JP2011214211A - クッション性合成皮革 - Google Patents

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Abstract

【課題】中ワタなどのクッション材を用いずとも、合成皮革自身が良好なクッション性を発揮しうるクッション性合成皮革を提供することを目的とする。
【解決手段】基材層11の上に多孔質層12を介して(または介さずに)表層13が形成された合成皮革において、基材層11の少なくとも一部にポリエーテルエステル系エラストマーを用いたクッション性合成皮革10である。該ポリエーテルエステル系エラストマーが、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを主原料として用いられる芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレングリコールをソフトセグメントとするブロックエーテルエステル系弾性体からなるフィラメントである。基材層11が良好な弾性を示すことから、クッション性合成皮革10全体としても良好な弾性を示し、椅子の座面に用いた場合に座り心地がよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、椅子やベッドのようにクッション性が要求される各種製品に用いることのできるクッション性合成皮革に関するものである。
事務椅子、ソファーなどの家具や、自動車の座席における表面シート材として、合成皮革がしばしば用いられる。
合成皮革としては、ポリウレタン系合成皮革やポリ塩化ビニル系合成皮革などが知られている。
ポリウレタン系合成皮革は、乾式法により得られる乾式合成皮革と、湿式法により得られる湿式合成皮革に大別される。乾式合成皮革は、織物などの基材層にポリウレタン製表皮層を接着剤により貼り付けて一体化したものであり、製造が簡便で安価である反面、厚みが薄いので重厚感に欠ける。一方、湿式合成皮革は、上記基材層とポリウレタン製表皮層の間にポリウレタン製多孔質層を介装させたものであり(例えば特許文献1の段落[0002]参照)、上記多孔質層の存在によって適度なボリューム感を備え、天然皮革に一層近づいた質感、感触、風合いを呈する。
上記基材層は補強の目的で設けられており、基材層としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、レーヨン繊維、綿などからなる織物や編物が用いられる(例えば特許文献1の段落[0009]参照)。この様な合成皮革を例えば椅子張り材として用いる場合には、椅子フレームにまずクッション材を座席形に配置し、このクッション材の表面を覆うように合成皮革を張り付ける。なお特許文献2については後述する。
特開平7−70944号公報 特許第4195037号公報
上述の様に合成皮革はクッション材と組み合わせて使用することが多く、クッション性は中ワタやスポンジなどのクッション材に依存しているから、クッション性を高めようとすれば、概して厚く嵩高いものとなる。そこで本発明は、クッション材を用いずとも、合成皮革自身が良好なクッション性を発揮しうるクッション性合成皮革を提供することを目的とする。
本発明に係るクッション性合成皮革は、基材層の上に多孔質層を介しまたは介さずに表層が形成された合成皮革において、前記基材層の少なくとも一部にポリエーテルエステル系エラストマーを用い、該ポリエーテルエステル系エラストマーが、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを主原料として用いられる芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレングリコールをソフトセグメントとするブロックエーテルエステル系弾性体からなるフィラメントであることを特徴とする。
従来の合成皮革における織物製の基材層は殆ど伸びを示さず、クッション材としての機能はなく、このため椅子等におけるクッション性は中ワタなどのクッション材に頼らざるを得なかった。
これに対し本発明の基材層に用いる上記ポリエーテルエステル系エラストマーが適度な弾性を有することから、中ワタなどのクッション材を用いなくても、本発明のクッション性合成皮革単独でも十分なクッション性が発揮される。従ってこのクッション性合成皮革のみで椅子の座面や背もたれ等を構成したときであっても、快適な座り心地を与える。
上記基材層としては、上記ポリエーテルエステル系エラストマーのフィラメントを縦糸及び/または緯糸の一部または全部に用いた織物、上記ポリエーテルエステル系エラストマーのフィラメントを編糸の一部または全部に用いた編物などが挙げられる。上記多孔質層や表層の材料については特に限定されるものではないが、従来公知の素材からなるもの、例えばポリウレタンを用いることが好ましい。ポリウレタン製多孔質層やポリウレタン製表層であれば、良好な伸縮性を発揮するので、上記基材層の弾性伸縮を損なわず、結局、合成皮革全体として良好な伸縮性を示す。なお本発明においては、多孔質層を有する湿式合成皮革、多孔質層のない乾式合成皮革のいずれであっても良い。
更に前記表層が微細孔を備え、前記多孔質層が連続気泡体であることが好ましい。なお上記「微細孔」とは、最も小さいものでは、非透水性で且つ透湿性(通気性)を発揮するサイズである。大きいものでは、多孔質層が微細孔から露出していることが肉眼で認識可能なサイズである。上記のような表層及び多孔質層であれば、透湿性が良好となる。従ってこれらを織編物製の基材層に積層して形成したクッション性合成皮革においても、良好な透湿性が発揮される。例えばこのクッション性合成皮革を椅子の座面に用いた場合に、座部の蒸れ感が少ない。
更に本発明においては、前記基材層の一部として、前記ポリエーテルエステル系エラストマー以外の合成樹脂製マルチフィラメントを併用することができる。
