JP2011230972A - シリコンの精製方法 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】不純物としてホウ素を含有するシリコン及びスラグをそれぞれが溶融するよう加熱した後、上記シリコン及び上記スラグを溶融状態で接触させ、上記シリコン中のホウ素を上記スラグに吸収させて上記シリコン中のホウ素を除去するシリコンの精製方法であって、上記スラグの組成を制御しながら上記スラグにホウ素を吸収させることを特徴とするシリコンの精製方法。
【効果】本発明の精製方法によれば、従来公知の精製方法よりも安価に効率よくシリコン中のホウ素を除去することができ、平均ホウ素含有量を、4質量ppm以下、特に3質量ppm以下にまで低減することができる。本発明の方法に加えて更に公知のホウ素低減方法を行う場合にも、本発明の方法でホウ素濃度の低下が達成されているので、次工程であるホウ素濃度低減工程を実施するには好都合である。
【選択図】なし

Description

本発明は、工業的に生産されるシリコンを高純度化する精製方法に関し、更に詳しくは、スパッタリングターゲット材料、熱電材料、太陽電池材料等の高純度が要求される電子材料分野に使用されるシリコンの精製方法、これにより得られるシリコン及びこのシリコンを用いた太陽電池に関する。
炭酸ガスを排出する化石エネルギーが地球温暖化を促進するとして、化石エネルギーに代替するエネルギーが種々提案され、実用化されている。それらのなかでも太陽光発電は、地球上に遍く分布するエネルギーによって作り出されるものであること、比較的小規模の設備でも可能であること、実用化の歴史が長いことなどから、年々その設備発電量が増加している。
太陽光発電には種々の方法があるが、なかでもシリコンウエハを使用して電池セルを形成した太陽電池は、最も普及している太陽光発電法である。この太陽電池用シリコンウエハに使用するシリコンの不純物成分の濃度は、半導体用のシリコンほどの低い不純物濃度レベルまでは必要とされない。即ち、半導体用シリコンは、不純物を極力低レベルとすることがよいとされ、その必要純度が99.99999999%(10N)とされるのに対し、太陽電池用のシリコンには99.999%(5N)乃至99.9999%(6N)純度が必要とされる。
従来、太陽電池用シリコンをこの不純物レベルとするために、その原料には半導体用の99.999999999%(11N)純度品に加え、半導体シリコン製造工程中で不純物濃縮や異物付着品として廃棄される、いわゆるオフグレード品を再処理又は精製したシリコンが使用されてきた。このように、太陽電池用シリコンは、半導体用のシリコン又はその派生品が原料であることから、その流通量は半導体産業の影響を受けてしまい、太陽電池用シリコンの需要に対応できない状態となっていた。
このため、工業的に十分な製造量を有する金属シリコンの純度を向上させて、太陽電池用のシリコンとして使用することが検討されてきた。金属シリコンの主な不純物は、鉄、アルミニウム、カルシウム、チタンなどの金属元素と、ドーパントとして作用するホウ素、燐などの非金属元素である。このうち、金属元素はシリコンとの凝固分配係数が非常に小さく、例えば金属シリコン中に不純物成分として最も多量に存在することが多い鉄の凝固分配係数はたかだか8×10-6である。従って、凝固開始時の固体シリコン中には鉄濃度が低く、凝固中期から末期にかけて固体シリコン中の鉄濃度が徐々に増加することとなる。この凝固偏析現象を利用して所望の鉄濃度の部分を鋳造塊より選択すれば、低鉄濃度のシリコンが得られる。鉄以外の不純物金属元素についても同様の方法で低不純物濃度のシリコンが得られる。
しかし、ホウ素は、シリコン中でドーパント物質として作用するので太陽電池用のシリコン中の濃度については濃度制御すべき物質であるにもかかわらず、凝固分配係数が0.8と1に近く、凝固偏析現象ではほとんど偏析しないので、ホウ素を凝固偏析以外の方法で除去すべく、種々の方法が提案されている。
