JP2014084260A - 電気抵抗値の小さい吹付け用補修モルタル及びそれを用いた補修工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セメント、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル系収縮低減剤、膨張材、減水剤、及び細骨材を含有するセメントモルタルに、Al2O3換算で7質量%以上の硫酸アルミニウム水溶液からなる凝結促進剤を配合してなり、さらに、セメント由来以外のカルシウムアルミネートと石膏を含まないことを特徴とする、材齢6ヶ月の硬化体の電気抵抗値が1000Ωm以下である吹付け用補修モルタルであり、繊維類を含有する前記吹付け用補修モルタルであり、前記吹付け用補修モルタルを用いて、劣化したコンクリートを取り除いた断面を修復することを特徴とするコンクリート構造物の補修工法、
を構成とする。
【選択図】なし
Description
また、流電陽極方式では、内部鋼材よりイオン化傾向の大きい亜鉛などの金属を陽極材として導通させることにより、防食電流を確保し防食するものであり、この電流が適切に流れている限り、鋼材の腐食による劣化の進行が抑制できるものである。
また、流電陽極方式においては、硬化体の電気抵抗値が大きくなると、防食に有効な電流量の確保が困難となるため、硬化体の電気抵抗値を小さくすることが重要である。電気防食工法を必要とするコンクリートは既に劣化を受けている箇所も多く、この部位はセメントモルタル系の断面修復材が用いられ、保護モルタルと同様に電気抵抗値の小さい材料が求められる。
また、材齢初期ではモルタル中の自由水が多いため電気抵抗値は小さいが、水和の進行とモルタル中からの水分の一散により材齢の進行とともに電気抵抗値が大きくなるため、長期にわたり電気抵抗値の小さいモルタルが求められている。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り、質量基準で示す。
RO−(AO)n−H (1)
(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を表し、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキン基を表し、nは、1〜100の数を表す。)
流動性の保持性能の観点から、用いる減水剤はポリカルボン酸系が好ましく、その使用量は、セメント100部に対して、0.02〜1部が好ましく、0.1〜0.8部がより好ましい。0.02部未満では、流動性を改善する効果が発揮されない場合があり、1部を超えると、流動性が良すぎ吹付けたときにダレや跳ね返りが多くなる場合がある他、セメントの凝結が遅れ、弱材齢での強度が低下する場合がある。
膨張材の使用量は、通常、セメント100部に対して、2〜10部が好ましく、4〜8部がより好ましい。2部未満ではモルタルのひび割れ防止が充分できない場合があり、10部を超えて配合してもその効果の向上が期待できない。
骨材の使用量は、セメント100部に対して、100〜250部が好ましい。100部未満では吹付けたときにダレが多くなったり、硬化後のひび割れが入りやすくなったり場合があり、250部を超えると跳ね返りが多くなったり、十分な硬化体強度が得られない場合がある。
骨材の最大粒度は2.5mm以下が好ましく、1.2mm以下がより好ましい。この範囲より大きい場合、跳ね返りが多くなったり、施工後の表面仕上げが困難になる場合がある。
硫酸アルミニウム水溶液は、単独、あるいは硫酸アルミニウム水溶液単独に凝結促進効果を害さない範囲で各種添加物を併用したものも使用可能である。本発明の硫酸アルミニウム水溶液単独に凝結促進効果を害さない範囲で各種添加物を併用したものとは、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等に代表されるアミン類、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム等の硝酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素塩、水酸化アルミニウム、氷晶石、炭酸アルミニウムを添加物とした硫酸アルミニウム水溶液を主成分とする凝結促進剤である。
