JP2011255862A - 電子制御装置及び情報管理システム - Google Patents

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Abstract

【課題】車両識別コード(VIN)の書換に先駆けて故障診断関連情報を消去する手法を採用しなくとも、車両検査の不正通過を抑制可能な技術を提供すること。
【解決手段】VINを記憶する電子制御装置は、VINの書換要求信号を受信すると、自装置に記憶保持するVINを、要求信号に従って書き換えるが、この際、バッテリからの電力供給を受けて常時データを記憶保持可能でスタンバイRAMが、故障診断関連情報と共に記憶保持する書換履歴フラグを、VINの書換があったことを表すセット状態に更新する(S130)。そして、故障診断関連情報の消去要求信号を受信すると、スタンバイRAMが記憶する故障診断関連情報をリセットすると共に(S170)、書換履歴フラグをリセットする(S180)。また、書換履歴フラグがセットされた状態にある期間は、故障表示ランプを点灯させる(S140,S190)。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両識別コードを書換可能な電子制御装置及び当該電子制御装置を備える情報管理システムに関する。
車両に搭載する複数の電子制御装置の内、特定の電子制御装置に、車両識別コードを記憶保持させることで、この車両識別コードの参照により個々の車両を識別できるようにした技術が従来知られている。車両識別コードとしては、米国において各車両に付与されるVIN(Vehicle Identification Number)が知られている。
このような技術が適用された車両に対しては、例えば、車両検査時に、専用のスキャンツールを車内ネットワークに接続して、車内ネットワークを通じて電子制御装置から車両識別コード(VIN)を取得することにより、検査対象の車両を識別して検査を行うことができる。この際には、例えば、故障診断の実行有無や実行結果を表す故障診断関連情報を記憶する電子制御装置から、故障診断関連情報を取得して車両に異常がないかどうか検査する。
また、VINを記憶する電子制御装置(以下、VIN記憶ECUと表現する。)としては、VINを書換可能に構成されたものが知られている。VINは車両毎に付与されるが、VIN記憶ECUを、故障等を原因として入れ替える場合には、新しい電子制御装置にVINを書き込む必要がある。VINの書換機能は、このような目的等で用いられる。
但し、この機能をVIN記憶ECUに搭載する場合には、当該機能が悪用される可能性がある。例えば、異常がある車両Aに、異常がない車両BのVIN記憶ECUを搭載してVINを書き換えることにより、VIN記憶ECUが記憶する故障診断関連情報が実際には上記異常がない車両Bのものであるのにも拘らず、車両Aのものであると偽ることができ、車両Aの検査(エミッションテスト等)を不正に通すための道具として使用される可能性がある。
このため、米国では法規(CARB OBD2)にてVINを書き換える際には同時にエミッション関連の故障診断関連情報を消去することが要請されている。また、このような要請に対応して、VINを書き換える際には先駆けて故障診断関連情報を消去するシステムが考えられている(例えば特許文献1参照)。
特開2009−274514号公報
しかしながら、VINの書換に先駆けて故障診断関連情報を消去する技術では、VINの書換に際しての処理手順が煩雑になりがちであり、又、書換に時間を要する。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、車両識別コード(VIN)の書換に先駆けて故障診断関連情報を消去する手法を採用しなくとも、車両検査の不正通過を抑制可能な技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた第一の発明は、車両識別コード並びに故障診断の実行有無及び実行結果を表す故障診断関連情報を記憶保持する電子制御装置であって、車両識別コードの書換命令が入力されると、車両識別コードを書き換える書換手段と、書換の実行を示す履歴情報を書き込む履歴書込手段と、を備えたものである。
この電子制御装置において、履歴書込手段は、書換手段による車両識別コードの書換時に、書換の実行を示す履歴情報を、自装置の記憶媒体に書き込む。また、この電子制御装置は、上記履歴情報を消去する消去手段を備え、消去手段は、所定条件が満足されると、この履歴書込手段により書き込まれた履歴情報と併せて故障診断関連情報を消去する(請求項1)。例えば、消去手段は、車外装置から消去命令が入力されると、上記所定条件が満足されたとして、履歴情報と併せて故障診断関連情報を消去する(請求項2)。
この電子制御装置によれば、履歴情報の有無を確認することで、電子制御装置が保持する故障診断関連情報が車両識別コードの書換前のものであるのか、書換後のものであるのかを特定することができる。即ち、履歴情報が電子制御装置に記憶保持されている場合には、故障診断関連情報が車両識別コードの書換前の情報であることを特定することができ、履歴情報が電子制御装置から消去されている場合には、故障診断関連情報が車両識別コードの書換後の情報であることを特定することができる。
従って、この発明によれば、車両識別コード(VIN)の書換に先駆けて故障診断関連情報を消去する手法を採用しなくとも、車両検査の作業者が、履歴情報の有無を確認することによって、車両検査の不正通過を抑制することができる。
一方、第二の発明は、記憶媒体として、電気的にデータ書換可能な不揮発性メモリ及びバッテリからの電力供給を常時受けてデータ保持可能な揮発性メモリであるバックアップメモリを備え、不揮発性メモリに、車両識別コードを記憶保持し、バックアップメモリに故障診断関連情報を記憶保持する電子制御装置に、車両識別コードの書換命令が入力されると、車両識別コードを書き換える書換手段と、書換手段による車両識別コードの書換時に、書換の実行を示す履歴情報を、バックアップメモリに書き込む履歴書込手段と、を設けたものである(請求項3)。
この電子制御装置の構成によれば、バックアップメモリへの電力供給を停止することで、バックアップメモリに記憶された履歴情報を消去することができるが、それと同時に故障診断関連情報も揮発する。一方、バッテリを取り外して故障診断関連情報を消去しない場合には、履歴情報についても故障診断関連情報と一緒にバックアップメモリ内に残留することになる。
従って、この発明によれば、第一の発明と同様、車両検査時に、履歴情報の有無を確認することで、電子制御装置が保持する故障診断関連情報が車両識別コード書換前のものであるのか否かを特定することができ、車両識別コードの書換に先駆けて故障診断関連情報を消去する手法を採用しなくとも、車両検査の不正通過を抑制することができる。
