JP2011251325A - 溶接スパッタ付着防止剤およびこれを利用したスパッタ付着防止方法 - Google Patents

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勝雄 平
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Abstract

【課題】
安価で安全性が高く、乾燥工程が不要であり、塗布直後に溶接しても溶接欠陥が生じることなく、スパッタの母材への付着を有効に防止し得る溶接スパッタ付着防止剤を提供すること。
【解決手段】
次の成分(a)ないし(d);
(a)穀物粉および/またはデンプン粉
(b)蜂蜜および/または水飴
(c)防腐剤
(d)水
を含有することを特徴とする溶接スパッタ付着防止剤である。
【選択図】図2

Description

本発明は、溶接スパッタ付着防止剤、およびこれを利用したスパッタ付着防止方法に関し、さらに詳細には、ピンホールやブローホールなどの溶接欠陥を生じることなく、金属材料を溶接する際に発生するスパッタの付着を有効に防止し得る溶接スパッタ付着防止剤、およびこれを利用したスパッタ付着防止方法に関する。
スパッタは、アーク溶接やガス溶接により鋼材等を溶接する際に生じるスラグや金属粒であり、スパッタが溶接母材に付着(融着)すると外観不良などの問題が生じる。このため、予め母材に塗布することにより、溶接時のスパッタの付着を防止するスパッタ付着防止剤が使用されている。スパッタ付着防止剤は、速乾性の不溶性溶剤をベースにしたものと、水をベースにしたものに大別される。このうち、不溶性溶剤をベースにしたものは、塗布後すぐ溶接作業に移れるため作業性に優れるが、臭気や毒性が強く安全性の面で問題があり、一方、水をベースにしたものは、安全性に優れるものの、濡れたまま溶接するとブローホールなどの溶接欠陥が生じることから乾燥工程が必要であり、このため作業性の面で問題があることが指摘されている(特許文献1)。
このような水をベースとしたスパッタ付着防止剤として、例えば、多孔性シリカ粒子とポリビニルアルコールを水に混合、分散させてスラリー状にした組成物が開示されている(特許文献2)。しかし、多孔性シリカ粒子などの無機酸化物粒子は、溶接の開先などに残留し、溶接欠陥の原因となるおそれがある。また、上記指摘のとおり、乾燥工程を要することから作業効率に劣り、さらに比較的高価な原料を使用していることからコスト面でも問題があった。
一方、焼酎蒸留廃液を利用したスパッタ付着防止液が提案されている(特許文献3)。これは、焼酎製造の際に生じる廃液を再利用するものであるため、経済性に優れるものの、腐敗や変性の危険性が高く、またステンレス鋼では十分なスパッタ付着防止効果が得られないなど、適用可能な母材が制約されるという問題もあった。さらに、このスパッタ付着防止液も長時間の乾燥工程を要するため、作業性に劣るものであった。
特開平7−888685号公報 特開2003−290979号公報 特開2005−336604号公報
従って、本発明は、安価で安全性が高く、乾燥工程が不要であり、塗布直後に溶接しても溶接欠陥が生じることなく、スパッタの母材への付着を有効に防止し得るスパッタ付着防止剤、およびこれを利用したスパッタ付着防止方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意研究を行ったところ、水をベースとし、これに穀物粉等の粉体、蜂蜜等の糖類および防腐剤を組み合わせ、これを母材に予め塗布し、塗膜を形成させることによって、乾燥せず塗膜が濡れた状態で溶接しても、ピンホールやブローホールなどの溶接欠陥を生じることなく、スパッタの母材への付着を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、次の成分(a)ないし(d);
(a)穀物粉および/またはデンプン粉
(b)蜂蜜および/または水飴
(c)防腐剤
(d)水
