JP2011245283A - ステントグラフト用基布およびステントグラフト - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ステントグラフト用基布として、少なくとも一方の面にて、その最表面層の繊維の断面が最表面に略平行の辺を持つ形状である繊維を含む織物であり、カレンダーによるプレス処理が施された、または扁平繊維の断面の長軸側が織物の厚み方向と垂直に並べられた織物であり、織物の織密度がタテヨコ共に150〜400本/2.54cm、厚みが1〜90μm、とする。
【選択図】図1
Description
腹部大動脈瘤の治療には通常外科バイパス術を行い、この際患部又は拡張セグメント内へのグラフトの配置を伴う。ここで、経腹膜又は腹膜後方式を介する合成グラフトへの置換・切除が標準的な治療法であったが、危険性を伴うものであった。例えば、合併症としては、手術時心筋虚血、腎不全、勃起不能、腸虚血、感染、下肢虚血、麻痺を伴う脊髄損傷、大動脈−内臓瘻及び死が挙げられる。腹部大動脈瘤の外科的治療は高い死亡率を示すものとされている。
繊維の総繊度は1〜40デシテックスであることが好ましい。5〜35デシテックスであることがより好ましく、10〜25デシテックスであることがさらに好ましい。1デシテックス以上とすることで、基布に必要な強力を維持することができ、40デシテックス以下とすることで、基布の厚みを低減することが可能となる。また、単糸繊度は0.1〜2デシテックスであることが好ましく、0.3〜1.0デシテックスであることがより好ましい。0.5デシテックス以下であることがさらに好ましい。0.1デシテックス以上で摩耗による破断や厚みをより抑制することができ、2デシテックス以下とすることで基布の柔軟性をより高めることができる。
本発明の構成を採ることにより、柔軟性と低透水性を両立することが可能となる。柔軟性が優れる基布、特に後述の通りカンチレバー剛軟度で50mm以下とするためには、織り密度を粗くすればよいが、そうすると透水性が増加する。反対に透水性を抑制する場合、特に透水性250mL/cm2/min以下とする場合、緻密に織る必要があるが、そうすると風合いの硬い織物となる。このように、柔軟性と透水性はトレードオフの関係にあるが、上述のように本願発明の基布であれば、織密度を粗いまま透水性を抑制し、柔軟性と低透水性を両立することができる。
A:経糸の繊度(デシテックス)、B:緯糸の繊度(デシテックス)
N:経糸の本数(本/2.54cm)、M:緯糸の本数(本/2.54cm)
CFが1300以上であると、厚みを薄くしつつ、細繊度でも高い強力を維持できる。CFは高いほど強力が向上する点で好ましいが、反対に風合いは硬くなる傾向にあるので上限は4000以下とする。
ここでいう織物の引張強力は、JIS L 1096 8.12.1 A法(ストリップ法)(1999)に基づいて行い、タテおよびヨコ方向の幅1cmあたりの破断強力(N/cm)をそれぞれ3回の相加平均で算出したのち平均化し、有効数字3桁にまとめたものである。
ダイヤルシックネスゲージ((株)尾崎製作所製、商品名“ピーコックH”)により、一定加圧23.5kPa(240gf/cm2)で10秒間放置した後の対象織物の計測値(μm)を読み、無作為に5箇所計測してその相加平均値を求め、小数点第1位を四捨五入した値(μm)を用いた。
無作為に2箇所をサンプリングし、各サンプルに対し下記方法で2回測定して、その平均値を求めた。
JIS L 1096 8.19.1A法(カンチレバー法)(1999)に基づいて測定した。タテおよびヨコ方向で得られた値を平均した値を用いた。
JIS L 1096 8.12.1(1999)により、幅5cm、長さ20cmのサンプルを採取し、つかみ間隔10cmで定速伸長型引張試験器にて、引張速度10cm/分にて伸長させた。得られた値を幅1cm当たりに換算して引張強力とした。
織物の断面を走査電子顕微鏡(SEM)にて、タテ方向とヨコ方向に各2点づつサンプリングし、1000倍および3500倍にて表面付近の糸を観察した。
22デシテックス12フィラメント(マルチフィラメント、単糸繊度1.8デシテックス)のポリエチレンテレフタレート繊維を紡糸し、ついでウォータージェットルームにて平織に製織した。これを精練、乾燥、セットして経160本/2.54cm、緯160本/2.54cmの織物とした。この時、カバーファクターは1501である。次に、ロールの1本のみを160℃に過熱してカレンダー処理を行い、180℃で熱セットした。得られた基布の物性を表1にまとめた。この結果から明らかなように、薄くて低透水性、柔軟な基布を得ることができた。
得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は表面に略平行(厚み方向に略垂直)に変形していた。図1および図2にタテ糸のSEM断面写真を示した。
繊維を33デシテックス72フィラメント(マルチフィラメント、単糸繊度0.46デシテックス)とし、織密度を経153本/2.54cm、緯153本/2.54cmとした以外は実施例1と同様に処理した。得られた基布は実施例1と比較してさらに透水性が抑制され、細繊度で低密度のため柔軟性にも優れていた。
繊維を22デシテックス48フィラメント(マルチフィラメント、単糸繊度0.46デシテックス)とし、織密度を経212本/2.54cm、緯144本/2.54cmとし、さらにカレンダー処理を行わない以外は実施例1と同様に処理した。実施例1や実施例2と比較して緻密な織密度であり、CFも実施例1に対して高く、強力も高かったが、透水性は非常に大きかった。
繊維を12デシテックス1フィラメント(モノフィラメント、単糸繊度12デシテックス)とし、織密度を経305本/2.54cm、緯305本/2.54cmとし、さらにカレンダー処理を行わない以外は実施例1と同様に処理した。実施例1、実施例2と比較して非常に高密度であるにも関わらず透水性は高く、風合いも硬いものであった。
織密度を経120本/2.54cm、緯100本/2.54cmとし、さらにカレンダー処理を行わない以外は実施例1と同様に処理した。織密度も小さく、薄くて柔軟な基布を得ることができた。しかし、引張強力は低く、透水性にも劣るものであった。
得られた布帛の断面をSEMで観察したところ、表層の糸は中央部と同様に丸い断面を有していた。
Claims (9)
- 少なくとも一方の面にて、その最表面層の繊維の断面が前記最表面に略平行の辺を持つ形状である繊維を含む織物であり、前記織物の織密度がタテヨコ共に150〜400本/2.54cm、厚みが1〜90μm、であるステントグラフト用基布。
- 少なくとも一方の面にて、カレンダーによるプレス処理が施された、または扁平繊維の断面の長軸側が織物の厚み方向と垂直に並べられた織物であり、前記織物の織密度がタテヨコ共に150〜400本/2.54cm、厚みが1〜90μm、であるステントグラフト用基布。
- 前記繊維がマルチフィラメントである請求項1又は2に記載のステントグラフト用基布。
- 前記織物は表面が起毛されていないものである請求項1〜3のいずれかに記載のステントグラフト用基布。
- 透水性が250mL・cm2/min以下である請求項1〜4のいずれかに記載のステントグラフト用基布。
- カバーファクターが1300〜4000である請求項1〜5いずれかに記載のステントグラフト用基布。
- カンチレバー剛軟度が10〜50mmである請求項1〜6のいずれかに記載のステントグラフト用基布。
- 前記繊維の総繊度が1〜40デシテックス、単糸繊度が0.1〜2デシテックスである請求項1〜7のいずれかに記載のステントグラフト用基布。
- 請求項1〜8に記載のステントグラフト用基布とステントよりなるステントグラフト。
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