特に、この電子制御装置によれば、バックアップメモリに故障診断関連情報を保持しているので、故障診断関連情報を記憶保持した状態で電子制御装置の入れ替えを行うことが難しい。従って、この電子制御装置によれば、一層確実に車両検査の不正通過を防止することができる。
また、第三の発明は、車両識別コード並びに故障診断の実行有無及び実行結果を表す故障診断関連情報を記憶保持する電子制御装置であって、車両識別コードの書換命令が入力されると、車両識別コードを書き換える書換手段と、書換手段による車両識別コードの書換時に、書換の実行を示す履歴情報を、自装置の記憶媒体に書き込む履歴書込手段と、書換手段による車両識別コードの書換後、自装置が記憶保持する故障診断関連情報に対応した故障診断が一通り実施されたか否かを判定する判定手段と、判定手段により故障診断が一通り実施されたと判定されると、履歴書込手段により書き込まれた履歴情報を消去する消去手段と、を備えるものである(請求項4)。
この電子制御装置によれば、車両識別コードの書換後に故障診断が一通り実施されて、故障診断関連情報が車両識別コード書換後の故障診断に基づく内容に更新されるような条件が満足されるまでは、履歴情報を消去せずに保持する。従って、この発明によれば、第二の発明と同様、車両検査時に、履歴情報の有無を確認することで、電子制御装置が保持する故障診断関連情報が車両識別コード書換前のものであるのか否かを特定することができ、車両識別コードの書換に先駆けて故障診断関連情報を消去する手法を採用しなくとも、車両検査の不正通過を抑制することができる。また、車両識別コード書換前後に、故障診断関連情報を消去する操作をしなくても済むので、便利である。
尚、故障診断については、車両の走行に伴って実行されるので、判定手段は、書換手段による車両識別コードの書換後、車両の走行量が所定量を超えるまでは、故障診断が一通り実施されていないと判定し、走行量が所定量を超えると、故障診断が一通り実施されたと判定する構成にすることができる(請求項5)。このような判定手段の構成によれば、簡単な手順で、故障診断が一通り実施されたか否かの判定を高精度に行うことができる。
また、車両識別コードの書換時には、車両に搭載された警告ランプを点灯させることによって、車両の異常(車両識別コードが書き換えられたのに、故障診断関連情報が古いままであるという車両の異常)を報知するとよい。即ち、上記電子制御装置には、書換手段による車両識別コードの書換時点から、自装置の記憶媒体から履歴情報が消去されるまでの期間、車両に搭載された警告ランプを点灯させる書換報知手段を設けるとよい(請求項6)。
このようにすれば、車両検査の作業者等に、車両識別コードが書き換えられたのに故障診断関連情報が古いままであるという車両の異常を、判りやすく知らせることができ、作業者の確認ミスによって、車両検査の不正通過が発生するのを一層確実に防止することができる。
尚、車両識別コードを記憶保持する上記電子制御装置とは別の装置に警告ランプが接続される車両では、車両識別コードを記憶保持する上記電子制御装置から警告ランプに接続された装置への車内ネットワークを通じた指令入力により、警告ランプの点灯制御を実現することができる。
また、警告ランプに接続された装置が、車内ネットワーク内に通信の途絶した電子制御装置が発生すると、警告ランプを点灯させる構成にされている場合には、この機能を利用して、警告ランプの点灯/消灯を間接的に制御することが可能である。
即ち、『警告ランプに接続され、車内ネットワーク内に通信の途絶した電子制御装置が発生すると、警告ランプを点灯させる構成にされた警報装置』と、車内ネットワークを通じて通信可能な電子制御装置において、書換報知手段は、書換手段による車両識別コードの書換時点から、自装置の記憶媒体から履歴情報が消去されるまでの期間、警報装置との通信を停止することにより、警報装置を通じて警告ランプを点灯させる構成にすることができる(請求項7)。
このようにして警告ランプの点灯/消灯を制御すれば、警告ランプに接続された装置の従来からある機能を利用して、車両識別コードが書き換えられたのに、故障診断関連情報が古いままであるという車両の異常を警告ランプの点灯を通じて報知することができ、低コストに警告ランプを通じて異常を報知可能なシステムを構成することができる。
また、電子制御装置には、書換手段による車両識別コードの書換時点から、自装置の記憶媒体から履歴情報が消去されるまでの期間、車両の走行を制限する制限手段を設けるのが好ましい(請求項8)。ここでいう制限とは、車両が全く走行できないようにする制限の他、一部の走行動作を制限する動作も含む。このように電子制御装置を構成すれば、不正車両が道路を走行することにより交通の安全が損なわれたり、環境基準に適合しない排気ガスの排出等が行われることで環境が損なわれたりするのを抑えることができる。
また、上述の発明では、車両識別コードを記憶保持する電子制御装置で、車両識別コードの書換の実行を示す履歴情報を記憶保持するようにしたが、この履歴情報は、同じ車内ネットワークに接続された他の電子制御装置で記憶保持されてもよい。この手法によっても、スキャンツールを通じて、車内ネットワーク内の各電子制御装置が記憶保持する情報収集することで、車両識別コードを記憶保持する電子制御装置における故障診断関連情報の新旧を、履歴情報の有無に基づき特定することができる。
具体的に、車両識別コードを記憶保持する電子制御装置以外の電子制御装置に履歴情報を記憶保持させる手法で、車両識別コードを記憶保持する電子制御装置における故障診断関連情報の新旧を特定するためには、第四の発明のようにシステム(情報管理システム)を構成することができる。
第四の発明は、車内ネットワークを通じて通信可能に接続された複数の電子制御装置を備え、複数の電子制御装置の内、単一の電子制御装置が、車両識別コードを記憶保持する特定種の電子制御装置として構成され、複数の電子制御装置の内、少なくとも上記特定種の電子制御装置が、故障診断の実行有無及び実行結果を表す故障診断関連情報を記憶保持する構成にされた情報管理システムであって、上記特定種の電子制御装置が、車両識別コードの書換命令が入力されると、車両識別コードを書き換える書換手段と、書換手段による車両識別コードの書換時に、書換の実行を示す履歴情報を、複数の電子制御装置の内、自装置以外の電子制御装置に記憶保持させる履歴書込手段と、車内ネットワークを通じて車外装置から消去命令が入力されると、自装置の記憶媒体から故障診断関連情報を消去する消去手段と、を備え、上記履歴情報を記憶保持する電子制御装置が、車内ネットワークを通じて上記消去命令が入力されると、自装置の記憶媒体から履歴情報を消去する構成にされたものである(請求項9)。
