JP2011230971A - 接合体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温環境下において、耐熱性及び接合信頼性を確保することができると共に、オーミックコンタクト性の確保が可能な接合体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくともSiを含む化合物からなるセラミック体10と、その表面に接合された金属体11との接合体1及びその製造方法である。金属体11は、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、かつ熱膨張係数が11×10-6/℃以下である。セラミック体10と金属体11との接合界面には、SiとCrと上記金属元素とを含有する拡散接合領域12が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、セラミック体と金属体との接合体及びその製造方法に関する。
セラミックスからなるセラミック体と金属からなる金属体との接合体は、高温強度、耐熱性、耐摩耗性等の機械的特性が要求される各種構造用部品、又は、電気伝導性、イオン伝導性等の電磁気的特性や熱伝導特性が要求される各種機能性部品に用いられている。具体的には、例えば排ガス浄化用の電機加熱式触媒コンバータ(EHC)、温度センサ素子、及びセラミックヒータ等があり、例えば金属体を金属電極とし、該金属電極に電圧を印加して上記セラミック体を加熱する用途等に用いられる。
上記接合体において、セラミック体と金属体とは用途に応じて様々な接合方法で接合される。特に、自動車の排気管内等のように高温酸化雰囲気で使用される用途においては、耐熱性、及びセラミック体と金属体との接合信頼性を確保することが要求される。
従来、セラミック材料の表面に接合された金属薄膜と、金属薄膜の表面に形成された表面層(酸化層)を備えたセラミックと金属の接合体が提案されている(特許文献1参照)。また、特許文献1には、金属薄膜とセラミックの接合手法としては拡散接合等が挙げられている。そして、かかる接合体によれば、接合体の耐熱性、接合信頼性を確保できることが示されている。
また、セラミックと該セラミックの表面に接合された金属電極とを備え、金属電極は連続体からなり、かつ複数個の凹部を有しているセラミックと金属電極の接合体が提案されている(特許文献2参照)。また、特許文献2には、特許文献1と同様に接合手法としては拡散接合等が挙げられている。そしてかかる接合体によれば、セラミックと金属電極の熱膨張係数差に起因する熱応力を低減することができ、接合信頼性を確保できることが示されている。
特開2005−343768号公報 特開2007−22893号公報
しかしながら、従来の構成の接合体を排気管内等のように高温環境下で使用した場合、接合信頼性余裕度が小さくなり、接合界面近傍にて剥離が起るおそれがある。特に、近年のエンジン小型高出力化に伴う排気ガス温度上昇といった背景から、自動車の排ガス管内で用いられる接合体においては上述の剥離問題が顕在化している。かかる問題点は、窒化珪素及び炭化珪素等のように熱膨張係数の小さいセラミックスと金属の接合体において特に顕著である。
また、例えばEHC、温度センサ素子等のようにセラミック体に接合形成された金属体を電極として用いる接合体においては、オーミックコンタクト性を確保することが要求される。即ち、金属電極としての金属体及び接合部の抵抗が極めて小さくかつ変化がほとんどないこと、及び金属体の面積にばらつきがないこと等が要求される。しかし、従来構成の接合体では、接合界面近傍において、金属体の剥離、及びセラミック体に発生するクラックなどが原因となって抵抗が大幅に上昇してしまい、オーミックコンタクト性を十分に確保することができないという問題がある。
さらに、例えば特許文献1に示された技術においては、酸化層の影響により金属電極そのものの抵抗が高くなり、かつばらついてしまうおそれがあり、特許文献2に示された技術においては、金属電極における複雑な凹形状により、電極面積がばらついてしまうおそれがある。また、特許文献2に示された技術においては、電圧を印加するためのリード線を接合するスペースを確保することも困難になる。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされてものであり、高温環境下において、耐熱性及び接合信頼性を確保することができると共に、オーミックコンタクト性の確保が可能な接合体及びその製造方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、少なくともSiを含む化合物からなるセラミック体と、該セラミック体の表面に接合された金属体との接合体であって、
上記金属体は、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、かつ熱膨張係数が11×10-6/℃以下であり、
上記セラミック体と上記金属体との接合界面には、SiとCrと上記金属元素とを含有する拡散接合領域が形成されていることを特徴とする接合体にある(請求項1)。
第2の発明は、少なくともSiを含む化合物からなるセラミック体と、該セラミック体の表面に接合された金属体との接合体の製造方法において、
Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、熱膨張係数が11×10-6/℃以下の金属を上記セラミック体の表面に配設した状態で加熱することにより、上記セラミック体の表面に上記金属体を接合形成すると共に、該金属体と上記セラミック体との接合界面に、SiとCrと上記金属の元素とを含有する拡散接合領域を形成させる拡散接合工程を有することを特徴とする接合体の製造方法にある(請求項11)。
上記第1の発明の接合体においては、セラミック体の表面に、熱膨張係数の小さいCrを含有し、かつ熱膨張係数が11×10-6/℃以下の上記金属体が接合形成されている。 そのため、耐熱性に優れる低熱膨張セラミックスからなる上記セラミック体を採用することが可能になる。即ち、上記セラミック体として、低熱膨張セラミックスを採用した場合であっても、上記セラミック体と上記金属体との間の熱膨張係数差を小さくすることが可能になる。そのため、上記接合体においては、低温から高温環境下においても上記セラミック体と上記金属体との間の熱応力を低減させ、接合信頼性を十分に確保できる。また、Crは耐熱性の観点からも優位であり、上記金属体の耐熱性を確保することができる。
