JP2011515073A - ヒト化抗C5aR抗体 - Google Patents
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Abstract
Description
i)配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号48の1つまたは複数と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖、および/または
ii)配列番号34、配列番号35、配列番号36および配列番号39の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む免疫グロブリン重鎖
を含み、ヒトC5aRに結合する、実質的に精製された、かつ/または組換えのヒト化抗体を提供する。
i)免疫グロブリン軽鎖は、配列番号40および配列番号41の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、
ii)免疫グロブリン重鎖が、配列番号42、配列番号43、配列番号44および配列番号45の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。より好ましくは、
i)免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、
ii)免疫グロブリン重鎖は、配列番号45と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
別段に具体的な定義がなされない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、抗体技術、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学)により一般的に理解される意味と同じ意味を有すると理解されるものとする。
本明細書で用いられる「C5a受容体」、「C5aR」、「C5aR1」、または「ヒトC5aR」、およびその突然変異体は、当技術分野でC5aアナフィラトキシン受容体およびCD88抗原としても知られているヒト補体成分5受容体1を指す。C5aRは、7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体ファミリーに属し、C5aに結合する(GerardおよびGerard、1991)。ヒトC5aRのアミノ酸配列の例は配列番号37に示されているが、この分子の天然の対立遺伝子突然変異体もまた「C5aR」という用語によって包含されることを当業者は認識しているであろう。ヒトC5aRの各ドメインは、以下:
アミノ酸1〜37 細胞外ドメイン:N末端
アミノ酸38〜61 膜貫通ドメイン
アミノ酸62〜71 細胞内ドメイン
アミノ酸72〜94 膜貫通ドメイン
アミノ酸95〜110 細胞外ドメイン:細胞外ループ1
アミノ酸111〜132 膜貫通ドメイン
アミノ酸133〜149 細胞内ドメイン
アミノ酸150〜174 膜貫通ドメイン
アミノ酸175〜206 細胞外ドメイン:細胞外ループ2
アミノ酸207〜227 膜貫通ドメイン
アミノ酸228〜242 細胞内ドメイン
アミノ酸243〜264 膜貫通ドメイン
アミノ酸265〜283 細胞外ドメイン:細胞外ループ3
アミノ酸284〜307 膜貫通ドメイン
アミノ酸308〜350 細胞内ドメイン:C末端
のとおりに規定されている。
免疫グロブリンという用語は、4本の鎖すべてがジスルフィド結合により相互に結合される、1対の低分子量の軽(L)鎖および1対の重(H)鎖である2対のポリペプチド鎖からなる、構造的に関連する糖タンパク質のクラスを指す。免疫グロブリンの構造は十分に特徴付けられており、例えば、「Fundamental Immunology」、第7章(Paul,W.編、第2版、Raven Press、N.Y.(1989))を参照されたい。略述すると、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)および重鎖定常領域(本明細書ではCHと略記する)を含むことが典型的である。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3を含むことが典型的である。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)および軽鎖定常領域(本明細書ではCLと略記する)を含むことが典型的である。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLを含むことが典型的である。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも称し、フレームワーク領域(FR)と称するより保存的な領域が間に散在する、超可変的な領域(または構造的に規定されるループの配列および/もしくは形態において超可変的であり得る超可変領域)へとさらに細分することができる。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、少なくともVLドメインおよびVHドメインを含む。
(1)Fab:抗体分子の1価の抗原結合フラグメントを含有するこのフラグメントは、酵素パパインにより全抗体を消化して、完全な軽鎖および1本の重鎖の一部をもたらすことにより産生することができる;
(2)Fab’:抗体分子のこのフラグメントは、ペプシンにより全抗体を処理した後で還元反応を行い、完全な軽鎖および重鎖の一部をもたらすことにより得ることができる;抗体分子当たり2つのFab’フラグメントが得られる;
(3)(Fab’)2:後続の還元反応なしに酵素ペプシンで全抗体を処理することにより得ることができる抗体フラグメント;F(ab)2は、2つのジスルフィド結合により一体に保持される2つのFab’フラグメントの二量体である;
(4)Fv:2本の鎖として発現される軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有する、遺伝子改変されたフラグメントとして定義される;
(5)単鎖抗体(「SCA」):適切なポリペプチドリンカーにより、遺伝子融合された単鎖分子として連結された軽鎖可変領域、重鎖可変領域を含有する遺伝子改変分子として定義される;このような単鎖抗体は、多価特異的の場合もそうでない場合もあるダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディなどの多量体の形態(例えば、WO94/07921およびWO98/44001を参照されたい)であり得る;ならびに
(6)単一ドメイン抗体:軽鎖を欠く重鎖可変ドメインであることが典型的である;
が挙げられる。
本発明者らによれば、DNA、RNA、あるいはセンス方向もしくはアンチセンス方向またはこれら両方の組合せにおける、1本鎖または2本鎖によるこれらの組合せ、dsRNA、あるいはその他の形を含めた「単離ポリヌクレオチド」とは、その天然状態においてそれが会合するかまたは連結されるポリヌクレオチド配列とは少なくとも部分的に分離されるポリヌクレオチドを意味する。単離ポリヌクレオチドは、これらが天然において会合する他の成分を少なくとも60%含まないことが好ましく、少なくとも75%含まないことが好ましく、少なくとも90%含まないことが最も好ましい。さらに、本明細書において、「ポリヌクレオチド」という用語は、「核酸」および「遺伝物質」という用語と互換的に用いられる。
本発明の抗体に直接的または間接的に結合する治療薬にコンジュゲートする該抗体を含むコンジュゲート(免疫コンジュゲート)もまた提供される。治療薬の例としては、それだけに限らないが、細胞毒素、放射性同位体(例えば、ヨウ素131、イットリウム90、またはインジウム111)、免疫調節薬、抗血管新生薬、抗新血管形成薬、および/または他の血管形成薬、毒素、抗増殖薬、アポトーシス促進薬、化学療法薬、および治療用核酸が挙げられる。
C5aRに対する、アゴニストまたはC5aなどのリガンドの結合は、このGタンパク質共役受容体によるシグナル伝達、およびGタンパク質の活性のほか、他の細胞内シグナル伝達分子の刺激を結果としてもたらす可能性がある。本発明の抗体の阻害活性は、適切なアッセイにおいてリガンドを用い、リガンドにより誘導される該活性を阻害する抗体の能力を評価して決定することができる。
本発明の抗体がC5aRに対するリガンドの結合を遮断し、かつ/または該受容体に対するリガンドの結合と関連する機能を阻害する能力を評価するには、走化性アッセイもまた用いることができる。これらのアッセイは、化合物(化学誘引物質)により誘導されるin vitroまたはin vivoにおける細胞の機能的遊走に基づく。走化性は、例えば、96ウェルの走化性プレートを用いるか、または走化性を評価するのに当技術分野で認知される他の方法を用いるアッセイにおいて、任意の適切な手段により評価することができる。例えば、in vitroにおける経内皮走化性アッセイの使用は、Springerら(WO94/20142);およびBermanら(1988)により説明されている。内皮を隔てたコラーゲンゲル内への遊走もまた説明されている(Kavanaughら、1991)。走化性アッセイでは、マウスL1.2プレB細胞または走化性が可能な他の適切な宿主細胞の安定的な形質転換体を用いることができる。
治療薬としてのin vivoにおける抗体の効果を評価するのに用い得る、炎症のin vivoモデルが使用可能である。例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、またはアカゲザルなどの適切な動物内へのケモカインおよびC5aR反応性抗体の皮内注射時における白血球の浸潤をモニタリングすることができる(例えば、Van Dammeら、1992;Zachariaeら、1990;Joseら、1994を参照されたい)。
本発明の抗体は、研究への適用、診断的適用、および治療的適用を含めた各種の適用において有用である。
i)虚血/再灌流傷害、再灌流傷害、脳卒中、成人呼吸逼迫症候群(ARDS)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、乾癬、移植拒絶、皮膚または臓器に対する白血球の浸潤を伴う癌、水泡性類天疱瘡、抗リン脂質抗体症候群(APS)など、白血球の遊走および/または白血球の活性化を伴う障害;
ii)全身炎症反応症候群(SIRS)、敗血症性ショック、内毒素性ショック、アナフィラキシー性ショック、アナフィラキシー、薬剤アレルギー、感覚過敏反応、急性肺傷害などの急性炎症;
iii)乾癬、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息などの慢性炎症;
iv)全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎、強皮症、糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、グッドパスチャー症候群、乾癬性関節炎、水泡性類天疱瘡、重症筋無力症、グレーブス病、I型/若年発症型/インスリン依存型糖尿病、自己免疫性貧血(例えば、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血)(これにはi)と重複する例が含まれる)などの自己免疫疾患;
v)i)またはii)で対象とされない障害のほか、間質性炎症性疾患、脊椎関節症、脊椎炎、血管炎(例えば、壊死性血管炎、皮膚性血管炎、感覚過敏性血管炎、アレルギー性血管炎)、皮膚筋炎、皮膚炎(例えば、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹)、アレルギー性鼻炎を含めた炎症性疾患;
vi)移植拒絶(移植、例えば、同種移植、異種移植の後における)、移植対宿主病(GVHD)など、i)〜iii)で対象とされない障害を含めた免疫病理学的障害;
vii)加齢黄斑変性、敗血症、膜性増殖性糸球体腎炎、デンスデポジット病、およびアルツハイマー病を含めた、上記で言及されない他の種類の障害
が挙げられる。
投与される本発明の抗体の製剤は、選択される投与経路および組成物の性質(例えば、溶液、エマルジョン、カプセル)によって異なる。投与される本発明の抗体を含む適切な医薬組成物は、生理学的に許容される担体中において調製することができる。抗体の混合物もまた用いることができる。溶液またはエマルジョンの場合、適切な担体には、例えば、水溶液、アルコール/水溶液、生理食塩液および緩衝媒体を含めたエマルジョンまたは懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が含まれ得る。水、緩衝水、緩衝生理食塩液、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、デキストロース溶液、およびグリシンを含めた各種の適切な水性担体が当業者に知られている。静脈内媒体には、各種の添加剤、防腐剤、または流体、栄養素もしくは電解質補給剤が含まれ得る(全般的に、「Remington's Pharmaceutical Science」、第16版、Mack編、1980を参照されたい)。組成物は、場合によって、pH調整剤およびpH緩衝剤、ならびに毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウムなど、生理学的状態を近似するのに必要とされる薬学的に許容される補助物質を含有し得る。
