRPコンジュゲート化抗マウスIgG(1:7500希釈)を各ウェルに添加した。室温で2時間インキュベートした後、プレートを(上記のように)4回洗浄した。ペルオキシダーゼの存在を、新たに調製したTMB Substrate試薬(BD Opt EIA)を各ウェルに20μl添加し、室温で20分間インキュベートすることによって検出した。最後に、1ウェル当たり20μlの1M HSOで反応を停止させた後、プレートリーダーでプレートを450nm(参照620nm)で読み取った。
結果
ヒト化抗C5aR抗体が、親抗体7F3と同じヒトC5aR中の結合部位を認識したことを確認するために、4つの実験を実施した。第一に、hAb−Qを使用して、種々のキメラヒト/マウスC5aRを発現する細胞を染色した。第二に、hAb−JおよびQを、hC5aRの第2細胞外ループを含む重複する一連のペプチド(12マー)と共にインキュベートした。第三に、hAb−JおよびQを、各位置にAla置換を有するヒトC5aRの第2細胞外ループ由来の12アミノ酸モチーフを含む一連の変異体ペプチドと共にインキュベートした。第四に、hAb−JおよびQを、ヒトC5aRのN末端細胞外ドメイン由来の残基9〜29を含むペプチドと共にインキュベートした。
ヒト化抗C5aR抗体は、ヒトC5aRの第2細胞外ループを含むキメラ受容体に結合する。
各細胞外ドメイン中にヒトまたはマウスのいずれかのC5aR配列を含む一連のキメラ受容体:N末端ドメイン、ならびに第1、第2および第3の細胞外ループ(ECL)を、上記のように構築した。各細胞外ドメインならびに膜貫通セグメントおよび細胞内セグメントの由来を表6中に詳述した。各構築物中の細胞外ドメインの由来は、4文字コードで規定した:例えば、mHHHは、マウスC5aRのN末端およびヒトC5aRの第1、第2および第3のECLを有するキメラ受容体を規定する。
親抗C5aR mAb 7F3は、キメラC5aRを発現する細胞を染色するパターンを示し、これは、この抗体がヒトC5aRの第2細胞外ループ(第3の細胞外ドメイン)中のエピトープを認識することを示唆する。CDR移植によってマウスmAb 7F3から誘発され、したがって同じ抗原結合部位を含むはずのヒト化抗体hAb−Qが、7F3と同じ染色パターンを有することを確認するために、異なるキメラヒト/マウスC5aRを発現する一過性トランスフェクトされた細胞をhAb−Qで染色し、フローサイトメトリーによって分析した。ポジティブに染色されたキメラ受容体を表6中に示す。hAb−Qによる染色のパターンは、7F3で観察されたパターンと同一であった。二次抗体(抗hIgG−FITC)単独では染色は見られなかった。キメラ受容体1、2、3、6、8および11をhAb−Qで染色したところ、この抗体がヒトC5aRの第2細胞外ループ中のエピトープを認識することが示された。
第2細胞外ループ由来のペプチドへの抗体結合
第2細胞外ループ中のヒト化抗C5aR抗体が結合するエピトープをさらに規定するために、それぞれ次のペプチドから1残基ずつずれた、ヒトC5aRの第2細胞外ループにわたる22の重複するペプチド(12マー)のセットを合成した。これらのペプチドに対する抗体の結合を、ペプチドELISAによって分析した。
7F3によるペプチド結合パターンは、ヒト化7F3抗体hAb−QおよびhAb−Jによるパターンと類似していた。これらのヒト化抗体は、ペプチド4および5ならびにペプチド23に、最も強く結合した(図14Aおよび14B)。ペプチド23は、ヒトC5aRの完全な第2細胞外ループである(配列番号37の残基173〜205)。ペプチド1〜3および6〜7に対してはより弱い結合が見られた。対照的に、7F3はペプチド1〜7に強く結合した。ペプチド1〜7は、共通の要素:6アミノ酸モチーフ:EEYFPPを含んでいる。これらの抗体は、このモチーフを欠くペプチド13〜22にも結合せず、このモチーフの短縮バージョンを含むペプチド8〜12にも結合しなかった。これらの抗C5aR抗体は、ヒトC5a受容体の第2細胞外ループ上の線状エピトープ(EEYFPP;配列番号37由来の残基179〜184)を認識して結合する。これらのヒト化抗体は、一方の末端または他方の末端の近くにEEYFPPモチーフを含むペプチドには結合しないが、このモチーフが中央に位置するペプチドには結合する。
第2細胞外ループのEEYFPPモチーフ内の必須結合残基
ヒト化抗C5aR抗体が結合するエピトープEEYFPP中の必須結合残基をさらに規定するために、ヒトC5aRの第2細胞外ループ配列VREEYFPPKVLC(配列番号37由来の残基177〜188)を含み、結合モチーフ中の種々の位置がアラニン置換された、一連の短いペプチド(12マー)を合成した。これらのペプチドに対する抗体の結合を、ペプチドELISAによって分析した。
この実験では、マウス抗C5aR mAb 7F3の結合に必須なアミノ酸は、エピトープE中のYおよびFであることが見出された(Leeら、2006)。7F3と同様に、ヒト化抗体hAb−JおよびQ(それぞれ、図14CおよびD)は、位置YまたはFにAla置換を有するペプチドには結合しなかった。さらに、E、EおよびPでの置換は、hAb−JおよびQによる結合を低下させた。
リード抗体hAb−Qは、N末端の9〜29ペプチド(PEP1)に結合しない。
本実施例は、ヒト化抗C5aR抗体が、C5aRの第2細胞外ループ中のエピトープに結合することを示す。さらに、ヒト化抗C5aR抗体は、ヒトのN末端ドメインおよびマウスの第2細胞外ループを含むキメラマウス/ヒトC5aR構築物#7および#9に結合しなかった(表6を参照のこと)。
抗C5aR抗体がヒトC5aRのN末端ドメイン由来の線状ペプチドに結合しなかったことを確認するために、配列PDYGHYDDKDTLDLNTPVDKT(配列番号37由来の残基9〜29)(配列番号59)を有するペプチドPEP1を合成し、このペプチドに対する抗体の結合をペプチドELISAによって分析した。
初期の研究により、抗C5aRmAbの7F3、12D4および6C12が、トランスフェクタント上のヒトC5aRに結合するPEP1と競合せず、これらのmAbがELISAプレート上を被覆したPEP1に結合しなかったことも実証している(WO 03/062278)。図15は、ヒト化抗C5aR抗体hAb−JおよびQ(5μg/ml)が、3つの異なる濃度(それぞれ、1/100、1/500および1/1000、すなわち、10μg/ml、2μg/mlおよび1μg/ml)でELISAプレートに結合したPEP1に結合しなかったことを示す。しかし、ヒトC5aRのN末端ペプチド1〜31に対して惹起された抗C5aR(CD88)mAb S5/1(AbD Serotec、カタログ番号MCA1283)は、予測どおり、5μg/mlでPEP1に結合した。
ヒトC5aRを発現する細胞の遊走を遮断する
A.ヒト化抗体は、ヒト好中球の遊走を遮断する
ヒト好中球を、室温で40分間のデキストラン沈降ステップを介して、白血球画分を最初に得ることによって、末梢血から単離した。次いで、室温で2500rpmで15分間の密度勾配遠心のために、Ficoll−Paque(GE Healthcare)上に細胞を重ねた。残留赤血球の低浸透圧溶解後、好中球を、走化性緩衝液(49% RPMI 1640(Invitrogen)、49% Medium 199(Invitrogen)、2%透析FBS(Invitrogen))中に再懸濁した。抗C5aR抗体を、5μg/mlの濃度で好中球(1×10/ml)に添加した。陰性対照(Ab添加なしだが、1×PBSを添加した)を含めた。
次いで、細胞を、3.0μmの空隙率のポリカーボネート膜を有する24ウェルの組織培養プレート(Corning Inc.)中のインサートの上部チャンバ中にロードし、室温で10分間インキュベートした。次いで、このインサートを、0.1〜100nMの濃度でヒト好中球化学誘引物質の組換えヒトC5a(Sigma)を含む下部チャンバ上に配置した。最大の好中球遊走は、1〜10nMのC5aが下部チャンバ中に存在するときに生じた。次いで、好中球を37℃で30分間インキュベートした。膜を通って下部チャンバ中に遊走する好中球の数を、フローサイトメトリー(FACSCalibur;BD Biosciences)によって定量した。相対細胞計数は、30秒間の一定期間にわたって事象を獲得することによって得た。この方法は、再現性が高いことが見出されており、生きた細胞をゲートし、残骸を排除することが可能であった。
図16中に示される結果は、ヒト化抗体が、陰性(抗体なし)対照と比較して、C5aに対するヒト好中球の遊走を阻害したことを示している。5μg/mlの濃度のマウス抗体7F3で、97%のヒト好中球遊走が遮断された。ヒト化抗体GおよびJがそれぞれ、5μg/mlで84%および82%の遊走を遮断した一方で、抗体CおよびKはあまり有効ではなく、それぞれ、75%および55%の好中球遊走を遮断しただけであった。
B.ヒトC5aRを発現する細胞の、C5aによって誘発される遊走は、用量依存的な様式でヒト化抗C5aR抗体によってin vitroで阻止される。
方法
ヒト好中球遊走
ヒト静脈血を、抗凝固剤としてEDTAを含むチューブ(BD Vacutainer #366457)中に、健康なボランティアから収集した。好中球は、パーコール密度遠心分離によって他の血液から精製し、その後赤血球溶解ステップを行った(Leeら、2006)。精製した好中球は、1,200rpmで5分間遠心分離し、走化性緩衝液(49% RPMI 1640、49% Medium 199、2%透析FBS;GIBCO)中に、走化性緩衝液1ml当たり2×10細胞で再懸濁した。200μlの総体積中の抗体(走化性緩衝液中に希釈、最終濃度0.003〜10μg/ml)および細胞(2×10細胞/ウェル)を、5%CO中で37℃で約20分間インキュベートした。次いで、これを2×100μl試料に分割し、24ウェルのトランスウェルプレート(HTS Transwell、3.0ミクロンの孔径、Corning)の上部チャンバ中の2つのウェルに添加した。C5a(最終濃度0〜100nM)を含む走化性緩衝液(合計600μl)を、下部チャンバ中に配置した。プレートを5%CO中で37℃で約1時間インキュベートして、細胞を遊走させた。対照ウェルは、抗体なしの細胞またはC5aなしの緩衝液を含んだ。このアッセイの標準曲線を、以下に記載するように、CyQUANT色素を含む96ウェルプレートで設定した。
L1.2/hC5aRトランスフェクタント細胞遊走
RPMI 1640、10% FBS、0.5mg/ml G418(Invitrogen)中で増殖する、5mM酪酸で一晩刺激したL1.2/hC5aR細胞を、1,200rpmで5分間遠心分離し、走化性緩衝液(49% RPMI 1640、49% Medium 199、2%透析FBS;Gibco)中で洗浄し、次いで再度遠心分離し、最後に、走化性緩衝液1ml当たり2×10細胞で再懸濁した。200μlの総体積中の、細胞(1×10細胞/ウェル)と混合した抗体(走化性緩衝液中に希釈、最終濃度0.005〜5μg/ml)を、96ウェルプレートに添加し、5%CO中で37℃で約20分間インキュベートした。これを2×100μl試料に分割し、96ウェルのトランスウェルプレート(HTS Transwell−96 System、5.0ミクロンの孔径;Corning)の上部チャンバ中の2つのウェルに添加した。最終濃度0.1〜100nMの組換えヒトC5a(Sigma)を含む走化性緩衝液(合計150μl)を、下部チャンバ中に配置した。プレートを5%CO中で37℃で約1時間インキュベートして、細胞を遊走させた。対照ウェルは、抗体なしの細胞またはC5aなしの緩衝液を含んだ。走化性緩衝液中のhC5aR/L1.2細胞の連続希釈を調製して、CyQUANT(登録商標)検出アッセイのための標準曲線を作成した。固定数の細胞(1ウェル当たり0、150、450、1350、4050、12150)を含む緩衝液(150μl)を、下部チャンバ中の2つのウェルの各々に直接添加し、その後1時間のインキュベーションステップを行った。
CyQUANT(登録商標)色素を用いる定量
インキュベーション後、トランスウェルの下部チャンバ中の緩衝液+遊走細胞を、96ウェルの平底プレート(Nunc)に移し、200×g(約1,500rpm)で5分間遠心分離した。細胞ペレットを150μlのPBSで洗浄し、CyQUANT蛍光を遮断する微量のフェノールレッドを除去した。第2の遠心分離ステップ後、上清を注意深く除去し、プレートを−80℃で一晩凍結して、細胞を溶解させた。このプレートを室温で解凍し、溶解緩衝液中に希釈したCyQUANT GR色素(CyQUANT(登録商標)Cell Proliferation Assay Kit、Invitrogen)200μl中に希釈し、各ウェルに添加した。
L1.2/hC5aR細胞を使用するアッセイについて、最初に標準曲線を上記のようにトランスウェルプレートで確立し、細胞を96ウェルプレートに移して、CyQUANT色素で標識した。好中球を使用するアッセイについて、標準曲線を、CyQUANT色素を含む96ウェルプレートで、以下のように直接設定した:1×10の好中球を含むペレットを、−80℃で一晩凍結させ、次いで解凍し、1mlのCyQUANT色素中に再懸濁し、次いで200μl中2×10の細胞を、200μlのCyQUANT色素を含む96ウェルプレート中の2つのウェルの各々に添加し、2つのうち1つを連続希釈して、100,000から約48.8細胞/ウェルの範囲で標準曲線(2連)を確立した。
このプレートを、アルミホイル(光から保護するため)に包んで室温で2〜5分間インキュベートし、次いでFluorimeter(FLUOstar Galaxy、BMG Labtechnologies)中に配置し、最大励起(A1)を485nmに設定し、最大放射(B1)を520nmに設定して読み取った。蛍光強度を記録し、FLUOstar Controlソフトウェアを用いてデータを処理した。標準曲線を使用して蛍光強度を細胞数に変換し、線形回帰または非線形4パラメーターlog方程式(GraphPad Prism v4.0)のいずれかを使用して、データを分析した。
結果
一定の濃度範囲にわたり、C5aによって誘発されるヒト好中球およびhC5aR/L1.2細胞トランスフェクタントの遊走を遮断するヒト化7F3抗体の能力を調査した。
4人の異なる健康なボランティアドナー由来の好中球を、種々の濃度の抗C5aR抗体 hAb−Qまたは7F3もしくはアイソタイプ対照抗体と共にプレインキュベートし、その後トランスウェルアッセイにおいて10nM C5aに曝露させた。試料は2連で実行した。回帰分析を使用して標準曲線からバックグラウンド蛍光を差し引いた後に、遊走細胞の数を計算した。各実験について、標準曲線フィットした方程式rの値は、>0.99であった。
抗C5aR抗体は、用量依存的な関係を示した。10μg/mlの濃度のhAb−Qおよび7F3の両方は、10nM C5aによって誘発されるヒト好中球の遊走を完全に遮断した。抗体濃度が低下するにつれて、遊走細胞の数は増加した。0.1μg/ml未満の濃度でのhAb−Qまたは7F3と好中球とのプレインキュベーションは、遊走の防止に有効ではなかった。アイソタイプ対照抗体は、C5aによって誘発されるヒト好中球の走化性を遮断しなかった。図17は、hAb−Qおよび7F3について示された最良のフィットの非線形回帰直線を用いてプロットした、4回の実験からの平均データを示す。ヒト化抗C5aR抗体は、7F3よりも、約6分の1から8分の1の低いIC50で、C5aによって誘発されるヒト好中球の遊走の遮断においてより有効であった。
