JP3903670B2 - 下地調整材 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動性が高く、一般建造物の屋上やルーフバルコニーなどの防水層施工下地に施工可能な下地調整材、さらにアルミニウムを含む層に施工可能な下地調整材、特にアルミニウムを含む層に防水層施工可能な下地調整材及びこの下地調整材を用いる施工方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
特開昭６３−１２８０９２号公報に、下地と防水層との間に、水性ゴム−アスファルトエマルジョンと水硬性セメント粉末とを配合したふくれ防止用の下塗層を設けることを特徴とする防水工法が開示されている。
特開平１０−２３１１６５号公報には、速硬性、作業特性（高流動性、長可使時間）および硬化特性（高強度、高耐摩耗性、高平滑性、着色可能性）に優れ、セルフレベリング材として好適に使用できる自己流動性水硬性組成物の提供を目的として、アルミナセメント、石膏および高炉スラグよりなる水硬性成分、硫酸アルミニウムおよびリチウム塩よりなる凝結調整剤、減水剤、および、高分子エマルジョンよりなる自己流動性水硬性組成物が開示されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
一般建造物の屋上やルーフバルコニーなど、特にアルミニウムを含む樹脂塗膜などの層に水硬性下地調整材を施工すると、アルミニウムを含む樹脂塗膜などの層と下地調整材との界面より発泡する場合があった。
本発明は、流動性が高く、一般建造物の屋上やルーフバルコニーなど、特にアルミニウムを含む樹脂塗膜などの層に施工しても発泡しないか又は、発泡をおこし難い下地調整材及びこの下地調整材を用いる施工方法の提供を目的とする。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明は、防水層施工用の下地調整材であって、アルミナセメント１００重量部、石膏２０〜１５０重量部および高炉スラグ５０〜６００重量部とを含む水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１〜５０重量部、減水剤および増粘剤とを含み、硬化乾燥時間が０．５時間〜１０時間であることを特徴とする下地調整材に関する。
【０００５】
さらに本発明は、アルミニウムを含む層に施工用の下地調整材であって、アルミナセメント１００重量部、石膏２０〜１５０重量部および高炉スラグ５０〜６００重量部とを含む水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１〜５０重量部、減水剤および増粘剤とを含み、硬化乾燥時間が０．５時間〜１０時間であることを特徴とする下地調整材に関する。
【０００６】
好ましくは本発明は、上記のアスファルトが、水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１〜３７重量部であることを特徴とする下地調整材に関する。
【０００７】
好ましくは本発明は、水硬性成分が、さらにポルトランドセメント２０〜１５０重量部を含むことを特徴とする上記の下地調整材に関する。
【０００８】
好ましくは本発明は、水硬性成分１００重量部に対して減水剤、増粘剤の量がそれぞれ０．１〜５重量部、０．０５〜２重量部である上記の下地調整材に関する。
【０００９】
【発明の実施の形態】
本発明は、防水層施工用の下地調整材であって、アルミナセメント１００重量部、石膏２０重量部、好ましくは２２重量部、さらに好ましくは２５重量部、特に好ましくは３０重量部から１５０重量部、好ましくは１２０重量部、さらに好ましくは９０重量部、特に好ましくは７０重量部および高炉スラグ５０重量部、好ましくは７０重量部、さらに好ましくは１００重量部、特に好ましくは１５０重量部から６００重量部、好ましくは５００重量部、さらに好ましくは４００重量部、特に好ましくは３００重量部とを含む水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１重量部、好ましくは０．５重量部、さらに好ましくは１重量部、特に好ましくは５重量部から５０重量部、好ましくは３７重量部、さらに好ましくは３５重量部、特に好ましくは３２重量部の範囲、減水剤および増粘剤とを含み、硬化乾燥時間が０．５時間、さらに０．７５時間、特に１時間から１０時間、さらに６時間、特に４時間の範囲であることを特徴とする下地調整材に関する。