例えば、特開平05−330815号公報(特許文献1)は、太陽電池等に用いるシリコンを製造する際に、特に不純物として含まれるホウ素を有効に除去する方法として、底部にガス吹き込み羽口を有する容器内でシリコンを溶融状態に保持し、この羽口からAr、H2、これらの混合ガスにN2を1容量%以下混合させて吹き込み、ホウ素を窒化物とする。更には、羽口から吹き込まれるガスに、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化ケイ素及び塩化カルシウムから選ばれる粉末を2種以上添加するというシリコンの精製方法を開示している。
特開2003−12317号公報(特許文献2)には、溶融シリコンに塩基性成分を含むフラックスを添加し、更に溶融シリコン内部に酸化性ガスを吹き込むことで、シリコン、フラックス及び酸化性ガスが共存する反応界面において、瞬間的に高塩基度及び高酸素分圧を同時に実現することができる。そのため、シリコン中のホウ素含有量が微量であっても、ホウ素の強制酸化及び生成したホウ素を含む酸化物のフラックスによる吸収が促進され、極めて短時間でシリコン中のホウ素を除去する方法が提案されている。塩基性成分としては、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ナトリウムのうちの1種又は2種以上としている。
特許第2851257号公報(特許文献3)には、溶融シリコンにスラグを連続的に又は実質的に連続的に添加し、スラグと溶融シリコンとの間で平衡が達成されるや否や連続的に又は実質的に連続的にスラグを不活性化させるか又は溶融シリコンから除去することにより、スラグ消費量を低減できる方法が提案されている。
特開平05−330815号公報 特開2003−12317号公報 特許第2851257号公報
上記特許文献に記載されているスラグ組成は、主には塩基性成分として酸化カルシウム、酸性成分として二酸化ケイ素が用いられ、スラグの粘度及び融点を下げるためにフッ化カルシウム等が添加されている。これらスラグの組成とホウ素の分配係数とは密接な関係にあり、分配係数の高い組成でホウ素吸収を行うのが理想である。しかし、スラグとシリコンを溶融状態に保持していると、反応初期と終期ではスラグの組成が変化し、所望の反応速度が得られないという問題があった。更に、この組成の変化は、ホウ素の分配係数の低下だけでなく、スラグの粘度の上昇を伴い、更なる反応速度の低下を招いていた。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、金属シリコン中に不純物として含まれるホウ素の含有量を低減して、特にスパッタリングターゲット材料、熱電材料、太陽電池用等として有用な金属シリコンが得られるシリコンの精製方法、これにより得られるシリコン及びこのシリコンを用いた太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、不純物としてホウ素を含有するシリコン及びスラグをそれぞれが溶融するよう加熱した後、上記シリコン及び上記スラグを溶融状態で接触させ、上記シリコン中のホウ素を上記スラグに吸収させて上記シリコン中のホウ素を除去してシリコンを精製するに際し、特に、溶融状態のシリコン及びスラグに塩素原子を含むガスを吹き込んで及び/又は減少したスラグ成分を一定の間隔で補充してスラグの組成を制御することにより、元のスラグ組成に近い組成に維持することで、効率よくシリコン中のホウ素濃度を低減できることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記シリコンの精製方法、これにより得られるシリコン及びこのシリコンを用いた太陽電池を提供する。
請求項1:
不純物としてホウ素を含有するシリコン及びスラグをそれぞれが溶融するよう加熱した後、上記シリコン及び上記スラグを溶融状態で接触させ、上記シリコン中のホウ素を上記スラグに吸収させて上記シリコン中のホウ素を除去するシリコンの精製方法であって、上記スラグの組成を制御しながら上記スラグにホウ素を吸収させることを特徴とするシリコンの精製方法。
請求項2:
スラグの組成を制御する方法が、溶融状態のシリコン及びスラグに塩素原子を含むガスを吹き込む方法並びに減少したスラグ成分を一定の間隔で補充する方法のいずれか一方又は両方である請求項1記載の精製方法。
請求項3:
スラグが、酸化カルシウム及び二酸化ケイ素を含むものである請求項1又は2記載の精製方法。
請求項4:
酸化カルシウム及び二酸化ケイ素の合計量に対する酸化カルシウムの含有割合が25〜60質量%である請求項3記載の精製方法。
請求項5:
スラグが、更に、酸化カルシウム及び二酸化ケイ素の合計100質量部に対してフッ化カルシウム1〜20質量部含む請求項3又は4記載の精製方法。
請求項6:
塩素原子を含むガスが、塩素ガス又は四塩化ケイ素ガスである請求項2乃至5のいずれか1項記載の精製方法。
請求項7:
塩素原子を含むガスと共に水蒸気を吹き込む請求項2乃至6のいずれか1項記載の精製方法。
請求項8:
補充するスラグ成分が酸化カルシウムである請求項3乃至7のいずれか1項記載の精製方法。
請求項9:
請求項1乃至8のいずれか1項記載の精製方法により得られ、ホウ素含有量が4質量ppm以下であることを特徴とするシリコン。
請求項10:
請求項9記載のシリコンを原料として製造された太陽電池。
本発明の精製方法によれば、従来公知の精製方法よりも安価に効率よくシリコン中のホウ素を除去することができ、平均ホウ素含有量を、4質量ppm以下、特に3質量ppm以下にまで低減することができる。本発明の方法に加えて更に公知のホウ素低減方法を行う場合にも、本発明の方法でホウ素濃度の低下が達成されているので、次工程であるホウ素濃度低減工程を実施するには好都合である。
本発明の精製方法は、不純物としてホウ素を含有するシリコン及びスラグをそれぞれが溶融するよう加熱した後、上記シリコン及び上記スラグを溶融状態で接触させ、上記シリコン中のホウ素を上記スラグに吸収させて上記シリコン中のホウ素を除去するシリコンの精製方法であって、上記スラグの組成を制御しながら上記スラグにホウ素を吸収させることを特徴とする。以下に詳細に説明する。
本発明の精製方法を工程順に説明すると、先ず精製しようとする金属シリコンを用意する。通常、金属シリコンには、鉄、アルミニウム、カルシウムなどの金属不純物元素と共に、ホウ素や燐などシリコン中に存在するとドーパントとして作用する非金属元素などが含まれている。本発明が精製対象とする金属シリコンは、これらの不純物がそのまま含まれていてもよく、一方向凝固法、真空溶解法等の特定の前処理を施して金属成分や非金属成分を予め低減した金属シリコンでもよい。特に、本発明で用いられる精製前の金属シリコンに含まれるホウ素の含有量は、通常10〜30質量ppmである。なお、本発明において、ホウ素の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AES)により測定した値である。
次に、スラグを調製する。スラグとしては、金属酸化物、金属塩化物、及び金属フッ化物から選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、金属シリコンの溶融処理温度(1410℃以上)で溶融状態となり、その温度での蒸気圧が低く、蒸発しづらいもの、又は分解しないことが好ましいので、蒸気圧が低く、熱分解しにくい酸化物系のスラグを用いることが好ましい。酸化物系スラグとしては、酸化カルシウム(CaO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化アルミニウム(Al23)、これらの混合物などが挙げられるが、中でも酸化カルシウムと二酸化ケイ素の混合酸化物は、共晶点が1450℃程度とシリコンの融点とほぼ同じ温度であるために好ましいスラグである。スラグの融点は、1200〜1800℃が好ましく、より好ましくは1300〜1600℃である。