Al2O3換算で7%未満の場合は、モルタル中に添加した場合、水溶液であるため、同時に単位水量も結果的に増加することから凝結促進の小さくなり、セメントに対する凝結促進剤の添加率を上げてもダレる場合があり、シマリが遅いため初期乾燥によるひび割れ発生する場合がある。
本発明の硫酸アルミニウム水溶液を主成分とする凝結促進剤の使用量は、セメント100部に対して、固形分で0.2〜3.5部であり、0.5〜2.5部が好ましい。0.3部未満では、吹き付けてもダレたり、電気抵抗値が大きくなる場合があり、3.5部を超えると長期強度発現性を阻害するおそれがある。
凝結促進剤として使用する硫酸アルミニウム水溶液は、吹付けノズルの先端でモルタルと混合する。モルタルをスクイズポンプ等の圧送ポンプで圧送し、凝結促進剤を別の定量ポンプで別途圧送して、圧縮空気とともに吹付けノズル先端で混合する。凝結促進剤を混合する前は、圧送ホース内での流動性が優れるため、ポンプ圧送性は良好である。
本発明でいう電気抵抗値とは、土木学会規準JSCE−K562−2008「四電極法による断面修復材の体積抵抗率測定方法(案)」に準拠して測定を行なった供試体の電気抵抗値のことを示す。供試体の養生は、通常、養生時の相対湿度が大きいほど、電気抵抗値が小さくなる傾向にあるが、本発明では材齢24時間で脱型後7日間封かん養生を行い、以降20℃−60%RHしたものとする。
繊維類としては、ビニロン繊維やプロピレン繊維に代表される高分子繊維類、鋼繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維に代表される無機繊維類が挙げられ、特に限定されるものではない。
繊維類の使用量は、セメントモルタル100容量部に対して、0.05〜3容積部が好ましく、0.1〜2容積部がより好ましい。0.05容積部未満では曲げ耐力や初期ひび割れ抵抗性を向上させる効果が発揮されない場合があり、3容積部を超えるとモルタルの流動性に悪影響を与える場合がある。
繊維の長さは、曲げ耐力の付与とポンプ圧送性を考慮して3〜40mmが好ましい。
本発明の吹付け材料で吹付けた面は、コテ仕上げを行わないでそのままの状態でもよく、美観を求められる場合はコテ仕上げを行うことも可能である。コテ仕上げを行える時間は、本発明の凝結促進剤の使用量および気温等によって異なるが、概ね、10〜120分の範囲である。例えば、凝結促進剤使用量が多くなるほど、気温が高くなるほどコテ仕上げを行える時間は短くなり、凝結促進剤使用量が少なくなるほど、気温が低くなるほどコテ仕上げを行える時間は長くなる。コテ仕上げを行う場合は、コテ仕上げを行う層のみをコテ作業の時間を考慮して凝結促進剤の使用量を少なくして吹付けることも可能である。
一方、本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤では、水分の逸散を抑制するが、塩素ガスなどは緩やかに透過するため、モルタルや塗膜が劣化しないものである。
例えば、スチレンを主体としたスチレン・ブタジエン系ラテックス、スチレン・アクリル系エマルジョンやスチレンと共重合したメチルメタクリレート・ブタジエン系ラテックス、エチレン・アクリルエマルジョンである。合成樹脂エマルジョンには、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものがより望ましい。
ここで、乳化重合は、重合すべき単量体を混合し、これに乳化剤や重合開始剤等を加え水系で行なう一般的な乳化重合方法である。
膨潤性粘土鉱物との配合安定性を得るには、アンモニア、アミン類、及びカセイソーダなどの塩基性物質を使用し、pH5以上に調整したものが好ましい。
合成樹脂水性分散体の粒子径は、一般的に100〜300nmであるが、60〜100nm程度の小さい粒子径のものが好ましい。
水溶性樹脂としては、純水への溶解度が常温で1%以上であるものであれば良く、樹脂単位重量当たりの水素結合性基又はイオン性基が10〜60%であることが好ましい。
また、平均分子量は2,000〜1,000,000が好ましい。
水溶性樹脂の使用量は、合成樹脂水性分散体の固形分100部に対して、固形分換算で0.05〜200部が好ましい。