この情報管理システムによれば、他の電子制御装置が保持する履歴情報の有無に基づき、車両識別コードを記憶保持する電子制御装置における故障診断関連情報の新旧を特定することができる。尚、上記履歴情報を記憶保持する電子制御装置は、上記特定種の電子制御装置との通信により、上記特定種の電子制御装置における故障診断関連情報の消去動作に併せて、自己が記憶する履歴情報の消去動作を実行する構成にすることができる。この他、上記履歴情報を記憶保持する電子制御装置は、車内ネットワークを通じて上記特定種の電子制御装置と共に受信した上記消去命令をトリガとして独自に自装置の記憶媒体から履歴情報を消去する構成にすることができる。
この他、車両識別コードを記憶保持する電子制御装置とは別の電子制御装置にて履歴情報を記憶保持する手法では、履歴情報を記憶保持する電子制御装置を更に不正に入れ替えることで、車両検査の不正通過が生じうるので、上記特定種の電子制御装置が備える履歴書込手段は、履歴情報を、自装置以外の電子制御装置及び自装置の記憶媒体に書き込む構成にされ、上記消去手段は、自己の故障診断関連情報と併せて履歴情報を消去する構成にされるとよい(請求項10)。即ち、自装置で履歴情報を管理するが、予備的に、自装置以外の電子制御装置でも履歴情報を管理するのである。このように、多重に履歴情報を記憶保持するように上記システムを構成すれば、一層確実に車両検査の不正通過を防止することができる。特に、履歴情報が揮発してしまう可能性のある環境では、このようにして複数箇所で履歴情報を記憶保持すると、揮発によって、故障診断関連情報が消去されていないのにも拘らず、それを外部から判断できなくなるのを防止することができる。
この他、車両識別コードを記憶保持する電子制御装置以外の電子制御装置が警告ランプに接続されている場合には、警告ランプに接続された電子制御装置に履歴情報を記憶保持させて、この電子制御装置に、履歴情報が消去されるまでの期間、警告ランプを点灯させるように上記システムを構成することも可能である(請求項11)。この手法によっても、警告ランプを通じて車両の異常を報知し、車両検査の不正通過を抑制することができる。
通信システム1の構成を表すブロック図である。 制御部11が実行する外部要求受付処理を表すフローチャートである。 制御部11が実行する起動時点灯制御処理を表すフローチャートである。 制御部11が実行する制御切替処理を表すフローチャートである。 通信システム2に関する説明図である。 通信システム3の構成を表すブロック図である。 通信システム3で制御部11が実行する処理を表すフローチャートである。 通信システム3で制御部21が実行する処理を表すフローチャートである。 制御部11が実行する書換履歴リセット処理を表すフローチャートである。
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
[第一実施例]
図1に示す本実施例の通信システム1は、車両に搭載された複数の電子制御装置(ECU)10,20が通信線LNを通じて双方向通信可能に接続されたシステムである。通信線LNには、車外からスキャンツール5を接続するためのコネクタCNTが設けられており、通信システム1を構成する電子制御装置10,20は、スキャンツール5から通信線LNを通じて入力される指令に従って、故障診断に関連する情報等をスキャンツール5に提供する。尚、スキャンツール5は、車両に搭載された電子制御装置10,20から故障診断関連情報等の各種情報を読み出し、スキャンツール5を操作する作業者に、車両の状態を伝達するための端末装置である。
詳述すると、この通信システム1は、搭載車両の識別コードであるVINを記憶する電子制御装置10を一つのみ備える。以下、VINを記憶する電子制御装置10を、VIN記憶ECU10とも表現し、VINを記憶しない電子制御装置20を、非VIN記憶ECU20とも表現する。
VIN記憶ECU10は、制御部11と、スタンバイRAM15と、EEPROM17と、通信インタフェース19と、を備える。制御部11は、CPU11a,ROM11b及びRAM11cを備え、ROM11bが記憶するプログラムをCPU11aにて実行することにより各種機能を実現する。RAM11cは、CPU11aによる上記プログラム実行時に作業領域として使用される。
スタンバイRAM15は、イグニッションスイッチのオン/オフに拘らず、車両に搭載されたバッテリ7からの電力供給を常時受けて動作する揮発性メモリである。即ち、スタンバイRAM15は、バッテリ7からの電力供給が継続している間は、書き込まれたデータを常時記憶保持する。このスタンバイRAM15は、例えば、故障診断関連情報を記憶保持するために使用される。
即ち、このスタンバイRAM15は、レディネスフラグ記憶エリアと、故障診断データ記憶エリアと、を備える。
レディネスフラグ記憶エリアは、VIN記憶ECU10が実行可能な故障診断の種類毎に、故障診断の実行(完了)有無を表すフラグであるレディネスフラグを記憶するエリアである。
例えば、VIN記憶ECU10が、エミッションテストで義務付けられているエミッション関連の故障診断を制御部11にて実行可能な電子制御装置であるとする。即ち、VIN記憶ECU10が、触媒、加熱触媒、エバポシステム、二次空気システム、A/C(エアーコンディショナー)システム冷媒、O2(酸素)センサ、A/F(空燃比)センサ、O2(酸素)センサヒータ、及び、EGR(排気再循環)システムの故障診断を実行可能な電子制御装置であるとする。
この場合には、レディネスフラグ記憶エリアに、触媒の故障診断を実行したか否かを表すフラグ、加熱触媒の故障診断を実行したか否かをフラグ、エバポシステムの故障診断を実行したか否かを表すフラグ、二次空気システムの故障診断を実行したか否かを表すフラグ、A/C(エアーコンディショナー)システム冷媒の故障診断を実行したか否かを表すフラグ、O2(酸素)センサ及びA/F(空燃比)センサの故障診断を実行したか否かを表すフラグ、O2(酸素)センサヒータの故障診断を実行したか否かを表すフラグ、並びに、EGR(排気再循環)システムの故障診断を実行したか否かを表すフラグが記憶される。
尚、レディネスフラグは、リセットされている状態(例えば値0)で、故障診断が未完であることを示し、セットされている状態(例えば値1)で、故障診断が完了していることを示す。
また、故障診断データ記憶エリアには、各レディネスフラグに対応する故障診断の実行結果を表すデータとしての故障診断データが記憶保持される。この故障診断データは、故障有/故障無/故障有無不明を表す情報を有した構成にされ、リセットされている状態では、故障有無不明を表す。
