JP2011217731A - 改変型フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼを遺伝子レベルで改変することで、改変前のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼよりも温度依存性が改善し且つ、キシロース作用性が低下した改変型FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ。
【選択図】なし
Description
本発明はまた、該改変型FADGDHをコードする遺伝子、該遺伝子を含むベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、および、該形質転換体を培養して改変型FADGDHを製造する方法に関する。
さらに本発明は、該改変型FADGDHの、グルコース測定試薬等への種々の適用に関する。
また、特許文献1にはAspergillus terreus(アスペルギルス・テレウス)由来FADGDHの遺伝子配列、アミノ酸配列が記載されている。特許文献2にはAspergillus oryzae由来FADGDHが、特許文献3にはAspergillus oryzae由来FADGDHを改変し、熱安定性が向上した改変型FADGDHが記載されている。特許文献4にはAspergillus oryzae由来FADGDHおよびAspergillus terreus由来FADGDHを改変し、熱安定性およびキシロース作用性を改善した改変型FADGDHが記載されている。特許文献5にはAspergillus terreus由来FADGDHを使用したグ
ルコースセンサが記載されている。
詳細には、非特許文献7は、SMBG(血糖自己測定(Self Monitoring Blood Glucose))装置の注意点として、環境温度条件が低温度域及び高温度域である場合に、測定値がISO15197の許容範囲から外れる装置も多く、測定値が極端に低値や高値を示す場合は医療事故の要因になりうることを指摘している。
開発の段階では、酵素反応条件は、特定の温度(たとえば37℃)での検討が中心になる。これに対し、実際に糖尿病患者がグルコースセンサーを用いてグルコースの測定を行う温度は、室温で行われる。温度変化によって酵素の反応性に変動が生じれば、測定値にばらつきが生じる。
グルコースセンサーによっては、このような温度による反応性変動を見込んで、補正機能が組み込まれているものもあるが、その機能は完全なものではない。
公知のFADGDHにはキシロースに対して作用するものがある。キシロースは、糖質の消化吸収試験に使用される単糖である。そのためキシロース吸収試験を実施している患者が血糖センサーを使用した場合、血中のグルコースだけではなくキシロースにも反応するため、測定値が本来のグルコース濃度よりも高値を示すことが問題となる。
本願発明において「温度依存性値」とは、改変前のFADGDHの25℃における活性値を37℃における活性値で割った値を1としたときに、各改変体において同様に活性値を測定し同様の計算を行った値を、さらに改変前のFADGDHの値で割ったものである。
温度依存性値が1.1であれば、計算上、37℃と25℃の間での差が約30%となり、25℃と30℃での差は12〜13%程度に縮まると推定される。これをデータのばらつきの最大値と最小値の差と考えると、プラスマイナス6〜7%程度に収まることになり好ましい。
さらに、温度依存性が1.2であれば、37℃と25℃の間での差が24%程度となり、25℃と30℃での差は10%程度に縮まると推定される。これをデータのばらつきの最大値と最小値の差と考えると、プラスマイナス5%程度に収まることになり、より好ましい。
また、本発明者らは、特許文献1に記載のFADGDHのキシロース作用性を検討し(特許文献4参照)、該FADGDHのキシロース作用性は、グルコースに対する反応性を100%とした場合、10%程度反応することを見出した。即ち、このFADGDHを使用したグルコース濃度を測定した場合、測定値の正確性を損ねてしまうという欠点があることが判明した。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、公知のFADGDHの特定のアミノ酸を他のアミノ酸に置換することで、改変前のFADGDHよりも温度依存性が改善し、且つ、キシロース作用性も低減する改変型FADGDHを見出し、本発明を完成させた。
項1.
以下の(A1)または(A2)のタンパク質。
(A1)配列番号2に記載のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FADGDH)のアミノ酸配列において、下記(a)に示されるアミノ酸置換のいずれかを含むアミノ酸配列を含むタンパク質:
(a)
G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53W、G53Y、
G55L、G55N、G55S、
S60C、S60D、S60G、S60L、S60N、S60T、S60V、
F446H、F446I、F446M、F446N、F446Q、F446T、F446V;
(A2)以下の(i)〜(iii)を満たすタンパク質;
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(b)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(b)
53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53W、53Y、
55L、55N、55S、
60C、60D、60G、60L、60N、60T、60V、
446H、446I、446M、446N、446Q、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも改善された温度依存性を有する。
項2.