また、上記接合体においては、少なくともSiを含む化合物からなる上記セラミック体の表面に、Crと、CrよりSiの拡散係数が高い金属元素とを含有する上記金属体が形成されており、上記セラミック体と上記金属体との上記接合界面には、SiとCrと上記金属元素とを含有する拡散接合領域が形成されている。即ち、上記拡散接合領域は、上記セラミック体に含まれるSiと上記金属体に含まれるCr及び上記金属元素とが拡散されてなる。そのため、上記セラミック体においては、上記拡散接合領域を介して上記金属体と上記セラミック体とが強固に接合されると共に、オーミックコンタクト性が確保される。
従来においても、金属とセラミックスとを拡散接合させることは提案されていた(特許文献1及び特許文献2参照)が、実際に接合信頼性やオーミックコンタクト性を確保するための具体的な拡散接合領域の構成については示されていなかった。本発明においては、上記のごとく、SiとCrと上記金属元素とを含有する、例えば金属シリサイド等からなる上記拡散接合領域を形成することにより、接合信頼性及びオーミックコンタクト性を十分に確保することができる。
また、上記金属体は、CrとCrよりSiの拡散係数が高い金属元素とを含有するが、該金属元素としては、CrよりSiの拡散係数が高いという条件を満足し、さらに上記金属体の熱膨張係数を11×10-6/℃以下にするという条件を満足する任意の金属元素を採用することができる。したがって、上記接合体においては、上記拡散接合領域の熱膨張係数を調整することが可能になり、熱応力をさらに低減することが可能になる。
また、Siの拡散係数がCrより高い金属元素は、その種類によっては、上記金属体の熱膨張係数を大きくし、上記接合界面における熱応力を増大させてしまうおそれがあるが、本発明においては、上記金属体の熱膨張係数を上記のごとく11×10-6/℃以下とし、上記セラミック体の熱膨張率に近い値としてある。そのため、十分に接合信頼性を確保することが可能になる。
このように、上記第1の発明によれば、低温から高温環境下において、耐熱性及び接合信頼性を確保することができると共に、オーミックコンタクト性の確保が可能な接合体を提供することができる。
次に、上記第2の発明の製造方法においては、上記拡散接合工程を行なうことにより、少なくともSiを含む化合物からなるセラミック体と、該セラミック体の表面に接合された金属体との接合体を製造する。
上記拡散接合工程においては、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、熱膨張係数が11×10-6/℃以下の金属を上記セラミック体の表面に配設した状態で加熱する。本発明において特に注目すべき点は、上記セラミック体の表面に配設する金属として、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、熱膨張係数が11×10-6/℃以下のものを採用していることにある。
そのため、上記拡散接合工程においては、加熱により上記セラミック体に接合する上記金属体を形成できると共に、上記セラミック体に含まれるSiと上記金属体中に含まれるCr及び上記金属元素とを相互に拡散させ、上記金属体と上記セラミック体との接合界面にSiとCrと上記金属元素とを含有する拡散接合領域を形成させることができる。即ち、上記拡散接合領域により上記金属体と上記セラミック体とを拡散接合させることができる。そのため、上記拡散接合領域を介して上記金属体と上記セラミック体とが強固に接合されると共に、オーミックコンタクト性を確保することができる。
また、上記セラミック体の表面に配設する金属として、Crを含有し、熱膨張係数が11×10-6/℃以下の金属を採用しているため、熱膨張係数の小さい上記金属体を上記セラミック体に接合形成することができる。それ故、耐熱性に優れる低熱膨張セラミックスからなる上記セラミック体を採用した場合であっても、該セラミック体と上記金属体との間の熱膨張係数差を小さくすることが可能になる。したがって、低温から高温環境下においても上記セラミック体と上記金属体との間の熱応力を低減させ、接合信頼性を十分に確保できる接合体を製造することができる。また、Crは耐熱性の観点からも優位であり、上記金属体の耐熱性を確保することができる。
また、上記セラミック体の表面に配設する金属として、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有する金属を採用している。そのため、上記拡散接合工程における加熱時に、Crだけでなく、CrよりもSiの拡散係数が高い任意の上記金属元素を積極的に上記セラミック体に拡散させることができる。そのため、任意の金属元素を含有する上記拡散接合領域を形成することが可能になる。したがって、上記拡散接合領域の熱膨張係数を調整することが可能になり、熱応力をさらに低減することが可能になる。
上述のごとくCrよりSiの拡散係数が高い金属元素は、その種類によっては、上記金属セラミック体の表面に配設する金属の熱膨張係数を大きくし、熱応力を増大させてしまうおそれがあるが、本発明においては、上記のごとく熱膨張係数11×10-6/℃以下の金属を採用してある。そのため、十分に接合信頼性を確保することが可能になる。
このように、上記第2の発明によれば、高温環境下において、耐熱性及び接合信頼性を確保することができると共に、オーミックコンタクト性の確保が可能な接合体の製造方法を提供することができる。
実施例1にかかる、接合体の断面を示す説明図。 実施例1にかかる、合金粉末ペーストを塗布したセラミック体の断面を示す説明図。 実施例1にかかる、金属及びその金属シリサイドの耐熱温度及び熱膨張係数を示す説明図。 実施例1にかかる、各金属におけるSiの拡散係数を示す説明図。 実施例2にかかる、金属体におけるAl配合割合と、高温放置試験前後における酸化増加量率(%)との関係を示す説明図。 実施例4にかかる、接合体を電気加熱式触媒コンバータとして用いたときの断面構成を示す説明図。 実施例4にかかる、電機加熱式触媒コンバータ用の接合体の斜視図。 実施例4にかかる、電機加熱式触媒コンバータ用の接合体のセルの伸長方向に垂直な方向における断面を示す説明図。 実施例4にかかる、電機加熱式触媒コンバータ用の接合体のセルの伸長方向における断面を示す説明図。 実施例4にかかる、電機加熱式触媒コンバータ用の接合体のセラミック体と金属体との接合界面における断面を示す説明図。 実施例4にかかる、接合体の金属体とセラミック体との接合界面において、走査型電子顕微鏡写真を示す説明図(a)、Siのエネルギー分散型蛍光X線分析結果を示す説明図(b)、Crのエネルギー分散型蛍光X線分析結果を示す説明図(c)、Feのエネルギー分散型蛍光X線分析結果を示す説明図(d)。
