JP2011219290A - 電気抵抗の小さい吹付け用モルタル、吹付け用モルタル硬化体、及びそれを用いたコンクリート構造物内部にある鋼材の防食方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セメントを含有する結合材、細骨材、減水剤、及び水を配合したモルタル組成物を使用してなり、水結合材比が35〜55%、単位水量が250〜400kg/m3のモルタル配合を用いて調製した、0打モルタルフロー値が200〜320mmのモルタルに、アルミン酸ナトリウムを添加して得られ、その硬化体の電気抵抗率が100kΩ・cm以下で、収縮量が-800×10-6以下である電気抵抗の小さい吹付け用モルタル、該吹付け用モルタルの硬化体の表面に、有機−無機複合型塗膜養生剤を塗布してなるモルタル硬化体、該吹付け用モルタル硬化体又は該モルタル硬化体を用いたコンクリート構造物内部にある鋼材の防食方法を構成とする。
【選択図】なし
Description
このような、腐食電池の発生により誘発される鋼材の腐食を防止する手段として、コンクリート構造物に陽極を設置し、該陽極からコンクリート中の鋼材に直流電流を流し続けることにより、コンクリート中の鋼材の電位を制御し、鋼材の腐食反応を電気化学的に抑制する電気防食工法が推奨されており、コンクリート構造物の補修工法の一つとして利用されている。
この防食工法に用いられる陽極材としては、チタン系やカーボン系のロッドやリボンなどが多く用いられているが、この陽極の抵抗率を低減するためや不活性化を防止するために、当該陽極の性能を保護するための保護材料で陽極周辺を充填・被覆し、既設コンクリートと一体化する必要がある。この保護材料としてモルタルが用いられる。
しかしながら、水結合材比や単位水量を大きくすると、モルタルの流動性が大きくなってダレが生じるため、そのままでは使用できない場合がある。また、水結合材比や単位水量を大きくすると、乾燥収縮が大きくなるので、電気抵抗を小さくすることと、収縮を小さくすることとを両立させるのは難しい。
しかしながら、乾燥によりモルタル硬化体の表面から水分が逸散し、長期的には電気抵抗が大きくなるという課題があった。
しかしながら、有機−無機複合型塗膜養生剤をモルタルやコンクリートの硬化体の表面に塗布することが電気抵抗に関して、どのような効果が発揮されるかについては知られていない。
これらを電気防食に用いることにより、コンクリート構造物中の鋼材の防食において、高い防食効果が得られる。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り、質量基準で示す。
結合材とは、セメント、又はセメントと、必要に応じ併用するシリカフューム、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、膨張材、急硬材、及び高強度混和材等の各種混和材との配合物をいう。
また、高炉徐冷スラグ細骨材、電気炉酸化期スラグ系細骨材、並びに、フェロニッケルスラグ、フェロクロムスラグ、銅スラグ、亜鉛スラグ、及び鉛スラグなどを総称する非鉄精錬スラグ細骨材等が、橄欖岩(かんらん岩)系細骨材、いわゆるオリビンサンド、及びエメリー鉱等が挙げられる。本発明では、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
細骨材の使用量は特に限定されるものではなく、用途や要求される作業性に応じて適宜調整される。
減水剤の使用量は特に限定されるものではなく、用途や要求される作業性に応じて適宜調整される。
モルタルを調製する際の水結合材比は、35〜55%であり、40〜50%が好ましい。水セメント比が35%未満では、モルタル硬化体中の自由水の量が少なくなるため、電気抵抗が大きくなり、充分な防食効果が得られなくなるおそれがあり、55%を超えると、アルミン酸ナトリウムを添加しても吹付けたときにダレが生じる場合がある。
本発明では、膨張性能が良好なことから、遊離石灰−水硬性化合物−無水セッコウ系膨張材を用いることが好ましい。
遊離石灰−水硬性化合物−無水セッコウ系膨張材において、水硬性化合物が、アウイン、カルシウムフェライト、及びカルシウムアルミノフェライトなどの一種又は二種以上から構成される膨張材は、遊離石灰から消石灰を生成するとともに、水硬性化合物と無水セッコウからエトリンガイトも生成する。このため、エトリンガイトに因んで、カルシウムサルホアルミネート系膨張材と称されるものや、エトリンガイト−石灰複合系膨張材と称されるものがある。