【００１０】
本発明は、アルミニウムを含む層に施工用の下地調整材、好ましくはアルミニウムを含む層に防水層施工用の下地調整材であって、アルミナセメント１００重量部、石膏２０重量部、好ましくは２２重量部、さらに好ましくは２５重量部、特に好ましくは３０重量部から１５０重量部、好ましくは１２０重量部、さらに好ましくは９０重量部、特に好ましくは７０重量部および高炉スラグ５０重量部、好ましくは７０重量部、さらに好ましくは１００重量部、特に好ましくは１５０重量部から６００重量部、好ましくは５００重量部、さらに好ましくは４００重量部、特に好ましくは３００重量部とを含む水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１重量部、好ましくは０．５重量部、さらに好ましくは１重量部、特に好ましくは５重量部から５０重量部、好ましくは３７重量部、さらに好ましくは３５重量部、特に好ましくは３２重量部の範囲、減水剤および増粘剤とを含み、硬化乾燥時間が０．５時間、さらに０．７５時間、特に１時間から１０時間、さらに６時間、特に４時間の範囲であることを特徴とする下地調整材に関する。
【００１１】
硬化乾燥時間が上記範囲より短い場合、下地調整材の施工作業時間が短く、施工が困難になる場合があり好ましくない。また、上記範囲より長い場合、発泡を起こし易くなるため又は、発泡が起こるために好ましくない。
【００１２】
本発明の下地調整材は、防水層施工用の下地調整材であり、熱アスファルト防水等改修時のアスファルトやアルミニウムを含む層、新築や改修、補修時の防水層施工用下地である。
特に、本発明の下地調整材は、特にアルミニウムを含む樹脂塗膜などの層に施工する場合、アルミニウムを含む樹脂塗膜などの層と下地調整材との界面よりの発泡をなくしたり又は、発泡を抑制又は抑止する効果が優れている。
【００１３】
本発明での発泡を抑制又は抑止する効果とは、既存防水層の保護材中に含まれるアルミニウムと、水硬性成分水和中に含まれる水酸化カルシウム等のアルカリ成分との化学反応による水素ガス等の発生に起因する発泡を抑制又は抑止することであり、施工下地コンクリート等に含まれている水分の蒸発に起因するふくれのことではない。
【００１４】
アルミニウムを含む層とは、アルミニウム粉末、アルミニウム化合物などを含む樹脂などの層であり、アルミニウム粉末、アルミニウム化合物を含む耐候性塗料を塗布した塗膜などである。
アルミニウムとは、アルミニウム粉末などの金属アルミニウムが好ましい。
【００１５】
本発明の下地調整材は、水硬性成分として、さらにポルトランドセメント５重量部、さらに１０重量部、特に１５重量部から１２０重量部、さらに１００重量部、特に８０重量部を含む水硬性成分が好ましい。
【００１６】
本発明の下地調整材は、水硬性成分１００重量部に対して、減水剤が０．１重量部、さらに０．１５重量部、特に０．２重量部から５重量部、さらに４重量部、特に３重量部、増粘剤が０．０５重量部、さらに０．０７重量部、特に０．１重量部から２重量部、さらに１．５重量部、特に１重量部であることが好ましい。
【００１７】
アルミナセメントは鉱物組成が異なるものが数種知られ市販されているが、いずれも主成分はモノカルシウムアルミネート（ＣＡ）であり、市販品はその種類によらず使用することができる。
【００１８】
石膏はアルミナセメントに対し上記範囲内では、速硬性、速乾性及び硬化後の寸法安定性を保持するために優れている。
また、石膏は無水、２水、半水等の各石膏がその種類を問わず、１種又は２種以上の混合物として使用できる。
【００１９】
高炉スラグは、アルミナセメントに対し上記範囲内では、乾燥収縮が小さいことから、硬化体の耐クラック性を高めるだけでなくその潜在水硬性により硬化体強度を向上させる効果が優れている。また、アルミナセメント水和物の転移に起因する強度低下を抑制する効果が優れている。
【００２０】
減水剤は、ナフタレン系、ポリカルボン酸、ポリエーテル系、メラミン系等の市販のものがその種類を問わず使用できる。添加量が上記範囲より少ない場合十分な効果が発現しない場合があり、上記範囲より多い場合添加量にあった効果が得られず不経済であり、さらに場合によっては流動性の低下や硬化不良を招く場合があり好ましくない。
