JP2011217746A - 界面活性剤非含有ポリメラーゼ - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において最適化された性能を有する改善されたポリメラーゼ配合物を提供すること。
【解決手段】界面活性剤を全く含まず、10〜50mM Tris/HCl、0.05〜0.2mM EDTA、0.5〜2mM DTT、50〜200mM塩化カリウム、および20〜80%グリセロールを含む、熱安定性DNAポリメラーゼの配合物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱安定性DNAポリメラーゼの調製および適用の技術分野に関する。より正確には、本発明は、熱安定性DNAポリメラーゼの作製、保存または適用中に少しの界面活性剤も添加しない、該酵素の新規作製方法および使用に関し、該方法および使用を提供する。
発明の背景
熱安定性DNAポリメラーゼは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の確立以来、長い間、単離され、組換え発現されてきた酵素である。しかしながら、他の酵素反応の場合と同様、PCRの性能も、少なくとも一部、界面活性剤などの微量の種々の異なる試薬の存在によって阻害されることが知られている。他方において、界面活性剤の存在は、多くのポリメラーゼ精製プロトコル、および一般に酵素、特に、DNAポリメラーゼの長期安定化に必須であることが知られている。
非特許文献1に、最初に、Taq DNAポリメラーゼのクローニングおよび組換え発現が開示されている。同様に、特許文献1には、非イオン性界面活性剤で安定化された、PCR適用に特に有用なポリメラーゼ配合物(formulation)が開示されている。使用されているポリメラーゼを安定化する典型的な界面活性剤は、Triton X100、Tween 20およびNonidet P-40である。
さらに、特許文献1の発明者らの観察によれば、開示された配合物中の界面活性剤の存在は、酵素の安定性を維持するためだけでなく、ポリメラーゼの活性を向上させるためにも必要である。
代替的な精製方法および配合物が開示されている。例えば、特許文献2には、非イオン性界面活性剤でなく、アニオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤を有するポリメラーゼ配合物が開示されている。
非特許文献2には、酵素の精製中の界面活性剤の存在が低減された改善されたプロトコルが示されている。非特許文献3には、最後に添加された保存バッファが界面活性剤化合物を含まないため、微量の界面活性剤のみを有する組換えTaq ポリメラーゼの配合物が開示されている。
US 5,127,155 WO 08/077017
Lawyer,F.C. et al.(JBC 264(1989)6427-6434) Lawyer et al.(PCR Methods and Applications、Cold Spring Harbor、p. 275-287(1993)) Engelke,D.R. et al.(Anal. Biochem. 191(1990)396-400)
概要を示した先行技術に鑑み、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において最適化された性能を有する改善されたポリメラーゼ配合物を提供することが本発明の課題であった。
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕界面活性剤を全く含まず、10〜50mM Tris/HCl、0.05〜0.2mM EDTA、0.5〜2mM DTT、50〜200mM塩化カリウム、および20〜80%グリセロールを含む、熱安定性DNAポリメラーゼの配合物、
〔2〕いずれの精製工程にも界面活性剤の添加を必要としない精製方法により得られる、〔1〕記載の配合物、
〔3〕〔1〕または〔2〕記載の配合物を含むキット、
〔4〕- 界面活性剤を全く含まない熱安定性DNAポリメラーゼの配合物、
- 鋳型核酸、
- 一対の増幅プライマー、および
- デオキシヌクレオチド三リン酸
を含む、界面活性剤を全く含まない反応混合物、
〔5〕少なくとも一対のFRETハイブリダイゼーションプローブをさらに含む、〔3〕記載のキットまたは〔4〕記載の反応混合物、
〔6〕調製の全工程が界面活性剤の非存在下で行われる、〔1〕記載の熱安定性DNAポリメラーゼの調製のための方法、
〔7〕- プロテアーゼインヒビターを補充した溶解物を提供する工程、
- 硫酸アンモニウム沈殿を行う工程、
- 第一のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを使用した第一のクロマトグラフィー分離工程、
- 第二のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを使用した第二のクロマトグラフィー分離工程、および
- ヒドロキシアパタイトマトリックスを使用した第3のクロマトグラフィー分離工程
を含む、〔6〕記載の方法、
〔8〕a) プロテアーゼインヒビターを補充した、His-タグ付加熱安定性DNAポリメラーゼを組換え発現する細胞由来の凍結細胞の溶解物を提供する工程、
b) DNAse Iによる試料に含まれる核酸の消化工程、
c) ニッケル担持セファロースマトリックスを使用したクロマトグラフィー分離工程、および
d) 好ましくはQ-セファロースffであるアニオン交換マトリックスを使用したクロマトグラフィー分離工程
を含む、〔6〕記載の方法、
〔9〕PCRによる標的核酸の増幅のための、〔1〕または〔2〕記載の配合物の使用、
〔10〕PCRがリアルタイムでモニタリングされる、〔9〕記載の使用、
〔11〕少なくとも一対のFRETハイブリダイゼーションプローブの添加によりPCRがモニタリングされる、〔10〕記載の使用
に関する。
本発明により、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において最適化された性能を有する改善されたポリメラーゼ配合物が提供される。