以下の(B1)または(B2)のタンパク質。
(B1)配列番号2に記載のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FADGDH)のアミノ酸配列において、下記(c)に示されるアミノ酸置換のいずれかを含むアミノ酸配列を含むタンパク質:
(c)
G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53T、G53V、G53W、G53Y、
G55N、G55S、
S60C、S60D、S60G、S60N、
F446C、F446H、F446I、F446L、F446M、F446N、F446Q、F446S、F446T、F446V;
(B2)以下の(i)〜(iii)を満たすタンパク質;
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(d)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(d)
53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53T、53V、53W、53Y、
55N、55S、
60C、60D、60G、60N、
446C、446H、446I、446L、446M、446N、446Q、446S、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも低下したキシロース作用性を有する。
項3.
以下の(C1)または(C2)のタンパク質。
(C1)配列番号2に記載のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FADGDH)のアミノ酸配列において、下記(e)に示されるアミノ酸置換のいずれかを含むアミノ酸配列を含むタンパク質:
(e)
G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53W、G53Y、
G55N、G55S、
S60C、S60D、S60G、S60N、
F446H、F446I、F446M、F446N、F446Q、F446T、F446V;
(C2)以下の(i)〜(iii)を満たすタンパク質;
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(f)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(f)
53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53W、53Y、
55N、55S、
60C、60D、60G、60N、
446H、446I、446M、446N、446Q、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも改善された温度依存性を有し、かつ、低下したキシロース作用性を有する。
[項4]
項1〜3のいずれかに記載のタンパク質において、アミノ酸が置換された位置以外の位置において、さらに、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
[項5]
項1〜4のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
[項6]
項5に記載の遺伝子を含むベクター。
[項7]
項6に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
[項8]
項7に記載の形質転換体を培養し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を生産する方法。
[項9]
項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースアッセイキット。
[項10]
項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースセンサー。
[項11]
項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコース測定法。
本発明のタンパク質は、温度依存性に優れたグルコースデヒドロゲナーゼである。即ち、本発明のタンパク質は、使用環境の温度変化による活性への影響が低減されたグルコースデヒドロゲナーゼである。よって、本発明のタンパク質を用いることにより、使用環境の温度変化に左右されることなく、より正確に試料中のグルコース濃度を測定することが可能である。本発明のタンパク質は、使用環境の温度変化による酵素活性への影響が低減されているため、例えば、通常の室温よりも低い温度下又は高い温度下であってもより正確に試料中のグルコース濃度を測定することを可能にする。従って、本発明のタンパク質は、血中のグルコース濃度を測定するための臨床検査薬用酵素として有用である。
本発明のタンパク質は、温度依存性だけでなく、キシロースに対する作用性も低減されている。よって、基質特異性という観点からも本発明のタンパク質は血中のグルコース濃度測定に優れている。
本発明の方法により、上記のような優れた特性を有する新規なタンパク質を効率的に製造することが可能である。
本明細書において、アミノ酸配列を構成するアミノ酸はアルファベット1文字又は3文字で表記される。例えば、グリシンは、Gly又はGと表記される。アミノ酸配列上のアミノ酸の位置は、番号を用いて特定される。例えば、53番目のグリシンがアラニンに置換されている場合は、「G53A」と表記する。また、「53A」は、変異の有無を問わず、53位(又は53番目)のアミノ酸がAla(A)であることを示す。配列番号1、配列番号2、配列番号3において、アミノ酸の表記は、メチオニンを1として番号付けされている。
本願発明の一実施形態は、以下に記載されるタンパク質である。
配列番号1または配列番号2に記載のFADGDHのアミノ酸配列において、53位、55位、60位、446位のうちいずれか、もしくは、それと同等の位置においてアミノ酸置換を有する、改変前よりも温度依存性が改善した改変型FADGDH。
(A1)配列番号2に記載のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FADGDH)のアミノ酸配列において、下記(a)に示されるアミノ酸置換のいずれかを含むアミノ酸配列を含むタンパク質:
(a)
G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53W、G53Y、
G55L、G55N、G55S、
S60C、S60D、S60G、S60L、S60N、S60T、S60V、
F446H、F446I、F446M、F446N、F446Q、F446T、F446V;
(A2)以下の(i)〜(iii)を満たすタンパク質;
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(b)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(b)
53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53W、53Y、
