JP4744933B2 - 高流動モルタルまたは高流動コンクリートの処理方法およびセメント硬化体 - Google Patents

高流動モルタルまたは高流動コンクリートの処理方法およびセメント硬化体 Download PDF

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Description

本発明は、主に、土木・建築分野において使用される高流動モルタルまたは高流動コンクリートの処理方法およびセメント硬化体に関する。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
本発明で云うセメント硬化体とは、モルタル、コンクリートの硬化体を総称したものである。
高流動モルタルまたは高流動コンクリートは施工の良否の影響を受けにくく、ジャンカなどの施工欠陥を生じないため、耐久的な構造物を造成する上で重要な技術となっている。しかしながら、高流動モルタルまたは高流動コンクリートは結合材量が多い材料であるため、乾燥収縮などの寸法変化が大きくひび割れを生じやすい側面もある。例えば、大断面修復を行う際に、型枠工法を採用し、高流動モルタルまたは高流動コンクリートにて充填施工する場合も多く見受けられるが、このようなケースでは、高流動モルタルまたは高流動コンクリートが硬化した後、型枠を外して、施工した高流動モルタルまたは高流動コンクリートは剥き出しとなり、乾燥の影響を受けてひび割れを生じる場合もあり、そのひび割れ抵抗性の対策が求められていた。特に、単位セメント量が多い高流動モルタルはその傾向が強い。
また、断面修復工法などによって補修した部位は、ひび割れなどの巨視的な欠陥の発生を抑制するほかに、劣化因子である塩化物イオンの侵入や、炭酸化などを受けにくいことが望まれている。一般的に、これらの劣化因子の硬化体中への侵入を抑制する方法としては、水セメント比を小さくする手法がとられている。しかしながら、水セメント比を小さくすると、自己収縮が顕在化し、ひび割れが発生しやすくなる側面がある。
そのため、モルタルまたはコンクリートのひび割れを抑制するために塗膜養生剤が使用され、有機系養生剤(特許文献1)や有機−無機複合型塗膜養生剤(特許文献2)が開発されている。
特開2004−244255号公報 特開2002−274976号公報
本発明は、高流動モルタルまたは高流動コンクリートのひび割れを防ぐ処理方法およびセメント硬化体を提供する。
すなわち、本発明は、(1)高流動モルタルまたは高流動コンクリートが硬化した後、硬化体表面に、合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂および合成フッ素雲母である膨潤性粘土鉱物を含有する有機−無機複合型塗膜養生剤を50〜500g/m 被覆することを特徴とする高流動モルタルまたは高流動コンクリートのひび割れを防止し中性化や塩化物イオンの浸透を抑制する処理方法、(2)()の高流動モルタルまたは高流動コンクリートの処理方法によって処理したセメント硬化体、である。
本発明の高流動モルタルまたは高流動コンクリートの処理方法により、ひび割れを防止したセメント硬化体を得ることが可能となる。
本発明の高流動モルタルまたは高流動コンクリートとは、締め固めを必要とせず、自己充填性を有するモルタルまたはコンクリートである。普通モルタルや普通コンクリートと、高流動モルタルまたは高流動コンクリートとの相違について具体的に説明する。普通モルタルや普通コンクリートの流動性の管理は、それぞれ、テーブルフローおよびスランプで管理されている。一方、高流動モルタルの流動性の管理は、静置フローやJ14漏斗流下時間で管理され、高流動コンクリートの流動性の管理はスランプフローで管理される。高流動モルタルの場合、静置フローで250mm以上もしくはJ14漏斗流下時間が20秒以下のいずれかの条件を満たすモルタルである。また、高流動コンクリートとは、スランプフローが550mm以上のコンクリートである。
高流動モルタルまたは高流動コンクリートは、ポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、水に加えて、流動化剤などを含有するものである。
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、および中庸熱などの各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、またはシリカを混合した各種混合セメント、また、石灰石粉末などや高炉徐冷スラグ微粉末を混合したフィラーセメント、各種の産業廃棄物を主原料として製造される環境調和型セメント、いわゆるエコセメントなどが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が併用可能である。