例えば、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、マイカ、及びベントナイトなどである。これらは天然品、合成品、及び加工処理品のいずれであっても使用可能である。そのうち、日本ベントナイト工業会、標準試験方法 JBAS−104−77に準じた方法で測定した膨潤力が20ml/2g以上の粘土鉱物、特に、ベントナイトが好ましい。
また、イオン交換当量が100g当たり、10ミリ当量以上ものが好ましい。
さらに、そのアスペクト比が50〜5,000のものが好ましい。アスペクト比とは、電子顕微鏡写真により求めた層状に分散した粘土鉱物の長さ/厚みの比である。
膨潤性粘土鉱物の使用量は、合成樹脂水性分散体の固形分100部に対して、1〜50部が好ましい。
架橋剤の使用量は、合成樹脂水性分散体と水溶性樹脂の合計の固形分100部に対して、固形分換算で0.01〜30部が好ましい。
有機−無機複合型塗膜養生剤は、吹付け用補修モルタルの凝結が終結した後、表面に塗布することが好ましい。時間が経つと、吹付け用補修モルタルの表面が乾燥し、ひび割れが発生しやすくなる。
このような有機−無機複合型塗膜養生剤としては、電気化学工業社の「RISフルコート」や「クラッコフ」、東亞合成社の「CA2」シリーズを用いることができる。
本発明の吹付け用補修モルタル硬化体に、本発明の塗膜養生剤を塗布することにより、長さ変化率をさらに低減してひび割れを抑制するばかりでなく、長期的にモルタル硬化体の電気抵抗値を小さく保ち、防食効果を高めることができる。
セメントと、セメント100部に対し、骨材160部、収縮低減剤5部、膨張材6部と減水剤0.25部と表1に示す急硬材と凝結調節剤を加えたドライセメントモルタルを調製した。
このドライセメントモルタルに、セメント100部に対して水40部を加えモルタルミキサで練混ぜ、これに凝結促進剤を添加し10秒間練混ぜて作製したモルタル硬化体について、圧縮強度、長さ変化率、硬化体の電気抵抗値、及びひび割れ抵抗性を測定した。
セメント:普通ポルトランドセメント(市販品)
骨材:新潟県青海町産石灰砂乾燥品 最大粒径1.2mm
膨張材イ:カルシウムサルフォアルミネート系膨張材(市販品)
収縮低減剤A:ポリオキシアルキレン誘導体 HO−(CH2CH2O)189−H (市販品)
収縮低減剤B:ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(市販品)
減水剤:ポリカルボン酸系減水剤(市販品)
急硬材:非晶質12CaO・7Al2O3とII型無水石膏の等量混合物
凝結調節剤:凝結調整剤:試薬1級のクエン酸25部と試薬1級の炭酸カリウム75部の混合物
凝結促進剤A:硫酸アルミニウム水溶液 Al2O3含有率8.1質量%
長さ変化率(収縮率):JIS A1171に準拠した。測定材齢は28日。
圧縮強度:JIS R5201に準拠した。測定材齢は28日、91日。
電気抵抗値:土木学会規準JSCE−K562−2008「四電極法による断面修復材の体積抵抗率測定方法(案)」に準拠した。供試体は材齢24時間で脱型後7日間封かん養生を行い、以降20℃−60%RH養生。測定材齢は28日,91日,6ヶ月
電気抵抗値の測定条件
・印加交流電圧(V):5V
・周波数:73.3Hz
・試験体の断面積(A):0.016m2
・電位差電極間の距離(L):0.04m
ひび割れ抵抗性:東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社JHS−432「断面修復用吹付けモルタルの試験方法 ひび割れ抵抗性試験方法」による
また、急硬材を添加した実験No.1-10,1-11は、急硬材の反応により自由水が固定されたことで、実施例に比べ電気抵抗値が高かったものと推定する。
さらに、実験No.1-2の硫酸アルミニウム水溶液の無添加配合の電気抵抗値は、実験No.1-3〜1-9の添加品に比べ高値を示している。これは、硫酸アルミニウムの電解質イオンの存在によるものではないかと推察する。
表2に示す膨張材と収縮低減剤Bを用い、実験No.1-7において、膨張材の種類と量を変えたこと以外は、実験例1と同様な試験を行った。試験結果を表2に併記する。
膨張材ロ:カルシウムアルミノフェライト系膨張材(市販品)
収縮低減剤Bを用い、実験No.1-7において、表3に示す練混ぜ水量を変えたこと以外、実験例1と同様な試験を行った。試験結果を表3に併記する。