この他、スタンバイRAM15は、書換履歴フラグ記憶エリアを備える。この書換履歴フラグ記憶エリアには、VINを書き換えたか否かを表す書換履歴フラグが記憶される。尚、書換履歴フラグは、リセットされている状態(例えば値0)で、VINが書き換えられていないことを示し、セットされている状態(例えば値1)で、VINが書き換えられていることを示す。
続いて、制御部11の動作について説明する。VIN記憶ECU10の制御部11は、イグニッションスイッチがオンされて車両が起動すると、プログラムの実行により所定の車両制御を実行すると共に、車両制御に対応する故障診断を実行する。故障診断の実行時期は、故障診断の種類(項目)毎に異なるが、制御部11は、イグニッションスイッチがオンして車両が起動した直後にセンサの出力信号に基づき故障診断を実行したり、車両の走行時に、車両制御の実行結果に基づいて故障診断を実行したりする。
そして、故障診断の実行(完了)毎に、対応する故障診断の実行(完了)有無を表すレディネスフラグをスタンバイRAM15においてセットして、故障診断が完了したことを表す状態に更新すると共に、スタンバイRAM15が記憶する故障診断データの内容を、診断結果に従った内容に更新する。また、故障がある場合には、車内で車両乗員が視認可能な位置に設けられた故障表示ランプ(MIL:Malfunction Indicator Lamp)9を点灯させることにより、故障を車両乗員等に向けて報知する。
また、制御部11は、車両の非走行時にコネクタCNTを通じて車内ネットワークにスキャンツール5が接続されると、図2に示す外部要求受付処理を繰返し実行する。即ち、制御部11は、通信インタフェース19を通じてスキャンツール5から送信される要求信号を受信するまで待機し(S110)、要求信号を受信すると(S110でYes)、受信した要求信号が、VINの書換要求信号であるか否かを判断する(S120)。そして、受信した要求信号がVINの書換要求信号であると判断すると(S120でYes)、スタンバイRAM15において書換履歴フラグをセットし、VINの書き換えがあったことを表す状態に更新する(S130)。
その後、制御部11は、自装置に接続された故障表示ランプ9を点灯させる(S140)一方で、VIN書換処理を実行する(S150)。即ち、EEPROM17が記憶するVINを、スキャンツール5から車内ネットワークを通じて指定されたVINに更新する。その後、外部要求受付処理を終了する。
一方、スキャンツール5から受信した要求信号が、VINの書換要求信号ではなく(S120でNo)、故障診断関連情報の消去要求信号である場合(S160でYes)、制御部11は、S170に移行し、スタンバイRAM15のレディネスフラグ記憶エリア及び故障診断データ記憶エリアをクリアする。即ち、スタンバイRAM15が記憶する各レディネスフラグをリセットして、対応する故障診断が未完であることを表す状態に更新すると共に、各故障診断データをリセットする。また、スタンバイRAM15が記憶する書換履歴フラグをリセットする(S180)。その後、上記故障表示ランプ9を消灯し、当該外部要求受付処理を終了する。
この他、制御部11は、VINの書換要求信号及び故障診断関連情報の消去要求信号以外の要求信号を受信すると(S160でNo)、この要求信号に対応した処理を実行し(S199)、当該外部要求受付処理を終了する。ここでは、例えば、受信した要求信号に従って、故障診断関連情報(レディネスフラグ及び故障診断データ)をスキャンツール5に送信したり、VINをスキャンツール5に送信したりする。
また、VIN記憶ECU10の制御部11は、車両の起動時に、図3に示す起動時点灯制御処理を実行する。
即ち、制御部11は、車両が起動すると、自装置に接続された故障表示ランプ9を、故障有無に拘らず点灯させる(S210)。このような動作については、周知の車両と同様である。車両起動時に故障表示ランプ9を点灯させることにより、故障表示ランプ9の故障がないかどうかを車両乗員側で把握できるようにする。
その後、制御部11は、スタンバイRAM15の書換履歴フラグ記憶エリアを参照し、書換履歴フラグがセットされているか否かを判断する(S220)。そして、書換履歴フラグがセットされている場合には(S220でYes)、故障表示ランプ9の点灯を維持して(S250)、当該起動時点灯制御処理を終了する。
一方、書換履歴フラグがリセットされている場合には(S220でNo)、スタンバイRAM15の故障診断データ記憶エリアを参照して、故障表示ランプ9の点灯が必要な故障が生じているか否かを判断し、故障が生じている場合には(S230でYes)、故障表示ランプ9の点灯を維持して(S250)、当該起動時点灯制御処理を終了する。
一方、書換履歴フラグがリセットされており、故障表示ランプ9の点灯が必要なその他の故障も生じてもいない場合には(S230でNo)、故障表示ランプ9を消灯して(S240)、当該起動時点灯制御処理を終了する。
このようにして、本実施例では、VINの書換が行われて書換履歴フラグがセットされているときには、車両の起動時から、故障表示ランプ9を点灯して異常があることを車両乗員や車両を検査する作業者に知らせる。
この他、本実施例では、書換履歴フラグがセットされているときには、車両の走行を制限するように、車両制御の態様を切り替える。具体的に、制御部11は、車両制御の開始に先駆けて、車両の起動時に図4に示す制御切替処理を実行し、書換履歴フラグの状態に応じて車両制御のモードを切り替える。
図4に示すように、制御部11は、制御切替処理を開始すると、スタンバイRAM15の書換履歴フラグ記憶エリアを参照して、書換履歴フラグがセットされているか否かを判断する(S310)。そして、リセットされている場合には(S310でNo)、通常の車両制御を開始するが(S320)、セットされている場合には(S310でYes)、車両の走行を制限した車両制御を開始する(S330)。例えば、フューエルカットを行うことにより車両の走行速度を制限した車両制御を実行する。この他、点火カットを行うことにより車両の走行を制限(禁止を含む。)することができる。また、車両制御に用いるパラメータ値を異常値に設定することで車両の走行を制限(禁止を含む。)することができる。
以上、本実施例の通信システム1について説明したが、このように構成された通信システム1によれば、VIN記憶ECU10が、VINを書き換えると、その書換履歴を、書換履歴フラグをセットすることによりスタンバイRAM15に保持し、この書換履歴フラグを、故障診断関連情報(レディネスフラグ及び故障診断データ)がリセットされるまでセットした状態に維持する。そして、故障診断関連情報がリセットされると書換履歴フラグをリセットする。
従って、本実施例によれば、書換履歴フラグの状態を確認することで、VIN記憶ECU10が保持する故障診断関連情報がVINの書換前のものであるのか、書換後のものであるのかを特定することができる。
