ここで、回転軸であるA軸およびB軸は、それぞれの回転角が0(deg)の場合にX軸およびY軸と一致する。しかし、工作機械の組付けや設置において、チルトテーブルやターンテーブルなどの組付け誤差または加工誤差により、A軸中心およびB軸中心がそれぞれX軸およびY軸と一致せずに、傾き誤差や位置誤差が生じることがある。
さらに、工作機械による加工において、主軸の回転や駆動軸の作動に伴う熱変位やベアリング与圧などにより、主軸に対する回転軸の位置が変位することがある。また、主軸に対する回転軸の変位量は、主軸の回転数や工作物の載置状態などによっても変動する。そのため、工作機械における基準位置の検出は、加工時において適宜行われることが好適である。
上述した特許文献1に記載の方法では、加工前に回転軸の軸中心を検出した場合に、ワークテーブル上に配置した真球などの測定治具を被加工物である工作物に交換するなどの段取り換えが必要となる。そのため、基準位置を検出した後に、検出した基準位置がさらに変動してしまうおそれがある。
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、より簡易に工作機械の基準位置を検出することができる工作機械の基準位置検出装置および基準位置検出方法を提供することを目的とする。
(工作機械の基準位置検出装置)
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の工作機械の基準位置検出装置の発明の構成上の特徴は、
直進軸および回転軸を動作させることにより、テーブルに載置された工作物に対して、主軸台に回転可能に支持された工具を相対移動させて加工する工作機械の基準位置検出装置であって、
前記主軸台に回転可能に設けられ、前記工具を支持する回転体と、
前記回転体に固定される検出体と、
平面状または直線状の検出域を有し、当該検出域に直交する検出方向が前記テーブルの前記回転軸に対して垂直になるように前記テーブルに設置された軸中心検出用センサと、
前記回転軸を回転させて前記テーブルを前記回転軸における複数の位相に位置決めする位置決め手段と、
それぞれの前記位相において、前記検出方向から前記検出体を前記軸中心検出用センサに接近させ、前記軸中心検出用センサが前記検出域において検出する前記検出体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
それぞれの前記位相において検出された前記検出体の位置情報に基づいて前記回転軸の軸中心を検出する基準位置検出手段と、
を備えることである。
請求項2に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1において、
前記テーブルの前記回転軸は、第一回転軸を有し、
前記軸中心検出用センサは、前記検出方向が前記第一回転軸に対して垂直になるように設置される第一軸中心検出用センサを有し、
前記位置決め手段は、前記直進軸のうち互いに直交する第一直進軸および第二直進軸に対して前記第一回転軸の軸方向が直交する状態において、前記検出方向が前記第一直進軸または前記第二直進軸と垂直となる位相に前記テーブルを位置決めし、
前記位置情報取得手段は、
前記第二直進軸と前記検出方向が垂直となるように設定された互いに前記第一回転軸に対称な2箇所の前記位相において、前記検出方向から前記検出体を前記第一軸中心検出用センサに接近させ、前記第一軸中心検出用センサが前記検出域において検出する前記検出体の第一位置情報を取得し、
前記第一直進軸と前記検出方向が垂直となるように設定された互いに前記第一回転軸に対称な2箇所の前記位相のうち少なくとも一方の前記位相において、前記検出方向から前記検出体を前記第一軸中心検出用センサに接近させ、前記第一軸中心検出用センサが前記検出域において検出する前記検出体の第二位置情報を取得し、
前記基準位置検出手段は、前記第一位置情報および前記第二位置情報に基づいて前記第一回転軸の軸中心を検出することである。
請求項3に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1または2において、
前記テーブルの前記回転軸は、第二回転軸を有し、
前記軸中心検出用センサは、異なる複数の方向から前記検出体の接近を検出可能な複数の前記検出方向が前記第二回転軸に対して垂直になるように設置される第二軸中心検出用センサを有し、
前記位置決め手段は、前記直進軸のうち互いに直交する第二直進軸および第三直進軸に対して前記第二回転軸の軸方向が直交する状態において、少なくとも異なる3箇所の前記位相に前記テーブルを位置決めし、
前記位置情報取得手段は、それぞれの前記位相において、複数の前記検出方向から前記検出体を前記第二軸中心検出用センサに接近させ、前記第二軸中心検出用センサが前記検出域において検出する前記検出体の第三位置情報を取得し、
前記基準位置検出手段は、前記第三位置情報に基づいて前記第二回転軸の軸中心を検出することである。
請求項4に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1〜3の何れか一項において、前記基準位置検出手段により検出された前記回転軸の軸中心から算出される前記回転軸の位置誤差に基づいて、前記基準位置検出装置に記憶されている前記回転軸の軸中心を補正する補正手段をさらに備えることである。
請求項5に記載の発明の構成上の特徴は、請求項2において、
前記基準位置検出装置は、平面状または直線状の検出域を有し、当該検出域に直交する検出方向が前記テーブルの前記第一回転軸に対して平行になるように前記テーブルに設置された第一軸傾き検出用センサをさらに備え、
前記位置情報取得手段は、前記第一位置情報および前記第二位置情報を取得した各前記位相において、前記検出方向から前記検出体を前記第一軸傾き検出用センサに接近させ、前記第一軸傾き検出用センサが前記検出域において検出する前記検出体の第四位置情報を取得し、
前記基準位置検出手段は、前記第一位置情報、前記第二位置情報および前記第四位置情報に基づいて前記第一回転軸の傾きを検出することである。
請求項6に記載の発明の構成上の特徴は、請求項3において、
前記基準位置検出装置は、平面状または直線状の検出域を有し、当該検出域に直交する検出方向が前記テーブルの前記第二回転軸に対して平行になるように前記テーブルに設置された第二軸傾き検出用センサをさらに備え、
前記位置情報取得手段は、前記第三位置情報を取得した各前記位相において、前記検出方向から前記検出体を前記第二軸傾き検出用センサに接近させ、前記第二軸傾き検出用センサが前記検出域において検出する前記検出体の第五位置情報を取得し、
前記基準位置検出手段は、前記第三位置情報および前記第五位置情報に基づいて前記第二回転軸の傾きを検出することである。
請求項7に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1〜6の何れか一項において、前記検出体は、前記回転体に支持される前記工具であることである。
請求項8に記載の発明の構成上の特徴は、請求項2において、
前記第一軸中心検出用センサは、直線状の前記検出域を有し、
前記第一軸中心検出用センサに検出される前記検出体の先端部は球状に形成され、
前記位置情報取得手段は、それぞれの前記位相において、前記第一軸中心検出用センサに前記検出体を接近させる際に、前記検出体の前記第一回転軸における軸方向位置が一定に設定されていることである。
請求項9に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1〜8の何れか一項において、前記軸中心検出用センサは、非接触式センサであり、前記位置情報取得手段は、前記軸中心検出用センサに前記検出体を接近させる際に、前記検出体を所定回転数で回転させた状態とすることを特徴とする工作機械の基準位置検出装置。
請求項10に記載の発明の構成上の特徴は、請求項9において、前記検出体の前記所定回転数は、加工時における前記工具の回転数に設定されていることである。
請求項11に記載の発明の構成上の特徴は、請求項10において、前記軸中心検出用センサは、前記テーブルのうち前記工作物を載置し得る領域の外部に設置されていることである。
請求項12に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1〜11の何れか一項において、前記軸中心検出用センサは、前記工具の工具長および工具径の少なくとも一方を測定する工具センサであることである。
(工作機械の基準位置検出方法)
上記の課題を解決するため、請求項13に記載の工作機械の基準位置検出方法の発明の構成上の特徴は、
直進軸および回転軸を動作させることにより、テーブルに載置された工作物に対して、主軸台に回転可能に支持された工具を相対移動させて加工する工作機械の基準位置検出方法であって、
前記主軸台に回転可能に設けられ、前記工具を支持する回転体と、
前記回転体に固定される検出体と、
平面状または直線状の検出域を有し、当該検出域に直交する検出方向が前記テーブルの前記回転軸に対して垂直になるように前記テーブルに設置された軸中心検出用センサと、
前記回転軸を回転させて前記テーブルを前記回転軸における複数の位相に位置決めする位置決め工程と、
それぞれの前記位相において、前記検出方向から前記検出体を前記軸中心検出用センサに接近させ、前記軸中心検出用センサが前記検出域において検出する前記検出体の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
それぞれの前記位相において検出された前記検出体の位置情報に基づいて前記回転軸の軸中心を検出する基準位置検出工程と、
を備えることである。
請求項1に係る発明によると、位置決め手段により設定された複数の位相にテーブルを位置決めするとともに、位置情報取得手段がそれぞれの位相において軸中心検出用センサが検出する検出体の位置情報を取得する。そして、基準位置検出手段は、検出された複数の検出体の位置情報に基づいて、工作機械の基準位置に含まれる回転軸の軸中心を検出する構成となっている。ここで、検出体は、工作機械の主軸台に回転可能に設けられた回転体に固定される、加工工具や専用の測定器などを含む軸部材である。この回転体および検出体は、主軸台に対して回転するものであり、工作機械の主軸に相当する。
軸中心検出用センサは、平面状または直線状の検出域を有する検出器である。平面状の検出域を有するものとしては、例えば、静電容量式検出器や磁気式検出器などがある。軸中心検出用センサとして平面状の検出域を有する場合に、軸中心検出用センサは、電極からなる検出部を有し、検出体がこの検出部に接触を含む所定距離にまで接近した際に、検出体の位置を検出している。また、軸中心検出用センサは、検出部から所定距離だけ離間した位置において検出体を検出可能な領域を平面状の検出域とし、この検出域に直交する方向を当該軸中心検出用センサの検出方向としている。そして、平面状の検出域を有する軸中心検出用センサは、この検出方向が回転軸に対して垂直になるようにテーブルに設置されている。