これらのスラグのうち、酸化物系のスラグは、酸化物をそのまま使用してもよいし、加熱後に酸化物となる炭酸塩、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)として投入・加熱してもよい。炭酸カルシウムのような炭酸塩を使用すれば、加熱後にこれが分解して酸化物(CaO)となるので実質的に酸化物を使用したことと同じことになる。
スラグの成分が単一成分である場合は、スラグの調合は必要ないが、スラグが複数成分よりなっている際は、予めスラグを調製し、所期の組成のスラグとしてからシリコンとの溶融に供することが好ましい。また、シリコンの溶融時に所期の組成となるような組成のスラグ成分を与えてもよい。スラグ組成の中でも、酸化カルシウム(CaO)と二酸化ケイ素(SiO2)を主組成とするスラグは、蒸気圧が低く、耐熱分解性に優れるので本発明では好適に使用される。その組成は、酸化カルシウムと二酸化ケイ素の2点の共晶組成をまたぐ酸化カルシウムの含有割合がスラグ全量に対して25〜60質量%、特に33〜57質量%の組成のスラグが好適に使用される。酸化カルシウムの含有割合が25質量%未満あるいは60質量%より多くなると、スラグの融点が2000℃に近い高温となり、消費電力、炉材の損傷等の観点から好ましくない。なお、この酸化カルシウムの含有割合は、スラグがフッ化カルシウム等の他の成分を含む場合には、他の成分を除外して、酸化カルシウムと二酸化ケイ素の合計量に対する割合を意味する。
また、フッ化カルシウム(CaF2)を含有するスラグは、少量のフラックスの添加でもスラグの粘度を低下させることができるため、好適に使用できる。酸化カルシウムと二酸化ケイ素を主組成とする共晶スラグにフッ化カルシウムを併用する場合、フッ化カルシウムの配合比率は、酸化カルシウム及び二酸化ケイ素の合計量100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、8〜15質量部がより好ましい。また、溶融スラグの粘度は、高くなるとシリコンとの接触効率が低下し、スラグへのホウ素吸収速度が低下することがあるため、20Pa・s以下、特に15Pa・s以下であることが好ましい。
ここで、金属シリコン中のホウ素は、スラグ中に取り込まれてホウ素濃度が低下するが、その低下量はシリコン、スラグ間の分配係数によって一義的に決定される濃度以下にはできない。スラグとホウ素間の分配係数は、スラグの組成と密接な関係にあり、分配係数の高い組成でホウ素吸収を行うのが理想である。森田らの報告(17th International Photovoltaic Science and Engineering Conference (PVSEC−17), Fukuoka, Japan, Dec. 3−7, 2007, 3O−B1−01)によると、酸化カルシウム及び二酸化ケイ素からなるスラグ(CaO−SiO2スラグ)において、ホウ素の分配係数は、酸化カルシウムの含有割合が約45質量%のとき最小でおよそ2、酸化カルシウム38質量%以下又は50質量%以上で3以上になる。つまり、酸化カルシウムの含有割合が38質量%以下又は50質量%以上のスラグ組成が、ホウ素の除去速度を高めるには有効である。設備、エネルギー負荷からは、共晶点付近が好ましいが、ホウ素の分配係数からは必ずしもそうではない。以上の点から、酸化カルシウム及び二酸化ケイ素の合計量に対する酸化カルシウムの含有割合は、より好ましくは33〜36質量%又は52〜57質量%である。
また、本発明において、スラグの使用量、特に酸化カルシウム及び二酸化ケイ素の使用量は、合計使用量として、金属シリコンの25〜500質量%が好ましく、より好ましくは50〜200質量%である。