を含有することを特徴とする溶接スパッタ付着防止剤である。
また本発明は、溶接対象部材の溶接に際し、あらかじめ溶接部および/またはその近傍に、上記溶接スパッタ付着防止剤を塗布することを特徴とするスパッタ付着防止方法である。
本発明の溶接スパッタ付着防止剤は、母材に塗布した直後に溶接しても、ピンホールやブローホール等の溶接欠陥を生じることなく、スパッタの付着を効果的に防止することができる。したがって、乾燥工程やスパッタ除去工程が不要であるか、または、大幅に短縮ないし簡略化できるため、作業効率を著しく改善することができる。また、臭気や毒性がないため安全性が非常に高く、さらに安価な原料を用いており経済性の面でも優れるものである。さらに、種々の母材に対してスパッタ付着防止効果を発揮し汎用性が高く、また、溶接後は水洗等で容易に塗膜を除去できるため、作業性にも優れるものである。
試験例4において、無塗布で溶接を行ったステンレス母材表面の写真である。 試験例4において、予め試料7を塗布してから溶接を行ったステンレス母材表面の写真である。 試験例4における、溶接後のステンレス母材表面のスパッタ粒子の電子顕微鏡写真であり、(a)は無塗布、(b)は試料7を塗布したものである。 試験例4における、ステンレス母材およびスパッタ粒子の断面の電子顕微鏡写真であり、(a)は無塗布、(b)は試料7を塗布したものである。
本発明の溶接スパッタ付着防止剤は、成分(a)として穀物粉および/またはデンプン粉を使用する。成分(a)は、粉体として一定の厚みを持った塗膜をし、スパッタと母材が直接接触することを防ぐともに、スパッタが塗膜に接触した際に、炭化してガスを発生し、スパッタを跳ね上げることによって、スパッタの母材への溶着を防止する作用を有すると考えられる。穀物粉としては、特に限定されず種々のものを使用することができるが、小麦粉、大豆粉、米粉等が好ましい。一方、デンプン粉としても特に限定されないが、例えば、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、甘藷デンプン、米デンプン、タピオカデンプンなどが挙げられ、中でも、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプンが好ましい。成分(a)として、上記穀物粉およびデンプン粉のうち、1種または2種以上を用いることができるが、溶接欠陥の発生抑制作用の観点から、小麦粉、大豆粉および米粉などの穀物粉が好ましく、特に、大豆粉は、分散性に優れ、沈降しても撹拌によって容易に均一になるため好ましい。
また本発明では、成分(b)として蜂蜜および/または水飴を用いる。蜂蜜としては、蜜源の種類を問わず、各種の蜜由来のものを用いることが出来る。これらのうち、取り扱い性の観点から蜂蜜が好ましく用いられる。成分(b)は、組成物に粘着性を付与し、塗膜を安定して形成させ、母材との密着性を向上させるとともに、塗膜の水分を保持し、蒸発を抑制する作用を有すると考えられる。
成分(c)の防腐剤としては、安息香酸系の防腐剤が好ましく用いられ、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、プロピオン酸などが例示でき、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらのうち、防腐効果やスパッタ付着防止効果の観点から、安息香酸および安息香酸ナトリウムが好ましい。
成分(d)は、上記成分(a)ないし(c)を分散ないし溶解させる基剤であり、塗膜にスパッタが接触すると、蒸発してスパッタを跳ね上げるとともに、蒸発潜熱でスパッタを冷却することにより、スパッタの母材への付着を防止する作用を有すると考えられる。
本発明の溶接スパッタ付着防止剤においては、成分(d)6質量部(以下、単に「部」で示す)に対し、成分(a)を1〜4部配合することが好ましく、さらに2〜3部配合することが好ましい。この範囲であると、塗布しやすく、均一な塗膜を形成することができ、またスパッタ付着防止効果にも優れる。
