JP2011251523A - 積層体及び積層体の製造方法 - Google Patents

積層体及び積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】タンデム方式ではなく、1回の塗布プロセスにより積層体を形成する塗布方式であり、ゼラチン等のゲル化剤を大量に添加する必要が無く、例えばハードコート性や透明性等の各種機能を付与し得る積層体の製造方法であって、溶剤に層形成用成分を溶解した溶液を複数調製し、得られた複数の溶液を積層してから基材上に転移させ、その後に乾燥させることにより、層間の密着性の高い積層体を簡便に且つ生産性良く製造する方法、及び該製造方法によって製造し得る積層体を提供すること。
【解決手段】少なくとも1対の相接する層を有する積層体であって、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析において、前記相接する層の界面領域が存在する深さに、半値全幅0.01〜0.7μmの検出ピークが認められる積層体。
【選択図】なし

Description

本発明は、層間の密着性の高い積層体及び該積層体の製造方法に関する。さらに詳しくは、少なくとも1対の相接する層を有する積層体であって、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析において、前記相接する層の界面領域が存在する深さに、半値全幅0.01〜0.7μmの検出ピークが認められる積層体、及び該積層体の製造方法に関する。
積層体の形成には、層形成用成分を有機溶剤に溶解した有機溶剤系溶液を用いる方法と、層形成用成分を水系溶剤に溶解した水系溶液(以下、層形成用水系溶液と称することがある。)を用いる方法が知られている。
これらの溶液を用いた積層体の形成方法としては、層形成用成分を溶解した溶液の塗布と乾燥処理を繰り返すタンデム塗布方式が知られている。該タンデム塗布方式では、下層用溶液が上層用溶液によって流されることのないよう、上層用溶液を塗布する前に下層用溶液を定着させておく必要がある。特に、層形成用水系溶液を用いた積層体の製造では、1つの乾燥工程に非常に多くの時間及びエネルギーを要するため、塗布と乾燥処理を繰り返すタンデム塗布方式では極めて多くの時間及びエネルギーが必要となり、該タンデム塗布方式は適さない。また、そもそもタンデム塗布方式では、塗布と乾燥処理を繰り返すために、層間に必然的に空気が入り込むため、層間密着性が不十分となる傾向にある。さらには、層数を増やすほど異物混入の確率が高まるため、このことが歩留まりの低下につながる。
一方、上記問題を解決する方法として、1回の塗布プロセス(乾燥処理を挟まずに一度に多層を積層するプロセスのこと。)により積層体を形成する塗布方式が知られており、該多層塗布方式は、写真フィルム等の塗布プロセスに広く利用されている。多層塗布方式は、例えば図1に示すように、塗布ヘッド1における複数の狭いスリットから上層溶液A及び下層溶液Bを押し出し、傾斜したスライド面2上を重力の作用により自然流下させ、重なりあった上層溶液A及び下層溶液Bをロール3によって、走行する基材4上に転移させて積層体を形成するものである。
このような多層塗布方式を採用した方法としては、ゼラチンをバインダーとするハロゲン化乳化剤(ゾル液)をゲル化させながら同時多層塗布する方法(特許文献1及び図6参照)が知られている。この方法は、ゼラチンのゾル−ゲル変換特性を利用して多層膜をゲル化させて超高粘状態にし、層間の混合を起こり難くした上で熱風乾燥等を行うことにより積層体を形成するものである。
特開昭58−199074号公報
特許文献1に記載された方法では、積層構造を保持するために、ゼラチンに代表されるゲル化剤を多量に用いる。そのため、例えばハードコート性や透明性等の各種機能を付与することができず、さらにゲル化剤と相溶しない又は反応してしまう成分を用いることができない等の理由により、得られる積層体の用途が限定されてしまうという問題がある。
なお、積層化を実現するために通常用いられているゲル化剤や増粘剤は、その効果を得るためには多量の添加を要することが多く、積層後に、層中、層間を移動して、界面領域や表面に多く析出して、機械的強度や層間密着性を低下させ得る等の懸念点がある。また、ゲル化剤や増粘剤としては、様々の種類の材料が提案されているものの、前述の通り、多量に添加する必要があるものが殆どであり、効果的な材料があまり提案されていないのが実状である。
本発明は、このような状況下になされたものであり、タンデム方式ではなく、1回の塗布プロセスにより積層体を形成する塗布方式であり、ゼラチン等のゲル化剤を大量に添加する必要が無く、例えばハードコート性や透明性等の各種機能を付与し得る積層体の製造方法であって、層間の密着性の高い積層体を簡便に且つ生産性良く製造する方法、及び該製造方法によって製造し得る層間の密着性の高い積層体を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、1回の塗布プロセスにより積層体を形成する塗布方式において、相接する2つの溶液のうち少なくとも一方に、該2つの溶液が接した際に化学反応を起こす成分を含有させておくことにより、該2つの溶液を積層する際に該成分の化学反応を生じさせ、該化学反応により生成した生成物を、前記相接する2つの溶液から形成される2層の界面領域に不溶化した状態で存在させることにより、相接する2つの溶液の積層構造が良好に保持されることを見出した。
このようにして形成された積層体の各層の界面領域には、上記の不溶化状態で存在する生成物が異種成分として存在し、そのため、該積層体は、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析において、前記相接する層の界面領域が存在する深さに、半値全幅0.01〜0.7μmの検出ピークが認められる。このような積層体は、層間の混合が少なく、各層の発現すべき機能は遜色なく発現でき、また一方で、層間の若干の混合によって層間における高い密着性を確保できると考えられる。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[4]に関する。
[1]少なくとも1対の相接する層を有する積層体であって、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析において、前記相接する層の界面領域が存在する深さに、半値全幅0.01〜0.7μmの検出ピークが認められる積層体。
[2]少なくとも1対の相接する層を有する積層体であって、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析において、隣接する上下層を構成する成分由来の検出信号が接する深さに、半値全幅0.01〜0.7μmの検出ピークが認められる積層体。
[3](1)層形成用成分を溶剤に溶解した複数の溶液を積層する工程、
(2)前記工程(1)で積層した溶液を基材上に転移させる工程、及び
(3)基材上に転移された積層した溶液を乾燥する工程
を有する積層体の製造方法であって、