ポリエーテルエステル系エラストマー以外の合成樹脂マルチフィラメントとしては、特に限定するものではないがポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント若しくはポリエチレンテレフタレートを主成分として5−ナトリウムスルフォン酸金属塩やイソフタル酸等を共重合させたマルチフィラメント、更にはポリエチレンテレフタレートに微粉不活性物質を含ませたマルチフィラメントが、クッションにした場合の着座性能を向上させるので推奨できる。
前記ポリエステル系エラストマー以外の合成樹脂マルチフィラメント、殊にポリエステル系マルチフィラメントは、基材層とウレタン表皮の密着性能を向上させることにより、剥離強度が向上するので、嵩高加工されていることが推奨される。嵩高加工とは、合成繊維の熱セット性を利用して糸に巻縮を付与してふくらみを与える加工であり、これらの加工糸は、バルキーヤーン、テクスチャードヤーン、ウーリー加工ヤーンが推奨される。
ここで一般論として、モノフィラメントとマルチフィラメントを対比すると、モノフィラメントのみで構成するよりもマルチフィラメントを組合せて構成した方が、基材層表面の細かな凹凸が多くなり、そのアンカー効果によって基材層の上の多孔質層或いは表層との接合性が良好となる。
他方、前記ポリエーテルエステル系エラストマーは良好な伸びを示すので、これをマルチフィラメントで用いるときは、該マルチフィラメントを束ねる際の取扱い性が低下する傾向を見せる。そのため前記ポリエーテルエステル系エラストマーをモノフィラメントとして用いることが好ましいという面もあるが、上述の様にモノフィラメントの場合はマルチフィラメントの場合よりも接合性に劣る傾向がある。
そこでこれらを総合して、基材層の一部として上記ポリエーテルエステル系エラストマー以外の合成樹脂製マルチフィラメントを併用すれば、前記ポリエーテルエステル系エラストマーとしてモノフィラメントを用いた場合であっても、モノフィラメントとマルチフィラメントの補完的作用が発揮され、上記合成樹脂製マルチフィラメントによって多孔質層或いは表層との良好な接合性を確保できる。
本発明の基材層に用いるポリエーテルエステル系弾性糸の破断伸度は、50〜200%、トータルデニールは200〜6000デニール、160℃乾熱収縮率は12〜60%であることが好ましい。また、糸の断面は丸であっても異形断面であっても良いが、異形断面の場合には基層材とウレタンとの剥離強度を向上できる。
また、ポリエーテルエステル系弾性糸が芯鞘型複合弾性糸であること、ポリエーテルエステル系弾性糸が隣接する糸と融着していること、ポリエーテルエステル系弾性糸に難燃剤及び/又は耐光剤が付与されていること、更にはポリエーテルエステル系弾性糸の160℃乾熱収縮率がポリエステル系繊維糸条の乾熱収縮率よりも5〜50%高いことが望ましい。ポリエーテルエステル系弾弾性糸が芯鞘型複合弾性糸であり、隣接する糸と融着していると編み地形態が安定し、更に難燃剤及び/又は耐光剤が付与されていると品質を向上させることが出来るので何れも好ましい方向となる。
尚、ポリエーテルエステル系芯鞘型弾性糸の融点差は大きい方が熱接着の際の取り扱い性に優れるが、紡糸性の問題により80〜20℃、好ましくは50〜30℃の融点差を有する様、芯側の融点を高くするのが好ましい。また、ポリエーテルエステル系単成分型弾性糸を構成するポリエーテルエステル系弾性糸の融点は150〜250℃、芯鞘型複合弾性糸の場合は芯成分の融点を150〜250℃とし鞘成分の融点をそれよりも80〜20℃低めに設計する。また、芯鞘の構成比率は糸断面積比で芯成分50%以上、好ましくは70〜95%であり、熱融着処理は鞘側の融点よりも10〜40℃高い温度で行うことが好ましい。
基材層に対する多孔質層や表層の接合に関しては、接着剤処理やプライマー処理の併用を排除するものではない。もっとも接合による拘束力を緩やかなものにして使用時の柔軟性や追従性を確保するという観点からは、上記したマルチフィラメントとモノフィラメントの適切な組合せによるアンカー効果に基づく接合力の調整が絶妙な使用感を確保する上で、特に有用であることが分かった。
更に本発明において、前記基材層として前記ポリエーテルエステル系エラストマーのモノフィラメント及び前記その他の合成樹脂製マルチフィラメントが併用されるときは、前記ポリエーテルエステル系エラストマーのモノフィラメントが熱収縮することによって、前記合成樹脂製マルチフィラメントの隆起部が形成されるようなものであることが好ましい。
このようにして基材層に隆起部が形成されて立体感が出ると、表層の表側形状、即ちクッション性合成皮革の表面に凹凸模様が写し出され、意匠性を向上させることができる。
また本発明において、前記基材層が織編物であり、且つそのカバーファクターが1300以上であることが好ましい。
合成皮革の製造において、基材層上に多孔質層原料溶液を塗布し、これを湿式凝固させて多孔質層を形成するという方法が行われる場合があるが、この場合に基材層の目が粗いと、多孔質層原料溶液が裏に抜け落ち、多孔質層を形成し難くなることが想定される。そこで上記のようにカバーファクターを1300以上(より好ましくは1500以上)とすれば、基材層の目が十分に詰まっているので、多孔質層原料溶液が基材層上に載った状態を保ちつつ湿式凝固することから、多孔質層を良好に形成することができる。
この場合、基材層は、0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上の目開きを形成することにより、剥離強度が上がるので特に推奨される。
または別の視点から、前記基材層について、目開きが1mm以上の箇所を散在的に形成することが推奨されることもある。基材層の目を目開き1mm以上(より好ましくは2mm以上)となるように開けた部分では、多孔質層原料溶液が抜け落ち、出来上がった多孔質層に貫通孔が形成される。これにより多孔質層上に設ける表層にも孔が形成され、クッション性合成皮革全体として貫通孔を備えたものとなり、通気性が向上する。
