JP2011500427A - ハイブリッドヤーンで補強した構造要素を有するタイヤ - Google Patents

ハイブリッドヤーンで補強した構造要素を有するタイヤ Download PDF

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Abstract

少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素(106c)を含む少なくとも1つの構造要素を含むタイヤ(100)であり、前記少なくとも1本のハイブリッドヤーン(206)が、第一の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーン(201)および第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーン(202)から得られる複数本のフィラメントを含み、前記第一および前記第二の初期接線モジュラスが互いに異なり、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーン(201、202)のそれぞれが複数本の各個のフィラメントを含み、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーン(201、202)のそれぞれの個々のフィラメントが少なくとも部分的に互いに混ぜ合わされる。好ましくは前記タイヤ(100)は、高性能(HP)または超高性能(UHP)タイヤ、あるいはトラックレースなどのスポーツ競技会において使用するのに適したタイヤ(100)、あるいはスポーツ多目的車(SUV)に適したタイヤである。

Description

発明の分野
本発明は、ハイブリッドヤーン(hybrid yarn)で補強した構造要素を有するタイヤに関する。
より具体的には、本発明は、例えば高出力の自動車用に設計されるタイヤなどの高性能タイヤ、またはより一般的には、高い走行速度および/または極度の運転条件を伴う用途を目的とするタイヤに関する。
より詳細には、本発明は、高性能(HP)または超高性能(UHP)タイヤ、および自動車のトラックレースなどのスポーツ競技会において使用するのに適するタイヤに関する。
さらに、本発明は、高出力の自動車に特有の高性能(特に高速に関して)をステーションワゴンの快適性および収容性能の特徴と組み合わせたスポーツ多目的車(SUV)に適するタイヤに関する。
より一層詳細には、本発明は、少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素を含む少なくとも1つの構造要素を含むタイヤに関し、前記少なくとも1本のハイブリッドヤーンが第一の初期接線モジュラス(initial tangent modulus)を有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンを含み、前記第一および第二の初期接線モジュラスが互いに異なる。
さらに、本発明はまた、第一の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンと、第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンとを含み、前記第一および第二の初期接線モジュラスが互いに異なるハイブリッドヤーン、ならびにハイブリッドヤーンを得るための方法に関する。
さらに、本発明はまた、第一の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンと、第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンとを含む少なくとも1本のハイブリッドヤーンであって、前記第一および第二の初期接線モジュラスが互いに異なる少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含む、少なくとも1つの補強要素を含むゴム引き製品に関する。前記ゴム引き製品は、例えばタイヤ、タイヤの構造要素、高圧流体用のパイプ、ホース、コンベヤーなどであることができる。
発明の背景
例えば200km/時を超えるタイヤの高速走行は、その回転のせいでタイヤトレッドバンドに顕著な遠心力を生ずる。
前記遠心力は、タイヤトレッドバンドを外側に膨脹させ、半径方向にタイヤトレッドバンドのせり上がり(lifting)を引き起こす。これは「せり上がり現象」として知られている。
この現象は、タイヤの挙動に悪影響を及ぼすので、適切にできる限り制御されかつ限定されるべきである。
例えば車の電子システム(例えば、アンチブロック・ブレーキ・システム(ABS)、横滑り防止装置(Electronic Stability Program)(ESP)、4つの駆動輪へのトラクションの分配)は、昔から車輪の回転高さ(wheel rolling height)の変動との相互関係が明らかにされており、その所定の範囲に設定されるので、せり上がり現象がタイヤの重大な膨脹を起こす場合(その結果、車輪の回転高さが前記範囲から逸れる場合)、前述の車の電子システムの正しい動作はもはや保証されない。
さらに、せり上がり現象が適切に制御かつ限定されない場合、車輪の回転高さの重大かつ異なる変動がその同じ車の各タイヤで起こる可能性があり、その結果その変動がタイヤの互いに異なる動作をさせることになることがある。
さらに、せり上がり現象が原因のタイヤの変形がかなり大きい場合、複数の更なる障害が生ずる可能性がある。
例えば、クロスベルト層の半径方向のせり上がりが、特にその軸方向の縁部に一致して起こり、それによってカーカスからのベルト層の剥離を引き起こし、またトレッドバンドの一様でない摩耗、またそれとともに高速におけるその耐久性の著しい低下が起こる恐れがあり、また乗り心地に悪影響をもたらし、かつ高速におけるタイヤ騒音(noisiness)を著しく増大させるタイヤの望ましくない振動を助長する恐れがある。
せり上がり現象によって引き起こされる上記障害を少なくとも部分的に解決するために、一般には一層のベルト層が、クロスベルト層を束縛してそのせり上がりを制限するようにそのクロスベルト層の外側に半径方向に位置決めされている。一般に、前記ベルト層は、タイヤの赤道面に対してほぼ周方向に配置される低弾性率有機繊維コード、例えばナイロンコードか、または高弾性率有機繊維コード、例えば芳香族ポリアミドコードを備える。
しかしながら、当業界で知られている(例えば、下記に開示する欧州特許第335,588号参照)ように、低弾性率有機繊維コードの使用は、特に超高速においては前記せり上がり現象をうまく防ぐことができない。
一方、高弾性率有機繊維コードの使用は、タイヤ製造の間に幾つかの障害を引き起こすことがある。実際のところ、グリーンタイヤが加硫金型中に装着され、内圧が加えられる場合、その内圧によるグリーンタイヤの不可欠な膨脹が減少する。これは、前記コードの伸長抵抗が過度に大きく、したがってトレッドバンドおよびタイヤの構造体をタイヤ金型の内面に押し付けるのに必要な力を与えるようにタイヤが金型中に正しく膨張することができないためである。これは、しばしば加硫および型込め後の完成タイヤ中に欠陥を生じさせる。その結果、例えばステアリング安定性などのタイヤの高速性能と、タイヤの高速耐久性とに悪影響を及ぼす恐れがある。
上記に挙げた欠点を克服するために、幾つかの試みが当業界でなされてきた。
例えば、欧州特許第335,588号は、タイヤベルトの外側に半径方向に配置されたバンドを含み、前記バンドが、タイヤの赤道に対して0から3度でタイヤの周方向に螺旋状かつ連続的に巻かれた少なくとも1本のコードからなるプライを含む、特に高速乗用車に適したタイヤを開示している。前記プライのコードは、互いに撚り合わされた高弾性率ヤーンと低弾性率ヤーンを含むハイブリッドコードであり、このハイブリッドコードは、伸びゼロおよび2〜7%の範囲にある所定の特定の伸びの間の低弾性率域内の低弾性率と、このコードの前記所定の特定の伸びを超える高弾性率域内の高弾性率とを有する。この低弾性率および高弾性率は、伸びゼロにおける伸び曲線の接線と破断点における伸び曲線の接線の交点を通る伸び軸に直交する線の交点であるハイブリッドコードの荷重伸び曲線から得られる転移点で変化する。上記タイヤは、高速耐久性が改良され、かつ騒音が低減されると言われている。
米国特許第5,558,144号は、カーカスの外側に半径方向に配置された非金属コードのブレーカベルトと、このブレーカベルトの外側に半径方向に配置されたジョイントレスバンドベルトとを含む空気式ラジアルタイヤに関するもので、前記バンドベルトが、タイヤの赤道に対して0から3度の角度でタイヤの周方向に螺旋状かつ連続的に巻かれた少なくとも1本のハイブリッドコードから作られる。このハイブリッドコードは、上撚りをかけて撚り合わせられる(finally-twisted)低弾性率スレッドおよび高弾性率スレッドを含み、前記低弾性率スレッドは、下撚りをかけられ(first-twisted)、かつ2000kgf/mm以下の弾性率を有する少なくとも1本の低弾性率繊維を有し、また前記高弾性率スレッドは、下撚りをかけられ、かつ3000kgf/mm以上の弾性率を有する少なくとも1本の高弾性率繊維を有する。このバンドベルトプライにおいて幅5cm当たりのハイブリッドコードの本数(E)、2%伸び時のハイブリッドコードの単位kgfで表した応力(F1)、および6%伸び時のハイブリッドコードの単位kgfで表した応力(F2)は、関係式F1×E<60およびF2×E>150を満たす。上記タイヤは、タイヤ径の変化を低減し、耐久性を向上させ、全体のタイヤ性能を向上させる特徴を示すと言われる。
