JP2011229544A - コリネ型細菌形質転換体による高効率な有機化合物の製造方法 - Google Patents

コリネ型細菌形質転換体による高効率な有機化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乳酸、コハク酸、エタノール等の有用な有機化合物を工業技術的に高効率かつ高生産性で製造できる方法を提供すること。
【解決手段】発現可能な制御配列下に、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするDNA配列により形質転換された好気性コリネ型細菌を用いて、還元条件下の反応液中に糖類の代謝速度を向上させて有機化合物を蓄積し、該反応液より有機化合物を回収することを特徴とする有機化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、バイオリファイナリープロセスを実施する為の能力が強化された微生物による有機化合物の高生産性製造方法に関する。さらに詳しくは、バイオマス由来の糖類を原料としてグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(以下、GAPDHと略記する)活性が強化されたコリネ型細菌形質転換体を用いて、糖類の代謝速度を向上させることによる高効率な有機化合物の製造方法に関するものである。
乳酸やコハク酸そしてエタノール等の化学製品やエネルギー製品をバイオマス由来の糖類を原料として生物的方法により製造することは(バイオリファイナリー)、化石資源からこれら有機化合物の製造を行う(石油リファイナリー)と異なり、資源枯渇問題や地球温暖化問題を解消し、環境調和型製造技術として期待されているものである。
しかし、生物的方法による各種有機化合物の製造は、一般的に、その生産性が石油化学プロセスに比し低いと云われている。
生物的方法による生産性向上法の一つは、糖類の各種有機化合物への代謝速度を向上させ、バイオ反応溶液中の有機化合物の蓄積濃度を高める(目的有機化合物の分離・精製が高効率に実施できる)ことである。
本発明者らは、既に、高生産性の生物的方法に関するいくつかの技術を提案している(特許文献1,2,3参照)。特許文献4は、解糖系酵素の一つであるGAPDH活性が強化された大腸菌により、好気条件下、培養液中にグルコースからの代謝産物であるピルビン酸を高蓄積する技術を開示している。
GAPDHは解糖経路の一つであるグリセルアルデヒド3−リン酸から1,3−ビスホスホグリセリン酸への変換を触媒する酵素である(図4参照)。この代謝経路には補酵素が必要であり、この代謝経路反応において、補酵素のニコチンアミドジヌクレオチド(NAD)は還元型ニコチンアミドジヌクレオチド(NADH)に還元される。
また、このレドックス補酵素対の一方の生成NADHは、GAPDH活性の阻害因子となることも知られている(非特許文献1および2参照)。代謝経路反応の促進には、このような反応阻害を生じせしめる因子の除去措置を施すことが必要である。
非特許文献3および4は、好気的条件(酸化的条件)と嫌気的条件(還元的条件)では微生物細胞内のNADH/NAD存在量比が異なり、好気的条件ではNADH/NAD比が低い状態で平衡を保つことを教えている。
特許文献4が好気的条件でのピルビン酸製造技術を開示しているのは、好気的条件ではNADHの存在量がNADのそれと比較して低い為、NADHによるGAPDH阻害効果が解消される結果、グルコースからピルビン酸への炭素質の流れがスムースに行われる為と考えられる。
ところが、生物的方法による乳酸、コハク酸、エタノール等の有機化合物の製造は生成物収率の選択性や反応制御の容易性そして反応プロセスの省エネルギー等の観点より嫌気的条件(還元的条件)で実施することが望ましい。嫌気的条件においても代謝経路中の炭素質の流れを阻害することなく(NADHによるGAPDH活性阻害の解消等)、そして、生成する有機化合物の反応液中の濃度を高めることの出来る技術が要望されている。
なお、特許文献5は酵母等の真核性微生物の(ニコチンアミドジヌクレオチドホスフェート/還元型ニコチンアミドジヌクレオチドホスフェート)(NADP/NADPH)レドックス補酵素対に関連するGAPDH形質転換体に関する技術を開示しているが、本発明の(NAD/NADH)レドックス補酵素対に関連するGAPDHとは酵素特性が大きく異なる酵素蛋白であり、本発明の原核微生物であるコリネ型細菌の形質転換技術に関するものではない。
WO2005/010182号公報 特願2005−010928 特願2005−148053 特開2004−283050号公報 特表2005−507255号公報
C.GARRIGUES、J.Bacteriology,Vol.179,No.17,5282−5287(1997) H.Dominguez,Eur.J.Biochem.254,96−102(1998) M.R.Graef,J.Bacteriology,Vol.181,No.8,2351−2357(1999) C.Du,Appl.Microbiol.Biotechnol.,69:554−563(2006)
本発明は、乳酸、コハク酸、エタノール等の有用な有機化合物を工業技術的に高効率かつ高生産性で実施できる還元条件下での製造方法を提供することを目的とする。
本発明の方法に従えば、糖類の代謝産物である有機化合物への炭素質の変換速度を向上させると同時に変換反応経時低下を防止でき、バイオ反応液中の有機化合物の蓄積濃度を向上させることが出来る。
本発明の目的とする還元条件下での糖類からの有用な有機化合物の製造方法は、前述した如く、公知技術からは還元条件下での主要代謝経路におけるNADHによるGAPDH阻害効果の解消は困難であるため、高効率に実施することが難しいと予測されたが、鋭意検討した結果、思いがけないことに、GAPDH活性の発現を強化せしめる微生物を特定することにより本発明の目的が達成されることを見出した。
すなわち、本発明は次の通りである。
(1)発現可能な制御配列下に、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするDNA配列により形質転換された好気性コリネ型細菌を用いて、還元条件下の反応液中に糖類の代謝速度を向上させて有機化合物を蓄積し、該反応液より有機化合物を回収することを特徴とする有機化合物の製造方法。
(2)形質転換される好気性コリネ型細菌が、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウ属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリウム属菌およびマイクロコッカス属菌の群から選択されるいずれかの菌であることを特徴とする前記(1)記載の有機化合物の製造方法。
(3)コリネバクテリウム属菌が、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R FERM P−18976、ATCC13032、ATCC13058、ATCC13059、ATCC13060、ATCC13232、ATCC13286、ATCC13287、ATCC13655、ATCC13745、ATCC13746、ATCC13761、ATCC14020またはATCC31831、および、コリネバクテリウム エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)NBRC 100395から選択されるいずれかの菌であることを特徴とする前記(2)記載の有機化合物の製造方法。
(4)ブレビバクテリウム属菌が、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869、ブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum)MJ−233(FERM BP−1497)もしくはMJ−233AB−41(FERM BP−1498)、またはブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)ATCC6872から選択されるいずれかの菌であることを特徴とする前記(2)記載の有機化合物の製造方法。
(5)グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするDNA配列が、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)FERM P−18976、アクチノマイセス ユーロッパエウス(Actinomyces europaeus)ATCC 700353またはエシェリキア コリ(Escherichia coli)ATCC 27325由来のものであることを特徴とする前記(1)記載の有機化合物の製造方法。
(6)形質転換された好気性コリネ型細菌が、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/R−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20875)である前記(1)記載の有機化合物の製造方法。
(7)形質転換された好気性コリネ型細菌が、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R △PEPC/R−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20878)である前記(1)記載の有機化合物の製造方法。
(8)形質転換された好気性コリネ型細菌が、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R △PEPC/Actino−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20877)である前記(1)記載の有機化合物の製造方法。
(9)還元条件下の反応液の酸化還元電位が−200ミリボルト乃至−500ミリボルトであることを特徴とする前記(1)記載の有機化合物の製造方法。
(10)有機化合物がモノカルボン酸、ジカルボン酸、ケトカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、モノアルコール、ポリオールおよびビタミンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)記載の有機化合物の製造方法。
(11)コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/R−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20875)。
(12)コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R △PEPC/R−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20878)。
(13)コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R △PEPC/Actino−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20877)。
なお、本願明細書及び特許請求の範囲で使用される△PEPCは、
を示す。