ヒトC5aRを発現するトランスフェクト細胞も、種々の濃度の抗C5aR抗体hAb−Q、hAb−Jまたは7F3もしくはアイソタイプ対照抗体とのプレインキュベーション後、遊走アッセイに供した。図18は、hC5aR/L1.2トランスフェクタント遊走が、5μg/mlで、ヒト化抗C5R抗体JおよびQ、ならびに7F3によって完全に阻害されたことを示している。シグモイダル用量反応方程式(GraphPad Prsimソフトウェア)を用い非線形回帰を使用するデータの分析により、7F3、JおよびQについてそれぞれ0.5、0.6および0.7μg/mlのIC50値が得られ、これは、これらの抗体が、C5aによって誘発されるhC5aRJL1.2細胞の遊走を中和することに、各々非常に有効であったことを示唆している。
C.ヒト化抗C5aR抗体は、低レベルの受容体占有率で、in vitroでヒト好中球遊走を有効に遮断する。
上記より、ヒト化抗C5aR抗体が、C5aによって誘発される、ヒトC5aRを発現する細胞の遊走(走化性)を阻害したことが示された。この阻害をさらに特徴付けるために、ヒト好中球遊走をin vitroで阻害するのに必要な、ヒト化抗C5aR抗体によるC5a受容体占有率のレベルを、以下のように決定した。
方法
hAb−QのFITC標識
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)を、共有結合によってhAb−Qにコンジュゲート化した。簡潔に述べると、約2.2mgのhAb−Qを、「反応緩衝液」(160mM NaCO、340mM NaHCO、pH9.5)中に交換し、回収された1.8mgを、DMSO中に溶解させた144μgのFITC(Molecular Probes、カタログ番号F1906)に添加した。反応を、暗中で室温(約21℃)で1時間実施した。非コンジュゲート化FITCを、「保存緩衝液」(10mM Tris、150mM NaCl、pH8.2)で予め平衡化したPD−10カラムを使用して除去し、これで溶出した。コンジュゲート化hAb−Q−FITCを、Centricon YM−30スピンフィルター(Amicon、カタログ番号4208)を使用して5.7mg/mlの最終濃度を達成するまで濃縮し、暗中で4℃で保存した。
ヒト好中球上のC5aRに対するhAb−Qの結合
赤血球溶解ステップがない以外は上記と同様に調製したヒト好中球を、1,200rpmで5分間遠心分離し、走化性緩衝液(49% RPMI 1640、49% Medium 199、2%透析FBS;Gibco)1ml中2×10細胞で再懸濁した。抗体hAb−Qを、必要な最終濃度×2になるまで、走化性緩衝液中に希釈した。0.002、0.006、0.02、0.06、0.2、0.6、2、6、20、60、200および600ug/mlの濃度を準備した。等体積の細胞(125μ1)および抗体(125μl)を混合し、37℃で10分間インキュベートして、hAb−QをC5aRに結合させた。
ヒト好中球走化性アッセイ
簡潔に述べると、好中球およびhAb−Qのインキュベーション後、2×10細胞および0〜100μg/mlのhAb−Qを含む各混合物の100μlアリコートを、24ウェルのトランスウェルプレート(6.5mmインサート、3.0ミクロンのポリカーボネート膜;Corning Costar、カタログ番号3415)の上部チャンバ中に(2連で)配置した。組換えヒトC5a(最終濃度0、0.1、1、10または100nM)を含む走化性緩衝液(合計600μl)を、下部チャンバ中に配置した。プレートを5%CO中で37℃で30分間インキュベートして、細胞を遊走させた。対照ウェルは、抗体なしの細胞またはC5aなしの緩衝液を含んだ。インキュベーション後、下部チャンバ中の細胞数を、FACSCalibur(BD Biosciences)でのフローサイトメトリーによって計数した。
結合したhAb−Qの測定
ヒト好中球上の結合したhAb−Qの量を、以下の2つの試料で計算した:走化性前の細胞+抗体混合物の試料(試料A)および走化性後のトランスウェルプレートの下部チャンバ由来の細胞の試料(試料BL)。これは、遊走した細胞の受容体占有率に差異があるかどうか、または受容体占有率が走化性の開始と終了との間で変化したかどうかを決定するためであった。結合したhAb−Qは、抗hIgG−FITCと共に細胞をインキュベートすることによって検出した。あるアッセイでは、結合した抗体の量は、第3の試料(走化性後のトランスウェルプレートの上部チャンバ由来の細胞+抗体混合物の試料(試料BU))において測定した。
試料A(遊走前の細胞+抗体10μl)を、96ウェルのU字底プレートのウェルに(2連で)添加し、卓上遠心機(Beckmann Coulter Allegra X−15R)において、室温で1,200rpmで2分間遠心分離した。細胞ペレットを200μl PBSで2回洗浄し、その後、50μlの抗hIgG−FITC(dPBS中に1/300希釈)中に再懸濁し、室温で30分間インキュベートした。試料を2,000rpmで2分間遠心分離し、上清を除去し、細胞ペレットを150μl FACS緩衝液(PBS、1% BCS)中に再懸濁して、フローサイトメトリー(FACSCalibur、BD Biosciences)によって分析した。
試料BL(遊走後のトランスウェルプレートの下部チャンバ由来の細胞200μl)および試料BU(遊走後のトランスウェルプレートの上部チャンバ由来の細胞+抗体混合物50μl)を、96ウェルのU字底プレートのウェルに(2連で)添加し、試料Aについて記載したのと同様に処理した。
未結合のC5a受容体の測定
ヒト好中球上の未結合の受容体の量を、以下の2つの試料で計算した:走化性前の細胞+抗体混合物の試料(試料C)および走化性後のトランスウェルプレートの下部チャンバ由来の細胞の試料(試料D)。未結合の受容体は、FITC標識したhAb−Q(hAb−Q−FITC)と共に細胞をインキュベートすることによって検出した。
試料C(遊走前の細胞+抗体10μl)を、96ウェルのU字底プレートのウェルに(2連で)添加し、室温で2,000rpmで2分間遠心分離した。細胞ペレットを200μl PBSで2回洗浄し、その後、50μlのhAb−Q−FITC(100μg/ml、dPBS中に希釈)中に再懸濁し、室温で30分間インキュベートした。試料を2,000rpmで2分間遠心分離し、上清を除去し、細胞ペレットをFACS緩衝液(PBS、1%BCS)中に再懸濁して、フローサイトメトリー(FACSCalibur、BD Biosciences)によって分析した。
試料D(遊走後のトランスウェルプレートの下部チャンバ由来の細胞の試料200μ1)を、96ウェルのU字底プレートのウェル中に(2連で)配置し、試料Cについて記載したのと同様に処理した。
好中球C5a受容体占有率のフローサイトメトリー分析
FACSCaliburフローサイトメーターを、チャネルFL−1について確立した補償パラメーターを用いて設定した。試料を獲得し、死細胞および残骸を排除した。好中球は、FSCおよびSSCに基づいて同定した。結合したhAb−Q(抗hIgG−FITC)または未結合のC5aR(hAb−Q−FITC)の量を、試料中の好中球のFITC(FL−1)平均蛍光強度(MFI)を決定することによって決定した。
結合したhAb−Qの割合は、以下の等式に従って、(hAb−Qなしの試料のMFIである非特異的バックグラウンド(NSB)の差し引き後に)300μg/mlのhAb−Qと共にインキュベートした試料のMFIの百分率として、試料AおよびBの各々のMFIを決定することによって定量した:
%占有された受容体=[MFI(試料)−MFI(NSB)]/[最大MFI(300μg/mlのhAb−Q試料)−MFI(NSB)]×100
未結合のC5a受容体の割合は、以下の等式に従って、(300μg/mlの未標識hAb−Qと共にインキュベートした試料のMFIである非特異的バックグラウンド(NSB)の差し引き後に)hAb−Qなしでインキュベートした試料の最大MFIの百分率として、試料CおよびDの各々のMFIを決定することによって定量した:
%未結合の受容体=[MFI(試料)−MFI(NSB)]/[最大MFI(未標識hAb−Qなしの試料)−MFI(NSB)]×100
結果
4つの実験を実施した。簡潔に述べると、健康なボランティアの静脈血から単離した精製好中球を、0.001〜100μg/mlの範囲の濃度のhAb−Qと共に10分間プレインキュベートした。小アリコートのこの混合物を採取して、抗体結合受容体の量(%受容体占有率)を決定し、残りをトランスウェルプレートの上部チャンバ中に配置した。C5a(10nM)を下部チャンバ中に配置した。30分間のインキュベーション後、下部チャンバ中に遊走した細胞の数を、FACSを使用して決定した。FITC標識した抗hIgGおよびフローサイトメトリーを使用して、遊走終了時の下部チャンバおよび上部チャンバの両方における好中球上の結合抗体の量もまた決定した。1つの実験では、未結合の受容体(結合した抗体なし)のレベルを、遊走の前および後に、FITC標識したhAb−Qと共に好中球をインキュベートすることによって決定した。
好中球の遊走は、hAb−Qによって遮断された
図19は、4つの実験の組み合わせたデータから作成した、hAb−Q濃度対遊走細胞の総数のプロットを示す。hAb−Q濃度と遊走との間には、用量反応関係が存在した。0.1μg/ml以上の濃度で、hAb−Qは、10nMのC5aによって誘発されるヒト好中球の遊走を完全に遮断した。抗体濃度が低下するにつれて、遊走細胞の数は増加した。この結果は、上記の結果(図17)と類似していた。
受容体占有率は、抗体濃度の増加と共に増加した
4つの実験からの受容体占有率データを組み合わせた。走化性前および走化性後の下部トランスウェルチャンバ試料中の、各hAb−Q濃度での、好中球上の結合した抗体(占有された受容体)の平均量を、図20にグラフで示す。走化性前の試料と下部トランスウェルチャンバからの走化性後の試料との間の、占有された受容体のレベルにおける差異(それぞれ、EC50値0.3および1.1μg/ml)。所与のいずれのhAb−Q濃度でも、走化性前よりも走化性後において、細胞に結合した抗体が少なかった。この差異は、優先的に遊走した細胞が、遊走しなかった細胞よりも、平均して、受容体を遮断するhAb−Qが少なかったことにおそらく起因した。この差異の別の説明は、予め混合された細胞+抗体溶液(100μl)が、下部チャンバ中の600μlの緩衝液を含むトランスウェルプレート中に配置したとき、本質的に約7分の1に希釈されていたことであろう。抗体がトランスウェルの3μmの膜を自由に横切ることができる場合、希釈されて、結合反応の平衡は変化するであろう。
未標識hAb−Q結合後の未結合の受容体の量を、1つの実験において測定した。このデータも、図20中にグラフで示す。走化性前の試料および走化性後の試料の両方において、結合した受容体と未結合の受容体との間には、半比例の関係が観察された。
受容体占有率と走化性阻害との間の関係
図19に示す好中球の遊走データを、抗体なしの試料における10nMのC5aに対して遊走する細胞の平均数の百分率として遊走細胞の数を表現することによって、変換した。次いでこの百分率を100%から差し引いて、遊走の百分率阻害を得た。このように、抗体なし試料における遊走細胞の数は0%阻害となり、遊走細胞0は100%阻害となった。次いでこのデータを、非線形回帰(シグモイダル用量応答(傾き変動)方程式)を使用するGraphPad Prismを用いて分析した。次いで、この分析後に得られた曲線を、図20由来の受容体占有率データと共にプロットして、図21を作成した。
図21は、受容体占有率の増加が、好中球遊走阻害の増加と相関することを示している。遊走の阻害に関するEC50値は0.03μg/mlであり、受容体占有率に関するEC50値は、走化性前の試料については0.3μg/mlであり、下部トランスウェルチャンバからの走化性後の試料については1.1μg/mlであった。このデータは、非常に低い受容体占有率が、遊走の有意な遮断と関連していたことを示唆している。10%の受容体だけが0.03μg/mlのhAb−Qで結合した抗体を有していたが、この用量は遊走の50%の低下を引き起こした。受容体占有率が約15〜45%の場合、0.3μg/mlの濃度で、遊走は完全に遮断された。結論として、hAb−Qは、低レベルの受容体占有率では、C5aが媒介するヒト好中球の遊走をin vitroで遮断するのに非常に有効であった。
ヒト化抗体は、C5aによって誘発されるヒト好中球からのカルシウムイオン放出を遮断する。
カルシウム動員は、C5aが好中球の表面上のその受容体C5aRに結合した後に生じる最初の事象の1つである。C5a結合は、内部貯蔵から放出されるサイトゾル遊離Ca2+における即座の上昇(数秒以内)を引き起こし、その後、細胞外媒体からの流入に起因するより持続性の効果(数分にわたる)が生じる。遊離Ca2+の一過的な増加は、C5aRへのC5a結合後に好中球で観察される種々の生物学的応答のこのセカンドメッセンジャーとして機能する。
C5aによって誘発されるCa2+放出の遮断においてヒト化7F3抗体が有効であるかどうかを決定するために、「カルシウム流入」アッセイを以下のように実施した。簡潔に述べると、ヒト好中球を健康なボランティアから単離し、上記のように精製した。各試料について、1×10の好中球が必要であった。この好中球を遠心分離し、PBSで洗浄し、次いで、Cell Dye(250μMのスルフィンピラゾンおよび1.7μMのFluo3−AM(Calbiochem、カタログ番号343242)またはFluo4−AM(Invitrogen)を含む、Complete MGB[5mM KCl、140mM NaCl、300μM MgSO、1mM MgC1、220μM KHPO、1.1mM NaHPO、10mM HEPES、5.5mMグルコース])中に1×10細胞/mlで再懸濁し、暗中で室温で40分間インキュベートした。細胞を遠心分離し、Complete MGB+250μMスルフィンピラゾンで洗浄して、過剰の色素を除去し、再度遠心分離し、Complete MGB+250μMスルフィンピラゾン中に2×10細胞/mlで再懸濁した。細胞(0.5ml)を、各試料につき1つのチューブで非滅菌ガラスFACSチューブ中にアリコート化し、1時間以内に使用した。種々の試薬(C5a、イオノマイシン、抗体)を、Incomplete MGB(HEPESおよびグルコースを含まないComplete MGB)中に、最終濃度×10で調製した。FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)を設定し、好中球を、x軸方向への散乱、y軸側への散乱を使用してゲートした。y軸のFL−1(FITC)チャネルを使用して、好中球応答をチェックした。試料の蛍光を継続的に測定し、CellQuestファイルでデータを保存した。種々の対照試験を他の試料の前に実施した(処理なしの細胞を使用して、ベースライン蛍光を確立した)。C5aを細胞に添加して(10nMの組換えヒトC5a(Sigma)50μl:最終濃度1nM)、応答を試験した。抗体プレ処理なしのとき、細胞は、機能的であればhC5aに対して直ぐに応答したが、応答が得られなかった場合には、細胞は不適切であった。イオノマイシン(チューブ中、0.1〜1μg/mlの最終濃度)を使用して、細胞が色素を保持していたかどうかを決定した。
C5aによって誘発されるCa2+放出の遮断においてヒト化7F3抗体が有効であるかどうかを決定するために、色素を保持させた好中球を、抗C5aR抗体(チューブ中0.1〜50μg/mlの最終濃度)と共に10〜25分間プレインキュベートした。次いで、細胞+抗体をフローサイトメーターにかけて、1nMのhC5a(最終濃度)の添加前のベースライン読み取りを得た。hC5aが蛍光においてスパイクを生じなかった場合、イオノマイシン(Sigma、0.1〜1μg/mlの最終濃度)を添加して、細胞が応答できること(生存)をチェックした。