CDRおよびフレームワークの残基を規定する
抗体のCDRおよびフレームワーク領域は、通常、Kabat、ChothiaまたはIMGT(ImMunoGeneTics information system(登録商標)http://imgt.cines.fr)などの種々の番号付けスキームに従って定義される。Kabatの定義は、配列可変性に基づき、最も一般に使用されるものである。しかし、Kabatにより規定されるような所与の抗体に関するCDRは、他の番号付けシステムによって規定されるCDRと必ずしも同一ではない。2つの番号付けシステムによって規定されたCDRは重複してもよく、一方が他方のいずれかの側に数残基伸びてもよい。
マウスCDRを移植する適切なヒト抗体フレームワーク配列を選択するために、本発明者らは、多数のストラテジーを使用した:
i)配列データベースのBlast検索により、マウスC5aR抗体に対して最高の相同性を有するヒトIg V領域の軽鎖および重鎖の配列を同定した。最も相同性が高い配列をアラインさせ、軽鎖および重鎖についてコンセンサスフレームワーク配列を作製した。
ii)マウスC5aR抗体の重鎖または軽鎖に対して高い相同性を有する既知のヒト抗体を同定し、V領域フレームワーク(または改変バージョン)を使用して、マウスC5aR抗体のCDRを移植した。
iii)マウスC5aR抗体に類似するフレームワーク配列を利用する他の成功したヒト化抗体を同定し、マウスCDRをこれらのフレームワークに移植した。
マウスC5aR抗体、7F3可変領域アミノ酸配列(重鎖および軽鎖の両方、配列番号1および2を参照のこと)を、SWISSPROTおよびGenbankデータベース中のヒト免疫グロブリンのBlastp検索においてクエリー配列として個々に使用した。
7F3軽鎖CDRを移植するための軽鎖ヒトフレームワークコンセンサス配列を、表2中の以下の配列をアラインさせることによってClustalWを用いて生成した:KV2F_HUMAN、KV2D_HUMAN、KV2E_HUMAN、KV2B_HUMAN、KV2A_HUMANおよびDNA配列X12691、U41645、U41644、M31952のアミノ酸翻訳。このアラインメントおよびコンセンサス配列を図1中に示す。このヒトコンセンサスフレームワークは、マウスC5aR抗体7F3軽鎖フレームワーク配列に対して86%同一であった。
7F3重鎖CDRを移植するためのコンセンサスヒトフレームワーク配列を、以下のように作製した:
a)V領域アミノ酸配列HV1C_HUMAN、HV1B_HUMAN、HV1G_HUMANおよびHV1A_HUMANならびにV遺伝子配列X92343、X62109、M99641、M99642およびZ12305のアミノ酸翻訳を、CLUSTALWを使用してアラインさせ、コンセンサスV領域フレームワーク配列を生成した。
b)J領域アミノ酸配列HV3K_HUMAN、HV2I_HUMAN、HV1C_HUMAN、HV3H_HUMANおよびHV3T_HUMANを、CLUSTALWを使用してアラインさせ、コンセンサスJ領域フレームワーク配列を生成した。
他の適切なフレームワーク配列を、マウス抗体配列と最も近く一致する成功したヒト化抗体に関する文献を検索することによって選択した。
・Caldasら(2003)に記載されたKV2Fベースの配列
・Nisiharaら(2001)に記載されたHuVL−19ベースの配列
・ Caldasら(2000)に記載されたHG3ベースの配列
・ Nisiharaら(2001)に記載されたSGI−VHベースの配列
ヒト化7F3軽鎖
3つのバージョンのヒト化7F3軽鎖可変領域を作製した。
3つのバージョンのヒト化7F3重鎖可変領域を作製した。
背景
抗体結合部位のモデリングは、タンパク質相同性モデリング(多数の抗体構造が既知のデータベースとして機能し得る)とab initioモデリング(相同性法を適用するにはあまりに可変すぎる抗体の部分のために使用すべきもの)との組合せである。可変フラグメント(Fv)フレームワーク領域(FW)の大多数は、種々の抗体間で構造が十分保存されている。特にβ鎖で生じるバリエーションを考慮した後、このフレームワークは、モデリングするFvに配列が最も近い既知の構造の選択によって、モデリングできる。
WAMを使用して、マウス7F3 Fv領域(重鎖および軽鎖の両方を有する)のモデルならびにヒト化7F3 Fv領域のモデルを作製した。
抗体可変領域遺伝子を、定常領域遺伝子を含むベクター中にクローニングする
重鎖および軽鎖の可変アミノ酸配列を、上記のように設計した。これらのドメインを含む抗体を産生するために、各可変領域をコードするDNA配列を合成した(Genescript Corp.)。ベクターpUC18中へのクローニングを容易にするために、EcoR1部位およびHindIII部位を5’末端または3’末端に付加した。さらに、軽鎖可変遺伝子は、各末端に独自のBsmB1制限部位を有していた。重鎖遺伝子は5’末端にBsmB1部位を有し、3’末端にNhe1部位を有していた。
全長抗体遺伝子が正確な配列を有していることを確認した後で、それを発現ベクター中にサブクローニングした。使用できる発現ベクターの例には、pcDNA、pLENTI、pT−REX、pAd、pREPまたはpCEP哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)、pTriExlまたはpBacベクター(Novagen)、ZAPおよびpCMV発現ベクター(Stratagene)、GS発現系ベクター(例えば、pEE12.4およびpEE6.4(Lonza))、pCMV5 cumate発現系ベクター(Qbiogene)、UCOE発現系プラスミド(ML Laboratories)またはMARtech発現プラスミド(Selexis)のいずれかが挙げられる。この場合、重鎖遺伝子(5’末端にHindIII部位を有し、3’末端にEcoR1部位を有する)を、マウスDHFR遺伝子を含むpcDNA3由来ベクター(Invitrogen)中のCMVプロモーターの下流のHindIII−EcoR1部位および/またはGS発現ベクター(Lonza)中にサブクローニングした。軽鎖遺伝子(5’末端にSpe1部位を有し、3’末端にEcoR1部位を有する)を、pTracer−CMV/BSD(Invitrogen)のNhe1−EcoR1部位中にサブクローニングした。5’末端にHindIII部位を有し、3’末端にEcoRI部位を有する軽鎖遺伝子も、GS発現ベクター(Lonza)のHindIII−EcoRI部位中にサブクローニングした。ある場合には、重鎖発現カセット(プロモーター、軽鎖コード配列およびポリアデニル化シグナル)を軽鎖ベクター中にサブクローニングして、重鎖および軽鎖の両方を発現する単一のベクターを作製した。
ヒト化抗体を発現させるために、重鎖および軽鎖のベクターを、リポフェクタミン(Invitrogen)を使用してCHO細胞中に共トランスフェクトした。あるいは、ベクターDNAは、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接インジェクション、遺伝子銃または当業者に公知の別の方法によってトランスフェクトできる。あるいは、ベクターDNAは、任意の多数の細胞株(例えば、CHOK1SV、HEK293、PerC6またはNS0)中にトランスフェクトできる。ある場合には、重鎖および軽鎖の両方をコードする単一のベクターを、エレクトロポレーションにより、またはリポフェクタミンを使用して、細胞中にトランスフェクトした。
トランスフェクトされた細胞は、増殖培地中に抗体を分泌する。抗体を、プロテインAまたはプロテインGアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。SDS−PAGEまたはヒトIgG特異的ELISAによって同定した、抗体を含む画分をプールした。ヒトIgG特異的ELISAを使用して、回収された抗体の量およびその濃度を決定した。抗体純度を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって概算した。
表4は、産生された種々の抗体を列挙し、抗体中に存在する重鎖および軽鎖の配列を示す。
ヒトC5a受容体(hC5aR)に対するヒト化抗C5aR抗体の結合動態を特徴付けるために、2つのタイプの結合研究を本実施例に記載する。第1の結合研究は、競合的リガンド結合アッセイにおいてヒトC5aRに対する抗体およびC5aの結合を比較した。第2の結合研究は、ヒトC5aRを発現する細胞における飽和結合を含んだ。
hC5aR遺伝子をトランスフェクトしたL1.2細胞またはヒト好中球への125I標識C5aの結合を阻害するヒト化Abの能力を、以下に記載するとおり試験した。組換えヒトC5aは、Sigma Chemical Co.(St.Louis、MO)から取得した。2200Ci/mMの比活性を有する125I−Bolton−Hunter標識した補体C5aは、NEN−Dupont(Boston、MA)から購入した。簡潔に述べると、L1.2/hC5aR安定トランスフェクタントを数日間増殖させ、その後実験を5mM酪酸で一晩処理して、結合アッセイ前にhC5aR発現を刺激した。ヒト好中球を、健康なボランティアから採取した静脈血から精製した。好中球は、パーコール密度遠心分離によって他の白血球から分離し、その後赤血球溶解ステップを行った。両方の細胞型をPBSで1回洗浄し、結合緩衝液(50mM Hepes、pH7.5、1mM CaCl2、5mM MgCl2、0.5% BSA)中に1×107/mlの濃度で再懸濁した。40μl(4×105細胞)のアリコートを、96ウェルのマイクロタイタープレート中に分配し、その後非放射性競合物(抗体またはヒトC5a)を添加した。細胞および非放射性競合物を室温で15分間インキュベートし、その後、放射能標識したC5aを0.4nMの最終濃度になるよう添加した。最終反応体積は120μlであった。室温で60分間のインキュベーション後、0.15MのNaClを含む結合緩衝液150μlで、細胞を3回洗浄した。次いで、細胞ペレットを、TopCount Scintillation Counter(Packard)で計数した。試料を、各々6〜8の濃度で、3連でアッセイした。各抗体は、少なくとも3回の別々のアッセイで試験した。各試料中の計数を、バックグラウンドの差し引き後、非放射性競合物を添加していないウェルで観察された最大125I−C5a結合の百分率として表した。
上記のように単離したヒト好中球を、dPBS中に再懸濁し、1×105細胞(25μl中)を、96ウェルプレートのウェル中に分配した。等体積(25μl)の2×抗体(PBS中に希釈)を、各ウェルに添加した。2倍連続希釈を使用した最終抗体濃度は、40〜0ug/ml(未標識のhAb−Q、hAb−Jおよび7F3を使用)の範囲であった。細胞と抗体とを、4℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、100μl PBS+1% BCSを各ウェルに添加し、プレートを2,000rpmで3分間遠心分離した。細胞を、PBS+1% BCS中で3回洗浄し、PBS中に1/300希釈した抗ヒトIgG−FITC(Sigma F1641)または抗マウスIgG−FITC(Jackson 195−115−003)中に再懸濁し、氷上で20分間インキュベートした。細胞を上記のように1回洗浄し、フローサイトメトリーによる分析のためにPBS+1% FCS中に再懸濁した。FSC対SSC散乱を使用して好中球を同定し、各試料について中央値蛍光強度(MFI)を決定した。GraphPad Prism(v4.0)ソフトウェアを用いてデータ(MFI−バックグラウンド対log10[抗体濃度])をシグモイド用量反応(傾き変動)(すなわち、4パラメーターのロジスティック方程式)にフィッティングさせることによって、EC50値を決定した。BmaxおよびKDを、1部位結合双曲線方程式にデータをフィッティングさせることによって決定した。
方法
キメラ受容体に対する抗体結合
マウスおよびヒトのC5aRのセグメントを含む一連のキメラ受容体を構築して、抗体が結合するC5a受容体の領域を同定した。これらの受容体は、標準的な分子技術を使用して作製した(Leeら、2006)。種々のキメラ受容体をコードする各組換えベクター(DMEM中希釈で5μg)を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して、5×105のマウスL1.2細胞中にトランスフェクトした。細胞を、10%ウシ胎児血清(Hyclone)を含むDMEMまたはRPMI(Invitrogen)中で増殖させた。24時間または48時間の後、細胞を1,500rpmで5分間遠心分離することによって回収し、FACS緩衝液(2%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水)中に再懸濁した。hAb−Qでの染色のために、0.5×105のトランスフェクト細胞を、1ウェル当たり50μlの体積中5μg/mlまたは10μg/mlの抗体と共に、4℃で20分間インキュベートした。細胞を上記のとおりペレット化し、150μlのFACS緩衝液で3回洗浄し、その後、1:200または1:300希釈したFITCコンジュゲート化抗ヒトIgG(Sigma、F1641)50μlを添加した。この混合物を4℃で20分間インキュベートし、その後細胞をペレット化し、FACS緩衝液で3回洗浄し、最後に150〜200μlのFACS緩衝液中に再懸濁した。試料はFACS Calibur(BD Biosciences)で分析した。