55L、55N、55S、
60C、60D、60G、60L、60N、60T、60V、
446H、446I、446M、446N、446Q、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも改善された温度依存性を有する。
配列番号1または配列番号2に記載のFADGDHのアミノ酸配列において、53位、55位、60位、446位のうちいずれか、もしくは、それと同等の位置においてアミノ酸置換を有する、改変前よりもキシロース作用性が低下した改変型FADGDHもまた
、本願発明の一実施形態である。
(B1)配列番号2に記載のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FADGDH)のアミノ酸配列において、下記(c)に示されるアミノ酸置換のいずれかを含むアミノ酸配列を含むタンパク質:
(c)
G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53T、G53V、G53W、G53Y、
G55N、G55S、
S60C、S60D、S60G、S60N、
F446C、F446H、F446I、F446L、F446M、F446N、F446Q、F446S、F446T、F446V;
(B2)以下の(i)〜(iii)を満たすタンパク質;
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(d)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(d)
53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53T、53V、53W、53Y、
55N、55S、
60C、60D、60G、60N、
446C、446H、446I、446L、446M、446N、446Q、446S、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも低下したキシロース作
用性を有する。
配列番号1または配列番号2に記載のFADGDHのアミノ酸配列において、53位、55位、60位、446位のうちいずれか、もしくは、それと同等の位置においてアミノ酸置換を有する、改変前よりも温度依存性が改善し、且つ、キシロース作用性が低下した改変型FADGDHもまた、本願発明の一実施形態である。
(C1)配列番号2に記載のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FADGDH)のアミノ酸配列において、下記(e)に示されるアミノ酸置換のいずれかを含むアミノ酸配列を含むタンパク質:
(e)
G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53W、G53Y、
G55N、G55S、
S60C、S60D、S60G、S60N、
F446H、F446I、F446M、F446N、F446Q、F446T、F446V;
(C2)以下の(i)〜(iii)を満たすタンパク質;
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(f)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(f)
53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53W、53Y、
55N、55S、
60C、60D、60G、60N、
446H、446I、446M、446N、446Q、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも改善された温度依存性を有し、かつ、低下したキシロース作用性を有する。
本願において、温度依存性とは、タンパク質が存在する環境の温度変化に伴って、そのタンパク質が有するグルコースデヒドロゲナーゼ活性が変動する性質を意味する。温度依存性が改善されているとは、環境温度の変化に伴う酵素活性の変化が小さく、幅広い温度条件下で、より一定の酵素活性を保持することを意味する。
温度依存性が改善されているかどうかは、配列番号2で示されるアミノ酸配列から成るFADGDHの温度依存性を基準に判断され、具体的には以下の(1)〜(5)に従って判断される。
(1)37℃、24時間処理後における活性値(U/ml)を測定し、これをAとする。(2)25℃、24時間処理後における活性値(U/ml)を測定し、これをBとする。(3)Aを100%としたときのBの相対値(%)を計算し、これをCとする。
(4)配列番号2のFADGDHのCの値を1とし、(A1)タンパク質等の改変型タンパク質のCの相対値を求める。これをDとする。(Dを、温度依存性比、ともよぶ。)
(5)下記の実施例1に示されるように配列番号2のFADGDHの25℃における酵素活性は、37℃における酵素活性を100%とすると、63%である。よって、改変型のタンパク質のCの値が、63%よりも大きい場合、Dの値は1よりも大きいことになる。即ち、改変型FADGDHのDの値は、1を起点として1.59に近づく程、温度依存性が低く、改善されていることになる。
本発明のタンパク質は、改善された温度依存性を有するため、少なくとも1よりも大きいDの値を有する。好ましくは、Dの値は、1.05以上であり、より好ましくは、1.10以上、更に好ましくは、1.15以上、更に好ましくは、1.20である。
温度依存性の改善という観点から好ましいアミノ酸置換はG53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53W、G53Y、G55N、G55S、S60C、S60D、S60L、S60N、S60V、F446H、F446I、F446N、F446Q、F446T及びF446Vから成る群から選択されるいずれかである。これらのアミノ酸置換を有する改変型FADGDHは、1.05以上のDの値を有する。
より好ましいアミノ酸置換は、G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53R、G53S、G53W、G53Y、S60C、S60D、S60L及びF446Iから成る群から選択されるいずれかである。これらのアミノ酸置換を有する改変型FADGDHは、1.10以上のDの値を有する。
より好ましいアミノ酸置換は、G53R及びS60Cから成る群から選択されるいずれかである。これらのアミノ酸置換を有する改変型FADGDHは、1.15以上のDの値を有する。
更に好ましいアミノ酸置換は、S60Cから成る群から選択されるいずれかである。これらのアミノ酸置換を有する改変型FADGDHは、1.20以上のDの値を有する。
上記に例示した特定のアミノ酸は、(A1)タンパク質が有する温度依存性が改善されている限り、アミノ酸配列における異なる位置に複数存在してもよい。
一方、温度依存性の改善と併せて、キシロースに対する作用性が低減されている。