米国特許出願公開第2004/0265581号は、最終接線モジュラスと初期接線モジュラスの比が10を超えるハイブリッドケーブルに関する。好ましくは前記ハイブリッドケーブルは、900cN/tex未満の初期モジュラスの紡織繊維(textile)コアと、前記コア上に巻かれた1300cN/texを超える初期モジュラスの紡織繊維ラップとを含む。前記ハイブリッドケーブルを得るための方法および前記ケーブルを組み込んだタイヤに使用可能なコンポジットファブリックもまた、開示されている。さらにこのようなコンポジットファブリックをそれぞれ組み込んだタイヤおよび組込みアセンブリもまた、開示されている。上記ハイブリッドケーブルは、有利には乗用車両タイヤおよび重車両タイヤの両方に使用されると言われる。前記ハイブリッドケーブルはまた、たが状(hooping)クラウンプライがこれらのケーブルによって補強されたタイヤのクラウン補強材の高速(一般に120km/時を超す)時の耐久性の向上を可能にするとも言われる。
米国特許出願公開第2004/0221937号は、強度担持体(strength carriers)が未加硫ゴム混合物中に埋め込まれたプライを含む車両用空気タイヤのベルト帯布に関する。この強度担持体は、基本的に互いに平行に伸びている。各強度担持体は、少なくとも約25000N/mmの高弾性率を有する下撚りをかけたヤーンと、約15000N/mm以下の低弾性率を有する中撚りをかけたヤーン(a second twisted yarn)とを有するハイブリッドコードを含む。これらの下撚りおよび中撚りをかけたヤーンは、上撚りをかけて撚り合わせられる。5cmプライ幅当たりのコードのコード本数E、各ハイブリッドコードの2%伸び時の力F1、および6%伸び時の力F2は、関係式
F1×E≧約600N
F2×E>約1500N
を満たす。前記ベルト帯布を含有する車両用空気タイヤもまた、開示されている。上記ベルト帯布は、きわめて良好なタイヤの高速耐久性、これに加えてタイヤの摩耗挙動、すなわち特に約200km/時までの速度範囲における摩耗の減少、および長期耐久性の向上を確実にする。
米国特許第5,688,594号は、少なくとも2種類の様々なフィラメントからなり、少なくとも1種類(A)が低い熱収縮率を有し、また少なくとも1種類(B)がそのハイブリッドヤーンの残りのフィラメントよりも高い熱収縮率を有するハイブリッドヤーンに関する。第一の種類(A)のフィラメントが7.5%未満の最大乾熱収縮率(dry heat shrinkage maximum)を有し、また第二の種類(B)のフィラメントが10%を超える最大乾熱収縮率を有し、その最大乾熱収縮張力が非常に大きくて、その第二の種類のフィラメント部分の総収縮力が、存在する低収縮性フィラメントにけん縮加工(crimping)を受けさせるのに十分であり、また任意選択で存在する種類(C)の更なるフィラメントが、2%から200%の範囲内の最大乾熱収縮率を有し、かつ種類(B)および/または(C)のフィラメントの少なくとも一方は、融点がそのハイブリッドヤーンの低収縮成分の融点よりも少なくとも10℃、好ましくは20℃から100℃、具体的には30℃から70℃低い熱可塑性フィラメントである。このハイブリッドヤーンの生産方法、ならびに恒久的変形能力のある紡織繊維シート材料および繊維補強された成形品の生産用にこのハイブリッドヤーンを使用することについてもまた記載されている。上記ハイブリッドヤーンをタイヤに使用することについては述べられていない。
発明の概要
本出願人は、例えば特に高速走行中のステアリング安定性、操縦性、乗り心地、ころがり抵抗などの良好な総体的タイヤ性能と、良好なタイヤ寿命との両方を示すタイヤ、特に高性能タイヤを実現するという問題に直面している。
本出願人は、上記米国特許第5,688,594号中に開示されているものと類似のハイブリッドヤーンが、タイヤ、特に高性能タイヤの場合に有利に使用することができることに気付いた。
より具体的には、本出願人は、前記ハイブリッドヤーンの使用が、良好な総体的タイヤ性能を示すタイヤ、特に高性能タイヤを得ることを可能にすることに気付いた。
さらに一層具体的には、本出願人は、タイヤ寸法(例えば、幅、径)の顕著な変動、ならびにタイヤのタイヤフットプリント面積の顕著な変動を引き起こし、結果として、特に高速走行中の、例えばステアリング安定性、操縦性、乗り心地、ころがり抵抗などのタイヤ性能および良好なタイヤ寿命の両方の悪化を伴う恐れのある上記せり上がり現象を、前記ハイブリッドヤーンの使用によって防止できることに気付いた。
本出願人は、上記で列挙した特性が、第一の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンと、第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンとを含む少なくとも1本のハイブリッドヤーンであって、前記第一および前記第二の初期接線モジュラスが互いに異なる少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素を含む少なくとも1つの構造要素を有するタイヤを提供することによって達成することができることを見出した。
さらに、本出願人は、前記ハイブリッドヤーンの使用が、完成タイヤ(すなわち型込め、加硫後のタイヤ)の全体的性能にプラス効果を与える、タイヤ製造工程中のグリーンタイヤの正確な膨張を得ることを可能にすることを見出した。
さらに本出願人は、例えば異なる転移点などの異なる特性を賦与されたハイブリッドヤーンを得ることが可能であり、こうして前記異なる特性が、それらハイブリッドヤーンを様々な種類のタイヤに、または前記タイヤの様々な構造要素に使用することを可能にすることを見出した。
第一の態様によれば、本発明は、少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素を含む少なくとも1つの構造要素を含むタイヤに関し、前記少なくとも1本のハイブリッドヤーンは、第一の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンと、第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンとから得られる複数本のフィラメントを含み、前記第一および前記第二の初期接線モジュラスは互いに異なり、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンのそれぞれは、各個のフィラメントを複数本含み、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンのそれぞれの個々のフィラメントは、少なくとも部分的に互いに混ざり合っている。
前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンのそれぞれの個々のフィラメントが、少なくとも部分的に互いに混ざり合っているということは、任意選択でかけられる場合がある更なる処理の間、およびそれを含むゴム引き製品の製造工程の間(特にタイヤ製造工程の間)の両方で、その完全な状態を維持する(maintain its integrity)ことができるハイブリッドヤーンを得ることを可能にする。
一つの好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンは、ASTM規格D2259−02(2004)に従って177℃において測定した際に約10%以下、好ましくは約5%以下の乾熱収縮率を有する。
前記乾熱収縮率を有するマルチフィラメントヤーンの使用は、タイヤ製造工程の間、およびタイヤ使用、特に高速におけるタイヤ走行の間の両方でより安定なタイヤ構造を得ることを可能にする。
更なる実施形態によれば、前記少なくとも1つの構造要素は、少なくとも1本の撚られたハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素を含む。
更なる実施形態によれば、前記少なくとも1つの構造要素は、少なくとも1本のハイブリッドコードを含む少なくとも1つの補強要素を含み、前記少なくとも1本のハイブリッドコードは、少なくとも1本のハイブリッドヤーンと、例えばナイロン、レーヨン、ポリエチレンテレフタレートなどの紡織繊維、好ましくはナイロン、または金属、好ましくはスチールから作られる少なくとも1つの追加の補強要素とを含み、前記少なくとも1本のハイブリッドヤーンおよび前記少なくとも1つの追加の補強要素が撚り合わされる。
更なる実施形態によれば、前記少なくとも1つの構造要素は、撚り合わされた少なくとも2本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素を含む。
