JP2011219552A - 共重合体ラテックスの製造方法及び共重合体ラテックス - Google Patents

共重合体ラテックスの製造方法及び共重合体ラテックス Download PDF

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Abstract

【課題】貯蔵安定性に優れ、低温環境下で長期保管しても固形分濃度の分布が実質的に発生せず、均質な状態を保つ共重合体ラテックスの製造方法を提供する。
【解決手段】(a)共役ジエン系単量体20〜80質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜7質量%、(c)他の共重合可能な単量体13〜79.5質量%(但し(a)+(b)+(c)=100質量%)から成る単量体混合物を、前記単量体混合物100質量部に対し、(イ)成分(下記式)及び/又は(ロ)成分(下記式の2個のOH基を、2個のOCOCH3基に置換)0.01〜10質量部を使用し、乳化重合する、共重合体ラテックスの製造方法。
Figure 2011219552

【選択図】なし

Description

本発明は、塗工紙用顔料バインダー、接着剤、粘着剤、繊維結合剤及び塗料などに用いられる共重合体ラテックスの製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は貯蔵安定性に優れ、長期間の貯蔵・保管において、特に低温下での長期間の貯蔵・保管において、固形分濃度の分布や成分の分離が発生する問題が解消された共重合体ラテックスの製造方法及び該共重合体ラテックスに関する。
共重合体ラテックスは例えば、紙塗工用顔料バインダー、各種接着剤及び粘着剤、不織布や人工皮革などの繊維結合用バインダーあるいは塗料などの、広範な用途に用いられている。これらの用途に用いられる共重合体ラテックスは、通常、生産後直ちに前記用途に用いられることはなく、生産後に製品タンク、コンテナ、ドラム等の容器に充填され、所定期間貯蔵・保管・輸送の後に各用途に用いられることが一般的である。
しかしながら、共重合体ラテックスは、そのポリマー成分と媒体である水との間に比重差があることが一般的であり、不可避的に、貯蔵・保管中に容器内において成分の濃度の勾配が発生し易い。その度合いが甚だしい場合には、容器内においてあたかも分離した如く外観が変化し、固形分の高い部分が極端に増粘して流動性を失い、共重合体ラテックスの採取やポンプ輸送が困難になったり、前記の各用途において、均一な製品が得られない等の問題が発生する。特に貯蔵・保管温度が10℃以下である低温環境下においては、ラテックス粒子及び水分子のブラウン運動の運動量が低下することから、この問題の影響が甚大である。
共重合体ラテックスの貯蔵安定性を改良する為に種々の方法が用いられているところ、例えば、共重合体ラテックスのポリマー粒子に電荷を帯びさせて、粒子間の静電反発力を利用して固形分の不均一化を図る方法が公知である。この方法によってある程度の効果は得られるが、粒子径の小さい共重合体ラテックスにおいては、その効果は充分ではない。
また容器内の共重合体ラテックスを定期的に攪拌することによって、固形分濃度の分布発生を抑制することができるが、製品タンクに貯蔵・保管する場合には攪拌機や循環ポンプ等の設備が必要となる。また、コンテナやドラム等に貯蔵・保管する場合も攪拌作業が必要となり、所定の設備が必要となるため、経済的観点及びエネルギーコストの観点から好ましくない。
特開平5−214160号公報には、共重合体ラテックスに2個以上のシラノール基を有するケイ素化合物を添加してなるラテックス組成物が開示され、貯蔵安定性の改良効果を有することが開示されている。しかし該発明では共重合体ラテックスの粘度変化は抑制されるものの、貯蔵・保管中の固形分濃度の分布発生は抑止できない。
特開平5−255457号公報には、芯殻構造でかつ、殻部にグリシジル基含有エチレン性不飽和単量体を用いた共重合体ラテックスが開示されている。しかし該発明では共重合体ラテックス貯蔵・保管中の沈降物の発生は抑制できるものの、やはり貯蔵・保管中の固形分濃度の分布発生は抑止できない。
特開平5−214160号公報 特開平5−255457号公報
本発明は、以上のような状況に鑑み、貯蔵・保管中の固形分濃度の分布発生を抑制し、さらに、好ましくは成分の分離をなくし、機械的攪拌を施さなくとも均質な状態を長期間維持できる、貯蔵安定性に優れた共重合体ラテックス及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意研究した結果、共重合体ラテックスの製造方法及び共重合体ラテックスに関し、驚くべきことに、第一に共重合体を構成する単量体単位の組成を特定の範囲に規定すること、第二に特定の構造の化合物を用いて共重合体ラテックスを乳化重合することによって、上記課題が解決される可能性があることを見出し、さらに研究を進めて本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、以下の通りである。