前記工程(1)にて相接する2つの溶液が含有する溶剤同士を、同一の溶剤又は相溶性を有する溶剤とし、該2つの溶液のうちの少なくとも一方に、該2つの溶液が接した際に化学反応を起こす成分を含有させておくことにより、前記工程(1)で該2つの溶液を積層する際に該成分の化学反応を生じさせ、該化学反応により生成した生成物を、前記相接する2つの溶液から形成される2層の界面領域に不溶化した状態で存在させることを特徴とする、積層体の製造方法。
[4]前記化学反応が、架橋反応、塩析による凝集反応、錯体形成反応、酸と塩基の中和反応、又は重合反応である、上記[3]に記載の積層体の製造方法。
本発明の積層体は、層間の混合が少なく、各層の発現すべき機能は遜色なく発現でき、また一方で、層間の若干の混合によって層間における高い密着性を有する。
また、本発明の製造方法では、1回の塗布プロセスにより積層体を形成する塗布方式において、層形成用成分を溶剤に溶解した溶液を複数用いた積層体の製造方法であって、相接する2つの溶液が含有する溶剤が同じであるか又は相溶性を有しているにも関らず、積層しようとする2つの溶液の混合を抑制することができるため、層間の密着性に優れる積層体を簡便に且つ生産性良く製造することができる。本発明の製造方法は、積層体に例えばハードコート性や透明性等の各種機能を付与することも可能な方法である。さらに本発明の製造方法によれば、製造コストを低減することもできる。
1回の塗布プロセスにより積層体を形成する装置の一例を示す模式図である。 本発明の工程(1)において起こる化学反応の様子のイメージ図である。 実施例1で得た積層体についての、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析の結果を示すスペクトル図である。 本発明の積層体の断面模式図である。 実施例1で得た積層体の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真図である。 特許文献1に記載の積層体の製造方法と本願発明の積層体の製造方法の概略を示すフローチャート図である。
[積層体]
本発明の積層体は、少なくとも1対の相接する層を有する積層体であって、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析において、前記相接する層の界面領域が存在する深さに、半値全幅0.01〜0.7μmの検出ピークが認められる。本明細書において、「界面領域」とは、前記相接する層が混合した領域を指すが、混合した領域が実質的になければ、相接する層の界面そのものを指す。
検出ピークの半値全幅は、界面領域を挟む上下の層の混合を抑制する効果、及び多少混合することによって密着性を高める効果のバランスをとる観点から、好ましくは0.01〜0.7μm、より好ましくは0.05〜0.6μm、さらに好ましくは0.1〜0.6μmである。
グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析において、前記検出ピークのピークトップは、通常、前記界面領域が存在する深さにある。
なお、該半値全幅は、検出ピークの由来となる成分(後述する異種成分)がどの範囲の深さに広がっているのかを示しており、半値全幅が小さいほど、上下層の積層状態が良好であり、つまり上下層の混合の程度が小さい。また、前記界面領域が存在する深さに検出ピークが認められるということは、界面領域に、上下層の主成分ではない他の異種成分が存在しているということである。ここで、主成分とは、上下層を形成している成分中に30質量%以上含有される成分であり、通常、上下層を形成している成分中には40質量%以上、より多い場合には50質量%以上、さらに多い場合には70質量%以上含有されている成分のことを言う。また、異種成分とは、上下層を形成している成分中に30質量%未満しか含有されていない成分であり、通常、上下層を形成している成分中には15質量%以下、少ない場合には10質量%以下、さらには5質量%以下しか含有されていない成分のことを言い、通常、実質的に含有されていない成分のことを言う。
前記した、隣接する上下層それぞれを構成する成分由来の検出信号は、通常、ブロード状であり、且つ、界面領域が存在する深さにて検出強度が低下する。このように、界面領域が存在する深さにて検出強度が低下するのは、前記検出ピークの由来となる成分が界面領域に存在しているためである。また、隣接する上下層それぞれを構成する成分由来の検出信号は、異なる元素の検出信号であれば、通常、上層を構成する成分由来の検出信号の検出強度は、下層においては、下層を構成する成分由来の検出信号の検出強度より小さいことが好ましく、下層を構成する成分由来の検出信号の検出強度に対してより好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。なお、上層と下層とが逆の関係にある場合にも同様のことが言える。
さらに、界面領域以外、つまり上下層においては、前記検出ピークに由来する成分の検出信号の検出強度は、上下層の機能を阻害しないという観点から、上下層それぞれを構成する成分由来の検出信号の検出強度に比べて小さいことが好ましく、上下層それぞれを構成する成分由来の検出信号の検出強度に対してより好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。
ここで、本明細書において、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析は、以下の条件にて行ったものである。
(グロー放電発光分光分析法による元素定量分析の条件)
○測定装置:「GDS−Profiler2」(株式会社堀場製作所製)
RF電源出力:20W
アルゴンガス圧力:800Pa
アノード径:4mm
パルス電源使用(周波数:25Hz、Duty比:0.1)
測光方式:シンクロ(パルス同期)
本発明の積層体、例えば実施例1で得た積層体であれば、図4に示す模式図のような層構成をしており、上下層の界面領域に異種成分が存在する。異種成分の存在は、前記したグロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析によって、任意の元素を調査することで確認できる。具体的には、後述する製造方法を採用する場合には、化学反応によって界面領域において生成した生成物に特有の元素に着目して分析すればよい。
本発明の積層体を構成する各層の成分としては、後述する層形成用成分等が挙げられる。また、2層の界面領域に存在する異種成分としては、界面領域を挟む上下の層に溶解しない物質であれば特に制限はないが、後述する化学反応により生成する異種成分等が好ましく挙げられる。具体的には、該異種成分としては、高分子材料と架橋剤との架橋反応物、高分子材料と電解質との凝集反応物、配位子とイオン性物質との錯体形成反応物、又は酸と塩基との中和反応物であることが好ましい。これらについての詳細は、後述の積層体の製造方法の説明中に記載の通りである。
このような本発明の積層体を製造する方法としては、以下の方法が好ましく挙げられる。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、
(1)層形成用成分を溶剤に溶解した複数の溶液を積層する工程、