ヒトC5aRの第2細胞外ループ(第3細胞外ドメイン)にわたる、各々次のペプチドから1残基ずつずれた22個の重複するペプチド(12マー)のセットを合成した(Mimotopes、Melbourne)。各ペプチドは、そのN末端にビオチン基および4アミノ酸リンカー(SGSG)を付けて作製した。合成した1つのペプチド23番は、hC5aRの第2細胞外ループの全長(配列番号37由来の残基173〜205)に相当する33マーであり、これもN末端にビオチン−SGSGを有していた。この実験で使用したペプチドは、Leeら(2006)に記載されている。
エピトープEEYFPP(配列番号37由来の残基179〜184)(配列番号38)中の必須結合残基をさらに規定するために、ヒトC5aRの第2細胞外ループ配列VREEYFPPKVLC(配列番号37由来の残基177〜188)(配列番号58)を含み、結合モチーフ中の種々の位置がアラニン置換された、一連の短いペプチド(12マー)を、そのN末端にビオチン基および4アミノ酸リンカー(SGSG)を付けて、上記のように合成した(Leeら、2006)。ペプチドA1はAla置換を有さず、ペプチドA14はペプチドA1のスクランブル化バージョンであった。ペプチドA2〜13は、12から1までの各アミノ酸位置に、それぞれ1つのアラニン置換を含んだ。ELISAプレート上を被覆したペプチドへの抗体の結合を、上記のように実施した。
384ウェルのMaxiSorpプレート(Nunc)を、PBS/0.01% Tween−20中1〜15μg/mlの濃度の、ヒトC5aRの残基9〜29に対応するペプチド(PEP1)で37℃で1.5時間被覆し、次いで3回洗浄した。このプレートを、1ウェル当たり20μlのブロッキング緩衝液(PBS中1%w/vのBSA)で4℃で一晩ブロッキングした。プレートをPBS/Tween緩衝液(PBS中0.05%v/vのTween−20)で3回洗浄した。20μlの抗体(最終濃度5μg/ml)を各ウェルに添加し、プレートを37℃で2時間インキュベートした。プレートを上記のように3回洗浄し、次いで20μlのHRPコンジュゲート化抗ヒトIgGκ(PBS/Tween20中1:8000希釈)またはHRPコンジュゲート化抗マウスIgG(1:7500希釈)を各ウェルに添加した。室温で2時間インキュベートした後、プレートを(上記のように)4回洗浄した。ペルオキシダーゼの存在を、新たに調製したTMB Substrate試薬(BD Opt EIA)を各ウェルに20μl添加し、室温で20分間インキュベートすることによって検出した。最後に、1ウェル当たり20μlの1M H2SO4で反応を停止させた後、プレートリーダーでプレートを450nm(参照620nm)で読み取った。
ヒト化抗C5aR抗体が、親抗体7F3と同じヒトC5aR中の結合部位を認識したことを確認するために、4つの実験を実施した。第一に、hAb−Qを使用して、種々のキメラヒト/マウスC5aRを発現する細胞を染色した。第二に、hAb−JおよびQを、hC5aRの第2細胞外ループを含む重複する一連のペプチド(12マー)と共にインキュベートした。第三に、hAb−JおよびQを、各位置にAla置換を有するヒトC5aRの第2細胞外ループ由来の12アミノ酸モチーフを含む一連の変異体ペプチドと共にインキュベートした。第四に、hAb−JおよびQを、ヒトC5aRのN末端細胞外ドメイン由来の残基9〜29を含むペプチドと共にインキュベートした。
各細胞外ドメイン中にヒトまたはマウスのいずれかのC5aR配列を含む一連のキメラ受容体:N末端ドメイン、ならびに第1、第2および第3の細胞外ループ(ECL)を、上記のように構築した。各細胞外ドメインならびに膜貫通セグメントおよび細胞内セグメントの由来を表6中に詳述した。各構築物中の細胞外ドメインの由来は、4文字コードで規定した:例えば、mHHHは、マウスC5aRのN末端およびヒトC5aRの第1、第2および第3のECLを有するキメラ受容体を規定する。
第2細胞外ループ中のヒト化抗C5aR抗体が結合するエピトープをさらに規定するために、それぞれ次のペプチドから1残基ずつずれた、ヒトC5aRの第2細胞外ループにわたる22の重複するペプチド(12マー)のセットを合成した。これらのペプチドに対する抗体の結合を、ペプチドELISAによって分析した。
ヒト化抗C5aR抗体が結合するエピトープEEYFPP中の必須結合残基をさらに規定するために、ヒトC5aRの第2細胞外ループ配列VREEYFPPKVLC(配列番号37由来の残基177〜188)を含み、結合モチーフ中の種々の位置がアラニン置換された、一連の短いペプチド(12マー)を合成した。これらのペプチドに対する抗体の結合を、ペプチドELISAによって分析した。
本実施例は、ヒト化抗C5aR抗体が、C5aRの第2細胞外ループ中のエピトープに結合することを示す。さらに、ヒト化抗C5aR抗体は、ヒトのN末端ドメインおよびマウスの第2細胞外ループを含むキメラマウス/ヒトC5aR構築物#7および#9に結合しなかった(表6を参照のこと)。
A.ヒト化抗体は、ヒト好中球の遊走を遮断する
ヒト好中球を、室温で40分間のデキストラン沈降ステップを介して、白血球画分を最初に得ることによって、末梢血から単離した。次いで、室温で2500rpmで15分間の密度勾配遠心のために、Ficoll−Paque(GE Healthcare)上に細胞を重ねた。残留赤血球の低浸透圧溶解後、好中球を、走化性緩衝液(49% RPMI 1640(Invitrogen)、49% Medium 199(Invitrogen)、2%透析FBS(Invitrogen))中に再懸濁した。抗C5aR抗体を、5μg/mlの濃度で好中球(1×107/ml)に添加した。陰性対照(Ab添加なしだが、1×PBSを添加した)を含めた。
方法
ヒト好中球遊走
ヒト静脈血を、抗凝固剤としてEDTAを含むチューブ(BD Vacutainer #366457)中に、健康なボランティアから収集した。好中球は、パーコール密度遠心分離によって他の血液から精製し、その後赤血球溶解ステップを行った(Leeら、2006)。精製した好中球は、1,200rpmで5分間遠心分離し、走化性緩衝液(49% RPMI 1640、49% Medium 199、2%透析FBS;GIBCO)中に、走化性緩衝液1ml当たり2×107細胞で再懸濁した。200μlの総体積中の抗体(走化性緩衝液中に希釈、最終濃度0.003〜10μg/ml)および細胞(2×106細胞/ウェル)を、5%CO2中で37℃で約20分間インキュベートした。次いで、これを2×100μl試料に分割し、24ウェルのトランスウェルプレート(HTS Transwell、3.0ミクロンの孔径、Corning)の上部チャンバ中の2つのウェルに添加した。C5a(最終濃度0〜100nM)を含む走化性緩衝液(合計600μl)を、下部チャンバ中に配置した。プレートを5%CO2中で37℃で約1時間インキュベートして、細胞を遊走させた。対照ウェルは、抗体なしの細胞またはC5aなしの緩衝液を含んだ。このアッセイの標準曲線を、以下に記載するように、CyQUANT色素を含む96ウェルプレートで設定した。
RPMI 1640、10% FBS、0.5mg/ml G418(Invitrogen)中で増殖する、5mM酪酸で一晩刺激したL1.2/hC5aR細胞を、1,200rpmで5分間遠心分離し、走化性緩衝液(49% RPMI 1640、49% Medium 199、2%透析FBS;Gibco)中で洗浄し、次いで再度遠心分離し、最後に、走化性緩衝液1ml当たり2×106細胞で再懸濁した。200μlの総体積中の、細胞(1×105細胞/ウェル)と混合した抗体(走化性緩衝液中に希釈、最終濃度0.005〜5μg/ml)を、96ウェルプレートに添加し、5%CO2中で37℃で約20分間インキュベートした。これを2×100μl試料に分割し、96ウェルのトランスウェルプレート(HTS Transwell−96 System、5.0ミクロンの孔径;Corning)の上部チャンバ中の2つのウェルに添加した。最終濃度0.1〜100nMの組換えヒトC5a(Sigma)を含む走化性緩衝液(合計150μl)を、下部チャンバ中に配置した。プレートを5%CO2中で37℃で約1時間インキュベートして、細胞を遊走させた。対照ウェルは、抗体なしの細胞またはC5aなしの緩衝液を含んだ。走化性緩衝液中のhC5aR/L1.2細胞の連続希釈を調製して、CyQUANT(登録商標)検出アッセイのための標準曲線を作成した。固定数の細胞(1ウェル当たり0、150、450、1350、4050、12150)を含む緩衝液(150μl)を、下部チャンバ中の2つのウェルの各々に直接添加し、その後1時間のインキュベーションステップを行った。
インキュベーション後、トランスウェルの下部チャンバ中の緩衝液+遊走細胞を、96ウェルの平底プレート(Nunc)に移し、200×g(約1,500rpm)で5分間遠心分離した。細胞ペレットを150μlのPBSで洗浄し、CyQUANT蛍光を遮断する微量のフェノールレッドを除去した。第2の遠心分離ステップ後、上清を注意深く除去し、プレートを−80℃で一晩凍結して、細胞を溶解させた。このプレートを室温で解凍し、溶解緩衝液中に希釈したCyQUANT GR色素(CyQUANT(登録商標)Cell Proliferation Assay Kit、Invitrogen)200μl中に希釈し、各ウェルに添加した。
一定の濃度範囲にわたり、C5aによって誘発されるヒト好中球およびhC5aR/L1.2細胞トランスフェクタントの遊走を遮断するヒト化7F3抗体の能力を調査した。
上記より、ヒト化抗C5aR抗体が、C5aによって誘発される、ヒトC5aRを発現する細胞の遊走(走化性)を阻害したことが示された。この阻害をさらに特徴付けるために、ヒト好中球遊走をin vitroで阻害するのに必要な、ヒト化抗C5aR抗体によるC5a受容体占有率のレベルを、以下のように決定した。
hAb−QのFITC標識
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)を、共有結合によってhAb−Qにコンジュゲート化した。簡潔に述べると、約2.2mgのhAb−Qを、「反応緩衝液」(160mM Na2CO3、340mM NaHCO3、pH9.5)中に交換し、回収された1.8mgを、DMSO中に溶解させた144μgのFITC(Molecular Probes、カタログ番号F1906)に添加した。反応を、暗中で室温(約21℃)で1時間実施した。非コンジュゲート化FITCを、「保存緩衝液」(10mM Tris、150mM NaCl、pH8.2)で予め平衡化したPD−10カラムを使用して除去し、これで溶出した。コンジュゲート化hAb−Q−FITCを、Centricon YM−30スピンフィルター(Amicon、カタログ番号4208)を使用して5.7mg/mlの最終濃度を達成するまで濃縮し、暗中で4℃で保存した。
赤血球溶解ステップがない以外は上記と同様に調製したヒト好中球を、1,200rpmで5分間遠心分離し、走化性緩衝液(49% RPMI 1640、49% Medium 199、2%透析FBS;Gibco)1ml中2×107細胞で再懸濁した。抗体hAb−Qを、必要な最終濃度×2になるまで、走化性緩衝液中に希釈した。0.002、0.006、0.02、0.06、0.2、0.6、2、6、20、60、200および600ug/mlの濃度を準備した。等体積の細胞(125μ1)および抗体(125μl)を混合し、37℃で10分間インキュベートして、hAb−QをC5aRに結合させた。
簡潔に述べると、好中球およびhAb−Qのインキュベーション後、2×106細胞および0〜100μg/mlのhAb−Qを含む各混合物の100μlアリコートを、24ウェルのトランスウェルプレート(6.5mmインサート、3.0ミクロンのポリカーボネート膜;Corning Costar、カタログ番号3415)の上部チャンバ中に(2連で)配置した。組換えヒトC5a(最終濃度0、0.1、1、10または100nM)を含む走化性緩衝液(合計600μl)を、下部チャンバ中に配置した。プレートを5%CO2中で37℃で30分間インキュベートして、細胞を遊走させた。対照ウェルは、抗体なしの細胞またはC5aなしの緩衝液を含んだ。インキュベーション後、下部チャンバ中の細胞数を、FACSCalibur(BD Biosciences)でのフローサイトメトリーによって計数した。
ヒト好中球上の結合したhAb−Qの量を、以下の2つの試料で計算した:走化性前の細胞+抗体混合物の試料(試料A)および走化性後のトランスウェルプレートの下部チャンバ由来の細胞の試料(試料BL)。これは、遊走した細胞の受容体占有率に差異があるかどうか、または受容体占有率が走化性の開始と終了との間で変化したかどうかを決定するためであった。結合したhAb−Qは、抗hIgG−FITCと共に細胞をインキュベートすることによって検出した。あるアッセイでは、結合した抗体の量は、第3の試料(走化性後のトランスウェルプレートの上部チャンバ由来の細胞+抗体混合物の試料(試料BU))において測定した。