なお上記目開き1mm以上(より好ましくは2mm以上)の目の部分(以下、大目開き箇所と称することがある)を、織編物の一目一目に形成しても良いが、織編物の複数の目をおいて適当なピッチで形成するようにしても良い(図6参照)。但し、大目開き箇所同士の間の糸或いは布の部分の幅が狭すぎると、基材層上に多孔質層原料溶液が上手く載らず、多孔質層を形成し難くなる。従って大目開き箇所同士の間隔(図5(a)及び図6(b)のS,U参照)を1mm以上とすることが好ましく、より好ましくは2mm以上である。
なお「目開き」とは、織編物に開いた目の大きさを言い、開いた目が正方形の場合は一辺の長さ、長方形の場合は短辺の長さ、楕円形の場合は短軸の長さを言う(図5,6に示すTまたはW)。長辺や長軸ではなく短辺や短軸の方を言うとした理由は、例えば横の間隔Wが十分に狭ければ、縦の間隔Tが広くても、細長い目が開くだけであるので、多孔質層原料溶液が抜け落ちずに基材層上に保持されることになるからである。なお、図5,6は目開きを説明するための図であり、図5(a)は織物における1目の目開きを説明する平面図、図5(b)は編物における1目の目開きを説明する平面図、図6(a)は織物における大目開き箇所の目開きを説明する斜視図、図6(b)は織物における大目開き箇所の目開きを説明する平面図である。図5(b)では縦の間隔Tよりも横の間隔Wが狭いので、目開きはWの値となる。
因みに出来上がったクッション性合成皮革にパンチングにより孔を開けることによっても、通気性を向上させることができるが、工程数が増える。この点において、上述の様に基材層の目開きを大きくしたものを用いれば、製造工程を簡略化しつつ通気性の良好なクッション性合成皮革が得られる。上記の如きカバーファクターのコントロールと目開きのコントロールを、製品のコンセプトに沿って、相互に勘案しつつ製造すれば、希望するクッション性合成皮革を得ることが可能となる。
本発明に係るクッション性合成皮革によれば、該クッション性合成皮革のみでも良好なクッション性を発揮するので、従来必要とされていた中ワタなどのクッション材を不要にできる。従って椅子等の厚みを薄くでき、例えば本発明を自動車用のシート材として用いた場合には、車内空間が広がる。更にクッション材が不要であることから、椅子等の軽量化を図ることができる。
本発明の実施形態1に係るクッション性合成皮革を示す断面図である。 本発明の実施形態2に係るクッション性合成皮革を示す断面図である。 本発明の実施形態3に係るクッション性合成皮革を示す断面図(端面のみを表す)である。 本発明の実施形態4に係るクッション性合成皮革を示す断面図である。 (a)は織物における1目の目開きを説明する平面図で、(b)は編物における1目の目開きを説明する平面図である。 (a)は織物における大目開き箇所の目開きを説明する斜視図で、(b)は織物における大目開き箇所の目開きを説明する平面図である。
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係るクッション性合成皮革10を示す断面図である。
クッション性合成皮革10は、基材層11の上に多孔質層12が設けられ、この多孔質層12の上に表層13が形成されたものである。多孔質層12は、ポリウレタン製の連続気泡体である。また表層13は、肉眼では認識できないほどの小さな微細孔を備えたポリウレタン製被膜である。この様な多孔質層12及び表層13は、例えば次のようにして得ることができる。つまり、まずポリウレタン系ポリマーを溶媒Aに溶解させた多孔質層用溶液を基材層11に塗工し(多孔質用溶液塗工工程)、次にこの多孔質層用溶液が塗工された基材層11を溶媒Bに浸漬し、その後乾燥させることにより多孔質層12を形成する(多孔質層形成工程)。次いで溶媒Cにポリマーを溶解させた塗布溶液を上記多孔質層12の表面に薄く塗布し、その後乾燥させることにより、多孔質層12の表面を溶解させつつ表層13を形成する(表層形成工程)(例えば前掲の特許文献2参照)。なお上記表層13の形成に際して上述の通り塗布溶液を薄く塗布しているので、ピンホールが多数生じ、これが上記微細孔となる。この微細孔により透湿性が発揮される一方、孔の大きさが非常に小さいので、非透水性となる。
なお上記溶媒Aとしては、従来公知の湿式凝固法で使用される有機溶媒を用いることができ、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンといった非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムといったハロゲン系溶媒、ジメチルケトン、メチルエチルケトンといったケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンといった環状エーテル系溶媒、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶媒などが挙げられる。
上記溶媒Bとしては、上記溶媒Aと相溶性があり、且つポリウレタン系ポリマーを実質的に溶解しないものを用いる。溶媒Bは、一成分系や、二以上の多成分系のいずれも採用することができる。一成分系の例としては、メタノール、エタノールといったアルコール系溶媒や、水が挙げられ、多成分系の例としては、水と非プロトン性極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等)の混合溶媒、アルコール系溶媒と非プロトン性極性溶媒の混合溶媒が挙げられる。上記溶媒Cとしては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンといった非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムといったハロゲン系溶媒が好ましく、また、上記溶媒Aと同じものを用いても良い。
上記基材層11は、カバーファクター2200の織物である。カバーファクターが大きいので、クッション性合成皮革の製造にあたって多孔質層用溶液を基材層11に塗工した際、多孔質層用溶液は抜け落ちることなく基材層11上に載った状態を維持する。この織物(基材層11)の縦糸にはポリエステルマルチフィラメント、緯糸にはポリエーテルエステル系エラストマーのモノフィラメント(以下、ポリエーテルエステル系弾性糸と称することがある)が用いられている。
