シングルエンディッドフォワード型のインバータ回路を備えた一般的なスイッチング電源装置として、例えば図19(a)に示すように、主スイッチング素子14、主トランス16、整流側ダイオード18、転流側ダイオード20、平滑インダクタ22、平滑コンデンサ24で構成されたスイッチング電源装置10がある。
スイッチング電源装置10の主スイッチング素子14は、入力電源12に直列接続されたN−chのMOS型FETであり、出力電圧Voが一定になるようにオン・オフ駆動され入力電圧Viを断続する。主トランス16の一次巻線16aは、主スイッチング素子14と直列に接続され、主スイッチング素子14の断続によって発生した断続電圧が印加される。主トランス16の二次巻線16bには、その断続電圧を変圧した交流電圧が発生し、主スイッチング素子14がオンして二次巻線16bのドットを付した側が高電位になったときの電圧を、整流側ダイオード18が整流する。二次巻線16bと整流側ダイオード18の直列回路の両端には、整流電圧が出力されているときにオフする転流側ダイオード20が接続され、転流側ダイオード20の両端電圧を平滑インダクタ22と平滑コンデンサ24との分圧回路で平滑する。平滑コンデンサ24には直流の出力電圧Voが発生し、その両端に接続された負荷26に出力電圧Voと出力電流Ioを供給する。転流側ダイオード20は、整流側ダイオード18が整流電圧を出力していないときにオンし、平滑インダクタ22が平滑コンデンサ22に向けて蓄積エネルギー放出する電流経路として働く。
スイッチング電源装置10は、負荷が重いとき(出力電流Ioが大きいとき)には、図19(b)のように動作する。平滑インダクタ22の電流I22は、出力電流Ioを中心にノコギリ波状に振幅し、いわゆる電流連続モードの動作になる。転流側ダイオード20の電流I20は、主スイッチング素子14がオンのときにゼロになり、主スイッチング素子14がオフのときに電流I22とほぼ等しい電流が流れる。一方、負荷が軽いとき(出力電流Ioが小さいとき)には、図19(c)に示すように、平滑インダクタ22の電流I22が臨界点以下になり、電流不連続モードになる。これは、電流I22が逆方向に流れようとするのを転流側ダイオード22が阻止するためである。その結果、出力電圧Voを一定に維持するため、主スイッチング素子14のオン時間が短くなり、電流I22の振幅が小さくなる。
また、近年、図20(a)に示すスイッチング電源装置30のように、上記の整流側ダイオード18、転流側ダイオード20に代えて、双方向に導通可能で導通抵抗の小さなN−chのMOS型FETを用いて整流側スイッチング素子32、転流側スイッチング素子34を設け、導通損失を低減するために同期整流する構成が使用されるようになってきた。
スイッチング電源装置30の主スイッチング素子14が入力電圧Viを断続し、主トランス16の一次巻線16aにその断続電圧が印加され、二次巻線16bに断続電圧を変圧した交流電圧が発生する。主スイッチング素子14がオンして二次巻線16bのドットを付した側が高電位になったときの電圧を、整流側スイッチング素子32が整流する。ここでは、整流側スイッチング素子32は、ドレイン端子が二次巻線16bのドットが付されていない端子に接続され、ソース端子がグランド電位に接続されている。ゲート端子は、二次巻線16bのドットが付された端子に接続され、いわゆるトランス巻線駆動方式の構成になっている。従って、整流側スイッチング素子32は、主トランス16の巻線電圧及び巻線電圧の反転のタイミングに基づいてオン・オフ駆動される。
二次巻線16bと整流側スイッチング素子32の直列回路の両端には、整流電圧が出力されているときにオフする転流側スイッチング素子34が接続され、転流側スイッチング素子34の両端電圧を平滑インダクタ22と平滑コンデンサ24との分圧回路で平滑する。平滑コンデンサ24に直流の出力電圧Voが発生し、その両端に接続された負荷26に出力電圧Voと出力電流Ioを供給する。転流側スイッチング素子34は、ドレイン端子が二次巻線16bのドットが付された側の端子に接続され、ソース端子がグランド電位に接続され、ゲート端子が二次巻線16bのドットが付されていない端子に接続されており、整流側スイッチング素子32と同様に、トランス巻線駆動方式の構成になっている。また、ここでは、整流電圧が出力されていない期間(主スイッチング素子がオフの期間)に転流側スイッチング素子34が継続してオンするように、二次巻線16bからゲート端子の向きにホールドダイオード36が挿入され、ゲート電圧をピークホールドし、転流側駆動コンデンサ38に保持させる構成になっている。また、次に主スイッチング素子14がオンに転じるタイミングで転流側スイッチング素子34をオフさせるため、転流側駆動コンデンサ38の両端に放電スイッチ40と放電抵抗42が接続されている。放電スイッチ40をオン・オフするための図示しない駆動回路も、トランス巻線駆動方式で構成されている。従って、転流側スイッチング素子34は、上記の転流側ダイオード20と同様に、平滑インダクタ22が平滑コンデンサ22に向けて蓄積エネルギー放出する電流経路として働く。
スイッチング電源装置30は、負荷が重いときには、図20(b)のように動作する。平滑インダクタ22の電流I22は、出力電流Ioを中心にノコギリ波状に振幅し、電流連続モードの動作になる。転流側スイッチング素子34の電流I20は、主スイッチング素子14がオンのときにゼロになり、主スイッチング素子14がオフのときに電流I22とほぼ等しい電流が流れる。このように、負荷が重いときの動作は、図19(b)のスイッチング電源装置10の場合とほぼ同様である。
一方、負荷が軽いときは、図20(c)に示すように、平滑インダクタ22の電流I22が臨界点以下になるが、平滑インダクタ22の電流I22はノコギリ状の波形を維持し、負荷が重いときと同様に電流連続モードの動作が行われる。これは、主スイッチング素子14、整流側スイッチング素子32及び転流側スイッチング素子34が、双方向に導通可能なMOS型FETが用いられているので、平滑インダクタ22のエネルギー放出の電流が逆方向(マイナス方向)にも流れることができ、電流I22がノコギリ波状に連続しようとする動作が妨げられないからである。その結果、主スイッチング素子14のオン時間は、負荷が重いときから変化せず、負荷が軽いときでも電流I22の振幅が大きい。
図20(a)の回路図には、転流側スイッチング素子34のドレイン端子と直列の位置に、配線パターン等の寄生インダクタ44を記載してある。これは、後で述べる貫通電流の問題に影響を与える素子である。
また、特許文献1の図12に開示されているスイッチング電源装置も、整流側スイッチング素子と転流側スイッチング素子を巻線駆動方式で駆動する同期整流回路を備えているが、構成はスイッチング電源装置30と異なる。このスイッチング電源装置は、主トランスT1に補助巻線N41,N42が設けられ、補助巻線N41の主スイッチング素子Q11がオンしたときに高電位となる一端を、コンデンサC21、ビーズ41抵抗21を介して整流側スイッチング素子Q21のゲート端子に接続し、補助巻線N41の他の一端を整流側スイッチング素子Q21のソース端子に接続し、整流側スイッチング素子Q21のゲート・ソース端子間にコンデンサC31と抵抗R11の並列回路を接続する第1の副制御回路31を備えている。さらに、補助巻線N42の主スイッチング素子Q11がオンしたときに低電位となる一端を、コンデンサC22、ビーズ42及び抵抗R22を介して転流側スイッチング素子Q22のゲート端子に接続し、補助巻線N42の他の一端を転流側スイッチング素子Q22のソース端子に接続し、転流側スイッチング素子Q22のゲート・ソース端子間にコンデンサC32と抵抗R12の並列回路を接続する第2の副制御回路32を備えている。