図1は、実施例6に開示される実験の結果である。様々な量で標的DNAを使用し、300ng (A)、30ng (B)、3ng (C)、0.3ng (D)、0.03ng (E)およびDNAなし(F)から滴定した。使用したTaq DNAポリメラーゼは界面活性剤を添加せずに調製した。 図2は、実施例6に開示される実験の結果である。様々な量で標的DNAを使用し、300ng (A)、30ng (B)、3ng (C)、0.3ng (D)、0.03ng (E)およびDNAなし(F)から滴定した。使用したTaq DNAポリメラーゼは界面活性剤(0.5% Tween 20および0.5% Nonidet NP-40)を含んだ。 図3は、実施例6に開示される実験の結果である。様々な量で標的DNAを使用し、300ng (A)、30ng (B)、3ng (C)、0.3ng (D)、0.03ng (E)およびDNAなし(F)から滴定した。この実験にはTaq DNAポリメラーゼ(Roche Applied Science、カタログ番号:11 146 165 001)を使用した。
発明の概要
したがって、本発明は、界面活性剤を全く含まない熱安定性DNAポリメラーゼの配合物を提供する。かかる配合物は、選択された精製方法がいずれの精製工程でも界面活性剤の添加を必要としない場合に得られ得る。
また、本発明は、界面活性剤を全く含まない熱安定性DNAポリメラーゼ配合物または熱安定性DNAポリメラーゼを含み、界面活性剤を全く含まない反応混合物を含むキットを提供する。
また、本発明は、上記に開示した本発明のポリメラーゼ配合物の使用に関する。かかる配合物は、PCR、好ましくはリアルタイムPCR、最も好ましくは増幅産物が少なくとも1対のFRETハイブリダイゼーションプローブによって検出されるリアルタイムPCRによる標的核酸の増幅に使用される場合に主に有利である。
さらに、本発明は、調製の全工程が、界面活性剤が少しも存在しない状態で行なわれる、熱安定性DNAポリメラーゼの調製方法を提供する。
例えば、かかる方法は、以下の工程:
a) プロテアーゼインヒビターを補充した溶解物の提供、
b) 硫酸アンモニウム沈殿
c) 第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを用いた第1のクロマトグラフィーによる分離
d) 第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを用いた第2のクロマトグラフィーによる分離
e) ヒドロキシアパタイトマトリックスを用いた第3のクロマトグラフィーによる分離
を含み得る。
代替的に、かかる方法は、熱安定性DNAポリメラーゼが、Hisタグを含む融合タンパク質の形態で組換え発現されることを必要とし得る。そのため、その調製は、ニッケル担持(loaded)イオンアフィニティカラムを用いて前記融合タンパク質を精製する工程を含む。
発明の詳細な説明
本発明は、少なくともいくつかの特定の条件下において、微量の界面活性剤の存在が熱安定性DNAポリメラーゼの性能に、いくぶん影響を及ぼし得るという理論的仮説から生じる。実施例に示されるように、該仮説は実際に試験することができ、真実であった。
酵素配合物
したがって、第1の局面において、本発明は、界面活性剤を全く含まない熱安定性DNAポリメラーゼの配合物を提供する。本発明の文脈では、用語「熱安定性DNAポリメラーゼの配合物」は、細胞溶解物から単離された少なくとも部分的に精製された熱安定性DNAポリメラーゼの任意の調製物と理解される。該溶解物は、天然で前記熱安定性DNAポリメラーゼを含む生物から、または好ましくは、前記熱安定性DNAポリメラーゼをコードする遺伝子を発現する、組換え改変された宿主細胞から得られ得る。
熱安定性DNAポリメラーゼは、本来、好熱菌から単離され、クローニングされた熱安定性酵素である。この酵素は、プライマーの遊離3’OH基とデスオキシヌクレオチドのα-リン酸部分との間にホスホジエステル結合を作ることによって鋳型依存性プライマー伸長を触媒し、副生成物としてピロリン酸部を同時に生成する。好ましくは、前記鋳型はDNA鋳型である。代替的に、鋳型はRNAであり得る。
熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼの最も顕著な例は、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のTaq DNAポリメラーゼである。これは、2つの酵素活性:5’-3’ポリメラーゼ活性、および酵素に鎖置換能をもたらす二本鎖特異的5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有する。
非常に多様な熱安定性DNAポリメラーゼが、本発明に従って配合され得る。好ましくは、熱安定性DNAポリメラーゼは、アエロピルム・ペルニクス、アーケオグロブス・フルギダス、デスルフロコッカス種Tok.、メタノバクテリウム・サーモオートトロピカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、メタノコッカス種(例えば、ヤニシ(jannaschii)、ボルテ(voltae))、メタノサーマス・フェルビダス(Methanothermus fervidus)、パイロコッカス種(フリオーサス、種GB-D、ウーゼイ(woesii)、アビシ(abysii)、ホリコシアイ、KOD)、パイロディクティウム・アビシ(abyssii)、パイロディクティウム・オカルタム(occultum)、スルホロバス種(例えば、アシドカルダリウス(acidocaldarius)、ソルファタリカス(solfataricus))、サーモコッカス種(ジリギイ(zilligii)、バロシイ(barossii)、ファミコランス(fumicolans)、ゴルゴナリウス(gorgonarius)、JDF-3、コダカラエンシス(kodakaraensis) KODI、リトラリス(litoralis)、種9度(degrees)North-7、種JDF-3、ゴルゴナリウス、TY)、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasma acidophilum)、サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)、サーモトガ種(例えば、マリチマ(maritima)、ネアポリタナ(neapolitana))、メタノバクテリウム・サーモオートトロピカム、およびサーマス種(例えば、アクアティカス、ブロキアヌス(brockianus)、フィリフォルミス(filiformis)、フラバス(flavus)、ラクテウス(lacteus)、ルーベンス(rubens)、ルーベル(ruber)、サーモフィラス、ZO5)からなる群より選択される。