C5aによって誘発されるCa2+放出を遮断する元のマウス抗ヒトC5aR mAb 7F3の能力を調査した。10μg/mlの濃度の7F3は、C5aによって誘発されるCa2+流動を完全に遮断し、1μg/mlでは部分的に有効であったが、より低い濃度(0.01μg/mlおよび0.1μg/ml)は、Ca2+放出を遮断しなかった。10μg/mlの7F3と共にインキュベートした細胞は、1μg/mlのイオノマイシンをC5aの約30秒後に添加したとき、平均蛍光強度(MFI)の増加によって明らかなように、Ca2+をなお放出できた(データ示さず)。
ヒト化7F3抗体(F、G、J、M、NおよびO)を、10μg/mlの濃度で、1nMのC5aを添加する約10分前に好中球と共にインキュベートした場合、ヒト好中球におけるC5aによって誘発されるカルシウム放出を中和するそれらの能力について試験した。抗体NおよびOはCa2+流動を完全に遮断したが、抗体F、G、JおよびMは、抗体と共にプレインキュベートしていない対照細胞と比較して、より低い観察された蛍光値によって示唆されるように、Ca2+放出を部分的に遮断した。抗体NまたはOとプレインキュベートした細胞にイオノマイシンを添加した場合、MFIは即座に増加し、これは、遮断抗体の存在下で好中球がなおもCa2+放出可能なままであったことを実証している(データ示さず)。
抗体G、J、M、NおよびQについての用量応答関係を、C5aの添加前に種々の濃度の抗体と共にヒト好中球をプレインキュベートし、Ca2+放出を測定することによって試験した。30μg/mlの濃度の抗体Gは、C5aによって誘発されるCa2+放出を完全に遮断したが、より低い濃度(0.1、1、10μg/ml)は有効ではなかった。これらの結果は、抗体Mと同じであった。どちらの場合も、30μg/mlの抗体で処理した細胞は、1μg/mlのイオノマイシンをC5aの約90秒後に添加したときに示されるように、なおもCa2+放出可能であった。抗体Jは、30μg/mlおよび10μg/mlの濃度で完全な遮断を示したが、以前の実験では、10μg/mlの抗体Jは、Ca2+流動の遮断において部分的に有効なだけであった。抗体Nは最も有効な抗体であり、2つの別個の実験において10μg/mlおよび1μg/mlで、C5aによって誘発されるCa2+放出を完全に遮断した。すべての場合において、C5aがCa2+流動を引き起こすことができなかった場合、1μg/mlのイオノマイシンを添加し、MFIにおける大きい増加を生じさせた。これは、これらの細胞がなおも応答可能であったことを示している。抗体Qを用いると、C5aによって誘発されるヒト好中球からのCa2+放出は、1nMのC5aの添加の際の蛍光におけるピークの欠如によって示されるように、5μg/mlまたは50μg/mlの抗体Qと共に細胞をプレインキュベートしたときに防止された。これらの試料へのイオノマイシンの添加の短時間後に、蛍光における通常の増加が発生し、このことは、好中球がなおも応答可能であったことを示唆している。0.5μg/mlの抗体Qとのプレインキュベーションは有効ではなく、蛍光における大きな増加が、1nMのC5aを試料に添加した後に観察され、これは、1nMのC5aのみ(抗体の添加なし)で細胞を処理したときに観察された効果と類似していた。これらの結果を表7にまとめる。
表7は、最も有効な遮断ヒト化7F3抗体が、抗体NおよびQであったことを示している。興味深いことに、抗体NはアイソタイプIgG1であり、好中球上のFcγ受容体(FcγR)への結合に起因して、アイソタイプIgG4を有する抗体よりも、有効であり得る。ヒトIgG1は、hIgG4よりも、FcγRに対するアフィニティーが高い。抗体NまたはOによるFcγRの結合が、C5aによって媒介されるCa2+放出の中和に寄与するかどうかを決定するために、Fluo3−AMを予め保持させたヒト好中球を、抗体NもしくはO単独、または抗体N+50μlのFcブロック[好中球が単離されたのと同じ血液試料から調製したヒト血清]、または抗体O+Fcブロック、またはFcブロック単独と共に、10分間プレインキュベートした。C5a(および必要に応じてイオノマイシン)に応答した細胞内Ca2+レベルへの変化を、フローサイトメーターで測定した。Fcブロックの存在下でも非存在下でも、C5aによって誘発されるCa2+流動を中和する抗体Nの能力にも抗体Oの能力にも差異は存在しなかった。これらの細胞は、イオノマイシン添加の効果によって示されるように、Ca2+放出がなおも可能であった。好中球をFcブロック単独と共にプレインキュベートすることでは、C5aによって誘発されるCa2+放出は阻止されなかった。これらのデータは、抗体NおよびOが、FcγRとの相互作用を介してではなく、C5aRへの結合およびC5aシグナル伝達の遮断を介して、保護効果を発揮していることを示唆する。
好中球活性化に対するヒト化抗C5aR抗体の影響
A.ヒト化抗C5aR抗体はin vitroでヒト好中球のC5aによって誘発される活性化を阻止する
C5aは、表面抗原CD11b(MAC−1インテグリンのα鎖、走化性および内皮との相互作用を媒介する)の上方制御、および接着性分子CD62L(L−セレクチン)の消失を誘導する、ヒト好中球の強力な活性剤である。C5a媒介性好中球活性化を阻止するヒト化抗C5aR抗体の能力は、全血活性化アッセイ中で調べた。
方法
健常なヒトボランティア(2ドナー)由来の血液を、抗凝血剤クエン酸デキストロース(ACD)を含有する試験管に回収し、HDCFDA(最終50μM)を含有するウェルに加えて室温(23℃)で10分間置き、次に0.3〜300μg/mlのhAb−Q、0.3〜300μg/mlのIgG4アイソタイプ対照、またはdPBSのみを加えた。試料は室温(23℃)で20分間インキュベートした。C5a(100nM最終)、PMA(0.2〜400ng/ml)、またはdPBSをそれぞれの試料に加え、室温(23℃)で20分間再度インキュベートした。抗CD11bおよび抗CD62L抗体(1/400最終)をすべての試料に加え15分間置いた。赤血球はRBC溶解バッファーを使用して除去し、白血球はdPBS+1%FCS中に懸濁させた。
好中球におけるCD11bおよびCD62Lの発現レベルは以下のように測定した。FACSCaliburフローサイトメーター(BD biosciences)を、チャネルFL−2およびFL−4に関して確立された補償パラメーターでセットアップした。試料を入手して死細胞および残骸は除外した。好中球は高いFSCおよびSSCを有するとして同定し、これらの細胞のPE(FL−2)およびAPC(FL−4)平均蛍光強度(MFI)を測定した。
CD11bおよびCD62Lの発現レベル(MFI)は以下の式を使用して最大発現率として報告した:
最大発現率=[(試料−最小発現)/(最大発現−最小発現)]×100
注釈。最大発現はCD11bに関して無抗体(dPBSのみ)+100nMのC5a試料、および(CD62Lは活性化好中球において低減するので)CD62Lに関して無抗体(dPBS)+0nMのC5a(dPBS)試料であった。
CD11bおよびCD62L発現のC5a媒介性変化のhAb−Q中和に関するIC50値は、GraphPad Prism(v4.0)ソフトウェアを使用して計算した。データは非線形回帰を使用してそれぞれの実験のS字状用量応答(変数勾配)式および2つの実験の平均に適合させた。
結果
C5aによって誘発される好中球活性化に対するhAb−Qの阻害効果を、2ドナーを使用して全血アッセイにおいて評価した。C5aで活性化した試料中では、CD11bの発現はhAb−Qの不在下で増大した。しかしながら、このCD11b発現の増大は、hAb−Qが存在した場合、IC50値約10.7μg/mlで用量応答式に妨げられた(図22)。アイソタイプ対照抗体は、100μg/ml超でさえCD11b発現のC5aによって誘発される上方制御を妨げなかった(データ示さず)。
ヒト化抗C5aR抗体hAb−Qは、約5.4μg/mlのIC50値で用量依存式にCD62LのC5aによって誘発された消失も妨げた(図23)。アイソタイプ対照抗体は、100μg/ml超でさえCD62LのC5aによって誘発された消失を妨げなかった(データ示さず)。
B.ヒト化抗C5aR抗体は、in vitroで溶液中のヒト好中球を活性化しなかった
好中球のC5aによって誘発される活性を中和するヒト化抗C5aR抗体の能力は前に記載した。以下の実験では、ヒト化抗C5aR抗体をC5aの不在下で精製ヒト好中球と共にインキュベートし、これは細胞表面マーカー、CD11bおよびCD62Lの発現を変えなかった。これらの実験は、抗C5aR抗体は、溶液中の細胞自体は活性化しないことを実証した。
方法
ヒト好中球活性化アッセイおよびCD11bおよびCD62Lの発現の測定
ヒト末梢静脈全血を、一連の実験中でヒト化抗hC5aR抗体hAb−Q、hAb−JまたはhAb−Gと共にex vivoでインキュベートした。好中球活性化は、以下に記載するようにCD11bおよびCD62Lの発現レベルを決定することにより測定した。CD62Lレベルの低下またはCD11bレベルの増大は、好中球活性化の指標である。
実験1
簡単に述べると、健常ドナー由来のヘパリン化ヒト全血を、1、10、または100μg/mlのhAb−JまたはhAb−Q、10μMのfMLP(ホルミルMet−Leu−Pheペプチド)、またはdPBSのみのいずれかに加えた。試料は、1/100の最終希釈で抗CD11b−PEおよび抗CD62L−APC抗体を加える前に、5%CO中で37℃において1時間インキュベートした。赤血球はRBC溶解バッファーを使用して除去し、白血球はdPBS+1%FCS中に再懸濁させた。
FACSCaliburフローサイトメーター(BD)を、チャネルFL−2およびFL−4に関して確定した補償パラメーターでセットアップした。試料を入手して死細胞および残骸は除外した。好中球は高いFSCおよびSSCを有するとして同定した。FL−2(CD11b−PE)およびFL−4(CD62L−APC)チャネル中のこれらの細胞の平均蛍光強度(MFI)を計算した。CD11b(PE)およびCD62L(APC)のレベルをそれぞれの試料に関して決定し、dPBS対照に対する発現倍数として報告した。
実験2
4健常ボランティア由来のヘパリン化血液を、0.1、1、10または100μg/mlのhAb−G、hAb−J、10nMまたは100nMのヒトC5aまたはdPBSのみのいずれかを含有する試験管に加えた。37℃で20分置いた後、6%デキストラン(最終濃度1%)をそれぞれの試験管に加え、30分間放置して赤血球を沈殿させた。上部の白血球が豊富な血漿層を96ウェルプレートに移し、そこで細胞を冷却dPBS中で洗浄した。遠心分離後、上清を除去し、細胞は抗CD11b−PE(1/50)および抗CD62L−APC(1/50)を含有するdPBS中に再懸濁し、次いで氷上で30分間インキュベートした。細胞は再度洗浄し、dPBS+1%FCS中に再懸濁した。好中球におけるCD11bおよびCD62Lの発現レベルは前に記載したように測定した。
実験3
健常なヒトボランティア(2ドナー)由来の血液を、抗凝血剤クエン酸デキストロース(ACD)を含有する試験管に回収し、C5aを試料に加えなかったこと以外、実施例7A中で前に記載したように処理した。好中球におけるCD11bおよびCD62Lのレベルは、実施例7A中で前に記載したようにFACSによって測定した。
結果
ヒト好中球におけるCD11bおよびCD62Lの発現は、ヒト化抗C5aR抗体を用いた全血アッセイ中で変わらなかった。
第一の実験では、ヒト全血を1、10、または100μg/mlのhAb−QまたはhAb−J、10μMのfMLP、またはdPBSと共に37℃で1時間インキュベートし、CD11bおよびCD62Lの発現はフローサイトメトリーによって測定した。1〜100μg/mlの任意の濃度においてhAb−QまたはhAb−Jを含有する試料中では、CD11b発現の増大またはCD62L発現の低下はなかった(図24Aおよび24B)。対照的に、顆粒球を活性化することが知られているペプチドfMLPは、CD11b発現の多大な増大およびCD62Lの消失をもたらした。
第二の実験では、4ドナー由来のヒト全血を、0.1〜100μg/mlのヒト化抗C5aR抗体hAb−GまたはhAb−J、10〜100nMのヒトC5a、またはdPBSと共に37℃で20分間インキュベートした。処理後のdPBS対照における発現と比較した好中球におけるCD11bおよびCD62Lの発現は、それぞれ図25Aおよび25B中に示す。試験した試料のいずれにおいても、好中球CD11bのhAb−GもしくはhAb−J誘発性上方制御またはCD62Lの発現の消失はなかった。対照的に、10nMおよび100nMのC5aは、それぞれdPBSと比較してCD11b発現の2.5および3.0倍の増大をもたらし、一方CD62Lの発現はそれぞれdPBS対照中で0.33および0.14のレベルに低下した。fMLPと同様に、C5aは顆粒球を活性化することが知られている。
第三の実験では、2健常ボランティア由来の全血を0.3〜300μg/mlのhAb−Qまたはアイソタイプ対照抗体に加え、次いで100nMのC5aまたはdPBSをそれぞれの試料に加えた。好中球CD11bおよびCD62Lの発現はフローサイトメトリーによって測定し、結果は図26aおよび26b中に示す。CD11bの発現レベルは、PBS中にhAb−Qまたはアイソタイプ対照抗体を含有する試料中で変化せず(増大せず)、300μg/mlまでの任意の抗体濃度で活性化がなかったことを示す(図26a)。しかしながら、アイソタイプ対照抗体を含有する試料に100nMのC5aを加えたとき、100nMのC5aを含有し抗体を含有しない試料中で測定してCD11bの発現は最大レベルに増大した。CD62Lの発現はC5aを含まない試料中でその最大レベル(活性化なし)であった。300μg/mlまでの濃度でのhAb−Qまたはアイソタイプ対照抗体の添加はCD62L発現のレベルを下げなかった、すなわち、好中球を活性化しなかった(図26b)。対照的に、アイソタイプ対照抗体および100nMのC5aを含有する試料はCD62L発現を消失し、最大に活性化された。
要約すると、これらの結果は、ex vivoでのヒト全血のインキュベーション後のCD62LおよびCD11bの発現レベルによって示されるように、ヒト化抗C5aR抗体はヒト好中球を活性化しないことを実証する。
C.hAb−Qは、固形支持体と結合するとin vitroにおいてヒト好中球を活性化しない
スーパーオキシドは、生成された好中球を活性化して病原体と闘う活性酸素種の1つである。しかしながら、スーパーオキシドは正常組織に対して悪影響を有する可能性もある。抗C5aR抗体がそれ自体で好中球によるスーパーオキシドの生成を刺激することができる可能性を調べた。以下に記載する実験は、ヒト化抗C5aR抗体hAb−Qがヒト好中球を刺激してスーパーオキシドを生成することはないが、ヒト好中球がC5aによって刺激されるとき、その生成に対抗することができることを示す。
方法
単離ヒト好中球によるin vitroでのスーパーオキシド生成の測定
スーパーオキシド(O )は、好中球が炎症性メディエータ、例えばC5aによって活性化されるときNADPHオキシダーゼによって生成される第一の酸素含有物質である。いくつかのO は細胞外に分泌される。膜不透過性であるシトクロムC(Fe3+)は、スーパーオキシドによって、550nmで分光光度法によって検出することができるシトクロムC(Fe2+)に還元される。本試験では、96ウェルプレートを使用して、Wallac Victor(Mayo and Curnutte、1990)を使用して分光光度法によりシトクロムCの減少を決定した。
ヒト好中球の調製