また、直線状の検出域を有するものとしては、例えば、レーザ検出器などがある。軸中心検出用センサとしてレーザ検出器を使用する場合に、レーザ検出器は、レーザ発振器および受光器からなり、レーザの一部を検出体が遮断することにより検出体の位置を検出している。また、軸中心検出用センサは、レーザ発振器から受光器まで間の線分を直線状の検出域とし、この検出域に直交する方向を当該軸中心検出用センサの検出方向としている。つまり、この場合の検出方向は、上記の線分と直交する平面において、上記の線分を中心とする円の径方向となる。そして、直線状の検出域を有する軸中心検出用センサは、この検出方向の少なくとも一部が回転軸に対して垂直になるように、即ち上記の線分の延伸方向が回転軸に対して垂直または平行になるように、テーブルに設置されている。
ここで、軸中心検出用センサの検出域における「検出方向が回転軸に対して垂直」とは、回転軸に直交する何れかの直線に対して、検出方向が垂直になっていることをいう。換言すれば、回転軸が直交する何れかの平面に検出方向が含まれていることをいう。よって、検出方向が回転軸に対して垂直であっても、軸中心検出用センサの検出域と、回転軸とが交差するとは限らない。
このような構成において、検出体は、軸中心検出用センサに対して接近され、その位置を検出される。これにより、工作機械の基準位置に含まれる回転軸の軸中心を検出することができる。また、従来、回転軸の軸中心を検出するためにワークテーブル上に配置した測定治具が不要となるため、基準位置の検出を簡易化することができる。よって、例えば、ワークテーブル上には加工対象である工作物を載置した状態で回転軸の軸中心を検出する構成としてもよい。これにより、加工時に近い状態となることから、より高精度に回転軸の軸中心を検出することができる。
請求項2に係る発明によると、位置情報取得手段は、検出方向が第一直進軸および第二直進軸に垂直となるテーブルの位相において、検出体を第一軸中心検出用センサに接近させ、第一軸中心検出用センサが検出域において検出することにより、第一位置情報および第二位置情報を取得する。そして、基準位置検出手段は、第一位置情報および第二位置情報に基づいて第一回転軸の軸中心を検出する構成となっている。ここで、第一回転軸は、工作機械におけるテーブルの回転軸であって、テーブルを所定の位相に位置決めするために位置決め手段により回転される。また、第一軸中心検出用センサは、検出域における検出方向が第一回転軸に対して垂直になるように設置される軸中心検出用センサである。
このような構成により、基準位置検出手段は、第一位置情報に基づいて第一直進軸の軸方向における第一回転軸の軸中心座標を算出することができる。同様に、基準位置検出手段は、第二位置情報に基づいて第二直進軸の軸方向における第一回転軸の軸中心座標を算出することができる。これにより、基準位置検出手段は、第一回転軸の軸中心を検出することができる。
例えば、工作機械がB軸回りに回転するターンテーブルを有する場合に、第一軸中心検出用センサは、検出域における検出方向がB軸に対して垂直となるように設置される。そして、その検出方向がX軸およびZ軸と垂直となる4箇所のターンテーブルの位相のうち少なくとも3箇所以上の位相において、検出体の位置情報を取得することにより、B軸のX座標およびZ座標が算出される。このようにして、基準位置検出装置は、ターンテーブルを有する工作機械において、ターンテーブルの回転軸の軸中心を検出することができる。
請求項3に係る発明によると、位置情報取得手段は、少なくとも異なる3箇所の位相において、検出体を複数の検出方向から第二軸中心検出用センサに接近させ、第二軸中心検出用センサが検出域において検出することにより第三位置情報を取得する。そして、基準位置検出手段は、第三位置情報に基づいて第二回転軸の軸中心を検出する構成となっている。ここで、第二回転軸は、工作機械におけるテーブルの回転軸であって、テーブルを所定の位相に位置決めするために位置決め手段により回転される。また、第二軸中心検出用センサは、検出域における検出方向が第二回転軸に対して垂直になるように設置される軸中心検出用センサである。
このような構成により、基準位置検出手段は、それぞれの位相における第二軸中心検出用センサの検出域が位置する、第二直進軸の軸方向位置および第三直進軸の軸方向位置を第三位置情報に基づいて検出することができる。これにより、基準位置検出手段は、例えば、第二軸中心検出用センサの検出域のそれぞれの位置を通る円弧の中心を求めることにより、第二回転軸の軸中心を検出することができる。
例えば、工作機械がA軸回りに回転するチルトテーブルを有する場合に、第二軸中心検出用センサは、検出域における複数の検出方向がA軸に対してともに垂直となるように設置される。これは、第二軸中心検出用センサは、平面状の検出域を有する場合に、当該検出域を有する複数の検出器により構成され、それぞれの検出方向がA軸に対して垂直となるように設置される。一方で、第二軸中心検出用センサは、直線状の検出域を有する場合に、当該検出域の延伸方向がA軸に対して垂直となるように設置される。
そして、所定の位相において、検出体を複数の検出方向から第二軸中心検出用センサに接近させることで、その位相における第二軸中心検出用センサの検出域のZ座標およびY座標が算出される。そして、これをチルトテーブルの異なる3箇所の位相で行い、それぞれの位相における第二軸中心検出用センサの検出域の検出位置を通る円弧の中心を求めることにより、A軸のZ座標およびY座標が算出される。このようにして、基準位置検出装置は、チルトテーブルを有する工作機械において、チルトテーブルの回転軸の軸中心を検出することができる。
また、工作機械が互いに直交する第一回転軸および第二回転軸を有する場合に、第二軸中心検出用センサは第一軸中心検出用センサと同一の軸中心検出用センサとする構成としてもよい。例えば、工作機械がA軸回転するチルトテーブル上にB軸回転するターンテーブルを有する構成とする。この時、A軸方向に対してB軸方向が垂直であれば、軸中心検出用センサの検出域における検出方向をA軸およびB軸に対して垂直になるように軸中心検出用センサを設置することが可能である。このようにすることにより、第一軸中心検出用センサおよび第二軸中心検出用センサを共通化し、機械構成を簡素化することができる。
請求項4に係る発明によると、補正手段は、回転軸の軸中心から算出される回転軸の位置誤差に基づいて、基準位置検出装置に記憶されている回転軸の軸中心を補正する構成となっている。上述したように、基準位置検出装置は、従来と比較して基準位置検出を簡易化することができる。これにより、例えば、加工に使用する工具の変更や載置された工作物の重量変化に伴う回転軸の変位量の変動を検出するように、加工時に近い状態における基準位置検出を適宜行うことができる。そして、基準位置検出装置がこのような回転軸の位置誤差に基づく補正量を算出することにより、工作機械は補正量を加工に反映し、より高精度な加工を行うことができる。
請求項5に係る発明によると、位置情報取得手段は、第一位置情報および第二位置情報を取得した各位相において、検出体を第一軸傾き検出用センサに接近させ、第一軸傾き検出用センサが検出域において検出することにより第四位置情報を取得する。そして、基準位置検出手段は、第一位置情報、第二位置情報および第四位置情報に基づいて第一回転軸の傾きを検出する構成となっている。ここで、第一軸傾き検出用センサは、検出域における検出方向が第一回転軸に対して平行になるようにテーブルに設置されるものである。
このような構成により、基準位置検出手段は、第一位置情報および第二位置情報に加えて、各位置情報を取得した際に検出体の第一回転軸における軸方向位置を第四位置情報として取得する。つまり、基準位置検出手段は、検出体が第一軸中心検出用センサおよび第一軸傾き検出用センサにより検出された異なる3箇所以上の座標値に基づいて、第一回転軸の軸方向を法線とする平面を算出することができる。これにより、基準位置検出手段は、第一回転軸の軸傾きを検出することができる。
例えば、工作機械がB軸回りに回転するターンテーブルを有する場合に、第一軸傾き検出用センサは、検出域における検出方向がB軸に対して平行になるように設置される。そして、第一軸傾き検出用センサは、異なる3箇所以上の位相において、検出体のB軸における軸方向位置を検出する。これにより、検出体を検出した各点の座標値からB軸が直交する平面を算出する。このようにして、基準位置検出装置は、ターンテーブルを有する工作機械において、ターンテーブルの回転軸の軸傾きを検出することができる。
請求項6に係る発明によると、位置情報取得手段は、第三位置情報を取得した各位相において、検出体を第二軸傾き検出用センサに接近させ、第二軸傾き検出用センサが検出域において検出する検出体の第五位置情報を取得する。そして、基準位置検出手段は、第三位置情報および第五位置情報に基づいて第二回転軸の傾きを検出する構成となっている。ここで、第二軸傾き検出用センサは、検出域における検出方向が第二回転軸に対して平行になるようにテーブルに設置されるものである。
このような構成により、基準位置検出手段は、第三位置情報に加えて、第三位置情報を取得した際に検出体の第二回転軸における軸方向位置を第五位置情報として取得する。つまり、基準位置検出手段は、検出体が第二軸中心検出用センサおよび第二軸傾き検出用センサにより検出された異なる3箇所以上の座標値に基づいて、第二回転軸の軸方向を法線とする平面を算出することができる。これにより、基準位置検出手段は、第二回転軸の軸傾きを検出することができる。
例えば、工作機械がA軸回りに回転するチルトテーブルを有する場合に、第二軸傾き検出用センサは、検出域における検出方向がA軸に対して平行になるように設置される。そして、第二軸傾き検出用センサは、異なる3箇所以上の位相において、検出体のA軸における軸方向位置を検出する。これにより、検出体を検出した各点の座標値からA軸が直交する平面を算出する。このようにして、基準位置検出装置は、チルトテーブルを有する工作機械において、チルトテーブルの回転軸の軸傾きを検出することができる。
請求項7に係る発明によると、検出体は、回転体に支持される工具である構成としている。工作機械による加工において、回転軸の軸中心は、別工具への交換や主軸の回転数などによって変位することがある。つまり、検出体を用いて回転軸の軸中心を検出した後に、加工に使用する工具に交換すると回転軸の軸中心が変位するおそれがある。また、主軸の回転数による影響を考慮すると、実際に使用する工具を回転させた状態で、回転軸の軸中心を検出し、その後に工具を交換することなく加工工程に移行することが望ましい。そこで、上記構成とすることで、加工時に近い状態となることから、より高精度に回転軸の軸中心を検出することができる。
請求項8に係る発明によると、位置情報取得手段は、それぞれの位相において、第一軸中心検出用センサに検出体を接近させる際に、検出体の第一回転軸における軸方向位置が一定に設定されている構成となっている。これは、第一軸中心検出用センサの検出域における検出方向を第一回転軸に対して垂直になるように第一軸中心検出用センサをテーブルに設置し、第一回転軸の軸中心を検出する際の検出体の接近を対象としているものである。この時、第一軸中心検出用センサは、直線状の検出域を有するものとしている。