ヒト好中球上の未結合の受容体の量を、以下の2つの試料で計算した:走化性前の細胞+抗体混合物の試料(試料C)および走化性後のトランスウェルプレートの下部チャンバ由来の細胞の試料(試料D)。未結合の受容体は、FITC標識したhAb−Q(hAb−Q−FITC)と共に細胞をインキュベートすることによって検出した。
FACSCaliburフローサイトメーターを、チャネルFL−1について確立した補償パラメーターを用いて設定した。試料を獲得し、死細胞および残骸を排除した。好中球は、FSCおよびSSCに基づいて同定した。結合したhAb−Q(抗hIgG−FITC)または未結合のC5aR(hAb−Q−FITC)の量を、試料中の好中球のFITC(FL−1)平均蛍光強度(MFI)を決定することによって決定した。
%占有された受容体=[MFI(試料)−MFI(NSB)]/[最大MFI(300μg/mlのhAb−Q試料)−MFI(NSB)]×100
%未結合の受容体=[MFI(試料)−MFI(NSB)]/[最大MFI(未標識hAb−Qなしの試料)−MFI(NSB)]×100
4つの実験を実施した。簡潔に述べると、健康なボランティアの静脈血から単離した精製好中球を、0.001〜100μg/mlの範囲の濃度のhAb−Qと共に10分間プレインキュベートした。小アリコートのこの混合物を採取して、抗体結合受容体の量(%受容体占有率)を決定し、残りをトランスウェルプレートの上部チャンバ中に配置した。C5a(10nM)を下部チャンバ中に配置した。30分間のインキュベーション後、下部チャンバ中に遊走した細胞の数を、FACSを使用して決定した。FITC標識した抗hIgGおよびフローサイトメトリーを使用して、遊走終了時の下部チャンバおよび上部チャンバの両方における好中球上の結合抗体の量もまた決定した。1つの実験では、未結合の受容体(結合した抗体なし)のレベルを、遊走の前および後に、FITC標識したhAb−Qと共に好中球をインキュベートすることによって決定した。
図19は、4つの実験の組み合わせたデータから作成した、hAb−Q濃度対遊走細胞の総数のプロットを示す。hAb−Q濃度と遊走との間には、用量反応関係が存在した。0.1μg/ml以上の濃度で、hAb−Qは、10nMのC5aによって誘発されるヒト好中球の遊走を完全に遮断した。抗体濃度が低下するにつれて、遊走細胞の数は増加した。この結果は、上記の結果(図17)と類似していた。
4つの実験からの受容体占有率データを組み合わせた。走化性前および走化性後の下部トランスウェルチャンバ試料中の、各hAb−Q濃度での、好中球上の結合した抗体(占有された受容体)の平均量を、図20にグラフで示す。走化性前の試料と下部トランスウェルチャンバからの走化性後の試料との間の、占有された受容体のレベルにおける差異(それぞれ、EC50値0.3および1.1μg/ml)。所与のいずれのhAb−Q濃度でも、走化性前よりも走化性後において、細胞に結合した抗体が少なかった。この差異は、優先的に遊走した細胞が、遊走しなかった細胞よりも、平均して、受容体を遮断するhAb−Qが少なかったことにおそらく起因した。この差異の別の説明は、予め混合された細胞+抗体溶液(100μl)が、下部チャンバ中の600μlの緩衝液を含むトランスウェルプレート中に配置したとき、本質的に約7分の1に希釈されていたことであろう。抗体がトランスウェルの3μmの膜を自由に横切ることができる場合、希釈されて、結合反応の平衡は変化するであろう。
図19に示す好中球の遊走データを、抗体なしの試料における10nMのC5aに対して遊走する細胞の平均数の百分率として遊走細胞の数を表現することによって、変換した。次いでこの百分率を100%から差し引いて、遊走の百分率阻害を得た。このように、抗体なし試料における遊走細胞の数は0%阻害となり、遊走細胞0は100%阻害となった。次いでこのデータを、非線形回帰(シグモイダル用量応答(傾き変動)方程式)を使用するGraphPad Prismを用いて分析した。次いで、この分析後に得られた曲線を、図20由来の受容体占有率データと共にプロットして、図21を作成した。
カルシウム動員は、C5aが好中球の表面上のその受容体C5aRに結合した後に生じる最初の事象の1つである。C5a結合は、内部貯蔵から放出されるサイトゾル遊離Ca2+における即座の上昇(数秒以内)を引き起こし、その後、細胞外媒体からの流入に起因するより持続性の効果(数分にわたる)が生じる。遊離Ca2+の一過的な増加は、C5aRへのC5a結合後に好中球で観察される種々の生物学的応答のこのセカンドメッセンジャーとして機能する。
A.ヒト化抗C5aR抗体はin vitroでヒト好中球のC5aによって誘発される活性化を阻止する
C5aは、表面抗原CD11b(MAC−1インテグリンのα鎖、走化性および内皮との相互作用を媒介する)の上方制御、および接着性分子CD62L(L−セレクチン)の消失を誘導する、ヒト好中球の強力な活性剤である。C5a媒介性好中球活性化を阻止するヒト化抗C5aR抗体の能力は、全血活性化アッセイ中で調べた。
健常なヒトボランティア(2ドナー)由来の血液を、抗凝血剤クエン酸デキストロース(ACD)を含有する試験管に回収し、H2DCFDA(最終50μM)を含有するウェルに加えて室温(23℃)で10分間置き、次に0.3〜300μg/mlのhAb−Q、0.3〜300μg/mlのIgG4アイソタイプ対照、またはdPBSのみを加えた。試料は室温(23℃)で20分間インキュベートした。C5a(100nM最終)、PMA(0.2〜400ng/ml)、またはdPBSをそれぞれの試料に加え、室温(23℃)で20分間再度インキュベートした。抗CD11bおよび抗CD62L抗体(1/400最終)をすべての試料に加え15分間置いた。赤血球はRBC溶解バッファーを使用して除去し、白血球はdPBS+1%FCS中に懸濁させた。
最大発現率=[(試料−最小発現)/(最大発現−最小発現)]×100
C5aによって誘発される好中球活性化に対するhAb−Qの阻害効果を、2ドナーを使用して全血アッセイにおいて評価した。C5aで活性化した試料中では、CD11bの発現はhAb−Qの不在下で増大した。しかしながら、このCD11b発現の増大は、hAb−Qが存在した場合、IC50値約10.7μg/mlで用量応答式に妨げられた(図22)。アイソタイプ対照抗体は、100μg/ml超でさえCD11b発現のC5aによって誘発される上方制御を妨げなかった(データ示さず)。
好中球のC5aによって誘発される活性を中和するヒト化抗C5aR抗体の能力は前に記載した。以下の実験では、ヒト化抗C5aR抗体をC5aの不在下で精製ヒト好中球と共にインキュベートし、これは細胞表面マーカー、CD11bおよびCD62Lの発現を変えなかった。これらの実験は、抗C5aR抗体は、溶液中の細胞自体は活性化しないことを実証した。
ヒト好中球活性化アッセイおよびCD11bおよびCD62Lの発現の測定
ヒト末梢静脈全血を、一連の実験中でヒト化抗hC5aR抗体hAb−Q、hAb−JまたはhAb−Gと共にex vivoでインキュベートした。好中球活性化は、以下に記載するようにCD11bおよびCD62Lの発現レベルを決定することにより測定した。CD62Lレベルの低下またはCD11bレベルの増大は、好中球活性化の指標である。
簡単に述べると、健常ドナー由来のヘパリン化ヒト全血を、1、10、または100μg/mlのhAb−JまたはhAb−Q、10μMのfMLP(ホルミルMet−Leu−Pheペプチド)、またはdPBSのみのいずれかに加えた。試料は、1/100の最終希釈で抗CD11b−PEおよび抗CD62L−APC抗体を加える前に、5%CO2中で37℃において1時間インキュベートした。赤血球はRBC溶解バッファーを使用して除去し、白血球はdPBS+1%FCS中に再懸濁させた。
4健常ボランティア由来のヘパリン化血液を、0.1、1、10または100μg/mlのhAb−G、hAb−J、10nMまたは100nMのヒトC5aまたはdPBSのみのいずれかを含有する試験管に加えた。37℃で20分置いた後、6%デキストラン(最終濃度1%)をそれぞれの試験管に加え、30分間放置して赤血球を沈殿させた。上部の白血球が豊富な血漿層を96ウェルプレートに移し、そこで細胞を冷却dPBS中で洗浄した。遠心分離後、上清を除去し、細胞は抗CD11b−PE(1/50)および抗CD62L−APC(1/50)を含有するdPBS中に再懸濁し、次いで氷上で30分間インキュベートした。細胞は再度洗浄し、dPBS+1%FCS中に再懸濁した。好中球におけるCD11bおよびCD62Lの発現レベルは前に記載したように測定した。
健常なヒトボランティア(2ドナー)由来の血液を、抗凝血剤クエン酸デキストロース(ACD)を含有する試験管に回収し、C5aを試料に加えなかったこと以外、実施例7A中で前に記載したように処理した。好中球におけるCD11bおよびCD62Lのレベルは、実施例7A中で前に記載したようにFACSによって測定した。
ヒト好中球におけるCD11bおよびCD62Lの発現は、ヒト化抗C5aR抗体を用いた全血アッセイ中で変わらなかった。
第一の実験では、ヒト全血を1、10、または100μg/mlのhAb−QまたはhAb−J、10μMのfMLP、またはdPBSと共に37℃で1時間インキュベートし、CD11bおよびCD62Lの発現はフローサイトメトリーによって測定した。1〜100μg/mlの任意の濃度においてhAb−QまたはhAb−Jを含有する試料中では、CD11b発現の増大またはCD62L発現の低下はなかった(図24Aおよび24B)。対照的に、顆粒球を活性化することが知られているペプチドfMLPは、CD11b発現の多大な増大およびCD62Lの消失をもたらした。
スーパーオキシドは、生成された好中球を活性化して病原体と闘う活性酸素種の1つである。しかしながら、スーパーオキシドは正常組織に対して悪影響を有する可能性もある。抗C5aR抗体がそれ自体で好中球によるスーパーオキシドの生成を刺激することができる可能性を調べた。以下に記載する実験は、ヒト化抗C5aR抗体hAb−Qがヒト好中球を刺激してスーパーオキシドを生成することはないが、ヒト好中球がC5aによって刺激されるとき、その生成に対抗することができることを示す。
単離ヒト好中球によるin vitroでのスーパーオキシド生成の測定
スーパーオキシド(O2 ―)は、好中球が炎症性メディエータ、例えばC5aによって活性化されるときNADPHオキシダーゼによって生成される第一の酸素含有物質である。いくつかのO2 ―は細胞外に分泌される。膜不透過性であるシトクロムC(Fe3+)は、スーパーオキシドによって、550nmで分光光度法によって検出することができるシトクロムC(Fe2+)に還元される。本試験では、96ウェルプレートを使用して、Wallac Victor2(Mayo and Curnutte、1990)を使用して分光光度法によりシトクロムCの減少を決定した。
ヒト好中球を前の実施例5B中で前に記載したように精製した。96ウェルマイクロタイタープレートは、ヒトフィブリノゲン(1mg/ml)で一晩コーティングした。それぞれのウェルに、50μlのRM(HBSS(カタログ番号14175Gibco)および0.4mMのMgSO4、0.5mMのMgCl2、0.5mMのCaCl2および20mMのHEPESからなる反応混合物、および7.4でのpHセット)中の100μlのシトクロムC(150μM)および200,000の好中球を加えた。プレートは37℃でWallac Victor2(Perkin−Elmer)中に挿入し、非刺激性O2 ―生成は4分間毎分測定した。次に抗体を15μlのRM中に加え、ウェルは10分間2分毎に測定した。最後にC5aを加え、プレートは30分間2分毎に測定し、次に60分間10分毎に測定した。1.5時間後に測定した値を結果として使用した。4つのウェルをそれぞれの群に使用した。
2〜6の健常ドナー由来の好中球をこの試験中で使用した。図27は、37℃で1.5時間のインキュベーション後のスーパーオキシドの生成を示す。反応混合物(RM)は対照として使用した(6ドナー)。炎症性メディエータC5aは確かなO2 ―生成を誘導し(6ドナー)、これは抗C5aR抗体hAb−Qによって対抗された(5ドナー)。この試験では、高濃度の抗体を使用してどんな刺激効果も見落とさないことを確実にした。1000μg/ml(4ドナー)、250μg/ml(3ドナー)および100μg/ml(2ドナー)でのhAb−Q、ならびに、ネズミ抗体A−TNPのヒト化型である、対照、無関係なIgG4抗体HzATNP(2ドナー)は、刺激効果がなかったことは明らかである。
hAb−QがC5aRを発現する他のヒト細胞、特に血中の好中球および単球を死滅または枯渇することができたかどうか決定するために、いくつかのex vivo全血枯渇アッセイを実施した。全血枯渇試験は、補体または抗体媒介性死滅機構(CDC、ADCC)を不活性化しない、抗凝血剤、レピルジン(Refludan(登録商標))を使用した。レピルジンは非常に特異的な直接的トロンビン阻害剤である。それはヒルから抽出した抗凝血剤ヒルジンの組換え類似体である。
血液採取
末梢静脈血を、50または500μg/mlのレピルジン(Refludan(登録商標)、Pharmion Pty Ltd、Melbourne、オーストラリア)の最終濃度を含有する滅菌15mlのポリプロピレンチューブ中に健常なボランティアから採取した。