ヒト好中球を前の実施例5B中で前に記載したように精製した。96ウェルマイクロタイタープレートは、ヒトフィブリノゲン(1mg/ml)で一晩コーティングした。それぞれのウェルに、50μlのRM(HBSS(カタログ番号14175Gibco)および0.4mMのMgSO、0.5mMのMgCl、0.5mMのCaClおよび20mMのHEPESからなる反応混合物、および7.4でのpHセット)中の100μlのシトクロムC(150μM)および200,000の好中球を加えた。プレートは37℃でWallac Victor(Perkin−Elmer)中に挿入し、非刺激性O 生成は4分間毎分測定した。次に抗体を15μlのRM中に加え、ウェルは10分間2分毎に測定した。最後にC5aを加え、プレートは30分間2分毎に測定し、次に60分間10分毎に測定した。1.5時間後に測定した値を結果として使用した。4つのウェルをそれぞれの群に使用した。
結果
2〜6の健常ドナー由来の好中球をこの試験中で使用した。図27は、37℃で1.5時間のインキュベーション後のスーパーオキシドの生成を示す。反応混合物(RM)は対照として使用した(6ドナー)。炎症性メディエータC5aは確かなO 生成を誘導し(6ドナー)、これは抗C5aR抗体hAb−Qによって対抗された(5ドナー)。この試験では、高濃度の抗体を使用してどんな刺激効果も見落とさないことを確実にした。1000μg/ml(4ドナー)、250μg/ml(3ドナー)および100μg/ml(2ドナー)でのhAb−Q、ならびに、ネズミ抗体A−TNPのヒト化型である、対照、無関係なIgG抗体HzATNP(2ドナー)は、刺激効果がなかったことは明らかである。
要約すると、前に記載した結果は、ヒト化抗C5aR抗体hAb−Qはヒト好中球を刺激せず、フリーラジカルO を生成しなかったことを実証する。対照的に、それはC5aによって誘発された生成に対抗することができた。
ヒト化抗C5aR抗体は、ex vivoヒト全血アッセイ中で白血球細胞を枯渇させない
hAb−QがC5aRを発現する他のヒト細胞、特に血中の好中球および単球を死滅または枯渇することができたかどうか決定するために、いくつかのex vivo全血枯渇アッセイを実施した。全血枯渇試験は、補体または抗体媒介性死滅機構(CDC、ADCC)を不活性化しない、抗凝血剤、レピルジン(Refludan(登録商標))を使用した。レピルジンは非常に特異的な直接的トロンビン阻害剤である。それはヒルから抽出した抗凝血剤ヒルジンの組換え類似体である。
方法
血液採取
末梢静脈血を、50または500μg/mlのレピルジン(Refludan(登録商標)、Pharmion Pty Ltd、Melbourne、オーストラリア)の最終濃度を含有する滅菌15mlのポリプロピレンチューブ中に健常なボランティアから採取した。
抗体のインキュベーション
抗凝固処理血液のアリコート(50μl)を96ウェルプレートに分配し、100μg/mlの最終濃度でdPBSに希釈した25μlの抗体と共に5%CO中で37℃において3.5時間2連でインキュベートした。対照試料は50μlの血液および25μlのdPBSを含んでいた。抗hCD66b−FITC(1/100最終)、抗hCD19−APC(1/300最終)および抗hCD14−PE(1/300最終)を含む染色カクテル(25μl)をそれぞれの試料に加え、5%CO中で37℃において30分間インキュベーションを続けた。次いで、キャリブレーションビーズ(50μl、980ビーズ/μl;Flow−Count Fluorospheres;Beckman Coulter、USA;カタログ番号7547053)をそれぞれの試料に加えた。100μlの1×FACS溶解溶液(10×FACS溶解溶液;BD Biosciences;カタログ番号349202)を加えることにより赤血球を溶かした。全試料を1.5mlの試験管に移し、さらなる500μlの1×FACS溶解溶液を加えた。試験管は3分間4,000rpmで遠心分離にかけ、上清は除去した。細胞およびビーズは150μlのFACSバッファー(dPBS+1%BCS)中に再懸濁した。
FACS分析
細胞はFACSCalibur(Becton Dickinson)フローサイトメーターで分析した。前方散乱光および側方散乱光を使用してすべての細胞を含めたが、残骸は除外した。ゲートを設定して、CD66b−FITC(FL−1)陽性細胞(好中球)、CD19−APC(FL−4)陽性細胞(Bリンパ球)またはCD14−PE(FL−2)陽性細胞(単球)を計数した。5000ビーズ当たりの細胞数を決定した。
血液1ミリリットル当たりのそれぞれの細胞型の合計数は以下のように計算した:
細胞数/ml=5000ビーズ中の細胞数×(50×980)/5000×1000/50
枯渇率は以下のように計算した:
枯渇率=100×(1−(細胞数/抗体処理試料1ml/(細胞数/PBS処理試料1ml))
結果
レピルジンを含有する滅菌試験管中に回収した3人の異なる健常ボランティア由来の全末梢静脈血を使用して、3つの別個の実験を実施した。血液は、ヒト化抗C5aR抗体hAb−Q、リツキシマブ(陽性対照抗CD20抗体)、hIgG4(陰性アイソタイプ対照抗体)またはPBS(バッファー対照、細胞枯渇の程度を測定するためのベースライン)と共にインキュベートした。インキュベーションの最後に、CD66b、CD14およびCD19に対する標識抗体のカクテルを使用して細胞を染色し、顆粒球(好中球:CD66b+ve)、単球(CD66b−ve、CD14+ve)およびB細胞(CD19+ve)を同定した。それぞれの細胞型の絶対数を決定するために、既知の濃度を有する一定体積のキャリブレーションビーズをそれぞれの試料に加えた。したがって、それぞれの試料中の好中球(顆粒球)、単球およびB細胞の絶対数(1ml当たりの細胞数として)、および、PBSとインキュベートした試料中の細胞の合計数の割合として、発現した抗体を用いた治療後のそれぞれの細胞型の相対的枯渇を決定することができた。
3つの実験からのデータは平均し、結果は図28および29中に表す。図28は、3セットのデータから計算した細胞の平均数(±標準偏差)を示す。図29は、PBS処理試料中の細胞数と比較した、それぞれの細胞型の平均枯渇率(±sd)を示す。データは、hAb−Qとの4時間のインキュベーション後に顆粒球または単球の枯渇がなかったことを示す。対照的に、リツキシマブは(CD20、リツキシマブの標的を発現する)B細胞の約70%の枯渇を引き起こしたが、CD20を発現しない単球または好中球、細胞型の数は減らさなかった。
ヒト化抗C5aR抗体hAb−Qは、補体媒介性溶解によってC5aR発現細胞を死滅しない
C5aR発現細胞(好中球、単球など)を死滅しないヒト化抗C5aR抗体を開発することは望まれていた。いくつかの機構によって、抗体は標的抗原を発現する細胞の死滅を開始することができる。hAb−Qは、補体依存性細胞障害(CDC)および抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)を回避/低減するためのIgG4アイソタイプとして生成した。補体媒介性死滅は、抗原−抗体複合体が補体タンパク質、C1qと結合すると、抗体のFcドメインを介して誘導されて、一連のタンパク質分解事象の活性化を開始させ、C5aの放出および標的細胞を溶かす膜攻撃複合体の形成をもたらす。
hAb−QがCDC活性を誘導しなかったことを実証するために、以下の実験を実施した。
方法
高レベルのC5aRを発現するRamos E2クローンの作製
CD20発現ヒトBリンパ球細胞系(Burkittのリンパ腫由来)、Ramosを、製造者のプロトコルに従いリポフェクタミンTMLTX試薬(Invitrogen)を使用して、ヒトC5aR発現プラスミド(pcDNA3.1−C5aR;4μgのDNA/3×10個の細胞)で安定的にトランスフェクトした。トランスフェクションの40時間後に、Geneticin(G418硫酸塩、Gibco)を2mg/mlで増殖培地に加えた。細胞(非クローン)を選択培地中で約3週間増殖させ、このときトランスフェクトしたC5aRの発現および割合を、抗C5aR抗体を使用してフローサイトメトリーによって確認した。約30〜40の陽性クローン/プレートをもたらす密度で、細胞を384ウェルプレートに移した。単クローンコロニーを選択し、増殖用に96ウェルプレートに移した。十分な増殖後、それぞれのクローンにおけるC5aRの発現は、抗C5aR抗体を使用してフローサイトメトリーによって決定した。最高発現クローン、E2を選択し増殖させた。Ramos E2細胞はRPMI、10%のFCS、2mg/mlのG418中に維持した。
ウサギ補体を用いたCDCのアッセイ
標的細胞(Ramos E2細胞)は、抗体または培地単独(RPMI+10%熱不活性化BCS)と共に5%CO中で37℃において30分間インキュベートした。インキュベーション後、RPMIに希釈したウサギ補体(Cedarlane)を1%v/vの最終濃度で試料に加えた。5%CO中で37℃においてさらに2時間、試料をインキュベートした。
To−Pro−3陽性として定義した非生存標的細胞をフローサイトメトリーにより測定し、全標的細胞の割合として表す前に、蛍光性生死判別色素、To−Pro−3(Molecular Probes)をそれぞれの試料に加えた。
それぞれの試料の特異的CDCは、対応する試料の「標的および補体」(B)から非生存「標的のみ」の平均率(A)を引くことによって計算した。次いで「標的および補体」の「培地のみ」試料(C)をそれぞれの試料から引いて、特異的CDCの最終値を得た:
特異的CDC(溶解率)=(B−A)−C
前の式は以下のように表すこともできる:
特異的CDC(溶解率)=(T+CS−T+CMO)−(TOS−TOMO)。
上式で:T+CSは抗体を含む標的+補体試料中の非生存細胞の平均率であり、
T+CMOは標的+補体培地のみ(抗体含まず)中の非生存細胞の平均率であり、
TOSは抗体を含む標的のみ試料中の非生存細胞の平均率であり、
TOMOは標的のみ培地のみ(抗体含まず)中の非生存細胞の平均率である。
ヒト血清を用いたCDCアッセイ
ヒト血清を使用するADCCアッセイを、実施例10中で以下に記載したように実施した。抗体のCDC活性は、ヒト血清を含有する「標的のみ+抗体」試料(B)から非生存「標的のみ/培地のみ」試料の平均率(A)を引くことによって決定した。次いで、熱不活性化ウシ血清反応中の非生存「標的のみ+抗体」試料(C)−「標的のみ/培地のみ」試料(D)の割合を引いて、特異的CDCの最終値を得た:
特異的CDC(溶解率)=(B−A)−(C−D)
結果
Ramos E2標的細胞を使用したhAb−QのCDCアッセイ
補体依存性細胞障害(CDC)を誘導するhAb−Qの可能性を、ウサギ補体の存在下で抗体とヒト好中球をインキュベートすることによって最初に調べた。このアッセイ中好中球の特異的死滅(0.5%未満の細胞死)はほとんどなかった(データ示さず)。
高レベルのヒトC5aRおよびCD20を発現するRamos E2細胞系の開発後、hAb−QがCDCを誘導することができたかどうかという問題を再検討した。標的としてRamos E2細胞を使用した2連の実験を実施した。第一連は1%ウサギ補体を使用し、リツキシマブは陽性対照として働いた。第二連は、10%ヒト血清とインキュベートした試料中の細胞死と、熱不活性化ウシ血清とインキュベートした試料中の細胞死を比較した。
抗体hAb−Qは、1%ウサギ血清の存在下でRamos E2細胞のCDCを誘導しなかった
3つのアッセイを実施した。第一のアッセイは、10μg/mlの最終濃度の抗体hAb−Q、リツキシマブ(Roche)およびhIgG4アイソタイプ対照(Sigma)と、Ramos E2細胞および1%ウサギ補体をインキュベートすることを含んでいた。第二および第三のアッセイは100μg/mlで抗体を用いて実施し、過剰な陽性対照、ウサギポリクローナル抗C5aR(US Biological)を含んでいた。
第一の実験では、10μg/mlのhAb−Q、リツキシマブおよびhIgG4とインキュベートした試料中の特異的CDCのレベルは、それぞれ0%、96%および0%であった。第二および第三の実験では、100μg/mlのhAb−Q、リツキシマブおよびhIgG4とのインキュベーション後の平均特異的CDCは、それぞれ1.5%、98%および1%であった。Ramos E2と20μg/mlのポリクローナルおよび1%ウサギ補体のインキュベーションは、82%の特異的CDCをもたらした(図30)。リツキシマブはCDCによりCD20を発現する細胞を死滅することが報告されている。ポリクローナル抗体も、補体活性化およびCDCの有効な誘導剤である。これらの陽性対照はCDCアッセイが働いていたことを示し、ヒト化抗C5aR抗体hAb−QはCDCにより細胞を死滅しなかったことを実証する。
抗体hAb−Qは、10%ヒト血清の存在下でRamos E2細胞のCDCを誘導しなかった
ヒト血液から単離したエフェクター細胞(PBMC)を使用して、一連のADCCアッセイを実施して(以下の実施例10参照)、ヒト化抗C5aRまたは対照抗体とインキュベートしたRamos E2細胞を標的化した。一組の対照反応を並行して実施し、熱不活性化ウシ血清またはPBMCをもたらした同じドナー由来の10%ヒト血清の存在下で、Ramos E2細胞(「標的のみ」)および抗体のインキュベーションを含んでいた。
ヒト血清を含有した対照反応は、それらはウサギ補体ではなくヒト血清以外、前に記載したCDCアッセイに類似するので、CDCアッセイを表すと考えた。しかしながら、1つの違いは、ヒト血清なしでインキュベートした標的+抗体試料が存在しないことであった。したがって、ヒト血清を使用したアッセイ中では、特異的CDCは、ヒト血清とインキュベートした標的+抗体試料中の「非生存標的細胞の割合」から、熱不活性化ウシ血清とインキュベートした標的+抗体試料中の「非生存標的細胞の割合」を引くことによって計算した。
ヒト血清を使用した7つのアッセイを実施した。Ramos E2細胞を、3時間10%熱不活性化ウシ血清または10%ヒト血清の存在下において1、10または100μg/mlでhAb−Q、リツキシマブまたはhIgG4アイソタイプ対照抗体とインキュベートした。Ramos E2細胞に、インキュベーション前に色素PKH−26およびインキュベーション後に生死判別色素ToPro3を充填して、非生存細胞と生存細胞を区別することができた。特異的CDCは前に記載したように計算し、培地のみのバックグラウンドをアッセイ中でそれぞれの試料から引いた。ヒト血清を用いたそれぞれの処理に関する非生存標的(Ramos E2)細胞の平均率、熱不活性化ウシ血清試料中で観察した非特異性が低い死は特異的CDCと一致し、結果は図31中に示す。
図31は、hAb−Qを含有する試料中では、非常に低レベルの特異的CDCが存在し(約1〜2%)、用量間で差はなかったことを示す。Ramos E2溶解のレベルは、hAb−Qを含有する熱不活性化ウシ血清とヒト血清試料の両方と類似していた。特異的CDCの類似していたレベル(約0〜4%)は、アイソタイプ対照抗体とインキュベートした試料中で観察した。重要なことに、hAb−QおよびhIgG4アイソタイプ抗体とインキュベートした試料中で観察した溶解の平均量の間で、統計上有意な差はなかった(p>0.05)。このデータは、hAb−QはCDCを特異的に媒介しないことを示唆する。対照的に、リツキシマブを含有する試料中の特異的CDCは用量依存性であり、1μg/mlのリツキシマブでの72%から100μg/mlのリツキシマブでの91%の範囲であった。ヒト血清の存在下においてリツキシマブで観察した高レベルの死滅は、アッセイが働いていたことを示し、したがって、hAb−QはCDCを媒介しないと結論付ける。hAb−QがCDCを媒介した場合、Ramos E2クローンが類似した高レベルのCD20およびhC5aRを発現することを考慮して、リツキシマブに対する類似したレベルの死滅を予想することができた。