このような場合に、位置情報取得手段は、検出体を第一回転軸の軸中心に対して求心方向、または、遠心方向から第一軸中心検出用センサに接近させる。この時、上記構成とすることにより、検出体の先端部は、球状に形成することができる。よって、検出体は、軸中心検出用センサの検出域において、より確実に検出されることになる。従って、軸中心検出用センサの検出精度を向上させることができるので、より高精度な回転軸の軸中心を検出することができる。
請求項9に係る発明によると、位置情報取得手段は、軸中心検出用センサに検出体を接近させる際に、検出体を所定回転数で回転させた状態とする構成としている。この時、軸中心検出用センサは、検出体に直接接触することなく検出体の位置を検出可能な非接触式の検出器であるものとしている。このような構成により、軸中心検出用センサにより検出された回転軸の軸中心は、主軸の回転に伴う工作機械の熱変位やベアリング与圧などによる変位量を含ませることができる。
これにより、基準位置検出装置は、回転軸の変位量を測定することができる。ここで、回転軸の変位量とは、工作機械の基準状態において主軸に対する回転軸の位置が、主軸回転状態において主軸に対する回転軸の位置に変位したときの変位量である。また、工作機械の基準状態とは、主軸が停止している状態、且つ、工作物を未載置としている状態としている。つまり、上記のような構成により、主軸の回転に伴う回転軸の変位量である回転軸の位置誤差を測定することができる。そして、例えば、基準位置検出装置が補正手段を備える構成においては、主軸の回転に伴う回転軸の位置誤差を検出し、当該位置誤差に基づく補正量を加工に反映することができる。従って、工作機械の加工精度を向上させることができる。
また、基準位置検出装置が回転軸の軸傾きを検出するために、第一軸傾き検出用センサまたは第二軸傾き検出用センサのうち少なくとも一方を備える場合に、この第一、第二軸傾き検出用センサを非接触式センサとし、位置情報取得手段は、第一、第二軸傾き検出用センサに検出体を接近させる際に、検出体を所定回転数で回転させた状態とする構成としてもよい。これにより、上述した軸中心検出用センサによる検出の際に、検出体を所定回転数で回転させた場合と同様の効果を奏する。
請求項10に係る発明によると、検出体の所定回転数は、加工時における工具の回転数に設定されている構成となっている。工作機械による加工において、回転軸の軸中心は、主軸の回転数などによって変位することがある。これは、回転による主軸の熱変位や固有振動などに起因していることが考えられる。そして、工作機械における加工においては、使用する工具や加工状態などによって回転数が設定される。よって、主軸の回転数による影響を考慮し、加工時における回転数で回転させた状態で、回転軸の軸中心を検出することが望ましい。そこで、上記構成とすることで、加工時に近い状態となることから、より高精度に工作機械の基準位置を検出することができる。
また、基準位置検出装置が回転軸の軸傾きを検出するために、第一軸傾き検出用センサまたは第二軸傾き検出用センサのうち少なくとも一方を備える場合に、位置情報取得手段は、第一、第二軸傾き検出用センサに検出体を接近させる際に、検出体の所定回転数を加工時における工具の回転数に設定する構成としてもよい。これにより、上述した軸中心検出用センサによる検出の際に、検出体を所定回転数で回転させた場合と同様の効果を奏する。
請求項11に係る発明によると、軸中心検出用センサは、テーブルのうち工作物を載置し得る領域の外部に設置されている構成となっている。工作機械による加工において、回転軸の軸中心は、主軸の回転数の他に工作物の載置状態などによって変位することがある。これは、工作物をテーブルに載置した場合に、工作物の重量や載置位置、工作物の固定治具などを含む工作物の載置状態が回転軸の動作に影響を及ぼすことに起因しているものと考えられる。つまり、回転軸の軸中心を検出した後に、テーブルに工作物を載置すると回転軸の軸中心が変位するおそれがある。そこで、工作物の載置状態による影響を考慮し、回転軸の軸中心を検出することが望ましい。そこで、軸中心検出用センサをテーブルのうち工作物を載置し得る領域の外部に設置することで、テーブルに工作物の載置することができるものとしている。これにより、加工時に近い状態となることから、より高精度に工作機械の基準位置を検出することができる。
請求項12に係る発明によると、軸中心検出用センサは、工具の工具長および工具径の少なくとも一方を測定する工具センサである構成としている。一般に、工作機械による加工において、工具センサにより使用する工具の工具長および工具径を測定し、それぞれの補正量を算出している。この工具センサは、接触式または非接触式の測定器であって、平面状または直線状の検出域を有している。そこで、この工具センサの検出方向がテーブルの回転軸に対して垂直になるようにテーブルに設置することで、基準位置検出装置の軸中心検出用センサに適用している。これにより、工具センサが軸中心検出用センサを兼ねるため、コストの低減を図ることができる。
また、基準位置検出装置が回転軸の軸傾きを検出するために、第一軸傾き検出用センサまたは第二軸傾き検出用センサのうち少なくとも一方を備える場合に、これらの第一、第二軸傾き検出用センサは、工具センサである構成としてもよい。この時、工具センサの検出方向がテーブルの回転軸に対して平行になるようにテーブルに設置されていることになる。このような構成により、上述した軸中心検出用センサを工具センサとした場合と同様の効果を奏する。
請求項13に係る発明によると、位置決め工程により設定された複数の位相にテーブルを位置決めするとともに、位置情報取得工程によりそれぞれの位相において軸中心検出用センサが検出する検出体の位置情報を取得する。そして、基準位置検出工程により、検出された複数の検出体の位置情報に基づいて、工作機械の基準位置に含まれる回転軸の軸中心を検出する構成としている。
このような構成において、検出体は、軸中心検出用センサに対して接近され、その位置を検出される。これにより、工作機械の基準位置に含まれる回転軸の軸中心を検出することができる。また、従来、回転軸の軸中心を検出するためにワークテーブル上に配置した測定治具が不要となるため、基準位置の検出を簡易化することができる。よって、例えば、ワークテーブル上には加工対象である工作物を載置した状態で回転軸の軸中心を検出する構成としてもよい。これにより、加工時に近い状態となることから、より高精度に回転軸の軸中心を検出することができる。
また、本発明の工作機械の基準位置検出装置としての他の特徴部分について、本発明の工作機械の基準位置検出方法に同様に適用可能である。そして、この場合における効果についても、上記工作機械の基準位置検出装置としての効果と同様の効果を奏する。
以下、本発明の工作機械の基準位置検出装置および基準位置検出方法を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。工作機械として、5軸マシニングセンタを例に挙げて説明する。つまり、当該工作機械は駆動軸として、相互に直交する3つの直進軸(X,Y,Z軸)と、2つの回転軸(A,B軸)を有する工作機械である。
<第一実施形態>
第一実施形態の工作機械1の基準位置検出装置について図1〜図3を参照して説明する。図1は、第一実施形態の工作機械1の全体図である。図2は、レーザ検出器40を示す図である。図2(a)は、レーザ検出器40の平面図である。図2(b)は、レーザ検出器40の検出方向を示す側面図である。図3は、数値制御装置50を示すブロック図である。
(工作機械1の構成)
工作機械1は、図1に示すように、ベッド2と、X軸移動体10と、Y軸移動体20と、Z軸移動体30と、レーザ検出器40(本発明の「軸中心検出用センサ」に相当する)と、数値制御装置50(本発明の「基準位置検出装置」に相当する)とから構成される。また、この工作機械1は、チルトテーブル12を支持す支持部11により工作物WがA軸回りに回転し、工作物Wを載置するワークテーブル14を支持するターンテーブル13により工作物WがB軸回りに回転する構成となっている。工作物Wは、工作機械1によって加工される被加工部材である。
ベッド2は、床面に設置されるT字型に形成された基台である。また、ベッド2は、2つのZ軸ガイド3と、Z軸駆動用ボールねじ(図示せず)と、Z軸駆動用モータ4と、X軸ガイド(図示せず)と、2本のX軸駆動用ボールねじ(図示せず)と、2つのX軸駆動用モータ5を有する。Z軸ガイド3およびX軸ガイドは、ベッド2の上面にZ軸方向およびX軸方向にそれぞれ平行に設置されている。Z軸駆動用ボールねじは、Z軸ガイド3のほぼ中央に、Z軸ガイド3に平行に設置されている。2本のX軸駆動用ボールねじは、X軸ガイドのほぼ中央に、X軸ガイドに平行に設置されている。これらのZ軸駆動用ボールねじおよびX軸駆動用ボールねじには、それぞれの軸方向に移動可能なボールねじナットが取り付けられている。Z軸駆動用モータ4およびX軸駆動用モータ5は、それぞれZ軸駆動用ボールねじの端側およびX軸駆動用ボールねじの端側に設けられ、それぞれZ軸駆動用ボールねじおよびX軸駆動用ボールねじを回転駆動する。
X軸移動体10は、ベッド2のX軸方向のガイド上に設けられ、ベッド2に対してX軸方向に移動可能な送り台ある。Z軸移動体30は、ベッド2のZ軸方向のガイド上に設けられ、ベッド2に対してZ軸方向に移動可能なコラムである。また、Z軸移動体30は、側面にY軸方向(床面に垂直な方向)のガイドが形成されている。Y軸移動体20は、Z軸移動体30のガイド上に設けられ、Z軸移動体30に対してY軸方向に移動可能な送り台である。
X軸移動体10は、支持部11と、チルトテーブル12と、ターンテーブル13と、ワークテーブル14とを有する。このX軸移動体10は、X軸方向両端側に設けられた一対の支持部11によりチルトテーブル12を支持している。さらに、この支持部11の一方側には、チルトテーブル12を回転可能とするA軸回転用モータ(図示せず)が設けられている。また、X軸移動体10の下方側は、X軸ガイドに摺動可能に嵌合されるとともに、X軸駆動用ボールねじのボールねじナットに連結されている。よって、X軸移動体10は、X軸駆動用ボールねじの回転駆動に伴い、X軸ガイドに沿ってX軸方向に摺動する。
チルトテーブル12は、コの字型形状からなり、両端側がX軸移動体10の一対の支持部11に回転可能に軸支されている。このチルトテーブル12の回転軸は、X軸に平行な軸(A軸)となる。なお、チルトテーブル12は、X軸移動体10の支持部11に設けられているA軸回転用モータの駆動により、A軸回転を行う。さらに、チルトテーブル12の下面側には、ターンテーブル13を回転可能とするB軸回転用モータ(図示せず)が設けられている。
ターンテーブル13は、チルトテーブル12上に載置され、チルトテーブル12の載置面に垂直な方向に回転可能に支持されている。つまり、チルトテーブル12が図1に示す状態の場合には、ターンテーブル13の回転軸は、Y軸に平行な軸(B軸)となる。なお、ターンテーブル13は、チルトテーブル12の下面側に設けられているB軸回転用モータの駆動により、B軸回転を行う。
ワークテーブル14は、ターンテーブル13の上に配置され、上面に載置した工作物Wを治具などにより固定するテーブルである。また、ワークテーブル14は、下面をターンテーブル13に固定されている。また、ワークテーブル14のうち工作物Wを載置し得る領域は、ワークテーブル14の上面としている。このワークテーブル14は、主軸台21に回転可能に支持された工具23に対して、チルトテーブル12のA軸回転によりA軸回転が可能となり、ターンテーブル13のB軸回転によりB軸回転が可能となる。なお、図1に示す状態が、A軸およびB軸の回転角0°と定義される。