抗凝固処理血液のアリコート(50μl)を96ウェルプレートに分配し、100μg/mlの最終濃度でdPBSに希釈した25μlの抗体と共に5%CO2中で37℃において3.5時間2連でインキュベートした。対照試料は50μlの血液および25μlのdPBSを含んでいた。抗hCD66b−FITC(1/100最終)、抗hCD19−APC(1/300最終)および抗hCD14−PE(1/300最終)を含む染色カクテル(25μl)をそれぞれの試料に加え、5%CO2中で37℃において30分間インキュベーションを続けた。次いで、キャリブレーションビーズ(50μl、980ビーズ/μl;Flow−Count Fluorospheres;Beckman Coulter、USA;カタログ番号7547053)をそれぞれの試料に加えた。100μlの1×FACS溶解溶液(10×FACS溶解溶液;BD Biosciences;カタログ番号349202)を加えることにより赤血球を溶かした。全試料を1.5mlの試験管に移し、さらなる500μlの1×FACS溶解溶液を加えた。試験管は3分間4,000rpmで遠心分離にかけ、上清は除去した。細胞およびビーズは150μlのFACSバッファー(dPBS+1%BCS)中に再懸濁した。
細胞はFACSCalibur(Becton Dickinson)フローサイトメーターで分析した。前方散乱光および側方散乱光を使用してすべての細胞を含めたが、残骸は除外した。ゲートを設定して、CD66b−FITC(FL−1)陽性細胞(好中球)、CD19−APC(FL−4)陽性細胞(Bリンパ球)またはCD14−PE(FL−2)陽性細胞(単球)を計数した。5000ビーズ当たりの細胞数を決定した。
細胞数/ml=5000ビーズ中の細胞数×(50×980)/5000×1000/50
枯渇率=100×(1−(細胞数/抗体処理試料1ml/(細胞数/PBS処理試料1ml))
レピルジンを含有する滅菌試験管中に回収した3人の異なる健常ボランティア由来の全末梢静脈血を使用して、3つの別個の実験を実施した。血液は、ヒト化抗C5aR抗体hAb−Q、リツキシマブ(陽性対照抗CD20抗体)、hIgG4(陰性アイソタイプ対照抗体)またはPBS(バッファー対照、細胞枯渇の程度を測定するためのベースライン)と共にインキュベートした。インキュベーションの最後に、CD66b、CD14およびCD19に対する標識抗体のカクテルを使用して細胞を染色し、顆粒球(好中球:CD66b+ve)、単球(CD66b−ve、CD14+ve)およびB細胞(CD19+ve)を同定した。それぞれの細胞型の絶対数を決定するために、既知の濃度を有する一定体積のキャリブレーションビーズをそれぞれの試料に加えた。したがって、それぞれの試料中の好中球(顆粒球)、単球およびB細胞の絶対数(1ml当たりの細胞数として)、および、PBSとインキュベートした試料中の細胞の合計数の割合として、発現した抗体を用いた治療後のそれぞれの細胞型の相対的枯渇を決定することができた。
C5aR発現細胞(好中球、単球など)を死滅しないヒト化抗C5aR抗体を開発することは望まれていた。いくつかの機構によって、抗体は標的抗原を発現する細胞の死滅を開始することができる。hAb−Qは、補体依存性細胞障害(CDC)および抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)を回避/低減するためのIgG4アイソタイプとして生成した。補体媒介性死滅は、抗原−抗体複合体が補体タンパク質、C1qと結合すると、抗体のFcドメインを介して誘導されて、一連のタンパク質分解事象の活性化を開始させ、C5aの放出および標的細胞を溶かす膜攻撃複合体の形成をもたらす。
高レベルのC5aRを発現するRamos E2クローンの作製
CD20発現ヒトBリンパ球細胞系(Burkittのリンパ腫由来)、Ramosを、製造者のプロトコルに従いリポフェクタミンTMLTX試薬(Invitrogen)を使用して、ヒトC5aR発現プラスミド(pcDNA3.1−C5aR;4μgのDNA/3×106個の細胞)で安定的にトランスフェクトした。トランスフェクションの40時間後に、Geneticin(G418硫酸塩、Gibco)を2mg/mlで増殖培地に加えた。細胞(非クローン)を選択培地中で約3週間増殖させ、このときトランスフェクトしたC5aRの発現および割合を、抗C5aR抗体を使用してフローサイトメトリーによって確認した。約30〜40の陽性クローン/プレートをもたらす密度で、細胞を384ウェルプレートに移した。単クローンコロニーを選択し、増殖用に96ウェルプレートに移した。十分な増殖後、それぞれのクローンにおけるC5aRの発現は、抗C5aR抗体を使用してフローサイトメトリーによって決定した。最高発現クローン、E2を選択し増殖させた。Ramos E2細胞はRPMI、10%のFCS、2mg/mlのG418中に維持した。
標的細胞(Ramos E2細胞)は、抗体または培地単独(RPMI+10%熱不活性化BCS)と共に5%CO2中で37℃において30分間インキュベートした。インキュベーション後、RPMIに希釈したウサギ補体(Cedarlane)を1%v/vの最終濃度で試料に加えた。5%CO2中で37℃においてさらに2時間、試料をインキュベートした。
特異的CDC(溶解率)=(B−A)−C
特異的CDC(溶解率)=(T+CS−T+CMO)−(TOS−TOMO)。
上式で:T+CSは抗体を含む標的+補体試料中の非生存細胞の平均率であり、
T+CMOは標的+補体培地のみ(抗体含まず)中の非生存細胞の平均率であり、
TOSは抗体を含む標的のみ試料中の非生存細胞の平均率であり、
TOMOは標的のみ培地のみ(抗体含まず)中の非生存細胞の平均率である。
ヒト血清を使用するADCCアッセイを、実施例10中で以下に記載したように実施した。抗体のCDC活性は、ヒト血清を含有する「標的のみ+抗体」試料(B)から非生存「標的のみ/培地のみ」試料の平均率(A)を引くことによって決定した。次いで、熱不活性化ウシ血清反応中の非生存「標的のみ+抗体」試料(C)−「標的のみ/培地のみ」試料(D)の割合を引いて、特異的CDCの最終値を得た:
特異的CDC(溶解率)=(B−A)−(C−D)
Ramos E2標的細胞を使用したhAb−QのCDCアッセイ
補体依存性細胞障害(CDC)を誘導するhAb−Qの可能性を、ウサギ補体の存在下で抗体とヒト好中球をインキュベートすることによって最初に調べた。このアッセイ中好中球の特異的死滅(0.5%未満の細胞死)はほとんどなかった(データ示さず)。
3つのアッセイを実施した。第一のアッセイは、10μg/mlの最終濃度の抗体hAb−Q、リツキシマブ(Roche)およびhIgG4アイソタイプ対照(Sigma)と、Ramos E2細胞および1%ウサギ補体をインキュベートすることを含んでいた。第二および第三のアッセイは100μg/mlで抗体を用いて実施し、過剰な陽性対照、ウサギポリクローナル抗C5aR(US Biological)を含んでいた。
ヒト血液から単離したエフェクター細胞(PBMC)を使用して、一連のADCCアッセイを実施して(以下の実施例10参照)、ヒト化抗C5aRまたは対照抗体とインキュベートしたRamos E2細胞を標的化した。一組の対照反応を並行して実施し、熱不活性化ウシ血清またはPBMCをもたらした同じドナー由来の10%ヒト血清の存在下で、Ramos E2細胞(「標的のみ」)および抗体のインキュベーションを含んでいた。
C5aR発現細胞(好中球、単球など)を死滅しないヒト化抗C5aR抗体を開発することは望まれていた。いくつかの機構によって、抗体は標的抗原を発現する細胞の死滅を開始することができる。いくつかのヒト化抗C5aR抗体(例えば、hAb−Q、hAb−J、hAb−G)はIgG4アイソタイプで生成し、補体依存性細胞障害(CDC)および抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)を回避/低減した。他のヒト化抗C5aR抗体(例えば、hAb−N、hAb−O)は、C1qおよびFcyRと結合し、したがってCDCおよびADCCを誘導する可能性が高いことが知られているIgG1アイソタイプで生成した。抗体のFcドメインが抗原、例えば「標的細胞」上の受容体と結合し、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、好中球および好酸球を含めた、細胞障害能を有する細胞(「エフェクター細胞」)上のFc受容体と架橋すると、ADCCが媒介される。
ADCCアッセイプロトコル
簡単に述べると、エフェクター細胞成分は、FicollまたはPercoll(GE Healthcare)のいずれかの密度勾配分離を使用して健常ドナーから末梢血単核細胞(PBMC)を単離することによって調製した。5%CO2中に37℃で100ng/mlの組換えヒトIL−2(Peprotech)を含有する培地中で一晩インキュベートした、残存する、非接着細胞(NK細胞を含有する)を含むフラスコに接着させることによって(1時間、37℃、5%CO2)、PBMC集団から次いで単球を枯渇させた。翌日、標的細胞(hC5aRを発現するRamos E2細胞−前を参照)を蛍光細胞膜色素、PKH26(Sigma)で染色し、5×104個細胞/試料を、5%CO2中で37℃において30分間抗体または培地のみとインキュベートした。インキュベーション後、50:1の比でエフェクター細胞、または培地のみのいずれかを標的細胞に加え、試料を5%CO2中で37℃においてさらに3時間インキュベートした。To−Pro−3陽性として定義した非生存標的細胞をフローサイトメトリーにより測定し、全標的細胞(PHK−26陽性細胞)の割合として表す前に、蛍光性生死判別色素、To−Pro−3(Molecular Probes)をそれぞれの試料に加えた。培地は、PBMC「エフェクター」細胞を単離した同じドナー由来の10%ヒト血清、または10%熱不活性化ウシ血清のいずれかを含有していた。
特異的ADCC(溶解率)=(B−A)−C
特異的ADCC(溶解率)=(T+ES−T+EMO)−(TOS−TOMO)。
上式で:T+ESは抗体を含む標的+エフェクター試料中の非生存細胞の平均率であり、
T+EMOは標的+エフェクター培地のみ(抗体含まず)中の非生存細胞の平均率であり、
TOSは抗体を含む標的のみ試料中の非生存細胞の平均率であり、
TOMOは標的のみ培地のみ(抗体含まず)中の非生存細胞の平均率である。
ADCC機構によって細胞死滅を誘導するヒト化抗C5aR抗体hAb−Qの能力を、標的としてRamos E2細胞を使用して一連のアッセイ中で調べた。Ramos E2細胞はCD20とC5aRの両方を発現し、CD20を標的化しADCCによって死滅するリツキシマブは陽性対照として使用することができる。Ramos E2におけるC5aRの発現はヒト好中球における発現より約7倍高かった。細胞表面上で発現される標的受容体のレベルは、抗体によって誘導されるADCCおよびCDCの程度に影響を与える可能性があることが報告されている(Preithenerら、2006;van Meertenら、2006;Lowensteinら、2006)。
第一系列の実験では、Ramos E2細胞のADCCを誘導するヒト化抗C5aR抗体hAb−Q(重鎖アイソタイプhIgG4)およびhAb−N(hIgG1)の能力を、リツキシマブ(hIgG1)およびアイソタイプ対照抗体(hIgG4)によって誘導されたADCCと比較した。ヒトIgG1はhIgG4よりFcγRに対する高いアフィニティーを有し、より効率良くADCCを誘導すると予想される。
別の系のADCCアッセイを前述のように実施し、一組の試料はPBMCエフェクター細胞のドナーから単離した10%ヒト血清を含有する培地中でインキュベートし、および同組の試料は10%熱不活性化ウシ血清を含有していた。血清の熱不活性化は補体活性を損ねるように設計する。したがって、ヒト血清とインキュベートした試料中でCDC活性を観察することができると予想した。CDCのレベルは「標的のみ」試料から決定した。実際、リツキシマブを含有する「標的のみ」試料中では、非生存(TP3+ve)細胞の数は通常90%を超えた。したがって、ヒト血清を含有する試料中でリツキシマブによって誘導された特異的ADCC活性は決定することができなかった。しかしながら、10%熱不活性化ウシ血清および100μg/mlのリツキシマブを含有する並行試料中では、平均60%の標的(Ramos E2)細胞がエフェクター細胞によって特異的に死滅された。これは図32中に表す結果と類似しており、エフェクター細胞およびADCCアッセイが働いていたことを示した。
KRNトランスジェニックマウス系は、C57BL/6バックグラウンドで自己抗原グルコース−6−リン酸イソメラーゼ(GPI)を認識するT細胞受容体を含有する。これらのマウスをNODマウスと交配すると、トランス遺伝子陽性F1子孫(K/BxN)は、GPIに対する循環抗体によって媒介される自己免疫様疾患を自然に発症する(Kouskoffら、1996)。関節炎K/BxNマウス由来の血清は他の系統に移すことができ、そこで自己抗原免疫複合体は、別の補体経路、次にC5aR−およびFcガンマRIII媒介性細胞活性化および前炎症性サイトカインの生成を活性化する(Jiら、2002)。好中球、マスト細胞およびマクロファージは、このモデル中の病状の発症において重要な役割を果たす(Wipke and Allen、2001;Leeら、2002;Solomonら、2005)。観察した炎症性の表現型は、関節破壊を伴う慢性進行性疾患の状態を含めたヒト関節リウマチの指標の多くの特徴をなす(Kyburz and Corr、2003)。