本発明により、糖類の代謝変換消費速度を向上させて高生産性かつ高効率に有用な有機化合物を製造することが可能となり、生物的有機化合物生産技術の生産性の低さが克服され、バイオリファイナリー構築を可能とする。
図1は、プラスミドpCRB200構築法を示す。 図2は、プラスミドpCRA820構築法を示す。 図3は、PEPC遺伝子破壊用プラスミドpCRA703構築法を示す。 図4は、グルコースからの物質生産代謝経路を示す。 図5は、コリネバクテリウム グルタミカムR及びコリネバクテリウム グルタミカムR/R−nGAP株の24時間後及び48時間後における(A)グルコース消費速度(g/l/h)と(B)乳酸生成速度(g/l/h)を示す。 図6は、コリネバクテリウム グルタミカムR/△PEPC、コリネバクテリウム グルタミカムR/△PEPC/R−nGAP、及びコリネバクテリウム グルタミカムR/△PEPC/Actino−nGAP、株の24時間後及び48時間後における(A)グルコース消費速度(g/l/h)と(B)乳酸生成速度(g/l/h)を示す。
本発明で形質転換される好気性コリネ型細菌は、糖類の代謝変換機能を有していれば特に限定されない。糖類の種類や目的有機化合物の種類に因っては、好気性コリネ型細菌が本来有していない糖類の取り込み、代謝経路あるいは目的有機化合物への変換経路等の新たな機能の導入を必要とする場合があるが、そのような場合には組換え技術や突然変異誘発処理等によりそれらの機能を付与すればよい。
このような好気性コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウ属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリウム属菌およびマイクロコッカス属菌等が挙げられる。
さらに具体的には、コリネバクテリウム属菌としては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R FERM P−18976、ATCC13032、ATCC13058、ATCC13059、ATCC13060、ATCC13232、ATCC13286、ATCC13287、ATCC13655、ATCC13745、ATCC13746、ATCC13761、ATCC14020またはATCC31831、および、コリネバクテリウム エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)NBRC 100395等が挙げられる。
ブレビバクテリウム属菌としては、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869、ブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum)MJ−233(FERM BP−1497)もしくはMJ−233AB−41(FERM BP−1498)、またはブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)ATCC6872等が挙げられる。
アースロバクター属菌としては、アースロバクター グロビフォルミス(Arthrobacter Globiformis)ATCC8010,ATCC4336,ATCC21056,ATCC31250,ATCC31738またはATCC35698等が挙げられる。
マイコバクテリウム属菌としては、マイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium bovis)ATCC19210またはATCC27289等が挙げられる。
マイクロコッカス属菌としては、マイクロコッカス フロイデンライヒ(Micrococcus freudenreichii)No.239(FERM P−13221),マイクロコッカス ルテウス(Micrococcus leuteus)No.240(FERM P−13222)またはマイクロコッカス ウレアエ(Micrococcus ureae)IAM1010等が挙げられる。
本発明で用いられる好気性コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R FERM P−18976、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13032またはブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869等が好ましい。
また、本発明で形質転換される好気性コリネ型細菌としては、自然界に存在する野生株の変異株(例えば、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)Rのセロビオース資化能を獲得した変異株FERM P−18977,FERM P−18978株など;特開平2004−89029号公報参照)であってもよく、本発明の構成遺伝子以外の遺伝子が組換えられた人為株(例えば、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13032がエタノール生成能力を有すべく形質転換された人為株(FERM BP−7621;WO 01/96573 A1号公報参照)やコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株のホスホトランスフェラーゼ系酵素IIに関する遺伝子組換えにより、グルコースとセロビオースの同時併行資化能を発現すべく形質転換された人為株(FERM P−18979;特開平2004−89029号公報参照)であっても良い。
これら上記の好気性コリネ型細菌が本発明の目的の為、下記に詳記するGAPDH高発現の形質転換処理に供せられる。あるいは、GADPH高発現処理と上記の変異株や人為株を創製する順序が逆であったり、同時であっても良い。
本発明で使用されるGAPDH遺伝子を含むDNA断片は、本発明の好気性コリネ型細菌自身の有するものであっても外来(異種)由来のものであっても良い。
GAPDHの遺伝子配列や酵素蛋白特性については、動物、植物、微生物において多く調べられている。微生物については、下記に示す種などが有するGAPDHの遺伝子配列や酵素蛋白特性が既に明らかにされている。
・エシェリキア コリ(Escherichia coli)(D’Alessio,G.,and Josse J.;Glyceraldehyde phosphate dehydrogenase,phosphoglycerate kinase,and phosphoglyceromutase of Escherichia coli.Simultaneous purification and physical properties,J Biol Chem.,246(1971),4319−25)
・コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)(Eikmanns,B.J.;Identification,sequence analysis,and expression of a Corynebacterium glutamicum gene cluster encoding the three glycolytic enzymes glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase,3−phosphoglycerate kinase,and triosephosphate isomerase,J Bacteriol.,174(1992),6076−86)
・ストレプトマイセス アレナ(Streptomyces arenae)(Maurer,K.H.,Pfeiffer F.,Zehender H.,and Mecke D.;Characterization of two glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase isoenzymes from the pentalenolactone producer Streptomyces arenae,J Bacteriol.,153(1983),930−6)
・アスペルギルス ニドゥラン(Aspergillus nidulan)(Punt,P.J.,Dingemanse M.A.,Jacobs−Meijsing B.J.,Pouwels P.H.,and van den Hondel C.A.;Isolation and characterization of the glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase gene of Aspergillus nidulans,Gene.,69(1988),49−57)
・シネココッカス スピーシーズ(Synechococcus sp)(Sand,O.,Petersen I.M.,Jorgen J.,and Iversen L.;Purification and some properties of glyceraldehyde 3−phosphate dehydrogenase from Synechococcus sp,Antonie Van Leeuwenhoek.,65(1994),133−42)
・バチルス セレウス(Bacillus cereus)(Suzuki,K.,and Imahori K.;Isolation and some properties of glyceraldehyde 3−phosphate dehydrogenase from vegetative cells of Bacillus cereus,J Biochem(Tokyo).73(1973),97−106)
・バチルス サブティリス(Bacillus subtilis)(Viaene,A.,and Dhaese P.;Sequence of the glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase gene from Bacillus subtilis,Nucleic Acids Res.,17(1989),1251)
GAPDH遺伝子を含むDNA断片の塩基配列が既知であれば、その配列に従って合成したDNA断片も使用することが出来る。DNA配列が不明の場合であっても、GAPDH活性を指標にして酵素蛋白質を精製し、そのN末端アミノ酸配列、部分分解配列により、通常のハイブリダイゼーションの手法によりDNA断片を単離できる。また、GAPDH酵素蛋白質間で保存されているアミノ酸配列をもとにハイブリダイゼーション、PCR法により断片を取得することが可能である。さらに他の既知のGAPDH遺伝子配列を基に設計したミックスプライマーを用い、ディジェネレートPCRによって断片を取得することが可能である。
本発明のGAPDH遺伝子はGAPDH活性が保持されている限り、塩基配列の一部が他の塩基と置換していてもよく、削除されていてもよく、また新たに塩基が挿入されていてもよく、さらには塩基配列の一部が転位されていても良い。これら誘導体のいずれも本発明に用いることができる。上記の一部とは、例えばアミノ酸残基換算で、1乃至数個であってよい。