【００２１】
増粘剤は、高い流動性を確保したまま、材料分離を十分なレベルまで押さえる目的のために添加することが好ましい。添加量が上記範囲より少ない場合十分な効果が発現しない場合があり、上記範囲より多い場合不経済であり、さらに粘性が非常に大きくなることで所定の流動性を得るのに必要な水量が大きくなり、硬化不良、強度発現の低下、収縮の増加をもたらす場合があり好ましくない。
【００２２】
増粘剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系、ゼラチン、ペクチン等の蛋白系、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー等を用いることが出来る。
【００２３】
ポルトランドセメントは速硬性において重要な成分の一つであり、アルミナセメント及び石膏と共にカルシウムスルホアルミネート水和物の生成を促進することにより、速硬性に大きく寄与し、早期の開放に大きく寄与するとともに寸法安定性に優れた硬化体を形成するために添加することが好ましい。アルミナセメントと石膏のみでもカルシウムスルホアルミネート水和物は生成されるが、更にポルトランドセメントを加えることによりカルシウムスルホアルミネートを早期に生成することができ、アルミナセメントから効率よくカルシウムスルホアルミネートを生成させることができる。又、スラグの潜在水硬性も引き出すことで長期的な強度発現にも寄与するため好ましい。
【００２４】
ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、及び高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の各種混合セメントを１種又は２種以上を組み合わせて使用することができる。
【００２５】
本発明の下地調整材に、さらに必要に応じて、消泡剤、本発明のアスファルトを除く高分子エマルジョン等を添加することができる。
【００２６】
消泡剤は、下地調整材施工時の下地調整材層の気泡の発生を抑制し硬化体表層の外観の改善に好ましい効果を与えるために、添加することが好ましい。
消泡剤としては、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系等合成物質又は植物由来の天然物質等公知のものが使用可能である。
消泡剤の添加量は、水硬性成分１００重量部に対して、２重量部以下、さらに１．５重量部以下、特に１．０重量部以下とするのが好ましい。それより多く加えても消泡効果の更なる増加は認められない場合がある。
【００２７】
アスファルトは、下地との接着性、耐クラック性、硬化体表面の耐摩耗性を向上させるために下地調整材に添加される。
アスファルトは、上記範囲より多い場合流動性の低下を招くだけでなく、空気泡や微量の発泡を包含する事により、硬化体の表面状態を悪くし、接着強度低下を生じる場合がある。また、高温下での塗布時に表面造膜が速く、施工性が著しく低下し硬化不良及び厚塗り時の仕上がり不良を生じる場合がある。
アスファルトとしてはアスファルト、改質アスファルト等のエマルジョン及びパウダーエマルジョン等市販のものがその種類を問わず使用できる。
【００２８】
本発明の下地調整材には更に、フライアッシュ、石灰石粉、シリカ質粉等の公知の増量材を添加することが出来る。
増量材の添加により、流動性が改善される効果が得られるが、添加量が多すぎると強度発現性の低下を招くので、その添加量は水硬性成分１００重量部に対し１５０重量部以下とするのが望ましい。またそのサイズは０．５ｍｍ以下とするのが効果の点から好ましい。
【００２９】
本発明による下地調整材は、水と混練したセメントペーストとして使用することも出来るが、各種骨材／増量材を添加して使用するのがその特性を活かした使い方である。
骨材としては珪砂、川砂、海砂、高炉スラグ、各種砕石が使用できるが、その径は０．５ｍｍ以下とするのが望ましい。また、骨材添加量は水硬性成分１００重量部に対し、２５０重量部以下、さらに２００重量部以下、特に１５０重量部以下とするのが望ましい。
骨材が上記範囲より大きい場合、材料分離や流動性低下を招くだけでなく、強度発現性が大きく低下する場合があり好ましくない。
【００３０】
本発明の下地調整材は、硬化乾燥時間の調整を目的として、凝結速度調整剤を添加することができる。