更なる実施形態によれば、前記少なくとも1つの構造要素は、少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素と、例えばナイロン、レーヨン、ポリエチレンテレフタレートなどの紡織繊維、好ましくはナイロンから作られる少なくとも1つの追加の補強要素とを含む。更なる実施形態によれば、前記少なくとも1つの構造要素は、少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素と、金属、好ましくはスチール、より好ましくは少なくとも1本のスチールコードから作られる少なくとも1つの追加の補強要素とを含む。
前記それら補強要素は、異なる並べ方に従って構造要素の横断方向に沿って配置することができる。例えば、前記それら補強要素は、本発明による1つの補強要素(すなわちハイブリッドヤーン)、金属または紡織繊維から作られる1つの追加の補強要素などの交互配列、すなわち1:1の配列で配置することができる。あるいは、前記交互配列は、本発明による2つの補強要素(すなわち2本のハイブリッドヤーン)、金属または紡織繊維から作られる1つの追加の補強要素、すなわち2:1の配列であることもできる。
一実施形態によれば、タイヤは、
それぞれのビード構造部で終わる対向する側方の縁部を有するほぼトロイダル形状のカーカス構造部と、
前記カーカス構造部に関して半径方向の外側の位置に貼り付けられ、
各層中で互いに平行であり、かつ隣接層に対して交差している複数本の補強要素を含み、前記補強要素が周方向に対して所定の角度を形成するように向きを定められている少なくとも2層のベルト層、および
タイヤのほぼ周方向に向きを定められたターンを形成するように螺旋状に巻かれている複数本の補強要素を含む、前記少なくとも2層のベルト層に対して半径方向の外側の位置に貼り付けられた少なくとも1層の追加のベルト層、
を含むベルト構造部と、
前記ベルト構造部に対して半径方向の外側の位置に貼り付けられたトレッドバンドと、
前記カーカス構造部に対して対向する側部上に左右に貼り付けられた一対のサイドウォールと
を含む。
一つの好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの構造要素が、前記少なくとも1層の追加のベルト層である。前記少なくとも1層の追加のベルト層は、通常「0度ベルト」として知られている。
更なる態様によれば、本発明はまた、第一の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンと、第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンとから得られる複数本のフィラメントを含むハイブリッドヤーンに関し、前記第一および前記第二の初期接線モジュラスは互いに異なり、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンのそれぞれは、各個のフィラメントを複数本含み、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンのそれぞれの個々のフィラメントは、少なくとも部分的に互いに混ざり合っており、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンは、ASTM規格D2259−02(2004)に従って177℃において測定した際に約10%以下、好ましくは約5%以下の乾熱収縮率を有する。
更なる態様によれば、本発明はまた、少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素を含むゴム引き製品に関する。
一つの好ましい実施形態によれば、前記ゴム引き製品は、ゴム引きされた補強層である。前記ゴム引きされた補強層は、タイヤ製造工程において特に有用である。
本発明は、上記態様の少なくとも1つにおいて、下記に述べる好ましい特徴の1つまたは複数を示すことができる。
一つの好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンは、約50本から約2000本、好ましくは約100本から約1000本の複数本の各個のフィラメントを含む。
一つの好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンの個々のフィラメントは、約5μmから約100μm、好ましくは約10μmから約50μmの直径を有する。
一つの好ましい実施形態によれば、前記ハイブリッドヤーンは、約0.2mmから約1.5mm、好ましくは約0.3mmから約1.0mmの直径を有する。
一つの好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンは、約200dtexから約4000dtex、好ましくは約400dtexから約2500dtexの線密度(linear density)を有する。
dtexで表される前記線密度は、10000mのヤーンのグラムで表した重量を意味する。
一つの好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンは、より低い初期接線モジュラスを有し、また前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンは、より高い初期接線モジュラスを有する。
更なる好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンは、約200cN/texから約1500cN/tex、好ましくは約300cN/texから約1200cN/texの初期接線モジュラスを有する。
更なる好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンは、約600cN/texから約8000cN/tex、好ましくは約800cN/texから約5000cN/texの初期接線モジュラスを有する。
一つの好ましい実施形態によれば、前記ハイブリッドヤーンは、約0.5%から約7%、好ましくは約1.0%から約5%の転移点を有する。
前記転移点は、タイヤ製造工程中のタイヤ構造要素、特にタイヤベルト構造部の望ましい膨張を得ること、および上記で述べた「せり上がり現象」、特にタイヤが高速で走行している時のそれを防ぐことを可能にすることができる。
本明細書および別添の特許請求の範囲の趣旨では、用語「初期接線モジュラス」は、伸びゼロに対応する、前記ハイブリッドヤーンの応力/伸び線図の接線の勾配を意味する。
本明細書および別添の特許請求の範囲の趣旨では、用語「応力」は単位線伸び当たり(per unit linear elongation)の力(cN/tex)として表される。
本明細書および別添の特許請求の範囲の趣旨では、用語「転移点」は、前記ハイブリッドヤーンの荷重/伸び線図の伸びゼロに対応する接線と、前記ハイブリッドヤーンの荷重/伸び線図のその破断に対応する伸びの接線との交点を意味する。
一つの好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンは、約200℃以上の温度で溶融する。
約200℃以上の温度で溶融するマルチフィラメントヤーンの使用は、ハイブリッドヤーンのあり得る溶融、特に前記ハイブリッドヤーンをタイヤの製造工程で使用する場合の溶融を避けることを可能にすることができる。
一つの好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンは、例えば脂肪族ポリアミド繊維(すなわちナイロン繊維)、低い初期接線モジュラスのポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN))、低い初期接線モジュラスのセルロース系繊維(例えばレーヨン繊維)、またはこれらの混合物から選択することができる。脂肪族ポリアミド繊維(すなわちナイロン繊維)が、特に好ましい。
一つの好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンは、例えば芳香族ポリアミド繊維(すなわちアラミド繊維)、高い初期接線モジュラスのポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN))、ポリケトン繊維、ポリビニルアルコール繊維、高い初期接線モジュラスのセルロース系繊維(例えばレーヨン繊維)、ガラス繊維、炭素繊維、またはこれらの混合物から選択することができる。芳香族ポリアミド繊維(すなわちアラミド繊維)が、特に好ましい。
一つの好ましい実施形態によれば、前記ハイブリッドヤーンは撚られていないかまたは撚られており、好ましくは撚られている。好ましくはハイブリッドヤーンの撚り数は、約50tpm(1メートル当たりのターン数)から約600tpm、より好ましくは約100tpmから約300tpmである。
ハイブリッドヤーンの撚りは、その更なる処理(例えば、ゴム接着を向上させるための処理、ゴム引き工程など)の間に起こる可能性のある問題を避けること、またその最終用途に合わせてその転移点を調整することを可能にすることができる。
一つの好ましい実施形態によれば、前記ハイブリッドヤーンは、そのハイブリッドヤーンの総重量を基準にして計算される、
約10重量%から約90重量%、好ましくは約30重量%から約70重量%の量の第一のマルチフィラメントヤーン、および
約10重量%から約90重量%、好ましくは約30重量%から約70重量%の量の第二のマルチフィラメントヤーン