[1](a)共役ジエン系単量体20〜80質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜7質量%、(c)他の共重合可能な単量体13〜79.5質量%(但し(a)+(b)+(c)=100質量%)から成る単量体混合物を、前記単量体混合物100質量部に対し、下記式で示される(イ)成分及び/又は(ロ)成分0.01〜10質量部の存在下にて、乳化重合する、共重合体ラテックスの製造方法。
Figure 2011219552
Figure 2011219552
[2]前記(イ)成分と(ロ)成分を両方用い、(イ)成分と(ロ)成分との合計量に対し、(ロ)成分の割合が50質量%以上である、前記[1]記載の共重合体ラテックスの製造方法。
[3]前記[1]又は[2]のいずれかに記載の製造方法で製造された、共重合体ラテックス。
[4](イ)成分と(ロ)成分を用いずに製造された共重合体ラテックスの貯蔵安定性の2倍以上の貯蔵安定性を有する、請求項3の共重合体ラテックス。
[5]上記[3]又は[4]の共重合体ラテックスを用いて製造される塗工紙。
本発明の共重合体ラテックスの製造方法によれば、共重合体ラテックスの貯蔵・保管時、特に低温環境の下での貯蔵・保管における固形分の分散安定性が向上し、貯蔵安定性が高い共重合体ラテックスを製造することができる。即ち、本発明の製造方法によれば、共重合体ラテックスの貯蔵・保管時に固形分濃度の分布の発生が抑制されているばかりでなく、成分の分離の発生がない共重合体ラテックスを製造することができる。
即ち、共重合体ラテックスを製造するに際し、単量体単位の組成を上記特定範囲に規定するとともに、乳化重合時に上記特定の化合物を使用することにこそ、本発明の本質が存するのである。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
また、本発明において「貯蔵安定性」とは、貯蔵時に共重合体ラテックスの固形分濃度の分布の発生が抑制される物性をいう。即ち、本発明における「貯蔵安定性」は、単に、粘度変化が抑制されたり、沈降物の発生が抑制されたりする物性とは異なるものである。
本発明の共重合体ラテックスは、(a)共役ジエン系単量体20〜80質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜7質量%、(c)他の共重合可能な単量体13〜79.5質量%(但し(a)+(b)+(c)=100質量%)から成る単量体混合物を乳化重合することによって好適に得られる。以下、これらについて順次説明する。
共重合体ラテックスの必須成分の一つである(a)共役ジエン系単量体は一般に共重合体に柔軟性を与え、接着強度、衝撃吸収性を与えるために有効な成分であり、該共重合体を構成する全単量体を100質量%とした場合、好ましくは30〜65質量%、より好ましくは32〜60質量%の割合、さらにより好ましくは34〜60質量%の割合で用いられる。これらの範囲の割合で用いられることによって、共重合体ラテックスは優れた接着強度を維持しつつ、優れた貯蔵安定性を発現する。
本発明において使用される共役ジエン系単量体の好ましい例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエンなどが挙げられ、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、共重合体ラテックスの分散安定性を確保する為に必須の成分で、共重合体ラテックスの共重合体を構成する全単量体を100質量%とした場合、好ましくは1〜5質量%、より好ましくは1.5〜4質量%、さらにより好ましくは2〜4質量%の割合で用いられる。該エチレン系不飽和カルボン酸単量体をこれらの割合で用いることにより、本発明において、共重合体ラテックスに必要な分散安定性が付与され、また共重合体ラテックスの粘度が適正化されて取扱いに支障が来たされないといった効果が奏される。
本発明におけるエチレン系不飽和カルボン酸単量体の好ましい例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の単量体などが挙げられ、これらはそれぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(c)成分である他の共重合可能な単量体は、上記(a)成分及び(b)成分以外の、(a)成分及び/又は(b)成分と共重合可能なあらゆる単量体であって、得られる共重合体ラテックスに様々な特性を付与し得るものであり、共重合体ラテックスの共重合体を構成する全単量体を100質量%とした場合、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%の割合で用いられる。