凝結速度調整剤としては、凝結促進剤と凝結遅延剤とを併用して用いることが出来る。
【００３１】
凝結促進剤として、リチウム塩などを用いることが出来る。
リチウム塩として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム等の無機酸塩及びシュウ酸リチウム、酢酸リチウム、クエン酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、グリコール酸リチウム等の有機酸塩などのリチウム塩、を挙げることが出来る。
【００３２】
凝結遅延剤として、ホウ酸化合物や硫酸アルミニウムなどを用いることが出来る。
ホウ酸化合物として、ホウ酸、ホウ酸のアルカリ金属塩・アルカリ土類金属塩、酸化ホウ素等が挙げることが出来る。
硫酸アルミニウムとしては、無水または各種含水量の硫酸アルミニウムの他、硫酸アルミニウムを含む各種ミョウバンなどを用いることが出来る。
【００３３】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本発明で用いた原料及び評価方法は、以下の通りである。
【００３４】
（１）使用原料：実施にあたっては次の原料を使用した。
・ポルトランドセメント：宇部興産製早強ポルトランドセメント、ブレーン比表面積４，５００ｃｍ2／ｇ。
・アルミナセメント：ブレーン比表面積３，２００ｃｍ2／ｇ、モノカルシウムアルミネート含有率４５％。
・石膏：II型無水石膏、ブレーン比表面積４，０００ｃｍ2／ｇ。
・高炉スラグ：ブレーン比表面積４，５００ｃｍ2／ｇ。
・骨材：６号珪砂。
・減水剤：ポリカルボン酸系減水剤、市販品。
・増粘剤：メチルセルロース系増粘剤、市販品。
・消泡剤：シリコン系消泡剤。
【００３５】
（２）塗布試験体の発泡観察方法
塗布試験体の発泡観察は、下地調整材をアルミニウムを含む保護材下地に厚さ約１ｍｍに塗布後直ぐに、表１に示した保存温度で保持し、塗布１時間後及び２４時間後に行った。
・塗布1時間後の発泡観察：塗布した下地調整材の表面での発泡の有無を目視で観察した。
○：発泡していない、×：発泡している
・塗布２４時間後の発泡観察：塗布した下地調整材の表面での発泡の有無を目視で観察し、さらに硬化した下地調整材を剥がして、下地調整材の剥がした側の面の発泡の有無を目視で観察した。
○：下地調整材の表面及び下地調整材の剥がした側の面とが発泡していない、×：下地調整材の表面又は下地調整材の剥がした側の面が発泡している
【００３６】
（３）硬化乾燥時間の評価方法
硬化乾燥時間は、ＪＩＳ Ｋ５４００に準じて、測定した。
【００３７】
実施例１〜５および比較例１〜５
（１）下地調整材、塗布試験体の調製、評価
下地調整材成分として、表１に示す組成及び配合量の水硬性成分１００重量部に対し、表１に示す減水剤、増粘剤、必要に応じて消泡剤を加え、さらに、骨材、水及び（改質）アスファルトエマルションを加えた後、３分間混練し、下地調整材を得た。混練後直ぐに、下地調整材をアルミニウムを含む保護材下地に厚さ約１ｍｍに塗布し、下地調整材と保護材下地との塗布試験体とし、塗布試験体の硬化乾燥時間の評価及び発泡観察を行い、結果を表１に示した。
【００３８】
【表１】
【００３９】
【発明の効果】
本発明の下地調整材は、低温から高温に亙る広範囲の温度領域において、下地調整材として十分な流動性と流動保持時間を保持して施工作業性に優れているのみならず、施工翌日の開放が可能な早期開放性を有する。また、平滑性、寸法安定性に優れた硬化体を与えることから、下地調整材としてのその利用価値は大である。
【００４０】
本発明の下地調整材は、特にアルミニウムを含む樹脂塗膜などの層に施工する場合、アルミニウムを含む樹脂塗膜などの層と下地調整材との界面よりの発泡をなくしたり又は、発泡を抑制又は抑止する効果が優れている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動性が高く、一般建造物の屋上やルーフバルコニーなどの防水層施工下地に施工可能な下地調整材、さらにアルミニウムを含む層に施工可能な下地調整材、特にアルミニウムを含む層に防水層施工可能な下地調整材及びこの下地調整材を用いる施工方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