方法
動物
約6〜12週齢のC57BL/6バックグラウンドのヒトC5aRノックイントランスジェニックマウス(Leeら、2006)は、Garvan Institute、シドニーでの繁殖コロニーから入手した。雄のマウスが実験に好ましかったが、雌のマウスも使用した。
実験用の血清を生成するために、KRNの雄をNODの雌と交配させた。炎症関節を発症したKRNトランス遺伝子を有するF1子孫は屠殺し、血液は心穿刺によって回収した。血清は37℃で2時間のインキュベーション後に単離し、4000rpmで10分間遠心分離にかけた。多数のマウスからの血清をプールし、再度アリコートにし−80℃で保存した。
第0日および第2日に100〜150μlの血清を腹腔内注射することによって、レシピエントマウスにおいて実験関節炎を誘導した。疾患の進行は、カリパスを使用して足首の太さの変化を測定し、臨床値を決定することによって毎日モニタリングした。毎日の足首の太さは、それぞれの後足からの2つの読み取り値を平均することによって決定した。臨床値は、4足に関する値:0、正常関節、1、足首の軽度/適度な腫れおよび/または1本の腫れた指、2、腫れた足首または2本以上の指の腫れ、3、足の全側面に沿った重度の腫れまたは全5本の指の腫れを合計することによりそれぞれのマウスに関して計算した。マウスをモニタリングした調査員は、それぞれのマウスに与えた治療に対して盲検とした。
精製抗C5aRまたはアイソタイプ対照抗体(1〜10mg/kg、PBS中)を、第5日に腹腔内注射した(療法治療レジメ)。いくつかの実験では、対照群にはアイソタイプ対照抗体ではなくPBSを与えた。
K/BxNモデル中の独立した対照群と治療群の間の差の統計的有意性を、マンホイットニー検定を使用して、またはクラスカルワリス検定およびダンの多重比較検定と共に実施した事後解析を使用して決定した。
K/BxNモデルにおいて確定した炎症を逆行させるヒト化7F3抗体の能力を調べ、それらの結果は以下に報告する。表8は、このモデルにおいて試験した抗体、および投与した用量を列挙する。関節炎をK/BxN血清注射によって誘導した後、すべての抗体を第5日に腹腔内注射によって「治療的に」投与した。
ヒト化抗C5aR抗体の治療的投与の前に、マウスにおいて実験関節炎を誘導した。抗体用量、血清中抗体濃度、抗体によるC5aR専有のレベルとマウス中の関節炎症に対する影響の間の関係を調べた。
動物
8〜16週齢(平均約12)のC57BL/6バックグラウンドの雄および雌のヒトC5aRノックイントランスジェニックマウス(Leeら、2006)を、Garvan Institute、シドニーまたはAnimal Resources Centre、パースでの繁殖コロニーから入手した。
この試験中のすべてのマウスに、前に記載したように調製したK/BxN血清の同じバッチを注射した。
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)を、以下のようにhAb−Q抗体と共有結合させた。簡単に述べると、約1.5mgのhAb−Qを「反応バッファー」(160mMのNa2CO3、340mMのNaHCO3、pH9.5)中に交換し、抗体1mg当たりDMSOに溶かした120μgのFITC(Molecular Probes)に加えた。反応は室温(23℃)において1時間、暗所で実施した。非結合FITCは、予め平衡状態にし「保存バッファー」(10mMのトリス、150mMのNaCl、pH8.2)で溶出したPD−10カラムを使用して除去した。結合hAb−Q−FITCは濃縮して、Centricon(YM−30)スピンフィルターを使用して1.036mg/mlの最終濃度を得て、暗所で4℃において保存した。
前に記載したように第0日および第2日に150μlのK/BxN血清を腹腔内注射することによって、レシピエントマウスにおいて実験関節炎を誘導した。第5日に、第0日からの足サイズの変化(mm単位)と臨床値を掛けることによって、「RA値」をそれぞれのマウスに関して計算した。0.5を超えるRA値を有していたマウスのみを試験の治療段階に進めた。炎症性関節炎は、雄の約90%および雌マウスの50%において発症した。
この試験は、抗C5aR抗体を用いた治療の開始前後の、様々な時間でのK/BxN疾患モデルにおける炎症、in vivoでの受容体専有、および血清抗体濃度を測定するために設計した。このモデルにおける疾患の過程は約3週間以内で一般に消散する。炎症の兆候および症状は、K/BxNマウス由来の血清を用いた免疫処置の1日または2日以内に明らかである。炎症は第10〜14日辺りがピークであり、その後ゆっくりと低下する。
●炎症:足サイズおよび臨床値は、第0日(最初の血清注射前)、第2日(第二回目の血清注射前)、第5日(治療開始前)、次いで第6日、第7日、第8日、第9日、第10日、第11日、第12日、第14日および第16日に測定した。炎症は群当たり少なくとも10匹のマウスで決定した。
この試験に入れるために選択したマウスはランダムに5群に分けて、第5日に5つの治療の1つを施した:
1.PBS、腹腔内
2.huIgG対照抗体、腹腔内、@8mg/kg
3.hAb−Q、腹腔内、@1mg/kg
4.hAb−Q、腹腔内、@3mg/kg
5.hAb−Q、腹腔内、@10mg/kg
独立した対照群と治療群の間の差の統計的有意性を、前に記載したように決定した。
それぞれの試験試料用にhAb−Q(200μg/ml、[最終])またはdPBSのいずれかを含有するようにプレートをセットアップした。それぞれのマウス由来の25μlのヘパリン化血液をhAb−QとdPBSの両方を含有するウェルに加え、37℃で1.5時間インキュベートした。細胞はdPBSで3回洗浄して非結合hAb−Qを除去し、室温で45分、抗hIgG−FITC(1/50)、抗Ly−6G−PEおよび抗CD11b−PerCP/Cy5.5抗体(1/400)を含有するdPBS中に再懸濁した。赤血球はBD FACS溶解溶液(BD、349202)を加えることによって除去した。試料プレートは2,000rpmで3分間遠心分離にかけ、上清は除去し、フローサイトメトリー(BD FACSCanto)による分析用にBD FACS溶解溶液中に細胞を再び再懸濁した。
hAb−Q(200μg/ml、[最終])、最大遊離C5aR用)またはdPBS(最大遊離C5aRおよびすべての試験試料用)のいずれかを含有するようにプレートをセットアップした。それぞれのマウス由来の25μlのヘパリン化血液を対応するウェルに加えた(すなわち、dPBSのみを注射したマウス由来の血液を+hAb−QとdPBSの両方を含有するウェルに加えた(最小および最大遊離C5aR用))。すべての他の試験用血液試料はdPBSのみを含有するウェルに加え、37℃で1.5時間インキュベートした。細胞はdPBSで3回洗浄して過剰なhAb−Qを除去し、37℃で45分、25μg/mlでhAb−Q−FITC、抗Ly−6G−PEおよび抗CD11b−PerCP/Cy5.5抗体(1/400)を含有するdPBS中に再懸濁した。赤血球はBD FACS溶解溶液(BD、349202)を加えることによって除去した。試料プレートは2,000rpmで3分間遠心分離にかけ、上清は除去し、フローサイトメトリー(BD FACSCanto)による分析用にBD FACS溶解溶液中に細胞を再び再懸濁した。
BD FACSCantoフローサイトメーターを、チャネルFL−1、FL−2およびFL−3に関して確定した補償パラメーターでセットアップした。試料を入手して死細胞および残骸は除外した。好中球はLy−6G−PE高、CD11b−PerCP/C5.5低−高として同定した。単球はLy−6G−PE陰性、CD11b−PerCP/C5.5高として同定した。結合hAb−Q(α−IgG−FITC)および遊離C5aR(hAb−Q−FITC)のレベルは、それぞれの試料に関するFITC(FL−1)平均蛍光強度(MFI)を測定することによって決定した。
[[MFI(試料+dPBS)−MFI(バックグラウンド、すなわちPBS対照マウス+dPBS)]/[Max_MFI(試料+冷却hAb−Q)−MFI(バックグラウンド)]]×100
hAb−Qの血清濃度は、マウス血清中のhAb−Qを検出することが実証されたELISA法を使用してGLPに従いアッセイした。定量化の下限(LLOQ)は4ng/mlであった。in vitro消失試験用に、マウスアッセイをヒトEDTA血漿中でのhAb−Qの検出用に定性化した。アッセイを血漿に施したとき、LLOQは10ng/mlであった。
数匹の200hC5aRKO/KIマウスを、2日間隔で(第0日と第2日)K/BxNマウス由来の血清を用いて2回免疫処置して、レシピエントマウスの足における膨張した関節および指として現れる炎症性関節炎を誘導した。第5日までに、約70%のマウス(約85%の雄および約60%の雌)が、足および関節のある程度の膨張および発赤を発症した。0.5を超える「RA値」を有するマウスを、群当たり11〜12マウスの5つの治療群にランダムに選別した。それぞれの群には、5つの治療−1、3および10mg/kgの用量でのPBSに溶かしたhAb−Q、8mg/kgの用量でのPBSに溶かした対照抗体(無関係な抗原に対するヒトIgG)およびPBSのみの1つを施した。次の11日間、マウスを定期的にモニタリングし、臨床値を割り当て、足サイズ(足首の太さ)を測定した。受容体占有率および抗体血清濃度を決定するために、第5.5日、第6日、第7日、第8日、第9日、第10日、第12日、第14日および第16日に、血液試料は尾静脈から、または心穿刺によって回収した。
それぞれの治療群に関する第0日からの平均臨床値および足サイズの変化を図36中に示す。このデータは、hAb−Qはin vivoで炎症の兆候および症状を低減する際に有効であったことを示す。用量応答の関係を観察し、10mg/kgの用量は3および1mg/kgの用量より明らかに有効であった。2つの対照群を比較すると、10mg/kgのhAb−Qは投与後1週間炎症および臨床値を低減および制御し、3mg/kgのhAb−Qは約5日間炎症の任意のさらなる増大を阻止したが、既存の炎症を低減することはできず、かつ1mg/kgのhAb−Qは有効ではなかった。最後の3〜5日の行程中、10mg/kgと3mg/kgの群の両方において炎症値の上昇の傾向があった。hAb−Qの1つの用量のみを第5日に与えた。以下に示すように、炎症の低減または安定(さらなる増大なし)は、高い受容体飽和度および血清抗体濃度と関係があった。これらが低下すると、炎症は回復した。
受容体占有率を2つの異なる方法で測定した。白血球はhAb−Q−FITCで染色して「遊離」受容体の量を決定し、または抗hIgG−FITCで染色してin vivoで結合したhAb−Q(「占有」受容体)の量を決定し、CD11bとLy6Gで同時染色して好中球と単球を区別した。好中球上でC5aRと結合した抗体の量と遊離(空)受容体の量の間には、反比例関係があるはずである。結合抗体を計算したとき、マウス毎の受容体数の変動を補正した。遊離受容体を決定したとき、これは実施しなかった。結果は図37および38中に示す。
動物の血清中のヒト化抗C5aR抗体の濃度を、投与後30分と11日の間の間隔で決定した。結果は図39中に示す。投与後、血清中のhAb−Qの濃度は急激に増大した。測定した最大濃度には投与後30分と12時間の間で到達し、用量依存性であった。1mg/kgの抗体の投与後、血清中の濃度は30分後1.9μg/mlでピークに達し、12時間1.5μg/mlを超えた状態であり、次いで第7日(投与後48時間)に0.1μg/ml未満に低下した。3mg/kgの群中のピークの血清抗体濃度は、投与後12時間で13.3μg/mlであった。抗体のレベルは2日間高い状態であり(5μg/mlを超えた)、次いで第9日まで(投与後96時間)に0.1μg/ml未満に急激に低下した。10mg/kgの群中の血清抗体濃度は、投与後12時間において69.5μg/mlでピークに達し、次の7日間で5.5μg/mlに、次いで第14日までに0.1μg/ml未満に徐々に低下した。
前述の図36a(臨床値)、37(hAb−Qにより占有されたhC5aRの割合)および39(血清中のhAb−Q濃度)からのデータを図40、41および42中で組み合わせて、抗体用量、受容体占有率および血清抗体濃度の間の関係を実証した。
この実施例では、本発明者らは、抗C5aRmAbの薬物動態、標的受容体占有率、および炎症性関節炎のK/BxNマウスモデルにおける影響の間の定量的関係を記載する、考えられる薬物動態/薬力学(PK/PD)モデルを与える。モデリングに関するデータは、2つの試験、薬理学的試験(前で実施例11B中に記載した)および毒性試験から作成した。このモデルはデータを解釈するための方法を構成して濃度応答の関係を調べ、かつこれを使用してヒト中で安全な開始用量の選択を支援することができる。
薬理学的試験