(c)成分の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのヒドロキシアルキルエステル類;アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのピリジン類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジルエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、グリシジルメタクリルアミド、N,N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド類;酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上が組み合わせて用いられる。
(c)成分の好ましい例としては、芳香族ビニル単量体、アクリル酸アルキルエステル類又はそれらの水酸化物及びシアン化ビニル単量体などが挙げられ、これらの各単量体からの1種又は2種以上を用いることはより好ましい。特に好ましい(c)成分の例として、スチレン、メタクリル酸メチル及びアクリロニトリルが挙げられ、これら3種の(c)成分をすべて用いることはさらに好ましい。
本発明では、共重合体ラテックスの製造時に、下記式で示される(イ)成分及び/又は(ロ)成分を使用することが必要である。その使用量は、用いられる単量体混合物100質量部に対し、0.01〜10質量部である。(イ)成分及び/又は(ロ)成分をこの量で使用することにより、本発明において、得られる共重合体ラテックスに優れた貯蔵安定性を付与することが可能となり、共重合体ラテックスの貯蔵・保管中に成分の分離や固形分濃度の分布を発生させることがない。
(イ)成分及び/又は(ロ)成分の好ましい使用量は、用いられる単量体混合物100質量部に対し、0.1〜8質量部であり、より好ましくは0.1〜5質量部であり、さらにより好ましくは0.3〜5質量部であり、最も好ましくは0.3〜3質量部である。
Figure 2011219552
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本発明では更に、前記(イ)成分と(ロ)成分を併用して用いることが好ましい。(イ)成分と(ロ)成分との量比は、(イ)成分と(ロ)成分との合計量に対し、(ロ)成分の割合が50質量%以上であることが好ましい。これにより貯蔵安定性の効果がより増大する。(イ)成分と(ロ)成分を併用して用いる場合、より好ましくは(ロ)成分の割合が60質量%以上であり、更により好ましくは80質量%以上であり、更に一層好ましくは90質量%以上である。
本発明の共重合体ラテックスを製造するに当たっては、上述した各成分を用いること以外に制限は特になく、水性媒体中で界面活性剤の存在下、ラジカル開始剤により重合を行うなどの方法を用いることができる。
本発明において使用される乳化剤の種類・量についても特に制限はなく、従来公知のアニオン、カチオン、両性及び非イオン性の界面活性剤を用いることができる。好ましい界面活性剤の例としては、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩及びポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル及びポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において使用される乳化剤としては、アニオン性界面活性剤がより好ましく、アルキルスルホン酸塩がとくに好ましい。また、アルキルスルホン酸塩のうち、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが一層好ましく、これらを併用することは更により好ましい。
使用される乳化剤の量は、単量体混合物100質量部当たり、0.1〜2.0質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.2〜0.8質量部であり、最も好ましくは0.2〜0.6質量部である。この範囲の量で乳化剤を使用することにより、共重合体ラテックスの分散安定性、貯蔵安定性、耐水強度をいずれもより高いレベルにすることができる。
ラジカル開始剤は、熱又は還元剤の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、本発明においては無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することが可能である。好ましいラジカル開始剤の例としてはペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などがあり、具体的にはペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル及びクメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられ、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩及びロンガリットなどの還元剤を重合開始剤と組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を用いることもできる。
