JP5368680B2 - 有機−無機複合型塗膜養生剤およびそれを用いたモルタルまたはコンクリートの処理方法ならびにセメント硬化体 - Google Patents

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Description

本発明は、主に、土木・建築分野において使用される塗膜養生剤およびそれを用いたモルタルまたはコンクリートの処理方法ならびにセメント硬化体に関する。
モルタルやコンクリートの耐久性について、この分野の技術者のみならず、一般の人々からも大きな関心が寄せられるようになっている。モルタルやコンクリートはひび割れるという性質をもっている。これは、乾燥収縮などの寸法変化に起因する。このため、乾燥収縮を抑制する目的で塗膜養生剤が開発されている。
一方、コンクリート構造物の耐久性と関連して、塩害や中性化などの劣化要因も見逃すことができない。塩害は塩化物イオンによる鉄筋の腐食により生じる劣化を総称するものであり、中性化は空気中の二酸化炭素の作用によってコンクリートが炭酸化され、その結果、強いアルカリ性を持っていたコンクリートが中性化されることにより、鉄筋の腐食が誘発される現象である。一般的に、これらの劣化因子の硬化体中への侵入を抑制する方法としては、水セメント比を小さくする手法がとられている。しかしながら、水セメント比を小さくすると、自己収縮が顕在化し、ひび割れが発生しやすくなる側面がある。
モルタルやコンクリートのひび割れを抑制するために塗膜養生剤が使用され、種々の塗膜養生剤が提案されている(特許文献1〜特許文献3)。
しかしながら、従来の塗膜養生剤は、従来の利用方法で使用した場合に、ひび割れの抑制には一定の効果が期待できるものであったが、中性化の抑制や塩化物イオンの浸透に対する抵抗性を格段に高めるものではなかった。
一方、近年、コンクリート構造物の高耐久化技術の確立が望まれている。それを達成する上で重要な技術のひとつとして、収縮低減剤が注目されている。これは、収縮低減剤の使用により、ひび割れを低減でき、コンクリート構造物の高寿命化に一定の役割を果たすためである。収縮低減剤としては、古くより数多くの提案がなされている(特許文献4〜特許文献9)。
しかしながら、収縮低減剤を用いると、コンクリートの空気量が極度に大きくなるという現象が生じるため、消泡剤によって空気量を制御する操作が不可欠となっている現状にある。コンクリートの空気量を制御することは、高度な技術が必要であり、また、人手間がかかる。このため、収縮低減剤を用いても空気量を増加させない技術の開発が強く求められている。
一方、収縮低減剤をコンクリートの表面に塗布することにより、コンクリートの収縮を抑制しようとする試みも成されている。(特許文献10、11)。しかしながら、従来の収縮低減剤をコンクリートの表面に塗布しても、収縮低減剤をコンクリートに規定の量混和した場合に比べて、収縮低減効果は微々たるものであった。また、中性化の抑制効果や塩化物イオンの浸透を抑制する効果も期待できないものであった。
特開平05−208879号公報 特開平11−21184号公報 特開2004−244255号公報 特開昭56−037259号公報 特公昭59−003430号公報 特開昭59−021557号公報 特開昭59−152253号公報 特開昭59−184753号公報 特開昭60−016846号公報 特開2000−128618号公報 特開2002−193686号公報
本発明は、ひび割れの抑制効果に優れ、塩化物イオンや二酸化炭素の物質遮断性にも優れる有機−無機複合塗膜養生剤およびそれを用いたモルタルまたはコンクリートの処理方法ならびにセメント硬化体を提供する。
すなわち、本発明は、(1)低級アルコールアルキレンオキシド付加物系収縮低減剤に、膨潤力が20ml/2g以上、イオン交換当量が100g当たり10ミリ当量以上、アスペクト比が50〜5000である合成フッ素雲母やベントナイトである膨潤性粘土鉱物を含有してなり、膨潤性粘土鉱物が収縮低減剤100部に対して10〜50部である、有機−無機複合型塗膜養生剤、(2)(1)の有機−無機複合型塗膜養生剤を塗布する時期が、打設したモルタルまたはコンクリートが硬化した後であるモルタルまたはコンクリートの処理方法、(3)(1)の有機−無機複合型塗膜養生剤を1m2当たりたり50〜500g使用する(2)のモルタルまたはコンクリートの処理方法、(4)(2)または(3)のモルタルまたはコンクリートの処理方法で処理されたセメント硬化体、(5)モルタルまたはコンクリートが高炉スラグ微粉末を含有する(4)のセメント硬化体、である。