本発明で使用する骨材は、特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、川砂、砂利などの天然骨材、ケイ砂系、石灰石系、高炉水砕スラグ系、再生骨材系などが挙げられる。耐酸性などの観点からは、ケイ砂系を選定することが好ましい。また、比重3.0g/cm以上の重量骨材を使用することもでき、その具体例としては、例えば、人工骨材として、高炉徐冷スラグ骨材、電気炉酸化期スラグ系骨材や、フェロニッケルスラグ、フェロクロムスラグ、銅スラグ、亜鉛スラグ、および鉛スラグなどを総称する非鉄精錬スラグ骨材などが、また、天然骨材としては、橄欖岩(かんらん岩)系骨材、いわゆるオリビンサンドや、エメリー鉱などが挙げられる。本発明では、これらの1種または2種以上を併用できる。
本発明では、高流動のモルタルまたはコンクリートを作製するために流動化剤を使用する。流動化剤とは、特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、ナフタレン系としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP−9シリーズ」、花王社製商品名「マイティ2000シリーズ」、および日本製紙社製商品名「サンフローHS−100」などが挙げられる。また、メラミン系としては、日本シーカ社製商品名「シーカメント1000シリーズ」や日本製紙社製商品名「サンフローHS−40」などが挙げられる。さらに、アミノスルホン酸系としては、フローリック社製商品名「FP−200シリーズ」などが挙げられる。ポリカルボン酸系としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP−8シリーズ」、グレースケミカルズ社製商品名「ダーレックススーパー100PHX」、および竹本油脂社製商品名「チューポールHP−8シリーズ」や「チューポールHP−11シリーズ」などが挙げられる。本発明では、これら流動化剤のうちの1種または2種以上が使用可能である。
上記流動化剤には粉末状のものも存在する。具体的には、ポリアルキルアリルスルホン酸塩の縮合物としては、第一工業製薬社製商品名「セルフロー110P」や出光石油化学社製商品名「IPC」などが、また、ナフタレンスルホン酸塩の縮合物としては、花王社製商品名「マイティ100」や三洋化成工業社製商品名「三洋レベロンP」などが、メラミン系のものとしては、シーカ社製「シーカメントFF」などが、さらに、ポリカルボン酸系としては、例えば、三菱化学社製商品名「クインフロー750」や花王社製商品名「CAD9000P」などが挙げられる。
流動化剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、セメント100部に対して、固形分換算で0.1部〜2部の範囲にあることが好ましい。0.1部未満では、流動性が充分でなく、2部を超えると材料分離を起す場合がある。
高流動モルタルでは、細骨材の配合割合がセメント100部に対して50部未満では、発熱量が大きすぎて危険な場合がある。また、収縮が大きくなり、ひび割れが生じやすいなどの問題がある。逆に、300部を超えると優れた流動性や初期強度発現性が得られない場合がある。
本発明では、膨張物質を併用することが好ましい。本発明の膨張物質とは、特に限定されるものではなく、いかなるものでも使用可能である。大別すると、エトリンガイト系や石灰系、ならびに石灰−エトリンガイト複合系などが挙げられる。本発明では、効果的な膨張性が付与できる観点から、セメント鉱物系を用いることが好ましい。セメント鉱物系の膨張物質についてさらに詳細に説明する。セメント鉱物系の膨張物質としては、遊離石灰や遊離マグネシアを含むものが挙げられるが、長期安定性の観点から、遊離石灰を含むものが好ましい。遊離石灰を含むものとしては、例えば、遊離石灰-無水セッコウ系、遊離石灰-水硬性化合物系、ならびに、遊離石灰-水硬性化合物-無水セッコウ系などが挙げられる。本発明では、膨張性能が良好なことから、遊離石灰-水硬性化合物-無水セッコウ系を用いることが好ましく、特に遊離石灰含有量が40%を超えるものが好ましい。ここで、水硬性化合物としては、例えば、アウイン、カルシウムフェライト、カルシウムアルミノフェライト、カルシウムシリケート、カルシウムアルミネートなどの1種または2種以上が挙げられる。このような膨張物質としては、市販の膨張材や静的破砕材が利用できる。
膨張材や静的破砕材は各社より市販されており、その代表例としては、例えば、電気化学工業社製「デンカCSA」、「デンカパワーCSA」、太平洋マテリアル社製「太平洋ジプカル」、住友大阪セメント社製「サクス」、太平洋マテリアル社製「エクスパン」、「N-EX」、「ブライスター」などが挙げられる。