これにより、例えば、故障している車両のVIN記憶ECU10を、故障していない車両に取り付けられていたVIN記憶ECU10と交換し、VINを書き換えることにより、故障していない車両に取り付けられていたVIN記憶ECU10が有する故障診断関連情報を、故障している車両のVIN記憶ECU10のものであると偽る者がいても、スキャンツール5を介した書換履歴フラグの参照や、故障表示ランプ9の点灯有無の確認により、この不正を発見することができる。
従って、本実施例によれば、車両の検査が不正に通ってしまうのを抑制することができる。例えば、VIN記憶ECU10が、エミッションテストで義務付けられている故障診断の少なくとも一部を実行し、そのレディネスデータ及び故障診断データを記憶保持する電子制御装置である場合には、本実施例の構成を採用することにより、VIN記憶ECU10の入れ替えにより、不正車両がエミッションテストに通ってしまうのを抑制することができる。
尚、本実施例によれば、故障診断関連情報をスタンバイRAM15に記憶保持し、併せて、書換履歴フラグもスタンバイRAM15に記憶保持しているので、バッテリ7を外してスタンバイRAM15への電力供給を断つことで、故障診断関連情報及び書換履歴フラグのリセットを同時に行うことができる。従って、ユーザは、VINの書換後、消去要求により、故障診断関連情報をリセットするか、バッテリの取り外しにより、故障診断関連情報をリセットすることにより、VINの書換履歴を消去することができ、これによって、故障表示ランプ9による異常報知を解消し、車両に異常がない限りエミッションテスト等の車両検査において、自車両を正当に合格させることができる。
また、本実施例によれば、書換履歴フラグがセットされた状態では、車両の走行を制限するので、不正車両が道路を走行することにより交通の安全が損なわれたり、環境基準に適合しない排気ガスの排出等が行われることで環境が損なわれたりするのを抑えることができる。
ところで、このような故障診断関連情報は、VIN記憶ECU10のみで管理される場合もあるが、VIN記憶ECU10と、非VIN記憶ECU20とで分散して管理される場合も考えられる。
この他、車両には、図5(a)に示すように、故障表示ランプ9が非VIN記憶ECU20に接続されるケースも考えられる。このケースでは、故障表示ランプ9が接続された非VIN記憶ECU20にも、図5(a)に示すように、スタンバイRAM25内に、書換履歴フラグ記憶エリアを設けることで、VINの書換時に故障表示ランプ9を点灯させることが可能である。
[第二実施例]
続いて、第二実施例の通信システム2について、図5を用いて説明する。但し、第二実施例の通信システム2は、故障表示ランプ9が非VIN記憶ECU20に接続されていることを除けば、そのハードウェア構成は、図1に示す通信システム1と同様であり、VIN記憶ECU10については、プログラムで実現される処理内容が第一実施例のVIN記憶ECU10と若干異なる程度である。従って、以下では、第二実施例の通信システム2の構成として、第一実施例と異なる構成を説明し、同一構成の説明を適宜省略する。
図5(a)に示すように、非VIN記憶ECU20は、CPU21a,ROM21b,RAM21c等を備えてROM21bが記憶するプログラムをCPU21aにて実行することにより各種機能を実現する制御部21と、スタンバイRAM25と、通信インタフェース29と、を備える。図5(a)は、通信システム2の構成を表すブロック図である。
制御部21は、プログラムの実行により車両制御や故障診断を行う他、通信インタフェース29を通じた他装置(VIN記憶ECU10やスキャンツール5)との通信を行う。そして、スキャンツール5が接続された場合には、スキャンツール5からの要求信号を受け付け、スキャンツール5から故障診断関連情報の消去要求信号を受信すると、自装置のスタンバイRAM25に記憶された故障診断関連情報をリセットする。
また、非VIN記憶ECU20のスタンバイRAM25は、自己が管理する故障診断関連情報(レディネスフラグ及び故障診断データ)を記憶保持するためのレディネスフラグ記憶エリア及び故障診断データ記憶エリアを備えると共に、書換履歴フラグ記憶エリアを備え、制御部21は、図5(b)に示す処理を繰返し実行して、書換履歴フラグを更新する。
即ち、制御部21は、書換履歴フラグをセットするように指示する通信データをVIN記憶ECU10から受信すると(S410でYes)、自己の書換履歴フラグをセットした状態にして(S420)、自己に接続された故障表示ランプ9を点灯させる(S425)。一方、書換履歴フラグをリセットするように指示する通信データをVIN記憶ECU10から受信すると(S430でYes)、自己の書換履歴フラグをリセットして(S440)、自己に接続された故障表示ランプ9を消灯させる(S445)。但し、故障表示ランプ9を点灯させるべき故障が生じている場合には、S445で故障表示ランプ9を消灯させないものとする。図5(b)は、制御部21が実行する書換履歴フラグ更新処理を表すフローチャートである。
この他、非VIN記憶ECU20の制御部21は、車両の起動時に図3に示す起動時点灯制御処理を実行する。
一方、VIN記憶ECU10の制御部11は、S130で自装置のスタンバイRAM15において書換履歴フラグをセットする際、故障表示ランプ9が接続された非VIN記憶ECU20と通信して書換履歴フラグをセットするように指示することにより、この故障表示ランプ9が接続された非VIN記憶ECU20の書換履歴フラグもセットする。そして、スキャンツール5から故障診断関連情報の消去要求信号を受信した場合には、自装置のスタンバイRAM15が記憶する故障診断関連情報及び書換履歴フラグをリセットし(S170,S180)、併せてS180では、故障表示ランプ9に接続された非VIN記憶ECU20と通信して書換履歴フラグをリセットするように指示することにより、故障表示ランプ9に接続された非VIN記憶ECU20の書換履歴フラグもリセットする。その他、S140,S190の処理及び図3に示す起動時点灯制御処理を実行しないことを除けば、本実施例のVIN記憶ECU10の制御部11は、第一実施例と同様の処理を実行する。
このように構成された本実施例の通信システム2によれば、非VIN記憶ECU20に接続された故障表示ランプ9を用いて、VIN記憶ECU10においてVINが書き換えられたが故障診断関連情報が古いままであることを車両乗員や車両検査の作業者に報知することができる。