また、成分(d)6部に対し、成分(b)を1〜4部用いることが好ましく、2〜3部がより好ましい。この範囲であると、塗布しやすく、均一な塗膜を形成することができ、優れたスパッタ付着防止効果が得られる。
また、成分(d)6部に対し成分(a)と成分(b)の合計量を4〜6部とすることが好ましい。さらに、成分(a)と成分(b)の配合質量比は、4:1〜1:4とすることが好ましく、特に、3:2〜2:3とすることが好ましい。この範囲であれば、塗布しやすく、均一な塗膜の形成が可能であり、さらに優れたスパッタ付着防止効果が得られる。
一方、溶接スパッタ付着防止剤における成分(c)の含有量は、成分(a)、(b)および(d)の合計量に対して0.2〜1質量%であり、好ましくは0.5〜0.8質量%である。この範囲であると、常温でも長期間にわたって腐敗を抑制することができる。
本発明のスパッタ付着防止剤は、上記成分(a)ないし(d)を、常法に従って混合することによって調製することができる。かくして得られた溶接スパッタ付着防止剤を、溶接の際にあらかじめ溶接母材に塗布して塗膜を形成させる。母材としては、特に限定されるものではなく、例えば、一般構造用圧延鋼(SS材)、ステンレス鋼、などが例示できる。これらの母材の溶接部やその近傍に、刷毛塗りや吹き付けなどによって溶接スパッタ付着防止を塗布し、塗膜を形成させる。塗膜厚は特に限定されないが、通常30〜150μm、好ましくは50〜100μmである。この範囲であると優れたスパッタ付着防止効果が得られる。また、塗膜は1層だけでなく、2層以上の複数の層となるように塗り重ねてもよい。2層以上に塗り重ねる場合は、段取りの段階で塗布し、溶接前に再度塗布することが好ましい。
このようにして塗膜を形成させた後、乾燥することなく塗布直後に溶接することができる。一般に水をベースとする溶接スパッタ付着防止剤は、一定時間乾燥させないと溶接欠陥が生じやすいが、本発明では、乾燥させずに濡れた状態で溶接しても、ピンホールやブローホールなどの溶接欠陥が生じることなく、スパッタの母材への付着を低減できる。また、たとえスパッタが付着していても、ブラシ、束子、ヘラ等により容易に除去することが可能である。一方、塗布後乾燥してもよく、例えば、塗布後3日程度室温で放置しても、塗布後と同等のスパッタ付着防止効果が維持される。しかし、後述するように、スパッタ付着防止効果に対する水の影響が大きいため、水分含量の多い塗布後早めに溶接することが好ましく、また均一で密着性の高い塗膜が形成される範囲において、塗膜の厚みは厚い方が好ましい。溶接後、母材上に残存した塗膜は、刷毛、束子、ブラシを使う水洗等により容易に除去することができる。
上記溶接スパッタ付着防止剤を可撓性の密封チューブもしくは柔軟な合成樹脂フィルムからなる袋体に封入することにより、本発明の溶接スパッタ付着防止用品が得られる。この溶接スパッタ付着防止用品は、使用直前に揉み解す等により均一に混合でき、刷毛塗りで溶接部やその近傍に刷毛で塗布するか、またはエアガンを用いて吹き付けることにより容易に塗膜を形成することができる。
以上のように、本発明の溶接スパッタ付着防止剤を用いることにより、母材へのスパッタの付着を防止することができ、かつ溶接欠陥の発生を防止することができるが、その理由は次のように考えられる。すなわち、本発明の溶接スパッタ付着防止剤は、良好な展延性と粘着性を備えているため、母材に塗布すると均一で密着性の高い塗膜が形成される。溶接の際に発生したスパッタがこの塗膜に接触すると、スパッタの熱により塗膜の水分が蒸発する。同時に塗膜を形成する穀物粉やデンプン粉などの粉体も、瞬時に炭化してガスを発生し、炭化した皮膜となり溶球と母材を分ける。水分の蒸発の際に生じる蒸発潜熱によりスパッタが冷却されるとともに、水蒸気やガスによってスパッタが跳ね上げられ、塗膜表面を移動するため、母材への溶着が防止されるのである。