特開昭６３−１２８０９２号公報に、下地と防水層との間に、水性ゴム−アスファルトエマルジョンと水硬性セメント粉末とを配合したふくれ防止用の下塗層を設けることを特徴とする防水工法が開示されている。
特開平１０−２３１１６５号公報には、速硬性、作業特性（高流動性、長可使時間）および硬化特性（高強度、高耐摩耗性、高平滑性、着色可能性）に優れ、セルフレベリング材として好適に使用できる自己流動性水硬性組成物の提供を目的として、アルミナセメント、石膏および高炉スラグよりなる水硬性成分、硫酸アルミニウムおよびリチウム塩よりなる凝結調整剤、減水剤、および、高分子エマルジョンよりなる自己流動性水硬性組成物が開示されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
一般建造物の屋上やルーフバルコニーなど、特にアルミニウムを含む樹脂塗膜などの層に水硬性下地調整材を施工すると、アルミニウムを含む樹脂塗膜などの層と下地調整材との界面より発泡する場合があった。
本発明は、流動性が高く、一般建造物の屋上やルーフバルコニーなど、特にアルミニウムを含む樹脂塗膜などの層に施工しても発泡しないか又は、発泡をおこし難い下地調整材及びこの下地調整材を用いる施工方法の提供を目的とする。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明は、防水層施工用の下地調整材であって、アルミナセメント１００重量部、石膏２０〜１５０重量部および高炉スラグ５０〜６００重量部とを含む水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１〜５０重量部、減水剤および増粘剤とを含み、硬化乾燥時間が０．５時間〜１０時間であることを特徴とする下地調整材に関する。
【０００５】
さらに本発明は、アルミニウムを含む層に施工用の下地調整材であって、アルミナセメント１００重量部、石膏２０〜１５０重量部および高炉スラグ５０〜６００重量部とを含む水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１〜５０重量部、減水剤および増粘剤とを含み、硬化乾燥時間が０．５時間〜１０時間であることを特徴とする下地調整材に関する。
【０００６】
好ましくは本発明は、上記のアスファルトが、水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１〜３７重量部であることを特徴とする下地調整材に関する。
【０００７】
好ましくは本発明は、水硬性成分が、さらにポルトランドセメント２０〜１５０重量部を含むことを特徴とする上記の下地調整材に関する。
【０００８】
好ましくは本発明は、水硬性成分１００重量部に対して減水剤、増粘剤の量がそれぞれ０．１〜５重量部、０．０５〜２重量部である上記の下地調整材に関する。
【０００９】
【発明の実施の形態】
本発明は、防水層施工用の下地調整材であって、アルミナセメント１００重量部、石膏２０重量部、好ましくは２２重量部、さらに好ましくは２５重量部、特に好ましくは３０重量部から１５０重量部、好ましくは１２０重量部、さらに好ましくは９０重量部、特に好ましくは７０重量部および高炉スラグ５０重量部、好ましくは７０重量部、さらに好ましくは１００重量部、特に好ましくは１５０重量部から６００重量部、好ましくは５００重量部、さらに好ましくは４００重量部、特に好ましくは３００重量部とを含む水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１重量部、好ましくは０．５重量部、さらに好ましくは１重量部、特に好ましくは５重量部から５０重量部、好ましくは３７重量部、さらに好ましくは３５重量部、特に好ましくは３２重量部の範囲、減水剤および増粘剤とを含み、硬化乾燥時間が０．５時間、さらに０．７５時間、特に１時間から１０時間、さらに６時間、特に４時間の範囲であることを特徴とする下地調整材に関する。
【００１０】
