JP2012254894A - シリコンの精製方法 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】不純物としてPを含有するシリコンとスラグを加熱してそれぞれを溶融し、シリコンとスラグを溶融状態で接触させてシリコン中のPをスラグに吸収させ、次いでこれらを冷却・固化し、Pを吸収させたスラグをシリコンから分離除去する第一工程を少なくとも1回行った後、得られたシリコンを解砕し、これを無機酸を含む水溶液にて処理する第二工程を行うことによりシリコン中に含まれるPを除去するシリコンの精製方法であって、スラグの組成が、少なくとも1種の塩基性酸化物を含み、この塩基性酸化物と、中性酸化物、酸性酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物から選ばれる混合物からなり、かつ酸性酸化物を含む場合は、酸性酸化物の含有量が塩基性酸化物の含有量よりも少ない組成であるシリコンの精製方法。
【効果】従来の精製方法よりも安価に効率よくシリコン中のPを除去することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、工業的に生産されるシリコンを高純度化する精製方法に関し、更に詳しくはスパッタリングターゲット材料、熱電材料及び太陽電池材料等の高純度が要求される電子材料分野に使用されるシリコンの精製方法及びこれにより得られるシリコンに関する。
炭酸ガスを排出する化石エネルギーが地球温暖化を促進するとして、化石エネルギーに代替するエネルギーが種々提案され、実用化されている。それらのなかでも太陽光発電は、地球上に遍く分布するエネルギーによって作り出されるものであること、比較的小規模の設備でも可能であること、実用化の歴史が長いことなどから、年々その設備発電量が増加している。
太陽光発電には種々の方法があるが、なかでもシリコンウエハを使用して電池セルを形成した太陽電池は、最も普及している太陽光発電法である。この太陽電池用シリコンウエハに使用するシリコンの不純物成分の濃度は、半導体用のシリコンほどの低い不純物濃度レベルまでは必要とされない。即ち、半導体用シリコンは、不純物を極力低レベルとすることがよいとされ、その必要純度が99.99999999%(10N)とされるのに対し、太陽電池用のシリコンには99.999%(5N)乃至99.9999%(6N)純度が必要とされる。
従来、太陽電池用シリコンをこの不純物レベルとするために、その原料には半導体用の99.999999999%(11N)純度品に加え、半導体シリコン製造工程中で不純物濃縮や異物付着品として廃棄される、いわゆるオフグレード品を再処理又は精製したシリコンが使用されてきた。このように、太陽電池用シリコンは、半導体用のシリコン又はその派生品が原料であることから、その流通量は半導体産業の影響を受けてしまい、太陽電池用シリコンの需要に対応できない状態となっていた。
このため、工業的に十分な製造量を有する金属シリコンの純度を向上させて、太陽電池用のシリコンとして使用することが検討されてきた。金属シリコンの主な不純物は、鉄、アルミニウム、カルシウム、チタンなどの金属元素と、ドーパントとして作用するホウ素、リンなどの非金属元素である。これらのうち、金属元素はシリコンとの凝固分配係数が非常に小さく、例えば金属シリコン中に不純物成分として多量に存在することが多い鉄の凝固分配係数はたかだか8×10-6である。従って、凝固開始時の固体シリコン中には鉄濃度が低く、凝固中期から末期にかけて固体シリコン中の鉄濃度が徐々に増加することとなる。この凝固偏析現象を利用して所望の鉄濃度の部分を鋳造塊より選択すれば、低鉄濃度のシリコンが得られる。鉄以外の不純物金属元素についても同様の方法で低不純物濃度のシリコンが得られる。
しかし、リンは、シリコン中でドーパント物質として作用するので太陽電池用のシリコン中の濃度については濃度制御すべき物質であるにもかかわらず、凝固分配係数が0.35と大きく、この凝固偏析現象ではほとんど偏析しないので、リンを凝固偏析以外の方法で除去すべく、種々の方法が提案されている。
具体的には、リンは蒸気圧が高いことを利用して、シリコンを高真空下で溶解することによりシリコンから揮散、除去する方法が提案されている。例えば、特許第3325900号公報(特許文献1)には、金属シリコンを真空下において電子ビーム等で溶解し、その含有するリンを気化脱リンした後、酸化性雰囲気でプラズマトーチ等を用いて加熱し、ホウ素を除去する方法が開示されている。特開2005−255417号公報(特許文献2)には、金属シリコンと不純物精製用の添加剤を加熱してシリコンを溶融状態にし、添加剤が溶融シリコンと混合するように撹拌しながら不揮発性であるホウ素等を低減した後、高真空下で揮発性のリン等を除去する方法が開示されている。しかし、特許文献1、2の方法は、高価な電子ビームやプラズマトーチ、更には高真空装置を必要とし、低コストの太陽電池用シリコンの製造には不適である。