を含む。前記ハイブリッドヤーンは、周知の技術により架橋可能エラストマー組成物(crosslinkable elastomeric composition)中に埋め込むことができる。通常は前記エラストマー組成物は、エラストマー系ポリマーと、タイヤ産業で使用される、例えば充填剤(例えば、カーボンブラック、シリカ)、加硫剤(例えばイオウ)、活性剤、促進剤、可塑剤などの他の添加剤とを含む。有利に使用することができるエラストマー系ポリマーの例は、天然ゴム(NR)、あるいはエポキシ化天然ゴム(ENR)、あるいは例えばポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−ブタジエン(SBR)、ニトリル−ブタジエン(NBR)、ポリクロロプレン(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(XIIR)、エチレン/プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン−プロピレン/非共役ジエン(例えば、ノルボルネン、シクロオクタジエン、またはジシクロペンタジエン)のターポリマー(EPDM)などの、ブタジエンの、イソプレンの、または2−クロロブタジエンのホモポリマーおよびコポリマー、あるいはこれらのブレンドである。当業者は、得ることを望んでいる最終製品の特徴に応じてどのエラストマー系ポリマーを使用すべきか、またどの添加剤を使用すべきかを決めることができるはずである。
任意選択で、前記ハイブリッドヤーンとエラストマー組成物の接着を向上させるために、前記ハイブリッドヤーンを、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂とゴムラテックスの混合物(この混合物は、普通は語句「レゾルシノール−ホルムアルデヒドラテックスRFL」によって表示される)を含有する溶液中に浸漬し、続いてそれらを乾燥することによって表面処理することができる。使用されるラテックスは、例えばビニルピリジン/スチレン−ブタジエン(VP/SBR)、スチレン−ブタジエン(SBR)、天然ゴム(NR)のラテックス、カルボキシル化および水素化アクリロニトリル−ブタジエン(X−HNBR)、水素化アクリロニトリル(HNBR)、アクリロニトリル(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、またはこれらの混合物から選択することができる。
好ましくは、本発明によるタイヤは、「HP」(高性能)または「UHP」(超高性能)タイヤ、すなわち少なくとも210km/時の、好ましくは240km/時を超える、さらに一層好ましくは270km/時を超える最高速度を持続することができるタイヤに適している。前記タイヤの例は、等級「H」、「V」、「W」、「Y」、「Z」、または「ZR」に属するものである。
さらに、本発明によるタイヤは、高出力の自動車に特有の高性能(特に高速に関して)を有するステーションワゴンの快適性および収容性能の特徴を兼ね備えるスポーツ多目的車(SUV)に適している。
更なる態様によれば、本発明はまた、ハイブリッドヤーンの製造方法に関し、この方法は、
第一の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンを、得られるハイブリッドヤーンの巻取速度に対して約1.0%から約15%、好ましくは約1.5%から約7%速い搬送速度でエアジェット装置に供給するステップ、
第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンを、得られるハイブリッドヤーンの巻取速度に対して約1.0%から約20%、好ましくは約5.0%から約10%速い搬送速度でエアジェット装置に供給するステップ、
前記エアジェット装置上に、約3.0バールから約10バール、好ましくは約3.5バールから約8.0バールの空気圧を加えるステップ、および
こうして得られたハイブリッドヤーンを、約20m/分から約250m/分、好ましくは約50m/分から約120m/分の巻取速度で回収するステップ
を含む。
一つの好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンの搬送速度は、前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンの搬送速度よりも遅い。
更なる好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンの過剰供給率(over delivery)(OD%)は、前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンの過剰供給率(OD%)よりも低い。
本明細書および別添の特許請求の範囲の趣旨では、過剰供給率(OD%)は、下記の式によって表される。
(OD%)=[(CS−TS)/TS]×100
ただし、
CSは、エアジェット装置への前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンまたは前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンの搬送速度であり、
TSは、エアジェット装置からの前記ハイブリッドヤーンの巻取速度である。
前記エアジェット装置は、例えばエアジェットテクスチャー加工装置、エアタングリングジェット装置、インターレースエアジェット装置などの当業界で知られている装置から選択することができる。
前記第一と第二のマルチフィラメントヤーンの搬送速度の差、および/または前記第一と第二のマルチフィラメントヤーンの過剰供給率の差、および/または前記エアジェット装置に加えられる、異なる空気圧が、例えば異なる転移点などの異なる特性を賦与されたハイブリッドヤーンを得ることを可能にすることができ、前記特性はそれらの最終用途によって決まる。
この事実は、例えばタイヤ設計者にとって特に役に立ち、設計者はそれにより様々なニーズを満たすことができる。すなわち設計者は、その特定の最終用途(例えば、タイヤの異なる構造要素)に応じて特定荷重において所望の伸びを有するハイブリッドヤーンを得ることができる。
本発明の特徴および利点は、単に非限定的な例として設けられるその幾つかの例示的実施形態についての下記の詳細な説明、すなわち添付図面を参照することになる説明によって明らかにされるはずである。
図面の簡単な説明
本発明の実施形態によるタイヤの断面図を示す。 2つの補強要素、すなわち本発明の一実施形態による或るハイブリッドヤーンと、或る非ハイブリッドヤーン(比較)の荷重/伸び線図を示す。 本発明による製造工程の装置の概略図を示す。 図3のエアジェット装置の拡大した概略図を示す。 2つの補強要素の断面、すなわち本発明による或るハイブリッドヤーンと、従来技術による或るハイブリッドコード(比較)を示す。 3つの異なるタイヤ、すなわちタイヤ1(比較)、本発明の一実施形態によるタイヤ2、本発明の更なる実施形態によるタイヤ3の踏面の面積を示す。
好ましい実施形態の詳細な説明
図1に関して下記の定義を与える。
「赤道面」(EP)とは、タイヤ回転軸に対して垂直をなし、かつタイヤの軸方向中心線を含む平面である。
「アスペクト比(aspect ratio)」とは、断面高さ(H)、すなわちその赤道面における公称直径(RW)とタイヤ外径との間の半径方向距離を、タイヤの断面幅(C)、すなわち両サイドウォールの外面間の、タイヤ回転軸に平行な最大直線距離で割った比である(上記寸法はETRTO規格(2006)、4〜5ページにより測定される)。
タイヤ(100)は、少なくとも1層のカーカスプライ(101)を含み、その対向する側方の縁部が、少なくとも1つのビードコア(102)および少なくとも1つのビードフィラー(104)を含むそれぞれのビード構造部(103)につながっている。ここでカーカスプライ(101)とビードコア(102)のつながりは、カーカスプライ(101)の対向する側方の縁部をビードコア(102)の周りで折り返して、図1に示すように、いわゆるカーカスターンアップ(101a)を形成することによって達成される。
あるいは、通常のビードコア(102)を、同心コイル状に配列されたゴム引きワイヤから形成される少なくとも1つの環状インサートと取り替えることもできる(図1には表示しない)(例えば、欧州特許第928,680号または第928,702号参照)。この場合、カーカスプライ(101)は前記環状インサートの周りで折り返されず、連結は第一カーカスプライの外側に貼り付けられる第二カーカスプライ(図1には表示しない)によって与えられる。
一般にカーカスプライ(101)は、互いに平行に配列され、かつ架橋エラストマー組成物(crosslinked elastomeric composition)によって少なくとも部分的に被覆された複数本の補強要素(以後、「補強コード」とも呼ぶ)を含む。これらの補強コードは、紡織繊維、例えばレーヨン、ナイロン、またはポリエチレンテレフタレートか、あるいは撚り合わせたスチールワイヤから通常は作られる。前記スチールワイヤは、合金(例えば、銅/亜鉛、亜鉛/マンガン、亜鉛/モリブデン/コバルト合金など)で被覆される。
カーカスプライ(101)は、通常はラジアル型のものであり、すなわち周方向に対してほぼ直角をなす方向に配列した補強コードが組み込まれる。
ビードコア(102)は、ビード構造部(103)中に封入され、タイヤがそれにより車輪のリム形成部分に係合する、タイヤ(100)の内側周縁(inner circumferential edge)に沿って輪郭を決められる。各カーカスターンアップ(101a)によって画定される空間は、ビードフィラー(104)およびビードコア(102)を収容する。