本発明において、キシロース作用性とは、グルコースを基質とした場合の反応速度とキシロースを基質とした場合の反応速度の相対比%(グルコースを100%とする。)で表される。配列番号2に示されるアミノ酸配列から成るFADGDHのキシロ−ス作用性の値を1とし、それぞれの改変型酵素の相対比%を計算する。よって、この値が小さいほど、キシロース作用性が低下していると判断される。
キシロースに対する作用性が低減されているという観点から好ましいアミノ酸の置換は、G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53T、G53V、G53Y、G55S、S60C、S60N、
F446I及びF446Sから成る群から選択されるいずれかである。これらのアミノ酸置換を有する改変型FADGDHは、キシロース作用性比が改変前と比べて0.8以下である。
より好ましいアミノ酸置換は、G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53V及びS60C
から成る群から選択されるいずれかである。これらのアミノ酸置換を有する改変型FADGDHは、キシロース作用性比が改変前と比べて0.6以下である。
より好ましいアミノ酸置換は、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N及びG53Rから成る群から選択されるいずれかである。これらのアミノ酸置換を有する改変型FADGDHは、キシロース作用性比が改変前と比べて0.4以下である。
上記に例示した特定のアミノ酸は、(B1)タンパク質のキシロースに対する作用性が低減されている限り、アミノ酸配列における異なる位置に複数存在してもよい。
上記に例示した特定のアミノ酸は、(C1)タンパク質が有する温度依存性が改善されており、かつ、(C1)タンパク質のキシロースに対する作用性が低減されている限り、アミノ酸配列における異なる位置に複数存在してもよい。
また、配列番号2のアミノ酸配列において、163位のアルギニンがグリシンに置換され、551位のシステインがバリンに置換されたアミノ酸配列は野生型のFADGDHのアミノ酸配列(配列番号1)である。よって、(A1)のタンパク質は、上記特定のアミノ酸置換に加え、163番目のアミノ酸がグリシンに置換され、551番目のアミノ酸がバリンに置換されていてもよい。
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を含むアミノ酸配列において下記(b)に示されるアミノ酸置換のいずれかを含むアミノ酸配列を含む、
(b) 53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53W、53Y、
55L、55N、55S、
60C、60D、60G、60L、60N、60T、60V、
446H、446I、446M、446N、446Q、446T、446V;
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも改善された温度依存性を有する。
即ち、(A2)タンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%のアミノ酸の相同性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、上記(b)で示される少なくとも一つのアミノ酸を含む。更に、(A2)タンパク質は、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を保持し、配列番号2のFADGDHと比較して改善された温度依存性を有する。
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(d)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(d) 53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53T、53V、53W、53Y、
55N、55S、
60C、60D、60G、60N、
446C、446H、446I、446L、446M、446N、446Q、446S、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも低下したキシロース作用性を有する。
即ち、(B2)タンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%のアミノ酸の相同性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、上記(d)で示される少なくとも一つのアミノ酸を含む。更に、(B2)タンパク質は、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を保持し、配列番号2のFADGDHと比較して低下したキシロース作用性を有する。
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(f)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(f) 53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53W、53Y、
55N、55S、
60C、60D、60G、60N、
446H、446I、446M、446N、446Q、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも改善された温度依存性を有し、かつ、低下したキシロース作用性を有する。
即ち、(C2)タンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%のアミノ酸の相同性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、上記(f)で示される少なくとも一つのアミノ酸を含む。更に、(C2)タンパク質は、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を保持し、配列番号2のFADGDHと比較して改善された温度依存性を有し、かつ、低下したキシロース作用性を有する。
より好ましい特定のアミノ酸は、53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53R、53S、53W、53Y、60C、60D、60L及び446Iから成る群より選択されるいずれかである。
より好ましい特定のアミノ酸は、53R及び60Cから成る群より選択されるいずれかである。
更に好ましい特定のアミノ酸は、60Cである。
上記に例示した特定のアミノ酸は、(A2)タンパク質が有する温度依存性が改善されている限り、アミノ酸配列における異なる位置に複数存在してもよい。
上記(d)に列挙される特定のアミノ酸の中でも、好ましいアミノ酸は、53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53T、53V、53Y、55S、60C、60N、446I及び446Sから成る群から選択されるいずれかである。
更に好ましい特定のアミノ酸は、53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53V及び60Cから成る群から選択されるいずれかである。