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
上記接合体は、少なくともSiを含む化合物から構成される上記セラミック体を備える。
上記セラミック体は、熱膨張係数が7×10-6/℃以下の低熱膨張セラミックスからなることが好ましい(請求項8)。
この場合には、接合信頼性を十分に確保できるという本発明の作用効果がより顕著になる。より好ましくは、上記低膨張セラミックスの熱膨張係数は、6×10-6/℃以下がよく、さらに好ましくは5×10-6/℃以下がよい。また、金属体との熱膨張係数差が大きくなりすぎると熱応力が増大してしまうため、接合信頼性を満足することができないという観点から、熱膨張係数は2×10-6/℃以上がよい。
上記セラミック体の材質は、上記接合体の用途に応じて適宜選択することができる。
好ましくは、上記セラミック体は、炭化珪素及び/又は窒化珪素を主成分とすることがよい。
この場合には、上述の熱膨張係数7×10-6/℃以下の低熱膨張セラミックスからなる上記セラミック体を容易に実現することができる。また、上記セラミック体自体が優れた耐熱性を示すことができる。
上記セラミック体としては、緻密な焼結体を用いることができるが、多数の細孔を表面や内部に有する多孔質体を採用することもできる。
また、上記セラミック体は、格子状に配された多孔質の隔壁と、該隔壁に囲まれて軸方向に形成された複数のセルとを有するハニカム構造体であることが好ましい(請求項9)。
この場合には、上記セラミック体を例えば排ガス浄化用の電機加熱式触媒コンバータ(EHC)等として好適に用いることができる。また、上記ハニカム構造体を採用する場合には、例えば炭化珪素の多孔質体からなる上記ハニカム構造体を採用することができる。電機加熱式触媒コンバータとしての上記接合体については、後述の実施例において詳細に説明する。
また、上記接合体は、上記セラミック体の表面に接合された一対の上記金属体を金属電極として有することが好ましい(請求項10)。
この場合には、耐熱性に優れ、接合信頼性及びオーミックコンタクト性を確保できるという本発明の作用効果を十分に生かすことができる。この場合の具体的な用途としては、電機加熱式触媒コンバータ、排ガス温度測定用等の温度センサ素子、セラミックヒータ等がある。
電機加熱式触媒コンバータ及びセラミックヒータ等においては、上記セラミック体の表面に金属電極としての例えば膜状の一対の上記金属体を形成し、該金属体に電圧を印加して上記セラミック体を加熱するように構成することができる。
また、上記温度センサ素子においては、温度により電気抵抗が変化する上記セラミック体の表面に金属電極としての例えば膜状の一対の上記金属体を形成し、上記セラミック体の電気抵抗の変化を検出するように構成することができる。
また、上記接合体を例えば上記温度センサ素子として適用する場合には、上記セラミック体として温度によって電気的特性が変化するサーミスタを採用することができる。
具体的には、窒化珪素を主成分とし、窒化珪素からなる結晶粒と、該結晶粒の周囲に配設された結晶化ガラスからなる粒界相と、該粒界相に分散された炭化珪素粒子とを有するサーミスタを採用することができる。
この場合には、耐熱性に優れ、例えば熱膨張係数(線膨張係数)4×10-6〜5×10-6/℃程度の低熱膨張セラミックスからなる上記サーミスタ(セラミック体)を実現することができる。また、例えば−80〜1200℃、特に−50〜1050℃という広い温度領域において優れた感度で温度を検出できる温度センサ素子を実現できると共に、耐熱性に優れた複合材料で構成されているため、サーミスタ自体の耐熱性を向上させることができる。
また、上記粒界相には、金属導電体が分散させることができる。
この場合には、サーミスタとしての上記セラミック体の抵抗値を所望の値に制御することができる。上記金属導電体としては、例えば、TiB2、VN、TiO2、TiN2、CrB2、及びWSi等の周期律表の第4族から第6族の珪化物、ホウ化物、窒化物、炭化物等からなる粒子が挙げられる。
上記接合体を例えば排気温度センサなどの温度センサに適用する場合には、該温度センサは、上記接合体を温度センサ素子とし、該接合体において上記セラミック体(サーミスタ)の表面に形成された一対の金属体(金属電極)に先端側で電気的に接続されると共に後端側で外部回路に電気的に接続される信号線と、該信号線を内部に収容するシースピンとにより構成することができる。
この場合には、特に自動車の排気管内又は排ガス浄化装置における触媒コンバータの内部の温度を検出する排気温度センサに好適になる。
上記接合体において、上記セラミック体と上記金属体との接合界面には、SiとCrと上記金属元素とを含有する拡散接合領域が形成されている。
該拡散接合領域はCrシリサイドと上記金属元素のシリサイドとを含有することが好ましい(請求項2)。
この場合には、オーミックコンタクト性及び接合信頼性をより向上させることができる。
また、上記接合体において、上記金属体は、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、熱膨張係数が11×10-6/℃以下である。
線膨張係数が11×10-6/℃を超える場合には、上記セラミック体として低熱膨張セラミックスからなるものを採用した場合に、上記金属体と上記セラミック体との接合信頼性を確保することが困難になるおそれがある。また、金属体の熱膨張係数を小さくし過ぎると、該金属体に例えば信号線(リード線)等の別の金属部材を接合した場合に、金属体と上記金属部材との熱膨張係数差が大きくなり、両者の接合界面への熱応力が増大してしまうおそれがあるという観点から、上記金属体の熱膨張係数は7×10-6/℃以上であるこが好ましい。但し、信号線(リード線)等の金属部材として熱膨張係数の小さい金属(例えば、Pt等の貴金属)を用いる場合は、金属体の熱膨張係数を更に小さくすることが可能である。しかしながら、高コストとなってしまうため、信号線(リード線)等の金属部材としてNi−Cr−Fe合金やFe−Cr−Al合金等の高耐熱金属を使用し、金属体の熱膨張係数を7×10-6/℃以上とすることが好ましく、この場合には接合信頼性を満足するだけでなく低コストを実現できる。
上記金属体の熱膨張係数は、例えばCrと共に上記金属体に含有させる上記金属元素の種類及び配合割合を調整することにより制御できる。
Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素は、各金属元素のイオン半径が小さいか否か、または融点が低いか否かにより決定することができる。