本発明のGAPDH遺伝子を含むDNA断片は前述の好気性コリネ型細菌へ、プラスミドベクターを用いて、GAPDH遺伝子が発現可能な制御配列下に導入される。ここで「制御配列下」とはGAPDH遺伝子が、例えば、プロモーター、インヂューサー、オペレーター、リボソーム結合部位および転写ターミネーター等との共同作業により自律複製できることを意味する。このような目的で使用されるプラスミドベクターとしては、好気性コリネ型細菌内で自律複製機能を司る遺伝子を含むものであれば良い。その具体例としては、例えば、pAM330(Agric.Biol.Chem.,vol.48,2901−2903(1984)およびNucleic Acids Symp Ser.,vol.16,265−267(1985))(Brevibacterium lactofermentum 2256由来)、pHM1519(Agric.Biol.Chem.,vol.48、2901−2903(1984))(Corynebacterium glutamicum ATCC13058由来)、pCRY30(App1.Environ.Microbiol.,vol.57,759−764(1991))、pEK0,pEC5,pEKEx1(Gene,vol.102,93−98(1991))そしてpCG4(J.Bacteriol.,vol.159,306−311(1984))(Corynebacterium gluatmicum T250由来)等が挙げられる。
本発明のコリネ型細菌形質転換体創製に使用されるプラスミドの構築は、例えば、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株由来のGAPDH遺伝子を用いる場合では完全なGAPDH遺伝子を含む遺伝子断片〔コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株の全ゲノム解析結果(野中 寛、中田 かおり、岡井 直子、和田 真利子、佐藤 由美子、Kos Peter、乾 将行、湯川 英明「Corynebacterium glutamicum R ゲノム解析」日本農芸化学会、2003年4月、横浜、日本農芸化学会2003年度大会講演要旨集、p.20参照)を基にPCRで増幅可能(詳細は、実施例に記載)〕を、適当なプロモーター、ターミネーター等の制御配列を連結後、上記例示されているいずれかのプラスミドベクターの適当な制限酵素部位に挿入し、構築することが出来る。
上記組換えプラスミドにおいて、GAPDH遺伝子を発現させるためのプロモーターとしては、好気性コリネ型細菌が元来保有するプロモーター等が挙げられるが、それに限られるものではなく、GAPDH遺伝子の転写を開始させる機能を有する塩基配列であればいかなるものであってもよい。また、GAPDH遺伝子の下流に配置される制御配列下のターミネーターについても、好気性コリネ型細菌が元来保有するターミネーター等が挙げられるが、それらに限定されるものではなく、例えば大腸菌由来のトリプトファンオペロンのターミネーター等のGAPDH遺伝子の転写を終了させる機能を有する塩基配列であれば、いかなるものであってもよい。
GAPDH遺伝子を含むプラスミドベクターの好気性コリネ型細菌への導入方法としては、電気パルス法(エレクトロポレーション法)やCaC1法等好気性コリネ型細菌へのGAPDH遺伝子導入が可能な方法であれば特に限定されるものではない。その具体例として、例えば電気パルス法としては、公知の方法(Agric.Biol.Chem.,vol.54,443−447(1990)、Res.Microbiol.,vol.144,181−185(1993))を用いることができる。
本発明のコリネ型細菌形質転換創製体の取得方法としては、常法に従い、GAPDH遺伝子を含むプラスミドベクターに薬剤耐性遺伝子等を組み入れて、適切な濃度の当該薬剤を含むプレート培地上にGAPDH遺伝子導入処理を行った本発明のコリネ型細菌を塗布することにより形質転換されたコリネ型細菌を選抜することができる。その方法の具体例としては、例えば、Agric.Biol.Chem.,vol.54,443−447(1990)、Res.Microbiol.vol.144,181−185(1993)に記載の方法等を挙げることができる。
上記の方法により創製される好気性コリネ型細菌の形質転換体の例としては、具体的には、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/R−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20875)、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R △PEPC/R−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20878)、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R △PEPC/Actino−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20877)などが挙げられる。
かくして創製された本発明の好気性コリネ型細菌は特定の還元条件下にある反応液中で、糖類を原料として(TCA経路に存在するポリカルボン酸を製造する場合は、炭酸イオン等も原料として)、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ケトカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、モノアルコール、ポリオールおよびビタミン等の多様な有機化合物を、糖類の代謝速度の向上あるいは経時低下を抑制すると同時に、高い生産速度と高い蓄積濃度でもって、反応液中に生成させることが出来る。
本発明に係る有機化合物の製造方法においては、まず、上記の本発明の好気性コリネ型細菌を好気条件下で増殖培養する。
本発明の好気性コリネ型細菌の培養は、炭素源、窒素源および無機塩等を含む通常の栄養培地を用いて行うことが出来る。培養には、炭素源として、例えばグルコースまたは廃糖蜜等を、そして窒素源としては、例えばアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムまたは尿素等をそれぞれ単独もしくは混合して用いることが出来る。また、無機塩として、例えばリン酸一水素カリウム、リン酸ニ水素カリウムまたは硫酸マグネシウム等を使用することが出来る。この他にも必要に応じて、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸またはビオチンもしくはチアミン等の各種ビタミン等の栄養素を培地に適宜添加することも出来る。
培養は、通常、通気攪拌または振盪等の好気的条件下、約20℃〜約40℃、好ましくは約25℃〜約35℃の温度で行うことが出来る。培養時のpHは5〜10付近、好ましくは7〜8付近の範囲がよく、培養中のpH調整は酸またはアルカリを添加することにより行うことが出来る。培養開始時の炭素源濃度は、約1〜20%(W/V)、好ましくは約2〜5%(W/V)である。また、培養期間は通常1〜7日間程度である。
ついで、本発明の好気性コリネ型細菌の培養菌体を回収する。上記の如くして得られる培養物から培養菌体を回収分離する方法としては、特に限定されず、例えば遠心分離や膜分離等の公知の方法を用いることができる。
回収された培養菌体に対して処理を加え、得られる菌体処理物を次工程に用いてもよい。前記菌体処理物としては、培養菌体に何らかの処理が加えられたものであればよく、例えば、菌体をアクリルアミドまたはカラギーナン等で固定化した固定化菌体等が挙げられる。
ついで、上記の如くして得られる培養物から回収分離された本発明の好気性コリネ型細菌の培養菌体またはその菌体処理物は還元条件下の反応液中での有機化合物の生成反応に供せられる。有機化合物生成方式は、回分式、連続式いずれの生成方式も可能である。
本発明の還元条件下の生化学反応に於いては、好気性コリネ型細菌の増殖分裂が完全に抑制され、グルコース等の糖類炭素源からの目的有機化合物への変換速度および変換効率が向上し、また増殖に伴う分泌副生物の実質的な完全抑制を実現することが出来る。この観点からは、培養回収されたコリネ型細菌またはその菌体処理物が反応液中に供せられるときには、好気性コリネ型細菌形質転換細胞内外の培養時環境状態が反応液中にもたらされない方法や条件を用いることが推奨される。つまり、反応液は、増殖培養過程で生成し、菌体内外に存在する生成物質を実質的に含有しないことが好ましい。より具体的には、増殖培養過程で生成し、菌体外に放出された分泌副生物、および培養菌体内の好気的代謝機能により生成し菌体内に残存する物質が、還元条件下の反応培地に実質的に存在しない状態であることが推奨される。このような状態は、例えば、増殖培養後の培養液の遠心分離、膜分離等の方法および/または培養後の菌体を還元条件下で2時間ないし10時間程度放置することで実現される。
本工程においては、還元条件下の反応液を用いる。反応液は、還元条件下にあれば、固体状、半固体状または液体状等いずれの形状を有していてもよい。本発明の必須の要件は、還元条件下で好気性コリネ型細菌形質転換体の代謝機能による生化学反応を行わせしめ、目的とする有機化合物を生成することである。
本発明における還元条件とは、反応系の酸化還元電位で規定され、反応液の酸化還元電位は、好ましくは約−200mV〜−500mV程度、より好ましくは約−250mV〜−500mV程度である。反応液の還元状態は簡便にはレサズリン指示薬(還元状態であれば、青色から無色への脱色)である程度推定できるが、正確には酸化還元電位差計(例えば、BROADLEY JAMES社製、ORP Electrodes)を用いることによって計測できる。本発明においては、反応液に菌体またはその処理物を添加した直後から有機化合物を採取するまで、還元条件を維持していることが好ましいが、少なくとも有機化合物を採取する時点で反応液が還元状態であればよい。反応時間の約50%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約90%以上の時間、反応液が還元条件下に保たれていることが望ましい。なかでも、反応時間の約50%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約90%以上の時間、反応液の酸化還元電位が約−200mV〜−500mV程度に保たれていることがより望ましい。
このような還元状態の実現は具体的には、前記の培養後の培養菌体調製方法、反応培地の調整方法、または反応途中における還元条件の維持方法等によりなされる。
還元条件下の反応液の調整方法は、公知の方法を用いてよい。例えば、反応培地用水溶液の調整方法は、例えば硫酸還元微生物などの絶対嫌気性微生物用の培養液調整方法(Pfennig,N et.al.(1981):The dissimilatory sulfate−reducing bacteria,In The Prokaryotes,A Handbook on Habitats,Isolation and Identification of Bacteria,Ed.by Starr,M.P.et.al.p.926−940,Berlin,Springer Verlag.や「農芸化学実験 第三巻、京都大学農学部 農芸化学教室編、1990年第26刷、産業図書株式会社出版」)などが参考となり、所望する還元状態の水溶液を得ることが出来る。