(2)前記工程(1)で積層した溶液を基材上に転移させる工程、及び
(3)基材上に転移された積層した溶液を乾燥する工程
を有する積層体の製造方法であって、
前記工程(1)にて相接する2つの溶液が含有する溶剤同士を、同一の溶剤又は相溶性を有する溶剤とし、該2つの溶液のうちの少なくとも一方に、該2つの溶液が接した際に化学反応を起こす成分を含有させておくことにより、前記工程(1)で該2つの溶液を積層する際に該成分の化学反応を生じさせ、該化学反応により生成した生成物を、前記相接する2つの溶液から形成される2層の界面領域に不溶化した状態で存在させることを特徴とするものである。なお、該化学反応により生成した生成物は、前記異種成分に相当する。
当該化学反応による生成物が2層の界面領域に不溶化した状態で存在する形態としては、相接する2つの溶液の混合が抑制され、積層構造が保持される限りは特に制限は無く、例えば、連続した膜状となっていてもよいし、島状に点在していてもよいし、これらの中間状態であってもよい。ここで、「2層の界面領域」とは、前記相接する2つの溶液がまさに接触している面(接触面)を含み、且つ、2つの溶液が接触した後には2つの溶液の若干の混合があり得るため、該接触面付近において2つの溶液が混合している領域も含む。
後述するように、本発明で用いる化学反応を起こす成分の溶液中の含有割合は、溶液の全固形分濃度に対して小さくて済むため、積層体全体の機能に大きな影響を与えない。また、該成分を化学反応させて得られる生成物は、前述のとおり、2層の界面領域に存在しているため、その観点からも、積層体全体の機能には大きな影響を与え難いと言える。
なお、本発明の積層体の製造方法について、便宜上、2層積層体の製造方法を例として説明することがあるが、本発明は2層に限定されるものではなく、3層以上の積層体の製造にも適用が可能である。積層する溶液のうち、上層用を「上層溶液A」、下層用を「下層溶液B」と称することがある。
以下、前記工程(1)〜(3)について、順に説明する。
[工程(1)]
工程(1)は、層形成用成分を溶剤に溶解した複数の溶液を積層する工程である。
溶剤としては、水系溶剤と有機溶剤がある。ゆえに、前記溶液としては、水系溶剤を用いて調製される水系溶液と、主に有機溶剤を用いて調製される有機溶剤系溶液がある。本発明では、いずれの種類の溶液を用いても構わないが、後述する工程(2)で相接する2つの溶液中の溶剤を同一の溶剤にするか又は相溶性のある溶剤にする。ここで、「相溶性のある溶剤」とは、一方の溶剤に他方の溶剤を加えると、積層構造を保持できない程度に混合し合う溶剤を言う。工程(2)で相接する2つの溶液中の溶剤をこのような組み合わせにすることで、本発明の効果が発現する。
なお、溶液中の層形成用成分の濃度は、積層体の形成容易性及び生産性等のバランスの観点から、通常、いずれも好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜45質量%である。
(水系溶剤)
水系溶剤としては、水を主とするものであり、該水として、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。水系溶剤としては、水以外の水溶性の有機溶剤、例えばアセトン、メタノール、メチルエチルケトン等を含有していてもよい。
水系溶剤中の水の割合は、本発明を工業的に実施する場合における環境保全の観点及び層形成用成分の溶解性の観点から、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは実質100質量%である。
(有機溶剤)
有機溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族系有機溶剤;トルエン、キシレン、ブロモベンゼン等の芳香族系有機溶剤;塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤;エチルセロソルブ等のセロソルブ系有機溶剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水溶性の有機溶剤の場合には、少量の水が含有されていてもよい。その場合、溶液中の有機溶剤の含有量は、層形成用成分の溶解性の観点から、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは実質100質量%である。
(水系溶剤用の層形成用成分)
水系溶剤用の層形成用成分としては、前記水系溶剤に溶解し、且つ、いわゆる皮膜を形成し得る成分であれば特に制限はない。例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、けん化度50モル%以上(好ましくは70モル%以上)のポリビニルアルコール(PVA)及びその誘導体、スルホン化度50モル%以上(好ましくは70モル%以上)のポリスチレンスルホン酸、けん化度50モル%以上(好ましくは70モル%以上)のエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸及びその塩、水性アクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、アルギン酸塩類や、水性ポリエステル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性エポキシ樹脂、水性ポリオレフィン樹脂、水性フェノール樹脂、ポリパラビニルフェノール等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、成膜性、膜厚均一性の観点から、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、ポリパラビニルフェノールが好ましい。
なお、「水性」とは、水溶性であることを示し、その製造方法に特に制限はないが、いずれも市販品を用いるのが簡便である。
前記水性アクリル樹脂としては、アクリル酸と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルやその他の重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。その他の重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルアルコール、エチレン等が挙げられる。また、例えばDIC株式会社製の「ウォーターゾール(登録商標)」シリーズ等の市販品を用いることもできる。
前記水性ポリエステル樹脂は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビスフェノールヒドロキシプロピルエーテル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の多塩基酸とを脱水縮合させた後、アンモニアや有機アミン等で中和し、水分散化させることにより得ることができる。また、例えば東洋紡績株式会社製の「バイロナール(登録商標)」シリーズ等の市販品を用いることもできる。