一態様において、熱安定性DNAポリメラーゼはDNA 鋳型依存性ポリメラーゼである。別の態様において、熱安定性DNAポリメラーゼは、さらに逆転写酵素活性を有し、RT-PCRに使用され得る。かかる酵素の一例は、サーマス・サーモフィラス由来のTth DNAポリメラーゼ(Roche Diagnosticsカタログ番号11 480 014 001)である。
Taq DNAポリメラーゼなどの多くの熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼは、プルーフリーディング活性としても知られる二本鎖依存性3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。しかし、かかるプルーフリーディング活性を有する他の熱安定性酵素(Pwoポリメラーゼ(Roche Applied Scienceカタログ番号04 743 750 001)、TgoポリメラーゼおよびPfuポリメラーゼなど)も本発明の範囲に含まれる。
また、それらの変異体、バリアントもしくは誘導体、キメラまたは「融合ポリメラーゼ」、例えば、Phusion(Finnzymes or New England Biolabs、カタログ番号F-530S)またはiProof(Biorad、カタログ番号172-5300)、Pfx Ultima(Invitrogen、カタログ番号12355012)またはHerculase II Fusion(Stratagene、カタログ番号600675)も本発明の範囲内である。さらに、本発明による組成物は、上記のポリメラーゼの1種類以上のブレンドを含み得る。
熱安定性DNAポリメラーゼはまた、化学修飾の結果として可逆的に不活化され得る。より正確には、熱不安定性(heat labile)ブロック基をTaq DNAポリメラーゼに導入し、室温で該酵素を不活性にする(US 5,773,258)。これらのブロック基は、プレPCR工程中、高温で除去されて、該酵素が活性化される。かかる熱不安定性修飾は、例えば、該酵素のリジン残基へのシトラコン酸無水物または無水アコニット酸のカップリングによって得られ得る(US 5,677,152)。一方、かかる修飾を有する酵素は、Amplitaq Gold(Moretti,T.,et al.,Biotechniques 25(1998)716-22)またはFastStart DNAポリメラーゼ(Roche Applied Scienceカタログ番号04 738 284 001)として市販されている。
特定の態様において、本発明による前記熱安定性DNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼまたはUS 2005/0037412に開示されたΔ288 Taq DNAポリメラーゼまたはUS 6,020,130に開示されたアプタマーと会合している前記Δ288 Taq DNAポリメラーゼのいずれかである。
理想的には、界面活性剤を全く含まない熱安定性DNAポリメラーゼの配合物は、いずれの精製工程でも界面活性剤の添加を必要としない精製方法によって得られる。従って、「界面活性剤を全く含まない」は、配合物の調製手順において、界面活性剤が使われていない状態を意味する。充分な程度の精製が得られた後、配合物はバッファ系および他の非界面活性剤補充物(supplement)を含み得る。かかる配合物は、以下の成分:Tris-バッファ、EDTA、DTT、塩およびグリセロールの1種類、数種類または全種類を含み得る。例えば、かかる配合物は、以下の量の成分:10〜50mMのTris/HCl pH7.5、0.05〜0.2mMのEDTA、0.5〜2mMのDTT、50〜200mMの塩化カリウム、および20〜80%グリセロールの1種類、数種類または全種類を含み得る。
キット
本発明の第2の局面において、上記に開示した任意の本発明のポリメラーゼがキットの成分であり得る。単純な態様において、かかるキットは、前記配合物およびそれぞれの重合反応が効率的に起こり得る反応バッファのみを含み得る。任意に、かかるキットは、さらに、dATP、dGTP、dCTPおよび/またはdTTPまたはその誘導体もしくはアナログなどの1種類または数種類のデスオキシヌクレオシド三リン酸を含み得る。
より複雑な態様では、かかるキットは、一般的にはプライマー伸長反応または特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行なうためのさらなる試薬を含み得る。例えば、かかるキットは、さらに、増幅させる核酸鋳型に結合し得る少なくとも1種類のプライマーを含み得る。PCRキットの場合、前記キットは、各々が鋳型DNAの特定の断片を増幅させるように設計される1種類または数種類のプライマー対を含み得る。代替的に、キットが、限定されないが、全ゲノムまたはトランスクリプトーム全体の増幅適用などのランダム増幅方法用に設計される場合、プライマー成分は、少なくとも一部無作為化された配列を有するオリゴヌクレオチドのプールであり得る。
先のものと適合性である別の態様において、本発明によるキットは、熱安定性DNAポリメラーゼによって生成される生成物を検出し得るさらなる試薬を含み得る。特に、これらの試薬は、リアルタイムPCRによるPCR増幅産物を検出し得る。