更に好ましいアミノ酸置換は、53H、53K、53L、53M、53N及び53Rから成る群から選択されるいずれかである。
上記に例示した特定のアミノ酸は、(B2)タンパク質が有する温度依存性が改善されている限り、アミノ酸配列における異なる位置に複数存在してもよい。
上記に例示した特定のアミノ酸は、(C2)タンパク質が改善された温度依存性を有し、かつ、低下したキシロース作用性を有する限り、アミノ酸配列における異なる位置に複数存在してもよい。
また、本願明細書において、あるアミノ酸配列における配列番号1の54位と同等の位置は、GENETYXソフトで配列を比較したとき、配列番号1の54位と対応する位置をもって同等と判断する。同様に、アミノ酸配列における配列番号1の58位と同等の位置は、GENETYXソフトで配列の一次構造(例えばアラインメント)を比較したとき、配列番号1の58位と対応する位置をもって同等と判断する。必要に応じてさらに立体構造の知見などを参照しても良い。
具体的には、アスペルギルス・オリゼ野生株由来のFADGDHのアミノ酸配列とアスペルギルス・テレウス野生株由来のFADGDHのアミノ酸配列とのアライメントの比較データより、本発明の53位と同等の位置とは、アスペルギルス・テレウス野生株由来のFADGDHの49位のグリシンに相当する。また、本発明の55位と同等の位置とは、アスペルギルス・テレウス野生株由来のFADGDHの51位のグリシンに相当する。また、本発明の60位と同等の位置とは、アスペルギルス・テレウス野生株由来のFADGDHの56位のセリンに相当する。また、本発明の446位と同等の位置とは、アスペルギルス・テレウス野生株由来のFADGDHの440位のフェニルアラニンに相当する。
(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)からなる群のうちいずれかよりなるタンパク質において、アミノ酸が置換された位置以外の位置において、さらに、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質もまた、本願発明の一実施形態である。
なお、GENETYXソフトは、GENETYX CORPORATIONから販売されているVersion 6.1のものを使用した。
以下に、配列番号1で示される野生型のアスペルギルス・オリゼ由来のFADGDHを改変したFADGDH改変体の製造法を例示する。製造法は、特に限定されないが、以下に示すような手順で製造することが可能である。
FADGDHを構成するアミノ酸配列を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAが作成される。DNA中の塩基配列を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(Transformer Mutagenesis Kit;Clonetech社, EXOIII/Mung Bean Deletion Kit;Stratagene製, Quick Change Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
Aspergillus oryzae由来のFADGDHとしては、配列番号1または配列番号2で表されるタンパク質が例示できる。
Aspergillus terreus由来のFADGDHとしては、配列番号3で表されるタンパク質が例示できる。
本願発明の遺伝子は、上記改変前のタンパク質をコードする遺伝子の配列において、53位、55位、60位、446位のうちいずれかのアミノ酸、あるいはそれと同等の位置のアミノ酸をコードする部分が、他のアミノ酸をコードするように置換されている。
mから該Tmより15℃、好ましくは10℃低い温度までの範囲の温度でハイブリダイズする条件をいう。具体的には、例えば一般的なハイブリダイゼーション用緩衝液中で、68℃、20時間の条件でハイブリダイズする条件をいう。本発明において、配列番号4、5または6に記載の塩基配列がコードするアミノ酸配列と50%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性、さらに好ましくは90%以上の相同性、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ配列をコードする塩基配列がストリンジェントな条件に相当すると考えられる。
(a)タンパク質実験プロトコール第1巻 機能解析編,第2巻 構造解析編 (秀潤社) 西村善文,大野茂男 監修
(b)改訂 タンパク質実験ノート 上 抽出と分離精製 (洋土社) 岡田雅人,宮崎香 編集
また、以下に例示する方法によって進めることもできる。
い。
また、適当な宿主微生物としては、組換えベクターが安定であり、かつ自立増殖可能で外来遺伝子の形質発現できるものであれば特に制限されない。エシェリヒア・コリーではエシェリヒア・コリーW3110、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーHB101、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5αなどを用いることができる。
;Stratagene製,QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
[試験例]
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1% TritonX−100を含む)
24mM PMS溶液
2.0mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D−グルコース溶液
上記PIPES緩衝液20.5ml、DCPIP溶液1.0ml、PMS溶液2.0ml、D―グルコース溶液5.9mlを混合して反応試薬とする。
反応試薬3mlを37℃で5分間予備加温する。GDH溶液0.1mlを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGDH溶液の代わりにGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量として定義している。また、25℃での活性値を測定する場合は、上記の37℃と表記した操作を25℃に変更して測定する。キシロースに対する反応性を測定する際は、上記の1M D−グルコース溶液の代わりに1M D−キシロースを使用すればよい。
活性(U/ml)=
{−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.0×希釈倍率}/{16.3×0.1×1.0}
なお、式中の3.0は反応試薬+酵素溶液の液量(ml)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)、0.1は酵素溶液の液量(ml)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。