この巻線駆動方式の同期整流回路によれば、主スイッチング素子Q11がオンに転じたタイミングで、補助巻線N41にドットが付された側が高電位の電圧が発生し、その電圧によってコンデンサC31の電圧Vgs1が整流側スイッチング素子Q21のオン閾値以上の電圧に急速充電され、整流側スイッチング素子Q21がオンに転じる。その後、コンデンサC31の電荷を抵抗R11等で放電し、コンデンサC31の電圧Vgs1をオン閾値以下の電圧に低下したタイミングで整流側スイッチング素子Q21がオフに転じる。同様に、主スイッチング素子Q11がオフに転じたタイミングで、補助巻線N42にドットが付されていない側が高電位の電圧が発生し、その電圧によってコンデンサ32の電圧Vgs2が転流側スイッチング素子Q22のオン閾値以上の電圧に急速充電され、転流側スイッチング素子Q22がオンに転じる。その後、コンデンサC32の電荷を抵抗R12等で放電し、コンデンサC32の電圧Vgs2をオン閾値以下の電圧に低下したタイミングで転流側スイッチング素子Q22がオフに転じる。すなわち、整流側及び転流側スイッチング素子Q21,Q22は、いずれもオンに転じてからオフに転じるまでの時間が、第1又は第2副制御回路31,32が有する放電の時定数によって決定されるという特徴がある。
また、特許文献2の図3に開示されているスイッチング電源装置も、整流側スイッチング素子と転流側スイッチング素子を巻線駆動方式で駆動する同期整流回路を備えている。このスイッチング電源装置は、主トランス1に補助巻線45,46が設けられ、補助巻線45の主スイッチング素子2がオンしたときに高電位となる一端が、ツェナダイオード38と抵抗16で成る整流ドライブ回路32を介して整流側スイッチング素子5のゲート端子に接続され、補助巻線45の他の一端が、整流側スイッチング素子5のソース端子に接続されている。さらに、補助巻線46の主スイッチング素子2がオンしたときに低電位となる一端が、ダイオード23、トランジスタ18及び抵抗19,25で成る所定の転流ドライブ回路33を介して転流側スイッチング素子6のゲート端子に接続され、補助巻線46の他の一端が転流側スイッチング素子6のソース端子に接続されている。
この巻線駆動方式の同期整流回路によれば、主スイッチング素子2がオンに転じたタイミングで補助巻線45にドットが付された側が高電位の電圧が発生し、その電圧によって整流側スイッチング素子5のゲート端子にオン閾値以上の電圧が発生し、整流側スイッチング素子Q21がオンに転じる。その後、主スイッチング素子2がオフに転じたタイミングで補助巻線45に逆向きの電圧が発生し、その電圧によって整流側スイッチング素子5のゲート端子にオン閾値以下の電圧に低下して整流側スイッチング素子5がオフに転じる。同様に、主スイッチング素子2がオフに転じたタイミングで、補助巻線46にドットが付された側が高電位の電圧が発生し、その電圧によって転流側スイッチング素子6のゲート端子にオン閾値以上の電圧が発生して転流側スイッチング素子6がオンに転じる。その後主スイッチング素子2がオフに転じたタイミングで補助巻線46に逆向きの電圧が発生してトランジスタ18がオンし、整流側スイッチング素子5のゲート端子をオン閾値以下の電圧に低下して整流側スイッチング素子5がオフに転じる。
転流ドライブ回路33のダイオード23は、主スイッチング素子2がオフの期間に転流側スイッチング素子6がオンを継続するように、転流側スイッチング素子6のゲート端子電圧を保持する働きする。また、整流ドライブ回路32のツェナダイオード38は、ある程度高めのツェナ電圧に設定することにより、主スイッチング素子2が停止したとき、電源装置の出力側(例えば、並列運転された別のスイッチング電源装置)からエネルギーが供給され続ける状態に陥っても、整流側スイッチング素子5のオフ状態を維持することができる。
以下、この発明のスイッチング電源装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置10,30と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。この実施形態のスイッチング電源装置50は、図1に示すように、入力電源12に直列接続され、入力電圧Viを断続する主スイッチング素子14を備えている。主スイッチング素子14は、制御回路52が出力する一定周期のパルス電圧信号で駆動され、所定の時比率でオン・オフすることによって出力電圧Voを安定化する。ここでは、主スイッチング素子14は、N−chのMOS型FETが使用されている。スイッチング素子14のソース端子からドレイン端子の向きにダイオード14aが接続されている。この寄生ダイオード14aは、スイッチング素子14のチップ内に寄生するダイオードである。また、主スイッチング素子14のドレイン・ソース端子間にはコンデンサ14bが接続されている。このコンデンサ14bは、主スイッチング素子14のチップ内に存在する寄生コンデンサ、後述する主トランス16の巻線に寄生する浮遊容量、ノイズ吸収用に接続されたスナバ用コンデンサ等を合成して1つのコンデンサ素子として表したものである。
主スイッチング素子14のドレイン端子と入力電源12との間には、主トランス16の一次巻線16aが接続され、主スイッチング素子14のオン・オフによって発生する断続電圧が印加される。また、主トランス16には、一次巻線16aに印加された断続電圧を変圧した交流電圧が発生する二次巻線16bが設けられている。一次巻線16aの入力電源12側に接続されている側の端子に付したドットは、巻線の極性を表わしている。
前記二次巻線のドットが付されていない端子には、N−chのMOS型FETである整流側スイッチング素子32のドレイン端子が接続されている。整流側スイッチング素子32は、主スイッチング素子14がオンの期間に二次巻線16bに発生する電圧を整流する。整流側スイッチング素子32のソース端子からドレイン端子の向きに、整流側ダイオード32aが接続されている。これは、整流側スイッチング素子32のチップ内に存在するボディダイオード、又は、独立して外部に設けられたダイオード素子である。また、整流側スイッチング素子32のドレイン・ソース端子間にはコンデンサ32bが接続されている。このコンデンサ32bは、整流側スイッチング素子32のチップ内に存在する寄生コンデンサ、ノイズ吸収用に接続されたスナバ用コンデンサ等を合成したものである。
整流側スイッチング素子32のゲート端子は、インピーダンス回路56を介して二次巻線16bのドットが付された端子に接続され、さらにゲート・ソース端子間には、整流側駆動コンデンサ32cと放電抵抗54の並列回路が接続されている。整流側駆動コンデンサ32cは、整流側スイッチング素子32のチップ内に存在する寄生コンデンサ、独立して外部に設けられたコンデンサを合成したものである。ここでは、インピーダンス回路56としてコンデンサ素子が選択され、そのインピーダンスは、後述する転流側スイッチング素子34の両端電圧Vd34が出力電圧Vo以下のときは、整流側スイッチング素子32のゲート端子電圧Vg32のピーク値がオン閾値Vth32以下になり、電圧Vd34が出力電圧Voをある程度超えたところで電圧Vg32がオン閾値Vth32を超えるように設定されている。また、放電抵抗54は、正負に振幅する略矩形のゲート端子電圧Vg32の平均値が略ゼロボルトになるように抵抗値が調整されている。それによって、ゲート端子電圧Vg32がハイレベルからローレベル、又はローレベルからハイレベルに変化するとき、主スイッチング素子14のオン・オフの時比率が変動しても、常に整流側スイッチング素子32のオン閾値を高速に通過することができるので、整流側スイッチング素子32のターンオン及びターンオフを高速化することができる。