したがって、本発明によるそれぞれのキットは、さらに、SybrGreen(Invitrogenカタログ番号4304886)またはLC480 Resolight染料(Roche Applied Scienceカタログ番号 04 909 640 001)などの二本鎖特異的蛍光DNA結合剤を含み得る。代替的に、本発明によるそれぞれのキットは、TaqMan加水分解プローブ(US 5,804,375)または分子ビーコン(US 5,118,801)などの標識されたハイブリダイゼーションプローブを含み得る。特別な態様において、それぞれのキットは、少なくとも1対または数対のFRETハイブリダイゼーションプローブを含む(US 6,174,670)。
反応混合物
本発明の第3の局面において、任意の本発明のポリメラーゼ配合物が、一般的に鋳型依存性プライマー伸長反応および特にPCR増幅反応を行なうための反応混合物の一部であり得る。その最も広い意味において、微量の界面活性剤も含まないかかる反応混合物は、
- 実施例に開示した方法によって得られ得る、少しの界面活性剤も含まないポリメラーゼ配合物
-好ましくはDNAである鋳型核酸
- 前記DNAに結合し得るオリゴヌクレオチドである少なくとも1種類のプライマー、ならびに
- 少なくとも1種類のデスオキシヌクレオチド三リン酸またはその任意のアナログもしくは誘導体、しかし、好ましくは4種類のdNTP、すなわち、dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、またはdTTPの代わりにdUTP
を含む。
一態様において、かかる反応混合物は、少しの界面活性剤も含まないPCR反応混合物であり、
- 界面活性剤を全く含まない熱安定性DNAポリメラーゼの配合物
- 好ましくはDNAである鋳型核酸
- 標的DNAの特定の領域が鋳型核酸から増幅されるような様式で設計される少なくとも1対または数対の増幅プライマー、ならびに
- デオキシヌクレオチド三リン酸dATP、dCTP、dGTP、およびdTTPまたはdUTP
を含む。
特別な態様において、かかるPCR反応混合物は、さらに、熱安定性DNAポリメラーゼによってリアルタイムで生成される生成物の検出を可能にする任意のさらなる試薬を含み得る。したがって、本発明によるそれぞれの混合物は、既に上記に開示した二本鎖特異的蛍光DNA結合剤、TaqMan加水分解プローブ、分子ビーコンまたはFRETハイブリダイゼーションプローブをさらに含み得る。
使用方法
少しの界面活性剤も含まない本発明の熱安定性DNAポリメラーゼ配合物は、任意の型の核酸増幅反応に有用である。一態様において、これは、ランダムプライミング反応などのランダム増幅または全ゲノム増幅に使用され得る。特別な態様において、前記本発明の配合物は、リアルタイムPCR反応であり得るPCR反応を行なうことによる、特定の標的核酸の増幅に特に有用である。
分析目的のため、かかるPCR反応はリアルタイムでモニタリングされ得る。リアルタイムPCRにおいて、試料の分析は、同じ機器内で同じチューブ内で増幅と同時に行なわれる。PCR生成物の形成は、PCRの各サイクルでモニタリングされる。これは、通常、増幅反応中の蛍光シグナルを測定するためのさらなるデバイスを有するサーモサイクラーにおいて測定される。DNA色素または蛍光プローブは、PCR混合物に増幅前に添加され、増幅中のPCR生成物を分析するために使用され得る。この併用アプローチは、さらなる分析のために試料をその密閉容器から取り出す必要がないため、試料の操作(handling)が減少し、時間を節約し、その後の反応での生成物汚染のリスクが大きく減少する。
したがって、第4の局面において、本発明はまた、PCR、特にリアルタイムPCRによる増幅のための界面活性剤を全く含まない熱安定性DNAポリメラーゼの配合物の使用に関する。
一態様において、二本鎖増幅産物の量は通常、分析する試料中に最初に存在する核酸の量よりも多いため、適切な波長での励起時に、二本鎖DNAに結合された場合にのみ蛍光の増強を示す二本鎖DNA特異的色素が使用され得る。好ましくは、SybrGreenIIのように、例えば、PCR反応の効率に影響を及ぼさない色素のみが使用され得る。
代替的に、標的核酸に結合した場合にのみ蛍光を発する蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブが使用され得る。
別の態様において、一本鎖ハイブリダイゼーションプローブは2つの成分で標識される。第1の成分が適当な波長の光で励起されると、吸収されたエネルギーは、蛍光共鳴エネルギー転移の原理に従っていわゆるクエンチャーである第2の成分に転移される。PCR反応のアニーリング工程中、ハイブリダイゼーションプローブは、標的DNAに結合し、次の伸長期の間にTaq DNAポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。その結果、励起された蛍光成分とクエンチャーは、互いに空間的に分離され、したがって、第1の成分の蛍光放射が測定され得る。TaqMan加水分解プローブアッセイは、US 5,210,015、US 5,538,848、およびUS 5,487,972に詳細に開示されている。TaqManハイブリダイゼーションプローブおよび試薬混合物は、US 5,804,375に開示されている。
さらなる態様において、分子ビーコンハイブリダイゼーションプローブは第1の成分およびクエンチャーで標識され、標識は、好ましくはプローブの両端に配置される。プローブの二次構造の結果、両成分は溶液中で空間的に近接する。標的核酸へのハイブリダイゼーション後、両成分は互いに分離され、その結果、適当な波長の光での励起後、第1の成分の蛍光放射が測定され得る(US 5,118,801)。
なおさらなる特定の態様において、界面活性剤を全く含まない熱安定性DNAポリメラーゼの配合物は、PCRによる標的核酸の増幅のために使用され、前記リアルタイムPCRは、FRETハイブリダイゼーションプローブによってリアルタイムでモニタリングされることを特徴とする。