本発明は、アルミニウムを含む層に施工用の下地調整材、好ましくはアルミニウムを含む層に防水層施工用の下地調整材であって、アルミナセメント１００重量部、石膏２０重量部、好ましくは２２重量部、さらに好ましくは２５重量部、特に好ましくは３０重量部から１５０重量部、好ましくは１２０重量部、さらに好ましくは９０重量部、特に好ましくは７０重量部および高炉スラグ５０重量部、好ましくは７０重量部、さらに好ましくは１００重量部、特に好ましくは１５０重量部から６００重量部、好ましくは５００重量部、さらに好ましくは４００重量部、特に好ましくは３００重量部とを含む水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１重量部、好ましくは０．５重量部、さらに好ましくは１重量部、特に好ましくは５重量部から５０重量部、好ましくは３７重量部、さらに好ましくは３５重量部、特に好ましくは３２重量部の範囲、減水剤および増粘剤とを含み、硬化乾燥時間が０．５時間、さらに０．７５時間、特に１時間から１０時間、さらに６時間、特に４時間の範囲であることを特徴とする下地調整材に関する。
【００１１】
硬化乾燥時間が上記範囲より短い場合、下地調整材の施工作業時間が短く、施工が困難になる場合があり好ましくない。また、上記範囲より長い場合、発泡を起こし易くなるため又は、発泡が起こるために好ましくない。
【００１２】
本発明の下地調整材は、防水層施工用の下地調整材であり、熱アスファルト防水等改修時のアスファルトやアルミニウムを含む層、新築や改修、補修時の防水層施工用下地である。
特に、本発明の下地調整材は、特にアルミニウムを含む樹脂塗膜などの層に施工する場合、アルミニウムを含む樹脂塗膜などの層と下地調整材との界面よりの発泡をなくしたり又は、発泡を抑制又は抑止する効果が優れている。
【００１３】
本発明での発泡を抑制又は抑止する効果とは、既存防水層の保護材中に含まれるアルミニウムと、水硬性成分水和中に含まれる水酸化カルシウム等のアルカリ成分との化学反応による水素ガス等の発生に起因する発泡を抑制又は抑止することであり、施工下地コンクリート等に含まれている水分の蒸発に起因するふくれのことではない。
【００１４】
アルミニウムを含む層とは、アルミニウム粉末、アルミニウム化合物などを含む樹脂などの層であり、アルミニウム粉末、アルミニウム化合物を含む耐候性塗料を塗布した塗膜などである。
アルミニウムとは、アルミニウム粉末などの金属アルミニウムが好ましい。
【００１５】
本発明の下地調整材は、水硬性成分として、さらにポルトランドセメント５重量部、さらに１０重量部、特に１５重量部から１２０重量部、さらに１００重量部、特に８０重量部を含む水硬性成分が好ましい。
【００１６】
本発明の下地調整材は、水硬性成分１００重量部に対して、減水剤が０．１重量部、さらに０．１５重量部、特に０．２重量部から５重量部、さらに４重量部、特に３重量部、増粘剤が０．０５重量部、さらに０．０７重量部、特に０．１重量部から２重量部、さらに１．５重量部、特に１重量部であることが好ましい。
【００１７】
アルミナセメントは鉱物組成が異なるものが数種知られ市販されているが、いずれも主成分はモノカルシウムアルミネート（ＣＡ）であり、市販品はその種類によらず使用することができる。
【００１８】
石膏はアルミナセメントに対し上記範囲内では、速硬性、速乾性及び硬化後の寸法安定性を保持するために優れている。
また、石膏は無水、２水、半水等の各石膏がその種類を問わず、１種又は２種以上の混合物として使用できる。
【００１９】
高炉スラグは、アルミナセメントに対し上記範囲内では、乾燥収縮が小さいことから、硬化体の耐クラック性を高めるだけでなくその潜在水硬性により硬化体強度を向上させる効果が優れている。また、アルミナセメント水和物の転移に起因する強度低下を抑制する効果が優れている。
【００２０】
減水剤は、ナフタレン系、ポリカルボン酸、ポリエーテル系、メラミン系等の市販のものがその種類を問わず使用できる。添加量が上記範囲より少ない場合十分な効果が発現しない場合があり、上記範囲より多い場合添加量にあった効果が得られず不経済であり、さらに場合によっては流動性の低下や硬化不良を招く場合があり好ましくない。
【００２１】
増粘剤は、高い流動性を確保したまま、材料分離を十分なレベルまで押さえる目的のために添加することが好ましい。添加量が上記範囲より少ない場合十分な効果が発現しない場合があり、上記範囲より多い場合不経済であり、さらに粘性が非常に大きくなることで所定の流動性を得るのに必要な水量が大きくなり、硬化不良、強度発現の低下、収縮の増加をもたらす場合があり好ましくない。
【００２２】