二次巻線16bのドットが付された端子には、N−chのMOS型FETである転流側スイッチング素子34のドレイン端子が接続されている。転流側スイッチング素子34のソース端子は、整流側スイッチング素子32のソース端子に接続されている。転流側スイッチング素子34は、整流側スイッチング素子32がオフのときに相補的にオンし、後述する平滑インダクタ22が平滑コンデンサ22に向けて蓄積エネルギーを放出するときの電流経路として働く。転流側スイッチング素子34のソース端子からドレイン端子の向きに、転流側ダイオード34aが接続されている。これは、転流側スイッチング素子34のチップ内に存在するボディダイオード、又は、独立して外部に設けられたダイオード素子である。また、転流側スイッチング素子34のドレイン・ソース端子間にはコンデンサ34bが接続されている。このコンデンサ34bは、転流側スイッチング素子34のチップ内に存在する寄生コンデンサ、ノイズ吸収用に接続されたスナバ用コンデンサ等を合成したものである。また、ゲート・ソース端子間には、転流側駆動コンデンサ34cと放電抵抗57の並列回路が接続されている。転流側駆動コンデンサ34cは、転流側スイッチング素子34のチップ内に存在する寄生コンデンサ、独立して外部に接続されたコンデンサを合成したものである。
転流側スイッチング素子34の駆動は、主トランス16に設けた補助巻線16cに発生する電圧を用いて行う。補助巻線16cのドットが付された端子は、転流側スイッチング素子34のソース端子に接続されている。補助巻線16cのドットが付されていない端子には微分コンデンサ58aの一端が接続され、微分コンデンサ58aの他の一端と補助巻線16cのドットが付された端子の間に微分抵抗58bが接続されている。すなわち、微分コンデンサ58aと微分抵抗58bは微分回路58を構成し、補助巻線16cの電圧V16cを微分した電圧V58bを微分抵抗58bの両端に発生させる。微分回路58は、主スイッチング素子14がオフに転じた直後の電圧V16cを微分し、出力電流Ioの大小に応じてピーク値が変化する微分電圧V58bを出力する。
補助巻線16cのドットが付されていない端子には、N−chのMOS型FETである駆動トランジスタ60のドレイン端子が接続されている。駆動トランジスタ60のゲート端子は、微分回路58の中点(微分回路58の出力)に接続されている。また、駆動トランジスタ60のソース端子には、ホールドダイオード62のアノード端子が接続され、そのカソード端子が、電流制限抵抗64を介して転流側スイッチング素子34のゲート端子に接続されている。駆動トランジスタ60は、ゲート端子に微分電圧V58bが入力され、電圧V58bが上昇してオン閾値Vth60を超えると、ソース端子に電圧(V58b−Vth60)を出力することができ、転流側駆動コンデンサ34cの電圧Vg34が電圧(V58b−Vth60)よりも低いと、ホールドダイオード62が導通し、電流制限抵抗64を介して転流側駆動コンデンサ34cを充電することができる。また、一旦上昇した電圧V58bが低下しても、ホールドダイオード62が逆流を阻止するので、しばらくの間、転流側駆動コンデンサ34cの電圧は保持されることになる。電流制限抵抗64は、転流側駆動コンデンサ34cを充放電する電流が過度に急峻ならないようにする働きをする抵抗で、この発明の動作に影響しない程度の小さな抵抗値に設定されている。微分回路58、駆動トランジスタ60及びホールドダイオード62は、補助巻線16cに発生する電圧を用いて転流側スイッチング素子34をオンさせる働きをする。
一方、補助巻線16cに発生する電圧を用いて転流側スイッチング素子34をオフさせる働きは、ツェナダイオード66aと逆流阻止ダイオード66bで成る電圧降下回路66が行う。ツェナダイオード66aは、カソード端子が電流制限抵抗64を介して転流側スイッチング素子34のゲート端子に接続されている。逆流阻止ダイオード66bは、アノード端子がツェナダイオード66aのアノード端子に接続され、カソード端子が補助巻線16cのドットが付されていない端子に接続されている。ツェナダイオード66aのツェナ電圧V66aは、補助巻線16cのドットが付されていない端子が負電圧になると転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34をオン閾値Vth34以下に低下させ、補助巻線16cの当該端子がゼロ電圧のときはゲート電圧Vg34がオン閾値Vth34以上に保持されるように設定されている。また、逆流阻止ダイオード66bは、補助巻線16cの当該端子が正電圧になったとき、ツェナダイオード66aが順方向に導通するのを阻止し、上述した駆動トランジスタ60の動作を妨げないようにする働きをする。
このように、スイッチング電源装置50の同期整流回路は、整流側及び転流側スイッチング素子32,34の駆動回路がトランス巻線駆動方式の構成になっており、主トランス16の二次巻線16b又は補助巻線16cの電圧の反転のタイミングに基づいてオン・オフ駆動される。
転流側スイッチング素子34の両端には、平滑インダクタ22と平滑用コンデンサ24の直列回路で成る平滑回路が設けられ、平滑用コンデンサ24の両端に接続された負荷26に出力電圧Vo及び電流Ioを供給する。ここでは、平滑インダクタ22側の一端が転流側スイッチング素子34のドレイン端子に、平滑コンデンサ24側の一端が転流側スイッチング素子34のソース端子にそれぞれ接続されている。
次に、スイッチング電源装置50の動作について説明する。スイッチング電源装置50は、出力電流Ioが所定の値以上である重負荷時は、整流側及び転流側スイッチング素子32,34による同期整流を行い、出力電流Ioが所定の値以下である軽負荷時は、転流側スイッチング素子34が停止して整流側スイッチング素子32及び転流側ダイオード,34aによる整流を行うという特徴がある。まず、スイッチング電源装置50の重負荷時の動作を説明し、その後、軽負荷時の動作を説明する。
重負荷時(出力電流がIo1のとき)の各部の動作波形は、図2のタイムチャートのように表わされる。主スイッチング素子14は、制御回路52が出力する一定周期のパルス信号によって駆動され、期間T1〜T5を1周期とするスイッチング動作を繰り返す。図3〜図7の等価回路は、各期間ごとに各素子の状態や電流の流れを表わしたものである。
ここで、各等価回路では、主スイッチング素子14、整流側スイッチング素子32、転流側スイッチング素子34及び駆動トランジスタ60をスイッチの回路記号で表わし、スイッチの開閉によりオン又はオフの状態を示している。制御回路52の記載は省略した。また、主トランス16の漏れインダクタンス成分による影響を説明するため、一次巻線16aと入力コンデンサ12aとの接続点に漏れインダクタンスLeに相当するインダクタ68を独立して設け、一次巻線16a,二次巻線16b、補助巻線16cは、漏れインダクタンスLeよりも十分に大きい励磁インダクタンスLmを有し、互いに密に結合しているものとする。各巻線16a,16b,16cの巻数は、それぞれNa,Nb,Ncとする。また、各部のダイオード素子については、説明の便宜のため、導通時の順方向電圧をゼロボルトと仮定する。