FRETハイブリダイゼーションプローブ試験形式は、あらゆる種類の均一系ハイブリダイゼーションアッセイに有用である(Matthews,J.A.およびKricka,L.J.,Analytical Biochemistry 169(1988)1-25)。これは、同時に使用され、増幅される標的核酸の同じ鎖の隣接する部位に相補的な2種類の一本鎖ハイブリダイゼーションプローブを特徴とする。両方のプローブは異なる蛍光成分で標識される。適当な波長の光で励起されると、第1の成分は、吸収されたエネルギーを、蛍光共鳴エネルギー転移の原理に従って第2の成分に転移させ、その結果、両方のハイブリダイゼーションプローブが検出対象の標的分子の隣接する位置に結合した場合、第2の成分の蛍光放射が測定され得る。FRETアクセプター成分の蛍光の増大をモニタリングする代わりに、ハイブリダイゼーション事象の定量的測定としてFRETドナー成分の蛍光の減少をモニタリングすることも可能である。
特に、FRETハイブリダイゼーションプローブ形式は、増幅された標的DNAを検出するためにリアルタイムPCRで使用され得る。リアルタイムPCRの分野で公知のあらゆる検出形式の中でも、FRETハイブリダイゼーションプローブ形式は、高感度で、正確で信頼性があることが証明されている(US 6,174,670)。2種類のFRETハイブリダイゼーションプローブの使用の代替法として、蛍光標識されたプライマーおよび1つのみの標識されたオリゴヌクレオチドプローブを使用することも可能である(Bernard,P.S.,et al.,Analytical Biochemistry 255(1998)101-107)。これに関連して、プライマーをFRETドナーで標識するか、FRETアクセプター化合物で標識するかは、随意に選択され得る。
他のプローブ系検出形式と同様、FRETハイブリダイゼーションプローブ検出形式もまた、「多重化(multiplexed)」することができる。より正確には、1つの反応容器において、多種類の標的が、多種類の増幅プライマー対で増幅され、多種類のハイブリダイゼーションプローブで検出され得る。この場合、前記多種類のプローブは、試料中に見い出されるはずの多種類の標的を検出および識別するために、異なる検出可能な蛍光色素で標識される。
FRETハイブリダイゼーションプローブ形式での多重化検出では、フルオレセインまたはフルオレセイン誘導体を、Cy-5、LC-Red-640、またはLC-red 705などの種々のFRETアクセプター部分と組み合わせてFRETドナー部分として使用することが可能である。
多重化リアルタイムPCRを行ない得る機器の典型例は、Roche Diagnostics LightCycler(カタログ番号3 531 414 201)である。これは、速度論的オンラインPCR定量、および続くPCR-生成物融解曲線の解析が可能な高速PCRシステムである。市販されている現在のLightCyclerバージョン2.0の光学系は、1つの光源、青色発光ダイオード(470nm LED)および6つの検出チャネルを含む。分析対象のすべての反応について所定の(defined)シグナル閾値を決定し、この閾値に達するのに必要とされるサイクル数Cpを、標的核酸ならびに標準またはハウスキーピング遺伝子などの参照核酸について測定する。標的分子の絶対コピー数または相対コピー数は、標的核酸および参照核酸について得られたCp値に基づいて決定され得る。
試料によって放出された蛍光は、1組の2色性ミラーとフィルターによって種々の波長に分離され、これは、6つの検出チャネルの1つに記録され得る。市販されている蛍光化合物のため、これにより、二本鎖DNA結合色素SybrGreenIの検出、TaqMan Probe形式での二色検出、およびHybridization Probe(HybProbe)形式での4色検出が可能になる。LightCyclerシステムの詳細は、WO 97/46707、WO 97/46712およびWO 97/46714に開示されている。
しかしながら、FRET系リアルタイムPCRアッセイ、特に、それぞれの多重化アッセイの後期段階では、蛍光の減少が高頻度に観察される。FRETハイブリダイゼーションプローブを用いた従来のリアルタイムPCRのこの欠点は、「フック」効果と称される。例を図2および3に示す。驚くべきことに、この効果は、本発明によるポリメラーゼ配合物を使用し、反応混合物が微量の界面活性剤も含まない場合、排除され得る。
調製方法
第5の局面において、本発明は、調製の全工程が界面活性剤が少しも存在しない状態で行なわれることを特徴とする、熱安定性DNAポリメラーゼの調製方法を提供する。概して言うと、各工程において少しの界面活性剤も添加せずに、熱安定性DNAポリメラーゼの精製のために成功裡に実施され得る任意の調製方法が適用され得る。
例えば、かかる精製方法は、
a) プロテアーゼインヒビターを補充した溶解物の提供工程、
b) 硫酸アンモニウム沈殿工程
c) 第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを用いた第1のクロマトグラフィーによる分離工程
d) 第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを用いた第2のクロマトグラフィーによる分離工程
)e) ヒドロキシアパタイトマトリックスを用いた第3のクロマトグラフィーによる分離工程
を含み得る。
溶解物は、主に、所望の熱安定性DNAポリメラーゼをコードする遺伝子を高収率で発現するように遺伝的に改変された、大腸菌などの組換え原核生物細胞に由来するものである。遠心分離によって発酵培地から細胞を回収した後、ペレットは凍結され得、その状態で、超音波などの物理的方法によって、または好ましくはフレンチプレス細胞破砕機での処理によって細胞が破砕され得る。溶解前、溶解中または溶解直後、例えば、PMSF、ロイペプチンなどの適切なプロテアーゼインヒビターを既に含有するバッファが添加され得る。
硫酸アンモニウム沈殿の工程と並行して、溶解物中に含有される核酸は、酵素的、または好ましくは例えばポリミンPを用いた沈殿のいずれかによって除去され得る。核酸沈殿物およびタンパク質沈殿物はともに、遠心分離によって取り出され得る。