特許第3325900号公報 特開2005−255417号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、金属シリコン中に不純物として含まれるリンの含有量を低減することのできるシリコンの精製方法及びこれにより得られるシリコンを提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、不純物としてリンを含有するシリコンとスラグを加熱してそれぞれを溶融し、上記シリコンと上記スラグを溶融状態で接触させて上記シリコン中のリンを上記スラグに吸収させ、次いでこれらを冷却・固化し、リンを吸収させたスラグをシリコンから分離除去する第一工程を少なくとも1回行った後、得られたシリコンを解砕し、無機酸を含む水溶液にて処理する第二工程を行うことによりシリコン中に含まれるリンを除去する方法であって、スラグの組成を、少なくとも1種の塩基性酸化物を含み、この塩基性酸化物と、中性酸化物、酸性酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物から選ばれる1種又は2種以上との混合物からなり、かつ酸性酸化物を含む場合は、酸性酸化物の含有量が塩基性酸化物の含有量よりも少ない組成とすることにより、シリコン中に不純物として含まれるリンを効果的に除去できることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記シリコンの精製方法及びこれにより得られるシリコンを提供する。
請求項1:
不純物としてリン(P)を含有するシリコンとスラグを加熱してそれぞれを溶融し、上記シリコンと上記スラグを溶融状態で接触させて上記シリコン中のリンを上記スラグに吸収させ、次いでこれらを冷却・固化し、リンを吸収させたスラグをシリコンから分離除去する第一工程を少なくとも1回行った後、得られたシリコンを解砕し、これを無機酸を含む水溶液にて処理する第二工程を行うことによりシリコン中に含まれるリンを除去するシリコンの精製方法であって、
スラグの組成が、少なくとも1種の塩基性酸化物を含み、この塩基性酸化物と、中性酸化物、酸性酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物から選ばれる1種又は2種以上との混合物からなり、かつ酸性酸化物を含む場合は、酸性酸化物の含有量が塩基性酸化物の含有量よりも少ない組成であることを特徴とするシリコンの精製方法。
請求項2:
溶融状態のシリコン及びスラグを混合状態で接触させ、該混合状態での接触が、不活性ガス又は還元性ガスを同伴させた不活性ガスのバブリングによるものである請求項1記載のシリコンの精製方法。
請求項3:
還元性ガスが、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、及びアンモニア(NH3)から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2記載のシリコンの精製方法。
請求項4:
塩基性酸化物が、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ナトリウム(Na2O)、及び酸化カリウム(K2O)から選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至3のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
請求項5:
中性酸化物が、酸化アルミニウム(Al23)である請求項1乃至4のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
請求項6:
酸性酸化物が、酸化ケイ素(SiO2)である請求項1乃至5のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
請求項7:
アルカリ金属ハロゲン化物が、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化ルビジウム(RbF)、フッ化セシウム(CsF)、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ルビジウム(RbCl)、及び塩化セシウム(CsCl)から選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至6のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
請求項8:
アルカリ土類金属ハロゲン化物が、フッ化ベリリウム(BeF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、フッ化バリウム(BaF2)、塩化ベリリウム(BeCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、及び塩化バリウム(BaCl2)から選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至7のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
請求項9:
溶融シリコンとスラグを冷却・固化する際の1000℃までの冷却速度が300℃/hr以下である請求項1乃至8のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
請求項10:
無機酸を含む水溶液が、塩酸及び硝酸を含む水溶液である請求項1乃至9のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
請求項11:
請求項1乃至10記載のシリコンの精製方法によって得られ、不純物としてのリン濃度が1ppm以下であることを特徴とするシリコン。
本発明の精製方法によれば、従来公知の精製方法よりも安価に効率よくシリコン中のリンを除去することができる。
本発明のシリコンの精製方法は、不純物としてリンを含有するシリコンとスラグを加熱してそれぞれを溶融し、上記シリコンと上記スラグを溶融状態で接触させて上記シリコン中のリンを上記スラグに吸収させ、次いでこれらを冷却・固化し、リンを吸収させたスラグをシリコンから分離除去する第一工程を少なくとも1回行った後、得られたシリコンを解砕し、これを無機酸を含む水溶液にて処理する第二工程を行うことによりシリコン中に含まれるリンを除去するシリコンの精製方法であって、スラグの組成が、少なくとも1種の塩基性酸化物を含み、この塩基性酸化物と、中性酸化物、酸性酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物から選ばれる1種又は2種以上との混合物からなり、かつ酸性酸化物を含む場合は、酸性酸化物の含有量が塩基性酸化物の含有量よりも少ない組成であるものである。
以下、本発明の精製方法を工程順に説明する。
先ず精製しようとする金属シリコンを用意する。通常、金属シリコンには、鉄、アルミニウム、カルシウムなどの金属不純物元素と共に、ホウ素やリンなどシリコン中に存在するとドーパントとして作用する非金属元素などが含まれている。本発明が精製対象とする金属シリコンは、これらの不純物がそのまま含まれていてもよく、一方向凝固法、真空溶解法等の特定の前処理を施して金属成分や非金属成分を予め低減した金属シリコンでもよい。特に、本発明で用いられる精製前の金属シリコン中のリン(P)の含有量は、通常5〜100質量ppm、特に10〜80質量ppmである。なお、本発明において、不純物元素の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AES)により測定した値である。
次に、スラグを調製する。
本発明におけるスラグの組成は塩基性であることが重要であり、塩基性スラグとシリコンを溶融状態で接触させると、スラグ中の塩基性成分とシリコンの間で酸素交換反応が発生する。例えば、
2CaO + Si → SiO2 + 2Ca ・・・・・・(1)
2MgO + Si → SiO2 + 2Mg ・・・・・・(2)
のように、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物等の塩基性酸化物がシリコンによって還元され、シリコンと合金相を形成する。発生したSiO2はスラグ中に吸収される。この合金相が結晶粒界へ偏析し、リンを粒界へ濃縮させ、スラグ処理を終えたシリコンは、合金相と共にリンの酸リーチが可能となる。これにより、アルカリ土類金属やアルカリ金属単体を使用することなく、その成分をシリコンと合金化することが可能となる。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物が選択されるのは、塩基性であると共に、これらがシリコンと合金相をつくりやすい元素であるからである。この還元反応はスラグが塩基性において発生する反応で、酸性下では発生しない。酸性下では系の酸素分圧が高く、還元反応は進まないため、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物がシリコン中に移行することはない。よって、スラグ組成が塩基性であることが重要である。
更に、塩基性スラグの低酸素分圧下では、スラグ中の酸素イオンにより、下記式に示される還元反応に従って、スラグ中にリンを吸収させる効果もあり、リンの粒界への濃縮との相乗効果が望める。
P(in Si) + 3/2O2-(in slag) →
3-(in slag) + 3/4O2-・・・・・・(3)