ヒト化抗C5aR抗体によって誘導される抗体依存性細胞障害は、重鎖アイソタイプに依存する
C5aR発現細胞(好中球、単球など)を死滅しないヒト化抗C5aR抗体を開発することは望まれていた。いくつかの機構によって、抗体は標的抗原を発現する細胞の死滅を開始することができる。いくつかのヒト化抗C5aR抗体(例えば、hAb−Q、hAb−J、hAb−G)はIgGアイソタイプで生成し、補体依存性細胞障害(CDC)および抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)を回避/低減した。他のヒト化抗C5aR抗体(例えば、hAb−N、hAb−O)は、C1qおよびFcyRと結合し、したがってCDCおよびADCCを誘導する可能性が高いことが知られているIgG1アイソタイプで生成した。抗体のFcドメインが抗原、例えば「標的細胞」上の受容体と結合し、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、好中球および好酸球を含めた、細胞障害能を有する細胞(「エフェクター細胞」)上のFc受容体と架橋すると、ADCCが媒介される。
in vitroでヒト化抗C5aR抗体によって誘導されたADCC活性のレベルの決定するために、以下の実験を実施した。
方法
ADCCアッセイプロトコル
簡単に述べると、エフェクター細胞成分は、FicollまたはPercoll(GE Healthcare)のいずれかの密度勾配分離を使用して健常ドナーから末梢血単核細胞(PBMC)を単離することによって調製した。5%CO中に37℃で100ng/mlの組換えヒトIL−2(Peprotech)を含有する培地中で一晩インキュベートした、残存する、非接着細胞(NK細胞を含有する)を含むフラスコに接着させることによって(1時間、37℃、5%CO)、PBMC集団から次いで単球を枯渇させた。翌日、標的細胞(hC5aRを発現するRamos E2細胞−前を参照)を蛍光細胞膜色素、PKH26(Sigma)で染色し、5×10個細胞/試料を、5%CO中で37℃において30分間抗体または培地のみとインキュベートした。インキュベーション後、50:1の比でエフェクター細胞、または培地のみのいずれかを標的細胞に加え、試料を5%CO中で37℃においてさらに3時間インキュベートした。To−Pro−3陽性として定義した非生存標的細胞をフローサイトメトリーにより測定し、全標的細胞(PHK−26陽性細胞)の割合として表す前に、蛍光性生死判別色素、To−Pro−3(Molecular Probes)をそれぞれの試料に加えた。培地は、PBMC「エフェクター」細胞を単離した同じドナー由来の10%ヒト血清、または10%熱不活性化ウシ血清のいずれかを含有していた。
それぞれの試料の特異的ADCCは、対応する試料の「標的およびエフェクター」(B)から非生存「標的のみ」の平均率(A)を引くことによって計算した。次いで「標的およびエフェクター」の「培地のみ」試料(C)をそれぞれの試料から引いて、特異的ADCCの最終値を得た:
特異的ADCC(溶解率)=(B−A)−C
前の式は以下のように表すこともできる:
特異的ADCC(溶解率)=(T+ES−T+EMO)−(TOS−TOMO)。
上式で:T+ESは抗体を含む標的+エフェクター試料中の非生存細胞の平均率であり、
T+EMOは標的+エフェクター培地のみ(抗体含まず)中の非生存細胞の平均率であり、
TOSは抗体を含む標的のみ試料中の非生存細胞の平均率であり、
TOMOは標的のみ培地のみ(抗体含まず)中の非生存細胞の平均率である。
結果
ADCC機構によって細胞死滅を誘導するヒト化抗C5aR抗体hAb−Qの能力を、標的としてRamos E2細胞を使用して一連のアッセイ中で調べた。Ramos E2細胞はCD20とC5aRの両方を発現し、CD20を標的化しADCCによって死滅するリツキシマブは陽性対照として使用することができる。Ramos E2におけるC5aRの発現はヒト好中球における発現より約7倍高かった。細胞表面上で発現される標的受容体のレベルは、抗体によって誘導されるADCCおよびCDCの程度に影響を与える可能性があることが報告されている(Preithenerら、2006;van Meertenら、2006;Lowensteinら、2006)。
エフェクター細胞は健常ボランティアの静脈血から精製したヒトPBMCであり、次いで単核を枯渇させ、IL−2と共に一晩インキュベートしてNK細胞を刺激(「初回抗原刺激」)した。このステップは、エフェクターの細胞障害性を最大にするのに必要であることが分かった。
標的細胞は色素PKH−26で標識し、したがってそれらは、フローサイトメトリー中にエフェクター細胞と区別することができた。それぞれの標的+抗体試料用に、2本の試験管をセットアップした(それぞれ2連)。1つは標的細胞および培地を含有しており、もう1つは50:1の比でエフェクターおよび標的を含有していた。50:1の最適なエフェクター:標的比は、アッセイ開発中に、最大の死滅をもたらすことが示されている。すべてのインキュベーションステップ後に試料に色素To−Pro−3(TP3)を加え、フローサイトメトリーにより分析することによって生存能力を測定した。標的細胞の枯渇は、バックグラウンド(無抗体試料)の控除後の全標的細胞(PKH+ve)の割合としての、非生存標的細胞(TP3+ve/PKH+ve)の数であった。
標的細胞としてRamos E2を使用してhAb−QおよびhAb−Nによって誘導されたADCC活性の比較
第一系列の実験では、Ramos E2細胞のADCCを誘導するヒト化抗C5aR抗体hAb−Q(重鎖アイソタイプhIgG4)およびhAb−N(hIgG1)の能力を、リツキシマブ(hIgG1)およびアイソタイプ対照抗体(hIgG4)によって誘導されたADCCと比較した。ヒトIgG1はhIgG4よりFcγRに対する高いアフィニティーを有し、より効率良くADCCを誘導すると予想される。
標的細胞は、10%熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)の存在下で、100μg/mlのhAb−Q、hAb−N、リツキシマブ(Roche)、hIgG4抗体(Sigma)または培地(RPMI)のみと共にインキュベートした。30分後、IL−2刺激PBMC(50:1(E:T)の比で)または培地のみのいずれかを標的細胞に加え、インキュベーションは3時間続けた。フローサイトメトリーによって測定した非生存細胞の数はADCC活性の指標であった。培地のみのバックグラウンドおよび標的のみのバックグラウンドをそれぞれの試料から引いて、特異的ADCC活性を決定した。3つの同一の実験を実施した。結果(3つの実験からの結合データ±sd)は図32中に示す。
IgG1抗体、リツキシマブと抗C5aRhAb−Nの両方が、Ramos E2細胞の(65%を超える)高レベルの死滅を媒介する際に有効であった。対照的に、hAb−Q(IgG4)およびアイソタイプ対照hIgG4によって媒介された特異的ADCCのレベルは著しく低く、PBMCおよびhAb−Qとのインキュベーション後わずか23%のRamos E2細胞が非生存状態であった。アイソタイプ対照抗体とインキュベートしたRamos E2細胞の死はなかった。これらの結果は、抗体のアイソタイプはADCC活性の重要な決定因子であること、および抗体依存性の細胞死滅が望ましくない場合、hIgG4アイソタイプのヒト化抗C5aR抗体がin vivo治療に好ましい可能性があることを示唆する。
標的としてRamos E2C細胞を用いてhAb−Qにより媒介されたADCC活性に対する血清の影響の比較
別の系のADCCアッセイを前述のように実施し、一組の試料はPBMCエフェクター細胞のドナーから単離した10%ヒト血清を含有する培地中でインキュベートし、および同組の試料は10%熱不活性化ウシ血清を含有していた。血清の熱不活性化は補体活性を損ねるように設計する。したがって、ヒト血清とインキュベートした試料中でCDC活性を観察することができると予想した。CDCのレベルは「標的のみ」試料から決定した。実際、リツキシマブを含有する「標的のみ」試料中では、非生存(TP3+ve)細胞の数は通常90%を超えた。したがって、ヒト血清を含有する試料中でリツキシマブによって誘導された特異的ADCC活性は決定することができなかった。しかしながら、10%熱不活性化ウシ血清および100μg/mlのリツキシマブを含有する並行試料中では、平均60%の標的(Ramos E2)細胞がエフェクター細胞によって特異的に死滅された。これは図32中に表す結果と類似しており、エフェクター細胞およびADCCアッセイが働いていたことを示した。
さらに、図31中で前に示したように、ヒト化抗C5aR(hAb−Q)およびhIgG4アイソタイプ対照抗体は、このアッセイ中でCDC活性を誘導しなかった。したがって、hAb−Qおよびアイソタイプ対照抗体による特異的ADCCは、ヒト血清を含有する試料に関して前に記載したように計算することができた。結果は図33中に示す。1〜100μg/mlの任意の濃度で、hAb−Q、アイソタイプ対照も、ADCCによる有意な細胞死は引き起こさなかった。hAb−Qに関して、この結果は、熱不活性化ウシ血清を含有する試料において観察したADCC活性と対照をなす(図32)。
マウスの試験
KRNトランスジェニックマウス系は、C57BL/6バックグラウンドで自己抗原グルコース−6−リン酸イソメラーゼ(GPI)を認識するT細胞受容体を含有する。これらのマウスをNODマウスと交配すると、トランス遺伝子陽性F1子孫(K/BxN)は、GPIに対する循環抗体によって媒介される自己免疫様疾患を自然に発症する(Kouskoffら、1996)。関節炎K/BxNマウス由来の血清は他の系統に移すことができ、そこで自己抗原免疫複合体は、別の補体経路、次にC5aR−およびFcガンマRIII媒介性細胞活性化および前炎症性サイトカインの生成を活性化する(Jiら、2002)。好中球、マスト細胞およびマクロファージは、このモデル中の病状の発症において重要な役割を果たす(Wipke and Allen、2001;Leeら、2002;Solomonら、2005)。観察した炎症性の表現型は、関節破壊を伴う慢性進行性疾患の状態を含めたヒト関節リウマチの指標の多くの特徴をなす(Kyburz and Corr、2003)。
A.炎症性関節炎のマウスモデル中のC5aR逆炎症に対するヒト化抗体
方法
動物
約6〜12週齢のC57BL/6バックグラウンドのヒトC5aRノックイントランスジェニックマウス(Leeら、2006)は、Garvan Institute、シドニーでの繁殖コロニーから入手した。雄のマウスが実験に好ましかったが、雌のマウスも使用した。
K/BxN血清の調製
実験用の血清を生成するために、KRNの雄をNODの雌と交配させた。炎症関節を発症したKRNトランス遺伝子を有するF1子孫は屠殺し、血液は心穿刺によって回収した。血清は37℃で2時間のインキュベーション後に単離し、4000rpmで10分間遠心分離にかけた。多数のマウスからの血清をプールし、再度アリコートにし−80℃で保存した。
実験関節炎の誘導および測定
第0日および第2日に100〜150μlの血清を腹腔内注射することによって、レシピエントマウスにおいて実験関節炎を誘導した。疾患の進行は、カリパスを使用して足首の太さの変化を測定し、臨床値を決定することによって毎日モニタリングした。毎日の足首の太さは、それぞれの後足からの2つの読み取り値を平均することによって決定した。臨床値は、4足に関する値:0、正常関節、1、足首の軽度/適度な腫れおよび/または1本の腫れた指、2、腫れた足首または2本以上の指の腫れ、3、足の全側面に沿った重度の腫れまたは全5本の指の腫れを合計することによりそれぞれのマウスに関して計算した。マウスをモニタリングした調査員は、それぞれのマウスに与えた治療に対して盲検とした。
治療
精製抗C5aRまたはアイソタイプ対照抗体(1〜10mg/kg、PBS中)を、第5日に腹腔内注射した(療法治療レジメ)。いくつかの実験では、対照群にはアイソタイプ対照抗体ではなくPBSを与えた。
統計分析
K/BxNモデル中の独立した対照群と治療群の間の差の統計的有意性を、マンホイットニー検定を使用して、またはクラスカルワリス検定およびダンの多重比較検定と共に実施した事後解析を使用して決定した。
結果
K/BxNモデルにおいて確定した炎症を逆行させるヒト化7F3抗体の能力を調べ、それらの結果は以下に報告する。表8は、このモデルにおいて試験した抗体、および投与した用量を列挙する。関節炎をK/BxN血清注射によって誘導した後、すべての抗体を第5日に腹腔内注射によって「治療的に」投与した。
図34および35中に表す結果は、炎症性関節炎の誘導後第5日に10mg/kgで腹腔内投与したとき、ヒト化抗体が炎症の臨床兆候の逆行において有効であったことを示す。低用量の抗体JおよびCは10mg/kgの用量ほど有効ではなかったが、対照群(PBSまたはヒトIgG4−無関係なヒト抗原に対するアイソタイプ対照抗体を与えたマウス)中で見られたように、大抵の場合、炎症の任意のさらなる増大を阻止することができた。
B.ヒト化抗C5aR抗体は、関節リウマチのマウスモデル中の関節炎症の兆候および症状を低減する:抗体用量、抗体血清濃度、受容体専有と有効性の間の関係
ヒト化抗C5aR抗体の治療的投与の前に、マウスにおいて実験関節炎を誘導した。抗体用量、血清中抗体濃度、抗体によるC5aR専有のレベルとマウス中の関節炎症に対する影響の間の関係を調べた。
方法
動物
8〜16週齢(平均約12)のC57BL/6バックグラウンドの雄および雌のヒトC5aRノックイントランスジェニックマウス(Leeら、2006)を、Garvan Institute、シドニーまたはAnimal Resources Centre、パースでの繁殖コロニーから入手した。
K/BxN血清の調製
この試験中のすべてのマウスに、前に記載したように調製したK/BxN血清の同じバッチを注射した。
hAb−QのFITC標識
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)を、以下のようにhAb−Q抗体と共有結合させた。簡単に述べると、約1.5mgのhAb−Qを「反応バッファー」(160mMのNaCO、340mMのNaHCO、pH9.5)中に交換し、抗体1mg当たりDMSOに溶かした120μgのFITC(Molecular Probes)に加えた。反応は室温(23℃)において1時間、暗所で実施した。非結合FITCは、予め平衡状態にし「保存バッファー」(10mMのトリス、150mMのNaCl、pH8.2)で溶出したPD−10カラムを使用して除去した。結合hAb−Q−FITCは濃縮して、Centricon(YM−30)スピンフィルターを使用して1.036mg/mlの最終濃度を得て、暗所で4℃において保存した。
実験関節炎の誘導および測定
前に記載したように第0日および第2日に150μlのK/BxN血清を腹腔内注射することによって、レシピエントマウスにおいて実験関節炎を誘導した。第5日に、第0日からの足サイズの変化(mm単位)と臨床値を掛けることによって、「RA値」をそれぞれのマウスに関して計算した。0.5を超えるRA値を有していたマウスのみを試験の治療段階に進めた。炎症性関節炎は、雄の約90%および雌マウスの50%において発症した。
試験設計−概観および群の大きさ
この試験は、抗C5aR抗体を用いた治療の開始前後の、様々な時間でのK/BxN疾患モデルにおける炎症、in vivoでの受容体専有、および血清抗体濃度を測定するために設計した。このモデルにおける疾患の過程は約3週間以内で一般に消散する。炎症の兆候および症状は、K/BxNマウス由来の血清を用いた免疫処置の1日または2日以内に明らかである。炎症は第10〜14日辺りがピークであり、その後ゆっくりと低下する。