次いで、好ましくは、疎水性相互作用クロマトグラフィーの原理に従って機能するアフィニティクロマトグラフィーカラムを用いた第1のクロマトグラフィーによる工程に上清が供され得る。最も好ましくは、アフィニティマトリックスは、フェニル-セファロースCL-4Bなどのフェニル-セファロースである。
続いて、第2のアフィニティクロマトグラフィーが、第1のアフィニティマトリックスと異なる第2のアフィニティマトリックスを用いて行なわれ得る。例えば、試料は、ヘパリンセファロースCL-6Bを含むヘパリンセファロースカラム上で精製され得る。
その後、好ましくはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによる精製である第3のクロマトグラフィーによる工程によって、さらなる精製が行なわれ得る。
組換え発現された熱安定性DNAポリメラーゼがいわゆるPoly-His-タグを含む場合、単純化された精製プロトコルが可能である。ポリヒスチジン-タグは、しばしば原核生物発現系および他の発現系において発現されるポリヒスチジンタグ付加組換えタンパク質のアフィニティ精製に使用される。遠心分離により組換え細菌細胞を収集し、得られた細胞ペレットを、先に開示された条件下で、例えば物理的な手段により溶解する。
この段階で、粗製抽出物は、細菌宿主由来のいくつかの他のタンパク質および核酸中に組換えタンパク質を含む。任意に、この段階で試料中に含まれる核酸は、DNAse Iによって消化され得る。
次いで、混合物を、ニッケル担持(loaded)セファロースまたはコバルト担持セファロースなどの特異的アフィニティマトリックス等を含むカラムに負荷する。セファロースマトリックスまたはアガロースマトリックスのそれぞれは、ポリヒスチジン-タグが高い親和性で結合する結合ニッケルイオンまたは結合コバルトイオンを含む。続いて、樹脂をバッファで洗浄してコバルトイオンまたはニッケルイオンと特異的に相互作用していない他のタンパク質を除去する。
続いて、好ましくはアニオン交換クロマトグラフィーである第二のクロマトグラフィー工程によりさらなる精製を行ってもよい。例えば、Q-セファロースffカラムを使用し得る。
従って、his-タグ付加熱安定性DNAポリメラーゼを精製するための典型的な精製方法は、
a) プロテアーゼインヒビターが補充された、His-タグ付加熱安定性DNAポリメラーゼを組換え発現する細胞由来の凍結細胞の溶解物を提供する工程、
b) DNAse Iによる試料中に含まれる核酸の消化工程
c) ニッケル担持セファロースマトリックスを使用したクロマトグラフィー分離工程、および
d) 好ましくはQ-セファロースffであるアニオン交換マトリックスを使用したクロマトグラフィー分離工程
を含み得る。
当業者に明らかなように、必要な場合、それぞれのクロマトグラフィー溶出後に透析工程を行ってもよい。特に、精製された熱安定性DNAポリメラーゼを適切な保存バッファに移すために、かかる透析は特に有利である。-20℃での長期間保存に適したバッファ系は、20mM Tris/HCl、0.1mM EDTA、100mM塩化カリウム、1mM DTT、50%グリセロール、pH 8.0である。
以下の実施例、配列表および図面は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。記載される手順において、本発明の精神を逸脱することなく変更がなされ得ることが理解されよう。
実施例1:
Taq DNAポリメラーゼの精製
プラスミドpUBS520およびpT5-Taqを有する凍結大腸菌細胞K12LE392から組換えTaq DNAポリメラーゼを均質に精製した。280nmでタンパク質濃度を測定した。1.64のモル吸光係数を使用した。
凍結細胞(25グラム)を解凍して、60mlバッファA(50mM Tris/HCl、0.5mMフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、1mM EDTA、0.64μg/mlロイペプチン、pH 8.0)に懸濁した。フレンチプレス細胞破砕機を使用して細胞を破砕した。
該溶液に硫酸アンモニウム(2.4g/100ml)を添加した。pH値をpH 8.0に再調整した。ポリミンPを添加して核酸を沈殿させた。沈殿した核酸を遠心分離(5000rpmで30分)により除去した。透明な上清を75℃で15分間インキュベートした。沈殿したタンパク質を遠心分離(5000rpmで30分)により除去した。
透明な上清液に硫酸アンモニウム(10.57g/100ml)を添加した。pH値をpH 8.0に再調整した。該溶液を、バッファB(50mM Tris/HCl、1mM EDTA、1M硫酸アンモニウム、pH 8.0)で平衡化したフェニルセファロースCL-4B(1.6 x 12cm)にアプライした。カラムをバッファBで洗浄し、次いでバッファC(50mM Tris/HCl、pH 8.0)で洗浄し、最後にバッファD(50mM Tris/HCl、1mM EDTA、20%エチレングリコール、pH 8.0)で洗浄した。酵素を、バッファDとバッファD+4M尿素の直線勾配で溶出した。酵素を含む画分をプールした。
プールを、バッファE(50mM Tris/HCl、0.1mM EDTA、100mM KCl、5%グリセロール、pH 8.0)で平衡化したヘパリンセファロースカラムCL-6B(1.6 x 12.5cm)にアプライした。カラムを、バッファEを用いて洗浄した。酵素を、バッファEとバッファE+650mM塩化カリウムの直線勾配で溶出した。SDSゲル電気泳動で画分を分析し、酵素を含む画分をプールした。プールした画分を、バッファF(10mMリン酸カリウム、0.1mM EDTA、1mM DTT、5%グリセロール、pH 8.0)に対して透析した。