薬理学的試験法の完全な詳細は実施例11B中で前に与える。簡単に述べると、この試験の目的は、第一にヒト化抗C5aR抗体、hAb−Qを用いた療法治療が、K/BxNモデルにおいて炎症性関節炎の兆候および症状を逆行させる際に有効であったかどうか決定すること、および第二に、用量と抗炎症効果、受容体占有率のレベル(遊離hC5aRおよび結合hAb−Qとして測定)、好中球活性化状態および循環血清中抗体濃度を関連付けることであった。炎症は群当たり少なくとも10匹のマウスにおいて決定した。受容体飽和試験は、PBSを与えた対照群が2匹のマウスを含んでいたこと以外、群当たり4匹のマウスで行った。投与群(1、3、10mg/kg、腹腔内、および対照動物)。
hC5aRトランスジェニックマウスへのhAb−Qの皮下および静脈内(ボーラス)投与による毒性試験、用量は隔日で投与した。トキシコキネティックデータは、4つのhAb−Q用量群(5、50、500mg/kg、静脈内、および100mg/kg皮下(s.c.))のそれぞれにおいて、18〜21匹の雄および18〜21匹の雌から得た。
hAb−Qの血清濃度は前に記載したようにアッセイした。
hAb−Qモノクローナル抗体の投与による好中球および単球におけるhC5aRとの結合を、前に記載したように決定した。薬理学的試験用に、占有率は、
一次条件付き評価(FOCE)を用いたNONMEM VI(非線形混合効果モデリングソフトウェア)をモデリングに使用し、S−PLUS(登録商標)8.0(Insigthful)はグラフィックスおよびデータ処理に使用した。中間モデル間の区別の評価は、目的関数値および標準的なグラフィック評価法に基づいた。目的関数値の点で、この値の変化は(枝分かれモデルに関して)カイ二乗分布であると考え、モデルを拡大するための基準を定義し適宜に使用した。
占有率に関するPK/PDの関係
トランスジェニックマウスにおける毒性試験からのトキシコキネティックスと薬理学的試験からのPK/PDデータを統合して、薬物動態と占有率の間の関係を評価した。これらのデータは、図43中に例示したように、標的媒介性であるワンコンパートメントPKモデルによって十分記載することができた。それぞれの投与群に関するPKおよび占有率モデルの適合性は図44中に示し、一方パラメーター値は表9中に与える。毒性試験中では低い用量レベルではなく、500mg/kgの群に関して高いクリアランスを推定したことにも留意されたい。これは他の試験と一致し、FcRN受容体の飽和のため高い用量に関して高いクリアランスを観察する(Hansen and Balthasar、2002)。
PK/PDモデルを開発して、トランスジェニックマウスを使用した薬理学的試験(K/BxNモデル)における炎症攻撃後の、薬物動態と足サイズの変化の間の関係を記載した。K/BxNモデルの自然経過は、実験的関節炎の誘導による足サイズの漸増、および炎症減弱時の正常な足サイズへの約12日後のそれに続く段階的な回復である。図45中に例示したPK/PDモデルは、誘導される炎症の阻害によるhAb−Qの影響を記載する。最大阻害の割合は、占有率PK/PDモデルから得た占有率のレベルに設定した。図46中に見られるように、測定した足サイズとモデル化した足サイズの間の妥当な一致はこの手法によって得ることができ、これは好中球C5a受容体の占有率と炎症に対する影響の間の非常に密接な関係を示す。
このモデルは、モノクローナル抗体濃度、占有、および炎症に対する影響の間の密接な関係を実証し、観察値と予測値の間の十分な一致を発見した。このデータ中の最も重要な特色、1)さらなる臨床開発を動機付けるマウスの足に対する明らかに有益な影響、2)長期の治療効果のための高用量レベルの要件をもたらし得る、標的媒介性によって記載された高飽和性除去成分、および3)低用量で高ピークの占有をもたらし得る、おそらく二価結合と関係がある、in vivoでの受容体との比較的強い結合は、このモデルによって記載された。
hAb−Qを用いた進行中の臨床試験からのデータを使用して、薬物動態およびC5aR占有率データを使用して、実施例11中に記載した前臨床PK/PDモデルを実証およびアップデートした。このモデルのシミュレーションを使用して、高用量レベルでのPK/PDに関する本発明の予想を記載する。このモデルは、将来の試験における用量レベルおよびレジメン選択に関する早期意志決定のための、データを解釈するための方法を構成する。
臨床データ
NN8209−1940は、それぞれ8および7用量レベルでの、平行した単回静脈内および皮下投与のランダム化、二重盲検、プラセボ対照、用量増大試験である。対象は抗C5aR(hAb−Q)の単回静脈内または皮下投与にランダム化する。対象は3:1の比にランダム化し、3対象にはそれぞれの用量レベルおよび投与経路で活性治療を割り当て、1対象にはプラセボ治療を割り当てた。抗C5aR(hAb−Q)は、予定用量レベルで、前の用量レベルから3または3.3倍の実際の用量の増大で投与する。本発明の用量レベルは、PK/PDモデル最新版において、静脈内用量レベル:0.003、0.01、0.03、0.1、0.2、0.6mg/kg;皮下用量レベル:0.01、0.03、0.1、0.3mg/kgを含んでいた。
抗C5aR(hAb−Q)の測定用のPKサンプリングは、0時間での投与前(投与前最大60分)、および薬剤投与後5分(静脈内投与後のみ)、15分(静脈内投与後のみ)、および30分、および1、2、4、6、8、12、24および48時間および3、7、14、21、28、42、56、および70日に予定する。時間地点は、0分での注射または注入の開始を指す。静脈内投与にランダム化した対象に関しては、注入時間は15分であり、したがって15分の時間地点は注入の最後を指す。
hAbQモノクローナル抗体の投与による好中球および単球におけるhC5aRとの結合は、3つの異なる方法を使用して決定した。FACSによる分析後、これらの測定のそれぞれは補正平均蛍光強度(MEF)をもたらす。3つの方法は、1)in vivoで結合したhAbQを有する専有受容体を評価するためにFITC標識抗ヒトIgG4二次抗体を使用する直接法(MEF結合)、2)in vivoでのhAb−Q投与、次にex vivoでのhAb−Q−FITCの添加の結果として遊離hC5a受容体を測定する間接法(MEF遊離)、および3)全受容体数の測定、全受容体を充填するためのex vivoでの過剰なhAb−Qとのインキュベーション、および次いで抗ヒト二次抗体の添加である(MEF最大結合)。占有率はその後以下のように導いた:
一次条件付き評価(FOCE)を用いたNONMEM VIをモデリングに使用し、かつS−PLUS(登録商標)8.0をグラフィックスおよびデータ処理に使用した。中間モデル間の区別の評価は、目的関数値および標準的なグラフィック評価法に基づいた。目的関数値の点で、この値の変化は(枝分かれモデルに関して)カイ二乗分布であると考え、モデルを拡大するための基準を定義し適宜に使用した。
ヒトPKおよび占有率に関する本発明の最新モデルは図47中に記載する。モデル予測は一般に、実験中でこれまで観察した薬物動態および占有率と非常によく一致したことが分かった。抗C5aR(hAb−Q)投与後のPK/PDのこれらのモデル予測は、静脈内投与に関しては図48中、および皮下投与に関しては図49中に与える。これらの予測は、データの蓄積に応じて変わる可能性があることに留意されたい。
全体として、観察および予想PKと占有率の間の十分な一致を見出した。前臨床データから予想した主な特色は臨床データにおいても観察した。これらの特色は、標的、および低濃度での比較的高い占有率による可能性が高い、除去される高飽和成分を含む。
(参考文献)
配列番号2:7F3可変重鎖タンパク質配列。
配列番号3:7F3可変軽鎖コード配列。
配列番号4:7F3可変重鎖コード配列。
配列番号5:KV2F_ヒトのヒト軽鎖可変領域。
配列番号6:KV2E_ヒトのヒト軽鎖可変領域。
配列番号7:KV2D_ヒトのヒト軽鎖可変領域。
配列番号8:KV2B_ヒトのヒト軽鎖可変領域。
配列番号9:KV2A_ヒトのヒト軽鎖可変領域。
配列番号10:X12691のヒト軽鎖可変領域。
配列番号11:U41645のヒト軽鎖可変領域。
配列番号12:U41644のヒト軽鎖可変領域。
配列番号13:M31952のヒト軽鎖可変領域。
配列番号14:図1に示されるヒト軽鎖可変配列のhVkFW Consコンセンサス配列。
配列番号15:Hv1Av_ヒトのヒト重鎖可変領域。
配列番号16:Hv1Bv_ヒトのヒト重鎖可変領域。
配列番号17:Hv1Cv_ヒトのヒト重鎖可変領域。
配列番号18:Hv1Gv_ヒトのヒト重鎖可変領域。
配列番号19:M99641.aaのヒト重鎖可変領域。
配列番号20:M99642.aaのヒト重鎖可変領域。
配列番号21:X62109.aaのヒト重鎖可変領域。
配列番号22:X92343.aaのヒト重鎖可変領域。
配列番号23:Z12305.aaのヒト重鎖可変領域。
配列番号24:図2Aに示されるヒト重鎖可変(V)領域配列のhVhvFW Consコンセンサス配列。
配列番号25:Hv1Cj_ヒトのヒト重鎖連結領域。
配列番号26:Hv2Ij_ヒトのヒト重鎖連結領域。
配列番号27:Hv3Hj_ヒトのヒト重鎖連結領域。
配列番号28:Hv3Kj_ヒトのヒト重鎖連結領域。
配列番号29:Hv3Tj_ヒトのヒト重鎖連結領域。
配列番号30:図2Bに示されるヒト重鎖連結(J)領域配列のhVhjFW Consコンセンサス配列。
配列番号31:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7Vkアミノ酸配列。
配列番号32:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7aVkアミノ酸配列。
配列番号33:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7bVkアミノ酸配列。
配列番号34:ヒト化7F3 V領域重鎖h7Vhアミノ酸配列。
配列番号35:ヒト化7F3 V領域重鎖h7aVhアミノ酸配列。
配列番号36:ヒト化7F3 V領域重鎖h7bVhアミノ酸配列。
配列番号37:ヒトC5aR。
配列番号38:ヒトC5aRの第2細胞外ループにあるエピトープ。
配列番号39:図10に示される本発明のヒト化7F3重鎖可変領域h7F3VhConsコンセンサス配列。
配列番号40:ヒト軽鎖定常領域hCκ−R。
配列番号41:ヒト軽鎖定常領域hCκ。
配列番号42:ヒト重鎖定常領域hCγ4。
配列番号43:ヒト重鎖定常領域hCγ4PE。
配列番号44:ヒト重鎖定常領域hCγ1。
配列番号45:ヒト重鎖定常領域hCγ4P。
配列番号46:ヒト化RNOK203VL配列。
配列番号47:KV2F−HUMAN由来VLCD18−Q配列。
配列番号48:図6に示される本発明のヒト化7F3軽鎖可変領域のh7F3 VkConsコンセンサス配列。
配列番号49:hVhFW Consコンセンサスヒト重鎖VJフレームワーク配列
配列番号50:ヒトSGI−VH配列。
配列番号51:ヒト生殖系列HG3配列。
配列番号52:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7Vkアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号53:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7aVkアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号54:ヒト化7F3 V領域軽鎖h7bVkアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号55:ヒト化7F3 V領域重鎖h7Vhアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号56:ヒト化7F3 V領域重鎖h7aVhアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号57:ヒト化7F3 V領域重鎖h7bVhアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列。
配列番号58:ヒトC5aRの第2細胞外ループの断片。
配列番号59:ヒトC5aRのN末端細胞外ドメインの断片。
Claims (54)
- i)配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号48の1つまたは複数と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む免疫グロブリン軽鎖、ならびに/または
ii)配列番号34、配列番号35、配列番号36および配列番号39の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む免疫グロブリン重鎖
を含み、ヒトC5aRに結合する、実質的に精製された、かつ/または組換えのヒト化抗体。 - 免疫グロブリン重鎖が、配列番号34、配列番号35および配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1に記載のヒト化抗体。
- 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号31、配列番号32および配列番号33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1または請求項2に記載のヒト化抗体。