本発明の共重合体ラテックスの製造においては、前記(イ)成分及び/又は(ロ)成分が用いられるところ、理論に拘泥するものではないが、これらの成分は本発明の共重合体ラテックスの製造において、連鎖移動剤及び/又は重合遅延剤として作用している可能性がある。そのため、本明細書においては、これらの成分を連鎖移動剤及び/又は重合遅延剤として分類・称呼する場合がある。
また、本発明の共重合体ラテックスを製造するに当たっては、前述の(イ)成分及び/又は(ロ)成分の他に、ラジカル重合で通常用いられる公知の連鎖移動剤や重合遅延剤を併用することが可能である。かかる連鎖移動剤や重合遅延剤の種類・量は特に制限されないが、好ましい例としては、核置換α−メチルスチレンの二量体であるα−メチルスチレンダイマー、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン及びt−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラメチルチウラジウムジスルフィド及びテトラエチルチウラジウムジスルフィドなどのジスルフィド類、四塩化炭素及び四臭化炭素などのハロゲン化誘導体、ならびに2−エチルヘキシルチオグリコレートなどがあげられ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において使用される連鎖移動剤や重合遅延剤としてはα−メチルスチレンダイマーおよびメルカプタン類がより好ましく、これらを併用することは更により好ましい。メルカプタン類としては、t−ドデシルメルカプタンがとくに好ましい。
使用される連鎖移動剤や重合遅延剤の量は、単量体混合物100質量部当たり、0.1〜2.0質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.2〜1.5質量部であり、最も好ましくは0.2〜1.0質量部である。
本発明の共重合体ラテックスを製造する場合の重合温度は、前述の様に重合の途中で温度降下を行うこと以外は特に制限はなく、通常40〜100℃の範囲であるが、生産効率と、得られる共重合体ラテックスの接着強度等の品質の観点からは、重合開始時の重合温度は、55〜85℃の範囲が好ましく、より好ましくは60〜80℃の範囲である。
本発明の共重合体ラテックスを製造する場合の重合固形分濃度は、特に制限されないが、生産効率と、乳化重合時の粒子径制御の観点から、好ましくは35〜60質量%であり、より好ましくは40〜55質量%である。ここにいう固形分濃度とは、共重合ラテックスを乾燥することにより得られる固形分質量の、乾燥前の共重合体ラテックス質量に対する割合をいう。
本発明の共重合体ラテックスの製造に際しては、粒子径の調整のため公知のシード重合法を用いることも可能であり、シードを作製後同一反応系内で共重合体ラテックスの重合を行うインターナルシード法、及び別途作製したシードを用いるエクスターナルシード法などの方法を適宜選択して用いることができる。
本発明の製造方法で得られる共重合体ラテックスのトルエン不溶分の量は特に制限されないが、80〜96質量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは85〜95質量%の範囲にあることであり、最も好ましくは89〜93質量%の範囲にあることである。該トルエン不溶分の量をこれらの範囲とすることにより共重合体ラテックスのベタツキ性が一層向上し、例えば紙塗工用途においてバッキングロール汚れ等のロール汚れトラブルを回避することと、優れたピック強度、湿潤ピック強度、印刷光沢をより顕著に達成することが可能となる。
共重合体ラテックスのトルエン不溶分の調整は、重合反応中に使用する連鎖移動剤の使用量を調整することにより可能である。前記連鎖移動剤の重合系内への添加方法としては、一括添加、回分的添加、連続的添加のいずれでもよく、これらを組み合わせてもよい。
また、本発明の製造方法で得られる共重合体ラテックスの粒子径も特に制限されないが、60〜300nmであることが好ましい。該粒子径は、より好ましくは70〜200nmであり、最も好ましくは80〜150nmである。この範囲の粒子径に設定することにより、共重合体ラテックスの粘度を好適な範囲に調整することが可能であり、作業性の低下を防ぐことができる。この範囲の粒子径に設定することにより、更には、一層優れた貯蔵安定性を達成することが可能となる。