反応水溶液の調整方法として、より具体的には、反応水溶液を加熱処理や減圧処理することにより溶解ガスを除去する方法等が挙げられる。より具体的には、約10mmHg以下、好ましくは約5mmHg以下、より好ましくは約3mmHg以下の減圧下で、約1〜60分程度、好ましくは5〜40分程度、反応水溶液を処理することにより、溶解ガス、特に溶解酸素を除去し、還元条件下の反応水溶液を作成することができる。また、適当な還元剤(例えば、チオグリコール酸、アスコルビン酸、システィン塩酸塩、メルカプト酢酸、チオール酢酸、グルタチオンそして硫化ソーダ等)を添加して還元状態の反応水溶液を調整することも出来る。また、場合により、これらの方法を適宜組み合わせることも有効な還元状態の反応培地用水溶液を調整する方法となる。
反応途中における還元条件の維持方法としては、反応系外からの酸素の混入を可能な限り防止することが望ましく、反応系を窒素ガス等の不活性ガスや炭酸ガス等で封入する方法が通常用いられる。酸素混入をより効果的に防止する方法としては、反応途中において本発明の好気性コリネ型細菌の菌体内の代謝機能を効率よく機能させるために、反応系のpH維持調整液の添加や各種栄養素溶解液を適宜添加する必要が生じる場合もあるが、このような場合には添加溶液から酸素を予め除去しておくことが有効である。
本発明の有機化合物生成反応において、生成反応系の酸化還元電位の規定が目的とする有機化合物の効率的な生産に関してなぜ有効であるかの理由は明らかではないが、下記にその推定理由を記す。ただし、本発明はその推定理由になんら限定されるものではない。
本発明の目的生産物である有機化合物は、本発明の好気性コリネ型細菌の代謝機能に基づく生化学反応により産生される化合物である。微生物細胞内の生化学反応には各種の酸化還元反応が関与しており、電子の授受移動が行われている。酸化還元電位は反応系での電子の受容性、供与性の難易度を示す尺度の一つであるが、この電位は微生物細胞内で起こっている代謝経路を構成する各種反応(酸化還元反応)の状態や細胞内外との電子授受の状態を反映している。電位差計により直接測定される酸化還元電位は反応溶液と電極との電位であるが反応溶液の電位は細胞膜を介してある電位勾配を持って細胞内で生じている反応と相関している。即ち、酸化還元電位は細胞内外を含む反応系全体の酸化還元反応の総和を反映(各種反応の内容やその頻度等も含めて)したものである。
反応系の酸化還元電位に影響する因子としては、反応系雰囲気ガスの種類と濃度、反応温度、反応溶液pH、反応液中に存在する目的有機化合物生成のために使用される無機および有機の各種化合物濃度と組成等が考えられる。本発明における反応培地の酸化還元電位とは上記各種影響因子が統合されて示されるものである。従って、本発明は、目的とする有機化合物への代謝経路には各種化学反応が関与し、これら化学反応は上記因子群の影響下にあるが、単一の酸化還元電位なる反応状態を規定する尺度により、効率的に目的有機化合物が生成されることを見出したことにより、発明の実施条件の一つとして特定したものである。
反応液には、有機化合物生成の原料となる有機炭素源(例えば、糖類等)が含まれている。有機炭素源としては、本発明の好気性コリネ型細菌形質転換体が生化学反応に利用できる物質が挙げられる。
具体的には、糖類としては、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、フルクトースもしくはマンノースなどの単糖類、セロビオース、ショ糖、ラクトースもしくはマルトースなどの二糖類、またはデキストリンもしくは可溶性澱粉などの多糖類などが挙げられる。なかでも、グルコースが好ましい。
有機化合物の生成反応に用いられる反応液組成は、本発明の好気性コリネ型細菌形質転換体またはその処理物がその代謝機能を維持するために必要な成分、即ち、各種糖類等の炭素源、蛋白質合成に必要な窒素源、その他リン、カリウムまたはナトリウム等の塩類、さらに鉄、マンガンまたはカルシウム等の微量金属塩を含んでいてもよい。これらの添加量は所要反応時間、目的有機化合物生産物の種類または用いられる好気性コリネ型細菌形質転換体の種類等により適宜定めることが出来る。特定のビタミン類の添加が好ましい場合もある。また、前記の反応系の炭酸ガス封入法にも関連して、反応培地に二酸化炭素または各種の炭酸塩もしくは炭酸水素塩等の無機炭酸塩を糖類などの有機炭素源に加えて注入することが目的有機化合物によっては有効な場合もある。
好気性コリネ型細菌またはその菌体処理物と糖類との反応は、好気性コリネ型細菌またはその菌体処理物が活動できる温度条件下で行われることが好ましく、好気性コリネ型細菌またはその菌体処理物の種類などにより適宜選択することができる。
最後に、上述のようにして反応培地で生成した有機化合物を採取する。その方法はバイオプロセスで用いられる公知の方法を用いることが出来る。そのような公知の方法として、有機化合物生成液の塩析法、再結晶法、有機溶媒抽出法、エステル化蒸留分離法、クロマトグラフィー分離法または電気透析法等があり、生成有機化合物の特性に応じてその分離精製採取法は適宜定めることが出来る。
本発明で製造することができる有機化合物としては、有機酸、アルコール、アミノ酸またはビタミン類等が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、アクリル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、クエン酸、シスアコニット酸、イタコン酸、イソクエン酸、2−オキソグルタル酸そしてシキミ酸などが挙げられ、アルコールとしては、例えば、エタノール、1,3−プロパンジオール、グリセロール、ブタノール、1,4−ブタンジオール、キシリトールそしてソルビトールなどが挙げられ、アミノ酸としては、例えば、バリン、ロイシン、アラニン、アスパラギン酸、リジン、イソロイシンまたはスレオニンなどが挙げられる。
以下、実施例でもって本発明を説明するが、本発明はこのような実施例に限定されるものではない。なお、「%」は、特に断りのない限り、「重量%」を示す。
〔実施例1〕GAPDH遺伝子のクローン化
(A)コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株からの全DNAの抽出
A培地1L[組成: 尿素:2g,(NHSO:7g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g,MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:6mg,MnSO・nHO:4.2mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:200μg,酵母エキス2g,カザミノ酸7g,グルコース20gおよび蒸留水:1000ml(pH6.6)]に、野生株コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)Rを、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期後期まで33℃で培養し、菌体を集めた。
得られた菌体を10mg/mlの濃度になるよう、10mg/ml リゾチーム、10mM NaCl、20mMトリス緩衝液(pH8.0)および1mM EDTA・2Naの各成分を含有する溶液15ml(各成分の濃度は最終濃度である)に懸濁した。次にプロテナーゼKを最終濃度が100μg/mlになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロホルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000×g,20分間,10〜12℃)し、上清画分を分取した。この上清に酢酸ナトリウムを0.3Mとなるよう添加した後、2倍量のエタノールをゆっくりと加えた。水層とエタノール層の間に存在するDNAをガラス棒でまきとり、70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10mMトリス緩衝液(pH7.5)−1mM EDTA・2Na溶液5mlを加え、4℃で一晩静置し、以後の実験に用いた。
(B)コリネ型細菌−大腸菌シャトルベクターpCRB1の構築
ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869に内在するプラスミドpAM330(Yamaguchi,R.et al.,Agric.Biol.Chem.50,2771−2778(1986)、特開昭58−67679)のORF1(rep)を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際しては、下記の1対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
ORF1(rep)遺伝子増幅用プライマー
Rep−N; 5’−CTCTGTTAACACAACAAGACCCATCATAGT−3’(配列番号1),
Rep−C; 5’−CTCTGTTAACACATGCAGTCATGTCGTGCT−3’(配列番号2)
尚、いずれのプライマーもHpaIサイトが末端に付加されている。
鋳型DNAは、プラスミドpAM330を用いた。
PCRは、パーキンエルマーシータス社製の「DNAサーマルサイクラー」を用い、反応試薬として、タカラ・イーエックス・タック(TaKaRa Ex Taq)(宝酒造株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
反応液:
(10×)PCR緩衝液 10μl
1.25mM dNTP混合液 16μl
鋳型DNA 10μl(DNA含有量1μM以下)
上記の2種のプライマー 各々1μl(最終濃度0.25μM)
タカラ・イーエックス・タックDNA・ポリメラーゼ 0.5μl
滅菌蒸留水 61.5μl
以上を混合し、この100μlの反応液をPCRにかけた。
PCRサイクル:
デナチュレーション過程:94℃ 60秒
アニーリング過程 :52℃ 60秒
エクステンション過程 :72℃ 120秒
以上を1サイクルとし、30サイクル行った。
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、Rep遺伝子を含む、約1.8kbのDNA断片が検出できた。
一方、コリネ型細菌−大腸菌シャトルベクターを構築する際に、クロラムフェニコール耐性遺伝子を含む大腸菌ベクターpHSG398(宝酒造製)のlacZα遺伝子とその内部のマルチクローニングサイトを保存するため、PCRにより新たにEcoRVサイトを付加するように、pHSG398を増幅した。
PCRに際しては、下記の1対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
プラスミドpHSG398増幅用プライマー
398−N; 5’−CTCTGATATCGTTCCACTGAGCGTCAGACC−3’(配列番号3),
398−C; 5’−CTCTGATATCTCCGTCGAACGGAAGATCAC−3’(配列番号4)
尚、いずれのプライマーもEcoRVサイトが末端に付加されている。
鋳型DNAは、プラスミドpHSG398を用いた。
PCRは、前述と同様の条件で行った。
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、プラスミドpHSG398全長を含む、約2.2kbのDNA断片が検出できた。
次に、HpaIで切断した上記Rep遺伝子を含む約1.8kbのDNA断片5μlとEcoRVで切断したプラスミドpHSG398全長を含む約2.2kbのDNA断片を混合し、これに、T4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl、T4 DNAリガーゼ1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。