本発明で使用する膨張材の粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積で2000〜6000cm/gの範囲にあり、2500〜4000cm/g程度のものがより好ましい。2000cm/g未満では長期安定性が悪くなる場合があり、6000cm/gを超えると膨張性が十分に得られない場合がある。
本発明では、ガス発泡物質を併用することができる。ガス発泡物質は、本発明の高流動モルタルをグラウト材料として利用する場合、構造物を一体化させるために、まだ固まらない状態の超速硬・高流動モルタルが沈下や収縮するのを抑止する働きを担う。ガス発泡物質の具体例としては、例えば、アルミ粉や炭素物質のほか、過硫酸塩、過ホウ酸塩、過マンガン酸塩などの過酸化物質などが挙げられる。本発明では、アルミ粉、炭素物質、過ホウ酸塩、過マンガン酸塩を用いることが、沈下抑制効果が大きいことから好ましい。
ガス発泡物質の配合割合は、特に限定されるものではないが、通常、アルミ粉ならば、セメント100部に対して、0.0001〜0.1部の範囲で使用でき、0.001〜0.01部の範囲がより好ましい。0.0001部未満では、充分な初期膨張効果を付与することができない場合があり、0.1部を超えて使用すると、過膨張となって強度発現性が悪くなる場合がある。ガス発泡物質が過酸化物質ならば、セメント100部に対して、0.001〜1部の範囲で使用でき、0.01〜0.1部の範囲がより好ましい。0.001部未満では、充分な初期膨張効果を付与することができない場合があり、1部を超えて使用すると、過膨張となって強度発現性が悪くなる場合がある。また、ガス発泡物質が炭素質物質ならば、セメント100部に対して、1〜15部の範囲で使用でき、3〜10部の範囲がより好ましい。1部未満では、充分な初期膨張効果を付与することができない場合があり、15部を超えて使用すると、過膨張となって強度発現性が悪くなる場合がある。
水の使用量は、使用する目的・用途や各材料の配合割合によって変化するため特に限定されるものではないが、通常、水セメント比で30〜40%の範囲が好ましく、33〜37%がより好ましい。水セメントが30%未満では流動性を得ることが難しく、また、発熱量が極めて大きくなる。逆に40%を超えると強度発現性を確保することが困難な場合がある。
本発明では、セメント、骨材、流動化剤などとともに、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、パルプスラッジ焼却灰などの混和材料、凝結調整剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、スチールファイバー、ビニロンファイバー、炭素繊維、ワラストナイト繊維などの繊維物質、ポリマー、ベントナイトなどの粘土鉱物、ならびにハイドロタルサイトなどのアニオン交換体などのうちの1種または2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
本発明に係る高流動モルタルとしては、特に限定されるものではないが、市販のプレミックスモルタルを利用することができる。プレミックスモルタルとしては、例えば、電気化学工業社製商品名「プレタスコン」シリーズや「ハイプレタスコン」シリーズ、太平洋マテリアル社製商品名「プレユーロックス」シリーズ、住友大阪セメント社製商品名「フィルコン」シリーズなどが挙げられる。
本発明の有機-無機複合型塗膜養生剤とは、合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂、および膨潤性粘土鉱物を主成分とし、さらに架橋剤を含有するものである。
本発明の合成樹脂水性分散体としては、一般的には合成樹脂エマルジョンであり、芳香族ビニル単量体、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和脂肪酸単量体、およびその他の共重合可能な単量体の内から1種または2種以上を乳化重合して得られるものである。例えば、スチレンを主体としたスチレン・ブタジエン系ラテックス、スチレン・アクリル系エマルジョンやスチレンと共重合したメチルメタクリレート・ブタジエン系ラテックス、エチレン・アクリルエマルジョンである。合成樹脂エマルジョンには、カルボキシル基またはヒドロキシ基を有するものがより望ましい。
ここで、乳化重合は、重合すべき単量体を混合し、これに乳化剤や重合開始剤などを加え水系で行なう一般的な乳化重合方法である。
膨潤性粘土鉱物との配合安定性を得るには、アンモニア、アミン類、およびカセイソーダなどの塩基性物質を使用し、pH5以上に調整したものが好ましい。
合成樹脂水性分散体の粒子径は、一般的に100〜300nmであるが、60〜100nm程度の小さい粒子径のものが好ましい。