次いで、金属シリコンとスラグ材料をるつぼ内に装填し、溶融した金属シリコンとスラグが共存した混合物とするが、スラグは炉昇温中あるいはシリコン溶融後にるつぼに投入してもよい。るつぼは、黒鉛、セラミック、石英ガラスなどのシリコンが溶融する温度(1410℃)以上の耐熱度のある材料から選択される材料で製造される。黒鉛製の容器は、そのものが酸化性であることから、容器の置かれている雰囲気を非酸化性にする必要があり、セラミック製であれば溶融加熱時に発生する熱ショックにより破損しない材料と構造とする必要がある。また、シリコンと同時に溶融するスラグ成分との反応、溶融にも考慮する必要がある。
次に、金属シリコンとスラグ材料を入れたるつぼを収納した炉を加熱昇温する。炉の加熱は、抵抗加熱、誘導加熱、アーク加熱などの方法があるが、本発明においてはどのような加熱手段でもかまわない。また、炉を加熱することでシリコンを溶融させるが、予め他所で溶融したシリコンを溶融状態のまま精製用のるつぼに移行させることもできる。溶融温度は、金属シリコン及びスラグがそれぞれ溶融する温度以上であれば特に制限されないが、炉材の消耗、消費電力の点からスラグ及びシリコンのうちいずれか高い方の融点より25〜500℃高く設定するのが好ましく、より好ましくは50〜200℃高く設定する。
電気炉が所期の温度となり、るつぼに投入したシリコン及びスラグが溶融する。精製炉にはガスを流通するノズルが予め用意されており、溶融したシリコンとスラグからなる溶融体中にノズル先端を没入する。ノズルには窒素、アルゴン等の不活性ガスを予め流通させておくことにより不活性ガスが溶融体中で気泡となり、溶融体はバブリング状態となる。このバブリングガスにより溶融体は撹拌され、シリコンとスラグとの混合がスムーズに行われることとなる。
ところで、前述したように反応初期と終期ではスラグの組成が変化してしまうという問題がある。例えば、酸化カルシウム、二酸化ケイ素及びフッ化カルシウムの混合スラグを使用した場合、以下の式(1)、(2)のような反応によりスラグの組成が変化すると考えられる。
Si + SiO2 → 2SiO ・・・(1)
2CaF2 + SiO2 → 2CaO + SiF4 ・・・(2)
例えば、酸化カルシウムが35質量%のCaO−SiO2スラグに、アルゴン等の不活性ガスを導入していると、式(1)なる反応によりSiO2が消失し、結果的にスラグ中のCaO濃度が上昇する。同様に、粘度調整剤としてフッ化カルシウムが添加されている場合は、式(2)に従い、スラグ中のCaO濃度が上昇する。これによりホウ素の分配係数が低下し、時間の経過と共にスラグへのホウ素吸収速度が低下する。これを回避するには、反応中のスラグ組成を制御することが重要で、ホウ素の分配係数が高く、粘度の低い組成を常に保つことが好ましい。
スラグとシリコンの接触効率を高め、スラグのホウ素吸収速度を高めるには溶融状態のシリコンとスラグが充分に混合され、シリコン中にスラグが分散されていることが重要である。反応初期に一度シリコンメルト中にスラグが分散されれば反応終期まで分散状態を維持できる。つまり、反応初期はスラグの融点及び粘度が低い状態が理想で、シリコンとスラグが分散された後には分散を妨げない程度にホウ素の分配係数が高い組成(CaO/SiO2質量比)であることが重要である。
本発明者の検討によれば、その手法としては、スラグ中の酸化カルシウムと反応性の高い塩素原子を含有するガスをスラグ組成制御ガスとして導入する方法が有効である。例えば、塩素ガスを使用した場合、下記式(3)
2CaO + 2Cl2 → 2CaCl2 + O2 ・・・(3)
に従い、式(2)に従い増加した酸化カルシウムが消失し、結果的にスラグ中の酸化カルシウム濃度を維持することができる。
また、酸化カルシウム60質量%以上の酸化カルシウム高濃度スラグの場合も、同様に酸化カルシウム濃度が上昇する。これによりホウ素の分配係数は高い方へ移行するが、融点の上昇と共に、粘度上昇が激しく、結果的にシリコンとスラグの接触効率が低下し、反応速度が著しく低下する場合がある。この場合も同様に塩素原子を含有するガスの導入によりスラグ組成を制御可能となる。