上記ポリエーテルエステル系弾性糸は、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを主原料として用いられる芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレングリコールをソフトセグメントとするブロックエーテルエステル系弾性体からなるモノフィラメントである。特にテレフタル酸とエチレングリコール又はテレフタル酸とブタンジオールとからなるテレフタル酸系ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルをソフトセグメントとするものが望ましい。更にポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとを共重合させたポリエーテルエステル系弾性糸は、伸長回復性が良好でありより好ましいものとなる。
なお上記ポリエーテルエステル系弾性糸としては、例えば商品名ダイヤフローラ(東洋紡績(株)製)が挙げられる。
更に上記基材層11は下記[1]〜[3]の物性を備える。
[1]:少なくともタテ、ヨコいずれか一方向の10%伸長時の応力が100〜600N/5cmかつ同方向の15%伸長時の伸長回復率が75%以上である。
[2]:基材層(織編物)のタテ方向およびヨコ方向の10%伸長時の応力の比(ST1
/ST2)が5以下である。但し、ST1≧ST2である。ここで、ST1はタテ/ヨコいずれか一方の10%伸長時の応力であり、ST2はST1と他方向の10%伸長時の応力である。
[3]:基材層(織編物)のタテ方向およびヨコ方向の180℃での乾熱収縮率がいずれも1.0%以上15%以下である。
この基材層11にはポリエーテルエステル系弾性糸が用いられているので、基材層11全体が良好な弾性を示す。そして多孔質層12及び表層13はポリウレタン製であって伸縮性に優れるので、基材層11の弾性変形に良好に追従する。従ってクッション性合成皮革10全体としても、良好な弾性を示し、例えばこのクッション性合成皮革10を椅子の座面に用いた場合に、中ワタを用いずとも該クッション性合成皮革10の1枚で、適度に反発力のある座り心地の良い椅子となる。また中ワタを用いないので、椅子の嵩が低くなると共に、軽量化を図ることができる。加えて表側面は革風であり、意匠性にも優れる。
また基材層11には上述の様にポリエステルマルチフィラメントが用いられているので、基材層11の表面に多数の微細な凹凸が存在し、これによるアンカー効果によって、基材層11と多孔質層12が強固に接合される。殊にクッション性合成皮革10を椅子の座面に用いた場合は、立ったり座ったり体重を移動させたり、様々な態様,方向に圧力が加わるが、上記のように強固に接合されているので耐久性に優れる。
加えて表層13が微細孔を有し、多孔質層12が連続気泡体であり、基材層11が織物であることから、クッション性合成皮革10全体として透湿性が良好である。一方、表層13の微細孔は十分に小さいので、非透水性であり、従ってクッション性合成皮革10の表面に水等をこぼしても、多孔質層12まで染み込まず、拭くだけで取り除くことができる。またクッション性合成皮革10は多孔質層12を有するので、接触冷感が低く、冬期でも冷たさを感じにくい。
上記クッション性合成皮革10の用途としては、事務椅子、ソファー、車椅子、或いは自動車の座席における座面や背もたれ、またはベッドのシート部などが挙げられ、様々な部材に使用可能である。
なお基材層として、上記ポリエーテルエステル系弾性糸を使用せずに、例えばポリエステル製糸で構成した編物を用いた場合であっても、編物であることから、合成皮革全体として伸縮性が良好なものとなる。しかしこのものは伸長回復力が弱く、これを座面に用いて座ると、伸びきったようになって座り心地が悪い。この点において、本実施形態1では上述の様に基材層11にポリエーテルエステル系弾性糸を用いているので、クッション性合成皮革10全体として優れた弾性及び伸長回復力を発揮し、座り心地がよい。
<実施形態2>
図2は本発明の実施形態2に係るクッション性合成皮革20を示す断面図である。なお図1と同一の符号を付した箇所は、図1の例と同じ構成部分である。このクッション性合成皮革20の表層23は、肉眼で視認可能な微細孔23a(直径100μm程度)が所々に形成され、ここから多孔質層12が露出するようになっている。この他の構成は上記実施形態1と同じである。
なおクッション性合成皮革20の製造方法は、まず上記実施形態1と同様に多孔質用溶液塗工工程、多孔質層形成工程を行う。そしてこの後の表層形成工程において、多孔質層12の表面に行う上記塗布溶液(溶媒Cにポリマーを溶解させた溶液)の塗布を、塗布しない部分が島状に形成されるように部分的に行い(例えばグラビアコーターの目の形状の調整により部分的塗布を行う)、その後乾燥させることにより、多孔質層12の表面を溶解させつつ表層13を形成する。こうして表層13が形成される部分に対して、多孔質層12の露出する部分(微細孔23a)が島状に形成される。本実施形態2においても、当該クッション性合成皮革20を椅子の座面に使用したとき、中ワタなどのクッション材を用いずとも、十分に良好なクッション性を発揮し、座り心地がよい。また透湿性が良好である。
<実施形態3>
図3は本発明の実施形態3に係るクッション性合成皮革30を示す断面図(端面のみを表している)である。なお図1と同一の符号を付した箇所は、図1の例と同じ構成部分である。クッション性合成皮革30の基材層31は、所々に目開き2mmの箇所(大目開き箇所31a)が形成された織物である。この大目開き箇所31a以外の部分(布部分31b)はカバーファクター2200である。そして上記大目開き箇所31aに対応して、クッション性合成皮革30に貫通孔34が形成されている。他の構成は上記実施形態1と同様である。