なお、水性ポリエステル樹脂の水酸基価は、好ましくは5〜30KOHmg/g、より好ましくは10〜25KOHmg/g、さらに好ましくは10〜20KOHmg/gである。また、水性ポリエステル樹脂の酸価は、好ましくは3KOHmg/g以下である。水性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜85℃、さらに好ましくは70〜85℃である。
前記ポリパラビニルフェノールは、パラビニルフェノールのホモポリマーであり、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば丸善石油化学株式会社製の「マルカリンカー(登録商標)」シリーズ等が挙げられる。
また、前記ポリビニルアルコールの誘導体の具体例としては、カルボキシル化ポリビニルアルコール、スルホン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物等が挙げられる。
なお、層形成用成分の重量平均分子量は、好ましくは5千〜100万、より好ましくは1万〜10万、さらに好ましくは1万〜5万である。なお、本明細書において、重量平均分子量は、いずれもゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
(有機溶剤系溶液用の層形成用成分)
有機溶剤系溶液用の層形成用成分としては、前記有機溶剤に溶解し、且つ、いわゆる皮膜を形成し得る成分であれば特に制限はなく、熱可塑性樹脂や活性エネルギー線硬化型化合物を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、変性アクリル系樹脂、ポリカーボネート、けん化度50モル%未満(好ましくは20モル%以下)のポリビニルアルコール(PVA)及びその誘導体、スルホン化度50モル%未満(好ましくは20モル%以下)のポリスチレンスルホン酸、けん化度50モル%未満(好ましくは20モル%以下)のエチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、皮膜の形成容易性及び有機溶剤系溶液に対する溶解性の観点から、好ましくは数万〜数百万であり、より好ましくは3万〜50万である。
また、前記活性エネルギー線硬化型化合物は、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することにより、架橋、硬化する化合物である。この活性エネルギー線硬化型化合物としては、以下の活性エネルギー線硬化型オリゴマー及び/又は活性エネルギー線硬化型モノマーを用いることができる。
活性エネルギー線硬化型オリゴマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系のオリゴマー等が挙げられる。
上記活性エネルギー線硬化型オリゴマーの重量平均分子量は、皮膜の形成容易性及び有機溶剤系溶液に対する溶解性の観点から、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000、さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲である。
該活性エネルギー線硬化型オリゴマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
活性エネルギー線硬化型モノマーとしては、例えばジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールアジペートエステル、ジ(メタ)アクリル酸ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ジ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジシクロペンテニル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンオキシド変性リン酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸アリル化シクロヘキシル、ジ(メタ)アクリル酸イソシアヌレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンエステル、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピオンオキシド変性トリメチロールプロパンエステル、イソシアヌル酸トリス(アクリロキシエチル)、ペンタ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。これらのモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記活性エネルギー線硬化型化合物と共に、光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、公知のものを使用でき、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン)等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤を使用する場合、その使用量は、用いる活性エネルギー線硬化型化合物の種類に応じて適宜選定すればよいが、通常、活性エネルギー線硬化型化合物に対して0.001〜0.5倍質量の範囲で使用するのが好ましい。
また、本発明では、複数調製する溶液のうち、少なくとも1つの溶液に、後述する「化学反応を起こす成分」を含有させる。そうすることにより、後述する工程(2)において該成分の化学反応を生じさせることができ、該化学反応により生成した生成物が、相接する2つの溶液から形成される2層の界面領域に存在することとなり、これによって、積層構造が保持される。相接する2つの溶液のいずれにも化学反応を起こす成分を含有させない場合、工程(2)において、相接する2つの溶液は混合してしまい、積層構造を保持することができない。
(その他の成分)
層形成用成分を溶剤に溶解した溶液には、さらに必要に応じて、各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤、充填剤、潤滑剤、滑剤等を含有させることもできる。
なお、こうして得られる溶液の固形分濃度及び粘度としては、基本的には塗布することが可能な濃度及び粘度であればよく、状況に応じて適宜選定することができる。
工程(1)では、上記のようにして得られた複数の溶液を積層する。
複数の溶液を積層する方法に特に制限は無いが、例えば(I)傾斜したスライド面上にて積層させる方法、(II)水平な平面状にて積層させる方法、(III)円形シリンダー上にて積層させる方法、(IV)傾斜した放物面上にて積層させる方法等が挙げられる。これらの中でも、装置の入手容易性の観点及び操作の簡便性の観点から、通常、方法(I)が好ましく利用される。
前記方法(I)を利用する場合、層形成用成分を溶解した溶液を流動させるための、傾斜したスライド面を有するものとしては、例えば図1に示すようなスライドコーターが好ましく挙げられる。