本発明はまた、本発明に従う改変型FADGDHを含むグルコースアッセイキットを特徴とする。本発明のグルコースアッセイキットは、本発明に従う改変型FADGDHを少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、キットは、本発明の改変型FADGDHに加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明に従う改変型FADGDHは種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。
本発明はまた、本発明に従う改変型FADGDHを用いるグルコースセンサーを特徴とする。電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明の酵素を固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはフェロセンあるいはその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明の改変型FADGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定する。標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い、試料中のグルコース濃度を計算することができる。
配列番号2のFADGDHを使用して、上述した方法によりFADGDH精製標品を調製し、38mM PIPES緩衝液(pH6.5)中で、所定の温度条件における活性測定を行った。図1に酵素活性の温度依存性曲線を示した。縦軸は、37℃における活性値を100%として、各温度における相対的な活性値を示している。37℃における活性値を100%とする場合に、25℃における活性値が約63%、5℃における活性値が約40%を示している。また、配列番号1のFADGDHの温度依存性も配列番号2のFADGDHと同様であった。
配列番号2のFADGDHをコードする遺伝子(配列番号5)を含む組み換えプラスミドpAOGDH−M76で市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli DH5a;TOYOBO社製)を形質転換し、アンピシリンを含んだLB寒天培地(1.0%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1.0%NaCl、1.5%寒天;pH7.3)に塗布した後、30℃で一晩培養した。得られた形質転換体をアンピシリン(50mg/ml;ナカライテスク社製)を含んだLB液体培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1.0%NaCl;pH6.5)を摂取し、30℃で一晩振とう培養した。得られた菌体から常法によりプラスミドを調整した。
実施例2で使用したpAOGDH−M76を鋳型として、53位のグリシンを20種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号7の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチドをQuickChangeTMSite−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いてPCRを行った。続いて、PCR産物で市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli DH5a;TOYOBO社製)を形質転換し、アンピシリンを含んだLB寒天培地で37℃、16時間培養した。その後、改変型FADGDHを有したシングルコロニーを、アンピシリンを含んだLB液体培地に摂取し、30℃で一晩振とう培養した。その後、1mlの培養液を摂取し、常法によりプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドの当該部位をDNAシークエンサー(ABI PRISMTM 3700DNA Analyzer;Perkin−Elmer製)を用いて特定した。53位をCに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53C、53位をFに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53F、53位をHに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53H、53位をIに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53I、53位をKに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53K、53位をLに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53L、53位をMに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53M、53位をNに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53N、53位をPに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53P、53位をQに置換した改変型FADGDHを有する
プラスミドをpAOGDH−M76−G53Q、53位をRに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53R、53位をSに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53S、53位をTに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53T、53位をVに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53V、53位をWに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53W、53位をYに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G53Yと命名した。
実施例3で取得した53位を16種のアミノ酸に置換した改変型FADGDHプラスミドで形質転換したそれぞれの大腸菌DH5αをアンピシリンを含んだLB寒天培地で37℃、16時間培養した。その後、改変型FADGDHのシングルコロニーをアンピシリンを含んだLB液体培地に摂取し、30℃で一晩振とう培養した。その培養液の一部から遠心分離によって得られた菌体を回収し、50mMのリン酸緩衝液(pH6.0)中でガラスビーズを用いて該菌体を破砕することにより粗酵素液を調製した。調製した粗酵素液を用いて、上述した活性測定法により25℃および37℃でのGDH活性と37℃でのキシロース作用性を測定した。表1にその結果を示す。
表1は、5ml LB培地/試験管,30℃,24時間培養した時の53位を改変した改変型FADGDHの温度依存性及びキシロース作用性を比較した結果である。