具体的には、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素としては、例えば、Fe、Mo、Ni、及びW等がある。上記金属体は、これらの金属元素を少なくとも1種含有することができる。好ましくは、これら金属元素がSiと反応した場合に低融点化合物を形成しない金属元素を用いることがよい。
図4に、代表的な金属元素のSiの拡散係数を示す。同図に示す棒グラフにおいては、横軸は金属元素種を示し、縦軸はSiの拡散係数(cm2/s)を示す。
また、図3に、代表的な金属とその金属シリサイドの耐熱温度及び熱膨張係数を示す。同図において、横軸は熱膨張係数(×10-6/℃)を示し、縦軸は耐熱温度(℃)を示し、各合金、純金属、及びこれらのシリサイドがとりうる熱膨張係数及び耐熱温度の範囲を線で囲んだ領域で示してある。
上記金属体は、少なくともCrとFeからなる合金によって構成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、耐熱性に優れた上記金属体を形成することができると共に、上記接合界面にCrシリサイド、Feシリサイドといった化合物相を含む上記拡散接合領域を形成することができる。そのためこの場合には、上述の耐熱性、接合信頼性、及びオーミックコンタクト性をより確実に高めることができる。
上記合金は、Crを30〜90質量%、及びFeを10〜70質量%含有することが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記金属体の耐熱性、上記金属体と上記セラミック体との接合信頼性、及びオーミックコンタクト性をより高いレベルであわせもつ上記接合体を実現することができる。
また、上記合金は、Alを0.5〜7質量%含有することが好ましい(請求項5)。
この場合には、高温環境下において金属体等が酸化することを抑制することができ、上記金属体の耐熱性をより向上させることができる。Alが0.5質量%未満の場合には、耐熱性の向上効果が十分に現れないおそれがある。一方、7質量%より多くしても耐熱性の向上効果はほとんど得られず、かえって加工性が悪化するおそれがある。
また、上記拡散接合領域は、少なくともCrシリサイド及びFeシリサイドを含むことが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記金属体と上記セラミック体との接合信頼性、及びオーミックコンタクト性をより向上させることができる。
上記金属体の厚みは3〜210μmであることが好ましい(請求項7)。
上記金属体の厚みが3μm未満の場合には、上記金属体の強度が不十分になり、熱ストレスにより上記金属体にクラックが発生するおそれがある。一方、210μmを超える場合には、接合界面へのストレスが増大し、上記セラミック体にクラックが発生し易くなるおそれがある。より好ましくは、5μm以上がよく、200μm以下がよい。
次に、本発明の製造方法においては、上記拡散接合工程を行なうことにより、セラミック体と、該セラミック体の表面に接合された金属体との接合体を製造する。
上記拡散接合工程においては、金属を上記セラミック体の表面に配設した状態で加熱する。このとき、上記セラミック体としては、少なくともSiを含む化合物からなるもの採用し、その表面に配設する金属としては、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、熱膨張係数が11×10-6/℃以下のものを採用する。
これにより、上記セラミック体の表面に上記金属体を接合形成することができると共に、該金属体と上記セラミック体とが拡散接合し、接合界面にSiとCrと上記金属元素とを含有する拡散接合領域を形成させることができる。
上記セラミック体の表面への金属の配設は、例えば溶射、メッキ、転写シート、印刷、ディスペンサ、インクジェット、刷毛塗布、圧縮成形、蒸着、又は金属箔等により行なうことができる。これらの方法により、例えば膜状の金属を上記セラミック体の表面に形成することができる。
作業性及び均一な厚みでの配設という観点から、上記セラミック体の表面に配設する金属として、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とCrとを少なくとも含む合金粉末を採用し、該合金粉末のペーストを上記セラミック体の表面に塗布する方法を採用することが好ましい。塗布は、印刷、ディスペンサ、インクジェット等により行なうことができる。また、合金粉末のペーストを転写シートに印刷し、セラミック体の表面に配設させることもできる。
また、上記金属体の厚みは、上記セラミック体への金属の付着量を調整することにより制御することができる。付着量を増やすことにより、より厚みの大きな金属体を形成することができる。
上記拡散接合工程において、上記セラミック体の表面に配設する金属としては、上述のごとく、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とCrとを少なくとも含有し、かつ熱膨張係数(線膨張係数)が11×10-6/℃以下の金属を採用する。
金属の熱膨張係数が11×10-6/℃を超える場合には、上記金属体の線膨張係数が11×10-6/℃を超え、上記金属体と上記セラミック体との接合信頼性を確保することが困難になるおそれがある。上記セラミック体の表面に配設する金属の熱膨張係数は、例えばSiの拡散係数がCrよりも高い上記金属元素の種類及び配合割合を調整することにより制御できる。
また、上記セラミック体の表面に配設する上記金属としては、平均粒径D50が100μm以下の合金粉末を採用することが好ましい(請求項12)。
上記合金粉末の平均粒径D50が100μmを超える場合には、上記金属体の厚みが200μmを超えて大きくなり易く、先述した通り熱応力が増大し、クラックが発生するおそれがある。より好ましくは、上記合金粉末の平均粒径D50は50μm以下がよい。合金粉末を容易に製造できるという観点からは、上記合金粉末の平均粒径D50は1μm以上が好ましい。合金粉末の平均粒径(D50)は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
また、上記拡散接合工程における加熱は、例えば温度900〜1300℃で行なうことができる。
上記拡散接合領域の厚みは、加熱温度及び加熱時間を調整することにより制御することができる。具体的には、加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりすることにより、より拡散接合領域の厚みを大きくすることができる。