以下、期間T2,T3,T4,T5,T1の順に、対応する等価回路を用いて動作を説明する。後述する期間T1が終了した時点で(期間T2に入る直前)、主スイッチング素子14はオン、整流側スイッチング素子32はオン、転流側スイッチング素子34はオフしている。期間T2に入ると、主スイッチング素子16がオフに転じる。すると、図3に示すように、主スイッチング素子16に短絡されていたコンデンサ14bが開放され、インダクタ68が自身の蓄積エネルギーを放出し、インダクタ68、主トランス16、コンデンサ34b、整流側スイッチング素子32又は整流側ダイオード32b、主トランス16、コンデンサ14b、入力コンデンサ12aの経路に電流が流れ、コンデンサ14bを充電する。また、入力電源12から、インダクタ68、主トランス16、平滑インダクタ22、平滑コンデンサ24及び負荷26、整流側スイッチング素子32又は整流側ダイオード32b、主トランス16、コンデンサ14bの経路にも電流が流れ、平滑インダクタ22にエネルギーを蓄積しつつ、コンデンサ14bを充電する。さらに、主トランス16が自身の蓄積エネルギーを放出し、一次巻線16a、コンデンサ14b、入力コンデンサ12a、インダクタ68の経路に電流が流れ、コンデンサ14bを充電する。この3つの経路の電流を合算した電流は、期間T2の電流I68波形に示されている。なお、主トランス16が自身の蓄積エネルギーを放出するとき、二次巻線16b、コンデンサ34b、整流側スイッチング素子32又は整流側ダイオード32bの経路にも電流が流れるが、この経路にコンデンサ14bは含まれていないので、図示していない。コンデンサ14bが充電されると、図2に示すように、一次巻線16aの電圧V16aが、当初の電圧Viからコンデンサ14bの電位上昇と同様の速度で急激に低下する。同様に、二次巻線16bの電圧V16bも当初の電圧から急激に低下する。
ここで、スイッチング電源装置50は重負荷(出力電流がIo1)の条件で動作しているため、上記3つの経路の充電電流のうち、インダクタ68のエネルギー放出による電流が最も大きい。従って、コンデンサ14bの電位上昇の速度は、ほぼインダクタ68のエネルギー放出による電流によって決まる。
電圧V16a,V16bは正電圧なので、整流側スイッチング素子32のゲート電圧Vg32も正電圧となり、ゲート電圧Vg32がオン閾値Vth32を超えている間は整流側スイッチング素子32がオンを継続するが、それ以下になった時に整流側スイッチング素子32がオフに転じ、代わって整流側ダイオード32aが導通し、上述したコンデンサ14cを充電する電流が流れ続ける。
一方、補助巻線16cの電圧V16cは、当初の負電圧から、コンデンサ14bの電位上昇速度に比例した速度で上昇する。電圧降下回路66は、期間T2の当初は逆流阻止ダイオード66b及びツェナダイオード66aが導通し、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34をオン閾値Vth34以下に保持しているが、電圧V16cの上昇によりツェナダイオード66aが導通できなくなり、速やかに切り離される。微分回路58の出力である電圧V58bは、当初のゼロ電圧から電圧V16cの上昇速度より僅かに遅い速度で上昇を開始する。この速度差は、微分コンデンサ58aと微分抵抗58bとの時定数によって決まる。電圧V58bがある程度上昇すると、駆動トランジスタ60とホールドダイオード62が電流を流し始め、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34が、当初の負電圧から上昇し始める。上述したように、電圧Vg34は、電圧V58bよりもオン閾値Vth60だけ低い値を維持しながら上昇し、その上昇速度は電圧V58bの上昇速度にほぼ等しい。期間T2の間は電圧Vg34の上昇がオン閾値Vth34に達しないので、転流側スイッチング素子34はオフを継続する。期間T2は、電圧V16a,V16bが低下してゼロ電圧になったところで終了する。
期間T3に入ると、主スイッチング素子16はオフのまま、二次巻線16bの電圧V16bが負電圧になる。すると、転流側ダイオード34aへの逆電圧印加が解除され、平滑インダクタ22が蓄積エネルギーを放出しようとして自身の電圧の向きが反転し、図4に示すように、平滑インダクタ22、平滑コンデンサ及び負荷26、転流側ダイオード34aの経路に電流が流れ、転流側ダイオード34aが導通する。転流側ダイオード34aが導通すると、整流側ダイオード32aは逆電圧が印加されてオフするので、インダクタ68が蓄積エネルギーを放出する電流は、インダクタ68、主トランス16、転流側ダイオード34a、コンデンサ32b、主トランス16、コンデンサ14b、入力コンデンサ12aの経路で流れ、コンデンサ14bを引き続き充電する。また、主トランス16が蓄積エネルギーを放出する電流は、一次巻線16a、コンデンサ14b、入力コンデンサ12a、インダクタ68の経路に継続して流れ、コンデンサ14bを充電する。この2つの経路の電流を合算した電流は、期間T3の電流I68波形に示されている。なお、主トランス16が蓄積エネルギーを放出する電流は、二次巻線16b、転流側ダイオード34a、コンデンサ32bの経路にも流れるが、この経路にコンデンサ14bは含まれていない。
ここで、スイッチング電源装置50は重負荷(出力電流がIo1)の条件で動作しているため、期間T3においても、期間T2と同様に、コンデンサ14bの電位上昇の速度は、ほぼインダクタ68のエネルギー放出による電流によって決まる。上記のように、期間T2から期間T3に移行すると、当該電流の経路がコンデンサ34bからコンデンサ32bに切り替わるので、厳密には経路のインピーダンスが変化する。しかし、ここでは、コンデンサ34bとコンデンサ32bの違いによる影響は小さく、期間T2とほぼ同様の速度でコンデンサ14bの電位が上昇する。その結果、図8に示すように、一次巻線16aの電圧V16aは、コンデンサ14bの電位上昇と同様の緩やかな速度で、さらに低下する。同様に、二次巻線16bの電圧V16bも緩やかな速度で、さらに低下する。
転流側ダイオード34aが導通して電圧Vd34がほぼゼロ電圧となるので、整流側スイッチング素子32のゲート電圧Vg32が負電圧まで低下し、整流側スイッチング素子32はオフを継続する。
一方、補助巻線16cの電圧V16cは、コンデンサ14bの電位上昇速度に比例した速度でさらに上昇する。微分回路58の出力である電圧V58bも、電圧V16cの上昇速度より僅かに遅い速度でさらに上昇する。このとき、電圧降下回路66は、逆流阻止ダイオード66bによって既に切り離されているので動作しない。従って、電圧Vg34は、駆動トランジスタ60とホールドダイオード62から電圧が供給され、電圧V58bよりもオン閾値Vth60だけ低い値を維持しながら上昇し続ける。そして、電圧Vg34がオン閾値Vth34を超えると、その時点で転流側スイッチング素子34がオンに転じる。
図4は、期間T3における転流側スイッチング素子34がオンに転じる前の動作状態を表わしている。転流側スイッチング素子34がオンに転じた後は、転流側ダイオード34aの側に流れていた電流が、並列に配置されている転流側スイッチング素子34の側に流れることになるが、全体の動作波形に与える影響はほとんどない。期間T3は、インダクタ68のエネルギー放出が終了し、電圧V16a,V16bの急峻で直線的な低下が止まったところで終了する。