これらの状況を考慮して、以下のスケジュールを分析に採用した:
●炎症:足サイズおよび臨床値は、第0日(最初の血清注射前)、第2日(第二回目の血清注射前)、第5日(治療開始前)、次いで第6日、第7日、第8日、第9日、第10日、第11日、第12日、第14日および第16日に測定した。炎症は群当たり少なくとも10匹のマウスで決定した。
●血清抗体濃度:血液は第5日(治療後30分および12時間)、第6日(治療後24時間)、第7日(48時間)、第8日(72時間)、第9日(96時間)、第10日(120時間)、第11日(144時間)、第12日(168時間)、第14日(192時間)および第16日(264時間)に試料採取した。血清は第5.5日(治療後12時間)、第6日、第8日、第10日、第12日および第16日に心穿刺によって回収した血液から、および第5日(治療後30分)および第7日、第9日、第11日および第14日に出血させた尾静脈から調製した。2〜4匹のマウスの群はそれぞれの治療に関して毎回血液を得たが、それぞれのマウスは3回を超えて出血させなかった。約100μlの血液を1.5mlの試験管(抗凝血剤含まず)中に回収し、37℃で30分間インキュベートして凝固を促進し、次に13,000rpmで10分間遠心分離にかけた。血清は新たな試験管(マウス試料当たり2本)中に分配し、ELISAを使用して抗体濃度を決定する前に−80℃で保存した。
●受容体飽和:マウス(群当たりn=4)を第5.5日(治療後12時間)、第6日、第8日、第10日、第12日および第16日に屠殺し、心穿刺によって血液を回収した。白血球をFITC標識hAb−Qで染色して遊離C5a受容体の量を決定し、またはFITC標識抗ヒトIgGで染色してPBS対照と比較した結合hAb−Qの量を決定した。細胞はCD11bおよびLy6Gで同時染色して好中球と単核を区別した。さらなる詳細に関しては以下を参照。
治療
この試験に入れるために選択したマウスはランダムに5群に分けて、第5日に5つの治療の1つを施した:
1.PBS、腹腔内
2.huIgG対照抗体、腹腔内、@8mg/kg
3.hAb−Q、腹腔内、@1mg/kg
4.hAb−Q、腹腔内、@3mg/kg
5.hAb−Q、腹腔内、@10mg/kg
注射する合計体積がマウス当たり約100μlであるように、抗体をPBS中に溶かした。マウスをモニタリングした調査員は、それぞれのマウスに施した治療に対して盲検とした。受容体専有試験用にPBSを施した動物を確認したこと以外、データ回収および分析後まで治療群は明らかではなかった。
群1(PBS対照)は抗体で治療せず、これを使用して受容体飽和、活性化およびPK分析のベースラインを設定した。群2は、無関係なヒトIgG抗体で治療した陰性対照群であった。群3〜5には抗C5aR治療を与えた。
統計分析
独立した対照群と治療群の間の差の統計的有意性を、前に記載したように決定した。
結合hAb−Qの測定
それぞれの試験試料用にhAb−Q(200μg/ml、[最終])またはdPBSのいずれかを含有するようにプレートをセットアップした。それぞれのマウス由来の25μlのヘパリン化血液をhAb−QとdPBSの両方を含有するウェルに加え、37℃で1.5時間インキュベートした。細胞はdPBSで3回洗浄して非結合hAb−Qを除去し、室温で45分、抗hIgG−FITC(1/50)、抗Ly−6G−PEおよび抗CD11b−PerCP/Cy5.5抗体(1/400)を含有するdPBS中に再懸濁した。赤血球はBD FACS溶解溶液(BD、349202)を加えることによって除去した。試料プレートは2,000rpmで3分間遠心分離にかけ、上清は除去し、フローサイトメトリー(BD FACSCanto)による分析用にBD FACS溶解溶液中に細胞を再び再懸濁した。
「遊離」C5a受容体の測定
hAb−Q(200μg/ml、[最終])、最大遊離C5aR用)またはdPBS(最大遊離C5aRおよびすべての試験試料用)のいずれかを含有するようにプレートをセットアップした。それぞれのマウス由来の25μlのヘパリン化血液を対応するウェルに加えた(すなわち、dPBSのみを注射したマウス由来の血液を+hAb−QとdPBSの両方を含有するウェルに加えた(最小および最大遊離C5aR用))。すべての他の試験用血液試料はdPBSのみを含有するウェルに加え、37℃で1.5時間インキュベートした。細胞はdPBSで3回洗浄して過剰なhAb−Qを除去し、37℃で45分、25μg/mlでhAb−Q−FITC、抗Ly−6G−PEおよび抗CD11b−PerCP/Cy5.5抗体(1/400)を含有するdPBS中に再懸濁した。赤血球はBD FACS溶解溶液(BD、349202)を加えることによって除去した。試料プレートは2,000rpmで3分間遠心分離にかけ、上清は除去し、フローサイトメトリー(BD FACSCanto)による分析用にBD FACS溶解溶液中に細胞を再び再懸濁した。
好中球C5a受容体飽和のフローサイトメトリー分析
BD FACSCantoフローサイトメーターを、チャネルFL−1、FL−2およびFL−3に関して確定した補償パラメーターでセットアップした。試料を入手して死細胞および残骸は除外した。好中球はLy−6G−PE高、CD11b−PerCP/C5.5低−高として同定した。単球はLy−6G−PE陰性、CD11b−PerCP/C5.5高として同定した。結合hAb−Q(α−IgG−FITC)および遊離C5aR(hAb−Q−FITC)のレベルは、それぞれの試料に関するFITC(FL−1)平均蛍光強度(MFI)を測定することによって決定した。
結合hAb−Qの割合を、以下の等式に従い、(PBS次いでFITC抗hIgGとインキュベートしたPBS治療マウス試料から計算したバックグラウンドの控除後)200μg/mlのhAb−Qとインキュベートした同じ試料に関するMFIの割合として、dPBS中でインキュベートしたそれぞれの試料のMFIを決定することによって定量化した:
[[MFI(試料+dPBS)−MFI(バックグラウンド、すなわちPBS対照マウス+dPBS)]/[Max_MFI(試料+冷却hAb−Q)−MFI(バックグラウンド)]]×100
遊離C5a受容体の割合を、最大遊離受容体試料、すなわちdPBSのみを投与したマウスの割合として、dPBS中でインキュベートしたそれぞれの試料のMFIを決定することによって定量化した。最小遊離C5aR、すなわち過剰なhAb−Qとex vivoでインキュベートした試料はこの計算中では使用しなかったが、比較目的で使用した。
抗体血清濃度の測定
hAb−Qの血清濃度は、マウス血清中のhAb−Qを検出することが実証されたELISA法を使用してGLPに従いアッセイした。定量化の下限(LLOQ)は4ng/mlであった。in vitro消失試験用に、マウスアッセイをヒトEDTA血漿中でのhAb−Qの検出用に定性化した。アッセイを血漿に施したとき、LLOQは10ng/mlであった。
結果
数匹の200hC5aRKO/KIマウスを、2日間隔で(第0日と第2日)K/BxNマウス由来の血清を用いて2回免疫処置して、レシピエントマウスの足における膨張した関節および指として現れる炎症性関節炎を誘導した。第5日までに、約70%のマウス(約85%の雄および約60%の雌)が、足および関節のある程度の膨張および発赤を発症した。0.5を超える「RA値」を有するマウスを、群当たり11〜12マウスの5つの治療群にランダムに選別した。それぞれの群には、5つの治療−1、3および10mg/kgの用量でのPBSに溶かしたhAb−Q、8mg/kgの用量でのPBSに溶かした対照抗体(無関係な抗原に対するヒトIgG)およびPBSのみの1つを施した。次の11日間、マウスを定期的にモニタリングし、臨床値を割り当て、足サイズ(足首の太さ)を測定した。受容体占有率および抗体血清濃度を決定するために、第5.5日、第6日、第7日、第8日、第9日、第10日、第12日、第14日および第16日に、血液試料は尾静脈から、または心穿刺によって回収した。
ヒト化抗C5aR抗体は、用量依存式に炎症性関節炎のK/BxNモデルにおいて炎症を逆行させる
それぞれの治療群に関する第0日からの平均臨床値および足サイズの変化を図36中に示す。このデータは、hAb−Qはin vivoで炎症の兆候および症状を低減する際に有効であったことを示す。用量応答の関係を観察し、10mg/kgの用量は3および1mg/kgの用量より明らかに有効であった。2つの対照群を比較すると、10mg/kgのhAb−Qは投与後1週間炎症および臨床値を低減および制御し、3mg/kgのhAb−Qは約5日間炎症の任意のさらなる増大を阻止したが、既存の炎症を低減することはできず、かつ1mg/kgのhAb−Qは有効ではなかった。最後の3〜5日の行程中、10mg/kgと3mg/kgの群の両方において炎症値の上昇の傾向があった。hAb−Qの1つの用量のみを第5日に与えた。以下に示すように、炎症の低減または安定(さらなる増大なし)は、高い受容体飽和度および血清抗体濃度と関係があった。これらが低下すると、炎症は回復した。
ヒト化抗C5aR抗体によるC5a受容体占有率のレベルおよび程度は用量依存性である
受容体占有率を2つの異なる方法で測定した。白血球はhAb−Q−FITCで染色して「遊離」受容体の量を決定し、または抗hIgG−FITCで染色してin vivoで結合したhAb−Q(「占有」受容体)の量を決定し、CD11bとLy6Gで同時染色して好中球と単球を区別した。好中球上でC5aRと結合した抗体の量と遊離(空)受容体の量の間には、反比例関係があるはずである。結合抗体を計算したとき、マウス毎の受容体数の変動を補正した。遊離受容体を決定したとき、これは実施しなかった。結果は図37および38中に示す。
図37は、投与した抗体用量と好中球中の結合抗C5aR抗体の間の関係を示す。最高用量、10mg/kgで、結合抗体は投与(第10日)後約120時間まで飽和レベルの状態であり、次いで264時間(第16日)までに約20%の占有率に低下した。3mg/kgでは、結合抗体は約24時間飽和レベルであり、次いで72時間までに50%、120時間までに15%に低下した。1mg/kgの用量は抗体の飽和結合をもたらすのに十分ではなく、受容体占有率は投与後24時間でわずか75%であった。72時間までに、好中球と結合したhAb−Qはほとんど存在しなかった。同様の結果を単球において観察した(示さず)。
図38は、「遊離」受容体のレベルが「占有」受容体(図37中に示した結合抗体)の割合と逆相関していたことを示す。投与後1週間まで、10mg/kgのhAb−Qで治療したマウス中の好中球上には非常に少ない遊離受容体が存在した。3mg/kgの群中では、72時間後まで遊離受容体はほとんど存在せず、かつ1mg/kgの群中では、遊離受容体は投与後24時間後劇的に増大した。同様の結果を単球において観察した(示さず)。
血清中のヒト化抗C5aR抗体濃度のレベルおよび程度は用量依存性である
動物の血清中のヒト化抗C5aR抗体の濃度を、投与後30分と11日の間の間隔で決定した。結果は図39中に示す。投与後、血清中のhAb−Qの濃度は急激に増大した。測定した最大濃度には投与後30分と12時間の間で到達し、用量依存性であった。1mg/kgの抗体の投与後、血清中の濃度は30分後1.9μg/mlでピークに達し、12時間1.5μg/mlを超えた状態であり、次いで第7日(投与後48時間)に0.1μg/ml未満に低下した。3mg/kgの群中のピークの血清抗体濃度は、投与後12時間で13.3μg/mlであった。抗体のレベルは2日間高い状態であり(5μg/mlを超えた)、次いで第9日まで(投与後96時間)に0.1μg/ml未満に急激に低下した。10mg/kgの群中の血清抗体濃度は、投与後12時間において69.5μg/mlでピークに達し、次の7日間で5.5μg/mlに、次いで第14日までに0.1μg/ml未満に徐々に低下した。
炎症の低減、または安定化は、高い受容体占有率および高い血清抗体濃度と相関関係がある
前述の図36a(臨床値)、37(hAb−Qにより占有されたhC5aRの割合)および39(血清中のhAb−Q濃度)からのデータを図40、41および42中で組み合わせて、抗体用量、受容体占有率および血清抗体濃度の間の関係を実証した。
K/BxN血清の注射によりマウスにおいて実験的関節炎を誘導すると、関節および足の膨張および発赤の増大があり、前に記載した「関節炎の指標」を使用して、これを定量化する(臨床値として表す)。ヒト化抗C5aR抗体hAb−Qを「治療的」、すなわち第0日および第2日にK/BxN血清を与えたマウス中で炎症が発症した後第5日に投与したとき、高用量(10mg/kg)を与えたマウス群中で炎症の重度の持続的な低減があった。図40は、この群中の炎症のレベル(臨床値)は、受容体占有率が高くなった(40%超)のと同時に第5日および第12日の間に低下したこと、および(5μg/mlを超えた)高レベルのhAb−Qを血清中で測定したことを示す。3mg/kgのhAb−Qを投与したマウスは、次の4日間で再度増大する傾向が始まる前に、次の3日間で炎症のわずかな低下を記録した。図41は、3mg/kgのhAb−Qを与えたマウス中で、同時に血清抗体濃度が5μg/mlを超え、受容体占有率は50%以上であったことを示す。第8日後、血清抗体濃度と受容体占有率の両方が急激に低下し、これは再度増大する傾向が始まった周期的炎症に対応した。マウスに1mg/kgのhAb−Q、低用量を投与すると、臨床値によって証明されたように(図42)、絶えず増大するレベルの炎症の約1日の一時停止があった。同時に、血清中の抗体レベルは、注射直後の1.8μg/mlのピークから、および12時間後の1.5μg/mlに急激に低下した。C5aRの占有率は、急激に低下する前の1日のみ50%を超える状態であった。
総合すると、これらのデータは、高い受容体占有率は血清中の高い抗体濃度に依存し、かつ組織切片中で観察し足サイズおよび臨床値の低減によって測定した関節内の白血球の減少は、高レベルの受容体占有率(少ない「遊離」受容体)に依存するという提言を支持する。遊離受容体なしでは、C5aはC5aRと結合して、白血球の活性化および血液から炎症部位への白血球の遊走、ならびに組織中での補体活性化を引き起こすことはできない。
C.K/BxNマウスモデルにおけるhAb−QのPK/PD関係
この実施例では、本発明者らは、抗C5aRmAbの薬物動態、標的受容体占有率、および炎症性関節炎のK/BxNマウスモデルにおける影響の間の定量的関係を記載する、考えられる薬物動態/薬力学(PK/PD)モデルを与える。モデリングに関するデータは、2つの試験、薬理学的試験(前で実施例11B中に記載した)および毒性試験から作成した。このモデルはデータを解釈するための方法を構成して濃度応答の関係を調べ、かつこれを使用してヒト中で安全な開始用量の選択を支援することができる。
方法
薬理学的試験
薬理学的試験法の完全な詳細は実施例11B中で前に与える。簡単に述べると、この試験の目的は、第一にヒト化抗C5aR抗体、hAb−Qを用いた療法治療が、K/BxNモデルにおいて炎症性関節炎の兆候および症状を逆行させる際に有効であったかどうか決定すること、および第二に、用量と抗炎症効果、受容体占有率のレベル(遊離hC5aRおよび結合hAb−Qとして測定)、好中球活性化状態および循環血清中抗体濃度を関連付けることであった。炎症は群当たり少なくとも10匹のマウスにおいて決定した。受容体飽和試験は、PBSを与えた対照群が2匹のマウスを含んでいたこと以外、群当たり4匹のマウスで行った。投与群(1、3、10mg/kg、腹腔内、および対照動物)。
毒性試験