また、上記金属体の酸化を防止するという観点から、上記拡散接合工程における加熱は、真空中又は不活性ガス中で行なうことが好ましい(請求項13)。不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン等がある。
また、上記拡散接合工程においては、上記セラミック体の表面に配設した上記金属に圧力及び/又は電圧を加えながら加熱することが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記セラミック体の表面に配設した金属の焼結性を向上させることができると共に、拡散を促進させることができる。また、上記拡散接合工程における加熱温度を低下させることができる。そのため、セラミック体および金属体への加熱によるダメージを低減できるだけでなく、加熱時間も短縮できる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例及び比較例にかかる接合体について図1〜図4を用いて説明する。
本例の接合体1は、図1に示すごとく、セラミック体10と、その表面に接合する一対の金属体11とからなる。
セラミック体10は、少なくともSiを含む化合物から構成されている。本例においては、セラミック体10として、縦30mm×横30mm×高さ5mmの直方体形状(板状)の炭化珪素の焼結体を採用する。
また、実施例にかかる接合体1において、金属体11は、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、かつ熱膨張係数が11×10-6/℃以下である。そして、セラミック体10と金属体11との接合界面には、Siと、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを含有する拡散接合領域12が形成されている。本例において、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素としては、少なくともFeを含有し、拡散接合領域12には、Crシリサイド及びFeシリサイドが形成されている。
以下、接合体の製造方法につき、説明する。
本例の接合体の製造にあたっては、拡散接合工程を行なう。
即ち、図2に示すごとく、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、熱膨張係数が11×10-6/℃以下の金属110を、少なくともSiを含む化合物から構成されるセラミック体10の表面に配設した状態で加熱する。
本例においては、金属元素としては少なくともFeを採用し、セラミック体10の表面に配設する金属110としては、少なくともCrとFeとを含有する合金粉末を採用する。これにより、図1に示すごとく、セラミック体10の表面に金属体11を形成すると共に、この金属体11とセラミック体10との接合界面に、SiとCrとFeとを含有する拡散接合領域12を形成させる。
具体的には、図2に示すごとく、炭化珪素焼結体からなるセラミック体(縦30mm×横30mm×高さ5mm)10の高さ(厚み)方向の対向する一対の面に、Cr−Fe合金(Cr−40Fe合金)粉末ペースト111を約30μm程度の厚さで印刷した。Cr−Fe合金ペースト111は、平均粒径D50が5μmの合金粉末110を含有するものである。平均粒径D50はレーザ回折式粒度分布測定装置にて測定した。
次いで、温度400℃で脱脂した。その後、真空中で温度1200℃で60分間保持した。これにより、合金粉末110を焼結させ、図1に示すごとく、セラミック体10の表面に一対の金属体(厚み約30μm)11を形成すると共に、金属体11とセラミック体10との接合界面に、CrシリサイドとFeシリサイドとを含有する拡散接合領域12を形成させ、接合体1を得た。これを試料X1とする。
また、本例においては、金属粉末ペーストの金属種を変えてさらに7種類の接合体(試料X2〜試料X8)を作製した(表1参照)。
具体的には、試料X2は、セラミック体上にCr粉末ペーストを印刷形成して作製した接合体である。試料X2は、Cr粉末ペーストを用いた点を除いては上記試料X1と同様にして作製したものである。
試料X3は、セラミック体上にCr−Ti合金粉末ペーストを印刷形成して作製した接合体である。Cr−Ti合金ペーストにおいては、Cr−10Ti合金粉末を用いた。試料X3は、Cr−Ti合金粉末ペーストを用いた点を除いては上記試料X1と同様にして作製したものである。
試料X4は、セラミック体上にFe−Cr−Al合金粉末ペーストを印刷形成して作製した接合体である。Fe−Cr−Al合金ペーストにおいては、Fe−30Cr−5Al合金粉末を用いた。試料X4は、Fe−Cr−Al合金粉末ペーストを用いた点を除いては上記試料X1と同様にして作製したものである。
試料X5は、セラミック体上にFe−Ni−Cr合金粉末ペーストを印刷形成して作製した接合体である。Fe−Ni−Cr合金ペーストにおいては、Fe−20Ni−25Cr合金粉末を用いた。試料X5は、Fe−Ni−Cr合金粉末ペーストを用いた点を除いては上記試料X1と同様にして作製したものである。
試料X6は、セラミック体上にNi−Fe−Cr合金粉末ペーストを印刷形成して作製した接合体である。Ni−Fe−Cr合金ペーストにおいては、Ni−15.5Fe−8.5Cr合金粉末を用いた。試料X6は、Ni−Fe−Cr合金粉末ペーストを用いた点を除いては上記試料X1と同様にして作製したものである。
試料X7は、セラミック体上にW粉末ペーストを印刷形成して作製した接合体である。試料X7は、W粉末ペーストを用いた点を除いては上記試料X1と同様にして作製したものである。
また、試料X8は、セラミック体上にPt粉末ペーストを印刷形成して作製した接合体である。試料X8は、Pt粉末ペーストを用いた点を除いては上記試料X1と同様にして作製したものである。
後述の表1に、各試料の接合体における金属体の熱膨張係数を示す。熱膨張係数は、熱機械分析装置を用い、恒温保持測定方法(JIS Z2285)に基づいて測定した。
次に、上記試料X1〜X8の接合体について、以下のようにして接合信頼性、耐熱性、オーミックコンタクト性の評価を行なった。
「接合信頼性」
各試料(試料X1〜X8)を温度950℃で2分間保持し、次いで常温(約25℃)で2分間保持するという冷熱サイクルを1サイクルとし、この冷熱サイクルを1000サイクル繰り返し行なった(冷熱サイクル試験)。次いで、金属体の剥離や、金属体及びセラミック体におけるクラックの発生を拡大顕微鏡(外観)および金属顕微鏡(断面)目視にて観察した。
剥離及びクラックが認められなかったものを「○」として評価し、大きな剥離又はクラックが認められたものを「×」として評価し、剥離又はクラックが認められるがその程度が小さいものを「△」として評価した。その結果を表1に示す。