本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤およびそれを用いたモルタルまたはコンクリートの処理方法により、ひび割れの抑制効果に優れ、塩化物イオンや二酸化炭素の物質遮断性にも優れるセメント硬化体が得られる。
本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
また、本発明で云うセメント硬化体とは、モルタル、コンクリートの硬化体を総称したものである。
本発明で使用する収縮低減剤とは、特に限定されるものではなく、いかなるものでも使用可能である。主成分で大別すると、低級アルコールアルキレンオキシド付加物系、アルコール系、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体系、ポリエーテル系、低分子量アルキレンオキシド共重合体系などが挙げられる。なかでも、低級アルコールアルキレンオキシド付加物系が好ましい。
収縮低減剤は各社より市販されており、その代表例としては、例えば、電気化学工業社製「エスケーガード」、エフ・ピー・ケー社製「ヒビガード」、竹本油脂社製「ヒビダン」、太平洋セメント社製「テトラガード」、日本油脂社製「シュドックス」などが挙げられる。
本発明で使用する膨潤性粘土鉱物としては、スメクタイト属に属する層状ケイ酸塩鉱物が挙げられる。例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、合成フッ素雲母、マイカ、およびベントナイトなどである。これらは天然品、合成品、および加工処理品のいずれであっても使用可能である。
そのうち、日本ベントナイト工業会、標準試験方法 JBAS−104−77に準じた方法での膨潤力が20ml/2g以上の粘土鉱物、特に、合成フッ素雲母やベントナイトが好ましい。
また、イオン交換当量が100g当たり10ミリ当量以上ものが好ましく、60〜200ミリ当量以上ものがより好ましい。
さらに、そのアスペクト比が50〜5000のものが好ましい。アスペクト比とは、電顕写真により求めた層状に分散した粘土鉱物の長さ/厚みの比である。
膨潤性粘土鉱物の使用量は、収縮低減剤100部に対して、1〜50部が好ましい。1部未満では防湿性が低下しブロッキングが生じやすくなる場合があり、50部を超えると塗膜養生剤の膜の変形能力が低下する場合がある。
本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤を被覆する方法は、均一に養生被覆膜が形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、撒布したり、塗布したり、吹付けたりすることが可能である。
本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤は、モルタルまたはコンクリートが硬化した後に施すことが好ましい。従来の使用法のように、硬化前に塗布したのでは、本発明の効果、すなわち、中性化の抑制効果や塩化物イオンの浸透抑制効果は得られない。ここで、硬化とは、モルタルまたはコンクリートが凝結(JIS A 1147)した時点を意味する。モルタルまたはコンクリートが凝結する前に塗膜養生剤を被覆した場合には、本発明のひび割れ低減効果は得られない。また、撒水などの水に関する養生が終了後、できるだけ早い時期に被覆することがひび割れ低減効果を得るために望ましい。
本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤の使用量は特に限定されるものではないが、1m当たり50〜500gの範囲で使用することが好ましく、100〜400gがより好ましい。50g未満ではひび割れ抵抗性の向上効果や耐酸性向上効果が十分でなく、500gを超えてもさらなる効果の向上が期待できない。
本発明で使用するモルタルやコンクリートは特に限定されるものではない。モルタルは、セメントと細骨材と水を含み、必要に応じて、混和剤や混和材等が添加される。コンクリートは、さらに、粗骨材を含むものである。