Z軸移動体30は、Y軸ガイド(図示せず)と、2本のY軸駆動用ボールねじ(図示せず)と、2つのY軸駆動用モータ31とを有する。このZ軸移動体30の下方側は、Z軸ガイド3に摺動可能に嵌合されると共に、Z軸駆動用ボールねじのボールねじナットに連結されている。すなわち、Z軸移動体30は、Z軸駆動用ボールねじの回転駆動に伴い、Z軸ガイド3に沿ってZ軸方向に摺動する。そして、Z軸移動体30のY軸ガイドは、Z軸移動体30のほぼ中央にY軸方向に平行に配置されている。Y軸駆動用ボールねじは、Y軸ガイドのほぼ中央に、Y軸ガイドに平行に配置されている。このY軸駆動用ボールねじには、軸方向に移動可能なボールねじナットが取り付けられている。そして、Y軸駆動用モータ31は、Y軸駆動用ボールねじの端側に配設され、Y軸駆動用ボールねじを回転駆動する。
Y軸移動体20は、Z軸移動体30の幅方向の中央部に配置され、主軸台21と、回転体22と、工具23(本発明の「検出体」に相当する)とを有する。Y軸移動体20の主軸台21は、Y軸ガイドに摺動可能に嵌合されると共に、Y軸駆動用ボールねじのボールねじナットに連結されている。つまり、主軸台21は、Y軸駆動用ボールねじの回転駆動に伴い、Y軸ガイドに沿ってY軸方向に摺動する。回転体22は、主軸台21のハウジング内に収容された主軸モータにより回転可能に設けられ、工具23を支持している。
工具23は、回転体22の先端に固定されている加工工具である。つまり、工具23は、回転体22を介して主軸台21に回転可能に支持され、主軸モータの回転に伴って回転体22と共に回転する。なお、工具23は、例えば、ボールエンドミル、エンドミル、ドリル、タップなどである。本実施形態において、工具23は、回転軸の軸中心を検出する際の検出体であり、先端部が半球形状のボールエンドミルとして説明する。また、主軸台21に回転可能に支持される回転体22および工具23は、工作機械1における主軸に相当し、Z軸回り(C軸)に回動可能とされている。以下、工具23は、「検出体23」とも称する。
このような構成とされる5軸マシニングセンタである工作機械1は、工具23をベッド2に対してY軸方向およびZ軸方向に移動可能としている。さらに、工作機械1は、工作物Wをベッド2に対してX軸方向に移動可能とし、且つ、工作物WをA軸およびB軸に回転可能としている。
レーザ検出器40は、検出体である工具23を検出する非接触式のセンサである。また、レーザ検出器40は、ワークテーブル14の側面、即ち、ワークテーブル14のうち工作物Wを載置し得る領域の外部に設置されている。レーザ検出器40は、図2(a)に示すように、凹字型形状の基台41の内側に対向して設けられたレーザ発振器42とフォトダイオード等の受光器43を備えている。そして、このレーザ検出器40は、レーザ発振器42からのレーザを検出体23が遮ることによる受光器43の受光量の変化に基づいて検出体23の先端部の位置を検出することができるものである。
そして、レーザ検出器40は、受光器43に接続された図示しないアンプを介して検出体23の先端部がレーザの一部を遮ったことを数値制御装置50に通知する。これにより、数値制御装置50は、検出体が検出された時における制御軸(直進軸および回転軸)の現在位置から検出体23の先端部の位置を検出することができる。ここで、レーザ検出器40による検出おいて、検出体23がレーザ全体を遮る必要はなく、全く遮らない時の受光量に対して所定量だけ受光量が減少したことによって検出することが可能である。
また、レーザ検出器40は、レーザ発振器42から受光器43までの間において検出体の検出が可能な領域とし、この間の線分を直線状の検出域44としている。このような直線状の検出域44を有するレーザ検出器40は、この直線状の検出域44を中心軸とする径方向がセンサの検出方向となる。つまり、レーザ検出器40の検出方向は、図2(b)に示すように、直線状の検出域44に直交する平面S上において、検出域44の全周に亘って存在するものである。例えば、図2(b)におけるレーザ検出器40の検出方向d1,d2は、平面Sに平行で、且つ互いに直交している。検出方向d1はレーザ検出器40が設置されたワークテーブル14の側面に垂直な方向であり、検出方向d2はワークテーブル14の上面に垂直な方向としている。
そして、レーザ検出器40は、検出域44における検出方向が回転軸であるA軸およびB軸に対して垂直になるようにワークテーブル14の側面に設置されている。具体的には、図2(b)に示すように、検出域44における検出方向d1,d2がA軸に対して垂直となり、検出域44における検出方向d1がB軸に対して垂直となる。ここで、レーザ検出器40の検出域44における「検出方向がA軸に対して垂直」とは、A軸に直交する平面に対して、検出方向が平行になっている状態をいう。よって、検出方向が回転軸に対して垂直であっても、レーザ検出器40における直線状の検出域44と、回転軸(A,B軸)とが交差するとは限らない。また、「検出方向がB軸に対して垂直」についてもA軸と同様である。
このように構成されるレーザ検出器40は、回転軸の軸中心を検出する軸中心検出用センサであるとともに、工具23の工具長および工具径を測定する工具センサであるものとしている。一般に、工作機械1による加工において、工具センサにより使用する工具の工具長および工具径を測定し、それぞれの補正量を算出している。この工具センサは、接触式または非接触式の測定器であって、平面状または直線状の検出域を有している。そこで、この工具センサの検出方向がテーブルの回転軸に対して垂直になるようにテーブルに設置することで、基準位置検出装置の軸中心検出用センサに適用している。つまり、本実施形態のレーザ検出器40は、工具センサとしての機能を兼ねており、工具交換後などに工具23の工具長および工具径を測定するのに使用される。
数値制御装置50は、図3に示すように、制御部51と、位置決め部52と、位置情報取得部53と、基準位置検出部54と、補正部55とを備える。制御部51は、入力されるNCデータに基づいて、X軸駆動用モータ5、Y軸駆動用モータ31、Z軸駆動用モータ4、A軸回転用モータ、B軸回転用モータ、および、主軸モータなどを制御する。また、数値制御装置50は、工作機械1の基準位置に含まれる回転軸の軸中心を検出する基準位置検出装置である。この基準位置である回転軸の軸中心は、A軸中心位置およびB軸中心位置であって、工作機械1を構成する実軸の中心位置である。これにより、数値制御装置50は、工作機械1における基準位置に含まれる回転軸の軸中心を検出し、この軸中心に基づいて制御部51による各モータなどの制御を補正し加工の高精度化を図っている。
位置決め部52は、制御部51を介してA軸を回転させてチルトテーブル12をA軸における複数の位相に位置決めする位置決め手段である。さらに、位置決め部52は、制御部51を介してB軸を回転させてターンテーブル13をB軸における複数の位相に位置決めする。このように、位置決め部52は、基準位置を検出するための検出対象である回転軸における複数の位相に位置決めし、基準位置検出における位置決め工程に相当するものである。
位置情報取得部53は、レーザ検出器40が検出域44において検出する検出体23の位置情報を取得する位置情報取得手段である。本実施形態では位置情報の取得において、位置情報取得部53は、制御部51を介して主軸モータを回転させ、検出体である工具23を所定回転数で回転させる。また、この所定回転数は、加工時における工具の回転数に設定されている。そして、位置情報取得部53は、検出体23を回転させた状態で、制御部51を介して直進軸の駆動用モータを駆動させ、レーザ検出器40の検出方向から検出体23をレーザ検出器40に接近させる。ここで、検出体23を接近させる検出方向は、レーザ検出器40の検出方向成分を含む方向としている。
そして、検出体23がレーザ検出器40に近付いていくと、レーザ検出器40の検出域44において検出体23が検知される。この時、位置情報取得部53は、工作機械1における検出体23の位置情報を制御部51から取得する。これを、位置決め部52が位置決めするそれぞれの位相に対して繰り返し行う。このように、位置情報取得部53は、検出体の位置情報を取得し、基準位置検出における位置情報検出工程に相当するものである。
基準位置検出部54は、検出された検出体23の位置情報に基づいて、工作機械1の基準位置に含まれるA軸およびB軸の軸中心を検出する基準位置検出手段である。また、基準位置検出部54による軸中心の検出は、位置決め部52が位置決めするそれぞれの位相において、位置情報取得部53が取得した検出体23の位置情報に基づいている。このように、基準位置検出部54は、検出体の位置情報に基づいて回転軸の軸中心を検出し、基準位置検出における基準位置検出工程に相当するものである。
補正部55は、基準位置であるA軸およびB軸の軸中心から算出される回転軸の位置誤差に基づいて、数値制御装置50のメモリに記憶されている回転軸の軸中心を補正する補正手段である。本実施形態では、レーザ検出器40に接近させる検出体は、所定回転数で回転させた検出体23としている。これにより、主軸の回転に伴う回転軸の変位量である回転軸の位置誤差を測定することになる。ここで、回転軸の変位量とは、工作機械の基準状態において主軸に対する回転軸の位置が、主軸回転状態において主軸に対する回転軸の位置に変位したときの変位量である。また、工作機械の基準状態とは、主軸が停止している状態、且つ、工作物を未載置としている状態としている。
つまり、補正部55は、このような回転軸の変位量から算出される位置誤差に基づいて回転軸の軸中心を補正し、基準位置を加工に反映させている。このように、補正部55は、検出対象の回転軸の軸中心を補正し、基準位置検出における補正工程に相当するものである。
(回転軸の誤差)
ここで、5軸マシニングセンタである工作機械1の回転軸の誤差について図1,4を参照して説明する。図4は、回転軸の誤差(傾き誤差および位置誤差)を説明する図である。図4(a)は本実施形態における検出体23とレーザ検出器40の位置関係を示す図であり、図4(b)は回転軸の誤差を示す図である。図1に示す状態において、工作機械1の回転軸のうちチルトテーブル12の回転軸であるA軸は、X軸と一致することが理想的な状態である。同様に、工作機械1の回転軸のうちターンテーブル13の回転軸であるB軸は、Y軸と一致することが理想的な状態である。さらに、A軸とB軸とは、X軸およびY軸の交点において交差することが理想的な状態である。
また、上記の構成からなる工作機械1は、図1に示す状態では、直進軸の移動のみで検出体23をレーザ検出器40に接近させると、その接近可能な方向が限られる。そこで、本実施形態において、回転軸の軸中心の検出は、チルトテーブル12を90°回転させ、図4(a)に示すように、B軸が主軸の回転軸であるZ軸と平行となる状態で実行されるものとする。つまり、直進軸のうちY軸およびZ軸に対してA軸の軸方向が直交し、直進軸のうちX軸およびY軸に対してB軸の軸方向が直交する状態である。以下、工作機械1がこのような状態にあるものとして、工作機械1の回転軸の誤差について説明する。