また、この通信システム2によれば、書換履歴フラグを複数箇所で記憶保持するので、何らかの原因で書換履歴フラグの一つが揮発して、故障診断関連情報がリセットされていないのにも拘らず、書換履歴フラグがリセットされた状態となっても、これによって、故障診断関連情報がリセットされたか否かの判断に誤りが生じるのを防止することができる。即ち、車両検査の作業者は、スキャンツール5を通じて、複数の電子制御装置10,20が記憶保持する書換履歴フラグを参照することで、その内の一つが揮発により正しい値を示していなくとも、VIN書換後に、故障診断関連情報がリセットされたか否かを正確に判断することができる。
尚、このようにして複数箇所で書換履歴フラグを記憶することによるメリットを一層活用しようとすれば、故障表示ランプ9に接続された非VIN記憶ECU20の制御部21は、車両の起動時に実行する図3に示す起動時点灯制御処理において、自己の書換履歴フラグを参照すると共に、VIN記憶ECU10と通信してVIN記憶ECU10の書換履歴フラグをも参照し、いずれか一方の書換履歴フラグがセットされている場合には、S220でYesと判断して、故障表示ランプ9を点灯させる構成にすることができる。
この他、本実施例では、非VIN記憶ECU20が、VIN記憶ECU10に制御されて、自己の書換履歴フラグをセット/リセットするように通信システム2を構成したが、非VIN記憶ECU20は、スキャンツール5から故障診断関連情報の消去要求信号を受信した場合、自装置のスタンバイRAM15が記憶する故障診断関連情報と併せて書換履歴フラグをリセットする構成にされてもよい。
上述した故障診断関連情報の消去要求信号は、スキャンツール5から宛先の指定がない信号として送信される。即ち、消去要求信号は、車内ネットワークにブロードキャストされる。従って、この消去要求信号に対応する故障診断関連情報のリセット動作は、車内ネットワークに接続された全ての電子制御装置10,20で同時に実行される。
このため、自装置のスタンバイRAM15が記憶する故障診断関連情報と併せて書換履歴フラグをリセットするように非VIN記憶ECU20を構成すれば、非VIN記憶ECU20は、VIN記憶ECU10との間で通信しなくとも、VIN記憶ECU10における故障診断関連情報のリセット動作に併せて、自己が記憶する書換履歴フラグをリセットすることができる。
また、書換履歴フラグの揮発に備える場合には、故障表示ランプ9に接続された非VIN記憶ECU20に限らず、通信システム1,2内の複数の電子制御装置に、書換履歴フラグを記憶するようにしてもよい。このような通信システム1,2の構成によっても、VIN書換後、故障診断関連情報がリセットされたか否かを正確に判断することができる。
[第三実施例]
続いて、第三実施例の通信システム3について、図6〜図8を用いて説明する。但し、第三実施例の通信システム3は、故障表示ランプ9が非VIN記憶ECU20に接続されていることを除けば、そのハードウェア構成は、図1に示す通信システム1と同様である。従って、以下では、本実施例に特徴点なVIN記憶ECU10の制御部11が実行する処理、及び、非VIN記憶ECU20の制御部21が実行する処理について選択的に説明する。
本実施例の通信システム3は、第二実施例とは異なり、図6に示すように、故障表示ランプ9に接続された非VIN記憶ECU20に上記書換履歴フラグ記憶エリアを設けず、非VIN記憶ECU20が備える「通信異常を検知すると故障表示ランプ9を点灯する」機能を用いて、VINの書換時に、故障表示ランプ9を点灯させる構成にされたものである。即ち、本実施例の通信システム3は、故障表示ランプ9に接続された非VIN記憶ECU20が、車内ネットワーク内に通信の途絶した電子制御装置が発生したことを検知すると、故障表示ランプ9を点灯させる構成にされていることを前提するものである。
この通信システム3が備えるVIN記憶ECU10の制御部11は、図2に示す外部要求受付処理に代えて、図7(a)に示す外部要求受付処理を実行する。図7(a)は、本実施例の制御部11が実行する外部要求受付処理を表すフローチャートである。
図7(a)と図2との比較からも理解できるように、図7(a)に示す外部要求受付処理では、図2に示すS140の処理に代えてS540の処理を実行し、図2に示すS190の処理に代えて、S590の処理を実行する。その他のステップにおいては、第一実施例と同様に処理を実行する。
即ち、VINの書換要求信号を受信すると、制御部11は、スタンバイRAM15において書換履歴フラグをセットし(S130)、通信インタフェース19をオフに切り替えて、自装置と他装置との車内ネットワークを通じた通信を停止する(S540)。その後、VINの書換処理を行う(S150)。
また、故障診断関連情報の消去要求信号を受信すると、制御部11は、スタンバイRAM15が記憶するレディネスフラグ及び故障診断データをリセットし(S170)、書換履歴フラグをリセットした後(S180)、通信インタフェース19をオフからオン(作動状態)に切り替えて、自装置と他装置との通信禁止状態を解除し、自装置と他装置との通信を再開する(S590)。
また、制御部11は、図3に示す起動時点灯制御処理に代えて、車両の起動時に図7(b)に示す通信制御処理を実行する。図7(b)は、本実施例の制御部11が実行する通信制御処理を表すフローチャートである。この通信制御処理を開始すると、制御部11は、自装置のスタンバイRAM15を参照して、書換履歴フラグがセットされているか否かを判断し、書換履歴フラグがセットされている場合には(S610でYes)、通信インタフェース19のオフに維持することで、通信を禁止して(S620)、当該通信制御処理を終了する。一方、書換履歴フラグがリセットされた状態にある場合には(S610でNo)、通信インタフェース19をオンして、通信インタフェース19を通じた他の電子制御装置との通信を開始する(S630)。
一方、故障表示ランプ9に接続された非VIN記憶ECU20の制御部21は、車両の起動後、図8に示す通信途絶監視処理を繰返し実行する。
この通信途絶監視処理を開始すると、制御部21は、車内ネットワーク内に接続された各電子制御装置との通信状況に基づき、車内ネットワーク内に通信の途絶した(自装置との通信が不可能な)電子制御装置が存在するか否かを判断する(S710)。例えば、制御部21は、車内ネットワークに接続された各電子制御装置のアドレスリストを有した構成にすることができ、このアドレスリストに登録された全ての電子制御装置と通信可能であれば、車内ネットワーク内に通信の途絶した電子制御装置はないと判断し(S710でNo)、それ以外の場合には、車内ネットワーク内に通信の途絶した電子制御装置があると判断する(S710でYes)構成にすることができる。