なおクッション性合成皮革30の製造にあたり、多孔質層用溶液を基材層31に塗工した際、基材層31の大目開き箇所31aから多孔質層用溶液が抜け落ち、一方布部分31b上には多孔質層用溶液が載った状態となる。よって大目開き箇所31aに対応する箇所に孔12aを形成しつつ、多孔質層12が形成される。次いでこの多孔質層12の上に表層13を形成するが、このとき孔12aの部分において表層13も孔13aが開いた状態となる。こうして貫通孔34(大目開き箇所31a、孔12a、孔13a)を備えたクッション性合成皮革30となる。
上記大目開き箇所31aの大きさや数、位置は、織構成を調節することにより形成可能である。この実施形態3のクッション性合成皮革30においても、基材層31に上記ポリエーテルエステル系弾性糸が用いられているので、クッション性合成皮革30全体として良好な弾性を示す。よってクッション性合成皮革30の1枚で椅子の座面を形成した場合であっても、良好な座り心地を呈する。加えて貫通孔34が設けられているので、通気性に優れる。
<実施形態4>
図4は本発明の実施形態4に係るクッション性合成皮革40を示す断面図である。なお図1と同一の符号を付した箇所は、図1の例と同じ構成部分である。クッション性合成皮革40の基材層41は、緯糸にポリエーテルエステル系弾性糸、縦糸にポリエステルマルチフィラメントを用いて織物とした後、加熱することにより上記ポリエーテルエステル系弾性糸を収縮させ、これにより上記ポリエステルマルチフィラメントを部分的に盛り上がらせて畝41aを形成したものである。その他の構成は上記実施形態1と同じである。
このような畝41aのある基材層41を用いることで、この畝41aに対応して表層13側にも盛り上がった畝44が形成される。従ってクッション性合成皮革40の表側を凹凸のある意匠にすることができる。本実施形態4のクッション性合成皮革40においても、基材層41に上記ポリエーテルエステル系弾性糸が用いられているので、クッション性合成皮革40全体として良好な弾性を示し、これ1枚でも座り心地の良い椅子座面を構成することができる。
<その他の実施形態>
上記実施形態1〜4では、多孔質層12を備えたクッション性合成皮革を示したが、基材層上に直接表層を形成したものであっても良い。この場合であっても、基材層が良好な弾性を示すので、クッション性合成皮革全体としても良好な弾性を示し、このクッション性合成皮革一枚で椅子の座面等を構成したときに良好な座り心地を発揮し得る。また上記実施形態1〜4では、基材層として織物を挙げたが、編物であっても良い。
<実施例、比較例>
以下に本発明に係るクッション性合成皮革の実施例、及び比較例について述べる。なお下記の実施例、比較例において示す各種評価の試験方法は下記の通りである。
1.糸の引張強さ及び伸び率
クッション性合成皮革の基材層に用いる糸について、JIS L 1013に基づき、引張強さ及び伸び率の測定を行った。なおこの測定にあたり、定速伸長形試験機を用い、つかみ間隔100mm、引張速度100mm/分で行った。
2.基材層の密度、引張強さ、伸び率、および10%伸長時の応力
クッション性合成皮革の基材層(織物)について、JIS L 1096に基づき、密度、引張強さ、伸び率、および10%伸長時の応力の測定を行った。なお引張強さ及び伸び率については、定速伸長形試験機を用い、つかみ間隔200mm、試験片の幅50mm、引張速度100mm/分でA法(ストリップ法)により測定した。10%伸長時の応力については、上記引張強さ及び伸び率の測定の際に、試料(基材層)が10%伸長したときの応力とした。
3.基材層の伸長回復率
クッション性合成皮革の基材層について、次のようにして伸長回復率を測定した。つまり基材層(織編物)を5cm幅の短冊状に切り取り、定速伸長形試験機を用い、つかみ間隔200mm、引張り速度200mm/分で15%伸長後、速やかに徐重し、試料長が元の長さに戻った時点で再度速やかに伸長する。この際の2回目の伸長時に応力が立ちあがる際のつかみ間隔を読み取り、下式(1)にて算出した。
{(L4−L3)/(L3×0.15)}×100(%) …(1)
但し、L3は初期のつかみ間隔(=200mm)、L4は2回目の伸長時に応力が立ち上がる時点のつかみ間隔(mm)である。
4.カバーファクター
クッション性合成皮革の基材層に関し、該基材層が織物の場合において、カバーファクターを下式(2)によって求めた。
K=N1・(D1)1/2+N2・(D2)1/2 …(2)
K:カバーファクター
N1:経糸の織密度(本数/2.54cm)
N2:緯糸の織密度(本数/2.54cm)
D1:経糸の総繊度(dtex)
D2:緯糸の総繊度(dtex)
なお編物のカバーファクターについては、1ループが占める全面積中で糸自身が占める面積の比率を算出することにより求めることができる。
5.目開き
クッション性合成皮革の基材層(織編物)について、その織編物に開いた目において、1つの目の横の間隔Wと縦の間隔Tのうち、狭い方の間隔をノギスで測定して目開きの値とした(図5,6参照)。但し、目開き2mm以上のものについてのみ測定し、これより小さいものについては測定を省略した。目開きが2mm未満の場合はクッション性合成皮革に貫通孔を形成しえず、カバーファクターを別の観点から表しているに過ぎないからである。
6.着座性能
40cm角の鉄製フレームの水平面内に試料(クッション性合成皮革)を固定し、底面が直径20cmで重さ65kgの加圧板を用い、上記固定した試料(クッション性合成皮革)の中心部に上記加圧板を載置して荷重を加え、荷重を加える前の水平面に対する加圧板の沈み込み量を測定した(沈み込み量)。また上記と同様に、40cm角の鉄製フレームの水平面内に試料(クッション性合成皮革)を固定してモデル椅子を作製し、このモデル椅子に被験者が座り、座り心地を下記の通り評価した。
評価:座り心地が良い→◎、座り心地が普通→○、座り心地が悪い→×
この試験の被験者は10人とし、各人の判定結果の平均にて総合判定とした(座り心地性)。また、上記の如く座り心地を評価した直後に、モデル椅子の座部を目視観察し、座部(クッション性合成皮革)の皺の戻り性を下記の通り評価した。