上記の状態において、A軸がX軸と一致するとともにB軸がZ軸と一致し、X軸およびZ軸の交点においてA軸とB軸が交差することが理想的な状態である。ところが、チルトテーブル12を軸支するためのX軸移動体10の一対の支持部11に形成された貫通孔の加工誤差、X軸移動体10およびチルトテーブル12の組付誤差等により、A軸の軸心がX軸と一致しないことがある。すなわち、図4(b)に示すように、A軸の軸心がX軸に対して、傾き誤差を有する場合がある。ここで、A軸の傾き誤差は、X−Y平面に対する傾き誤差角度(A軸X−Y平面傾き誤差角度)αと、X−Z平面に対する傾き誤差角度(A軸X−Z平面傾き誤差角度)βとにより表すことができる。
また、ターンテーブル13を回転支持するためのチルトテーブル12に形成された貫通孔の加工誤差、ターンテーブル13の組付誤差等により、B軸の軸心が図1の状態においてY軸と一致しないことがある。すなわち、チルトテーブル12を90°回転させた状態では、図4(b)に示すように、B軸の軸心がZ軸に対して、傾き誤差を有する場合がある。ここで、B軸の傾き誤差は、X−Y平面に対する傾き誤差角度(B軸X−Y平面傾き誤差角度)θと、Y−Z平面に対する傾き誤差角度(B軸Y−Z平面傾き誤差角度)γとにより表すことができる。
また、上述したように、A軸とB軸とは、X軸およびZ軸の交点において交差することが理想的な状態である。しかし、X軸移動体10、チルトテーブル12、およびターンテーブル13などの加工誤差や組付誤差等により、図4(b)に示すように、A軸とB軸とがX軸とZ軸の交点において交差しないことがある。すなわち、図4(b)に示すように、A軸の軸心およびB軸の軸心が各直進軸に対して位置誤差を有する場合がある。
ここで、X軸およびZ軸の交点を基準中心位置(基準位置)Opとする。そして、A軸およびB軸のX座標値およびZ軸標値が同一となるA軸およびB軸の位置をA軸中心位置(実軸心上位置)OArおよびB軸中心位置(実軸心上位置)OBrとする。ここで、A軸中心位置OArおよびB軸中心位置OBrのX軸心誤差をΔXとし、A軸中心位置OArのY軸心誤差をΔYとし、A軸中心位置OArおよびB軸中心位置OBrのZ軸心誤差をΔZとする。さらに、A軸中心位置OArとB軸中心位置OBrのY座標値の差であるAB軸心誤差をΔHとする。そうすると、A軸中心位置OArの座標は(ΔX,ΔY,ΔZ)となり、B軸中心位置OBrの座標は(ΔX,ΔH’,ΔZ)となる。ここで、X軸心誤差ΔX、Y軸心誤差ΔY、Z軸心誤差ΔZ、AB軸心誤差ΔHを位置誤差といい、B軸中心位置OBrのY座標値ΔH’は、ΔH−ΔYとなる。
(基準位置の検出)
続いて、上述した回転軸の誤差のうち位置誤差を対象とした工作機械1の基準位置の検出について、図5〜図9を参照して説明する。図5は、B軸の軸中心を補正するフローチャートである。図6は、B軸の軸中心におけるX座標値の算出を説明する図である。図6(a)(b)は所定の位相において検出体を軸中心検出用センサに接近させる図であり、図6(c)は検出体の位置情報からX座標値の算出を説明する図である。図7は、B軸の軸中心におけるY座標値の算出を説明する図である。図7(a)(b)は所定の位相において検出体を軸中心検出用センサに接近させる図であり、図7(c)は検出体の位置情報からY座標値の算出を説明する図である。
図8は、A軸の軸中心を補正するフローチャートである。図9は、A軸の軸中心の検出を説明する図である。図9(a)は検出体の位置情報からA軸の軸中心の検出する説明図であり、図9(b)は所定の位相において検出体を軸中心検出用センサに接近させる図である。また、基準位置の検出において、ワークテーブル14に対して検出体23を相対移動させるが、説明を容易にするために直進軸に対して回転軸を固定した状態を図示している。
基準位置検出装置である数値制御装置50は、基準位置に含まれる回転軸(A軸およびB軸)の軸中心を検出し、回転軸の変位量に基づいて回転軸の位置誤差を算出する。そして、この位置誤差に基づいて記憶されている回転軸の軸中心を補正する。また、ここでは説明を簡易にするために、回転軸が傾き誤差を有さない、または傾き誤差の補正がなされているものとし、回転軸の軸中心の検出(位置誤差の算出)のみを対象として説明する。
また、数値制御装置50による基準位置の検出および補正は、本実施形態では、加工時に工具交換した場合に、工具交換の直後に実行される。この時、工具交換により主軸台21に支持されている検出体である工具23は、予定される所定回転数、即ち加工時における工具の回転数で回転している状態となる。また、加工時における工具交換の度に基準位置の検出が実行されるため、ワークテーブル14には加工途中の工作物Wが載置されている状態である。
(B軸の軸中心補正)
数値制御装置50によるターンテーブル13の回転軸であるB軸(本発明の「第一回転軸」に相当する)の軸中心を補正する場合について説明する。まず、B軸が主軸の回転軸であるZ軸と平行となる状態となるように、A軸を90°回転させて位置決めする(S101)。これにより、チルトテーブル12が90°回転した状態となる。つまり、レーザ検出器40は、図4(a)に示すように、検出域44における検出方向のうち少なくとも検出方向d1がA軸およびB軸に対して垂直になるようにワークテーブル14に設置されていることになる。つまり、レーザ検出器40は、B軸の軸中心を検出するための軸中心検出用センサと、A軸の軸中心を検出するための軸中心検出用センサとを共通のものとして兼用され、本発明の「第一軸中心検出用センサ」および「第二軸中心検出用センサ」に相当するものである。
また、上記構成において、第一軸中心検出用センサであるレーザ検出器40の検出域44の検出方向d1は、B軸に対して垂直になるように設置されている。また、工作機械1のチルトテーブル12が90°回転し、B軸が主軸の回転軸であるZ軸と平行となる状態にある。つまり、直進軸であるX軸およびY軸に対してB軸の軸方向が直交する状態であり、X軸およびY軸は、本発明の「第一直進軸」および「第二直進軸」に相当する。
数値制御装置50の位置決め部52は、B軸の軸中心補正において、Y軸と検出域44の検出方向d1が垂直となるように設定されたX軸に対称な2箇所の位相と、X軸と検出域44の検出方向d1が垂直となるように設定されたY軸に対称な2箇所の位相と、からなる計4箇所の位相に位置決めする。換言すると、位置決め部52は、直線状の検出域44の延伸方向がY軸およびX軸と平行となる計4箇所の位相に位置決めする。
そして、位置決め部52は、図6(a)に示すように、検出域44の検出方向d1がY軸と垂直となる一方の箇所の位相にターンテーブル13を位置決めする(S102)。ここで、B軸の変位量を含むB軸中心位置(実軸心上位置)OBrに対して、数値制御装置50のメモリに記憶されている工作機械の基準状態におけるB軸の中心位置は、図4(b)に示したように基準位置Opである。また、B軸中心位置OBrと基準位置OpのX−Y平面上の距離をB軸位置誤差ΔBとする。
次に、位置情報取得部53は、所定回転数で回転している検出体23をレーザ検出器40の検出域44に接近させる(S103)。この時、位置情報取得部53は、基準位置Opに向かって、検出体23をX軸の+方向に接近させている。また、この接近において、検出体23のZ方向位置は、一定に維持されている。そして、レーザ検出器40は、検出域44において検出体23がレーザの一部を遮ったことを数値制御装置50に通知する(S104)。次に、位置情報取得部53は、検出体23が検出された時における制御軸の現在位置から検出体23の先端部の位置を位置情報として取得する(S105)。この時、検出体23の先端部において、レーザ検出器40に検出された位置を検出位置PB1とする。
そして、位置決め部52が設定した4箇所の位相において、上述したような検出体23の位置情報の取得を繰り返すために、4箇所とも終了したかを判定する(S106)。ここでは、最初の位相のみが終了した状態なので、S102に戻る(S106:No)。そして、位置決め部52は、図6(b)に示すように、検出域44の検出方向d1がY軸と垂直となる他方の箇所の位相にターンテーブル13を位置決めする(S102)。つまり、2箇所目の位相は、1箇所目の位相がY軸に対称な位相である。
次に、位置情報取得部53は、検出体23をレーザ検出器40の検出域44に接近させる(S103)。この時、位置情報取得部53は、基準位置Opに向かって、X軸の−方向に接近させている。また、この接近における検出体23のZ方向位置は、最初の位相における接近と同じZ方向位置に設定され、一定に維持されている。そして、レーザ検出器40は、検出域44において検出体23を検出したことを数値制御装置50に通知する(S104)。次に、位置情報取得部53は、検出体23が検出された時における制御軸の現在位置から検出体23の先端部の位置を位置情報として取得する(S105)。この時、検出体23の先端部において、レーザ検出器40に検出された位置を検出位置PB2とする。
続いて、X軸方向の接近のみが終了した状態なので、S102に戻る(S106:No)。そして、位置決め部52は、図7(a)に示すように、検出域44の検出方向d1がX軸と垂直となる一方の箇所の位相にターンテーブル13を位置決めする(S102)。次に、位置情報取得部53は、検出体23をレーザ検出器40の検出域44に接近させる(S103)。この時、位置情報取得部53は、基準位置Opに向かって、Y軸の−方向に接近させている。また、この接近における検出体23のZ方向位置は、一定に維持されている。そして、レーザ検出器40は、検出域44において検出体23を検出したことを数値制御装置50に通知する(S104)。次に、位置情報取得部53は、検出体23が検出された時における制御軸の現在位置から検出体23の先端部の位置を位置情報として取得する(S105)。この時、検出体23の先端部において、レーザ検出器40に検出された位置を検出位置PB3とする。
さらに、Y軸方向の最初の位相のみが終了した状態なので、S102に戻る(S106:No)。そして、位置決め部52は、図7(b)に示すように、検出域44の検出方向d1がX軸と垂直となる他方の箇所の位相にターンテーブル13を位置決めする(S102)。次に、位置情報取得部53は、検出体23をレーザ検出器40の検出域44に接近させる(S103)。この時、位置情報取得部53は、基準位置Opに向かって、Y軸の+方向に接近させている。また、この接近における検出体23のZ方向位置は、3箇所目の位相における接近と同じZ方向位置に設定され、一定に維持されている。
そして、レーザ検出器40は、検出域44において検出体23を検出したことを数値制御装置50に通知する(S104)。次に、位置情報取得部53は、検出体23が検出された時における制御軸の現在位置から検出体23の先端部の位置を位置情報として取得する(S105)。この時、検出体23の先端部において、レーザ検出器40に検出された位置を検出位置PB4とする。
位置情報取得部53により、位置決め部52が設定した4箇所すべての位相における検出体23の位置情報を取得した場合(S106:Yes)、S107に進む。ここで、検出域44の検出方向d1をY軸と垂直となる位相において、検出体23をX軸の+方向および−方向に接近させて取得した2箇所の位相における位置情報を第一位置情報とする。同様に、検出域44の検出方向d1をX軸と垂直となる位相において、検出体23をY軸の+方向および−方向に接近させて取得した2箇所の位相における位置情報を第二位置情報とする。