53位をC、F、H、K、L、M、N、Q、R、S、WおよびYに置換した改変型FADGDHは改変前のFADGDH(Mut1)より温度依存性が改善しただけではなく、キシロース作用性も低下した。また、53位をTおよびVに置換した改変型FADGDHは改変前のFADGDH(Mut1)よりキシロース作用性が低下した。
実施例3と同様の方法で55位のグリシンを他の20種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号8の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いてアミノ酸の至適化を行った。
55位をHに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G55H、55位をIに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G55I、55位をKに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G55K、55位をLに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G55L、55位をNに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G55N、55位をQに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G55Q、55位をRに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G55R、55位をSに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G55S、55位をVに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G55V、55位をYに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−G55Yと命名した。
実施例4と同様の方法で改変型FADGDHの粗酵素液を調整し、温度依存性とキシロース作用性を測定した。表2に改変型FADGDHの温度依存性とキシロース作用性の結果を示す。
表2は、5ml LB培地/試験管,30℃,24時間培養した時の55位を改変した改変型FADGDHの温度依存性及びキシロース作用性を比較した結果である。
55位をNおよびSに置換した改変型FADGDHは改変前のFADGDH(Mut1)より温度依存性が改善しただけではなく、キシロース作用性も低下した。また、55位をLに置換した改変型FADGDHは改変前のFADGDH(Mut1)より温度依存性が改善した。
実施例3と同様の方法で60位を20種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号9の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いてのアミノ酸の至適化を行った。60位をCに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−S60C、60位をDに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−S60D、60位をGに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−S60G、60位をIに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−S60I、60位をKに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−S60K、60位をLに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−S60L、60位をNに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−S60N、60位をTに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−S60T、60位をVに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−S60V、60位をYに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−S60Y、と命名した。
実施例4と同様の方法で改変型FADGDHの粗酵素液を調整し、温度依存性とキシロース作用性を測定した。表3に改変型FADGDHの温度依存性とキシロース作用性の結果を示す。
表3は、5ml LB培地/試験管,30℃,24時間培養した時のS60位を改変した改変型FADGDHの温度依存性及びキシロース作用性を比較した結果である。
60位をC、D、GおよびNに置換した改変型FADGDHは改変前のFADGDH(Mut1)より温度依存性だけではなく、キシロース作用性も低下した。また、60位をL、TおよびVに置換した改変型FADGDHは改変前のFADGDH(Mut1)より温度依存性が改善した。
実施例3と同様の方法で446位を20種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号10の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いてのアミノ酸の至適化を行った。446位をCに置換した改変型FADGDHを有するプラスミド
をpAOGDH−M76−F446C、446位をDに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446D、446位をGに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446G、446位をHに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446H、446位をIに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446I、446位をLに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446L、446位をMに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446M、446位をNに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446N、446位をPに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446P、446位をQに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446Q、446位をRに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446R、446位をSに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446S、446位をTに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446T、446位をVに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446V、446位をYに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−F446Y、と命名した。