また、塩基性酸化物だけでは融点が高く、シリコンの融点(1410℃)に近くする必要があり、中性酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物との混合組成とすることが好ましい。この場合、酸性酸化物と組み合わせることも可能だが、その際は酸性酸化物の量よりも塩基性酸化物の量を多くし、塩基性スラグとすることが重要である。スラグの融点は、1300〜1600℃が好ましく、より好ましくは1350〜1500℃である。
塩基性酸化物としては、上述したように、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物が好ましく、具体的には、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも特に、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)が好ましい。
中性酸化物としては、酸化アルミニウム(Al23)、酸化チタニウム(TiO)等が挙げられるが、遷移金属である酸化チタニウムは不適である。
酸性酸化物としては、酸化ケイ素(SiO2)、五酸化リン(P25)が挙げられるが、リン除去を目的とするため五酸化リンは不適である。
アルカリ金属ハロゲン化物としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化ルビジウム(RbF)、フッ化セシウム(CsF)、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ルビジウム(RbCl)、及び塩化セシウム(CsCl)等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも特に、フッ化リチウム(LiF)が好ましい。
アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、フッ化ベリリウム(BeF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、フッ化バリウム(BaF2)、塩化ベリリウム(BeCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、塩化バリウム(BaCl2)等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも特に、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)が好ましい。
好ましい組み合わせとしては、例えば、酸化カルシウム(CaO)−フッ化カルシウム(CaF2)、酸化カルシウム(CaO)−酸化アルミニウム(Al23)の2成分系、酸化カルシウム(CaO)−酸化アルミニウム(Al23)−フッ化カルシウム(CaF2)、酸化カルシウム(CaO)−酸化アルミニウム(Al23)−酸化ケイ素(SiO2)の3成分系のスラグ等が挙げられる。
スラグを構成する成分である酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化アルミニウム等の含有量は、これらを含むスラグの組成によって異なるため一概には規定できないが、例えば、酸化カルシウムとフッ化カルシウムの2成分スラグの場合、酸化カルシウム含有率がスラグ全量中33質量%より多くなると融点が1600℃を超えるため、33質量%以下、特に10〜30質量%、とりわけ15〜25質量%が好ましい。同じく酸化カルシウムと酸化アルミニウムの2成分スラグの場合は、酸化カルシウム含有率がスラグ全量中40〜60質量%、特に45〜55質量%が好ましい。
また、酸化カルシウム、酸化アルミニウム及びフッ化カルシウムの3成分スラグの場合、酸化カルシウムの含有率はスラグ全量中10〜55質量%、特に20〜40質量%が好ましく、酸化アルミニウム及びフッ化カルシウムの合計含有率は45〜90質量%、特に60〜80質量%が好ましく、酸化アルミニウム及びフッ化カルシウムの含有割合は、質量比で95:5〜50:50が好ましく、より好ましくは90:10〜60:40である。
酸化カルシウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の3成分スラグの場合、酸化カルシウムの含有率はスラグ全量中30〜70質量%が好ましく、より好ましくは40〜60質量%であって、酸化アルミニウム:酸化ケイ素の質量比は80:20〜50:50、特に70:30〜60:40であることが好ましい。
なお、酸化カルシウムは、酸化物をそのまま使用してもよいし、加熱後に酸化物となる炭酸塩、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)として投入・加熱してもよい。炭酸カルシウムのような炭酸塩を使用すれば、加熱後にこれが分解して酸化物となるので実質的に酸化物を使用したことと同じことになる。