そして、車内ネットワーク内に通信の途絶した電子制御装置があると判断した場合には(S710でYes)、スタンバイRAM15の故障診断データ記憶エリアにおける通信に関する故障診断データを、通信異常を表す故障診断データに更新することで、通信異常をスタンバイRAM15に書き込み(S720)、故障表示ランプ9を点灯させる(S730)。その後、当該通信途絶監視処理を終了する。尚、既に通信途絶を検知して、通信異常の情報をスタンバイRAM15に記憶している場合には、S720,S730の処理を重複して実行する必要はないので、これらの処理を省略することができる。
一方、車内ネットワークに通信の途絶した電子制御装置がない場合には(S710でNo)、上記通信に関する故障診断データを、通信正常を表す故障診断データに更新することで、通信異常の情報をスタンバイRAM15から消去する(S740)。その後、故障表示ランプ9の点灯が必要なその他の故障が発生しているか否かを、故障診断データ記憶エリアに記憶されたその他の故障診断データを参照することにより判断し、故障がなければ(S750でNo)、故障表示ランプ9を消灯させて(S760)、当該通信途絶監視処理を終了し、その他の故障が発生している場合には(S750でYes)、故障表示ランプ9を消灯させずに、当該通信途絶監視処理を終了する。
以上、第三実施例の通信システム3について説明したが、この通信システム3によれば、通信異常が発生すると故障表示ランプ9を点灯させる非VIN記憶ECU20の機能を利用して、故障表示ランプ9の点灯/消灯を、故障表示ランプ9の接続されていないVIN記憶ECU10から間接的に制御する。従って、本実施例によれば、VINが書き換えられた場合には、故障診断関連情報がリセットされるまで故障表示ランプ9を点灯させるような動作を、既存の機能を利用して、低コストに実現することができる。
尚、本実施例は、書換履歴フラグを、既存の故障診断データで代用するといった思想も含むものであり、VIN記憶ECU10に故障表示ランプ9が接続された第一実施例の通信システム1においても、同様に思想を適用することができる。即ち、専用の書換履歴フラグをセット/リセットするのではなく、故障すると故障表示ランプ9が点灯する類の診断項目に対応する故障診断データを、VINの書換時に、故障有の旨の故障診断データに更新することで、故障表示ランプ9を点灯させるのである。既存の故障診断データを書換履歴フラグとして用いる構成を採用すれば、故障診断データのリセットにより、自動的にVINの書換履歴も失われるので、システムの構成を簡素にすることができる。
その他、上述した第一及び第二及び第三実施例の通信システム1,2,3では、故障診断関連情報がリセットされたことを条件に、書換履歴フラグをリセットするようにしたが、不正車両が検査に通過するのを防止するためには、故障診断関連情報が自車両のものであることが保証されればよく、例えば、VINの書換後に、一通りの故障診断が実施されたことを条件に、書換履歴フラグをリセットするようにしてもよい。
[第四実施例]
続いて、第四実施例について説明する。第四実施例の通信システムは、第一実施例の通信システム1において、更に、制御部11にて車両の起動後、図9(a)に示す書換履歴リセット処理を繰返し実行する構成にされたものである。
制御部11は、図9(a)に示す書換履歴リセット処理を開始すると、まず自装置のスタンバイRAM15における書換履歴フラグ記憶エリアを参照して、書換履歴フラグがセットされているか否かを判断する(S810)。そして、リセットされている場合には(S810でNo)、S820以降の処理を実行せずに、当該書換履歴リセット処理を終了する。一方、書換履歴フラグがセットされている場合には(S810でYes)、VIN書換後の車両の走行距離が所定距離以下であるか否かを判断する(S820)。尚、所定距離は、VIN記憶ECU10が記憶保持する故障診断関連情報に対応する故障診断の全てが一通り行われる車両の走行距離を基準に、予め設計段階で、それ以上の距離に定められる。VIN書換後の走行距離は、例えばVIN書換時に、その時点での距離メータの値を記憶保持し、その後の距離メータの値と、記憶保持した値とを比較することにより特定することができる。
そして、VIN書換後の走行距離が所定距離以下であると判断した場合には(S820でYes)、当該書換履歴リセット処理を終了し、走行距離が所定距離を超えていると判断した場合には(S820でNo)、自装置のスタンバイRAM15が記憶する書換履歴フラグをリセットする(S830)。
その後、故障表示ランプ9の点灯が必要なその他の故障が発生しているか否かを、故障診断データ記憶エリアに記憶されたその他の故障診断データを参照することにより判断し(S840)、故障がなければ(S840でNo)、故障表示ランプ9を消灯させて(S850)、当該書換履歴リセット処理を終了し、その他の故障が発生している場合には(S840でYes)、故障表示ランプ9を消灯させずに、当該書換履歴リセット処理を終了する。
このような構成にされた本実施例の通信システムによれば、故障診断関連情報を消去する操作を行わなくても済むため、ユーザにとっては便利である。尚、本実施例の思想は、例えば、第二実施例の通信システム2にも適用でき、この場合には、S830で、自装置のスタンバイRAM15が記憶する書換履歴フラグをリセットする際、その他の電子制御装置が記憶する書換履歴フラグも通信を通じてリセットすればよい。
また、本実施例の思想は、第三実施例の通信システム3にも適用でき、この場合には、図9(a)に示す書換履歴リセット処理に代えて、図9(b)に示す書換履歴リセット処理を制御部11に実行させればよい。即ち、制御部11は、S830の実行後、S940に移行し、図9(a)に示すS840及びS850の処理に代えて、通信インタフェース19をオフからオン(作動状態)に切り替えることで、自装置と他装置との通信禁止状態を解除し、自装置と他装置との通信を再開する構成にすることができる。
[対応関係]
以上に、本発明の実施例について説明したが、「特許請求の範囲」記載の各手段と上記実施例との対応関係は、次の通りである。即ち、「特許請求の範囲」における故障診断の実行有無を表す故障診断関連情報は、レディネスフラグに対応し、故障診断の実行結果を表す故障診断関連情報は、故障診断データに対応し、バックアップメモリは、スタンバイRAM15に対応し、警告ランプは、故障表示ランプ9に対応する。
また、書換手段は、制御部11が実行するS150の処理にて実現され、履歴書込手段は、制御部11が実行するS130の処理にて実現され、消去手段は、制御部11が実行するS170,S180(第一〜第四実施例)及びS830(第四実施例)の処理にて実現され、判定手段は、制御部11が実行するS820の処理にて実現されている。