評価:皺がない→◎、皺がわずかにある→○、皺が明かに残る→×
上記座り心地試験の場合と同様、10人の判定結果の平均にて総合判定とした(皺の戻り性)。
7.剥離強度
幅3cm、長さ10cmに切り抜いた試料(クッション性合成皮革)の表層(塗膜面)に、ホットメルトテープ(商品名:メルコテープ BW−II、25mm幅、サン化成(株)製)の接着面があたるように重ね合わせ、表面温度130℃に調整したアイロンにて、ホットメルトテープの生地面から加熱し、テープと試料を、長さ約7cmだけ接着する。冷却後、未接着部分を手で無理やり引き剥がし、試料とホットメルトテープを、それぞれ振り子型引張り試験機のつかみにセットし、200mm/分の速度にて剥離し、このときの最大応力を測定し、これを剥離強度とした。
8.耐磨耗性
テーバー磨耗試験を、荷重1kg、CS−10の磨耗輪の試験条件で、2000回行い、外観変化を下記の通り評価した。評価:外観の変化が表層の艶変化程度まで→○、多孔質層まで破壊されている→×、多孔質層が完全になくなり基材層が剥き出しになっている→××
9.透湿度
クッション性合成皮革の透湿度を、JIS L 1099(2006)のA−1法(塩化カルシウム法)により測定した。
《実施例1》
融点222℃のポリエーテルエステル系エラストマーを芯成分、融点182℃のポリエーテルエステル系エラストマーを鞘成分とし、その質量比率が芯:鞘=80:20である2080dtexの弾性糸(モノフィラメント)を作製した。この弾性糸を緯糸として用いることとし、830dtexポリエステルマルチフィラメント糸(未加工糸)を経糸として用いることとした。上記緯糸を20本/2.54cm、上記経糸を30本/2.54cmの密度として、平織り組織の織物を製織した。次いでこの織物を、200℃で1分間の乾熱処理を行なった。熱処理後の織物について、低融点ポリエーテルエステルエラストマーが織物の経糸および緯糸の交点部分に接着固化していることを確認した。このようにして得た織物を基材層として用いた。
この織物(基材層)上に多孔質層を形成するにあたり、下記に示す組成の多孔質層用溶液を調整した。
ポリカーボネート系ポリウレタン 30質量部、
ジメチルホルムアミド(上述の溶媒A) 140質量部、
黒顔料(カーボンブラック系) 15質量部、
白顔料(酸化チタン系) 2質量部、
アニオン系界面活性剤(孔径調整剤) 3質量部。
上記織物(基材層)を水に浸漬し、マングルを用いて圧力0.4MPaで絞った後、上記多孔質層用溶液を、バーコーターを用いて塗工量800g/mで塗工した(多孔質用溶液塗工工程)。続いてこれを温度25℃の水(上述の溶媒B)に4分間浸漬した後、更に40℃の温水中に15分間浸漬し、次いで140℃のオーブンで乾燥させることにより湿式多孔質層を形成した(多孔質層形成工程)。
表層形成用の塗布溶液として下記組成の溶液を調整した。
ポリカーボネート系ポリウレタン 20質量部、
ジメチルホルムアミド(上述の溶媒C) 140質量部、
メチルエチルケトン 140質量部。
上記塗布溶液を、幅0.25mm、深さ70μmの格子型グラビアコーターを用いて上記多孔質層の表面に塗工し、140℃のオーブンで乾燥させた(表層形成工程)。この表層形成工程において、多孔質層の表面が溶解されつつ表層が形成された。またこの表層は微細孔を備えるものであった。
次いで、150℃、5MPa、1分間の条件にて、表層側に皮紋調のエンボス加工を施し、皮革様の湿式多孔質構成体(クッション性合成皮革:実施例1)を得た。この実施例1のクッション性合成皮革は、良好な弾性を示し、また透湿性の良好なものであった。
座部に、上記実施例1のクッション性合成皮革一枚を用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座感は非常に良好で、かつ着座後の皺もなかった。この結果から分かるように、実施例1のクッション性合成皮革は、事務椅子やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材として充分に使用できるものであった。なお表1に、実施例1における各種物性ならびに性能を示す。尚、表1中、「ST1/S2」は基材層(織編物)のタテ方向およびヨコ方向の10%伸長時の応力の比であり、ST1は布帛のタテ/ヨコいずれか一方の10%伸長時の応力で、ST2はST1と他方向の10%伸長時の応力である。
《実施例2》
基材層として用いる織物として、組織を2/1綾組織とする以外は、上記実施例1と同様にして織物を作製し、また合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、実施例2のクッション性合成皮革を得た。この実施例2のクッション性合成皮革は、良好な弾性を示し、また透湿性の良好なものであった。
座部に、上記実施例2のクッション性合成皮革一枚を用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座感は非常に良好で、かつ着座後の皺もなかった。この結果から分かるように、実施例2のクッション性合成皮革は、事務椅子やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材として充分に使用できるものであった。なお表1に、実施例2における各種物性ならびに性能を示す。
《実施例3》
基材層として用いる織物の経糸として167dtexのポリエステル加工糸(ウーリー加工糸)を用い、その密度を130本/2.54cm、組織を5枚サテンの朱子織とする以外は、実施例1と同様にして織物を作製し、また合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、実施例3のクッション性合成皮革を得た。この実施例3のクッション性合成皮革は、良好な弾性を示し、また透湿性の良好なものであった。