実験例1の実験No.1-7において、表4に示すように、凝結促進剤の種類と量を変え、さらに、繊維類を加えドライモルタルを調製した。このドライセメントモルタルに、セメント100部に対して水40部を加え、左官ミキサで練混ぜセメントモルタルを調製した。このセメントモルタルを圧送し、途中で、凝結促進剤として硫酸アルミニウム水溶液をセメント100部に対して固形分で表に示すようになるように圧縮空気と共に加え吹き付け、厚付け性と受風下でのひび割れ抵抗性を測定した。結果を表4に示す。
繊維類:ビニロン繊維 長さ6mm×繊維径200μm(市販品)
凝結促進剤B:硫酸アルミニウム水溶液 Al2O3含有率 7.2%
凝結促進剤C:硫酸アルミニウム水溶液 Al2O3含有率 6.5%
厚付け性:コンクリートでできた天井面とノズル先端の距離を50cmとしてモルタルを吹き付け、落下しないで天井面に付着している最大の厚さ。
受風下でのひび割れ抵抗性:既設コンクリート板の上に、縦30cm、横30cm、厚さ3cmとなるように打設し、打設直後から30℃−35%RHにおいて風速3m/sの風を当てて、ひび割れ抵抗性を測定した。
実験No.1-7で使用したモルタルを使用し、表3に示すように、有機−無機複合型塗膜養生剤の塗布量を変えて塗布したこと以外は実験例1と同様に行った。なお、比較のために、従来の塗膜養生剤を使用した場合についても同様に行った。結果を表5に併記する。
塗膜養生剤A:有機−無機複合型塗膜養生剤(アクリル樹脂−フッ素雲母の複合型塗膜養生剤)
塗膜養生剤B:EVA系塗膜養生剤(従来の塗膜養生剤)、市販品
実験No.1-7で使用したモルタルを使用して、ポンプ圧送性を確認した。比較として市販の吹付け用ポリマーセメントを用いた。施工システムは次の通りとした。練混ぜたモルタルをモルタルホッパーに入れ、スクイズポンプで所定の長さの耐圧ホースを接続し、先端に吹付けノズルを接続して、吹付けノズル先端で圧縮空気によりモルタルと凝結促進剤を混合・吹付けした。そのときのホース延長とポンプの吐出圧の関係を測定した。
吹付け用ポリマーセメントモルタル;市販品
圧送ポンプ:スクイズポンプ(3.7kW)
圧送ホース:内径40mm
圧送ホースの長さ:10〜120m
Claims (7)
- セメント、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル系収縮低減剤、膨張材、減水剤、及び細骨材を含有するセメントモルタルに、Al2O3換算で7質量%以上の硫酸アルミニウム水溶液からなる凝結促進剤を配合してなり、さらに、セメント由来以外のカルシウムアルミネートと石膏を含まないことを特徴とする、材齢6ヶ月の硬化体の電気抵抗値が1000Ωm以下である吹付け用補修モルタル。
- セメント100質量部に対して、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル系収縮低減剤が1〜10質量部、膨張材が2〜10質量部、減水剤が0.02〜1質量部、細骨材が100〜250質量部であり、Al2O3換算で7質量%以上の硫酸アルミニウム水溶液が固形分で0.2〜3.5質量部である、請求項1に記載の吹付け用補修モルタル。
- 繊維類を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の吹付け用補修モルタル。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の吹付け用補修モルタルを用いて、劣化したコンクリートを取り除いた断面を修復することを特徴とするコンクリート構造物の補修工法。
- 吹付け用補修モルタルの硬化体の表面に、有機−無機複合型塗膜養生剤を塗布することを特徴とする請求項4に記載のコンクリート構造物の補修工法。
- 有機−無機複合型塗膜剤が、合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂、及び膨潤性粘土鉱物を含有してなる請求項5に記載のコンクリート構造物の補修工法。
- 有機−無機複合型塗膜剤の膨潤性粘土鉱物が、合成フッ素雲母である請求項6に記載のコンクリート構造物の補修工法。
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