増粘剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系、ゼラチン、ペクチン等の蛋白系、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー等を用いることが出来る。
【００２３】
ポルトランドセメントは速硬性において重要な成分の一つであり、アルミナセメント及び石膏と共にカルシウムスルホアルミネート水和物の生成を促進することにより、速硬性に大きく寄与し、早期の開放に大きく寄与するとともに寸法安定性に優れた硬化体を形成するために添加することが好ましい。アルミナセメントと石膏のみでもカルシウムスルホアルミネート水和物は生成されるが、更にポルトランドセメントを加えることによりカルシウムスルホアルミネートを早期に生成することができ、アルミナセメントから効率よくカルシウムスルホアルミネートを生成させることができる。又、スラグの潜在水硬性も引き出すことで長期的な強度発現にも寄与するため好ましい。
【００２４】
ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、及び高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の各種混合セメントを１種又は２種以上を組み合わせて使用することができる。
【００２５】
本発明の下地調整材に、さらに必要に応じて、消泡剤、本発明のアスファルトを除く高分子エマルジョン等を添加することができる。
【００２６】
消泡剤は、下地調整材施工時の下地調整材層の気泡の発生を抑制し硬化体表層の外観の改善に好ましい効果を与えるために、添加することが好ましい。
消泡剤としては、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系等合成物質又は植物由来の天然物質等公知のものが使用可能である。
消泡剤の添加量は、水硬性成分１００重量部に対して、２重量部以下、さらに１．５重量部以下、特に１．０重量部以下とするのが好ましい。それより多く加えても消泡効果の更なる増加は認められない場合がある。
【００２７】
アスファルトは、下地との接着性、耐クラック性、硬化体表面の耐摩耗性を向上させるために下地調整材に添加される。
アスファルトは、上記範囲より多い場合流動性の低下を招くだけでなく、空気泡や微量の発泡を包含する事により、硬化体の表面状態を悪くし、接着強度低下を生じる場合がある。また、高温下での塗布時に表面造膜が速く、施工性が著しく低下し硬化不良及び厚塗り時の仕上がり不良を生じる場合がある。
アスファルトとしてはアスファルト、改質アスファルト等のエマルジョン及びパウダーエマルジョン等市販のものがその種類を問わず使用できる。
【００２８】
本発明の下地調整材には更に、フライアッシュ、石灰石粉、シリカ質粉等の公知の増量材を添加することが出来る。
増量材の添加により、流動性が改善される効果が得られるが、添加量が多すぎると強度発現性の低下を招くので、その添加量は水硬性成分１００重量部に対し１５０重量部以下とするのが望ましい。またそのサイズは０．５ｍｍ以下とするのが効果の点から好ましい。
【００２９】
本発明による下地調整材は、水と混練したセメントペーストとして使用することも出来るが、各種骨材／増量材を添加して使用するのがその特性を活かした使い方である。
骨材としては珪砂、川砂、海砂、高炉スラグ、各種砕石が使用できるが、その径は０．５ｍｍ以下とするのが望ましい。また、骨材添加量は水硬性成分１００重量部に対し、２５０重量部以下、さらに２００重量部以下、特に１５０重量部以下とするのが望ましい。
骨材が上記範囲より大きい場合、材料分離や流動性低下を招くだけでなく、強度発現性が大きく低下する場合があり好ましくない。
【００３０】
本発明の下地調整材は、硬化乾燥時間の調整を目的として、凝結速度調整剤を添加することができる。
凝結速度調整剤としては、凝結促進剤と凝結遅延剤とを併用して用いることが出来る。
【００３１】
凝結促進剤として、リチウム塩などを用いることが出来る。
リチウム塩として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム等の無機酸塩及びシュウ酸リチウム、酢酸リチウム、クエン酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、グリコール酸リチウム等の有機酸塩などのリチウム塩、を挙げることが出来る。