基準位置検出部54は、この第一位置情報および第二位置情報に基づいてB軸の軸中心を検出する(S107)。具体的には、基準位置検出部54は、まず、図6(c)に示すように、第一位置情報における2箇所の位相のX座標値の中間値を、検出したB軸の軸中心のX座標値とする。同様に、基準位置検出部54は、図7(c)に示すように、第二位置情報における2箇所の位相のY座標値の中間値を、検出したB軸の軸中心のY座標値とする。このようにして、基準位置検出部54は、B軸に係る実軸の軸中心、即ちB軸中心位置OBrを検出する。
補正部55は、S107により検出されたB軸中心位置OBrと、数値制御装置50のメモリに記憶されている基準位置Opとに基づいて、B軸位置誤差ΔBを算出する(S108)。つまり、補正部55は、B軸のX軸方向の補正量ΔXおよびB軸のY座標方向の補正量ΔH’を算出する。そして、補正部55は、B軸位置誤差ΔBに基づいて、数値制御装置50のメモリに記憶されている基準位置Opを補正する(S109)。このようにして、数値制御装置50は、工作機械1における基準位置であるB軸の軸中心を検出し、位置誤差を測定した後、この位置誤差に基づいて記憶されている基準位置Opを補正し、処理を終了する。
(A軸の軸中心補正)
次に、数値制御装置50によるチルトテーブル12の回転軸であるA軸(本発明の「第二回転軸」に相当する)の軸中心を補正する場合について説明する。上記構成において、第二軸中心検出用センサであるレーザ検出器40の検出域44の検出方向d1,d2は、A軸に対して垂直になるように設置されている。また、工作機械1のチルトテーブル12が90°回転し、B軸が主軸の回転軸であるZ軸と平行となる状態を初期状態として実行される。また、B軸の回転角度は、0°を維持した状態で実行される。つまり、直進軸であるY軸およびZ軸に対してA軸の軸方向が直交する状態であり、Y軸およびZ軸は、本発明の「第二直進軸」および「第三直進軸」に相当する。
数値制御装置50の位置決め部52は、A軸の軸中心補正において、Y軸およびZ軸に対してA軸の軸方向が垂直になる状態において、図9(a)に示すように、異なる3箇所の位相に位置決めする。そして、位置決め部52は、最初にA軸および直線状の検出域44の延伸方向の両方に直交する直線LがY軸と平行となる箇所の位相にチルトテーブル12を位置決めする(S201)。ここで、A軸の変位量を含むA軸中心位置(実軸心上位置)OArに対して、数値制御装置50のメモリに記憶されている工作機械の基準状態におけるA軸の中心位置は、図4(b)に示したように基準位置Opである。また、A軸中心位置OArと基準位置OpのY−Z平面上の距離をA軸位置誤差ΔAとする。
次に、位置情報取得部53は、所定回転数で回転している検出体23をレーザ検出器40の検出域44に接近させる。ここで、位置情報取得部53は、それぞれの位相において、検出体23を異なる複数の方向からレーザ検出器40に接近させる。本実施形態においては、同一の位相における接近回数を2回に規定し、Y軸方向およびZ軸方向の2方向から接近させている。
そこで、位置情報取得部53は、図9(b)に示すように、基準位置Opをレーザ検出器40側に距離Dだけシフトさせたシフト位置OAt1に向かって、検出体23をY軸の−方向に接近させている(S202)。この距離Dは、レーザ検出器40がワークテーブル14に設置された際におけるレーザ検出器40とA軸との最短距離である。そして、レーザ検出器40は、検出域44において検出体23がレーザの一部で遮ったことを数値制御装置50に通知する(S203)。次に、位置情報取得部53は、検出体23が検出された時における制御軸の現在位置から検出体23の先端位置を取得する。
続いて、位置情報取得部53が規定した接近回数において、上述したような検出体23の先端部の位置の取得を繰り返すために、規定回数が終了したかを判定する(S204)。ここでは、2回のうち1回目の接近のみが終了した状態なので、S202に戻る(S204:No)。そして、位置情報取得部53は、図9(b)に示すように、シフト位置OAt2に向かって、検出体23をZ軸の−方向に接近させている。このシフト位置OAt2は、シフト位置OAt1のY座標値を1回目の接近において取得した検出体23の先端位置に基づいて変更した位置である。具体的には、シフト位置OAt2のY座標値は、1回目の接近において取得した検出体23の先端位置のY座標値と、検出体である工具23の半径rとの差から算出される。これにより、2回目の接近では、検出体23の先端部がレーザ検出器40により検出されることになる。
そして、レーザ検出器40は、検出域44において検出体23がレーザの一部で遮ったことを数値制御装置50に通知する(S203)。次に、位置情報取得部53は、検出体23が検出された時における制御軸の現在位置から検出体23の先端部の位置を取得する。位置情報取得部53が規定した接近回数において検出体23の先端部の位置を取得した場合(S204:Yes)、S205に進む。位置情報取得部53は、2回目の接近により取得した検出体23の先端部の位置をレーザ検出器40の検出域44における検出位置PA1とし、検出体23の位置情報を取得する(S205)。
ここで、2回目の接近ではシフト位置OAt2に向かうものとしたが、シフト位置OAt1に向けて接近させてもよい。例えば、1回目および2回目の接近で、検出体23における半球状の先端部分が検出される場合に、検出位置PA1は、検出体23としている工具の形状から算出することができる。つまり、ボールエンドミルである工具23の1回目の接近における検出時の先端位置から半径rだけZ軸の+方向にシフトした位置を第一工具中心とする。同様に、工具23の2回目の接近における検出時の先端位置から半径rだけZ軸の+方向にシフトした位置を第二工具中心とする。そして、第一、第二工具中心を中心として描いた半径rの各仮想円の2つの交点のうちレーザ検出器40側の交点を検出位置PA1として算出できる。
そして、位置決め部52が設定した3箇所の位相において、上述したような検出体23の位置情報の取得を繰り返すために、3箇所とも終了したかを判定する(S206)。ここでは、3箇所の位相のうち最初の位相のみが終了した状態なので、S201に戻る(S206:No)。そして、位置決め部52は、図9(a)に示すように、上記の直線LとY軸のなす角が45°となる箇所の位相にチルトテーブル12を位置決めする(S201)。
次に、位置情報取得部53は、検出体23をシフト位置OAt1に向かってY軸の−方向に接近させる(S202)。そして、レーザ検出器40は、検出域44において検出体23がレーザの一部で遮ったことを数値制御装置50に通知する(S203)。次に、位置情報取得部53は、検出体23が検出された時における制御軸の現在位置から検出体23の先端部の位置を取得する。さらに、位置情報取得部53が規定した接近回数において、2回のうち1回目の接近のみが終了した状態なので、S202に戻る(S204:No)。
そして、位置情報取得部53は、検出体23をシフト位置OAt2に向かってZ軸の−方向に接近させている。そして、レーザ検出器40は、検出域44において検出体23がレーザの一部で遮ったことを数値制御装置50に通知する(S203)。次に、位置情報取得部53は、検出体23が検出された時における制御軸の現在位置から検出体23の先端部の位置を取得する。位置情報取得部53が規定した接近回数において検出体23の先端部の位置を取得した場合(S204:Yes)、S205に進む。位置情報取得部53は、2回目の接近により取得した検出体23の先端部の位置をレーザ検出器40の検出域44における検出位置PA2とし、検出体23の位置情報を取得する(S205)。
そして、位置決め部52が設定した3箇所の位相において、上述したような検出体23の位置情報の取得を繰り返すために、3箇所とも終了したかを判定する(S206)。ここでは、3箇所の位相のうち2箇所目の位相が終了した状態なので、S201に戻る(S206:No)。そして、位置決め部52は、図9(a)に示すように、上記の直線LとY軸のなす角が90°となる箇所の位相にチルトテーブル12を位置決めする(S201)。
次に、位置情報取得部53は、上述したステップ(S202〜S205)を実行することにより、検出体23の先端部の位置をレーザ検出器40の検出域44における検出位置PA3とし、検出体23の位置情報を取得する(S205)。位置情報取得部53により、位置決め部52が設定した3箇所すべての位相における検出体23の位置情報を取得した場合(S206:Yes)、S207に進む。ここで、各位相にチルトテーブル12を位置決めして検出体23の検出を行い、S205で算出された検出体23の検出位置PA1〜PA3の3点におけるY,Z座標値を検出体23の第三位置情報とする。
基準位置検出部54は、この第三位置情報に基づいてA軸の軸中心を検出する(S207)。具体的には、基準位置検出部54は、まず、図9(a)に示すように、検出位置PA1〜PA3のY,Z座標値である第三位置情報から求められる円弧Arcを算出する。そして、この円弧Arcの中心座標を検出したA軸の軸中心座標とする。このようにして、基準位置検出部54は、A軸に係る実軸の軸中心、即ちA軸中心位置OArを検出する。
補正部55は、S207により検出されたA軸中心位置OArと、数値制御装置50のメモリに記憶されている基準位置Opとに基づいて、A軸位置誤差ΔAを算出する(S208)。つまり、補正部55は、A軸のY軸方向の補正量ΔAyおよびA軸のZ座標方向の補正量ΔZを算出する。そして、補正部55は、A軸位置誤差ΔAに基づいて、数値制御装置50のメモリに記憶されている基準位置Opを補正する(S209)。このようにして、数値制御装置50は、工作機械1における基準位置であるA軸の軸中心を検出し、位置誤差を測定した後、この位置誤差に基づいて記憶されている基準位置Opを補正し、処理を終了する。
(基準位置検出装置による効果)
上述した工作機械1の基準位置検出装置によれば、位置決め部52により設定された複数の位相にチルトテーブル12およびターンテーブル13を位置決めするとともに、位置情報取得部53がそれぞれの位相においてレーザ検出器40が検出する検出体23の位置情報を取得する。そして、基準位置検出部54は、検出された複数の検出体23の位置情報に基づいて、工作機械1の基準位置に含まれる回転軸(A軸およびB軸)の軸中心を検出する構成となっている。また、レーザ検出器40は、検出域44における検出方向d1がA軸およびB軸に対して垂直になるように、且つ検出方向d2がA軸に対して垂直になるようにワークテーブル14に設置されている。
このような構成において、検出体23は軸中心検出用センサであるレーザ検出器40に対して接近され、その位置を検出される。これにより、工作機械1の基準位置に含まれる回転軸の軸中心を検出することができる。また、検出された回転軸の軸中心は、主軸の回転に伴う工作機械1の熱変位やベアリング与圧などにより変位したものである。また、従来、回転軸の軸中心を検出するためにワークテーブル上に配置した測定治具が不要となるため、基準位置の検出を簡易化することができる。そして、ワークテーブル14上には工作物Wを載置した状態で回転軸の軸中心を検出する構成としている。これにより、加工時に近い状態となることから、より高精度に回転軸の軸中心を検出することができる。