得られたプラスミド混合液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology、53、159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造製)を形質転換し、クロラムフェニコール50mgを含む培地〔トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5g及び寒天16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpHSG398 2.2kbのDNA断片に加え、長さ約1.8kbの挿入DNA断片が認められた。
このコリネ型細菌−大腸菌シャトルベクターをpCRB1と記する。
(C)コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)RのGAPDH遺伝子のクローン化
PCRに際して、GAPDH遺伝子をクローン化するべく、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株の全ゲノム解析結果(野中 寛、中田 かおり、岡井 直子、和田 真利子、佐藤 由美子、Kos Peter、乾 将行、湯川 英明「Corynebacterium glutamicum R ゲノム解析」日本農芸化学会、2003年4月、横浜、日本農芸化学会2003年度大会講演要旨集、p.20参照)を基に、下記の1対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
GAPDH遺伝子増幅用プライマー
GAPR−N; 5’−CTCTGGATCCCGATTTCAGGTTCGTTCCCT−3’(配列番号5),
GAPR−C; 5’−CTCTGGATCCCCGGGCTATTGGGATGA−3’ (配列番号6)
尚、いずれのプライマーもBamHIサイトがそれぞれ末端に付加されている。
鋳型DNAは、上記(A)項にて抽出したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株のゲノムDNAを用いた。
PCRは、上記(B)項と同様の条件で行った。
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、GAPDH遺伝子の場合、約1.4kbのDNA断片が検出できた。
次に、上記GAPDH遺伝子を含む1.4kb PCR産物10μlを制限酵素BamHIで切断したもの、及び上記(B)項で構築したコリネ型細菌−大腸菌シャトルベクターpCRB1 2μlを制限酵素BamHIで切断したものをそれぞれ、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl、T4DNAリガーゼ 1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させた。このライゲーション液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology,53,159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、クロラムフェニコール50mg、x−gal(5−Bromo−4−chloro−3−indoxyl−beta−D−galactopyranoside)200mg、IPTG(isopropyl 1−thio−beta−d−galactoside)100mgを含む培地〔トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5gおよび寒天16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
上記培地上で白色を呈する生育株を選定し常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB1 約4.0kbのDNA断片に加え、GAPDH遺伝子(配列番号7)を含有する長さ約1.4kbの挿入DNA断片が認められた(配列番号7)。
該GAPDH遺伝子を含むプラスミドをpCRB200と命名とした(図1参照)。
(D)アクチノマイセス ユーロパエウス(Actinomyces europaeus ATCC700353)のGAPDH遺伝子のクローン化
アクチノマイセス ユーロパエウス(A.europaeus)からのトータルDNAは(A)項と同様に抽出した。
アクチノマイセス ユーロパエウス(A.europaeus)と同じG(+)バクテリアのgapAアミノ酸配列の相同性領域を指標に下記のプライマーを合成し、アクチノマイセス ユーロパエウス(A.europaeus)より精製したトータルDNAを鋳型にして、上記(B)項と同様の条件でタカラ・エルエー・タック(TaKaRa LA Taq)(宝酒造株式会社製)を使用してPCRを行った。
アクチノマイセス ユーロパエウス(A.europaeus)GAPDH遺伝子増幅用プライマー
Agp P1 5’−ATIAAYGGITTYGGIMGIATIGG−3’(配列番号8),
Agp P7 5’−SCIYAYTCRTTRTCRTA−3’ (配列番号9)
0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、約900 bpのバンドが得られた。
上記の増幅したDNA断片混合液を、上記(B)項と同様の条件で精製したあと、pGEMT−easy Vector system I(Promega社)を用いて、同社のマニュアルに従い16℃で3時間反応させ、結合させた。
得られたプラスミド混合液を用い、塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology、53、159,1970)によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、アンピシリン50mgを含む培地〔トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5g及び寒天16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液より936 bpのPCR産物が挿入されたプラスミドDNAを抽出した。
該プラスミドを鋳型として、下記の2つのプライマーを用いてBig Dye Terminator V3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社、米国)を用いて標識し、ABI Prism 3100Genetic Analyzer(Applied Biosystems社、米国)にて塩基配列を決定した。プライマー決定した配列はデーターベースに登録されている近縁種のGAPDHのアミノ酸配列に対して、60%以上の相同性を示した。
M13−M4 5’−GTTTTCCCAGTCACGAC−3’(配列番号10),
M13−RV 5’−CAGGAAACAGCTATGAC−3’(配列番号11)
サザンハイブリダイゼーションの鋳型として、7種類の制限酵素制限酵素(AccI,SphI,BamHI,EcoRI,PstI,SmaI,SalI)5 Uを用いて、上記のアクチノマイセス ユーロパエウス(A.europaeus)のゲノムを断片化し、(A)項の方法に従って精製した。
上記のシークエンスによって決定したアクチノマイセス ユーロパエウス(A.europaeus)由来GAPDHの部分塩基配列(936 bp)を(A)項の方法に従い精製し、ゲノムサザン用のプローブとした。
6種類の制限酵素でそれぞれ断片化させたDNA断片を電気泳動した後、プローブとハイブリッドを形成させた。プローブと鋳型DNAの複合体形成を、アルカリフォスファターゼを用いた蛍光検出により識別した。
その結果、AccI,SphIで処理したDNAサンプルにおいて、約3−kb,5.5−kbのバンドを検出した。
上記のAccI,PstIで処理したアクチノマイセス ユーロパエウス(A.europaeus)由来DNAをT4 DNA ligaseを用いて(B)項の方法に従ってself−ligationさせた。
形成された環状DNAを(B)項の方法に従って精製し、PCRの鋳型とした。これまでに決定しているアクチノマイセス ユーロパエウス(A.europaeus)由来GAPDHの部分塩基配列(936 bp)をもとに、下記に示したプライマーを設計した。
Contig−R 5’−CGCACTCGTCGATCTTCGAC−3 (配列番号12)
Contig−F 5’−TGATGGACTCGTCATCGTAG−3’(配列番号13)
(B)項の方法に従ってPCRを行った。(B)項の方法に従って電気泳動した結果、SphIでカットしたゲノムサンプルから約4.5−kbのバンドを得た。
得られたバンドを(B)項の方法に従って精製し、上記のpGEMT−easy Vector system I(Promega社)を用いてクローニングした。
約4.5−kbのPCR産物を挿入したプラスミド溶液を用いて、(B)項の方法に従ってエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、アンピシリン50mgを含む培地〔トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5g及び寒天16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、(B)項の方法に従って培養液よりプラスミドDNAを抽出、精製した。
該プラスミドを鋳型に、上記の方法に従ってシーケンスすることによりアクチノマイセス ユーロパエウス(A.europaeus)由来GAPDH全長を含む1296bpの塩基配列を取得し、GAPDHの全塩基配列を決定した。
上記の1296bpの塩基配列をもとに、下記のプライマーを合成し、アクチノマイセス ユーロパエウス(A.europaeus)のゲノムを鋳型にしてPCRを行った。
genm−Eco1;
5’−CTCTGAATTCTAAATCTATCGAAACGGTGT−3’(配列番号14),
genm−Pst5;
5’−CTCTGACGTCTCTTCCTCTCGAAGTTCAAT−3’(配列番号15)
PCR産物を(B)項の方法に従って電気泳動した結果、1240−bpのバンドを得た。
上記GAPDH遺伝子を含む1.2kb PCR産物10μlを制限酵素EcoRIとPstIで切断したもの、及び上記(B)項で構築したコリネ型細菌−大腸菌シャトルベクターpCRB1 2μlを制限酵素EcoRIとPstIで切断したものをそれぞれ、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4DNAリガーゼ10×緩衝液1μl、T4DNAリガーゼ1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させた。このライゲーション液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology,53,159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、クロラムフェニコール50mgを含む培地〔トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5gおよび寒天16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