共重合体ラテックスには、必要に応じて公知の各種重合調整剤を用いることができる。これらはたとえばpH調整剤及びキレート剤などであり、pH調整剤の好ましい例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムなどが挙げられ、キレート剤の好ましい例としてはエチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明においては、共重合体ラテックスの、最終製品としての固形分濃度についても特に制限はなく、該固形分濃度は通常30〜60質量%の範囲に希釈又は濃縮して調製される。
本発明の共重合体ラテックスには、その効果を損ねない限り、必要に応じて各種添加剤を添加すること、あるいは他のラテックスを混合して用いることが可能であり、例えば分散剤、消泡剤、老化防止剤、耐水化剤、殺菌剤、印刷適性向上剤及び滑剤などを添加することが可能であり、アルカリ感応型ラテックス又は有機顔料などを混合して用いることもできる。
本発明において、貯蔵安定性の評価は、共重合体ラテックスにおける固形分濃度の分布を測定することによって行うことができる。例えば、評価の対象である共重合体ラテックスを所定の固形分濃度及びpHに調整し、容器内に密閉して4℃程度の温度で所定の期間にわたり静置保管した後、上方及び下方の部分から貯蔵後の前記共重合体ラテックスのサンプルをサンプリングし、それぞれのサンプルにおける固形分濃度を測定し、それらの値の差を貯蔵安定性の指標とすることができる。各固形分濃度の差が小さい程、貯蔵安定性は相対的に良好であると判断される。同各固形分濃度の差が所定の値以下に補助される期間が長いほど、貯蔵安定性は相対的に良好であると判断することもできる。
本発明における貯蔵安定性は、評価系や貯蔵期間によって変動し得るが、上記各固形分濃度の差は、例えば貯蔵期間3ヶ月において、好ましくは約4.0%以下であり、より好ましくは約2.0%以下であり、最も好ましくは約1.0%以下である。
なお、前述の(イ)成分と(ロ)成分を用いない場合と、上記各固形分濃度の差を比較することによる相対的な貯蔵安定性は、本発明において好ましくは2倍以上であり、より好ましくは4倍以上であり、最も好ましくは8倍以上である。
また、本発明における上記各固形分濃度の差が約4.0%以下に保たれる貯蔵期間は、好ましくは約1ヶ月であり、より好ましくは約2ヶ月であり、最も好ましくは約3ヶ月以上である。
また、本発明において、共重合体ラテックスにおける分散安定性の評価も、貯蔵安定性の評価系と同様な系によって同時に行うことができる。例えば、分散安定性の評価は、貯蔵後の共重合体ラテックスの外観を容器の外から目視で観察し、分離した界面の有無を判定することによって行うことができる。
本発明の共重合体ラテックスは、紙塗工用顔料バインダー、各種接着剤及び粘着剤、不織布や人工皮革などの繊維結合用バインダーあるいは塗料等の製品の原料として用いることができるところ、これら製品の製造方法は特に限定されず、本技術分野における通常の方法を用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例の具体的態様に限定されるものではない。
[各物性の評価方法]
(1)貯蔵安定性
共重合体ラテックスを固形分濃度50%、pH=8.0に調製し、内径100mm、内高150mmの容器に1000mlを採取した後、容器を密閉して4℃で3ヶ月間静置保管した。その後容器内の底面から10mm上方の部分、及び液面から10mm下方の部分からサンプリングし、それぞれの固形分濃度を測定した。両者の固形分濃度の差が小さい程、貯蔵安定性は良好である。
(2)分離の有無
上記(1)と同じ方法で共重合体ラテックスを調製し、上記(1)と同じ方法で4℃で6ヶ月間静置後、容器の外から外観を目視で観察し、分離した界面の有無を判定した。
(3)共重合体ラテックスの粒子径
共重合体ラテックスを透過型電子顕微鏡で観察し、画像処理装置を用いて平均粒子径を算出した。
(4)共重合体ラテックスのトルエン不溶分
共重合体ラテックスのpHを8に調整した後、130℃で30分乾燥させて成膜させた。このフィルム0.5gをトルエン30ccに浸せきし、3時間振とう後目開き45μmの金属網にてろ過して不溶分を採取し、130℃で1時間乾燥させて不溶分の質量を測定し、次式でトルエン不溶分(質量%)を求めた。
(乾燥後のトルエン不溶分質量/浸せき前に採取したフィルム質量)×100
[実施例1]
共重合体ラテックスAの製造
攪はん機と内部温度調整用の温水ジャケット、及び各種原材料の定量添加設備を備えた耐圧反応器に、重合初期の原料として水78質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.1質量部、α−メチルスチレンダイマー0.3質量部、イタコン酸2.5質量部からなる重合初期原料を一括して仕込み、75℃にて充分に攪拌した。次いで、予め調製しておいた、スチレン43質量部、1,3−ブタジエン40質量部、メタクリル酸メチル1質量部、アクリロニトリル12質量部、ヒドロキシエチルアクリレート0.5質量部、アクリル酸1質量部、t−ドデシルメルカプタン0.02質量部、前述の式(イ)で示される化合物0.1質量部、及び前述の式(ロ)で示される化合物1.3質量部から成る、単量体及び連鎖移動剤/重合遅延剤混合物を、6時間かけて一定量で耐圧反応器内に添加した。