スラグはあらかじめ調製し、所期の組成のスラグとしてからシリコンとの溶融に供することが好ましい。スラグの調製方法は特に制限されないが、上記成分を抵抗加熱炉等により、1400〜1700℃で溶融した後、冷却して得られた混合スラグを解砕して用いることができる。また、シリコンの溶融時に所期の組成となるような組成のスラグ成分を与えてもよい。
次いで、シリコンとスラグ材料をるつぼに入れ、精製炉に装填し、溶融したシリコンとスラグが共存した混合物とするが、スラグは炉昇温中あるいはシリコン溶融後にるつぼに投入してもよい。シリコンとスラグの配合比率は、シリコン100質量部に対してスラグ(合計量)10〜100質量部が好ましく、スラグ20〜70質量部がより好ましい。
るつぼは、黒鉛、セラミック、石英ガラスなどのシリコンが溶融する温度以上の耐熱度のあるものから選択される材料で製造される。セラミック製であれば溶融加熱時に発生する熱ショックにより破損しない材料と構造とすることが好ましい。また、シリコンと同時に溶融するスラグ成分との反応、溶融にも考慮することが好ましい。黒鉛製の容器ではそのものが酸化されやすい材質であることから、雰囲気をアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスにより非酸化性にすることが好ましいが、シリコンの窒化のおそれのないアルゴン雰囲気が好ましい。
炉の加熱は、抵抗加熱、誘導加熱、アーク加熱などの方法があるが、本発明においてはどのような加熱手段でもかまわない。また、炉を加熱することでシリコンを溶融させるが、あらかじめ他所で溶融したシリコンを溶融状態のまま本発明の方法に使用する精製用のるつぼに移行させることもできる。炉が所定の温度となり、るつぼに投入したシリコンとスラグがそれぞれ溶融するので、この温度で保持する。保持温度としては、シリコンとスラグが溶融する必要があり、好ましくは1450〜1800℃、より好ましくは1500〜1650℃である。この温度を保持することによりシリコンとスラグの界面にて平衡反応が進み、リンがスラグへ吸収される。
更に、スラグ中の塩基性酸化物(アルカリ金属酸化物及び/又はアルカリ土類金属酸化物)とシリコンの間で酸素交換反応が発生し、還元により生成したアルカリ金属及びアルカリ土類金属はシリコンと合金相を形成する。
これらの反応を促進させるためには、撹拌等によりシリコンとスラグの接触面積を大きくすることが有効である。例えば、不活性ガスを流通するノズルを、溶融したシリコンとスラグからなる溶融体中に没入することにより、不活性ガスが溶融体中で気泡となり、溶融体はバブリング状態となる。このバブリングガスにより溶融体は撹拌され、溶融したシリコンとスラグとの混合がスムーズに行われることとなる。
不活性ガスを導入する際に、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)等の還元性ガスを同伴させるのも有効な手段であり、還元性ガスにより塩基性酸化物が還元され、結果的にシリコン中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属との合金相が増加することになり、リンの偏析量が増加してリンの除去率が高くなる。しかし、アルカリ金属やアルカリ土類金属とシリコンとの合金相の生成量が多くなるということは、シリコンの歩留まりを低下させることになるので、還元性ガスの導入量は不活性ガスに対し0.1〜20容量%程度が好ましい。より好ましくは1〜5容量%である。
撹拌は、シリコンとスラグが溶融状態で0.5〜20時間、特に1〜5時間保持した後、加熱を停止し、冷却固化させる。この冷却の際にリンが結晶粒界に濃縮される。冷却の際は、撹拌操作を行った場合はそれを停止し、静置状態とするが、スラグとシリコンの分離効率を上げるために、溶融状態での静置時間を長くしてもよい。
冷却速度は、炉の自然冷却(500℃/hr以下、特に350〜450℃/hr程度)でもかまわないが、1000℃まで300℃/hr以下の冷却速度で固化させると結晶粒界中にリンが濃縮されやすくなる。300℃/hrより大きな速度で冷却させると、粒界への濃縮が小さくなり、後述する酸リーチングによるリンの除去率が低下する場合がある。好ましくは250℃/hr以下、より好ましくは200℃/hr以下である。冷却速度の下限値は特に制限されないが、50℃/hr以上、特に100℃/hr以上であることが生産性及びコストの点から好ましい。1000℃以下では完全に固化しているので、この限りではない。
固化後のシリコンは、スラグ成分と分離し、無機酸を含む水溶液で酸リーチングされる。無機酸としては、塩酸、過塩素酸、硝酸等が挙げられるが、塩酸と硝酸の容量比90:10〜10:90の混酸が好ましい。より好ましくは王水である。王水には強い酸化力があり多くの金属を溶解する能力が高いため好適である。