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、および中庸熱などの各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、またはシリカを混合した各種混合セメント、また、石灰石粉末などや高炉徐冷スラグ微粉末を混合したフィラーセメント、各種の産業廃棄物を主原料として製造される環境調和型セメント、いわゆるエコセメントなどが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が併用可能である。
本発明で使用する骨材は、特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、ケイ砂系や石灰石系などの天然骨材、高炉水砕スラグ系、高炉徐冷スラグ系、再生骨材系などの人工骨材が挙げられる。また、比重3.0g/cm以上の重量骨材を使用することもでき、その具体例としては、例えば、人工骨材として、電気炉酸化期スラグ系骨材や、フェロニッケルスラグ、フェロクロムスラグ、銅スラグ、亜鉛スラグ、および鉛スラグなどを総称する非鉄精錬スラグ骨材などが、また、天然骨材としては、橄欖岩(かんらん岩)系骨材、いわゆるオリビンサンドや、エメリー鉱などが挙げられる。本発明では、これらの1種または2種以上を併用できる。
水の使用量は、使用する目的・用途や各材料の配合割合によって変化するため特に限定されるものではないが、通常、水セメント比で25〜60%の範囲が好ましく、30〜55%がより好ましい。水セメントが25%未満では流動性を得ることが難しく、また、発熱量が極めて大きくなる。逆に60%を超えると強度発現性を確保することが困難な場合がある。また、物質移動が容易となり、耐久性を確保しにくくなる傾向にある。
本発明の高炉スラグ微粉末は、特に限定されるものではないが、通常、JIS A 6206−1997に定められている「コンクリート用高炉スラグ微粉末」が使用可能である。
高炉スラグの粉末度は特に限定されるものではなく、ブレーン値で3,000〜10,000cm/gである。
本発明では、セメントや骨材とともに、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、パルプスラッジ焼却灰などの混和材料、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、凝結調整剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、スチールファイバー、ビニロンファイバー、炭素繊維、ワラストナイト繊維などの繊維物質、ポリマー、ベントナイトなどの粘土鉱物、ならびにハイドロタルサイトなどのアニオン交換体などのうちの1種または2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
セメントA100部に対して、水50部、細骨材200部を配合してモルタルを調製した。このモルタルを用いて、厚さ100mmで面積10mの土間を造成した。材齢3日まで湿布養生を行った後(硬化後)、表1に示す塗膜養生剤を1m当たり200g塗布した。材齢91日後にひび割れの発生状況を観察した。また、同じモルタルから作製した40×40×160mm供試体にも塗膜剤を同量塗布し、促進中性化による中性化抵抗性や、擬似海水に浸漬して塩化物イオンの浸透抵抗性を評価した。なお、比較のために、塗膜養生剤を硬化体表面に塗布せずに、モルタルに混和した場合についても同様に行った。結果を表1に併記する。
<使用材料>
セメントA:市販の普通ポルトランドセメント
セメントB:市販の高炉セメントB種
細骨材:新潟県姫川産、比重2.62
塗膜養生剤A:塗膜養生剤D100部に対して膨潤性粘土鉱物の含有量(部)を変化させたもの
塗膜養生剤B:市販のEVA系塗膜養生剤
塗膜養生剤C:ポゾリス物産社製商品名「マスターキュア」、パラフィン系
塗膜養生剤D:収縮低減剤、電気化学工業社製「エスケーガード」、低級アルコールアルキレンオキシド付加物系
塗膜養生剤E:市販の収縮低減剤であるフローリック社製「ヒビガード」100部に対して市販の合成フッ素雲母を25部混合したもの
塗膜養生剤F:市販の収縮低減剤である太平洋セメント社製「テトラガード」100部に対して市販の合成フッ素雲母を25部混合したもの
塗膜養生剤G:市販の収縮低減剤である竹本油脂社製「ヒビダン」100部に対して市販の合成フッ素雲母を25部混合したもの
膨潤性粘土鉱物:市販の合成フッ素雲母、膨潤力を変化させたもの、イオン交換当量100ミリ当量/100g、アスペクト比300。
水:水道水
<測定方法>