このような膨張材としては、各社より市販されている膨張材や静的破砕材が利用可能である。膨張材や静的破砕材は、多数市販されており、その代表例としては、電気化学工業社製、商品名「デンカCSA」や「デンカパワーCSA」、住友大阪セメント社製、商品名「サクス」、太平洋マテリアル社製、商品名「エクスパン」、「N-EX」、「ブライスター」、及び「太平洋ジプカル」などが挙げられる。
膨張材の使用量は、セメント100部に対して、2〜20部が好ましい。
収縮低減剤の使用量は、セメント100部に対して、1〜6部が好ましい。
繊維の使用量は、結合材、細骨材、及び減水剤を含有してなるモルタル組成物100容量部中、0.01〜1.0容量部が好ましい。
ここで、乳化重合は、重合すべき単量体を混合し、これに乳化剤や重合開始剤等を加え水系で行なう一般的な乳化重合方法である。
膨潤性粘土鉱物との配合安定性を得るには、アンモニア、アミン類、及びカセイソーダなどの塩基性物質を使用し、pH5以上に調整したものが好ましい。
合成樹脂水性分散体の粒子径は、一般的に100〜300nmであるが、60〜100nm程度の小さい粒子径のものが好ましい。
水溶性樹脂としては、純水への溶解度が常温で1%以上であるものであれば良く、樹脂単位重量当たりの水素結合性基又はイオン性基が10〜60%であることが好ましい。
また、平均分子量は2,000〜1,000,000が好ましい。
水溶性樹脂の使用量は、合成樹脂水性分散体の固形分100部に対して、固形分換算で0.05〜200部が好ましい。
そのうち、日本ベントナイト工業会、標準試験方法 JBAS-104-77に準じた方法で測定した膨潤力が20ml/2g以上の粘土鉱物、特に、ベントナイトが好ましい。
また、イオン交換当量が100g当たり、10ミリ当量以上ものが好ましい。
さらに、そのアスペクト比が50〜5,000のものが好ましい。アスペクト比とは、電子顕微鏡写真により求めた層状に分散した粘土鉱物の長さ/厚みの比である。
膨潤性粘土鉱物の使用量は、合成樹脂水性分散体の固形分100部に対して、1〜50部が好ましい。
架橋剤の使用量は、合成樹脂水性分散体と水溶性樹脂の合計の固形分100部に対して、固形分換算で0.01〜30部が好ましい。
有機−無機複合型塗膜養生剤は、吹付け用モルタルの凝結が終結した後、表面に塗布することが好ましい。時間が経つと、モルタルの表面が乾燥し、ひび割れが発生しやすくなる。
このような有機−無機複合型塗膜養生剤としては、電気化学工業社の「RISフルコート」や「クラッコフ」、東亞合成社の「CA2」シリーズを用いることができる。
本発明の吹付け用モルタル硬化体に、本発明の塗膜養生剤を塗布することにより、長さ変化率をさらに低減してひび割れを抑制するばかりでなく、長期的にモルタル硬化体の電気抵抗を小さく保ち、防食効果を高めることができる。
セメントと、セメント100部に対し、膨張材A5部、膨張材B5部、及び収縮低減剤3部の混和材からなる結合材、細骨材、減水剤、及び繊維を配合してモルタル組成物を調製し、モルタル組成物100容量部中、繊維を0.15容量部として、表1に示す、水結合材比と単位水量のモルタル配合を用い、表1に示すモルタルフロー値のモルタルを調製した。
その後、セメント100部に対して、アルミン酸ナトリウムを固形分換算で1部添加して吹付けた。アルミン酸ナトリウムを添加する前後でモルタルフロー値を測定し、添加後のダレの有無を評価した。4×4×16cmの供試体を作製し、材齢28日で電気抵抗率と長さ変化率を測定した。既設コンクリート板の上に、縦30cm、横30cm、厚さ3cmとなるように吹付け用モルタルを吹付け、材齢28日でひび割れの発生状況を観察した。結果を表1に併記する。
セメント :普通ポルトランドセメント、密度3.15g/cm3、ブレーン値3,100cm2/g
膨張材A :エトリンガイト−石灰複合系膨張材、ブレーン値3,000cm2/g
膨張材B :カルシウムサルホアルミネート系膨張材、ブレーン値6,000cm2/g
収縮低減剤:粉末収縮低減剤、市販品
繊維 :ビニロン繊維、密度1.30g/cm3、市販品
減水剤 :β−ナフタレンスルホン酸系減水剤、市販品
細骨材 :石灰石砕砂、密度2.70g/cm3
アルミン酸ナトリウム:水溶液(固形分濃度50%)、市販品