「耐熱性」
各試料(試料X1〜X8)を温度950℃の高温炉に500時間放置した(高温放置試験)。その後、金属体及び拡散接合領域における溶融や酸化の有無を金属顕微鏡による断面観察により調べた。そして、高温炉での加熱後に加熱前に比べて酸化及び溶融等の変化が認められなかったものを「○」として評価し、大きな溶融や酸化が認められたものを「×」として評価し、溶融又は酸化が認められるがその程度が小さいものを「△」として評価した。その結果を表1に示す。
「オーミックコンタクト性」
上記接合信頼性の試験及び耐熱性の試験を行なった後の各試料と、これらの試験を行なう前の各試料について、接合体の抵抗を測定した。そして、試験前後における接合体の抵抗変化率が5%以下のものを「○」として評価し、100%以上のものを「×」として評価し、5%を超えかつ100%未満のものを「△」として評価した。その結果を表1に示す。なお、評価対象となる抵抗変化率は、接合信頼性の試験(冷熱サイクル試験)と、耐熱性の試験(高温放置試験)のうち変化率が大きいものを対象とした。
表1より知られるごとく、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素であるFeとを含有し、かつ熱膨張係数が11×10-6/℃以下の金属体、即ちCr−Fe合金からなる金属体をセラミック体に接合形成した試料X1は、接合信頼性、耐熱性、及びオーミックコンタクト性のいずれの特性にも優れていた。
ところで、図3は、本例の評価結果を基にセラミック体に接合させる金属、及び拡散接合領域として形成される金属シリサイドの耐熱温度及び熱膨張係数をまとめたグラフである。また、図4に、代表的な金属元素のSiの拡散係数を示す。
金属体としてCrを採用した試料X2においては、熱膨張係数がセラミック体の熱膨張係数(4.5×10-6/℃)に近く熱応力を低減できると考えられるが、冷熱サイクル試験にて剥離が認められた。これは、図3に示す通り拡散接合領域として形成されたCrシリサイドの熱膨張係数が大きいためであり、適切な拡散接合領域を形成しなければ接合信頼性を満足できないということである。その結果、抵抗値が大きく変化しており、オーミックコンタクト性を満足することができない。
これに対し、Cr−Fe合金を採用した上述の試料X1は、表1に示すように接合信頼性、耐熱性、及びオーミックコンタクト性の全てが優れている。これは、図3に示す通り、Crに、CrよりもSiの拡散係数の小さいFeを添加し、拡散接合領域にCrシリサイドだけでなく低熱膨張であるFeシリサイドを形成させることにより、拡散接合領域の熱膨張係数を小さくできるためである。これにより金属体の剥離を防止することができ、さらに、冷熱サイクル試験においてもオーミックコンタクト性を十分に確保することができる。
確実に適切な拡散接合領域を形成するためのポイントは、上述のごとくSiの拡散係数がCrよりも高い元素を添加することである。図4に示すごとく、FeはSiの拡散係数がCrよりも高い。そのため、Cr−Fe合金を金属体材料とした場合、確実にFeシリサイドを形成することができる。一方、Siの拡散係数がCrよりも低い元素であるTiを添加した場合、拡散接合領域の大半がCrシリサイドで形成されてしまい、適切な拡散接合領域が得られない。実際、表1から知られるごとく、Cr−Ti合金を用いた試料X3においては、接合信頼性を十分に確保できないことがわかる。
また、表1より知られるごとく、Fe−Cr−Al合金を採用した試料X4については、試料X1と同様に、接合信頼性、耐熱性、及びオーミックコンタクト性の全てにおいて優れている。但し金属体の熱膨張係数を考えるとCr−Fe合金のほうがより好ましいと言える。
Fe−Ni−Cr合金を採用した試料X5、及びNi−Fe−Cr合金を採用した試料X6においては、金属体自体の熱膨張係数が大きいため、接合信頼性を満足することができない。試料X5及び試料X6においては、Siの拡散係数がCrよりも高いFe及びNiを含有する合金を採用しているため、拡散接合領域にはFeシリサイド及びNiシリサイドが形成される。しかし、図3に示すようにNiシリサイドは耐熱温度が低いため、耐熱性を満足することができない。
Wを採用した試料X7については、熱膨張係数がセラミック体の熱膨張係数とほぼ一致しているため、熱応力が極めて小さく接合信頼性は満足できる。しかしながら、図3に示すように、W自体の耐熱温度が低いため、金属体が大きく酸化してしまい耐熱性を満足することができず、抵抗値が大きく変化した。
Ptを採用した試料X8についても、熱膨張係数は比較的セラミック体の熱膨張係数に近いため、熱応力が小さく接合信頼性は満足できる。しかしながら、図3に示すように、Pt自体の耐熱温度は高いものの、拡散接合領域として形成されるPtシリサイドの耐熱温度が低いため、耐熱性を満足できなかった。
このように、本例によれば、本発明の接合体(試料X1)においては、高温環境下において、耐熱性及び接合信頼性を確保することができると共に、オーミックコンタクト性の確保が可能になることがわかる。
(実施例2)
本例においては、セラミック体の表面にCrとFeの配合比が異なる金属体を形成したときの、接合体の特性の変化を検討する。本例においては、後述の表2に示すごとく、表CrとFeの配合比が異なる合金粉末を用いて7種類の接合体(試料X9〜X15)を作製した。
具体的には、試料X9は、セラミック体上にCr−5Fe合金粉末のペーストを印刷形成して作製した接合体である。試料X9は、Cr−5Fe合金粉末のペーストを用いた点を除いては実施例1の上記試料X1と同様にして作製したものである。
試料X10は、セラミック体上にCr−10Fe合金粉末のペーストを印刷形成して作製した接合体である。試料X10は、Cr−10Fe合金粉末のペーストを用いた点を除いては実施例1の上記試料X1と同様にして作製したものである。
また、試料X11は、セラミック体上にCr−25Fe合金粉末のペーストを印刷形成して作製した接合体である。試料X11は、Cr−25Fe合金粉末のペーストを用いた点を除いては実施例1の上記試料X1と同様にして作製したものである。
また、試料X12は、セラミック体上にCr−40Fe合金粉末のペーストを印刷形成して作製した接合体である。即ち、試料X12は、実施例1の上記試料X1と同様にして作製したものである。
また、試料X13は、セラミック体上にCr−55Fe合金粉末のペーストを印刷形成して作製した接合体である。試料X13は、Cr−55Fe合金粉末のペーストを用いた点を除いては実施例1の上記試料X1と同様にして作製したものである。