期間T4に入っても、主スイッチング素子16はオフを継続する。平滑インダクタ22が蓄積エネルギーを放出する電流も、図5に示すように、平滑インダクタ22、平滑コンデンサ及び負荷26、転流側スイッチング素子34の経路に継続して流れる。
インダクタ68が蓄積エネルギーを放出する電流は停止するが、主トランス16が各部のコンデンサと自由共振する状態になり、自身の蓄積エネルギーを放出していたのと同様の経路で共振電流が発生し、一部がコンデンサ14bに流れ始める。期間T4では、主トランス16の共振電流の主要な経路は、一次巻線16aから、インダクタ68、入力コンデンサ12a、コンデンサ14bを経て戻る経路と、二次巻線14bから、転流側スイッチング素子34、コンデンサ32bを経て戻る経路の2つであり、前者の経路中にあるコンデンサ14bには、期間T3のときと逆向きの電流が流れ、その両端電圧が正弦波状の共振曲線を描きながら緩やかに低下する。従って、一次及び二次巻線16a,16bの電圧V16a,V16bは、同様の共振曲線を描きながらゼロ電圧に向かって緩やかに上昇する。
一方、補助巻線16cの電圧V16cは、電圧V16aの電圧変化により、同様の共振曲線を描きながら、ゼロ電圧に向かって緩やかに低下する。微分回路58の出力である電圧V58bも、ピークの電圧V58b(p)から緩やかに低下する。しかし、電圧V58bが低下すると、ホールドダイオード62に逆電圧が印加されて駆動トランジスタ60のソース端子が切り離されるので、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34は、コンデンサ34bによって、期間T3の終了時のピーク電圧V58b(p)よりもオン閾値Vth60だけ低い値に保持される。すなわち、電圧Vg34がオン閾値Vth34を超える電圧に保持されるので、転流側スイッチング素子34はオンを継続する。
このとき、電圧降下回路66は、ツェナダイオード66aが導通できず切り離された状態が継続している。もしツェナ電圧V66aがピーク値Vg34(p)以下の電圧に設定されていた場合は、ツェナダイオード66aが導通し、図2に示すピーク値Vg34(p)が低下する。しかし、上述したように、ツェナ電圧V66aがオン閾値Vth34以上の電圧に設定されているので、ゲート電圧V34はオン閾値Vth34以上に保持されることになる。従って、ツェナダイオード66aの導通、非導通にかかわらず、転流側スイッチング素子34はオンを継続することができる。
また、転流側ダイオード34aが導通してその両端電圧Vd34がほぼゼロ電圧を継続しているので、整流側スイッチング素子32のゲート電圧Vg32の負電圧が維持され、整流側スイッチング素子32はオフを継続する。期間T4は、二次巻線16bの電圧V16bが上昇し、ゼロ電圧に達したところで終了する。
期間T5に入っても、主スイッチング素子16はオフを継続する。平滑インダクタ22が自身の蓄積エネルギーを放出する電流も、図6に示すように、平滑インダクタ22、平滑コンデンサ及び負荷26、転流側スイッチング素子34の経路に継続して流れる。
二次巻線16bの電圧V16bは、上昇してゼロ電圧に達するが、超えることはできず、期間T5が終了するまでゼロ電圧に保持される。ゼロ電圧を超えようとすると、整流側ダイオード32aが導通し、二次巻線16bの両端が整流側及び転流側ダイオード12a,34aによって短絡される状態になり、電圧V16bが上昇できないからである。従って、期間T5では、主トランス16を起点とする上記の自由共振が停止し、共振電流が流れていた経路にある各部コンデンサの両端電圧が一定の電圧に保持される(例えば、コンデンサ14bの両端電圧は入力電圧Viに保持される)。
一方、補助巻線16cの電圧V16cは、電圧V16a,V16bと同様にゼロ電圧に保持される。そのため、微分回路58の出力である電圧V58bもゼロ電圧を保持されるので、駆動トランジスタ60はホールドダイオード62によって切り離されたまま動作しない。また、電圧降下回路66は、逆流阻止ダイオード66bのカソード端子の電位がゼロ電圧になっているが、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34がツェナダイオード66aのツェナ電圧V66a以下のため、ツェナダイオード66aが導通せず、動作しない。従って、電圧V34は、放電抵抗57からの放電によって僅かに低下するものの、オン閾値Vth34を超える電圧に保持され、転流側スイッチング素子34はオンを継続する。
また、整流側スイッチング素子32のゲート電圧Vg32も負電圧に保持され、整流側スイッチング素子32はオフを継続する。期間T5は、制御回路52の制御によって主スイッチング素子14がオンに転じたところで終了する。
期間T1に入ると、主スイッチング素子16がオンに転じ、一次巻線16aに入力電圧Viに相当する正電圧が印加され、それに応じて、二次巻線16bの電圧V16bが正電圧に、補助巻線16cの電圧V16cが負電圧になる。補助巻線16cの電圧V16cが負電圧に低下すると、電圧降下回路66は、逆流阻止ダイオード66b及びツェナダイオード66aが導通し、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34を瞬時にオン閾値Vth34以下に低下させ、その電圧に保持する。このとき、微分回路58の出力の電圧V58bは、一時的に負方向に低下するが、駆動トランジスタ60がホールドダイオード62によって切り離された状態は変化しない。従って、転流側スイッチング素子34がオフに転じる。
転流側スイッチング素子34がオフに転じ、二次巻線16bの電圧V16bが正電圧なので、整流側スイッチング素子32のゲート端子に、インピーダンス回路56を介してオン閾値Vth32を超える電圧が供給され、整流側スイッチング素子32がオンに転じる。
主スイッチング素子14、整流側スイッチング素子32がオンしているので、図7に示すように、入力電源12から、インダクタ68、主トランス16、平滑インダクタ22、平滑コンデンサ24及び負荷26、整流側スイッチング素子32、主トランス16、主スイッチング素子14の経路で出力電流Io1相当の電流が流れ、平滑インダクタ22とインダクタ68にエネルギーが蓄積される。また、入力電源12から、インダクタ68、一次巻線16a、主スイッチング素子14の経路にも電流が流れ、主トランス16にもエネルギーが蓄積される。なお、後者の電流の向きは、期間T1の当初は一次巻線16aからインダクタ68に流れ出る方向であるが、時間とともに徐々に変化し、期間T1の終盤になると、図7の矢印のように向きが逆になる。2つの経路の電流を合算した電流は、期間T1の電流I68波形に示されている。期間T1は、制御回路52の制御によって主スイッチング素子14がオフに転じたところで終了し、上述した期間T2に移行する。
スイッチング電源装置50は、出力電流Ioが所定の値以上の重負荷時、上述した期間T1〜T5の動作を繰り返し、整流側及び転流側スイッチング素子32,34による理想的な同期整流が行われる。特に、微分回路58、駆動トランジスタ60、ホールドダイオード62、転流側駆動コンデンサ34c及び電圧降下回路66の働きにより、期間T4,T5に補助巻線16cの電圧V16cが低下しても、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34がオン閾値Vth34を超える電圧に保持され、転流側スイッチング素子34を確実にオンさせるので、平滑インダクタ22がエネルギーを放出する電流は、ほとんどが転流側ダイオード34aではなく転流側スイッチング素子34に流れ、転流側ダイオード34aに大きな導通損失が発生するのを防ぐことができる。