透析したプールをHA Ultrogel(Pall、1.6 x 8.5cm)に負荷した。カラムをバッファFで洗浄した。酵素を、バッファFとバッファG(500mMリン酸カリウム、0.1mM EDTA、1mM DTT、5%グリセロール、pH 8.0)の直線勾配で溶出した。酵素を含む画分をプールして、界面活性剤を含まない保存バッファ(20mM Tris/HCl、0.1mM EDTA、100mM塩化カリウム、1mM DTT、50%グリセロール、pH 8.0)に対して透析した。
実施例2:
Δ288 Taq DNAポリメラーゼの精製
プラスミドpQE80-Lを有する凍結大腸菌K12XL1 blue細胞から、組換え切断型のTaq DNAポリメラーゼ、Δ288 Taq DNAポリメラーゼ(US 20050037412参照)を均質に精製した。280nmでタンパク質濃度を測定した。1.117のモル吸光係数を使用した。
凍結細胞(20グラム)を解凍し、240mLのバッファA(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、10mMイミダゾール、0.1mMフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、1mM DTT、pH 8.0)に懸濁した。フレンチプレス細胞破砕機を使用して細胞を破砕した。
溶液に、4mMの終濃度までMgCl2を添加した。DNase(50U/ml)の添加後、該溶液を室温で30分間インキュベートした。溶液を72℃で30分間インキュベートした。溶液を2〜8℃に冷却後、沈殿したタンパク質を遠心分離(13000rpmで10分)により除去した。
バッファB(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、10mMイミダゾール、pH 8.0)で平衡化したニッケル担持キレート化セファロースffカラム(5 x 4cm)に透明な上清をアプライした。酵素を、バッファBとバッファC(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH 8.0)の直線勾配で溶出した。SDSゲル電気泳動で画分を分析し、酵素を含む画分をプールした。
バッファD(25mM Tris/HCl、1mM EDTA、15mM NaCl、5%グリセロール、pH 8.5)に対する透析後、溶液をQ-セファロースffカラム(1.6 x 4cm)にアプライした。カラムをバッファDで洗浄した後、直線塩勾配(15〜200mM NaCl)を用いて酵素を溶出した。画分をSDSゲル電気泳動で分析し、酵素を含む画分をプールした。
最終プールを、界面活性剤非含有保存バッファ(20mM Tris/HCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、100mM塩化カリウム、50%グリセロール、pH 8.0)に対して透析した。
実施例3:
Δ288 AptaTaq DNAポリメラーゼの調製
精製したΔ288 Taq DNAポリメラーゼ(実施例2参照)をアプタマーと混合した。
アプタマーの配列は:CGA TCA TCT CAG AAC ATT CTT AGC GTT TTG TTC TTG TGT ATG ATC G-PO4 (配列番号:2)であった。
高度に濃縮された酵素溶液をアプタマーと混合して、界面活性剤非含有保存バッファで、50U/ポリメラーゼμlおよび4.33pmolアプタマー/ポリメラーゼ1単位の終濃度まで希釈した。さらに、5U/μlの体積活性(volume activity)を有する型を同様に生成した。酵素混合物を-20℃で保存した。
実施例4:
ポリメラーゼ活性の試験
標準的な手順を使用して、プライマー伸長アッセイでDNAポリメラーゼ活性を測定した。基質としてプライマー/鋳型ハイブリッドを使用した。プライマー/鋳型ハイブリッドは、M13 mp9ss DNA鋳型にハイブリダイズしたM13配列決定プライマー5'-GTA AAA CGA CGG CCA GT-3'(配列番号:1)からなった。プライマーはdNTPの取り込みにより伸長した。dNTPミックスは、放射能標識したα-P32dCTPを含んだ。合成生成物をTCAで沈殿させ、取り込まれたα-P32dCTPを、シンチレーションカウンターを用いて定量した。
以下の試薬:67mM Tris(pH 8.3)、5mM MgCl2、10mMメルカプトエタノール、0.2%ポリドカノール、0.2mg/mlゼラチン、200μM dATP、100μM dCTP、200μM dGTP、200μM dTTP、DNA/プライマーハイブリッド(1μg DNA、0.3μgプライマー)およびα-P32dCTP(1μCi)を含む50μl体積中で反応を行なった。希釈した酵素のアリコートを混合物に添加し、混合して65℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、試料を氷上に置き、10% TCA溶液でDNAを沈殿させた。GFC-フィルター(Whatman)で試料を濾過し、5% TCAでろ過物を3回洗浄し、乾燥させて、2mlのシンチレーション液中、βカウンターで計数した。
実施例5:
種々のDNAポリメラーゼ配合物を使用したヒトゲノムDNAの増幅
ヒトゲノムDNA(Roche Applied Science, 材料番号11 691 112)から、tPA遺伝子の断片を増幅した。増幅生成物の検出および定量は、FRETハイブリダイゼーションプローブ(US 6,174,670)を使用して行った。
界面活性剤の効果を示すために、実施例2に従い界面活性剤なしで調製したΔ288 Taq DNAポリメラーゼの調製物、実施例3のΔ288 AptaTaq DNAポリメラーゼの調製物および0.5% Tween 20を用いて調製したTaq DNAポリメラーゼの調製物を使用した。3種類の異なるポリメラーゼ配合物は以下の通りであった:
配合物1: Δ288 AptaTaq DNAポリメラーゼ界面活性剤なし
配合物2: Δ288 Taq DNAポリメラーゼ界面活性剤なし
配合物3: Δ288 Taq DNAポリメラーゼ界面活性剤あり(0.5% Tween 20)
以下のオリゴヌクレオチドプライマー:
tPA7リバース: GGA AGT ACA GCT CAG AGT TCT (配列番号:3)