効率的に積層体を形成する観点から、スライド面の傾斜角度は、水平方向に対して5〜40度が好ましく、10〜35度がより好ましく、15〜35度がさらに好ましい。また、効率的に積層体を形成する観点から、スライド面上への溶液の吐出口の中心と、隣り合う溶液の吐出口の中心との距離は、8〜30cmが好ましく、10〜28cmがより好ましく、12〜26cmがさらに好ましい。さらに、効率的に積層体を形成する観点から、複数のスライド面上への溶液の吐出口の内、積層した溶液を基材へ転移する部位に最も近い吐出口の中心と、基材との距離は、2〜14cmが好ましく、3〜12cmがより好ましく、4〜11cmがさらに好ましい。特に、このように設計されたスライドコーターを使用した場合に、本発明の効果が顕著に現れる傾向にある。
工程(1)において、複数の溶液を積層する方法としては、例えば、相接する2つの溶液、つまり上層溶液A及び下層溶液Bに着目すると、下層溶液Bへ上層溶液Aが接触することによって化学反応を生じさせながら積層する方法が好ましく挙げられる。
化学反応としては、図2に示すように、化学反応によって溶剤に難溶又は不溶の生成物が2つの層の界面領域に生成し、相接する溶液の積層構造を保持することができる限り、特に制限されるものではなく、あらゆる化学反応を利用することができる。具体的には、以下の化学反応(A)〜(D)が好ましく挙げられる。なお、図2はイメージ図であり、必ずしも本発明における化学反応によって図2の通りに積層構造を形成しているというものではない。
(A)架橋反応
(B)塩析による凝集反応
(C)錯体形成反応
(D)酸と塩基の中和反応
以下、化学反応(A)〜(D)の一例について、順に説明する。
−(A)架橋反応−
例えば、一方の溶液へ含有させる成分(a)として架橋性の高分子材料を用い、他方の溶液へ含有させる成分(b)として架橋剤を用いることにより、2つの溶液から形成される界面領域で、架橋反応が起こる。該架橋反応の生成物である架橋体は、前記溶剤に難溶又は不溶であり、不溶化した状態で前記2つの層の界面領域に存在することで上層溶液Aと下層溶液Bとの混合を抑制することができたため、積層構造を保持することが可能になったものと推測される。
成分(a)の架橋性の高分子材料としては、特に制限されるものではないが、水酸基やカルボキシル基等を有する高分子材料、例えば、ポリビニルアルコール、ポリフェノール、ポリカルボン酸等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。架橋性の高分子材料は、溶剤への溶解性の観点から、重量平均分子量が5千〜30万のものが好ましく、3万〜20万のものがより好ましく、5万〜15万のものがさらに好ましい。
また、成分(b)の架橋剤としては、例えば、水酸化チタン、有機チタンキレート化合物等の架橋性チタン化合物;架橋性ジルコニウム化合物;尿素樹脂、メラニン樹脂等のアミノ樹脂;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物;アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレンレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレンレングリコールジグリシジルエーテル、2,2−ビス−(4’−グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;カルボジイミド化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本架橋反応を利用する場合、前記架橋剤を含有する溶液中の層形成用成分としては、該架橋剤とは反応しない、非架橋性のもの(非架橋性層形成用成分)を用いる必要があり、そのようなものとしては、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂等が好ましい。
架橋反応を利用する場合、溶液中の前記成分の含有量は、上層溶液Aと下層溶液Bとの積層構造を保持する観点及び各層の機能への影響の低減の観点から、架橋性の高分子材料については、層形成溶液中、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは8〜15質量%であり、架橋剤については、層形成溶液中、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは3〜8質量%である。
−(B)塩析による凝集反応−
例えば、成分(a)として高分子材料を用い、成分(b)として電解質を用いることにより、凝集性の高分子材料周辺の溶剤を電解質が奪う塩析が起こり、ひいては、2つの溶液から形成される界面領域にて前記高分子材料の凝集反応が進行する。凝集反応の生成物である凝集物は、前記溶剤に難溶又は不溶であり、不溶化した状態で前記2つの層の界面領域に存在することで上層溶液Aと下層溶液Bとの混合を抑制することができたため、積層構造を保持することが可能になったものと推測される。
上記成分(a)の高分子材料としては、水酸基やカルボキシル基等を有する親水性の高分子材料、例えば、ポリビニルアルコール、ポリフェノール、ポリカルボン酸等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記成分(b)の電解質としては、公知のものを使用することができ、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の二元電解質;塩化バリウム等の三元電解質;水酸化アルミニウム等の酸性及びアルカリ性を有する両性電解質;たんぱく質、ポリメタクリル酸等の高分子電解質等が挙げられる。
なお、本凝集反応を利用する場合、前記電解質を含有する溶液中の層形成用成分としては、塩析が起こらない高分子材料を用いる必要があり、そのようなものとしては、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂等が好ましい。
塩析による凝集反応を利用する場合、溶液中の前記成分の含有量は、上層溶液Aと下層溶液Bとの積層構造を保持する観点及び各層の機能への影響の低減の観点から、高分子材料の含有量については、層形成溶液中、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは8〜15質量%であり、電解質については、層形成溶液中、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜7質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。
−(C)錯体形成反応−
例えば、成分(a)として配位子を用い、成分(b)としてイオン性物質を用いることにより、2つの溶液から形成される界面領域にて、錯体形成反応が起こる。錯体形成反応の生成物である錯体は、溶剤に難溶又は不溶であり、不溶化した状態で前記2つの層の界面領域に存在することで上層溶液Aと下層溶液Bとの混合を抑制することができたため、積層構造を保持することが可能になったものと推測される。
上記成分(a)の配位子としては、例えば亜リン酸、リン酸、ポリリン酸等のリン含有配位子;酢酸等のカルボン酸含有配位子等のほか、水酸基、チオール基等を含有する配位子等が挙げられる。