塩素原子を含むガスとしては、塩素ガス(Cl2)、塩化水素ガス(HCl)、四塩化ケイ素ガス(SiCl4)などの炭素を含まない無機ガスや、ジクロロメタンガス(CH2Cl2)、四塩化炭素ガス(CCl4)などの炭素を含んだ有機ガスが挙げられる。有機ガスは、そのガスが分解した際に遊離炭素などの固体物質を発生させてしまい、それが溶融シリコンに混入すると、得られる金属シリコンのライフタイムの短縮など、シリコンの半導体特性を損なうおそれがあるため、塩素原子を含む無機ガスが好ましく、その反応性の高さから、塩素ガス、塩化水素ガスが好ましく、塩素ガスがより好ましい。また、四塩化ケイ素は標準状態では液体であるが、シリコンの溶融温度では気体であり、本発明におけるガス導入条件下では、溶融したシリコンとの接触によってホウ素除去効果が有効に発現することから好ましいガスである。
このスラグ組成制御ガスである塩素原子を含むガスには、不活性ガス、例えばアルゴンガスなどのキャリアガスを混合してノズルから供給し、シリコン及びスラグからなる溶融体に必要なバブリング又は撹拌状態を形成することが好ましい。溶融体中に反応性ガスを供給する方法は、上記のノズルからの方法だけではなく、溶融体るつぼの側部或いは底部に羽口を備え、これよりガスを溶融体に導入する方法も採用することができる。
塩素原子を含有するガスと共に水蒸気を導入する方法も、スラグ組成の制御には有効な手法である。塩素原子を含有するガスにより生成した塩化物を水蒸気により再び酸化物に戻すことができ、これにより適宜スラグ組成の制御が可能となる。また、水蒸気はホウ素を酸化させ、スラグ中への移行を高めるという効果もあり、水蒸気添加は有効である。水蒸気は、ボイラーからの供給や、容器中の温水にアルゴン等の不活性ガスであるキャリアガスを流通させることで水蒸気とキャリアガスの混合ガスとして溶融体中に供給することができる。
塩素原子を含むガスのガス供給量は、適宜選択できるが、金属シリコン1kgに対して、室温状態(25℃)の体積で、0.2NL/分以上、特に0.3〜3NL/分であることが好ましく、0.5〜2NL/分であることがより好ましい。供給時間は0.5〜10時間が好ましく、より好ましくは1〜4時間である。しかし、塩素原子を含むガスを供給し続けると酸化カルシウム濃度が低下し続け、その組成によっては大幅な粘度上昇が発生するため、一次供給を停止する方法もある。
混合ガス中のアルゴン等のキャリアガスと塩素原子を含むガスとの混合比率は、容積比で、キャリアガス:塩素原子含有ガス=19:1〜1:1であることが好ましく、9:1〜8:2であることがより好ましい。また、水蒸気を併用する場合、キャリアガスと塩素原子を含むガス及び水蒸気との混合比率は、容積比で、キャリアガス:塩素原子含有ガス及び水蒸気=19:1〜1:1であることが好ましく、より好ましくは9:1〜8:2である。
塩素原子を含むガスを導入する効果は、酸化物あるいはそのイオンとして存在するホウ素を塩素化しスラグ中のホウ素をスラグ系外へ放出する効果もある。
また、塩素原子を含むガスにより塩素化され減少した酸化カルシウム(CaO)等のスラグ成分を一定の間隔で適宜追加・補充することが望ましい。追加・補充するスラグ量は、初期のスラグ組成及び塩素の導入量により異なるが、消失する酸化カルシウム(CaO)量の80〜120質量%が好ましい。より好ましくは90〜110質量%である。消失する酸化カルシウム量は、追加・補充せずに反応させた場合のスラグ組成と初期のスラグ組成を分析することにより、容易に算出できる。スラグを追加する間隔は1〜30分間隔が好ましく、より好ましくは5〜15分間隔である。
スラグ成分の追加の方法としては、減少した成分を粉末状で追加することも可能だが、粉末状だと追加用に具備したノズルの閉塞、投入した粉末が飛散することも考えられ、あらかじめ所望の組成で焼成したものを投入するのが望ましい。