- 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号31として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号36として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号31として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号34として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号32として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号34として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号34として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号31として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号35として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号32として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号35として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号35として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号32として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号36として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- 免疫グロブリン軽鎖が、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号36として示されるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- i)免疫グロブリン軽鎖が、配列番号40および配列番号41の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含み、
ii)免疫グロブリン重鎖が、配列番号42、配列番号43、配列番号44および配列番号45の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む定常領域を含む、
請求項1から12のいずれか一項に記載のヒト化抗体。 - 2本の重鎖および2本の軽鎖からなる4ポリペプチド鎖構造、単鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディまたはテトラボディである、請求項1から13のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- ヒトC5aRに結合する抗体フラグメントである、請求項1から14のいずれか一項に記載のヒト化抗体。
- 前記フラグメントが、Fabフラグメントまたは単一ドメイン抗体である、請求項15に記載のヒト化抗体。
- 配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号48の1つまたは複数と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、実質的に精製された、かつ/または組換えの免疫グロブリン軽鎖。
- 配列番号34、配列番号35、配列番号36および配列番号39の1つまたは複数と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変領域を含む、実質的に精製された、かつ/または組換えの免疫グロブリン重鎖。
- 請求項17に記載の免疫グロブリン軽鎖および/または請求項18に記載の免疫グロブリン重鎖を含み、ヒトC5aRに結合する、実質的に精製された、かつ/または組換えの抗体。
- 請求項1から16または19のいずれか一項に記載の抗体および前記抗体に直接的または間接的に結合している治療薬を含むコンジュゲート。
- 治療薬が、細胞毒、放射性同位体、免疫調節薬、抗血管新生薬、毒素、抗増殖薬、アポトーシス促進剤、化学療法剤および治療用核酸からなる群から選択される、請求項20に記載のコンジュゲート。
- 毒素が緑膿菌外毒素またはその誘導体である、請求項21に記載のコンジュゲート。
- 治療薬が、リンカーを介して抗体に間接的に結合している、請求項20から22のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
- リンカーが、4−(4’アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)、3−アセチルフェニル酸性酸(AcPac)、4−メルカプト−4−メチル−ペンタン酸(アミド)およびその誘導体からなる群から選択される、請求項23に記載のコンジュゲート。
- 請求項1から16または19のいずれか一項に記載の抗体および前記抗体に直接的または間接的に結合している検出可能な標識を含むコンジュゲート。
- 前記標識が、放射標識、蛍光標識、酵素標識および造影剤からなる群から選択される、請求項25に記載のコンジュゲート。
- 請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体もしくはその鎖、請求項17に記載の免疫グロブリン軽鎖、請求項18に記載の免疫グロブリン重鎖、ならびに/または請求項20から23、25もしくは26のいずれか一項に記載のコンジュゲートをコードする単離および/もしくは外因性ポリヌクレオチド。
- 請求項27に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
- 請求項27に記載のポリヌクレオチドおよび/または請求項28に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 請求項29に記載の細胞を含む非ヒトトランスジェニック生物。
- 請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体、請求項17に記載の免疫グロブリン軽鎖、請求項18に記載の免疫グロブリン重鎖、請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項27に記載のポリヌクレオチド、請求項28に記載のベクターおよび/または請求項29に記載の宿主細胞ならびに担体を含む組成物。
- 抗体を産生するプロセスであって、ポリヌクレオチドが発現され、抗体が産生されるように、請求項29に記載の宿主細胞を培養することを含み、宿主細胞が、請求項27に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプロセス。
- 免疫グロブリン軽鎖および免疫グロブリン重鎖が、一続きのポリヌクレオチドにある2つの別個のオープンリーディングフレームによってコードされる、請求項32に記載のプロセス。
- 宿主細胞培養物から抗体を回収することをさらに含む、請求項32または請求項33に記載のプロセス。
- ヒトC5aRとそのリガンドとの相互作用を阻害するための方法であって、細胞を、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体または請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲートに曝露することを含む方法。
- 細胞におけるヒトC5aR活性を阻害するための方法であって、細胞を、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体または請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲートに曝露することを含む方法。
- 対象において障害を治療または予防する方法であって、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体、請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項27に記載のポリヌクレオチド、請求項28に記載のベクター、請求項29に記載の宿主細胞および/または請求項31に記載の組成物を対象に投与することを含む方法。
- 障害が免疫病理学的障害である、請求項37に記載の方法。
- 免疫病理学的障害が自己免疫疾患である、請求項38に記載の方法。
- 障害が炎症性疾患である、請求項37に記載の方法。
- 炎症性疾患が急性炎症または慢性炎症である、請求項39に記載の方法。
- 免疫病理学的障害または炎症性疾患に白血球遊走および/または白血球活性化が関与する、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。
- 免疫病理学的障害または炎症性疾患に補体活性化が関与する、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。
- 対象において治療薬を炎症部位に送達するための方法であって、請求項20から24のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたはそれをコードするポリヌクレオチドを対象に投与することを含む方法。
- 遺伝物質を、C5aRを提示する細胞に導入するための方法であって、前記細胞を、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体または請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲートと接触させることを含み、抗体またはコンジュゲートが遺伝物質に結合している、またはそれと会合している方法。
- 試料中のヒトC5aRの存在または非存在を検出する方法であって、試料を、請求項1から16または19のいずれか一項に記載の抗体および/または請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲートと接触させること、ならびに試料をヒトC5aRと抗体またはコンジュゲートとの結合について分析することを含む方法。
- 対象において障害を診断するための方法であって、対象またはそれから得られた試料を、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体または請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲートと接触させること、および対象または試料をヒトC5aRと抗体またはコンジュゲートとの結合について分析することを含む方法。
- 対象から得られた組織標本または組織もしくは体液の亜分画を使用してin vitroで実施される、請求項47に記載の方法。
- 障害が免疫病理学的障害である、請求項47または請求項48に記載の方法。
- 対象において障害を治療または予防するための医薬品としての、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体、請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項27に記載のポリヌクレオチド、請求項28に記載のベクター、請求項29に記載の宿主細胞および/または請求項31に記載の組成物の使用。
- 対象において治療薬を炎症部位に送達するための医薬品を製造するための、請求項20から24のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたはそれをコードするポリヌクレオチドの使用。
- 対象において障害を治療または予防するための医薬品としての、請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体、請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項27に記載のポリヌクレオチド、請求項28に記載のベクター、請求項29に記載の宿主細胞および/または請求項31に記載の組成物の使用。
- 対象において治療薬を炎症部位に送達するための医薬品としての、請求項20から24のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたはそれをコードするポリヌクレオチドの使用。
- 請求項1から16もしくは19のいずれか一項に記載の抗体、請求項20から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項27に記載のポリヌクレオチド、請求項28に記載のベクター、請求項29に記載の宿主細胞および/または請求項31に記載の組成物を含むキット。
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