ベルト構造部(106)が、カーカスプライ(101)に関して半径方向の外側位置に貼り付けられる。図1の特定の実施形態では、ベルト構造部(106)は、
各層中で互いに平行、かつ隣接層に対して交差しており、周方向に対して所定の角度を形成するように向きを定められている、複数本の補強コードを含む2層のベルト層(106a、106b)、および
タイヤのほぼ周方向に向きを定められたターンを形成するように螺旋状に巻かれた複数本の補強コードを含む、前記2層のベルト層(106a、106b)に対して半径方向の外側位置に貼り付けられた1層の追加のベルト層(106c)
を含む。
通常は、前記2層のベルト層(106a、106b)の補強コードは、金属で作られる(すなわち金属コードである)。上記で述べたように前記補強コードは、それぞれのベルト層(106a、106b)中で互いに平行、かつ隣接ベルト層に関して交差しており、タイヤ(100)の赤道面(EP)に対して約10度から約45度、好ましくは約12度から約40度の角度で、好ましくは対称な形に傾斜しており、また架橋エラストマー組成物によって被覆されている。
好ましくは、各ベルト層(106a、106b)中の前記補強コードの打ち込み本数(end count)は、約30本/dmから約160本/dm、好ましくは約50本/dmから約100本/dmである。
好ましくは、前記補強コードは、各ベルト層(106a、106b)の横断方向に沿って同じ打ち込み本数を有することができる。あるいは、補強コードは、各ベルト層(106a、106b)の横断方向に沿って可変打ち込み本数を有することもできる。例えば打ち込み本数は、各ベルト層(106a、106b)の外側縁部近傍では、各ベルト層(106a、106b)の中央帯域より多くてもよい。
上記ですでに述べたように、追加のベルト層(106c)は、「0度ベルト」として一般に知られている。好ましくは前記「0度ベルト」の補強コードは、前記タイヤ(100)の赤道面(EP)に関して0度から約5度の角度で配列される。
好ましくは、前記「0度ベルト」(106c)の補強コードは、本発明によるハイブリッドヤーンで作られる。
好ましくは、前記「0度ベルト」(106c)の断面内の前記ハイブリッドヤーンの打ち込み本数は、約50本/dmから約150本/dm、好ましくは約70本/dmから約120本/dmである。好ましくは、前記ハイブリッドヤーンは、「0度ベルト」(106c)の横断方向に沿って同じ打ち込み本数を有することができる。あるいは、ハイブリッドヤーンは、「0度ベルト」(106c)の横断方向に沿って可変打ち込み本数を有することもできる。例えば打ち込み本数は、「0度ベルト」(106c)の外側縁部近傍では、前記「0度ベルト」(106c)の中央帯域より多くてもよい。
2層以上の「0度ベルト」が、タイヤ(100)中に存在してもよい(図1には表示しない)。
一つの好ましい実施形態では、前記「0度ベルト」(106c)の補強コードは、撚ったハイブリッドヤーンで作られる。
あるいは、前記「0度ベルト」(106c)の補強コードはハイブリッドコードであり、前記ハイブリッドコードは、少なくとも1本のハイブリッドヤーンと、例えばナイロン、レーヨン、ポリエチレンテレフタレートなどの紡織繊維、好ましくはナイロン、あるいは金属、より好ましくはスチールで作られる少なくとも1つの補強要素とから作られ、前記少なくとも1本のハイブリッドヤーンおよび少なくとも1つの追加の補強要素は撚り合わされる。
あるいは、前記「0度ベルト」(106c)の補強コードは、撚り合わされた2本のハイブリッドヤーンから作られる。
あるいは、前記「0度ベルト」(106c)の補強コードは、ハイブリッドヤーンから作られた少なくとも1本の補強コードと、例えばナイロン、レーヨン、ポリエチレンテレフタレートなどの紡織繊維、好ましくはナイロンから作られた少なくとも1本の補強コードとを含む。
あるいは、前記「0度ベルト」(106c)の補強コードは、ハイブリッドヤーンから作られた少なくとも1本の補強コードと、金属、好ましくはスチール、より好ましくは少なくとも1本のスチールコードから作られた少なくとも1本の補強コードとを含む。
スチールコードが存在する場合、好ましくは、前記スチールコードは、合金(例えば、銅/亜鉛、亜鉛/マンガン、亜鉛/モリブデン/コバルト合金など)で被覆されたスチールワイヤから作られる。
前記それら補強コードは、「0度ベルト」(106c)の横断方向に沿って異なる配列により配置することができる。例えば前記補強コードは、本発明による1本の補強コード(すなわちハイブリッドヤーン)および金属または紡織繊維から作られる1本の追加の補強コードなどの交互配列、すなわち1:1の配列で配置することができる。あるいは、前記交互配列は、本発明による2本の補強コード(すなわち2本のハイブリッドヤーン)および金属または紡織繊維から作られる1本の補強コード、すなわち2:1の配列であることもできる。
前記「0度ベルト」(106c)は、前記2層のベルト層(106a、106b)の周りに少なくとも1本のハイブリッドヤーンを螺旋状に巻くことによって得ることができる。
あるいは、前記「0度ベルト」(106c)は、前記2層のベルト層(106a、106b)の周りに少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含むゴム引きした補強層を螺旋状に巻くことによって得ることもできる。
トレッドバンド(109)は、前記ベルト構造部(106)に関して半径方向の外側位置に貼り付けられる。またサイドウォール(108)が、前記カーカスプライ(101)上に外側から貼り付けられ、このサイドウォールは、それぞれのビード構造部(103)からトレッドバンド(109)の縁部まで軸方向の外側位置に延在する。
トレッドアンダーレイヤ(113)を、前記ベルト構造部(106)と前記トレッドバンド(109)の間に配置することができる。図1の特定の実施形態では、前記トレッドアンダーレイヤ(113)は、均等な厚さを有する。あるいは、前記トレッドアンダーレイヤ(113)は、横断方向で可変厚さを有することもできる。例えばその厚さは、その外側縁部の近傍では中央帯域より厚くてもよい。
前記トレッドアンダーレイヤは、通常は前記ベルト構造(106)の展開面にほぼ一致する面全体にわたって延在する。あるいは、前記トレッドアンダーレイヤは、前記ベルト構造(106)の展開部の少なくとも一部に沿ってのみ、例えば前記ベルト構造(106)の対向する側部に延在する。
エラストマー組成物から作られ、一般に「ミニサイドウォール」として知られるストリップが、任意選択でサイドウォール(108)とトレッドバンド(109)の間の接続帯域中に存在してもよい(図1には表示しない)。このミニサイドウォールは、一般にはトレッドバンドとの共押出(co-extrusion)によって得られ、トレッドバンド(109)とサイドウォール(108)の間の機械的相互作用に関する向上を可能にする。あるいは、サイドウォール(108)の先端部分が、トレッドバンド(109)の側方縁部を直接覆う。
タイヤサイドウォール(108)の剛性は、タイヤビード構造部(103)に、「フリッパー」として一般に知られる補強層(図1には表示しない)を施すことによって向上させることができる。フリッパーは、それぞれのビードコア(102)およびビードフィラー(103)を少なくとも部分的に包むように、それらの周りに巻き付けられる補強層であり、前記補強層は、カーカスプライ(101)と前記ビード構造部との間に配置される。フリッパーは、一般には前記カーカスプライ(101)および前記ビード構造部(103)に接している。
フリッパーは、一般には架橋エラストマー組成物中に埋め込まれた複数本の補強コードを含み、前記補強コードは、一般には紡織繊維(例えばアラミドまたはレーヨン)または金属(例えばスチールコード)から作られる。
タイヤビード構造部(103)は、一般に「チェーファ(chafer)」(図1には表示しない)の用語で知られ、ビード構造部(103)の剛性を増大させる機能を有する更なる補強層を含むことができる。
通常は、チェーファは、架橋エラストマー組成物中に埋め込まれ、一般には紡織繊維(例えばアラミドまたはレーヨン)または金属(例えばスチールコード)から作られる複数本の補強コードを含む。
通常は、チェーファは、タイヤビード構造部(103)および/またはサイドウォール(108)の内側の複数の部分に配置することができる。好ましくはチェーファは、フリッパーとカーカスプライ(101)の間に配置することができる。あるいは、チェーファを、フリッパーの外側の脚の部分に一致させて配置することもできる。あるいは、チェーファを、カーカスプライ(101)に関して軸方向外側の位置に配置し、こうしてフリッパーの外側の脚の部分に近接して延在させることもできる。あるいは、チェーファを、カーカスプライ(101)に関して軸方向内側の位置に配置し、こうしてフリッパーの内側の脚の部分に近接して延在させることもできる。
タイヤが2層のカーカスプライを備える場合、チェーファを前記カーカスプライ間に配置することができる。好ましくは、チェーファは、これらカーカスプライ間にフリッパーの内側の脚の部分に近接して配置される。あるいは、チェーファを、これらカーカスプライ間にフリッパーの外側の脚の部分に近接して配置することもできる。