単量体及び連鎖移動剤/重合遅延剤混合物の添加と同時に、水17質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.2質量部、及びペルオキソ二硫酸ナトリウム0.75質量部からなる水系混合物の添加を開始し、単量体及び連鎖移動剤/重合遅延剤混合物の添加終了まで連続的に添加し、重合反応を加速させた。その後60分間かけて重合温度を95℃まで昇温し、最終的な重合転化率を引き上げた。
この共重合体ラテックスには、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを添加してpHを6.0以上に調整し、スチームストリッピング法で未反応の単量体を除去した後、水酸化ナトリウムを用いてpHを8.0に調整し、固形分濃度を50質量%に調整した。なお、これらの製造条件を表1にまとめた。
次に、このようにして得られた共重合体ラテックスAについて、貯蔵安定性、分離の有無、粒子径、トルエン不溶分を評価した。その結果、優れた結果が得られた(表1)。
[実施例2〜6]
表1に示す如く、重合の原料を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で共重合体ラテックスB〜Fを得た。得られた共重合体ラテックスを使用し、実施例1と同様の条件で共重合体ラテックスの評価を行い、結果を表1に記載した。
貯蔵安定性の数値は0.05%〜0.55%であり、いずれの共重合体ラテックスにおいても良好な結果が得られた。また、分離はいずれの共重合体ラテックスにおいても発生しなかった。
Figure 2011219552
[比較例1〜6]
表2に示す如く、重合の原料を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で共重合体ラテックスK〜Pを得た。得られた共重合体ラテックスを使用し、実施例1と同様の条件で共重合体ラテックスの評価を行い、結果を表2に記載した。
Figure 2011219552
共重合体ラテックスK〜Pの貯蔵安定性の数値は4.30%〜7.05%であり、いずれも本発明の共重合体ラテックスA〜Fに比較して著しく劣った。特に、(イ)成分及び(ロ)成分のいずれをも用いていない共重合体ラテックスKにおける貯蔵安定性の数値は4.50%であったところ、この貯蔵安定性の数値は、上記各成分をそれぞれ0.02%及び0.1%用いた本発明の共重合体ラテックスAの貯蔵安定性(数値:0.05%)の1/90にすぎなかった。
また、(イ)成分及び(ロ)成分を10質量部より多く添加した共重合体ラテックスL及びOにおいても、貯蔵安定性の数値はいずれも6.00%であり、本発明の共重合体ラテックスの貯蔵安定性をはるかに下回っていた。
さらに、共重合体ラテックスK〜Pでは、いずれにおいても分離が発生した。
以上の結果より、本発明の共重合体ラテックスの製造方法によれば、貯蔵安定性を高めた共重合体ラテックスを製造することができることが明らかである。
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、長期貯蔵・保管後も固形分濃度の分布が実質的にない共重合体ラテックスを提供することができる。特に低温下での保管に際し有効な技術である。したがって、本発明は、特に塗工紙製造業、塗料製造業及び関連産業の発展に寄与するところ大である。

Claims (5)

  1. (a)共役ジエン系単量体20〜80質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜7質量%、(c)他の共重合可能な単量体13〜79.5質量%(但し(a)+(b)+(c)=100質量%)から成る単量体混合物を、前記単量体混合物100質量部に対し、下記式で示される(イ)成分及び/又は(ロ)成分0.01〜10質量部の存在下にて、乳化重合する、共重合体ラテックスの製造方法。
    Figure 2011219552

    Figure 2011219552
  2. 前記(イ)成分と(ロ)成分を両方用い、(イ)成分と(ロ)成分との合計量に対し、(ロ)成分の割合が50質量%以上である、請求項1記載の共重合体ラテックスの製造方法。
  3. 請求項1又は2のいずれか一項に記載の製造方法で製造された、共重合体ラテックス。
  4. (イ)成分と(ロ)成分を用いずに製造された共重合体ラテックスの貯蔵安定性の2倍以上の貯蔵安定性を有する、請求項3の共重合体ラテックス。
  5. 請求項3又は4の共重合体ラテックスを用いて製造される塗工紙。
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