また、試料X14は、セラミック体上にCr−70Fe合金粉末のペーストを印刷形成して作製した接合体である。試料X14は、Cr−70Fe合金粉末のペーストを用いた点を除いては実施例1の上記試料X1と同様にして作製したものである。
また、試料X15は、セラミック体上にCr−85Fe合金粉末のペーストを印刷形成して作製した接合体である。試料X15は、Cr−85Fe合金粉末のペーストを用いた点を除いては実施例1の上記試料X1と同様にして作製したものである。
これらの各試料(試料X9〜試料X15)について、実施例1と同様に、金属体の熱膨張係数を測定し、さらに接合信頼性、耐熱性、及びオーミックコンタクト性の評価を行なった。その結果を表2に示す。
表2より知られるごとく、金属体にFeを10〜70質量%含有するCr−Fe合金を採用した試料X10〜X14においては、全ての評価項目を満足することがわかる。これに対し、Cr−5Fe合金を採用した試料X9は、接合信頼性を満足することができないことがわかる。これはFeの含有量が10wt%よりも小さいと拡散接合領域の大半がCrシリサイドで形成されてしまい、接合信頼性を確保するために適切な拡散接合領域が得られないためである。
また、Cr−85Feを採用した試料X15においては、耐熱性が不十分である。これはFeの含有量が70wt%よりも大きい場合は、セラミック体の表面に形成された金属体自体が酸化してしまうためである。
また、Cr−85Feを採用した試料X15においては、冷熱サイクル試験にてわずかに剥離が認められ、接合信頼性を満足することができなかった。これは、金属体自体の熱膨張係数が大きく、熱応力を十分に抑制できないためである。一方、Cr−70Feを採用した試料X14においては接合信頼性を満足していることから、線膨張係数が11×10-6/℃以下であれば熱応力を十分に抑制でき、接合信頼性を満足できると言える。
また、本例においては、Cr−40Fe合金にAlを配合したときの耐酸化性向上効果を酸化増量率を測定することにより検討した。酸化増量率は、高温放置試験(1050℃の高温炉に500h放置)前後の各試料の重量を測定し、酸化増量率=(試験後の重量−試験前の重量)/試験前の重量という式に基づいて算出した。その結果を図5に示す。
図5より知られるごとく、Alを0.5質量%以上添加すれば酸化増量を抑制でき、金属体の耐熱性を向上できることがわかる。また、Al配合量を7質量%より多くしても効果は変わらず加工性が悪化する傾向にあるため、Al配合量は7質量%以下が好ましい。図5においては、Cr−40Fe合金の例を示しているが、Feの配合割合が10質量%(Cr−10Fe合金)から70質量%(Cr−70Fe合金)の範囲において同様の結果であることを確認している。なお、Alを添加しても、耐熱性だけでなく接合信頼性、及びオーミックコンタクト性も十分に満足できる。
(実施例3)
本例においては、金属体の厚み及び拡散接合領域の厚みの異なる8種類の接合体(試料X16〜X23)を作製し、その特性の変化を検討する。
具体的には、金属体の厚み及び拡散接合領域の厚みが後述の表3に示す値となるように合金粉末ペーストの塗布量及び加熱時間を変更し、実施例1と同様にして試料X16〜X23の接合体を作製した。各試料(試料X16〜X23)は、金属体の厚み及び拡散接合領域の厚みを変更した点を除いては実施例1の試料X1と同様にして作製した接合体である。
金属体の厚み及び拡散接合領域の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により求めることができる。
各試料について、実施例1と同様にして、接合信頼性、耐熱性、及びオーミックコンタクト性の評価を行なった。
その結果を表3に示す。
表3より知られるごとく、金属体の厚みを1〜2μm、拡散接合領域の厚みを1〜2μmとした試料X16においては、接合信頼性が不十分であった。これは、金属体の厚みが小さすぎて、金属体自体の強度が不足してしまい、熱ストレスにより金属体自体にクラックが発生してしまったからである。また耐熱性も十分に満足することができないが、これは金属体の厚みが小さすぎて、金属体表面からの酸化がセラミック体まで進行してしまったためである。その結果、抵抗値が大幅に上昇し、オーミックコンタクト性を確保できなくなる。
一方、金属体の厚みを210μmを超えて大きくした試料X23においては、耐熱性は満足できるものの接合信頼性は十分に満足できない。これは、接合界面へのストレスが増大し、セラミック体にクラックが発生したためである。
これに対し、金属体及び拡散接合領域の厚みを3〜210μmにした試料X17〜X22においては、冷熱サイクル試験及び高温放置試験後であっても剥離・クラック、酸化等の問題がなくオーミックコンタクト性を満足していた。
(実施例4)
次に、SiCからなるセラミック体とその表面に接合されたCr−40Feからなる金属体との接合体を電気加熱式触媒コンバータとして用いる例について説明する。
図6〜図9に示すごとく、電気加熱式触媒コンバータとしての接合体2は、円柱形状のハニカム構造体からなるセラミック体20の側面に、金属電極としての一対の金属体21が対向するように配設されている。
図6に示すごとく、本例において、接合体2は、排ガス管に連結される筒状のケース35内に挿入され、金属電極としての一対の金属体21にリード線31をそれぞれ接続し、電源30から一対の金属体21に電圧を印加して用いられる。電気加熱式触媒コンバータ用の接合体2においては、電圧の印加により、セラミック体20を発熱させることでセラミック体20に担持された触媒の浄化性能を向上させ、排気ガスを浄化することができる。
図7〜図9に示すごとく、セラミック体20は、四角格子状に配された多孔質の隔壁201と、隔壁201に囲まれて軸方向伸びる多数のセル202と、外周側面を覆う筒状の外周壁200とを有するハニカム構造体である。セラミック体20は多孔質体であり、その気孔率は40%である。セラミック体20の隔壁201には、排ガスの浄化性能を有するPt、Pd、及びRh等からなる三元触媒を担持させることができる。
本例において。セラミック体20は、直径φ93mm、軸方向の長さ100mmの円柱形状である。また、セラミック体20においては、厚み400μmの外周壁200内において厚み100μmの隔壁201が四角格子状に配されており、セル202のピッチ幅は1mmである。
また、セラミック体20の外周壁200には、セラミック体20を挟んで対向する一対の金属体21が金属電極として接合形成されている。セラミック体20は、炭化珪素(SiC)からなり、金属体21はCr−40Feからなる。図10に示すごとく、セラミック体20と金属体21との接合界面には、拡散接合領域22が形成されている。拡散接合領域22は、金属体のCr及びFeと、セラミック体のSiとが相互に拡散してなり、拡散接合領域22においてはCrシリサイド及びFeシリサイドが形成されている。