位置情報取得部53は、検出域44の検出方向d1がX軸(第一直進軸)およびY軸(第二直進軸)に垂直となるターンテーブル13の位相(すなわち、直線状の検出域の延伸方向がX軸およびY軸に平行となるターンテーブル13の位相)において、検出体23をレーザ検出器40(第一軸中心検出用センサ)に接近させることにより、第一位置情報および第二位置情報を取得する。そして、基準位置検出部54は、第一位置情報および第二位置情報に基づいてターンテーブル13の回転軸であるB軸の軸中心を検出する構成となっている。
このような構成により、基準位置検出部54は、第一位置情報に基づいてB軸中心のX座標値を算出することができる。同様に、基準位置検出部54は、第二位置情報に基づいてB軸中心のY座標値を算出することができる。これにより、基準位置検出部54は、B軸の軸中心を検出することができる。また、本実施形態において、チルトテーブル12を90°回転させ、B軸が主軸の回転軸であるZ軸と平行となる状態で回転軸の軸中心の検出を実行するものとした。これに対して、工作機械の構成によっては、A軸およびB軸を回転角0°として、算出される第一直進軸および第二直進軸の座標値に基づいて回転軸の軸中心を検出するものとしてもよい。
位置情報取得部53は、Y軸(第二直進軸)およびZ軸(第三直進軸)に対してA軸の軸方向が垂直になる状態における異なる3箇所の位相(すなわち、直線状の検出域44の延伸方向がY軸およびZ軸に垂直になる状態における異なる3箇所の位相)において、複数の検出方向から検出体23をレーザ検出器40(第二軸中心検出用センサ)に接近させることにより第三位置情報を取得する。そして、基準位置検出部54は、第三位置情報に基づいてチルトテーブル12の回転軸であるA軸の軸中心を検出する構成となっている。
このような構成により、基準位置検出部54は、それぞれの位相におけるレーザ検出器40の検出域44が位置する、Y軸方向位置およびZ軸方向位置、即ち検出体23の検出位置PA1〜PA3のY,Z座標値を第三位置情報に基づいて検出することができる。これにより、基準位置検出部54は、第三位置情報それぞれの位置を通る円弧Arcの中心を求めることにより、A軸の軸中心を検出することができる。
また、工作機械1におけるA軸およびB軸は、互いに直交する回転軸である。そこで、本実施形態において、第一軸中心検出用センサと第二軸中心検出用センサを同一のレーザ検出器40とする構成とした。工作機械1のような機械構成の場合、A軸方向に対してB軸方向が垂直であれば、レーザ検出器40の検出域44における検出方向をA軸およびB軸に対して垂直になるようにレーザ検出器40を設置することが可能である。このようにすることにより、第一軸中心検出用センサおよび第二軸中心検出用センサを共通化し、機械構成を簡素化することができる。
補正部55は、回転軸の軸中心から算出される回転軸の位置誤差ΔA,ΔBに基づいて、基準位置検出装置に記憶されている回転軸の軸中心Opを補正する構成となっている。上述したように、基準位置検出装置である数値制御装置50は、従来と比較して基準位置検出を簡易にすることができる。これにより、例えば、加工に使用する工具の変更や載置された工作物Wの重量変化に伴う回転軸の変位量の変動を検出するように、加工時に近い状態における基準位置検出を適宜行うことができる。そして、基準位置検出装置がこのような回転軸の位置誤差ΔA,ΔBに基づく補正量を加工に反映し、より高精度な加工を行うことができる。
検出体23は、回転体に支持される工具23である構成としている。工作機械1による加工において、回転軸の軸中心は、別工具への交換や主軸の回転数などによって変位することがある。つまり、検出体23を用いて回転軸の軸中心を検出した後に、加工に使用する工具に交換すると回転軸の軸中心が変位するおそれがある。また、主軸の回転数による影響を考慮すると、実際に使用する工具を回転させた状態で、回転軸の軸中心を検出し、その後に工具を交換することなく加工工程に移行することが望ましい。そこで、加工に使用する工具を検出体23とすることで、加工時に近い状態となることから、より高精度に回転軸の軸中心を検出することができる。
また、位置情報取得部53は、レーザ検出器40に検出体23を接近させる際に、検出体23を所定回転数で回転させた状態としている。この時、軸中心検出用センサは、レーザ検出器40であり、検出体23に直接接触することなく検出体23の位置を検出可能な非接触式の検出器としている。このような構成により、レーザ検出器40により検出された回転軸の軸中心は、主軸の回転に伴う工作機械1の熱変位やベアリング予圧などによる変位量を含む回転軸の位置誤差を測定することができる。そして、補正部55は、検出された位置誤差に基づく補正量を加工に反映することができる。従って、工作機械の加工精度を向上させることができる。
検出体23の所定回転数は、加工時におる工具の回転数に設定されている構成となっている。工作機械1による加工において、回転軸の軸中心は、主軸の回転数などによって変位することがある。これは、回転による主軸の熱変位や固有振動などに起因していることが考えられる。そして、工作機械1における加工においては、使用する工具や加工状態などによって回転数が設定される。よって、主軸の回転数による影響を考慮し、加工時における回転数で回転させた状態で、回転軸の軸中心を検出することが望ましい。そこで、このような構成とすることにより、加工時に近い状態となることから、より高精度に工作機械1の基準位置を検出することができる。
レーザ検出器40は、ワークテーブル14のうち工作物Wを載置し得る領域の外部に設置されている構成となっている。工作機械1による加工において、回転軸の軸中心は、主軸の回転数の他に工作物Wの載置状態などによって変位することがある。これは、チルトテーブル12およびターンテーブル13に間接的または直接的に固定されるワークテーブル14に工作物W載置した場合に、工作物Wの重量や載置位置、工作物Wの固定治具などを含む工作物Wの載置状態が回転軸の動作に影響を及ぼすことに起因しているものと考えられる。
つまり、回転軸の軸中心を検出した後に、ワークテーブル14に工作物Wを載置すると回転軸の軸中心が変位するおそれがある。そこで、工作物Wの載置状態による影響を考慮し、回転軸の軸中心を検出することが望ましい。そこで、このような構成とすることにより、ワークテーブル14に工作物Wの載置することができるものとしている。これにより、加工時に近い状態となることから、より高精度に工作機械1の基準位置を検出することができる。
さらに、レーザ検出器40は、工具の工具長および工具径を測定する工具センサと兼用としている。このような工具センサは、工具長および工具径の補正を行うため、工作機械の機内に配置されることがある。また、このような工具センサは、接触式または非接触式の測定器であって、平面状または直線状の検出域を有している。そこで、この工具センサの検出方向がテーブルの回転軸に対して垂直になるようにテーブルに設置することで、基準位置検出装置の軸中心検出用センサとして適用することができる。これにより、工具センサが軸中心検出用センサを兼用し、コストの低減を図ることができる。
<第一実施形態の変形態様>
本実施形態のB軸の軸中心補正において、位置決め部52は、計4箇所の位相に位置決めするものとした。そして、位置情報取得部53は、第一位置情報(検出位置PB1,PB2)と第二位置情報(検出位置PB3,PB4)を取得する構成とした。これに対して、位置決め部52が4箇所の位相のうち3箇所の位相に位置決めし、位置情報取得部53は、3箇所の位置情報のみを取得する構成としてもよい。
例えば、2箇所の位相で検出した第一位置情報(検出位置PB1,PB2)と、1箇所の位相で検出した第二位置情報(検出位置PB3)とする。そして、本実施形態において、B軸中心位置OBrのX座標値を第一位置情報から算出する(S107)。ここで、上記のX座標値が算出されると、レーザ検出器40とB軸中心位置OBrまでの距離が算出することができる。そして、ターンテーブル13をB軸中心に回転させ、上述したように1箇所の位相で第二位置情報を取得する。この第二位置情報に上記の距離を加算することにより、B軸中心位置OBrのY座標値を算出することができる。
このような構成においても同様の効果を奏する。また、レーザ検出器40により検出体23を検出する回数を低減することができるため、基準位置検出に必要な時間を短縮することができる。その他に、1箇所の位相で検出した第一位置情報(検出位置PB1または検出位置PB2)と、2箇所の位相で検出した第二位置情報(検出位置PB3,PB4)とに基づいて、B軸中心位置OBrを検出する構成としてもよい。
<第二実施形態>
第二実施形態の工作機械1の基準位置検出装置について、図10,11を参照して説明する。図10(a)は、検出体の位置情報とB軸の関係を示す図である。図10(b)は、検出体の位置情報とA軸の関係を示す図である。図11は、B軸の傾き誤差を示す図である。図11(a)はX−Z平面上のB軸の傾き誤差を示す図である。図11(b)はY−Z平面上のB軸の傾き誤差を示す図である。ここで、第一実施形態の基準位置検出装置は、回転軸の軸中心を検出し、回転軸の変位量に基づいて回転軸の位置誤差を算出するものとした。これに対して、本実施形態では、回転軸であるB軸の軸傾きを検出し、軸傾き誤差を算出することを目的とする。その他の構成については、第一実施形態と実質的に同一であるため、詳細な説明を省略する。
また、本実施形態において基準位置検出装置は、B軸の軸傾き検出に際し、検出方向がB軸に対して平行となるようにテーブルに配置された第一軸傾き検出用センサを備える。この第一軸傾き検出用センサは、平面状または直線状の検出域を有する。ここで、第一実施形態におけるレーザ検出器40は、直線状の検出域44を有し、図2(b)に示すように、検出方向d2がB軸と平行に配置されている。よって、本実施形態では、レーザ検出器40が上記の第一軸傾き検出用センサを兼用するものとして説明する。
(B軸の軸傾き検出)
基準位置検出装置によるB軸の軸傾き検出は、第一位置情報および第二位置情報に加えて、これらの位置情報を取得した各位相におけるB軸の軸方向位置である第四位置情報を取得する。ここで、本実施形態において、第一位置情報は検出位置PB1,PB2のX,Y座標値、第二位置情報は検出位置PB3,PB4のX,Y座標値に相当する。そして、第四位置情報は、検出位置PB1〜PB4のZ座標値に相当する。
これにより、図10(a)に示すように、4箇所の検出位置PB1〜PB4に基づいてB軸を法線とする平面を求めることにより、数値制御装置50に記憶されているB軸に対する傾きを算出することができる。また、B軸を法線とする平面は、少なくとも3箇所の検出位置により求められるが、本実施形態では、4箇所の検出位置からB軸の軸傾きを検出する方法について説明する。