また、成分(b)のイオン性物質としては、例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン等のイオン源となる物質であれば特に制限はなく、例えば水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
錯体形成反応を利用する場合、溶液中の前記成分の含有量は、上層溶液Aと下層溶液Bとの積層構造を保持する観点及び各層の機能への影響の低減の観点から、配位子の含有量については、溶液中、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%であり、イオン性物質については、溶液中、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。
−(D)酸と塩基の中和反応−
例えば、成分(a)として酸を用い、成分(b)として塩基を用いることにより、2つの溶液から形成される界面領域にて、酸と塩基の中和反応が起こる。該中和反応の生成物である塩は、溶剤に難溶又は不溶であり、不溶化した状態で前記2つの層の界面領域に存在することで上層溶液Aと下層溶液Bとの混合を抑制することができたため、積層構造を保持することが可能になったものと推測される。
上記成分(a)の酸としては、例えば酢酸、ギ酸、炭酸等の弱酸が挙げられる。
上記成分(b)の塩基としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、ベンジジン、アニリン、キノリン等の、有機アミンや含窒素複素環式芳香族化合物に代表される弱塩基が挙げられる。
酸と塩基の中和反応を利用する場合、溶液中の前記成分の含有量は、上層溶液Aと下層溶液Bとの積層構造を保持する観点及び各層の機能への影響の低減の観点から、酸、塩基の含有量については、それぞれ、溶液中、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。
複数の溶液を積層する方法としては、上記方法以外にも、
(i)触媒と、該触媒と接触することにより重合等の化学反応を生じる化合物とを用いる方法[化学反応:重合反応等]、
(ii)温度変化により化学反応(例えば、架橋反応、重合反応等)を起こす化合物を一方の溶液に含有させ、溶液の温度を変化させておき、該2つの溶液を接触させる方法[化学反応:前記(A)架橋反応、重合反応等]、
(iii)一方の溶液に、特定の溶剤と接触することによって化学反応を起こす化合物を含有させておき、他方の溶液と接触させる方法、
(iv)一方の溶液に、特定の層形成用成分と接触することによって化学反応を起こす化合物を含有させ、他方の溶液と接触させる方法、
等が挙げられる。これらの化学反応によって生成する生成物が、溶剤に難溶又は不溶であり、相接する2層の界面領域に存在していれば、本発明の効果を享受することができる。
[工程(2)]
工程(2)は、以上のようにして積層した層形成溶液を、基材上に転移させる工程である。
(基材)
基材に特に制限はなく、積層体を有する部材の用途によって適宜選択することができる。基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム;セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム等のセルロース系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の塩化ビニル系フィルム;ポリビニルアルコールフィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等のビニル系共重合体フィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリメチルペンテンフィルム;ポリスルホンフィルム;ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム等のポリエーテル系フィルム;ポリイミドフィルム;フッ素樹脂フィルム;ポリアミドフィルム;アクリル樹脂フィルム;ノルボルネン系樹脂フィルム;シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。
基材は、透明、半透明のいずれであってもよく、また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。
基材の厚さに特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常、15〜250μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。
また、この基材は、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等により表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれるが、効果及び操作性等の観点から、一般にはコロナ放電処理法が好ましく用いられる。
以下に、図1のスライドコーターを参照して、複数の溶液を積層してから基材上に転移する方法の一例を詳細に説明する。
複数のスリット状の吐出口を有する塗布ヘッド1における各吐出口から、それぞれ上層溶液A、下層溶液Bを押し出し、傾斜したスライド面2上を重力の作用により自然流下させ、上層溶液Aと下層溶液Bとを積層する。積層した溶液は、ロール3によって走行する基材4上に転移させ、次の工程(3)へと移行する。
[工程(3)]
工程(3)は、前記工程(2)で転移した積層状態の複数の溶液を加熱乾燥することにより、積層体を形成する工程である。加熱乾燥温度は、通常、好ましくは50〜130℃、より好ましくは60〜120℃である。加熱乾燥時間に特に制限は無いが、通常、1分〜5分間程度必要である。
このようにして得られた積層体の各層の厚さは、通常、好ましくは0.1〜100μm程度、より好ましくは1〜70μmであり、各層の積層構造が保持されている。この積層構造は、例えばスラブ型光導波路分光法を利用した界面紫外可視分光測定装置を用いて確認することができる。また、断面の走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡によっても確認することができる。
本発明の製造方法は、多量の溶液を用いて連続的又は断続的に実施してもよいし、必要最小限の量の溶液を用いてバッチ方式で実施してもよい。
以上の様にして得られる積層体は、積層体中の少なくとも1対の相接する層の界面領域に、化学反応により生成した生成物が存在する積層体である。より詳細には、本発明の積層体の1つは、積層体中に、層形成用成分と成分(a)とを含有する層と、その上又は下に、層形成用成分と、該成分(a)と化学反応を起こす成分(b)とを含有する層とを有し、両層の界面領域に、前記成分(a)及び(b)が化学反応を起こして生成した生成物が存在する積層体である。また、本発明の別の積層体は、積層体中に、層形成用成分と、化学反応を起こす成分とを含有する層と、その上又は下に、層形成用成分を含有する層とを有し、両層の界面領域に、前記化学反応を起こす成分が化学反応を起こして生成した生成物が存在する積層体である。