本例の接合体は、以下のようにして作製する。
即ち、まず、セラミック体20として、気孔率40%のハニカム構造体を準備した。
次いで、セラミック体20における多孔質の外周壁200にCr−40合金粉末を溶射して配設した。次いで、温度1200℃で60分間加熱した。これにより、セラミック体20の外周壁200に一対の金属体21を接合形成する共に、Crシリサイド及びFeシリサイドからなる拡散接合領域22を形成し、電気加熱式触媒コンバータ用の接合体2を得た(図7〜図10参照)。
次に、本例において作製した接合体2について、その金属体21とセラミック体20との接合界面の状態を調べた。具体的には、接合界面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、その結果を図11(a)に示す。また、Si、Cr、Feについてエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を行い、Siについての結果を図11(b)に、Crについての結果を図11(c)に、Feについての結果を図11(d)にそれぞれ示す。
図11(a)に示すごとく、接合体の接合界面には、拡散接合領域が形成されており、金属体とセラミック体とが拡散接合されていることがわかる。
また、図11(b)〜(d)に示すごとく、金属体とセラミック体との接合界面、即ち拡散接合領域においては、セラミック体成分であるSiと金属体成分であるCr及びFeとが相互に拡散して、Crシリサイド及びFeシリサイドからなる金属シリサイドが形成されていることがわかる。
ここで拡散接合領域は、Cr及びFeとSiとが拡散している領域のことであり、本例においては金属体からセラミック体の広範囲にわたって拡散接合領域が形成されていることがわかる(図11参照)。これは、本例においては、通常の緻密体と比較して気孔率が高い炭化珪素焼結体を用いているため、金属体成分が気孔に入り込むとともに拡散しているからである。これにより優れた接合信頼性を満足でき、耐久後であってもオーミックコンタクト性を確保できる。
電気加熱式触媒コンバータ用の接合体2においては、浄化性能を安定化するため、ハニカム構造体からなるセラミック体20を均一に加熱する必要がある(図6参照)。すなわち、オーミックコンタクト性を確保し、金属電極としての金属体21及び拡散接合領域22での異常発熱を防止しなければならない。そのため金属体21および拡散接合領域22の抵抗が極めて小さく且つ変化がないことが重要であり、排気管内の極めて厳しい環境下でもオーミックコンタクト性を満足できる本発明の接合体が好適である
1 接合体
10 セラミック体
11 金属体
12 拡散接合領域

Claims (14)

  1. 少なくともSiを含む化合物からなるセラミック体と、該セラミック体の表面に接合された金属体との接合体であって、
    上記金属体は、Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、かつ熱膨張係数が11×10-6/℃以下であり、
    上記セラミック体と上記金属体との接合界面には、SiとCrと上記金属元素とを含有する拡散接合領域が形成されていることを特徴とする接合体。
  2. 請求項1に記載の接合体において、上記拡散接合領域はCrシリサイドと上記金属元素のシリサイドとを含有することを特徴とする接合体。
  3. 請求項1又は2に記載の接合体において、上記金属体は、少なくともCrとFeからなる合金によって構成されていることを特徴とする接合体。
  4. 請求項3に記載の接合体において、上記合金は、Crを30〜90質量%、及びFeを10〜70質量%含有することを特徴とする接合体。
  5. 請求項3又は4に記載の接合体において、上記合金は、Alを0.5〜7質量%含有することを特徴とする接合体。
  6. 請求項3〜5のいずれか一項に記載の接合体において、上記拡散接合領域は、少なくともCrシリサイド及びFeシリサイドを含むことを特徴とする接合体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の接合体において、上記金属体の厚みは3〜210μmであることを特徴とする接合体。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の接合体において、上記セラミック体は、熱膨張係数が7×10-6/℃以下の低熱膨張セラミックスからなることを特徴とする接合体。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の接合体において、上記セラミック体は、格子状に配された多孔質の隔壁と、該隔壁に囲まれて軸方向に形成された複数のセルとを有するハニカム構造体であることを特徴とする接合体。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の接合体は、上記セラミック体の表面に接合された一対の上記金属体を金属電極として有することを特徴とする接合体。
  11. 少なくともSiを含む化合物からなるセラミック体と、該セラミック体の表面に接合された金属体との接合体の製造方法において、
    Crと、Siの拡散係数がCrよりも高い金属元素とを少なくとも含有し、熱膨張係数が11×10-6/℃以下の金属を上記セラミック体の表面に配設した状態で加熱することにより、上記セラミック体の表面に上記金属体を接合形成すると共に、該金属体と上記セラミック体との接合界面に、SiとCrと上記金属の元素とを含有する拡散接合領域を形成させる拡散接合工程を有することを特徴とする接合体の製造方法。
  12. 請求項11に記載の製造方法において、上記セラミック体の表面に配設する上記金属としては、平均粒径D50が100μm以下の合金粉末を採用することを特徴とする接合体の製造方法。
  13. 請求項11又は10に記載の製造方法において、上記拡散接合工程における加熱は、真空中又は不活性ガス中で行なうことを特徴とする接合体の製造方法。
  14. 請求項11〜13のいずれか一項に記載の製造方法において、上記拡散接合工程においては、上記セラミック体の表面に配設した上記金属に圧力及び/又は電圧を加えながら加熱することを特徴とする接合体の製造方法。
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