またスパッタが付着しても、スパッタと母材の界面に穀物粉やデンプン粉が炭化した微粉末が介在し濡れ性が低くなり、スパッタが球形状となって母材に点で接触した状態となるため、母材上のスパッタを除去することは容易である。また、一般に、サイズが大きく、扁平な形状で脆性的な異物が溶接表面に分布していると、溶接欠陥が生じる危険性が高いが、溶接部において、穀物粉やデンプン粉などの粉体は、高温度の溶接熱により燃焼してしまうため、溶接表面での残存量が少なく溶接状態にほとんど影響を与えない。一方、無機粉末は脆性であり、また一部溶融してサイズが大きくなるとともに扁平状となって溶接表面に分布するため、ピンホールなどの溶接欠陥の原因となるおそれがある。
次に実施例等を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
試 験 例 1
溶接試験(1):
水6部に蜂蜜(純粋はちみつ;大峯美蜜園製)と小麦粉(中力小麦粉(雪);日清フーズ社製)合計5部を下記表1に示す質量比で加え撹拌混合して溶接スパッタ付着防止剤を調製した(試料1〜6)。
溶接母材として、縦200mm、横150mm、厚さ6mmのSS400材およびSUS304材を用いた。試料1〜6を刷毛を用いて母材に塗布し塗膜を形成させた。各試料の塗布のしやすさおよび塗布状態について下記基準により評価した。また、塗布後直ちに、母材中央部において、横方向に被覆アーク溶接棒を用い、左方から右方に向けて一定速度(130mm/30秒)で肉盛り溶接を行った。溶接は、被覆アーク溶接機(Panasonic製 YC−300WX4型)を用いた。SS400材には、JIS Z3211に準拠した直径3.2mm×長さ350mm(D4303型)、SUS304材にはD308L−16型の溶接棒を使用した。電流値設定はJISに準拠し、SS400材はDC120A、SUS304材はDC130Aとした。溶接終了後、スパッタ付着状態を目視で確認し、下記基準により評価した。また、塗膜を刷毛または水洗で除去し、塗膜の残存状況を確認した。
(塗布しやすさ、塗膜状態の評価基準)
◎:刷毛で塗布しやすい粘度で均一で安定した塗膜が形成できる。
○:刷毛で塗布可能な範囲であり、不均一だが塗膜を形成できる。
△:刷毛では塗布が困難である。
×:塗布できない。
(スパッタ付着状態の評価基準)
◎:水洗でスパッタを除去できる。圧縮空気でも容易に除去できる。
○:皮手袋を着けて手で表面をこすれば除去可能。
△:鋼製のへらで強くこすれば除去可能。
×:スパッタの付着が強固である。
蜂蜜が少ないと塗膜が乾燥してひび割れが生じるか、もしくは母材からの剥離が生じた。また展延性に乏しく塗布し難かった。一方、小麦粉が少なく蜂蜜が多いと、特にSUS304材の場合には、母材表面にはじかれて塗布面が不均一になり、べとつきが生じる傾向にあった。小麦粉と蜂蜜の質量比が3:2〜2:3の範囲が、塗布しやすさと塗膜状態が最も良好であり、この範囲であるとスパッタ付着防止効果においても優れていた。
試 験 例 2
溶接試験(2):
試験例1で調製した試料3および4について、試験例1と同様にして溶接母材に塗布し、3日間室温で放置した。放置後、試験例1と同様にして溶接を行ったところ、塗布直後と同等のスパッタ付着防止効果が得られた。
試 験 例 3
溶接試験(3):
試験例1で調製した試料3および4について、試験例1と同様にして溶接母材に塗布して塗膜を形成させた後、1日室温で放置した。その後、同じ試料を塗膜の上から塗り重ね、試験例1と同様にして溶接を行ったところ、スパッタ付着防止効果がより向上していることが認められた。
試 験 例 4
溶接試験(4):
水55部に蜂蜜18部と小麦粉27部を加え撹拌混合して溶接スパッタ付着防止剤を調製した(試料7)。