次に、出力電流Ioが所定の値以下である軽負荷時の動作を説明する。軽負荷時(出力電流がIo2のとき)の各部の動作波形は、図8のタイムチャートのように表わされる。
主スイッチング素子14は、制御回路52が出力する一定周期のパルス信号によって駆動され、期間Ta〜Tgを1周期とするスイッチング動作を繰り返す。図9〜図15の等価回路は、各期間ごとに各素子の状態や電流の流れを表わしたものである。
以下、期間Tb,Tc,Td、Te,Tf,Tg,Taの順に、対応する等価回路を用いて動作を説明する。後述する期間Taが終了した時点で(期間Tbに入る直前)、主スイッチング素子14はオン、整流側スイッチング素子32はオン、転流側スイッチング素子34はオフしている。期間Tbに入ると、主スイッチング素子16がオフに転じる。すると、図9に示すように、主スイッチング素子16に短絡されていたコンデンサ14bが開放され、インダクタ68が自身の蓄積エネルギーを放出し、インダクタ68、主トランス16、コンデンサ34b、整流側スイッチング素子32又は整流側ダイオード32b、主トランス16、コンデンサ14b、入力コンデンサ12aの経路に電流が流れ、コンデンサ14bを充電する。また、入力電源12から、インダクタ68、主トランス16、平滑インダクタ22、平滑コンデンサ24及び負荷26、整流側スイッチング素子32又は整流側ダイオード32b、主トランス16、コンデンサ14bの経路にも電流が流れ、平滑インダクタ22にエネルギーを蓄積しつつ、コンデンサ14bを充電する。さらに、主トランス16が自身の蓄積エネルギーを放出し、一次巻線16a、コンデンサ14b、入力コンデンサ12a、インダクタ68の経路に電流が流れ、コンデンサ14bを充電する。なお、主トランス16が自身の蓄積エネルギーを放出するとき、二次巻線16b、コンデンサ34b、整流側スイッチング素子32又は整流側ダイオード32bの経路にも電流が流れるが、この経路にコンデンサ14bは含まれていないので、図示していない。コンデンサ14bは上記3つの経路の電流によって充電されるが、その電位上昇の速度は、ほぼインダクタ68のエネルギー放出による電流によって決まる。
ここで、スイッチング電源装置50は軽負荷(出力電流がIo2)の条件で動作しているので、期間Tbが開始する当初のインダクタ68の電流I68が小さい。すなわち、インダクタ68に蓄積されているエネルギーが小さいので、期間Tbに発生するインダクタ68のエネルギー放出による電流が、重負荷で動作しているとき(期間T2)よりも少なくなり、コンデンサ14bの電位上昇の速度が相対的に遅くなる。
その結果、図8に示すように、一次巻線16aの電圧V16aが、コンデンサ14bの電位上昇と同様の緩やかな速度で、当初の電圧Viから低下する。同様に、二次巻線16bの電圧V16bも緩やかに低下する。
電圧V16a,V16bは正電圧なので、整流側スイッチング素子32のゲート電圧Vg32も正電圧となり、ゲート電圧Vg32オン閾値Vth32を超えている間は整流側スイッチング素子32がオンを継続するが、それ以下になった時に整流側スイッチング素子32がオフに転じ、代わって整流側ダイオード32aが導通し、上記のコンデンサ14bを充電する電流が流れ続ける。
一方、補助巻線16cの電圧V16cは、当初の負電圧から、コンデンサ14bの電位上昇速度に比例した速度で緩やかに上昇する。電圧降下回路66は、期間Tbの当初は逆流阻止ダイオード66b及びツェナダイオード66aが導通し、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34をオン閾値Vth34以下に保持しているが、電圧V16cの上昇によりツェナダイオード66aが導通できなくなり、速やかに切り離される。微分回路58の出力である電圧V58bは、電圧V16cの緩やかな上昇よりもさらに遅い速度で、当初のゼロ電圧から上昇を開始する。しかし、電圧V58bが所定電圧まで上昇せず、駆動トランジスタ60とホールドダイオード62は電流を流すことができない。従って、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34は、転流側駆動コンデンサ34cと並列の放電抵抗57によって放電され、当初の電圧からゼロ電圧に向かって緩やかに変化するものの、オン閾値Vth34には達しないのでオフを継続する。期間Tbは、電圧V16a,V16bがゼロ電圧まで低下したところで終了する。
期間Tcに入ると、主スイッチング素子16はオフのまま、二次巻線16bの電圧V16bが負電圧になる。すると、転流側ダイオード34aへの逆電圧印加が解除され、平滑インダクタ22が蓄積エネルギーを放出しようとして自身の電圧の向きが反転し、図10に示すように、平滑インダクタ22、平滑コンデンサ及び負荷26、転流側ダイオード34aの経路に電流が流れ、転流側ダイオード34aが導通する。転流側ダイオード34aが導通すると、整流側ダイオード32aは逆電圧が印加されてオフするので、インダクタ68が蓄積エネルギーを放出する電流は、インダクタ68、主トランス16、転流側ダイオード34a、コンデンサ32b、主トランス16、コンデンサ14b、入力コンデンサ12aの経路で流れ、コンデンサ14bを引き続き充電する。また、主トランス16が蓄積エネルギーを放出する電流は、一次巻線16a、コンデンサ14b、入力コンデンサ12a、インダクタ68の経路に継続して流れ、コンデンサ14bを充電する。この2つの経路の電流を合算した電流は、期間Tcの電流I68波形に示されている。なお、主トランス16が蓄積エネルギーを放出する電流は、二次巻線16b、転流側ダイオード34a、コンデンサ32bの経路にも流れるが、この経路にコンデンサ14bは含まれていない。
ここで、コンデンサ14bの電位上昇の速度は、期間Tcにおいても、ほぼインダクタ68のエネルギー放出による電流によって決まる。上記のように、期間Tbから期間Tcに移行すると、当該電流の経路がコンデンサ34bからコンデンサ32bに切り替わるので、厳密には経路のインピーダンスが変化する。しかし、ここでは、コンデンサ34bとコンデンサ32bの違いによる影響は小さく、期間Tbとほぼ同様の速度でコンデンサ14bの電位が上昇する。その結果、図8に示すように、一次巻線16aの電圧V16aが、コンデンサ14bの緩やかな電位上昇と同様の速度で、当初のゼロ電圧からさらに低下する。同様に、二次巻線16bの電圧V16bも緩やかに低下する。
転流側ダイオード34aが導通して電圧Vd34がほぼゼロ電圧となるので、整流側スイッチング素子32のゲート電圧Vg32が負電圧まで低下し、整流側スイッチング素子32はオフを継続する。
一方、補助巻線16cの電圧V16cは、コンデンサ14bの緩やかな電位上昇速度に比例した速度でさらに上昇する。微分回路58の出力である電圧V58bも、電圧V16cの上昇速度よりも遅い速度でさらに上昇する。このとき、電圧降下回路66は、逆流阻止ダイオード66bによって既に切り離されているので動作していない。電圧V58bも所定電圧まで上昇せず、期間Tcに入っても、駆動トランジスタ60とホールドダイオード62は電流を流すことができない。従って、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34は、放電抵抗57によって略ゼロ電圧に保持され、転流側スイッチング素子34はオフを継続する。期間Tcは、インダクタ68のエネルギー放出が終了し、電圧V16a,V16bの緩やかで直線的な低下が止まったところで終了する。