また上記実施例3のクッション性合成皮革一枚を座部に用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座感は非常に良好で、かつ着座後の皺もなかった。この結果から分かるように、実施例3のクッション性合成皮革は、事務椅子やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材として充分に使用できるものであった。なお表1に、実施例3における各種物性ならびに性能を示す。
《実施例4》
基材層として用いる織物として、織組織が平織りで、所々に目開き2mmの箇所を設けた織物を用い、これ以外は上記実施例1と同様にして織物を作製し、また合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、実施例4のクッション性合成皮革を得た。この実施例4のクッション性合成皮革は、良好な弾性を示し、また貫通孔を有しており通気性が非常に良好なものであった。
また上記実施例4のクッション性合成皮革一枚を座部に用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座感は非常に良好で、かつ着座後の皺もなく、通気性が良好で蒸れ感がなかった。この結果から分かるように、実施例4のクッション性合成皮革は、事務椅子や自動車・電車等への座席用クッション材として充分に使用できるものであった。なお表1に、実施例4における各種物性ならびに性能を示す。
《実施例5》
緯糸に、上記実施例1の弾性糸と同じ弾性糸を用い、経糸に500dtexのポリエステル加工糸(タスラン加工糸)を用いて、平織組織の織物を製織し、次いでこの織物を190℃で加熱することにより、上記緯糸を収縮させた。これにより経糸が部分的に盛り上がり、畝(凸部)が形成された。この畝を有する織物を基材層として用い、上記実施例1と同様にして合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、実施例5のクッション性合成皮革を得た。この実施例5のクッション性合成皮革は、表側面に畝(凸部)を有するものであり、また良好な弾性を示し、透湿性の良好なものであった。
座部に、上記実施例5のクッション性合成皮革一枚を用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座感は非常に良好で、かつ着座後の皺もなかった。この結果から分かるように、実施例5のクッション性合成皮革は、事務椅子や自動車・電車等への座席用クッション材として充分に使用できるものであった。なお表1に、実施例5における各種物性ならびに性能を示す。
《実施例6》
基材層として融点222℃のポリエーテルエステル系エラストマーを芯成分、融点182℃のポリエーテルエステル系エラストマーを鞘成分とし、その質量比率が芯:鞘=80:20である500dの弾性糸(モノフィラメント)を用い丸編を作製した。この基材を用い、実施例1と同様にして合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、実施例6のクッション性合成皮革を得た。この実施例6のクッション性合成皮革は、良好な弾性を示し、また透湿性の良好なものであった。
また上記実施例6のクッション性合成皮革一枚を座部に用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座感は非常に良好で、かつ着座後の皺もなかった。この結果から分かるように、実施例6のクッション性合成皮革は、事務椅子やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材として充分に使用できるものであった。なお表1に、実施例6における各種物性ならびに性能を示す。
《実施例7》
基材層として融点222℃のポリエーテルエステル系エラストマーを芯成分、融点182℃のポリエーテルエステル系エラストマーを鞘成分とし、その質量比率が芯:鞘=80:20である500dtexの弾性糸(モノフィラメント)を作製し、この弾性糸を経糸および緯糸に用い平織りを作製した。この基材を用い、実施例1と同様にして合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、実施例7のクッション性合成皮革を得た。この実施例7のクッション性合成皮革は、良好な弾性を示し、また透湿性の良好なものであった。
また上記実施例7のクッション性合成皮革一枚を座部に用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座感は非常に良好で、かつ着座後の皺もなかった。この結果から分かるように、実施例7のクッション性合成皮革は、事務椅子やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材として充分に使用できるものであった。なお表1に、実施例7における各種物性ならびに性能を示す。
《実施例8》
基材層として用いる織物として、実施例5で用いた経糸に500dtexのポリエステル(タスラン加工糸)の代わりに、500dtexのポリエステル(未加工糸)を用いる以外は上記実施例5と同様にして織物を作製し、また合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、実施例8のクッション性合成皮革を得た。この実施例8のクッション性合成皮革は、良好な弾性を示し、また透湿性の良好なものであった。
また上記実施例8のクッション性合成皮革一枚を座部に用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座感は非常に良好で、かつ着座後の皺もなかった。この結果から分かるように、実施例7のクッション性合成皮革は、事務椅子やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材として充分に使用できるものであった。なお表1に、実施例8における各種物性ならびに性能を示す。
《実施例9》