上記培地上で白色を呈する生育株を選定し常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出し、制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB1に由来する約4.0kbのDNA断片に加え、GAPDH遺伝子に由来する長さ約1.8kbの挿入DNA断片を確認した(配列番号16)。
以下(B)と同様の手法で、アクチノマイセス ユーロパエウス(Actinomyces europaeus)ATCC700353由来のGAPDH遺伝子含むプラスミドを得ることができ、該プラスミドをpCRA820と命名とした(図2参照)。
〔比較例1〕
マーカーレス遺伝子破壊法によるPEPC遺伝子破壊株の創製
(A)マーカーレス遺伝子破壊用ベクターpCRA725の構築
バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株のsacR−sacB遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際しては、下記の1対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
sacR−sacB遺伝子増幅用プライマー
sacR−sacB−N;
5’−CTCTCAATTGATAAAGCAGGCAAGACCTAA−3’(配列番号17),
sacR−sacB−C;
5’−CTCTGATATCTTTATTTGTTAACTGTTAAT−3’(配列番号18)
尚、前者はMunIサイトが、後者はEcoRVサイトがそれぞれ末端に付加されている。
鋳型DNAは、プラスミドpMV5(Vertes,A.A.et al.Isolation and characterizat on of IS31831,a transposable element from Corynebacterium glutamicum.Mol.Microbiol.11,739−746(1994))を用いた。
PCRは、実施例1(B)項と同様の条件で行った。
生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、sacR−sacB遺伝子を含む、約1.6kbのDNA断片を検出した。
次に、MunIとEcoRVで切断した上記sacR−sacB遺伝子を含む1.6kbのPCR産物10μlと、EcoRIとSmaIで切断した約4.6kbの発現ベクターpKK223−3(ファルマシア社製)2μlをそれぞれ、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4DNAリガーゼ10×緩衝液1μl、T4DNAリガーゼ1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させた。このライゲーション液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology,53,159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、アンピリシン50mgを含む培地〔トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5gおよび寒天16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出することにより、ベクターpCRA724を得た。
次に、pCRA724を鋳型DNAにして、tacプロモーターを付加したsacR−sacB遺伝子(Ptac−sacR−sacB)を増幅した。
PCRに際しては、下記の1対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
Ptac−sacR−sacB増幅用プライマー
Ptac−sacR−sacB−N;
5’−CTCTGATATCCATAATTCGTGTCGCTCAAG−3’(配列番号19)
sacR−SacB−N;
5’−CTCTGATATCTTTATTTGTTAACTGTTAAT−3’(配列番号20),
尚、いずれのプライマーもEcoRVサイトが末端に付加されている。
PCRは、実施例1(B)項と同様の条件で行った。
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、Ptac−sacR−SacB遺伝子を含む、約1.8kbのDNA断片を検出した。
次に、EcoRVで切断した上記Ptac−sacR−SacB遺伝子を含む約1.8kbのDNA断片5μlと、StuIで切断した約2.7kbのプラスミドpHSG298(宝酒造株式会社製)2μlをそれぞれ、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これに、T4 DNAリガーゼ10×緩衝液1μl、T4 DNAリガーゼ1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させ、結合させた。
得られたプラスミド混合液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology、53、159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造製)を形質転換し、カナマイシン50mgを含む培地〔トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5gおよび寒天16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
上記培地上の生育株を常法により液体培養後、培養液よりプラスミドDNAを抽出することにより、マーカーレス遺伝子破壊用ベクターpCRA725を得た。
(B)PEPC遺伝子のクローン化と遺伝子破壊用プラスミドの創製
実施例1(A)項で調製した染色体DNAを鋳型として、PCRを行った。
PCRに際しては、PEPC遺伝子をクローン化するべく、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株の全ゲノム解析結果(野中 寛、中田 かおり、岡井 直子、和田 真利子、佐藤 由美子、Kos Peter、乾 将行、湯川 英明「Corynebacterium glutamicum R ゲノム解析」日本農芸化学会、2003年4月、横浜、日本農芸化学会2003年度大会講演要旨集、p.20参照)を基に、下記の1対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
PEPC遺伝子増幅用プライマー
PEPC−N;5’−CTCTGTCGACATGACTGATTTTCTACGCGA−3’(配列番号21),
PEPC−C;5’−CTCTGCATGCCTAGCCGGAGTTGCGCAGTG−3’(配列番号22)
尚、前者はSalIサイトが、後者はSphIサイトがそれぞれ末端に付加されている。
鋳型DNAは、実施例I(A)項にて抽出したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株のゲノムDNAを用いた。
PCRは、実施例1(B)項と同様の条件で行った。
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、PEPC遺伝子を含む約2.8kbのDNA断片を検出した。
次に、制限酵素SalIとSphIで切断した上記PEPC遺伝子を含む約2.8kbのDNA断片10μlと、SalIとSphIで切断した上記(A)項で構築した約4.4kbのマーカーレス遺伝子破壊用ベクターpCRA725 2μlをそれぞれ、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4DNAリガーゼ10×緩衝液1μl、T4DNAリガーゼ1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させた。このライゲーション液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology,53,159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、カナマイシン50mg、x−gal(5−Bromo−4−chloro−3−indoxyl−beta−D−galactopyranoside)200mg、IPTG(isopropyl 1−thio−beta−d−galactoside)100mgを含む培地〔トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5gおよび寒天16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
上記培地上で白色を呈する生育株を選定し常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出後、制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRA725約4.4kbのDNA断片に加え、PEPC遺伝子を含有する長さ約2.8kbの挿入DNA断片が認められた。
該PEPC遺伝子を含むプラスミドをpCRA725−PEPCと命名とした。
次に、XhoIで切断したPEPC遺伝子マーカーレス破壊用ベクターpCRA725−PEPC2μlを、70℃で10分処理することにより制限酵素を失活させた後、これにT4DNAリガーゼ10×緩衝液1μl、T4DNAリガーゼ1unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μlにして、15℃で3時間反応させた。このライゲーション液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology,53,159(1970)〕によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造株式会社製)を形質転換し、カナマイシン50mgを含む培地〔トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5gおよび寒天16gを蒸留水1Lに溶解〕に塗抹した。
上記培地上で生育株を選定し常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出後、制限酵素で切断し、PEPC遺伝子中央部約1.1kbの欠失を確認した。この結果、プラスミドpCRA725 約4.4kbのDNA断片に加え、△PEPC遺伝子断片を含有する長さ約1.7kbのDNA断片が認められた。
該PEPC遺伝子マーカーレス破壊用プラスミドをpCRA725−△PEPCと命名とした。
(C)PEPC遺伝子破壊株の創製