この他、書換報知手段は、制御部11が実行するS140,S190,S240,S250,S540,S590の処理にて実現され、制御手段は、制御部11が実行する制御切替処理(図4)にて実現されている。また、警報装置は、故障表示ランプ9に接続された非VIN記憶ECU20に対応する。
1,2,3…通信システム、5…スキャンツール、7…バッテリ、9…故障表示ランプ、10…電子制御装置(VIN記憶ECU)、20…電子制御装置(非VIN記憶ECU)、11,21…制御部、11a,21a…CPU、11b,21b…ROM、11c,21c…RAM、15,25…スタンバイRAM、17…EEPROM、19,29…通信インタフェース、CNT…コネクタ、LN…通信線

Claims (11)

  1. 自装置が備える記憶媒体に、車両識別コードを記憶保持し、更には、故障診断の実行有無及び実行結果を表す故障診断関連情報を記憶保持する電子制御装置であって、
    前記車両識別コードの書換命令が入力されると、前記車両識別コードを書き換える書換手段と、
    前記書換手段による前記車両識別コードの書換時に、前記書換の実行を示す履歴情報を、自装置の記憶媒体に書き込む履歴書込手段と、
    所定条件が満足されると、前記履歴書込手段により書き込まれた前記履歴情報を消去する消去手段と、
    を備え、
    前記消去手段は、前記履歴情報と併せて前記故障診断関連情報を消去すること
    を特徴とする電子制御装置。
  2. 請求項1記載の電子制御装置であって、
    前記消去手段は、車外装置から消去命令が入力されると、前記履歴情報と併せて前記故障診断関連情報を消去すること
    を特徴とする電子制御装置。
  3. 記憶媒体として、電気的にデータ書換可能な不揮発性メモリ及びバッテリからの電力供給を常時受けてデータ保持可能な揮発性メモリであるバックアップメモリを備え、前記不揮発性メモリに、車両識別コードを記憶保持し、前記バックアップメモリに、故障診断の実行有無及び実行結果を表す故障診断関連情報を記憶保持する電子制御装置であって、
    前記車両識別コードの書換命令が入力されると、前記車両識別コードを書き換える書換手段と、
    前記書換手段による前記車両識別コードの書換時に、前記書換の実行を示す履歴情報を、前記バックアップメモリに書き込む履歴書込手段と、
    を備えることを特徴とする電子制御装置。
  4. 自装置が備える記憶媒体に、車両識別コードを記憶保持し、更には、故障診断の実行有無及び実行結果を表す故障診断関連情報を記憶保持する電子制御装置であって、
    前記車両識別コードの書換命令が入力されると、前記車両識別コードを書き換える書換手段と、
    前記書換手段による前記車両識別コードの書換時に、前記書換の実行を示す履歴情報を、自装置の記憶媒体に書き込む履歴書込手段と、
    前記書換手段による前記車両識別コードの書換後、自装置が記憶保持する前記故障診断関連情報に対応した前記故障診断が一通り実施されたか否かを判定する判定手段と、
    前記判定手段により前記故障診断が一通り実施されたと判定されると、前記履歴書込手段により書き込まれた前記履歴情報を消去する消去手段と、
    を備えることを特徴とする電子制御装置。
  5. 請求項4記載の電子制御装置であって、
    前記判定手段は、前記書換手段による前記車両識別コードの書換後、車両の走行量が所定量を超えるまでは、前記故障診断が一通り実施されていないと判定し、前記走行量が所定量を超えると、前記故障診断が一通り実施されたと判定すること
    を特徴とする電子制御装置。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子制御装置であって、
    前記書換手段による前記車両識別コードの書換時点から、自装置の記憶媒体から前記履歴情報が消去されるまでの期間、車両に搭載された警告ランプを点灯させる書換報知手段
    を備えることを特徴とする電子制御装置。
  7. 前記警告ランプに接続され、車内ネットワーク内に通信の途絶した電子制御装置が発生すると、前記警告ランプを点灯させる構成にされた警報装置と、前記車内ネットワークを通じて通信可能な請求項6記載の電子制御装置であって、
    前記書換報知手段は、前記書換手段による前記車両識別コードの書換時点から、自装置の記憶媒体から前記履歴情報が消去されるまでの期間、前記警報装置との通信を停止することにより、前記警報装置を通じて前記警告ランプを点灯させること
    を特徴とする電子制御装置。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の電子制御装置であって、
    前記書換手段による前記車両識別コードの書換時点から、自装置の記憶媒体から前記履歴情報が消去されるまでの期間、車両の走行を制限する制限手段
    を備えることを特徴とする電子制御装置。
  9. 車内ネットワークを通じて通信可能に接続された複数の電子制御装置を備え、前記複数の電子制御装置の内、単一の電子制御装置が、車両識別コードを記憶保持する特定種の電子制御装置として構成され、前記複数の電子制御装置の内、少なくとも前記特定種の電子制御装置が、故障診断の実行有無及び実行結果を表す故障診断関連情報を記憶保持する構成にされた情報管理システムであって、
    前記特定種の電子制御装置は、
    前記車両識別コードの書換命令が入力されると、前記車両識別コードを書き換える書換手段と、
    前記書換手段による前記車両識別コードの書換時に、前記書換の実行を示す履歴情報を、前記複数の電子制御装置の内、自装置以外の電子制御装置に記憶保持させる履歴書込手段と、
    前記車内ネットワークを通じて車外装置から消去命令が入力されると、自装置の記憶媒体から前記故障診断関連情報を消去する消去手段と、
    を備え、
    前記履歴情報を記憶保持する電子制御装置は、前記車内ネットワークを通じて前記消去命令が入力されると、自装置の記憶媒体から前記履歴情報を消去すること
    を特徴とする情報管理システム。
  10. 請求項9記載の情報管理システムであって、
    前記履歴書込手段は、前記履歴情報を、更に自装置の記憶媒体に書き込む構成にされ、
    前記消去手段は、前記故障診断関連情報と併せて前記履歴情報を消去すること
    を特徴とする情報管理システム。
  11. 請求項9記載の情報管理システムであって、
    前記履歴情報を記憶保持する電子制御装置は、車両に搭載された警告ランプに接続され、自装置の記憶媒体に前記履歴情報が記憶されてから消去されるまでの期間、前記警告ランプを点灯させる構成にされていること
    を備えることを特徴とする情報管理システム。
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