あるいは、チェーファを、カーカスプライに関して軸方向外側の位置に配置し、こうしてフリッパーの外側の脚の部分に近接して延在させることもできる。あるいは、チェーファを、カーカスプライに関して軸方向内側の位置に配置し、こうしてフリッパーの内側の脚の部分に近接して延在させることもできる。
通常は、チェーファは、ビードコア(102)の半径方向の外側部分に一致させて始まり、ビードフィラー(104)の周囲の輪郭に追随させ、タイヤサイドウォール(108)に一致させて終わる。あるいは、チェーファを、ベルト構造(106)の端部までタイヤサイドウォール(108)に沿って延在させることもできる。
チューブレスタイヤの場合にはまた、一般にライナーとして知られ、タイヤのインフレーションエアにとって必要な不透過性を与えるゴム層(112)を、カーカスプライ(101)に対して内側の位置に設けることもできる。
好ましくは、本発明によるタイヤ(100)は、0.65以下、好ましくは0.45以下、さらに一層好ましくは0.35以下のアスペクト比(H/C)を有する。これら低アスペクト比の値は、有利には「HP」および「UHP」タイヤに使用される。
本発明によるタイヤの生産工程は、当業界で知られている技術に従って、また当業界で知られている装置を用いて行うことができ、前記工程にはグリーンタイヤの製造、続いてそのグリーンタイヤの型込めおよび加硫が含まれる。
本明細書は、本発明によるハイブリッドヤーンをタイヤの「0度ベルト」に補強コードとして使用することについて特段の言及がなされている。しかしながら様々なタイヤ構造要素において前記ハイブリッドヤーンを補強要素として(もしかすると更なるヤーンまたはコードと組み合わせて)使用することがあり得ることも意図している。
図3は、本発明による製造工程の装置の概略図を示す。
装置(200)は、エアジェット装置(203)および複数のフィードローラー(204)を含む。
複数本の個々の連続フィラメントを含む第一のマルチフィラメントヤーン(201)および複数本の個々の連続フィラメントを含む第二のマルチフィラメントヤーン(202)を、それぞれリール(201a)およびリール(202a)から巻き出し、フィードローラー(204)を介してエアジェット装置(203)に供給する。
前記エアジェット装置(203)は、前記第一のマルチフィラメントヤーン(201)の個々の連続フィラメントを前記第二のマルチフィラメントヤーン(202)の個々の連続フィラメントと少なくとも部分的に混ぜてハイブリッドヤーン(206)を得ることを可能にする。エアジェット装置(203)からの出口において、その得られたハイブリッドヤーン(206)を、フィードローラー(204)を通過させ、続いてリール(206a)上に巻き取る。
好ましくは、前記第一のマルチフィラメントヤーン(201)の搬送速度は、ハイブリッドヤーン(206)の巻取速度に対して、それよりも約1.0%から約15%大きく、より好ましくはそれよりも約1.5%から約7.0%大きい。
好ましくは、前記第二のマルチフィラメントヤーン(202)の搬送速度は、ハイブリッドヤーン(206)の巻取速度に対して、それよりも約1.0%から約20%大きく、より好ましくはそれよりも約5.0%から約10%大きい。
好ましくは、前記第一のマルチフィラメントヤーン(201)の搬送速度は、前記第二のマルチフィラメントヤーン(202)の搬送速度よりも小さい。
好ましくは、前記第一のマルチフィラメントヤーン(201)の過剰供給率(OD%)は、前記第二のマルチフィラメントヤーン(202)の過剰供給率(OD%)よりも低い。
好ましくは、前記エアジェット装置(203)上には、約3.0バールから約10バール、より好ましくは約3.5バールから約8.0バールの空気圧が気口(air opening)(図3には表示しない)を介して加えられる。
好ましくは、前記エアジェット装置(203)から得られるハイブリッドヤーン(206)の巻取速度は、約20m/分から約250m/分、より好ましくは約50m/分から約120m/分である。
図4は、気口(209)を有する、図3のエアジェット装置(203)の拡大した概略図を示す(同じ参照番号は、図3中でさきに開示したものと同じ意味を有する)。
具体的には、図4は、得られたハイブリッドヤーン(206)のループ(206b)およびほぼ真直ぐな部分(206c)を示す。
本出願人は、低い方の搬送速度および低い方の過剰供給率(OD%)を有する第一のマルチフィラメントヤーン(201)が、ほぼ真直ぐな部分(206c)を主に形成し、一方、高い方の搬送速度および高い方の過剰供給率(OD%)を有する第二のマルチフィラメントヤーン(202)が、ループ(206b)を主に形成することに気付いた。さらに本出願人はまた、さきに述べたように、搬送速度および/または過剰供給率(OD%)および/または前記エアジェット装置(203)上への空気圧を変えることによって得ることができる、異なる量および形状のループ(206b)が、その得られるハイブリッドヤーン(206)の異なる転移点に対応することに気付いた。
図5は、2つの補強要素の断面、すなわち本発明による或るハイブリッドヤーン(206)および従来技術による或るハイブリッドコード(306)を示す。
具体的には、本発明によるハイブリッドヤーン(206)は、第二のマルチフィラメントヤーン(202)の個々の連続フィラメント(202a)と部分的に混ざった、第一のマルチフィラメントヤーン(201)の個々の連続フィラメント(201a)を含む。
従来技術によるハイブリッドコード(306a)は、第二のマルチフィラメントヤーン(202)と撚り合わされた第一のマルチフィラメントヤーン(201)を含む。
本発明を、複数の具体例としての実施形態によって下記にさらに例示することにする。これらはあくまで例示的な目的で、本発明を決して限定せずに提供される。
実施例1
下記の2つの補強要素を製造した。
補強要素A(ハイブリッドヤーン):AR/NY 1670/1400(130tpm)、
補強要素B(非ハイブリッドヤーン):NY 1400/1(150tpm)、
ただし、
補強要素Aは、本発明による実施形態を代表し、1本のアラミドマルチフィラメントヤーン(AR)および1本のナイロンマルチフィラメントヤーン(NY)から作られたハイブリッドヤーンである。1670は、アラミドマルチフィラメントヤーンの単位dTexの値であり、また1400は、ナイロンマルチフィラメントヤーンの単位dTexの値である。130tpm(メートル当たりの捩り(torsion per meter))は、ハイブリッドヤーンの撚り数を表す。
補強要素Bは、比較の補強要素であり、1本のナイロンマルチフィラメントヤーン(NY)から作られる。1400は、ナイロンマルチフィラメントヤーンの単位dTexの値である。150tpm(メートル当たりの捩り)は、ナイロンマルチフィラメントヤーンの撚り数を表す。
補強要素Aは、ナイロンマルチフィラメントヤーンおよびアラミドマルチフィラメントヤーンを、下記の条件で作動するエアジェットテクスチャー加工装置に供給することによって得た。
NYの搬送速度:102m/分、
ARの搬送速度:106m/分、
空気圧:4バール、
巻取速度:100m/分、
NYの過剰供給率(OD%):2%、
ARの過剰供給率(OD%):6%。
図2は、荷重/伸び線図を示す。横座標は、補強要素A(本発明による)および補強要素B(比較)に与えられる伸び(単位、百分率)を表し、また縦座標は、前記伸びから得られる荷重(単位N)を表す。
図2は、
補強要素Aが、1.4%の転移点、280cN/texの初期接線モジュラス、2250cN/texの最終接線モジュラスを有すること、および
補強要素Bが、380cN/texの初期接線モジュラスを有し、転移点を全く示さないこと
を示す。
実施例2
サイズ225/50 R17を有するタイヤをシミュレートするために有限要素解析(FEA)を使用した。
同一構造要素(例えば、同一のカーカス、クロスベルト層、ビードコア、トレッドバンド)だが、異なる「0度ベルト」を有するタイヤ1〜3を比較することによりFEAを実施した。具体的には、
タイヤ1:2層の重ね合わされた層から作られた「0度ベルト」。エラストマー組成物中に埋め込まれた補強要素の100%が補強要素Bであり、補強要素の打ち込み本数はコード110本/dmであり、各層の厚さは0.75mmであり、各層の補強要素が互いにかつタイヤの周方向に平行である。
タイヤ2:1層から作られた「0度ベルト」。エラストマー組成物中に埋め込まれた補強要素の100%が補強要素Aであり、補強要素の打ち込み本数はコード79本/dmであり、層の厚さは0.90mmであり、層の補強要素が互いにかつタイヤの周方向に平行である。
タイヤ3:1層から作られた「0度ベルト」。エラストマー組成物中に埋め込まれた補強要素の50%が補強要素A、50%が補強要素Bであり、1:1に交互配列されており、補強要素の打ち込み本数はコード79本/dmであり、層の厚さは0.90mmであり、層の補強要素が互いにかつタイヤの周方向に平行である。
FEAは、下記条件を課すことによって実施した。
タイヤ圧:圧力2.2バール、
「0度ベルト」:3%予荷重、
垂直荷重:530kg。
得られた結果を下記の表1〜3に示した。
Figure 2011500427