結晶粒界に生成したシリコン−アルカリ金属化合物(合金)あるいはシリコン−アルカリ土類金属化合物(合金)は、酸と接触することによりモノシラン(SiH4)が発生するため、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気にて行うことが好ましい。
酸リーチングは発熱を伴うため、加熱が無くても進行はするが、反応速度を高めるためには60℃以上に加熱することが好ましい。より好ましくは80℃以上である。温度の上限は特に制限されないが、95℃以下であり、上記温度で0.5〜4時間処理すればよい。
酸リーチングが終了したシリコンは、酸を分離し、純水にて洗浄することにより本発明のシリコンの精製が終了する。これによりシリコン中に含まれるリン濃度は、精製前のシリコン中に含まれるリン濃度に比べて約20分の1程度まで減少させることが可能となり、例えば、初期に10〜50質量ppm、特に10〜20質量ppmの濃度で含有されているリンを、精製後に5質量ppm以下、好ましくは1質量ppm以下、更に好ましくは0.5質量ppm以下にすることができる。
初期のリン濃度が数百ppm含まれている場合、あるいは精製後のリン濃度を更に低減したい場合は、上述した工程を2〜4回繰り返しても良いが、酸リーチングを省略し、スラグ処理を数回(2〜4回)繰り返し、最後に酸リーチングしても良い。スラグ処理だけでも3分の1から4分の1にリン含有率を低減することが可能なので、例えば初期にリンを100ppm含有する場合でも3回のスラグ処理を繰り返した後、酸リーチングを行えば、1ppm以下にすることも可能となり、初期の濃度と所望の濃度を考慮して工程を決めればよい。
スラグ処理を繰り返す場合、スラグは繰り返し使用しても良いが、スラグ処理1回ごとに新たなスラグを用いて処理する方がより効果的にリンを除去することができるため好ましい。また、酸リーチングを行う直前のスラグ処理以外の冷却速度は、結晶粒界に濃縮させる必要はなく、急冷(500℃超〜3000℃/hr程度)してもかまわない。最終スラグ処理においても初期濃度と目標濃度を考慮し、冷却速度を選ぶことができるが、上述した理由と同様の理由から、1000℃まで300℃/hr以下であることが好ましく、より好ましくは250℃/hr以下、更に好ましくは50〜200℃/hrの冷却速度で固化させることが好ましい。
本発明の精製方法によって得られるシリコンは、スパッタリングターゲット材料、熱電材料及び太陽電池材料等の高純度が要求される電子材料分野において有用である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、%は質量%を、ppmは質量ppmを示す。
[実施例1,2]
内寸φ150mmの黒鉛製るつぼに、表1に記載の冶金グレードシリコン2000gと、CaO/Al23混合質量比を50/50に調整した混合スラグ2000gとをそれぞれ仕込み、アルゴンガス流通下、500℃/hrの昇温速度で1600℃まで昇温し、溶融体とした。
次いで、内径φ13mmのアルミナ製ノズルよりアルゴンガスを流通させ、バブリングによる混合状態を形成した。この状態で2時間保持した後、アルゴンガスの流通を停止してからノズルを溶融体から外し、1000℃まで200℃/hrで降下させた。1000℃以後は自然冷却し、凝固・冷却後スラグを分離・解砕した。
得られたシリコン100gを90℃王水500ml中に2時間保持し、ろ液が中性になるまで純水にて洗浄し乾燥した。これをICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光法)にて分析した。
実施例1,2のいずれの場合も、初期に含有したリン濃度が、処理後には20分の1以下の1ppm以下又は1.8ppm以下まで減少した。
[実施例3,4]
混合スラグ組成をCaO/CaF2(混合質量比18/82)とし、処理温度を1550℃とした以外は実施例1,2に従った。実施例1,2と同様、処理後にはリン濃度が20分の1以下の1ppm以下又は1.8ppm以下まで減少した。
[実施例5,6]
混合スラグ組成をCaO/Al23/SiO2(混合質量比50/40/10)とした以外は実施例1,2に従った。実施例1,2と同様、処理後のリン濃度が初期に対し20分の1程度に減少した。
[実施例7,8]
混合スラグ組成をCaO/Al23/CaF2(混合質量比40/40/20)とした以外は実施例1,2に従った。実施例1,2と同様、処理後のリン濃度が初期に対し20分の1程度に減少した。
[実施例9,10]
アルミナ製ノズルより流通させるアルゴンガスに3容量%の水素を同伴させた以外は実施例1,2に従った。実施例1,2と同様、処理後にはリン濃度が20分の1以下の1ppm以下又は1.8ppm以下まで減少した。
[比較例1,2]