本発明の水溶性樹脂としては、加工澱粉またはその誘導体、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニルの鹸化物またはその誘導体、スルホン酸基を有する重合体またはその塩、アクリル酸の重合体や共重合体またはこれらの塩、アクリルアミドの重合体や共重合体、ポリエチレングリコール、およびオキサゾリン基含有重合体などが挙げられ、そのうちの1種または2種以上の使用が可能である。
水溶性樹脂として、純水への溶解度が常温で1%以上であるものであれば良く、樹脂単位重量当たりの水素結合性基またはイオン性基が10〜60%であることが好ましい。また、平均分子量は2000〜1000000が好ましい。
水溶性樹脂の使用量は、合成樹脂水性分散体の固形分100部に対して、固形分換算で0.05〜200部が好ましい。0.05部未満では防湿性が低下する場合があり、200部を超えると防湿性が著しく低下する場合がある。
本発明の膨潤性粘土鉱物としては、スクメタイト属に属する層状ケイ酸塩鉱物が挙げられる。例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、合成フッ素雲母、ベントナイトなどである。これらは天然品、合成品、および加工処理品のいずれであっても使用可能であるが、中でも合成フッ素雲母が好ましい。そのうち、日本ベントナイト工業会、標準試験方法 JBAS−104−77に準じた方法での膨潤力が20ml/2g以上の粘土鉱物が好ましい。また、イオン交換当量が100g当たり、10ミリ当量以上ものが好ましく、60〜200ミリ当量以上ものがより好ましい。さらに、そのアスペクト比が50〜5000のものが好ましい。アスペクト比とは、電顕写真により求めた層状に分散した粘土鉱物の長さ/厚みの比である。
膨潤性粘土鉱物の使用量は、合成樹脂水性分散体の固形分100部に対して、1〜50部が好ましい。1部未満では防湿性が低下しブロッキングが生じやすくなる場合があり、50部を超えると塗膜養生剤の膜の変形能力が低下する場合がある。
架橋剤としては、水溶性樹脂や合成樹脂水性分散体が有するカルボキシル基、アミド基、および水酸基などの親水性官能基と反応して、架橋、高分子化(三次元網目構造)、または疎水化するものであり、カルボキシル基と付加反応を起こすオキサゾリン基を有するものが水溶性樹脂をも兼ねるので好ましい。
架橋剤の使用量は、合成樹脂水性分散体と水溶性樹脂の合計の固形分100部に対して、固形分換算で0.01〜30部が好ましい。0.01部未満では防湿性が低下する場合があり、30部を超えると防湿性やブロッキング防止性が頭打ちになる。
本発明では、合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂、および膨潤性粘土鉱物を混合して、また、さらに架橋剤を反応させて、塗膜養生剤を調製する。
塗膜養生剤の合成方法は、水溶性樹脂と膨潤性粘土鉱物をあらかじめ水中で混合した後に、合成樹脂水性分散体と架橋剤を混合する方法が好ましい。
塗膜養生剤を被覆する方法は、均一に養生被覆膜が形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、撒布したり、塗布したり、吹付けたりすることが可能である。
塗膜養生剤は、硬化後に施すことが好ましい。ここで、硬化とは、高流動モルタルまたは高流動コンクリートが凝結した時点を意味する。高流動モルタルまたは高流動コンクリートが凝結する前に塗膜養生剤を被覆した場合には、本発明のひび割れ低減効果は得られない。また、撒水などの水に関する養生が終了後、できるだけ早い時期に被覆することがひび割れ低減効果を得るために望ましい。なお、普通モルタルや普通コンクリートでは、本発明のひび割れ低減効果は得られない。
このような塗膜養生剤の例としては、東亞合成社の「CA2」シリーズを用いることができる。
塗膜養生剤の使用量は、特に限定されるものではないが、1m当たり、50〜500gの範囲で使用することが好ましく、100〜300gがより好ましい。50g未満ではひび割れ抵抗性の向上効果や耐酸性向上効果が十分でなく、500gを超えてもさらなる効果の向上が期待できない。
各種の市販プレミックスモルタルをカタログに基づいて水を配合して練り混ぜ、高流動モルタルを調製した。これらの高流動モルタルを用いて、厚さ100mmで面積10mの断面修復を行った。材齢3日で脱型した後、有機−無機複合型塗膜養生剤を1m当たり200g塗布した。材齢91日後にひび割れの発生状況を観察した。また、同じ高流動モルタルから作製した40mm×40mm×160mm供試体にも塗膜剤を同量塗布し、促進中性化による中性化抵抗性や擬似海水浸漬による塩化物イオンの浸透抵抗性を評価した。なお、比較のために、塗膜養生剤を硬化体表面に塗布せずに、高流動モルタルに混和した場合についてと、普通モルタルに有機−無機複合型塗膜養生剤を塗布した場合についても同様に行った。結果を表1に併記する。