期間Tdに入っても、主スイッチング素子16はオフを継続する。平滑インダクタ22が蓄積エネルギーを放出する電流も、図11に示すように、平滑インダクタ22、平滑コンデンサ及び負荷26、転流側ダイオード素子34aの経路に継続して流れる。
インダクタ68が蓄積エネルギーを放出する電流は停止するが、主トランス16が各部のコンデンサと自由共振する状態になり、自身の蓄積エネルギーを放出していたのと同様の経路で共振電流が発生し、一部がコンデンサ14bに流れ始める。期間Tdでは、主トランス16の共振電流の主要な経路は、一次巻線16aから、コンデンサ14b、入力コンデンサ12a、インダクタ68を経て戻る経路と、二次巻線14bから、コンデンサ32b、転流側スイッチング素子34を経て戻る経路の2つであり、前者の経路中にあるコンデンサ14bには、期間Tcのときよりも小さい電流が同じ向きに流れ、その両端電圧が正弦波状の共振曲線を描きながら上昇する。従って、一次及び二次巻線16a,16bの電圧V16a,V16bは、同様の共振曲線を描きながら、期間Tcよりも遅い速度で低下する。
一方、補助巻線16cの電圧V16cは、電圧V16aの電圧変化により、同様の共振曲線を描きながら、期間Tcよりも遅い速度で上昇する。従って、微分回路58の出力である電圧V58bは、ピークの電圧V58(p)からゼロ電圧に向かって緩やかに低下する。電圧降下回路66は、逆流阻止ダイオード66bによって切り離されているので動作しない。また、駆動トランジスタ60とホールドダイオード62は、電圧V58bの低下により、期間Tdに入っても、電流を流すことができない。従って、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34は、放電抵抗57によって略ゼロ電圧に保持され、転流側スイッチング素子34はオフを継続する。期間Tdは、平滑インダクタ22によるエネルギー放出の電流が転流側ダイオード34aを通して転流し、エネルギーを放出し尽くして電流I22がゼロになったところで終了する。
期間Teに入っても、主スイッチング素子16はオフを継続する。平滑インダクタ22の電流I22がゼロになると、転流側ダイオード34aがオフして電圧Vd34が上昇する。電圧Vd34が上昇するのは、平滑インダクタ22が各部のコンデンサと自由共振する状態になり、共振電流がコンデンサC34bに流れるからである。平滑インダクタ22の共振電流の主要な経路は、平滑インダクタ22、コンデンサ34b、平滑コンデンサ24の経路である。期間Teでは、平滑インダクタ22からコンデンサ34bの向きに共振電流が流れ、電圧Vd34が、出力電圧Voを中心とする正弦波状の共振曲線を描きながら緩やかに上昇する。電圧Vd34が出力電圧Voに達すると、平滑インダクタ22の電圧の向きが反転し、電圧Vd34がさらに上昇する。
主トランス16が各部のコンデンサと自由共振する状態はTeでも継続される。主トランス16の共振電流の主要な経路は、一次巻線16a、コンデンサ14b、入力コンデンサ12a、インダクタ68の経路と、二次巻線14b、コンデンサ32b、コンデンサ34bの経路がある。前者の経路中にあるコンデンサ14bには、期間Tdと同じ向きに電流が流れ、その両端電圧が正弦波状の共振曲線を描きながら上昇する。従って、一次及び二次巻線16a,16bの電圧V16a,V16bは、同様の共振曲線を描きながら緩やかに低下する。
一方、補助巻線16cの電圧V16cは、電圧V16aと同様の共振曲線を描きながら、緩やかに上昇する。電圧降下回路66は、逆流阻止ダイオード66bによって切り離されて動作しない。また、微分回路58の出力である電圧V58bはほぼゼロ電圧に収束し、駆動トランジスタ60とホールドダイオード62は電流を流すことができない。従って、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34は、放電抵抗57によって略ゼロ電圧に保持され、転流側スイッチング素子34はオフを継続する。期間Teは、電圧Vd34が上昇し、整流側スイッチング素子32のゲート電圧Vg32がオン閾値Vth32に達したところで終了する。
期間Tfに入っても、主スイッチング素子16はオフを継続する。電圧Vd34が出力電圧Voを超えて上昇し、インピーダンス回路56を介して整流側スイッチング素子32のゲート端子に電圧が供給され、電圧Vg32がオン閾値Vth32を超え、整流側スイッチング素子32がオンに転じる。すると、平滑インダクタ22の共振電流の主要な経路は、期間Teのときの平滑インダクタ22、コンデンサ34b、平滑コンデンサ24の経路に加え、平滑インダクタ22、主トランス16、インダクタ68、入力コンデンサ12a、コンデンサ14b、主トランス16、整流側スイッチング素子32、平滑コンデンサ24という新たな経路が発生する。従って、コンデンサ34bに流れ込む電流が減少し、電圧Vd34が上昇が止まる。しかし、新たな経路で入力側に回生されるエネルギーは、共振動作によって移動する小さなエネルギー分に限られ、平滑コンデンサ24や負荷24から供給され得る大きなエネルギーは回生されない、
主トランス16が各部のコンデンサと自由共振する状態はTfでも継続される。主トランス16の共振電流の主要な経路は、一次巻線16a、コンデンサ14b、入力コンデンサ12a、インダクタ68の経路と、二次巻線14b、整流側スイッチング素子32、コンデンサ34bの経路の2つであり、前者の経路中にあるコンデンサ14bに流れる電流は、図13の矢印の向きから途中で逆向きになり、その両端電圧は、正弦波状の共振曲線を描きながら緩やかに上昇し、途中から緩やかに低下し始める。従って、一次及び二次巻線16a,16bの電圧V16a,V16bも、同様の共振曲線を描いて緩やかに低下し、途中から上昇し始める。
一方、補助巻線16cの電圧V16cは、電圧V16aと同様の共振曲線を描きながら、緩やかに上昇し、途中から低下し始める。電圧降下回路66は、逆流阻止ダイオード66bによって切り離されて動作しない。また、微分回路58の出力である電圧V58bは略ゼロ電圧であり、駆動トランジスタ60とホールドダイオード62は電流を流すことができない。従って、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34は、放電抵抗57によって略ゼロ電圧に保持され、転流側スイッチング素子34はオフを継続する。期間Tfは、平滑インダクタ22の自由共振により電圧Vd34が低下し、整流側スイッチング素子32のゲート電圧Vg32がオン閾値Vth32に達したところで終了する。
期間Tgに入っても、主スイッチング素子16はオフを継続する。期間Tgになると、電圧Vd34が低下し、図8に示すように、整流側スイッチング素子32のゲート電圧Vg32がオン閾値Vth32以下になって整流側スイッチング素子32がオフに転じる。各素子の状態や電流の流れは、図14の等価回路のように表わされ、期間Teとほぼ同様である。期間Tgは、制御回路52の制御によって主スイッチング素子14がオンに転じたところで終了する。