hC5aRトランスジェニックマウスへのhAb−Qの皮下および静脈内(ボーラス)投与による毒性試験、用量は隔日で投与した。トキシコキネティックデータは、4つのhAb−Q用量群(5、50、500mg/kg、静脈内、および100mg/kg皮下(s.c.))のそれぞれにおいて、18〜21匹の雄および18〜21匹の雌から得た。
薬物動態
hAb−Qの血清濃度は前に記載したようにアッセイした。
受容体占有率
hAb−Qモノクローナル抗体の投与による好中球および単球におけるhC5aRとの結合を、前に記載したように決定した。薬理学的試験用に、占有率は、
として計算した。
結合前の値を引いた。これらはバックグラウンドMFIを与えると考えたからである。
モデルの開発
一次条件付き評価(FOCE)を用いたNONMEM VI(非線形混合効果モデリングソフトウェア)をモデリングに使用し、S−PLUS(登録商標)8.0(Insigthful)はグラフィックスおよびデータ処理に使用した。中間モデル間の区別の評価は、目的関数値および標準的なグラフィック評価法に基づいた。目的関数値の点で、この値の変化は(枝分かれモデルに関して)カイ二乗分布であると考え、モデルを拡大するための基準を定義し適宜に使用した。
結果
占有率に関するPK/PDの関係
トランスジェニックマウスにおける毒性試験からのトキシコキネティックスと薬理学的試験からのPK/PDデータを統合して、薬物動態と占有率の間の関係を評価した。これらのデータは、図43中に例示したように、標的媒介性であるワンコンパートメントPKモデルによって十分記載することができた。それぞれの投与群に関するPKおよび占有率モデルの適合性は図44中に示し、一方パラメーター値は表9中に与える。毒性試験中では低い用量レベルではなく、500mg/kgの群に関して高いクリアランスを推定したことにも留意されたい。これは他の試験と一致し、FcRN受容体の飽和のため高い用量に関して高いクリアランスを観察する(Hansen and Balthasar、2002)。
炎症に対する影響に関するPK/PDの関係
PK/PDモデルを開発して、トランスジェニックマウスを使用した薬理学的試験(K/BxNモデル)における炎症攻撃後の、薬物動態と足サイズの変化の間の関係を記載した。K/BxNモデルの自然経過は、実験的関節炎の誘導による足サイズの漸増、および炎症減弱時の正常な足サイズへの約12日後のそれに続く段階的な回復である。図45中に例示したPK/PDモデルは、誘導される炎症の阻害によるhAb−Qの影響を記載する。最大阻害の割合は、占有率PK/PDモデルから得た占有率のレベルに設定した。図46中に見られるように、測定した足サイズとモデル化した足サイズの間の妥当な一致はこの手法によって得ることができ、これは好中球C5a受容体の占有率と炎症に対する影響の間の非常に密接な関係を示す。
KO/KI hC5aRマウス(n≧10/時間地点/群)に第0日に実験的関節炎の誘導を施し、第5日に1、3、10または0mg/kgの抗C5aR(hAb−Q)を注射した。約12日後、足サイズは減少し始め、このとき炎症により誘導された増大は減弱した。同様に、100%に近い占有率で、炎症により誘導された増大は阻害され、10mg/kgの群に関しては、足サイズのわずかな減少が見られた。このモデルでは、これらのプロセスは関連があり、いずれも正常な足サイズへの自然な回復によって記載される。
このモデルは、hAb−Qの影響の大部分は、循環好中球における受容体の完全な占有をもたらす濃度で得られることを予測した。1mg/kgでは、占有は投与後1〜2日のみ高く、その後足サイズは再度増大し始めた、図46を参照。同様に、足サイズは再度増大し始めた後に、3mg/kgは約72時間の高い占有をもたらした。10mg/kgでは、ほぼ同じ期間の足部炎症の阻害をもたらす約10日間の占有を得る。
示した考えられるモデルを使用して、本発明者らは、占有が50%を超えたとき、足サイズの増大は阻害され、および占有が50%未満に低下したとき、例えば3mg/kgの群において第8日後に、足サイズの炎症により誘導された増大が再び始まったことを観察する。このモデルは50%阻害および50%占有と関係があるので、この十分な適合によって、1)占有と炎症に対する影響は密接に関係があること、および2)50%におけるピークの占有は炎症に対して最小の影響を与えると予想されることを定量的に確認した。
結論
このモデルは、モノクローナル抗体濃度、占有、および炎症に対する影響の間の密接な関係を実証し、観察値と予測値の間の十分な一致を発見した。このデータ中の最も重要な特色、1)さらなる臨床開発を動機付けるマウスの足に対する明らかに有益な影響、2)長期の治療効果のための高用量レベルの要件をもたらし得る、標的媒介性によって記載された高飽和性除去成分、および3)低用量で高ピークの占有をもたらし得る、おそらく二価結合と関係がある、in vivoでの受容体との比較的強い結合は、このモデルによって記載された。
初回ヒト試験における安全な開始用量を選択するためのすべての関連前臨床データに基づいて、ヒトシミュレーションモデルを構築するために使用するパッケージの一部として、このモデルを使用した。
ヒトデータを用いたPK/PDモデルのアップデート
hAb−Qを用いた進行中の臨床試験からのデータを使用して、薬物動態およびC5aR占有率データを使用して、実施例11中に記載した前臨床PK/PDモデルを実証およびアップデートした。このモデルのシミュレーションを使用して、高用量レベルでのPK/PDに関する本発明の予想を記載する。このモデルは、将来の試験における用量レベルおよびレジメン選択に関する早期意志決定のための、データを解釈するための方法を構成する。
方法
臨床データ
NN8209−1940は、それぞれ8および7用量レベルでの、平行した単回静脈内および皮下投与のランダム化、二重盲検、プラセボ対照、用量増大試験である。対象は抗C5aR(hAb−Q)の単回静脈内または皮下投与にランダム化する。対象は3:1の比にランダム化し、3対象にはそれぞれの用量レベルおよび投与経路で活性治療を割り当て、1対象にはプラセボ治療を割り当てた。抗C5aR(hAb−Q)は、予定用量レベルで、前の用量レベルから3または3.3倍の実際の用量の増大で投与する。本発明の用量レベルは、PK/PDモデル最新版において、静脈内用量レベル:0.003、0.01、0.03、0.1、0.2、0.6mg/kg;皮下用量レベル:0.01、0.03、0.1、0.3mg/kgを含んでいた。
モデリング、懸案試験履行中に含まれなかったデータは、予定用量レベル:2および7mg/kg静脈内、ならびに1および3mg/kg皮下を含む。
サンプリングスケジュール
抗C5aR(hAb−Q)の測定用のPKサンプリングは、0時間での投与前(投与前最大60分)、および薬剤投与後5分(静脈内投与後のみ)、15分(静脈内投与後のみ)、および30分、および1、2、4、6、8、12、24および48時間および3、7、14、21、28、42、56、および70日に予定する。時間地点は、0分での注射または注入の開始を指す。静脈内投与にランダム化した対象に関しては、注入時間は15分であり、したがって15分の時間地点は注入の最後を指す。
好中球および単球におけるC5aR専有に関するサンプリングは、0時間での投与前(投与前最大60分)、および薬剤投与後4、24、および48時間および3、7、14、21、42、および70日に予定する。
占有率の計算
hAbQモノクローナル抗体の投与による好中球および単球におけるhC5aRとの結合は、3つの異なる方法を使用して決定した。FACSによる分析後、これらの測定のそれぞれは補正平均蛍光強度(MEF)をもたらす。3つの方法は、1)in vivoで結合したhAbQを有する専有受容体を評価するためにFITC標識抗ヒトIgG二次抗体を使用する直接法(MEF結合)、2)in vivoでのhAb−Q投与、次にex vivoでのhAb−Q−FITCの添加の結果として遊離hC5a受容体を測定する間接法(MEF遊離)、および3)全受容体数の測定、全受容体を充填するためのex vivoでの過剰なhAb−Qとのインキュベーション、および次いで抗ヒト二次抗体の添加である(MEF最大結合)。占有率はその後以下のように導いた:
モデルの開発
一次条件付き評価(FOCE)を用いたNONMEM VIをモデリングに使用し、かつS−PLUS(登録商標)8.0をグラフィックスおよびデータ処理に使用した。中間モデル間の区別の評価は、目的関数値および標準的なグラフィック評価法に基づいた。目的関数値の点で、この値の変化は(枝分かれモデルに関して)カイ二乗分布であると考え、モデルを拡大するための基準を定義し適宜に使用した。
最新モデルはデータから推定した。しかしながら、本発明のデータはすべてのパラメーターの確実な推定に不十分である可能性がある。この場合、いくつかのパラメーターは典型的なIgGパラメーターのパラメーター値に固定した。
結果
ヒトPKおよび占有率に関する本発明の最新モデルは図47中に記載する。モデル予測は一般に、実験中でこれまで観察した薬物動態および占有率と非常によく一致したことが分かった。抗C5aR(hAb−Q)投与後のPK/PDのこれらのモデル予測は、静脈内投与に関しては図48中、および皮下投与に関しては図49中に与える。これらの予測は、データの蓄積に応じて変わる可能性があることに留意されたい。
このモデルは非常に非線形であり、線形薬物動態より予測は困難となる。本発明のデータに基づくと、ごくわずかな情報が高用量レベルでの排出半減期に貢献し、特に高用量レベルの予測に関しては、ある程度の不確かさを考慮に入れなければならないことが示唆された。皮下投与に関しては、利用可能な薬物動態データは依然として定量化の下限に近く、これは主に占有率のデータが生物学的利用能の推定に貢献することを意味する。
結論
全体として、観察および予想PKと占有率の間の十分な一致を見出した。前臨床データから予想した主な特色は臨床データにおいても観察した。これらの特色は、標的、および低濃度での比較的高い占有率による可能性が高い、除去される高飽和成分を含む。
多数の変形および/または変更形態を、広義に記載するように本発明の精神または範囲から逸脱せずに、具体的な実施形態中に示したように本発明に施すことができることは、当業者によって理解されよう。したがって、本発明の実施形態は、すべての点で制限的ではなく例示的であるとして考えられる。
本出願は、その全容が参照によって本明細書に組み込まれる、2008年2月20日に出願されたUS61/066,539からの優先権を主張するものである。
前に論じたすべての刊行物は、それらの全容が本明細書に組み込まれる。
本明細書中に含まれている文献、作用、物質、デバイス、物品などのいずれの論述も、単に本発明の状況を示す目的である。これらの物体のいずれかまたはすべてが従来技術のベースの一部を形成し、または本発明が関係する分野の共通の一般知識であったことを、当然のこととして解釈すべきではない。それは本出願のそれぞれの特許請求の優先日前に存在したからである。
(参考文献)
配列番号1:7F3可変軽鎖タンパク質配列。
配列番号2:7F3可変重鎖タンパク質配列。
配列番号3:7F3可変軽鎖コード配列。
配列番号4:7F3可変重鎖コード配列。
配列番号5:KV2F_ヒトのヒト軽鎖可変領域。
配列番号6:KV2E_ヒトのヒト軽鎖可変領域。
配列番号7:KV2D_ヒトのヒト軽鎖可変領域。
配列番号8:KV2B_ヒトのヒト軽鎖可変領域。
配列番号9:KV2A_ヒトのヒト軽鎖可変領域。
配列番号10:X12691のヒト軽鎖可変領域。
配列番号11:U41645のヒト軽鎖可変領域。
配列番号12:U41644のヒト軽鎖可変領域。
配列番号13:M31952のヒト軽鎖可変領域。
配列番号14:図1に示されるヒト軽鎖可変配列のhVkFW Consコンセンサス配列。
配列番号15:Hv1Av_ヒトのヒト重鎖可変領域。
配列番号16:Hv1Bv_ヒトのヒト重鎖可変領域。
配列番号17:Hv1Cv_ヒトのヒト重鎖可変領域。
配列番号18:Hv1Gv_ヒトのヒト重鎖可変領域。
配列番号19:M99641.aaのヒト重鎖可変領域。
配列番号20:M99642.aaのヒト重鎖可変領域。
配列番号21:X62109.aaのヒト重鎖可変領域。
配列番号22:X92343.aaのヒト重鎖可変領域。
配列番号23:Z12305.aaのヒト重鎖可変領域。
配列番号24:図2Aに示されるヒト重鎖可変(V)領域配列のhVhvFW Consコンセンサス配列。
配列番号25:Hv1Cj_ヒトのヒト重鎖連結領域。
配列番号26:Hv2Ij_ヒトのヒト重鎖連結領域。
配列番号27:Hv3Hj_ヒトのヒト重鎖連結領域。
配列番号28:Hv3Kj_ヒトのヒト重鎖連結領域。
配列番号29:Hv3Tj_ヒトのヒト重鎖連結領域。
配列番号30:図2Bに示されるヒト重鎖連結(J)領域配列のhVhjFW Consコンセンサス配列。
配列番号31:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7Vkアミノ酸配列。
配列番号32:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7aVkアミノ酸配列。
配列番号33:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7bVkアミノ酸配列。
配列番号34:ヒト化7F3 V領域重鎖h7Vhアミノ酸配列。
配列番号35:ヒト化7F3 V領域重鎖h7aVhアミノ酸配列。
配列番号36:ヒト化7F3 V領域重鎖h7bVhアミノ酸配列。
配列番号37:ヒトC5aR。
配列番号38:ヒトC5aRの第2細胞外ループにあるエピトープ。
配列番号39:図10に示される本発明のヒト化7F3重鎖可変領域h7F3VhConsコンセンサス配列。
配列番号40:ヒト軽鎖定常領域hCκ−R。
配列番号41:ヒト軽鎖定常領域hCκ。
配列番号42:ヒト重鎖定常領域hCγ4。
配列番号43:ヒト重鎖定常領域hCγ4PE
配列番号44:ヒト重鎖定常領域hCγ1。
配列番号45:ヒト重鎖定常領域hCγ4
配列番号46:ヒト化RNOK203VL配列。
配列番号47:KV2F−HUMAN由来VLCD18−Q配列。
配列番号48:図6に示される本発明のヒト化7F3軽鎖可変領域のh7F3 VkConsコンセンサス配列。
配列番号49:hVhFW Consコンセンサスヒト重鎖VJフレームワーク配列
配列番号50:ヒトSGI−VH配列。
配列番号51:ヒト生殖系列HG3配列。
配列番号52:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7Vkアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号53:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7aVkアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号54:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7bVkアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号55:ヒト化7F3 V領域重鎖h7Vhアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号56:ヒト化7F3 V領域重鎖h7aVhアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号57:ヒト化7F3 V領域重鎖h7bVhアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号58:ヒトC5aRの第2細胞外ループの断片。
配列番号59:ヒトC5aRのN末端細胞外ドメインの断片。