ひび割れ抵抗性試験:1m当たり、2本を超えてひび割れが発生した場合は×、ひび割れが1〜2本発生した場合は△、ひび割れの発生がない場合は○とした。
中性化試験:材齢14日まで20℃の水中養生を行った後、30℃、相対湿度60%、CO濃度5%の環境で4週間養生した。硬化体を切断し、断面にフェノールフタレインの1%アルコール溶液を噴霧して赤変しなかった部分を中性化部分と見なして中性化深さを測定した。
塩化物イオンの浸透抵抗性試験(JIS A 1171):材齢14日まで20℃の水中養生を行った後、擬似海水に4週間浸漬した。硬化体を切断し、硝酸銀-フルオロセイオン法によって塩化物イオンの浸透深さを測定した。
Figure 0005368680
表1より、本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤は、モルタルのひび割れを防止し、中性化や塩化物イオンの浸透を抑制することが分かる。
実施例1の実験No.1-5で使用した塗膜養生剤Aの1m当たりの塗布量を表2に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
Figure 0005368680
表2より、本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤は、モルタルのひび割れを防止し、中性化や塩化物イオンの浸透を抑制することが分かる。
単位セメント量315kg/m、単位水量185kg/m、s/a=38%、空気量4.5±1.5(体積)%のコンクリートを調製し、実施例1の実験No.1-5で使用した塗膜養生剤Aを1m当たり200g塗布したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
<使用材料>
粗骨材:市販の粗骨材、Gmax25mm
Figure 0005368680
表3から、本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤により、コンクリートのひび割れを防止し、中性化や塩化物イオンの浸透を抑制することが分かる。
実施例1で使用したモルタルを使用し、施工後、表4に示すタイミングで、実施例1の実験No.1-5で使用した塗膜養生剤Aを1m当たり200g塗布した。ただし、凝結終了後(硬化後)から塗膜養生剤Aを塗布するまでの間、湿布養生を行った。塗膜養生剤Aを塗布後は湿布養生を解除した。塗膜養生剤の塗布面を対象として、促進中性化による中性化抵抗性や、擬似海水に浸漬して塩化物イオンの浸透抵抗性を評価した。また、材齢91日後のひび割れ発生状況を実施例1と同様に確認した。結果を表4に併記する。
Figure 0005368680
表4から、本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤は、モルタルのひび割れを防止し、中性化や塩化物イオンの浸透を抑制することが分かる。
本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤およびそれを用いたモルタルまたはコンクリートの処理方法により、ひび割れの抑制効果に優れ、塩化物イオンや二酸化炭素の物質遮断性にも優れたセメント硬化体が得られるので、土木、建築分野などで広範に利用することができる。

Claims (5)

  1. 低級アルコールアルキレンオキシド付加物系収縮低減剤に、膨潤力が20ml/2g以上、イオン交換当量が100g当たり10ミリ当量以上、アスペクト比が50〜5000である合成フッ素雲母やベントナイトである膨潤性粘土鉱物を含有してなり、膨潤性粘土鉱物が収縮低減剤100部に対して10〜50部である、有機−無機複合型塗膜養生剤。
  2. 請求項1に記載の有機−無機複合型塗膜養生剤を塗布する時期が、打設したモルタルまたはコンクリートが硬化した後であることを特徴とするモルタルまたはコンクリートの処理方法。
  3. 請求項1に記載の有機−無機複合型塗膜養生剤を1m当たりたり50〜500g使用することを特徴とする請求項2に記載のモルタルまたはコンクリートの処理方法。
  4. 請求項2または3に記載のモルタルまたはコンクリートの処理方法で処理されたセメント硬化体。
  5. モルタルまたはコンクリートが高炉スラグ微粉末を含有することを特徴とする請求項4に記載のセメント硬化体。
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