上記化学反応としては、前記化学反応(A)〜(D)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の製造方法は、多量の溶液を用いて連続的又は断続的に実施してもよいし、必要最小限の量の溶液を用いてバッチ方式で実施してもよい。
化学反応により生成した成分は、層の界面領域に存在するため、例えば、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析において、前記化学反応により生成した成分に由来する半値全幅0.01〜0.7μmの検出ピークを示す。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
[(A)架橋反応用溶液の調製]
製造例A−1;上層用水系溶液
ポリビニルアルコール(関東化学株式会社製、重量平均分子量=約10万)20g、水性アクリル樹脂(層形成用成分、DIC株式会社製、「ウォーターゾール(登録商標)PW−1100」、重量平均分子量=約5万、固形分濃度45質量%の水エマルジョン)155g、及び識別用着色剤としてインジゴ(関東化学株式会社製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、青色の水系溶液A−1(ポリビニルアルコールの濃度:約12質量%)を得た。
製造例A−2;下層用水系溶液
架橋性チタン化合物(株式会社マツモト交商製、「オルガチックス(登録商標)TC−400」、成分;チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート))5g、水性ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、バイロナールMD−1500、ガラス転移温度77℃、重量平均分子量=約2万、固形分濃度30質量%)130g、及び識別用着色剤としてアントラキノン(関東化学株式会社製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、赤色の水系溶液A−2(架橋性チタン化合物の濃度:約5質量%)を得た。
[(B)塩析による凝集反応用溶液の調製]
製造例B−1;上層用水系溶液
ポリビニルアルコール(関東化学株式会社製、重量平均分子量=約10万)20g、水性アクリル樹脂(層形成用成分、DIC株式会社製、「ウォーターゾール(登録商標)PW−1100」、重量平均分子量=約5万、固形分濃度45質量%の水エマルジョン)155g、及び識別用着色剤としてインジゴ(関東化学株式会社製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、青色の水系溶液B−1(ポリビニルアルコールの濃度:約12質量%)を得た。
製造例B−2;下層用水系溶液
塩化ナトリウム(関東化学株式会社製、電解質)3g、水性ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、「バイロナール(登録商標)MD−1500」、ガラス転移温度77℃、重量平均分子量=約2万、固形分濃度30質量%)130g、及び識別用着色剤としてアントラキノン(関東化学株式会社製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、赤色の水系溶液B−2(塩化ナトリウムの濃度:約3質量%)を得た。
[(C)錯体形成反応用溶液の調製]
製造例C−1;上層用水系溶液
リン酸(関東化学株式会社製、配位子)15g、ポリパラビニルフェノール(層形成用成分、丸善石油化学株式会社製、「マルカリンカー(登録商標)M」、重量平均分子量=約2万)70g、純水(関東化学株式会社製)80g、及び識別用着色剤としてインジゴ(関東化学株式会社製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、青色の水系溶液C−1(リン酸の濃度:約9質量%)を得た。
製造例C−2;下層用水系溶液
水酸化カルシウム(関東化学株式会社製、イオン性物質)2g、水性ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、「バイロナール(登録商標)MD−1500」、ガラス転移温度77℃、重量平均分子量=約2万、固形分濃度30質量%)130g、及び識別用着色剤としてアントラキノン(関東化学株式会社製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、赤色の水系溶液C−2(イオン性物質の濃度:約2質量%)を得た。
[(D)酸と塩基の中和反応用溶液の調製]
製造例D−1;上層用水系溶液
トリエタノールアミン(関東化学株式会社製)15g、ポリパラビニルフェノール(層形成用成分、丸善石油化学株式会社製、「マルカリンカー(登録商標)M」、重量平均分子量=約2万)70g、純水(関東化学株式会社製)80g、及び識別用着色剤としてインジゴ(関東化学株式会社製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、青色の水系溶液D−1(トリエタノールアミンの濃度:約9質量%)を得た。
製造例D−2;下層用水系溶液
酢酸(関東化学株式会社製)10g、水性ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製、「バイロナール(登録商標)MD−1500」、ガラス転移温度77℃、重量平均分子量=約2万、固形分濃度30質量%)130g、及び識別用着色剤としてアントラキノン(関東化学株式会社製)0.5gを室温で混合及び攪拌し、赤色の水系溶液D−2(酸性材料の濃度:約9質量%)を得た。
上記製造例で得た各層形成水系溶液について、表1にまとめる。
実施例1
上層用として製造例A−1で製造した水系溶液A−1を用い、下層用として製造例A−2で製造した水系溶液A−2を用い、図1に示す装置(スライド面の傾斜角度;水平方向に対して25度、隣り合う吐出口の距離;8cm、積層した水系溶液を基材へ転位する部位に最も近い吐出口の中心と基材との距離;10cm)を用いて、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム「コスモシャインA4100」(東洋紡績株式会社製)上に塗布した後、70℃のオーブン中で2分間乾燥し、積層体を得た。各層の厚みは、6μm程度であった。
得られた積層体の断面を、赤/青の目視判断及び、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図5に示すように、識別用着色剤を加えた上層及び下層の2層において、識別用着色剤の大幅な混合は見られず、積層構造が良好に保持されていることを確認できた。
さらに、得られた積層体を、グロー放電発光分光分析装置(株式会社堀場製作所製「GD−Profiler2」)を用い、下記条件によって、マーキング元素のチタン元素に注目してコーティング面に対して深さ方向の元素定量分析を行った。その結果を図3に示す。図3より、チタン元素が、界面領域において極大ピークとして存在することが分かり、その検出ピークの半値全幅は0.4μmであった。