このようにして、金属シリコン及びスラグからなる溶融体に反応性ガスを規定量、規定時間供給して精錬反応を終了する。本発明の精製方法により、精製前の金属シリコン中に通常10〜30質量ppmの濃度で含まれている平均ホウ素含有量を、精製後に4質量ppm以下、特に3質量ppm以下にすることができる。ホウ素含有量の下限値は少なければ少ない程よい。また、本発明の精製方法によれば、今までに公知の精製方法よりも大きな除去速度で金属シリコン中のホウ素を有効に除去することができる。
本発明の精製方法を施した中純度(約6N)のシリコンは、特にスパッタリングターゲット材料、熱電材料、太陽電池、太陽電池パネルを製造する際の原料として好適に使用することができる。この場合、本発明の方法により、ホウ素は4質量ppm以下まで低減できるが、太陽電池のエネルギー変換効率向上のため、更なるホウ素濃度の低減が必要な際は、本発明の方法を複数回繰り返すことで可能となる。更にホウ素以外の不純物の除去が必要な場合は、真空加熱、一方向凝固等の公知の方法を組み合わせることにより達成できる。
本発明により得られる金属シリコンを用いて太陽電池を製造する方法は特に制限されず、本発明によって得られるシリコンから基板を得た後、この基板表面にこれとは異なる導電型の不純物を拡散させてpn接合を形成し、このpn接合により生成する電力を取り出すための電極を基板表面に取り付けて太陽電池を製造することができる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
<混合スラグの調製>
酸化カルシウム粉と二酸化ケイ素粉を下記の所定の質量比で混合し、1600℃にて溶解し、冷却した後、解砕した。
<スラグ組成制御剤の調製>
酸化カルシウム粉末を1600℃にて焼成・解砕し、塊状としたものを準備した。
<金属シリコン>
不純物としてホウ素を15質量ppm含有する金属シリコンを使用した。
[実施例1]
内寸φ150mmの黒鉛製るつぼに金属シリコン2000gと、CaO/SiO2混合質量比を共晶点付近の38/62に調整した混合スラグ1300gを仕込み、アルゴンガス流通下、500℃/hrの昇温速度で1590℃まで昇温し、溶融体とした。次いで、内径φ13mmのアルミナ製ノズルよりアルゴンガスで希釈された塩素ガスと水蒸気ガスによる反応性ガスを流通させた。各ガスの流通量を表1に示す。10分毎にスラグ組成制御剤である酸化カルシウムを表1に示す量を追加しながら、バブリング反応を2時間実施した後に、反応性ガスの流通を停止してからノズルを溶融体から外し、100℃/hrで降下させた。
このシリコンをスラグと分離し、スラグが混入していない部分をサンプリングし、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光法)にて分析した。その結果、表1に示すように、ホウ素濃度が4質量ppm以下まで低下した。スラグ組成もスラグ制御ガス及び酸化カルシウムの追加投入により反応終期でもホウ素の分配係数の高い組成を維持できた。
[実施例2]
塩素ガス及び追加の酸化カルシウムを表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例1と同様にホウ素濃度を分析した。その結果、表1に示すように、ホウ素濃度が4質量ppm以下まで低下した。スラグ組成もスラグ制御ガス及び酸化カルシウムの追加投入により反応終期でもホウ素の分配係数の高い組成を維持できた。
[実施例3]
塩素ガスを表1に示す量に変更し、酸化カルシウムを追加投入しない以外は実施例1と同様に行った。その結果、表1に示すように、酸化カルシウムを追加しなかったため、混合スラグ中の酸化カルシウム濃度は初期に比べ低下したが、これは初期よりもホウ素の分配係数の高い組成である。よって、シリコン中のホウ素濃度の減少も大きかった。
[実施例4]