tPA7フォワード: CTC CAT TCA TTC TCA AAA GGA CT (配列番号:4)
を使用した。
検出オリゴヌクレオチドは:
tPA Fluos: GGG AAA GGC GGG GTG G-Fluo (配列番号:5)
tPA LC-Red 640: LC-Red 640-GCC ACT TAC CCT CAG AGC AGG CA (配列番号:6)
であった。
Light Cycler LC480プラットフォーム(Roche Applied Science、カタログ番号:05 015 278 001)上、384ウェルプレート中で反応(20μl)を行なった。20μlの反応当たり、それぞれ2.95単位のポリメラーゼを使用した。
試薬の終濃度は:
Tris/HCl 30mM
MgCl2 3.2mM
KCl 30mM
dATP 0.2mM
dCTP 0.2mM
dGTP 0.2mM
dUTP 0.6mM
カゼイン 0.5g/l
tPA7フォワード 0.5μM
tPA7リバース 0.5μM
tPA7 Fluos 0.2μM
tPA7 LC-Red640 0.2μM
ヒトゲノムDNA 0.03ng〜300ng
であった。
LC 480機器上で、以下のサイクルプログラムを使用した:
以下の表は、試験された3種類の異なるポリメラーゼ配合物について得られた、計算されたクロスポイント(crossing point)(Cp)を示す:
低いクロスポイント数は、高い程度の増幅された核酸に対応する。
結果により、Δ288 Apta Taq界面活性剤なしを最小量の鋳型DNAと併用した場合以外は、Tween 20などの界面活性剤の非存在下で増幅反応は改善することが示される。
実施例6:
異なるTaq DNAポリメラーゼ配合物の活性を試験した以外は、実験は基本的に、実施例5に開示されたように行った:
A) 実施例1に従って界面活性剤なしで調製したポリメラーゼ配合物(図1参照)
B) 実施例1に従って界面活性剤なしで調製したが、最終的にNonidet NP-40およびTween 20(それぞれ0.5%の界面活性剤)を補充したポリメラーゼ配合物(図2参照)
C) 界面活性剤を用いて調製したポリメラーゼ配合物(Roche Applied Science、カタログ番号11 146 165 001)(図3参照)
リアルタイムPCR増幅曲線を示す図1〜3に示す結果により、3種類の異なる配合物のいずれを用いても、良好な増幅シグナルが得られることが示される。従って、Taq DNAポリメラーゼの性能は、増幅反応自体の間の界面活性剤の存在または精製手順の際の界面活性剤の添加のいずれも必要とすることなく、改善した酵素の性能がもたらされると結論付けることができる。
後者2種類の配合物は、試験した全ての濃度の標的DNAについて特徴的なフック効果(hook effect)(図2および図3参照)(すなわち、増幅サイクルの後期で増幅シグナルが再度減少した)を示した。対照的に、界面活性剤を添加せずに調製したポリメラーゼはフック効果を全く示さなかった(図1参照)。配合物B)で観察されたフック効果は、主に界面活性剤が存在するためであり、同様に、配合物C)におけるフック効果は、Taq DNAポリメラーゼの精製の際に界面活性剤を使用したため、微量の界面活性剤が依然としてアッセイ中に存在するためであると結論付けることができる。従って、界面活性剤の非存在下で増幅を行う際に本発明のポリメラーゼを使用する場合にのみフック効果は回避される。

Claims (11)

  1. 界面活性剤を全く含まず、10〜50mM Tris/HCl、0.05〜0.2mM EDTA、0.5〜2mM DTT、50〜200mM塩化カリウム、および20〜80%グリセロールを含む、熱安定性DNAポリメラーゼの配合物。
  2. いずれの精製工程にも界面活性剤の添加を必要としない精製方法により得られる、請求項1記載の配合物。
  3. 請求項1または2記載の配合物を含むキット。
  4. - 界面活性剤を全く含まない熱安定性DNAポリメラーゼの配合物、
    - 鋳型核酸、
    - 一対の増幅プライマー、および
    - デオキシヌクレオチド三リン酸
    を含む、界面活性剤を全く含まない反応混合物。
  5. 少なくとも一対のFRETハイブリダイゼーションプローブをさらに含む、請求項3記載のキットまたは請求項4記載の反応混合物。
  6. 調製の全工程が界面活性剤の非存在下で行われる、請求項1記載の熱安定性DNAポリメラーゼの調製のための方法。
  7. - プロテアーゼインヒビターを補充した溶解物を提供する工程、
    - 硫酸アンモニウム沈殿を行う工程、
    - 第一のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを使用した第一のクロマトグラフィー分離工程、
    - 第二のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを使用した第二のクロマトグラフィー分離工程、および
    - ヒドロキシアパタイトマトリックスを使用した第3のクロマトグラフィー分離工程
    を含む、請求項6記載の方法。
  8. a) プロテアーゼインヒビターを補充した、His-タグ付加熱安定性DNAポリメラーゼを組換え発現する細胞由来の凍結細胞の溶解物を提供する工程、
    b) DNAse Iによる試料に含まれる核酸の消化工程、
    c) ニッケル担持セファロースマトリックスを使用したクロマトグラフィー分離工程、および
    d) 好ましくはQ-セファロースffであるアニオン交換マトリックスを使用したクロマトグラフィー分離工程
    を含む、請求項6記載の方法。
  9. PCRによる標的核酸の増幅のための、請求項1または2記載の配合物の使用。
  10. PCRがリアルタイムでモニタリングされる、請求項9記載の使用。
  11. 少なくとも一対のFRETハイブリダイゼーションプローブの添加によりPCRがモニタリングされる、請求項10記載の使用。
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