混合スラグ組成をCaO/SiO2(混合質量比36/66)と酸性とした以外は実施例1,2に従った。処理後のリン濃度の低減は僅かに留まった。
Figure 2012254894

Claims (11)

  1. 不純物としてリン(P)を含有するシリコンとスラグを加熱してそれぞれを溶融し、上記シリコンと上記スラグを溶融状態で接触させて上記シリコン中のリンを上記スラグに吸収させ、次いでこれらを冷却・固化し、リンを吸収させたスラグをシリコンから分離除去する第一工程を少なくとも1回行った後、得られたシリコンを解砕し、これを無機酸を含む水溶液にて処理する第二工程を行うことによりシリコン中に含まれるリンを除去するシリコンの精製方法であって、
    スラグの組成が、少なくとも1種の塩基性酸化物を含み、この塩基性酸化物と、中性酸化物、酸性酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物から選ばれる1種又は2種以上との混合物からなり、かつ酸性酸化物を含む場合は、酸性酸化物の含有量が塩基性酸化物の含有量よりも少ない組成であることを特徴とするシリコンの精製方法。
  2. 溶融状態のシリコン及びスラグを混合状態で接触させ、該混合状態での接触が、不活性ガス又は還元性ガスを同伴させた不活性ガスのバブリングによるものである請求項1記載のシリコンの精製方法。
  3. 還元性ガスが、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、及びアンモニア(NH3)から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2記載のシリコンの精製方法。
  4. 塩基性酸化物が、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ナトリウム(Na2O)、及び酸化カリウム(K2O)から選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至3のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
  5. 中性酸化物が、酸化アルミニウム(Al23)である請求項1乃至4のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
  6. 酸性酸化物が、酸化ケイ素(SiO2)である請求項1乃至5のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
  7. アルカリ金属ハロゲン化物が、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化ルビジウム(RbF)、フッ化セシウム(CsF)、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ルビジウム(RbCl)、及び塩化セシウム(CsCl)から選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至6のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
  8. アルカリ土類金属ハロゲン化物が、フッ化ベリリウム(BeF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、フッ化バリウム(BaF2)、塩化ベリリウム(BeCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、及び塩化バリウム(BaCl2)から選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至7のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
  9. 溶融シリコンとスラグを冷却・固化する際の1000℃までの冷却速度が300℃/hr以下である請求項1乃至8のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
  10. 無機酸を含む水溶液が、塩酸及び硝酸を含む水溶液である請求項1乃至9のいずれか1項記載のシリコンの精製方法。
  11. 請求項1乃至10記載のシリコンの精製方法によって得られ、不純物としてのリン濃度が1ppm以下であることを特徴とするシリコン。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112891973A (zh) * 2021-01-15 2021-06-04 中国科学院上海应用物理研究所 一种降低卤化物熔盐中氧含量的方法

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