先ず、基準位置検出装置の位置情報取得部53は、第一位置情報および第二位置情報を取得した各位相において、図11(a)(b)に示すように、レーザ検出器40の検出方向から検出体23をレーザ検出器40に接近させる。すなわち、検出体23をZ軸の−方向に接近させている。そして、レーザ検出器40は、検出域44において検出体23がレーザの一部を遮ったことを数値制御装置50に通知する。次に、位置情報取得部53は、検出体23が検出された時における制御軸の現在の位置から検出体23の先端部の位置を位置情報として取得する。これを上述した各位相において繰り返し行うことにより、検出位置PB1〜PB4のZ座標値である第四位置情報を取得する。
次に、検出位置PB1,PB2に基づいて、図11(a)に示すように、X−Z平面上のB軸ベクトルB1を算出する。ここで、B軸ベクトルは、図10(a)に示すように、B軸の軸心の方向を示すものである。すなわち、X−Z平面上のB軸ベクトルB1とは、B軸の軸心のX−Z成分となる。よって、このX−Z平面上のB軸ベクトルB1に基づいて、B軸X−Z平面傾き誤差角度θを算出する。
続いて、B軸Y−Z平面傾き誤差γを算出する。検出位置PB3,PB4に基づいて、図11(b)に示すように、Y−Z平面上のB軸ベクトルB2を算出する。ここで、B軸ベクトルは、上述したように、B軸の軸心の方向を示すものである。すなわち、Y−Z平面上のB軸ベクトルB2とは、B軸の軸心のY−Z成分となる。よって、このY−Z平面上のB軸ベクトルB2に基づいて、B軸Y−Z平面傾き誤差角度γを算出する。
このように、B軸X−Z平面傾き誤差角度θと、B軸Y−Z平面傾き誤差γは算出される。これにより、数値制御装置50は、工作機械1による加工の際に、これらの誤差角度θ,γに基づいて制御部51による各モータなどの制御を補正し加工の高精度化を図っている。例えば、数値制御装置50は、A軸を90°回転させる場合に、B軸Y−Z平面傾き誤差γを補正量としてA軸の回転指令の補正が可能となる。
(基準位置検出装置による効果)
上述した工作機械1の基準位置検出装置によれば、位置情報取得部53は、第一位置情報および第二位置情報を取得した各位相において、検出体23をレーザ検出器40に接近させ、レーザ検出器40が検出域において検出することにより第四位置情報を取得する。そして、基準位置検出部54は、第一位置情報、第二位置情報および第四位置情報に基づいてB軸の傾きを検出する構成となっている。
このような構成により、基準位置検出部54は、検出体23が第一軸中心検出用センサおよびレーザ検出器40により検出された異なる3箇所以上の座標値に基づいて、B軸の軸方向を法線とする平面を算出することができる。これにより、基準位置検出装置は、数値制御装置50に記憶されているB軸の軸方向と比較することにより、B軸の軸傾き誤差を検出することができる。
<第二実施形態の変形態様>
本実施形態では、回転軸のうちB軸の軸傾きのみを検出するものとした。これに対して、基準位置検出装置は、A軸の軸傾きを検出する構成としてもよい。その場合に、基準位置検出は、A軸の軸傾き検出に際し、検出方向がA軸に対して平行となるようにテーブルに配置された第二軸傾き検出用センサを備える。この第二軸傾き検出用センサは、平面状または直線状の検出域を有する。よって、第一、第二実施形態におけるレーザ検出器40に加えて、上記の第二軸傾き検出用センサをテーブルに配置する。
そして、基準位置検出装置によるA軸の軸傾きは、第三位置情報に加えて、この置情報を取得した各位相におけるA軸の軸方向位置である第五位置情報を取得する。ここで、第三位置情報は検出位置PA1〜PA3のY,Z座標値に相当する。そして、第五位置情報は、検出位置PA1〜PA3のX座標値に相当する。これにより、図10(b)に示すように、3箇所の検出位置PA1〜PA3に基づいてA軸を法線とする平面を求めることにより、数値制御装置50に記憶されているA軸に対する傾きを算出することができる。また、第五位置情報の取得については、第三位置情報の取得に加えて各位相において第二軸傾き検出用センサによる検出を追加するのみである。よって、本実施形態における第四位置情報の取得と実質的に同一であるため詳細な説明を省略する。
ここで、A軸ベクトル(実方向ベクトル)とは、図10(b)に示すように、A軸の軸心の方向を示すものである。A軸ベクトルの算出は、具体的には、検出位置PA1〜PA3に基づいて、この3箇所が含まれる平面を求め、その平面の法線ベクトルを算出することにより行う。なお、この法線ベクトルがA軸ベクトルとなる。そして、取得した検出位置PA1〜PA3に基づき円弧近似を行い、この円弧の中心位置を算出する。そして、算出した円弧の中心位置と、算出したA軸ベクトルとに基づき、Y−Z平面上、且つA軸の軸心上である位置座標(0,ΔY,ΔZ)を算出する。この位置座標(0,ΔY,ΔZ)のY座標値およびZ座標値が、A軸に関する位置誤差ΔYおよびΔZとなる。
(基準位置検出装置による効果)
上述した工作機械1の基準位置検出装置によれば、位置情報取得部53は、第三位置情報を取得した各位相において、検出体23を第二軸傾き検出用センサに接近させ、第二軸傾き検出用センサが検出域において検出する検出体23の第五位置情報を取得する。そして、基準位置検出部54は、第三位置情報および第五位置情報に基づいてA軸の傾きを検出する構成となっている。ここで、第二軸傾き検出用センサは、検出域における検出方向がA軸に対して平行になるようにテーブルに設置されるものである。
このような構成により、基準位置検出部54は、第三位置情報に加えて、第三位置情報を取得した際に検出体23のA軸における軸方向位置を第五位置情報として取得する。つまり、基準位置検出部54は、検出体23が第二軸中心検出用センサおよび第二軸傾き検出用センサにより検出された異なる3箇所以上の座標値に基づいて、A軸の軸方向を法線とする平面を算出することができる。これにより、基準位置検出部54は、A軸の軸傾きを検出することができる。
<第三実施形態>
第三実施形態の工作機械1の基準位置検出装置について図12を参照して説明する。図12は、所定の位相において検出体を軸中心検出用センサに接近させる図である。ここで、第三実施形態の構成は、第一実施形態の基準位置検出装置において検出体を工具23としたのに対して、検出体を基準バー124とした点が相違する。その他の構成については、第一実施形態と実質的に同一であるため、詳細な説明を省略する。
Y軸移動体20は、検出体であって、回転体22の先端に固定されている基準バー124を有する。そして、基準バー124は、回転体22を介して主軸台21に回転可能に支持され、主軸モータの回転に伴って回転体22と共に回転する。なお、基準バー124は、図12に示すように、その先端部が球状に形成されている。このような構成においても第一実施形態と同様に回転軸の軸中心補正を行うことができる。
このような構成において、レーザ検出器40の検出域44における検出方向に対して垂直となる回転軸の軸中心を補正する場合、即ち第一実施形態におけるB軸の軸中心補正の場合、基準バー124の接近について以下のように行うものとする。位置情報取得部53は、位置決め部52が設定したそれぞれの位相において、レーザ検出器40に検出体である基準バー124を接近させる際に、基準バー124におけるB軸の軸方向位置が一定に設定されている構成となっている。この時、基準バー124は、所定回転数である加工時における工具の回転数で回転した状態としている。
ここで、B軸の軸中心を検出する場合に、位置情報取得部53は、検出体をB軸の軸中心に対して求心方向、または、遠心方向からレーザ検出器40に接近させる。この時、上述したように基準バー124におけるB軸の軸方向位置が一定になるように接近させることにより、検出体を先端部が球状に形成された基準バー124とすることができる。基準バー124は、回転軸の軸中心を検出するための軸部材であり、レーザ検出器40の検出域44においてレーザを良好に遮断し、レーザ検出器40による検出精度を向上させることができる。従って、より高精度な回転軸の軸中心を検出することができる。
<その他>
第一〜第三実施形態において、工作機械1は、2つの回転軸(A,B軸)を有する5軸マシニングセンタにより例示した。そして、A軸はチルトテーブル12の回転軸とし、B軸はターンテーブル13の回転軸とし、何れの回転軸も工作物Wを支持するテーブルを回転させるものである。これに対して、工具を支持する主軸台21が何れかの回転軸により回転する首振り型のマシニングセンタとしてもよい。このような構成においても同様に、回転軸に対して各検出器の検出方向を垂直または平行となるように適宜配置することにより、第一、第二実施形態において示したように、各回転軸の軸中心および軸傾きを検出することができる。
工作機械1の基準位置検出装置は、基準位置の検出について、加工時における工具交換の直後に実行されるものとした。これに対して、基準位置の検出は、例えば、加工前において加工に使用する工具すべてに対して実行するものとしてもよい。これにより、それぞれの工具に対して予め回転軸の軸中心補正に必要な補正量を算出することになる。また、このような構成にすることにより、同種の工具を使用する場合など同じ軸中心補正を適用させることができる。これにより、基準位置を検出する時間を省略し、サイクルタイムを短縮することができる。
また、基準位置の検出において、検出体23または基準バー124の所定回転数は、加工時における工具の回転数に設定されるものとした。これに対して、所定回転数は、適宜調整されるものとしてもよい。これにより、例えば、加工時における工具の回転数よりも低い回転数とすることで、基準位置の検出に伴う工作機械1の負荷を軽減できる。また、所定回転数を0として、同様に基準位置の検出を行ってもよい。但し、工作機械1による加工において、回転軸の軸中心は、主軸の回転数などによって変位することがあるため、検出体をその回転数で回転させた状態で検出することが望ましい。
さらに、検出体は、第一、第二実施形態ではボールエンドミルである工具23とし、先端部の形状がほぼ半球形状のものとした。また、第三実施形態では基準バー124とし、先端部の形状が球状のものとした。これに対して、検出体は、全体形状として円柱状に形成されるものとしてもよい。例えば、検出体に工具を適用する場合には、ストレートエンドミルを適用することができる。この時、第一実施形態におけるA軸の軸中心補正において、検出方向d1から軸中心検出用センサ(レーザ検出器40)に接近させる際に、検出体の側面と端面でレーザを遮るように移動させることになる。
その他に、第一〜第三実施形態において、検出体を検出する軸中心検出用センサおよび第一軸傾き検出用センサは、レーザを使用するレーザ検出器40とした。これに対して、軸中心検出用センサおよび第一軸傾き検出用センサは、直線状または平面状の検出域を有するものであれば、接触式の検出器としてもよい。ただし、回転軸の軸位置または軸傾きを検出する際に、検出体の回転させる場合には、非接触式の検出器とする必要がある。
また、平面状の検出域を有する検出器としては、例えば、渦電流を使用した磁気式検出器としてもよい。この場合、検出域の両側に配置した電磁コイルにより磁場を発生させ、検出域に接近された検出体に渦電流を誘導する。これによる誘導起電力を検知することにより検出体を検出することができる。また、軸中心検出用センサおよび第一軸傾き検出用センサは、工具センサと兼用するレーザ検出器40とした。これに対して、基準位置検出装置は、軸中心または軸傾きを検出する専用検出器を備える構成としてもよい。