溶接母材として、縦200mm、横150mm、厚さ6mmのSUS304材を用いた。スパッタ付着防止剤を、刷毛を用いて溶接母材に塗布し、塗膜を形成させた。塗布後直ちに、母材中央部において、縦方向に被覆アーク溶接棒を用い、上方から下方に向けて一定速度(5.2mm/30秒)で肉盛り溶接を行った。溶接は、被覆アーク溶接機(Panasonic製 YC−300WX4型)を用いた。JIS Z3211に準拠した直径3.2mm×長さ350mm(D4303型)の溶接棒を使用した。電流値設定はDC120Aとした。溶接終了後、鋼製ヘラ等でスパッタを除去した。下記基準によりスパッタ除去効果を評価した。また、溶接スパッタ付着防止剤を塗布しないもの(無塗布)および特開2005−336604号公報に記載の焼酎蒸留廃液を用いた溶接スパッタ付着防止剤(スパットロン:BL&I社製)を塗布したもの(比較試料1)について、同様にしてスパッタ除去効果を評価した。結果を表2に示す。
(スパッタ除去効果の評価基準)
◎:水洗でスパッタを除去できる。圧縮空気でも容易に除去できる。
○:ブラシ、束子等では除去しにくいが、鋼製ヘラにより容易に除去できる。
△:鋼製ヘラで強くこすれば除去可能。
×:スパッタの付着が強固である。
蜂蜜と小麦粉を配合した試料7は、母材表面をブラシで軽くこする程度でスパッタを容易に除去することができた。これに対し、無塗布のものスパッタがステンレス母材に強固に接合され、ヘラで除去することができなかった。また、焼酎蒸留廃液を用いた比較試料1を塗布したものは、鋼製ヘラにより容易に除去できた。
図1および図2は、溶接後、水洗浄によりスパッターを除去した母材表面の写真であり、図1は無塗布、図2は試料7を塗布したものである。図1のように、無塗布の場合、スパッタを除去することができず母材上に残存している(矢印部分)。一方、図2に示すように、試料7を塗布した場合には、ほぼ完全にスパッタが除去された。図3は、母材上のスパッタ粒子の電子顕微鏡写真、図4は、その断面の電子顕微鏡写真であり、(a)は無塗布、(b)は試料7を塗布したものである。これから明らかなように、無塗布では、スパッタ粒子と母材界面との濡れ性が高くなるため(浸漬濡れ)、半球形となって母材と面で接触した状態となり、母材と強固に接合している。これに対し、試料7を塗布したものは、母材とスパッタ粒子の界面にすすのような物質が介在し、濡れ性が低くなっているため(付着濡れ)、スパッタが球形状となって母材と点で接触した状態となる。この部分に応力が集中し、スパッタ粒子を容易に除去することができるものと考えられる。
実 施 例 1
水6部に小麦粉3部と蜂蜜2部を加え撹拌混合し、さらに防腐剤として安息香酸ナトリウムを水、小麦粉、蜂蜜の合計量に対し、0.1質量%(以下、「%」で示す)、0.2%、0.5%、1.0%となるように添加して溶接スパッタ付着防止剤を調製した(本発明品1〜4)。これらを密封容器にいれ、45℃の恒温槽内に5日保存し、防腐効果を以下の基準により評価した。安息香酸ナトリウム無添加のもの、焼酎蒸留廃液を用いたスパットロン(比較試料1)も同様にして評価した。結果を表3に示す。
(防腐効果の基準)
◎:臭気はなく、腐敗は見られない。
○:極くわずかに酸臭があった。十分使用できる。
△:酸臭がある。
×:酸臭がひどい。
××:酸敗臭気がひどく、カビ発生が見られた。
安息香酸ナトリウムを0.5%以上添加することにより、長期間にわたって腐敗を防止できることが示された。これに対し、比較試料1は、異臭が経時的に強くなり、さらに変色も生じた。
実 施 例 2
実施例1の本発明品3の溶接スパッタ付着防止剤について、試験例1と同様にして溶接試験を行い、スパッタ付着防止効果を確認したところ、試料3と同等の効果が得られた。また溶接欠陥も認められなかった。
実 施 例 3
静置試験:
実施例1の本発明品3の溶接スパッタ付着防止剤の組成において、小麦粉を米粉、大豆粉、馬鈴薯デンプンまたはトウモロコシデンプンに代えて溶接スパッタ付着防止剤を調製した(本発明品5〜9)。これらを3日間静置して粉体を沈降させた後、手で振とうするまたは撹拌棒を用いて撹拌し、撹拌後の粉体の均一分散性について下記基準により評価した。また、試験例1と同様にして、各溶接スパッタ付着防止剤を母材に塗布した後溶接した。塗膜の性状と溶接状態について、以下の基準により評価した。結果を表4に示す。
(粉体の均一分散性の評価基準)
◎:手で軽く振とうすれば均一になる。