Claims (54)

  1. i)配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号48の1つまたは複数と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖、ならびに/または
    ii)配列番号34、配列番号35、配列番号36および配列番号39の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む免疫グロブリン重鎖
    を含み、ヒトC5aRに結合する、実質的に精製された、かつ/または組換えのヒト化抗体。
  2. 免疫グロブリン重鎖が、配列番号34、配列番号35および配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1に記載のヒト化抗体。
  3. 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1または請求項2に記載のヒト化抗体。
  4. 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号31として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号36として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  5. 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号31として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号34として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  6. 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号32として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号34として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  7. 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号34として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  8. 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号31として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号35として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  9. 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号32として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号35として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  10. 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号35として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  11. 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号32として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号36として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  12. 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号36として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  13. i)免疫グロブリン軽鎖が、配列番号40および配列番号41の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、
    ii)免疫グロブリン重鎖が、配列番号42、配列番号43、配列番号44および配列番号45の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含む、
    請求項1から12のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  14. 2本の重鎖および2本の軽鎖からなる4ポリペプチド鎖構造、単鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディまたはテトラボディである、請求項1から13のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  15. ヒトC5aRに結合する抗体フラグメントである、請求項1から14のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
  16. 前記フラグメントが、Fabフラグメントまたは単一ドメイン抗体である、請求項15に記載のヒト化抗体。
  17. 配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号48の1つまたは複数と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、実質的に精製された、かつ/または組換えの免疫グロブリン軽鎖。
  18. 配列番号34、配列番号35、配列番号36および配列番号39の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、実質的に精製された、かつ/または組換えの免疫グロブリン重鎖。
  19. 請求項17に記載の免疫グロブリン軽鎖および/または請求項18に記載の免疫グロブリン重鎖を含み、ヒトC5aRに結合する、実質的に精製された、かつ/または組換えの抗体。
  20. 請求項1から16または19のいずれか一項に記載の抗体および前記抗体に直接的または間接的に結合している治療薬を含むコンジュゲート。
  21. 治療薬が、細胞毒、放射性同位体、免疫調節薬、抗血管新生薬、毒素、抗増殖薬、アポトーシス促進剤、化学療法剤および治療用核酸からなる群から選択される、請求項20に記載のコンジュゲート。
  22. 毒素が緑膿菌外毒素またはその誘導体である、請求項21に記載のコンジュゲート。
  23. 治療薬が、リンカーを介して抗体に間接的に結合している、請求項20から22のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
  24. リンカーが、4−(4’アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)、3−アセチルフェニル酸性酸(AcPac)、4−メルカプト−4−メチル−ペンタン酸(アミド)およびその誘導体からなる群から選択される、請求項23に記載のコンジュゲート。
  25. 請求項1から16または19のいずれか一項に記載の抗体および前記抗体に直接的または間接的に結合している検出可能な標識を含むコンジュゲート。
  26. 前記標識が、放射標識、蛍光標識、酵素標識および造影剤からなる群から選択される、請求項25に記載のコンジュゲート。
  27. 請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体もしくはその鎖、請求項17に記載の免疫グロブリン軽鎖、請求項18に記載の免疫グロブリン重鎖、ならびに/または請求項20から23、25もしくは26のいずれか一項に記載のコンジュゲートをコードする単離および/もしくは外因性ポリヌクレオチド。
  28. 請求項27に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  29. 請求項27に記載のポリヌクレオチドおよび/または請求項28に記載のベクターを含む宿主細胞。
  30. 請求項29に記載の細胞を含む非ヒトトランスジェニック生物。
  31. 請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体、請求項17に記載の免疫グロブリン軽鎖、請求項18に記載の免疫グロブリン重鎖、請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項27に記載のポリヌクレオチド、請求項28に記載のベクターおよび/または請求項29に記載の宿主細胞ならびに担体を含む組成物。
  32. 抗体を産生するプロセスであって、ポリヌクレオチドが発現され、抗体が産生されるように、請求項29に記載の宿主細胞を培養することを含み、宿主細胞が、請求項27に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプロセス。
  33. 免疫グロブリン軽鎖および免疫グロブリン重鎖が、一続きのポリヌクレオチドにある2つの別個のオープンリーディングフレームによってコードされる、請求項32に記載のプロセス。
  34. 宿主細胞培養物から抗体を回収することをさらに含む、請求項32または請求項33に記載のプロセス。
  35. ヒトC5aRとそのリガンドとの相互作用を阻害するための方法であって、細胞を、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体または請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲートに曝露することを含む方法。
  36. 細胞におけるヒトC5aR活性を阻害するための方法であって、細胞を、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体または請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲートに曝露することを含む方法。
  37. 対象において障害を治療または予防する方法であって、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体、請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項27に記載のポリヌクレオチド、請求項28に記載のベクター、請求項29に記載の宿主細胞および/または請求項31に記載の組成物を対象に投与することを含む方法。
  38. 障害が免疫病理学的障害である、請求項37に記載の方法。
  39. 免疫病理学的障害が自己免疫疾患である、請求項38に記載の方法。
  40. 障害が炎症性疾患である、請求項37に記載の方法。
  41. 炎症性疾患が急性炎症または慢性炎症である、請求項39に記載の方法。
  42. 免疫病理学的障害または炎症性疾患に白血球遊走および/または白血球活性化が関与する、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。
  43. 免疫病理学的障害または炎症性疾患に補体活性化が関与する、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。
  44. 対象において治療薬を炎症部位に送達するための方法であって、請求項20から24のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたはそれをコードするポリヌクレオチドを対象に投与することを含む方法。
  45. 遺伝物質を、C5aRを提示する細胞に導入するための方法であって、前記細胞を、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体または請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲートと接触させることを含み、抗体またはコンジュゲートが遺伝物質に結合している、またはそれと会合している方法。
  46. 試料中のヒトC5aRの存在または非存在を検出する方法であって、試料を、請求項1から16または19のいずれか一項に記載の抗体および/または請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲートと接触させること、ならびに試料をヒトC5aRと抗体またはコンジュゲートとの結合について分析することを含む方法。
  47. 対象において障害を診断するための方法であって、対象またはそれから得られた試料を、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体または請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲートと接触させること、および対象または試料をヒトC5aRと抗体またはコンジュゲートとの結合について分析することを含む方法。
  48. 対象から得られた組織標本または組織もしくは体液の亜分画を使用してin vitroで実施される、請求項47に記載の方法。
  49. 障害が免疫病理学的障害である、請求項47または請求項48に記載の方法。
  50. 対象において障害を治療または予防するための医薬品としての、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体、請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項27に記載のポリヌクレオチド、請求項28に記載のベクター、請求項29に記載の宿主細胞および/または請求項31に記載の組成物の使用。
  51. 対象において治療薬を炎症部位に送達するための医薬品を製造するための、請求項20から24のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたはそれをコードするポリヌクレオチドの使用。
  52. 対象において障害を治療または予防するための医薬品としての、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体、請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項27に記載のポリヌクレオチド、請求項28に記載のベクター、請求項29に記載の宿主細胞および/または請求項31に記載の組成物の使用。
  53. 対象において治療薬を炎症部位に送達するための医薬品としての、請求項20から24のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたはそれをコードするポリヌクレオチドの使用。
  54. 請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体、請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項27に記載のポリヌクレオチド、請求項28に記載のベクター、請求項29に記載の宿主細胞および/または請求項31に記載の組成物を含むキット。
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