<使用材料>
高流動モルタルA:電気化学工業社製商品名「デンカプレタスコンtype−M」を練り混ぜて調製したもの。J14漏斗流下時間が7.5秒。
高流動モルタルB:太平洋セメント社製商品名「プレユーロックス」を練り混ぜて調製したもの。J14漏斗流下時間が8.5秒。
高流動モルタルC:住友大阪セメント社商品名「フィルコンLL」を練り混ぜて調製したもの。J14漏斗流下時間が7.0秒。
普通モルタル:JIS R 5201に準じて調製したモルタル。J14漏斗流下せず。静置フローは125mm。JIS R 5201に準じて測定したテーブルフロー(タッピングあり)は205mm。
有機−無機複合型塗膜養生剤:東亞合成社製、商品名「CA202」、アクリル樹脂−フッ素雲母の複合型。
水:水道水
<測定方法>
14漏斗流下時間:土木学会基準、「充てんモルタルの流動性試験方法」、JSCE−F 541−1999に準拠して測定。
施工欠陥の有無:断面修復を行い、型枠を脱型した後、断面修復した10mに、5cm以上のジャンカ(施工欠陥)が発生したか否かを観察。
ひび割れ抵抗性試験:1m当たり、2本を超えてひび割れが発生した場合は×。ひび割れが1〜2本発生した場合は△、ひび割れの発生がない場合は○とした。
中性化試験:材齢14日まで20℃の水中養生を行った後、30℃、相対湿度60%、CO濃度5%の環境で4週間養生した。硬化体を切断し、断面にフェノールフタレインの1%アルコール溶液を噴霧して赤変しなかった部分を中性化部分と見なして中性化深さを測定した。
塩化物イオンの浸透抵抗性試験:材齢14日まで20℃の水中養生を行った後、擬似海水に4週間浸漬した。硬化体を切断し、硝酸銀-フルオロセイオン法によって塩化物イオンの浸透深さを測定した。
Figure 0004744933
表1より、本発明の処理方法は、高流動モルタルのひび割れを防止し、中性化や塩化物イオンの浸透を抑制することが分かる。
高流動モルタルAを使用し、有機-無機複合型塗膜養生剤を1m当たりの塗布量を表2に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。なお、比較のために、従来の塗膜養生剤を使用した場合についても同様に行った。結果を表2に併記する。
<使用材料>
従来の塗膜養生剤:市販のEVA系塗膜養生剤
Figure 0004744933
表2より、本発明の処理方法は、高流動モルタルのひび割れを防止し、中性化や塩化物イオンの浸透を抑制することが分かる。
高流動モルタルAを使用し、粗骨材をモルタル13リットルに対して10kg配合して高流動コンクリートを調製したこと以外は実施例1と同様に行った。なお、高流動コンクリートのスランプフロー(JIS A 1150−2001に準拠して測定)は660mmであった。結果を表3に併記する。
<使用材料>
粗骨材:市販の粗骨材、Gmax20mmの玉砂利
Figure 0004744933
表3から、本発明の処理方法により、高流動モルタルまたは高流動コンクリートのひび割れを防止し、中性化や塩化物イオンの浸透を抑制することが分かる。
実施例1で使用した高流動モルタルAを使用し、縦3m、横1m、厚さ10cmの土間に施工した。施工後、表4に示すタイミングで、実施例1で使用した有機−無機複合型塗膜養生剤を1m当たり250g塗布した。ただし、凝結終了後から有機−無機複合型塗膜養生剤を塗布するまでの間、湿布養生を行った。有機−無機複合型塗膜養生剤を塗布後は湿布養生を解除した。材齢91日後のひび割れ発生状況を実施例1と同様に確認した。結果を表4に併記する。
Figure 0004744933
表4から、本発明の処理方法により、高流動モルタルのひび割れを防止できることが分かる。
本発明の高流動モルタルまたは高流動コンクリートのひび割れを防止する処理方法およびセメント硬化体は、土木、建築分野などで広範に利用することができる。

Claims (2)

  1. 高流動モルタルまたは高流動コンクリートが硬化した後、硬化体表面に、合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂および合成フッ素雲母である膨潤性粘土鉱物を含有する有機−無機複合型塗膜養生剤を50〜500g/m 被覆することを特徴とする高流動モルタルまたは高流動コンクリートのひび割れを防止し中性化や塩化物イオンの浸透を抑制する処理方法。
  2. 請求項1に記載の高流動モルタルまたは高流動コンクリートの処理方法によって処理したセメント硬化体。
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