PEPC遺伝子マーカーレス破壊用プラスミドpCRA725−△PEPCは、コリネバクテリウム属(コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株を含む)内で複製不可能なプラスミドである。pCRA725−△PEPCを、電気パルス法(Y.Kurusu,et al.,Agric.Biol.Chem.54:443−447.1990.およびA.A.Vertes,et al.,Res.Microbiol.144:181−185.1993)の方法に従って、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株へ導入し、カナマイシン50μg/mlを含むA寒天培地(1L[組成:尿素:2g,(NHSO:7g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g,MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:6mg,MnSO・nHO:4.2mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:200μg,酵母エキス2g,カザミノ酸7g,グルコース20g,寒天16gを蒸留水に1000ml溶解(pH6.6)]に塗布した。
さらに、上記の培地で得られた株を、スクロース含有最少培地(1L[組成:尿素:2g,(NHSO:7g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g,MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:6mg,MnSO・nHO:4.2mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:200μg,スクロース:100g,寒天16gを蒸留水に1000ml溶解]に塗付した。
プラスミドpCRA725−△PEPCが染色体上の野生型遺伝子と1点相同性組換えを起こした場合、ベクターpCRA725上のカナマイシン耐性遺伝子の発現によるカナマイシン耐性と、sacR−sacB遺伝子の発現によるスクロース致死性を示すのに対し、2点相同性組換えを起こした場合は、ベクターpCRA725上のカナマイシン耐性遺伝子の脱落によるカナマイシン感受性と、sacR−sacB遺伝子の脱落によるスクロース含有培地での生育性を示す。従って、目的とするPEPC遺伝子破壊株は、カナマイシン感受性、スクロース含有培地生育性を示す。
カナマイシン感受性、スクロース含有培地生育性を示した株を単離し、常法により液体培養し、回収菌体より実施例1(A)項と同様の方法で染色体DNAを抽出し、シーケンサー Prism 3100 genetic analyzer(ABI社製)により、染色体上のPEPC遺伝子の破壊を確認した。このようにして得られたPEPC遺伝子破壊株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号;FERM P−20876)と命名した。
尚、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株におけるPEPC活性の消失は、以下の方法により確認した。
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株を、A培地100ml(1L[組成:尿素:2g,(NHSO:7g,KHPO:0.5g,KHPO:0.5g,MgSO・7HO:0.5g,FeSO・7HO:6mg,MnSO・nHO:4.2mg,D−ビオチン:200μg,塩酸チアミン:200μg,酵母エキス2g,カザミノ酸7g,グルコース20gおよび蒸留水:1000ml(pH6.6)])に、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期後期まで33℃で培養し、菌体を集めた。この菌体をトリス緩衝液(100mM Tris−HCl(pH7.5),20mM KCl,20mM MgCl,5mM MnSO,0.1mM EDTA,2mM DTT)にて1回洗浄した。この洗浄菌体0.5gを同緩衝液2mlに懸濁し、氷冷下で超音波破砕機(Astrason model XL2020)を用いて菌体破砕物を得た。該破砕物を遠心分離(10,000xg,4℃,30分)し、上清を粗酵素液として得た。対照として野性型コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株の粗酵素液も同様に調製し、以下の活性測定に供した。PEPCの活性測定は、ホスホエノールピルビン酸を基質としたリンゴ酸生成に伴い、補酵素NADHがNADに酸化される量を、340nmの吸光度変化として測定する方法(Jetten,M.,and Sinskey A.J.;Characterization of phosphoenolpyruvate carboxykinase from Corynebacterium glutamicum,FEMS Microbiology Letters,111(1993),183−188.)により行った。この結果、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株におけるPEPC活性は検出されなかったことより、PEPC遺伝子の破壊を確認した。
〔実施例2〕コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号:FERM P−18976)のGAPDH活性強化株創製
プラスミドpCRB200を電気パルス法(Y.Kurusu,et al.,Agric.Biol.Chem.54:443−447.1990.及びA.A.Vertes,et al.,Res.Microbiol.144:181−185.1993)の方法に従って、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株へ導入した。
組換え菌体名;コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/R−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号;FERM P−20875)
尚、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/R−nGAP株のGAPDH活性は、GAPDH活性測定法(Omumasaba,C.A.,Okai N.,Inui M.,and Yukawa H.;Corynebacterium glutamicum glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase isoforms with opposite,ATP−dependent regulation,J Mol Microbiol Biotechnol.,8(2004),91−103)により、野生株(コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株)に比べて5.3倍の活性上昇が観察された。
同様にプラスミドpCRB200を上記方法にてコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株へ導入した。
組換え菌体名;コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC/R−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号;FERM P−20878)
尚、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R △PEPC/R−nGAP株のGAPDH活性は、GAPDH活性測定法(Omumasaba,C.A.,Okai N.,Inui M.,and Yukawa H.;Corynebacterium glutamicum glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase isoforms with opposite,ATP−dependent regulation,J Mol Microbiol Biotechnol.,8(2004),91−103)により、親株(コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC))に比べて5.4倍の活性上昇が観察された。
同様にプラスミドpCRA820を上記方法にてコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株へ導入した。
組み換え菌体名;コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC/Actino−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号;FERM P−20877)
尚、組み換え菌体名;コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC/Actino−nGAP株のGAPDH活性は、GAPDH活性測定法(Omumasaba,C.A.,Okai N.,Inui M.,and Yukawa H.;Corynebacterium glutamicum glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase isoforms with opposite,ATP−dependent regulation,J Mol Microbiol Biotechnol.,8(2004),91−103)により、親株(コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC))に比べて5.6倍の活性上昇が観察された。
〔実施例3〕組換え株の好気培養増殖及び乳酸生成反応実験
(A)好気培養増殖
冷凍庫にて−80℃で保存してあるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/R−nGAP株(実施例2で創製)を、プレート培養用培地であるA寒天培地(組成:尿素2g、酵母エキス2g、カザミノ酸7g、硫安7g、第一リン酸カリウム(KHPO)0.5g、第二リン酸カリウム(KHPO)5g、硫酸マグネシウム・7水和物0.5g、硫酸鉄・7水和物6mg、硫酸マンガン・1水和物4.2mg、ビオチン0.2mg、チアミン0.2mg、グルコース40g、寒天1.5%(W/V)そして蒸留水1L)に塗布し、33℃、12hr暗所に静置した。
上記のプレート上で生育したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/R−nGAP株を、試験管培養用培地であるA培地(組成:寒天が含まれていないことを除けば上記A寒天培地と同一成分組成)10mlに白金耳でもって植菌し、33℃、12hr、200rpmで振盪培養した。
このようにして生育したコリネ型細菌株を、好気培養増殖用培地であるA−U培地(組成:尿素が含まれていないことを除けば上記A培地と同一成分組成)の500mlが入っている容量1Lのジャーファーメンターに移し、33℃、1000rpm、滅菌空気を1vvmで通気して、13hr好気培養増殖を行なった。
この間、NHOH(5Nアンモニア水溶液)を使用してジャーファーメンター槽内のpHを7.5に常時維持した。
このようにして培養増殖された菌体は、遠心分離(4℃、10分、5000xG)によって回収し、次の還元条件下の乳酸生成反応に供した。
(B)還元条件下の乳酸生成反応