CaO/SiO2混合比を34/66に、酸化カルシウムの追加量を表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様に行った。酸化カルシウムの追加量を増やすことにより、初期の混合比を維持することができ、ホウ素の分配係数の高い組成を維持することができた。その結果、表1に示すように、ホウ素濃度が3質量ppmまで低下した。
[実施例5]
CaO/SiO2混合比を55/45に調整した以外は実施例4と同様に行った。初期の混合比を維持することができ、ホウ素の分配係数の高い組成を維持することができた。その結果、表1に示すように、ホウ素濃度が3質量ppmまで低下した。
[実施例6]
吹き込みガスを塩素ガスから四塩化ケイ素ガスに変え、ガス流通量を表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様に行った。その結果、表1に示すように、ホウ素濃度が4質量ppm以下まで低下した。スラグ組成もスラグ制御ガス及び酸化カルシウムの追加投入により、反応終期でもホウ素の分配係数の高い組成を維持した。
[実施例7]
吹き込みガスを塩素ガスから四塩化ケイ素ガスに変え、ガス流通量を表1に示す量に変えた以外は実施2と同様に行った。その結果、表1に示すように、ホウ素濃度が4質量ppm以下まで低下した。スラグ組成もスラグ制御ガス及び酸化カルシウムの追加投入により、反応終期でもホウ素の分配係数の高い組成を維持した。
[比較例1]
アルゴンガスのみ吹き込み、スラグの組成制御を行わなかった以外は実施例1と同様に行った。酸化カルシウムが還元され反応終期にはスラグの酸化カルシウム濃度がわずかに低下したが、この組成領域ではホウ素の分配係数の低い組成であるため、シリコン中のホウ素濃度は実施例1に較べ高くなった。
実施例1〜7及び比較例1の結果より明らかなように、スラグ組成を制御しながら精製処理を行うことにより、従来のスラグによるシリコンの製法に比較し、シリコンからの脱ホウ素効果が高くなることが明白である。
Figure 2011230972

Claims (10)

  1. 不純物としてホウ素を含有するシリコン及びスラグをそれぞれが溶融するよう加熱した後、上記シリコン及び上記スラグを溶融状態で接触させ、上記シリコン中のホウ素を上記スラグに吸収させて上記シリコン中のホウ素を除去するシリコンの精製方法であって、上記スラグの組成を制御しながら上記スラグにホウ素を吸収させることを特徴とするシリコンの精製方法。
  2. スラグの組成を制御する方法が、溶融状態のシリコン及びスラグに塩素原子を含むガスを吹き込む方法並びに減少したスラグ成分を一定の間隔で補充する方法のいずれか一方又は両方である請求項1記載の精製方法。
  3. スラグが、酸化カルシウム及び二酸化ケイ素を含むものである請求項1又は2記載の精製方法。
  4. 酸化カルシウム及び二酸化ケイ素の合計量に対する酸化カルシウムの含有割合が25〜60質量%である請求項3記載の精製方法。
  5. スラグが、更に、酸化カルシウム及び二酸化ケイ素の合計100質量部に対してフッ化カルシウム1〜20質量部含む請求項3又は4記載の精製方法。
  6. 塩素原子を含むガスが、塩素ガス又は四塩化ケイ素ガスである請求項2乃至5のいずれか1項記載の精製方法。
  7. 塩素原子を含むガスと共に水蒸気を吹き込む請求項2乃至6のいずれか1項記載の精製方法。
  8. 補充するスラグ成分が酸化カルシウムである請求項3乃至7のいずれか1項記載の精製方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項記載の精製方法により得られ、ホウ素含有量が4質量ppm以下であることを特徴とするシリコン。
  10. 請求項9記載のシリコンを原料として製造された太陽電池。
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