表1にまとめた結果から、本発明によるタイヤ(タイヤ2およびタイヤ3)は、比較タイヤ(タイヤ1)と比べて限定されたタイヤの膨らみ(tire growth)を示すことが指摘できる。さらにタイヤ1〜3は、類似したインフレイテッド外形(inflated profile)を有することが指摘できる。
Figure 2011500427
表2にまとめた結果から、本発明によるタイヤ(タイヤ2およびタイヤ3)は、比較タイヤ(タイヤ1)と比べて小さいタイヤ垂直たわみを示すことが指摘できる。さらにタイヤ1〜3は、類似した幅を有することが指摘できる。
Figure 2011500427
表3にまとめ、また図6に開示した結果から、本発明によるタイヤ(タイヤ2およびタイヤ3)は、比較タイヤ(タイヤ1)と比べて、より丸みを帯びたフットプリント面を示すことが指摘できる。
さらに、本発明によるタイヤ(タイヤ2およびタイヤ3)は、比較タイヤ(タイヤ1)と比べて、より均等な圧力分布を示すことが分かった。
実施例3
サイズ285/30 R18を有するタイヤを静的および動的の両条件でシミュレートするために有限要素解析(FEA)を使用した。
同一構造要素(例えば、同一のカーカス、クロスベルト層、ビードコア、トレッドバンド)だが、異なる「0度ベルト」を有するタイヤ4〜5を比較することによりFEAを実施した。具体的には、
タイヤ4:2層の重ね合わされた層から作られた0度ベルト。エラストマー組成物中に埋め込まれた補強要素の100%が補強要素Bであり、補強要素の打ち込み本数はコード110本/dmであり、各層の厚さは0.75mmであり、各層の補強要素は互いにかつタイヤの周方向に平行である。
タイヤ5:1層から作られた0度ベルト。エラストマー組成物中に埋め込まれた補強要素の100%が補強要素Aであり、補強要素の打ち込み本数はコード79本/dmであり、層の厚さは0.90mmであり、層の補強要素は互いにかつタイヤの周方向に平行である。
FEAは、下記条件を課すことによって実施した。
静的タイヤ圧:圧力3.0バール(静的条件)、
300km/時のタイヤ圧:3.6バール(動的条件)、
「0度ベルト」:3%予荷重。
得られた結果を下記の表4に示した。
Figure 2011500427
表4にまとめた結果から、
静的条件下において本発明によるタイヤ(タイヤ5)は、比較タイヤ(タイヤ4)と比べて同じインフレイテッド外形を示すこと、および
動的条件下において本発明によるタイヤ(タイヤ5)は、比較タイヤ(タイヤ4)と比べて限定されたタイヤの膨らみを示すこと
が指摘できる。したがって、上記で述べた結果から、本発明によるタイヤ(タイヤ5)は、比較タイヤ(タイヤ4)と比べて限定されたせり上がり現象を示すことが指摘できる。

Claims (48)

  1. 少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素を含む少なくとも1つの構造要素を含むタイヤであって、前記少なくとも1本のハイブリッドヤーンが、第一の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンと、第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンとから得られる複数本のフィラメントを含み、前記第一および前記第二の初期接線モジュラスは互いに異なり、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンのそれぞれが、各個のフィラメントを複数本含み、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンのそれぞれの前記個々のフィラメントが少なくとも部分的に互いに混ざり合っている、タイヤ。
  2. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、ASTM規格D2259−02(2004)に従って177℃において測定した際に約10%以下の乾熱収縮率を有する、請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、ASTM規格D2259−02(2004)に従って177℃において測定した際に約5%以下の乾熱収縮率を有する、請求項2に記載のタイヤ。
  4. 前記少なくとも1つの構造要素が、少なくとも1本の撚られたハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ。
  5. 前記少なくとも1つの構造要素が、少なくとも1本のハイブリッドコードを含む少なくとも1つの補強要素を含み、前記少なくとも1本のハイブリッドコードが、少なくとも1本のハイブリッドヤーンと、例えばナイロン、レーヨン、ポリエチレンテレフタレートなどの紡織繊維、または金属から作られる少なくとも1つの追加の補強要素とを含み、前記少なくとも1本のハイブリッドヤーンおよび前記少なくとも1つの追加の補強要素が撚り合わされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ。
  6. 前記少なくとも1つの構造要素が、撚り合わされた少なくとも2本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ。
  7. 前記少なくとも1つの構造要素が、少なくとも1本のハイブリッドヤーンと、ナイロン、レーヨン、ポリエチレンテレフタレートなどの紡織繊維から作られる少なくとも1つの追加の補強要素とを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ。
  8. 前記少なくとも1つの構造要素が、少なくとも1本のハイブリッドヤーンと、金属から作られる少なくとも1つの追加の補強要素とを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ。
  9. それぞれのビード構造部で終わる対向する側方縁部を有するほぼトロイダル形状のカーカス構造部と、
    前記カーカス構造部に関して半径方向の外部位置に貼り付けられたベルト構造部であって、
    各層中で互いに平行でかつ隣接層に関して交差している複数本の補強要素を含み、前記補強要素が周方向に対して所定の角度を形成するように向きを定められている少なくとも2層のベルト層、および
    タイヤのほぼ周方向に向きを定められたターンを形成するように螺旋状に巻かれている複数本の補強要素を含む、前記少なくとも2層のベルト層に対して半径方向の外部位置に貼り付けられた少なくとも1層の追加のベルト層、
    を含むベルト構造部と、
    前記ベルト構造部に関して半径方向の外部位置に貼り付けられたトレッドバンドと、
    前記カーカス構造部に関して対向する側部上に左右に貼り付けられた一対のサイドウォールと
    を含み、
    前記少なくとも1つの構造要素が、前記少なくとも1層の追加のベルト層である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のタイヤ。
  10. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、約50本から約2000本の複数本の各個のフィラメントを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のタイヤ。
  11. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、約100本から約1000本の複数本の各個のフィラメントを含む、請求項10に記載のタイヤ。
  12. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンの前記個々のフィラメントが、約5μmから約100μmの直径を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のタイヤ。
  13. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンの前記個々のフィラメントが、約10μmから約50μmの直径を有する、請求項12に記載のタイヤ。
  14. 前記ハイブリッドヤーンが、約0.2mmから約1.5mmの直径を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のタイヤ。
  15. 前記ハイブリッドヤーンが、約0.3mmから約1.0mmの直径を有する、請求項14に記載のタイヤ。
  16. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、約200dtexから約4000dtexの線密度を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のタイヤ。
  17. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、約400dtexから約2500dtexの線密度を有する、請求項16に記載のタイヤ。
  18. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンが、より低い初期接線モジュラスを有し、かつ前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、より高い初期接線モジュラスを有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載のタイヤ。