○:手で強く振とうすれば大半が均一になる。
△:撹拌棒でかき混ぜないと均一にならない。
×:底部に固結し、均一にならない。
(塗膜の性状の評価基準)
◎:刷毛で塗布しやすい粘度で、均一で安定な塗膜が形成ができる。
○:刷毛で塗布可能な範囲で、不均一だが塗膜を形成できる。
△:刷毛では塗布が困難である。
×:塗布できない。
(溶接状態の評価基準)
◎:水洗でスパッターを除去できる。圧縮空気でも容易に除去できる。
○:ブラシで軽くこする又は皮手袋を着けて手で表面をこすれば除去可能。
△:鋼製のへらで強くこすれば除去可能。
×:スパッターの付着が強固である。
溶接状態は、小麦粉、米粉など穀物粉の方が良好であった。また粉体の均一分散性は、粒径が大きいものの方が良好であり、特に大豆粉が優れていた。
試 験 例 5
膜厚の測定:
鋼板の重量を予め測定し(W1g)、この鋼板に本発明品3の溶接スパッタ付着防止剤を刷毛で塗布し、30分後に重量を測定した(W2g)。さらに2時間後、同様にして溶接スパッタ付着防止剤を塗布し、その30分後に重量を測定した(W3g)。重量の測定は、電子上皿天秤(島津製作所製、UX2200H型)を用いて行った。鋼板は5枚使用し、その面積の平均は301.29cm2であった。それぞれの鋼板について、以下の式により1回塗布および2回塗布による膜厚みを求め、その平均値を算出したところ、1回塗布による膜厚は36μm、2回塗布では59μmであった。

t1=W2−W1/A・d
t2=W2−W1/A・d
t1:1回塗布の膜厚
t2:2回塗布の膜厚
A:鋼板面積(cm2
d:溶接スパッタ付着防止剤の比重(g/cm3
本発明によれば、安価で安全性が高く、乾燥工程が不要で、スパッタの付着を効果的に低減できる水ベースの溶接スパッタ付着防止剤を得ることができ、種々の溶接母材に対して適用することが可能である。

Claims (11)

  1. 次の成分(a)ないし(d);
    (a)穀物粉および/またはデンプン粉
    (b)蜂蜜および/または水飴
    (c)防腐剤
    (d)水
    を含有することを特徴とする溶接スパッタ付着防止剤。
  2. 成分(a)の穀物粉が、小麦粉、大豆粉および米粉よりなる群から選ばれた少なくともひとつである請求項1記載の溶接スパッタ付着防止剤。
  3. 成分(a)のデンプン粉が、馬鈴薯デンプン粉およびトウモロコシデンプン粉よりなる群から選ばれた少なくともひとつである請求項1または2に記載の溶接スパッタ付着防止剤。
  4. 成分(c)が、安息香酸および安息香酸ナトリウムよりなる群から選ばれた少なくともひとつである請求項1ないし3のいずれかの項記載の溶接スパッタ付着防止剤。
  5. 成分(d)6質量部に対し、成分(a)を2〜3質量部含有する請求項1ないし4のいずれかの項記載の溶接スパッタ付着防止剤。
  6. 成分(d)6質量部に対し、成分(b)を2〜3質量部含有する請求項1ないし4のいずれかの項記載の溶接スパッタ付着防止剤。
  7. 成分(d)6質量部に対し、成分(a)および成分(b)を合計で4〜6質量部含有する請求項1ないし6のいずれかの項記載の溶接スパッタ付着防止剤。
  8. 成分(a)と成分(b)の配合質量比が、4:1〜1:4である請求項1ないし7のいずれかの項記載の溶接スパッタ付着防止剤。
  9. 成分(a)、(b)および(d)の合計量に対する成分(c)の含有量が0.2〜1質量%である請求項1ないし8のいずれかの項記載の溶接スパッタ付着防止剤。
  10. 可撓性チューブまたは合成樹脂製フィルム袋体に請求項1ないし9のいずれかの項に記載の溶接スパッタ付着防止剤を封入してなる溶接スパッタ付着防止用品。
  11. 溶接対象部材の溶接に際し、あらかじめ溶接部および/またはその近傍に、請求項1ないし9のいずれかの項記載の溶接スパッタ付着防止剤を塗布することを特徴とするスパッタ付着防止方法。
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