(グロー放電発光分光分析法による元素定量分析の条件)
○測定装置:「GDS−Profiler2」(株式会社堀場製作所製)
RF電源出力:20W
アルゴンガス圧力:800Pa
アノード径:4mm
パルス電源使用(周波数:25Hz、Duty比:0.1)
測光方式:シンクロ(パルス同期)
(グロー放電発光分光分析における測定元素、測定波長)
炭素(C):156.144nm
チタン(Ti):364.275nm
実施例2
実施例1において、製造例A−1で製造した水系溶液A−1の代わりに、製造例B−1で製造した水系溶液B−1を上層用溶液として用い、製造例A−2で製造した水系溶液A−2の代わりに、製造例B−2で製造した水系溶液B−2を下層用溶液として用いたこと以外は同様にして積層体を製造した。各層の厚みは、6μm程度であった。
得られた積層体の断面を、赤/青の目視判断及び、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、識別用着色剤を加えた上層及び下層の2層において、識別用着色剤の大幅な混合は見られず、積層構造が良好に保持されていることを確認できた。
また、実施例1と同様にしてグロー放電発光分光分析法によって元素定量分析を行ったところ、ナトリウム元素が、界面領域において極大ピークとして存在することが分かり、その検出ピーク半値全幅は0.1μmであった。
実施例3
実施例1において、製造例A−1で製造した水系溶液A−1の代わりに、製造例C−1で製造した水系溶液C−1を上層用溶液として用い、製造例A−2で製造した水系溶液A−2の代わりに、製造例C−2で製造した水系溶液C−2を下層用溶液として用いたこと以外は同様にして積層体を製造した。各層の厚みは、6μm程度であった。
得られた積層体の断面を、赤/青の目視判断及び、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、識別用着色剤を加えた上層及び下層の2層において、識別用着色剤の大幅な混合は見られず、積層構造が良好に保持されていることを確認できた。
また、実施例1と同様にしてグロー放電発光分光分析法によって元素定量分析を行ったところ、リン元素が、界面領域において極大ピークとして存在することが分かり、その検出ピーク半値全幅は0.3μmであった。
実施例4
実施例1において、製造例A−1で製造した水系溶液A−1の代わりに、製造例D−1で製造した水系溶液D−1を上層用溶液として用い、製造例A−2で製造した水系溶液A−2の代わりに、製造例D−2で製造した水系溶液D−2を下層用溶液として用いたこと以外は同様にして積層体を製造した。各層の厚みは、6μm程度であった。
得られた積層体の断面を、赤/青の目視判断及び、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、識別用着色剤を加えた上層及び下層の2層において、識別用着色剤の大幅な混合は見られず、積層構造が良好に保持されていることを確認できた。
また、実施例1と同様にしてグロー放電発光分光分析法によって元素定量分析を行ったところ、窒素元素が、界面領域において極大ピークとして存在することが分かり、その検出ピーク半値全幅は0.6μmであった。
比較例1
実施例1において、製造例A−1においてポリビニルアルコールを含有させなかった水系溶液を用いたこと以外は同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に積層体を形成した。該積層体の断面をSEMで観察したところ、識別用着色剤が混合していて、積層構造が保持されていなかった。また、実施例1と同様にしてグロー放電発光分光分析法によって元素定量分析を行ったところ、着目すべき元素の信号と思われる部分の半値全幅は1μm程度であった。
比較例2
実施例1において、製造例A−2において架橋性チタン化合物を含有させなかった水系溶液を用いたこと以外は同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に積層体を形成した。該積層体の断面をSEMで観察したところ、識別用着色剤が混合していて、積層構造が保持されていなかった。また、実施例1と同様にしてグロー放電発光分光分析法によって元素定量分析を行ったところ、着目すべき元素の信号と思われる部分の半値全幅は1.5μm程度であった。
比較例3〜8
実施例2〜4において、各製造例において用いた化学反応を起こす成分(a)と(b)のいずれか一方を水系溶液に含有させなかった場合、いずれも上下層の水系溶液が混合してしまい、積層構造が保持されていなかった。また、実施例1と同様にしてグロー放電発光分光分析法によって元素定量分析を行ったところ、着目すべき元素の信号と思われる部分の半値全幅は1〜1.5μm程度であった。
以上の結果より、本発明の製造方法によれば、通常では困難な同一溶液同士及び相溶性のある溶液同士の積層が可能であることが分かる。また、このような本発明の積層体は、層間の大幅な混合が抑制されているため、各層の発現すべき機能は遜色なく発現され、また一方で、層間の若干の混合によって層間における高い密着性を確保できている。
本発明の積層体は、例えばハードコート性や透明性等の各種機能を付与し得るため、各種光学フィルム、車用等のフィルムアンテナ、放熱シート、赤外線反射フィルム等、幅広い分野に利用可能である。
1:塗布ヘッド
2:スライド面
3:ロール
4:基材
A:上層溶液
B:下層溶液
5:化学反応が発生している界面領域
6:化学反応による生成物(異種成分)

Claims (4)

  1. 少なくとも1対の相接する層を有する積層体であって、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析において、前記相接する層の界面領域が存在する深さに、半値全幅0.01〜0.7μmの検出ピークが認められる積層体。
  2. 少なくとも1対の相接する層を有する積層体であって、グロー放電発光分光分析法による深さ方向の元素定量分析において、隣接する上下層を構成する成分由来の検出信号が接する深さに、半値全幅0.01〜0.7μmの検出ピークが認められる積層体。
  3. (1)層形成用成分を溶剤に溶解した複数の溶液を積層する工程、
    (2)前記工程(1)で積層した溶液を基材上に転移させる工程、及び
    (3)基材上に転移された積層した溶液を乾燥する工程
    を有する積層体の製造方法であって、
    前記工程(1)にて相接する2つの溶液が含有する溶剤同士を、同一の溶剤又は相溶性を有する溶剤とし、該2つの溶液のうちの少なくとも一方に、該2つの溶液が接した際に化学反応を起こす成分を含有させておくことにより、前記工程(1)で該2つの溶液を積層する際に該成分の化学反応を生じさせ、該化学反応により生成した生成物を、前記相接する2つの溶液から形成される2層の界面領域に不溶化した状態で存在させることを特徴とする、積層体の製造方法。
  4. 前記化学反応が、架橋反応、塩析による凝集反応、錯体形成反応、酸と塩基の中和反応、又は重合反応である、請求項3に記載の積層体の製造方法。
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