(A)の好気培養増殖工程より回収された湿潤菌体150g(Dry Cell換算約30g)を、コハク酸生成反応用溶液であるBT−U培地(組成:硫安7g、第一リン酸カリウム(KHPO)0.5g、第二リン酸カリウム(KHPO)0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物0.5g、硫酸鉄・7水和物6mg、硫酸マンガン・1水和物4.2mg、ビオチン0.2mg、チアミン0.2mg、グルコース36g、重炭酸ソーダ(NaHCO)12.6g、蒸留水1L)500mlの入っている容量1Lの反応槽に加え、33℃にて緩やかに攪拌し、還元条件下のコハク酸生成反応を48時間実施した。反応時の培地の酸化還元電位は、反応開始後直ちに急激に低下し、その後が約−400mVに維持してコハク酸生成反応が継続された。
この間、5N(規定)濃度のNHOH(5Nアンモニア水溶液)水溶液を使用して反応槽内のpHを7.5に常時維持した。
反応槽内のグルコース濃度は逐次少量をサンプリングしてグルコースセンサー(王子計測機器株式会社製)による分析を行い、経時的な生成量の変動を調べた。
反応槽内の生成した乳酸量は逐次少量をサンプリングして液体クロマトグラフィーによる分析を行った。
その結果を図5に記す。(図5におけるグルコース消費速度および乳酸生成速度とは反応開始24時間後、及び48時間後におけるそれぞれの単位時間当たりの消費量および生成量である。)
24時間後、及び48時間後におけるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/R−nGAP株のグルコース消費速度は、それぞれ1.58g/l/h、及び1.37g/l/hであった。
また、乳酸の生成速度は、それぞれ、2.07g/l/h、及び0.97g/l/hであった。
これらの結果を図5に記す。
〔比較例2〕
実施例3で使用したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/R−nGAP株に変えて、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株を用いる以外は、実施例3と同様の条件にて好気培養増殖および乳酸生成反応を行なった。
24時間後、及び48時間後におけるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株のグルコースの消費速度は、それぞれ1.44g/l/h、及び1.24g/l/hであった。
また、乳酸の生成速度は、それぞれ0.81g/l/h、及び0.36g/l/hであった。
これらの結果を図5に記す。
実施例3および比較例2の実験結果はグルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株にてGAPDHを高発現することによって、グルコースの消費速度と有機化合物(乳酸)生成速度が増加することを示している。
〔実施例4〕
比較例2で使用したコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R株に変えて、それぞれ、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株(比較例1で創製)、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC/R−nGAP株(実施例2で創製)、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC/Actino−nGAP株(実施例2で創製)を用いる以外は、実施例3と同様の条件にて好気培養増殖及び乳酸生成反応を行なった。それらの結果を図6に記す。
なお、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株は、野生株であるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)Rと比較して、グルコースの消費速度に関しては劣るものの、より高い選択性で乳酸を生成することのできる株であることが知られているものである。(Inui,M.,Murakami S.,Okino S.,Kawaguchi H.,Vertes A.,and Yukawa H.;Metabolic analysis of Corynebacterium glutamicum during lactate and succinate productions under oxygen−deprivation conditions,J.Mol.Microbiol.Biotechnol.,accepted(2004)))。
図6より明らかなように、24時間後、及び48時間後におけるコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株のグルコースの消費速度は、それぞれ1.08g/l/h、及び1.06g/l/hであったが、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC/R−nGAP株のグルコース消費速度は、それぞれ1.98g/l/h、及び1.96g/l/hであった。また、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC/Actino−nGAP株のグルコース消費速度は、それぞれ2.12g/l/h、及び1.87g/l/hである。
乳酸生成速度に関しては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株の24時間後、及び48時間後における乳酸の生成速度は、それぞれ0.15g/l/h、及び0.15g/l/hであったが、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC/R−nGAP株の乳酸の生成速度は、それぞれ0.99g/l/h、及び0.91g/l/hであった。また、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC/Actino−nGAP株の乳酸の生成速度は、それぞれ0.91g/l/h、及び1.03g/l/hである。
これらの実験結果は、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/△PEPC株に関しても、野生株と同様に、GAPDH(異種、自身由来を問わず)の高発現によって、グルコースの消費速度、及び物質生産速度が増加することを示している。そして、GAPDHに関する以外の好気性コリネ型細菌の人為的変異株であっても、本発明の効果が生み出されていることも明らかである。
本発明に係る有機化合物の製造方法を使用することによって、糖類の代謝変換消費速度を向上させて高生産性かつ高効率に有用な有機化合物を製造することが可能である。

Claims (10)

  1. 発現可能な制御配列下に、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするDNAにより形質転換されたコリネバクテリウム・グルタミカム形質転換体。
  2. コリネバクテリウム グルタミカムが、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R FERM P−18976、ATCC13032、ATCC13058、ATCC13059、ATCC13060、ATCC13232、ATCC13286、ATCC13287、ATCC13655、ATCC13745、ATCC13746、ATCC13761、ATCC14020またはATCC31831、および、コリネバクテリウム エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)NBRC 100395から選択されるいずれかの菌であることを特徴とする請求項1に記載の形質転換体。
  3. グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするDNAが、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R FERM P−18976、アクチノマイセス ユーロッパエウス(Actinomyces europaeus)ATCC 700353またはエシェリキア コリ(Escherichia coli)ATCC 27325由来のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の形質転換体。
  4. 形質転換されたコリネバクテリウム グルタミカムが、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R/R−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20875)である請求項1に記載の形質転換体。
  5. 形質転換されたコリネバクテリウム グルタミカムが、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R △PEPC/R−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20878)である請求項1に記載の形質転換体。
  6. 形質転換されたコリネバクテリウム グルタミカムが、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R △PEPC/Actino−nGAP株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM P−20877)である請求項1に記載の形質転換体。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の形質転換体を用いて、還元条件下の反応液中に糖類の代謝速度を向上させて有機化合物を蓄積し、該反応液より有機化合物を回収することを特徴とする有機化合物の製造方法。
  8. 還元条件下の反応液の酸化還元電位が−200ミリボルト乃至−500ミリボルトであることを特徴とする請求項7に記載の有機化合物の製造方法。
  9. 有機化合物がモノカルボン酸、ジカルボン酸、ケトカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、モノアルコール、ポリオールおよびビタミンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7又は8に記載の有機化合物の製造方法。
  10. 有機化合物が、酢酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、アクリル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、クエン酸、シスアコニット酸、イタコン酸、イソクエン酸、2−オキソグルタル酸、シキミ酸、エタノール、1,3−プロパンジオール、グリセロール、ブタノール、1,4−ブタンジオール、キシリトール、ソルビトール、バリン、ロイシン、アラニン、アスパラギン酸、リジン、イソロイシン、スレオニン、及びビタミンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7又は8に記載の有機化合物の製造方法。
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