実施例4と同様の方法で446位を15種のアミノ酸に置換した改変型FADGDHの温度依存性とキシロース作用性を測定した。表4に改変型FADGDHの温度依存性とキシロース作用性の結果を示す。
表4は、5ml LB培地/試験管,30℃,24時間培養した時の446位を改変した改変型FADGDHの温度依存性及びキシロース作用性を比較した結果である。
446位をH、I、M、N、Q、TおよびVに置換した改変型FADGDHは改変前のFADGDH(Mut1)より温度依存性が改善しただけではなく、キシロース作用性も低下した。446位をC、L、SおよびYに置換した改変型FADGDHは改変前のFADGDH(Mut1)よりキシロース作用性が低下した。
Claims (11)
- 以下の(A1)または(A2)のタンパク質。
(A1)配列番号2に記載のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FADGDH)のアミノ酸配列において、下記(a)に示されるアミノ酸置換のいずれかを含むアミノ酸配列を含むタンパク質:
(a)
G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53W、G53Y、
G55L、G55N、G55S、
S60C、S60D、S60G、S60L、S60N、S60T、S60V、
F446H、F446I、F446M、F446N、F446Q、F446T、F446V;
(A2)以下の(i)〜(iii)を満たすタンパク質;
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(b)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(b)
53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53W、53Y、
55L、55N、55S、
60C、60D、60G、60L、60N、60T、60V、
446H、446I、446M、446N、446Q、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも改善された温度依存性を有する。 - 以下の(B1)または(B2)のタンパク質。
(B1)配列番号2に記載のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FADGDH)のアミノ酸配列において、下記(c)に示されるアミノ酸置換のいずれかを含むアミノ酸配列を含むタンパク質:
(c)
G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53T、G53V、G53W、G53Y、
G55N、G55S、
S60C、S60D、S60G、S60N、
F446C、F446H、F446I、F446L、F446M、F446N、F446Q、F446S、F446T、F446V;
(B2)以下の(i)〜(iii)を満たすタンパク質;
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(d)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(d)
53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53T、53V、53W、53Y、
55N、55S、
60C、60D、60G、60N、
446C、446H、446I、446L、446M、446N、446Q、446S、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも低下したキシロース作用性を有する。 - 以下の(C1)または(C2)のタンパク質。
(C1)配列番号2に記載のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FADGDH)のアミノ酸配列において、下記(e)に示されるアミノ酸置換のいずれかを含むアミノ酸配列を含むタンパク質:
(e)
G53C、G53F、G53H、G53K、G53L、G53M、G53N、G53Q、G53R、G53S、G53W、G53Y、
G55N、G55S、
S60C、S60D、S60G、S60N、
F446H、F446I、F446M、F446N、F446Q、F446T、F446V;
(C2)以下の(i)〜(iii)を満たすタンパク質;
(i) 配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において下記(f)のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、
(f)
53C、53F、53H、53K、53L、53M、53N、53Q、53R、53S、53W、53Y、
55N、55S、
60C、60D、60G、60N、
446H、446I、446M、446N、446Q、446T、446V
(ii) グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する、
(iii) 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも改善された温度依存性を有し、かつ、低下したキシロース作用性を有する。 - 請求1〜3のいずれかに記載のタンパク質において、アミノ酸が置換された位置以外の位置において、さらに、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
- 請求項5に記載の遺伝子を含むベクター。
- 請求項6に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
- 請求項7に記載の形質転換体を培養し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を生産する方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースアッセイキット。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースセンサー。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコース測定法。
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