【００３２】
凝結遅延剤として、ホウ酸化合物や硫酸アルミニウムなどを用いることが出来る。
ホウ酸化合物として、ホウ酸、ホウ酸のアルカリ金属塩・アルカリ土類金属塩、酸化ホウ素等が挙げることが出来る。
硫酸アルミニウムとしては、無水または各種含水量の硫酸アルミニウムの他、硫酸アルミニウムを含む各種ミョウバンなどを用いることが出来る。
【００３３】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本発明で用いた原料及び評価方法は、以下の通りである。
【００３４】
（１）使用原料：実施にあたっては次の原料を使用した。
・ポルトランドセメント：宇部興産製早強ポルトランドセメント、ブレーン比表面積４，５００ｃｍ2／ｇ。
・アルミナセメント：ブレーン比表面積３，２００ｃｍ2／ｇ、モノカルシウムアルミネート含有率４５％。
・石膏：II型無水石膏、ブレーン比表面積４，０００ｃｍ2／ｇ。
・高炉スラグ：ブレーン比表面積４，５００ｃｍ2／ｇ。
・骨材：６号珪砂。
・減水剤：ポリカルボン酸系減水剤、市販品。
・増粘剤：メチルセルロース系増粘剤、市販品。
・消泡剤：シリコン系消泡剤。
【００３５】
（２）塗布試験体の発泡観察方法
塗布試験体の発泡観察は、下地調整材をアルミニウムを含む保護材下地に厚さ約１ｍｍに塗布後直ぐに、表１に示した保存温度で保持し、塗布１時間後及び２４時間後に行った。
・塗布1時間後の発泡観察：塗布した下地調整材の表面での発泡の有無を目視で観察した。
○：発泡していない、×：発泡している
・塗布２４時間後の発泡観察：塗布した下地調整材の表面での発泡の有無を目視で観察し、さらに硬化した下地調整材を剥がして、下地調整材の剥がした側の面の発泡の有無を目視で観察した。
○：下地調整材の表面及び下地調整材の剥がした側の面とが発泡していない、×：下地調整材の表面又は下地調整材の剥がした側の面が発泡している
【００３６】
（３）硬化乾燥時間の評価方法
硬化乾燥時間は、ＪＩＳ Ｋ５４００に準じて、測定した。
【００３７】
実施例１〜５および比較例１〜５
（１）下地調整材、塗布試験体の調製、評価
下地調整材成分として、表１に示す組成及び配合量の水硬性成分１００重量部に対し、表１に示す減水剤、増粘剤、必要に応じて消泡剤を加え、さらに、骨材、水及び（改質）アスファルトエマルションを加えた後、３分間混練し、下地調整材を得た。混練後直ぐに、下地調整材をアルミニウムを含む保護材下地に厚さ約１ｍｍに塗布し、下地調整材と保護材下地との塗布試験体とし、塗布試験体の硬化乾燥時間の評価及び発泡観察を行い、結果を表１に示した。
【００３８】
【表１】
【発明の効果】
本発明の下地調整材は、低温から高温に亙る広範囲の温度領域において、下地調整材として十分な流動性と流動保持時間を保持して施工作業性に優れているのみならず、施工翌日の開放が可能な早期開放性を有する。また、平滑性、寸法安定性に優れた硬化体を与えることから、下地調整材としてのその利用価値は大である。
【００４０】
本発明の下地調整材は、特にアルミニウムを含む樹脂塗膜などの層に施工する場合、アルミニウムを含む樹脂塗膜などの層と下地調整材との界面よりの発泡をなくしたり又は、発泡を抑制又は抑止する効果が優れている。
Claims (4)
- アルミニウムを含む層に施工用の下地調整材であって、アルミナセメント１００重量部、ポルトランドセメント２０〜１５０重量部、石膏２０〜１５０重量部および高炉スラグ５０〜６００重量部とを含む水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１〜５０重量部、消泡剤、減水剤および増粘剤とを含み、硬化乾燥時間が０．５時間〜１０時間であることを特徴とする下地調整材。
- アスファルトが、水硬性成分１００重量部に対し、アスファルト０．１〜３７重量部であることを特徴とする請求項１に記載の下地調整材。
- 水硬性成分１００重量部に対して消泡剤の量が２重量部以下である請求項１に記載の下地調整材。
- 水硬性成分１００重量部に対して減水剤、増粘剤の量がそれぞれ０．１〜５重量部、０．０５〜２重量部である請求項１に記載の下地調整材。
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