モルタルフロー値:調製したモルタルをJIS R 5201に準拠して測定。但し、アルミン酸ナトリウムの添加前は0打モルタルフロー値、添加後は15打モルタルフロー値(それぞれフローテーブルをタッピングしない静置状態での値と、15回タッピング後の値)。
電気抵抗率:供試体を作製した翌日に脱型し、20℃、60%RHで養生した後、四電極法にて測定(印加電圧10V、測定周波数73.3Hz)。
長さ変化率:JIS A1171に準拠。収縮量の評価
ダレの有無:調製した吹付け用モルタルを吹付け、ダレが生じた場合を不可(×)、ダレがない場合を可(○)とした。
ひび割れ :ひび割れ抵抗性で、ひび割れが発生した場合を不可(×)、ひび割れの発生がない場合を可(○)とした。
水結合材比を42%、単位水量を300kg/m3、アルミン酸ナトリウムを添加する前の0打モルタルフロー値を250mmとし、表2に示すアルミン酸ナトリウムを使用し、圧縮強度を測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
圧縮強度 :JIS R5201に準拠し、材齢28日で測定。
実験No. 1-4で使用した吹付け用モルタルを使用し、表3に示す塗布量で有機−無機複合型塗膜養生剤を塗布したこと以外は実験例1と同様に行った。
なお、比較のために、従来の塗膜養生剤を使用した場合についても同様に行った。結果を表3に併記する。
有機−無機複合型塗膜養生剤:アクリル樹脂-フッ素雲母の複合型塗膜養生剤
従来の塗膜養生剤:EVA系塗膜養生剤、市販品
単位セメント量が330kg/m3、水セメント比が60%、s/aが52%、NaClの添加量が12kg/m3のコンクリートで15×15×53cmの供試体を作製した。
このとき、供試体の軸方向の中央にφ13mmのみがき鋼棒を設置した。コンクリートの表面近傍を切削し、陽極のチタンリボンを埋設した後、実験No.1-4の吹付け用モルタルを充填した。その後その表面に有機−無機複合型塗膜養生剤を200g/m2となるように塗布した。電流密度0.03A/m2で電気防食を行い、実験開始直後、1ヵ月後、6ヵ月後、及び1年後のモルタル硬化体の電気抵抗率を測定した。
また、1年後にみがき鋼棒の発錆の有無と吹付け用モルタルと塗膜の劣化の有無を観察した。
なお、有機−無機複合型塗膜養生剤を用いない場合と、比較として、有機系塗料を塗布した場合についても同様に行った。結果を表4に併記する。
有機系塗料:エポキシ系、市販品
一方、有機系塗料を使用した場合には、みがき鋼棒の発錆を抑制するが、塩素ガスなどが透過せず、モルタル硬化体と塗膜が劣化するため、長期的にモルタル硬化体の電気抵抗が増加する。
Claims (9)
- セメントを含有する結合材、細骨材、減水剤、及び水を配合したモルタル組成物を使用してなり、水結合材比が35〜55%、単位水量が250〜400kg/m3のモルタル配合を用いて調製した、0打モルタルフロー値が200〜320mmのモルタルに、アルミン酸ナトリウムを添加して得られ、その硬化体の電気抵抗率が100kΩ・cm以下で、収縮量が-800×10-6以下である電気抵抗の小さい吹付け用モルタル。
- セメント100部に対して、アルミン酸ナトリウムを固形分換算で0.1〜10部添加して練混ぜて得られる、請求項1に記載の電気抵抗の小さい吹付け用モルタル。
- 請求項1又は請求項2に記載の電気抵抗の小さい吹付け用モルタルが硬化してなる吹付け用モルタル硬化体。
- 請求項3に記載の吹付け用モルタル硬化体の表面に、有機−無機複合型塗膜養生剤を塗布してなるモルタル硬化体。
- 有機−無機複合型塗膜剤が、合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂、及び膨潤性粘土鉱物を含有してなる請求項4に記載のモルタル硬化体。
- 有機−無機複合型塗膜剤の膨潤性粘土鉱物が、合成フッ素雲母である請求項5に記載のモルタル硬化体。
- 有機−無機複合型塗膜剤の使用量が、100〜500g/m2である請求項4〜6のうちのいずれか1項に記載のモルタル硬化体。
- 請求項3に記載の吹付け用モルタル硬化体を用いた、コンクリート構造物内部にある鋼材の防食方法。
- 請求項4〜請求項7のうちのいずれか1項に記載のモルタル硬化体を用いた、コンクリート構造物内部にある鋼材の防食方法。
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