期間Taに入ると、主スイッチング素子16がオンに転じ、図8に示すように、一次巻線16aに入力電圧Viに相当する正電圧が印加され、それに応じて、二次巻線16bの電圧V16bが正電圧に、補助巻線16cの電圧V16cが負電圧になる。各素子の状態や電流の流れは、図15の等価回路のように表わされ、重負荷時の期間T1とほぼ同様である。ここでは、スイッチング電源装置50が軽負荷(出力電流がIo2)の条件で動作していることから、入力電源12から平滑コンデンサ24に向けて流れる電流が、出力電流Ioにほぼ比例して小さくなる。よって、インダクタ68の電流I68は、重負荷時よりも小さな電流となる。期間Taは、制御回路52の制御によって主スイッチング素子14がオフに転じたところで終了し、上述した期間Tbに移行する。
スイッチング電源装置50は、出力電流Ioが所定の値以下の軽負荷時、上記の期間Ta〜Tgの動作を繰り返され、転流側スイッチング素子34のオン・オフが停止し、整流側スイッチング素子32及び転流側ダイオード34aによるダイオード整流が行われる。
次に、微分回路58の時定数の設定について説明する。同期整流を行う出力電流Ioの範囲とダイオード整流を行う出力電流Ioの範囲は、微分回路58の時定数の設定によって調整することができる。
転流側スイッチング素子34をオンさせるためには、オン閾値Vth60を有する駆動トランジスタ60とホールドダイオード62とが導通し、電圧Vg34のピーク値Vg34(p)がオン閾値Vth34以上に上昇しなければならない。そのためには、微分回路58の出力電圧V58bのピーク値58b(p)が、オン閾値Vth60にオン閾値Vth34を加算した電圧を超えて上昇することが条件となる。
一方、微分回路58に入力される電圧は、補助巻線16cの電圧V16cである。上述したように、主スイッチング素子14がオフに転じた直後の期間(期間T2とT3、又は期間TbとTc)において、補助巻線16cの電圧V16cの上昇速度は、コンデンサ14bの電位上昇の速度に比例し、ほぼインダクタ68のエネルギー放出による電流によって決まる。インダクタ68の放出電流の大小は、主スイッチング素子14がオンしている期間(期間T1又は期間Ta)の終了時点の電流I68の電流値で決定され、その電流値はほぼ出力電流Ioに比例する。すなわち、電圧V16cの上昇速度と出力電流Ioとの間には正の相関があり、電圧V16cを微分回路58に入力して出力電圧V58bを観測することにより、出力電流Ioを検出することができる。
スイッチング電源装置50の場合、微分回路58の出力電圧V58b(p)と出力電流Ioとの関係、及び、転流側スイッチング素子34のゲート電圧Vg34(p)と出力電流Ioとの関係は、図16のグラフのように設定されている。スイッチング電源装置50が同期整流を行うのは出力電流Iok以上の範囲であり、ダイオード整流を行うのは出力電流Iok以下の範囲である。
出力電流Iokは、微分回路58の微分コンデンサ58aと微分抵抗58bで定まる時定数を変更することによって調節することができる。例えば、時定数を小さくすると、微分回路58の感度が低下し、電圧V16cの上昇速度が速いときでも出力電圧V58b(p)が低くになって、出力電流Iokを大きくすることができる。反対に、時定数を大きくすると、微分回路58の感度が向上し、電圧V16cの上昇速度が遅いときでも出力電圧V58b(p)が高くなって、出力電流Iokを小さな値にすることができる。
時定数を大きくして感度を高くしすぎると、軽負荷時の期間Tdと期間Teにおいて、主トランス16の自由共振で上昇する電圧V16cによって電圧V58bが上昇し、転流側スイッチング素子34を誤ってオンさせる可能性があるので、注意が必要である。また、出力電流Iokを小さくしすぎると、従来のスイッチング電源30が軽負荷時に同期整流することによって生じる問題、すなわち、主スイッチング素子14が停止した時に電圧Vd34が跳ね上がる問題(図21を参照)が発生する可能性がある。この問題を回避するため、出力電流Iokを、平滑インダクタ22の電流I22がゼロを超えて動作する範囲、すなわち、臨界点を超える範囲に設定する必要がある。また、放電電抵抗57も比較的小さな抵抗値に設定しておくことが好ましい。
以上説明したように、スイッチング電源装置50は、補助巻線16cの電圧V16cを観測し、主スイッチング素子14がオフに転じたときの電圧変化を微分した電圧V58bに基づいて出力電流Ioを検出し、出力電流がIok以上のときだけ転流側スイッチング素子をオン・オフさせる。従って、出力電流がIok以上の重負荷時は、導通損失の小さな整流側及び転流側スイッチング素子32,34による理想的な同期整流が行われ、高い電源効率を得ることができる。一方、出力電流がIok以下の軽負荷時は、転流側スイッチング素子34が停止して整流側スイッチング素子32及び転流側ダイオード34aによる整流が行われるので、整流側及び転流側スイッチング素子32,34が同時にオンして大きな貫通電流が流れるという問題が発生せず、また、電流不連続モードになって平滑インダクタ22の電流I22の振幅が小さくなるので、高い電源効率を得ることができる。
また、転流側スイッチング素子34による同期整流が行われるのは、出力電流IoがIok以上のとき、すなわち平滑インダクタ22の電流I22が臨界点を超える重負荷のときだけなので、転流側スイッチング素子34がオンしているタイミングで主スイッチング素子14が停止したとしても、転流側スイッチング素子34の電圧Vd34に大きな跳ね上がりの電圧が発生しない。従って、転流側スイッチング素子34に過剰な電圧ストレスが加わる問題や、自励発振的なエネルギー回生動作が継続する問題を回避することができる。
さらに、インピーダンス回路56のインピーダンスは、転流側スイッチング素子34の電圧Vd34が出力電圧Vo以下のときは、整流側スイッチング素子32のゲート端子電圧Vg32がオン閾値Vth32以下となるように設定されている。従って、主スイッチング素子14が停止したとき、出力側の装置(例えば、並列運転された別のスイッチング電源装置)からエネルギーが供給され続ける状態に陥っても、整流側スイッチング素子32のオフを維持することができる。
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、微分回路は、2個以上の回路素子を組み合わせ、時定数特性を自在に調整可能な構成にしてもよい。また、N−chのMOS型FETである駆動トランジスタ及びホールドダイオードに代えて、図17に示すように、NPN型のバイポーラトランジスタである駆動トランジスタ72を使用しることも可能である。バイポーラトランジスタは一方向にのみ導通可能な素子なので、逆流阻止用のホールドダイオードを省略することができる。
また、電圧降下回路は、例えば、上述した逆流阻止ダイオードとツェナダイオードとを組み合わせた構成に代えて、図18(a)に示すように、転流側スイッチング素子から補助巻線16cの向きにのみ電流を流す逆流阻止ダイオード66bと、当該電流が流れることによって順方向電圧を発生させる電圧発生用ダイオード74とを組み合わせた構成にしてもよい。
また、図18(b)に示すように、電圧降下回路66に代えて、転流側スイッチング素子から補助巻線16cの向きにのみ電流を流す逆流阻止ダイオード66bと、当該電流をドレイン端子からソース端子の向きに流すN−chのMOS型FETである放電FET76とを直列接続し、放電FET76のゲート端子を、補助巻線16cの主スイッチング素子がオンのときに高電位となる側の一端に接続して構成する転流側駆動電圧放電回路78を設けてもよい。このような構成にすれば、放電FET76は、図2の期間T4,T5のように電圧V16cがゼロ電圧以上のときはオフし、期間T1のように電圧V16cが負電圧になったときにオンする動作を行うので、上述した電圧降下回路66を備えたスイッチング電源装置50と同様な動作を行う。