  19. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンが、約200cN/texから約1500cN/texの初期接線モジュラスを有する、請求項1〜18のいずれか一項に記載のタイヤ。
  20. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンが、約300cN/texから約1200cN/texの初期接線モジュラスを有する、請求項19に記載のタイヤ。
  21. 前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、約600cN/texから約8000cN/texの初期接線モジュラスを有する、請求項1〜20のいずれか一項に記載のタイヤ。
  22. 前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、約800cN/texから約5000cN/texの初期接線モジュラスを有する、請求項21に記載のタイヤ。
  23. 前記ハイブリッドヤーンが、約0.5%から約7%の転移点を有する、請求項1〜22のいずれか一項に記載のタイヤ。
  24. 前記ハイブリッドヤーンが、約1.0%から約5%の転移点を有する、請求項23に記載のタイヤ。
  25. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、約200℃以上の温度で溶融する、請求項1〜24のいずれか一項に記載のタイヤ。
  26. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンが、脂肪族ポリアミド繊維(すなわちナイロン繊維)、低い初期接線モジュラスのポリエステル繊維、低い初期接線モジュラスのセルロース系繊維、またはこれらの混合物から選択される、請求項1〜25のいずれか一項に記載のタイヤ。
  27. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンが、脂肪族ポリアミド繊維(すなわちナイロン繊維)から選択される、請求項26に記載のタイヤ。
  28. 前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、芳香族ポリアミド繊維(すなわちアラミド繊維)、高い初期接線モジュラスのポリエステル繊維、ポリケトン繊維、ポリビニルアルコール繊維、高い初期接線モジュラスのセルロース系繊維、ガラス繊維、炭素繊維、またはこれらの混合物から選択される、請求項1〜27のいずれか一項に記載のタイヤ。
  29. 前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、芳香族ポリアミド繊維(すなわちアラミド繊維)から選択される、請求項28に記載のタイヤ。
  30. 前記ハイブリッドヤーンが撚られていないかまたは撚られている、請求項1〜29のいずれか一項に記載のタイヤ。
  31. 前記ハイブリッドヤーンが、撚り数約50tpmから約600tpmで撚られる、請求項30に記載のタイヤ。
  32. 前記ハイブリッドヤーンが、
    約10重量%から約90重量%の量の前記第一のマルチフィラメントヤーン、および
    約10重量%から約90重量%の量の前記第二のマルチフィラメントヤーン
    を含み、
    前記量が前記ハイブリッドヤーンの総重量を基準にして計算される、請求項1〜31のいずれか一項に記載のタイヤ。
  33. 前記ハイブリッドヤーンが、
    約30重量%から約70重量%の量の前記第一のマルチフィラメントヤーン、および
    約30重量%から約70重量%の量の前記第二のマルチフィラメントヤーン
    を含み、
    前記量が前記ハイブリッドヤーンの総重量を基準にして計算される、請求項32に記載のタイヤ。
  34. 第一の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンおよび第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンから得られる複数本のフィラメントを含むハイブリッドヤーンであって、前記第一および前記第二の初期接線モジュラスが互いに異なり、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンのそれぞれが複数本の各個のフィラメントを含み、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンのそれぞれの前記各個のフィラメントが少なくとも部分的に互いに混ぜ合わされ、前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンが、ASTM規格D2259−02(2004)に従って177℃において測定した際に約10%以下の乾熱収縮率を有する、ハイブリッドヤーン。
  35. 前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンが、ASTM規格D2259−02(2004)に従って177℃において測定した際に約5%以下の乾熱収縮率を有する、請求項34に記載のハイブリッドヤーン。
  36. 前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンが、請求項10〜31のいずれか一項に従って規定される、請求項34または35に記載のハイブリッドヤーン。
  37. 約10重量%から約90重量%の量の前記第一のマルチフィラメントヤーン、および
    10重量%から90重量%の量の前記第二のマルチフィラメントヤーン
    を含み、
    前記量が前記ハイブリッドヤーンの総重量を基準にして計算される、請求項34〜36のいずれか一項に記載のハイブリッドヤーン。
  38. 約30重量%から約70重量%の量の前記第一のマルチフィラメントヤーン、および
    30重量%から70重量%の量の前記第二のマルチフィラメントヤーン
    を含み、
    前記量が前記ハイブリッドヤーンの総重量を基準にして計算される、請求項37に記載のハイブリッドヤーン。
  39. 請求項34〜38のいずれか一項に記載の少なくとも1本のハイブリッドヤーンを含む少なくとも1つの補強要素を含むゴム引き製品。
  40. ゴム引きされた補強層である、請求項39に記載のゴム引き製品。
  41. ハイブリッドヤーンの製造方法であって、
    第一の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンを、得られるハイブリッドヤーンの巻取速度に対して約1.0%から約15%速い搬送速度でエアジェット装置に供給するステップ、
    第二の初期接線モジュラスを有する少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンを、得られるハイブリッドヤーンの巻取速度に対して約1.0%から約20%速い搬送速度でエアジェット装置に供給するステップ、
    前記エアジェット装置上に約3.0バールから約10バールの空気圧を加えるステップ、および
    こうして得られた前記ハイブリッドヤーンを、約20m/分から約250m/分の巻取速度で回収するステップ
    を含む、方法。
  42. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンが、前記得られるハイブリッドヤーンの巻取速度に対して約1.5%から約7.0%速い搬送速度でエアジェット装置に供給される、請求項41に記載のハイブリッドヤーンの製造方法。
  43. 前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンが、前記得られるハイブリッドヤーンの巻取速度に対して約5.0%から約10%速い搬送速度でエアジェット装置に供給される、請求項41または42に記載のハイブリッドヤーンの製造方法。
  44. 前記空気圧が、約3.5バールから約8.0バールである、請求項41〜43のいずれか一項に記載のハイブリッドヤーンの製造方法。
  45. 前記巻取速度が、約50m/分から約120m/分である、請求項41〜44のいずれか一項に記載のハイブリッドヤーンの製造方法。
  46. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンの前記搬送速度が、前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンの前記搬送速度よりも遅い、請求項41〜45のいずれか一項に記載のハイブリッドヤーンの製造方法。
  47. 前記少なくとも1本の第一のマルチフィラメントヤーンの過剰供給率(OD%)が、前記少なくとも1本の第二のマルチフィラメントヤーンの過剰供給率(OD%)よりも低い、請求項41〜45のいずれか一項に記載のハイブリッドヤーンの製造方法。
  48. 前記第一および前記第二のマルチフィラメントヤーンが、請求項10〜31のいずれか一項により規定される、請求項41〜47のいずれか一項に記載のハイブリッドヤーンの製造方法。
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