基材層として用いる織物として、実施例1で作製した平織りに起毛加工を実施したものを作製した。また合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、実施例8のクッション性合成皮革を得た。この基材を用い、実施例1と同様にして合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、実施例9のクッション性合成皮革を得た。この実施例9のクッション性合成皮革は、良好な弾性を示し、また透湿性の良好なものであった。
また上記実施例9のクッション性合成皮革一枚を座部に用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座感は非常に良好で、かつ着座後の皺もなかった。この結果から分かるように、実施例9のクッション性合成皮革は、事務椅子やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材として充分に使用できるものであった。なお表1に、実施例9における各種物性ならびに性能を示す。
《比較例1》
緯糸にレーヨン100%の20番手の紡績糸を用い、経糸にポリエステル:レーヨンを65:35の割合で混紡した20番手の紡績糸を用い、これら緯糸/経糸により平織物を作製した。この平織物を基材層として用いる以外は、上記実施例1と同様にして合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、比較例1の合成皮革を得た。
この比較例1の合成皮革は、透湿性は良好なものであったが、弾性に乏しいものであった。
座部に、上記比較例1の合成皮革一枚を用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座性能に関しては、沈み込み量が非常に大きく、クッション材として使用できるものではなかった。また、着座使用後に座面(合成皮革)に皺が生じることから、事務椅子やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材としては不適なものであった。
《比較例2》
経糸、緯糸ともに、830dtexのポリエステルマルチフィラメントを30本/2.54cmの密度とした平織物を作製し、これを基材層に用いた以外は、実施例1と同様にして合皮加工(多孔質層及び表層の形成)を行って、比較例2の合成皮革を得た。
この比較例2の合成皮革は、透湿性は良好なものであったが、伸びが悪く且つ弾性に乏しいものであった。
座部に、上記比較例2の合成皮革一枚を用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座性能に関しては、沈み込み量が非常に小さいためか、座り心地が非常に悪く、事務椅子やリビング用椅子、自動車・電車等への座席用クッション材としては不適なものであった。
《比較例3》
融点222℃のポリエーテルエステル系エラストマーを芯成分、融点182℃のポリエーテルエステル系エラストマーを鞘成分とし、その重量比率が芯:鞘=80:20である2080dtexの弾性糸(モノフィラメント)を、緯糸として用いることとし、830dtexポリエステルマルチフィラメント糸を経糸として用いることとした。上記緯糸を20本/2.54cm、上記経糸を30本/2.54cmの密度として、平織り組織の織物を作製した。次いでこの織物を、200℃で1分間の乾熱処理を行なった。熱処理後の
織物は、低融点ポリエーテルエステルエラストマーが織物の経糸および緯糸の交点部分に接着固化していることを確認した。
このようにして得られた織物について、上記実施例1とは異なり合皮加工を行わず、比較例3とした。なおこの比較例3の織物は、上記実施例1の基材層に用いた織物と同じものである。この比較例3の織物は、良好な弾性を示し、また非常に通気性に優れたものであった。また座部に、上記比較例3の織物一枚を用い、中ワタを使用せずに、事務椅子を作製した。この事務椅子の着座感は良好であったが、その表面の質感は生地調であり、実施例1〜5、比較例1,2のような革風の雰囲気とは大きく異なるものであった。なお表1に、比較例3における各種物性ならびに性能を示す。
以上、例を挙げて本発明を具体的に説明したが、本発明はもとより上記例によって制限を受けるものではなく、前記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
10,20,30,40 クッション性合成皮革
11,31,41 基材層
12 多孔質層
12a,13a 孔
13,23 表層
23a 微細孔
31a 大目開き箇所
31b 布部分
34 貫通孔
41a,44 畝

Claims (7)

  1. 基材層の上に多孔質層を介しまたは介さずに表層が形成された合成皮革において、前記基材層の少なくとも一部にポリエーテルエステル系エラストマーを用い、該ポリエーテルエステル系エラストマーが、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを主原料として用いられる芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレングリコールをソフトセグメントとするブロックエーテルエステル系弾性体からなるフィラメントであることを特徴とするクッション性合成皮革。
  2. 前記表層が微細孔を備え、前記多孔質層が連続気泡体である請求項1に記載のクッション性合成皮革。
  3. 前記基材層の一部に、前記ポリエーテルエステル系エラストマー以外の合成樹脂製マルチフィラメントが併用されている請求項1または2に記載のクッション性合成皮革。
  4. 前記ポリエーテルエステル系エラストマー以外の合成樹脂製マルチフィラメントが嵩高加工糸である請求項3に記載のクッション性合成皮革。
  5. 前記基材層として、前記ポリエーテルエステル系エラストマーのモノフィラメント及び前記その他の合成樹脂製マルチフィラメントが併用されており、前記ポリエーテルエステル系エラストマーのモノフィラメントが熱収縮することによって、前記ポリエーテルエステル系エラストマー以外の合成樹脂製マルチフィラメントの隆起部が形成されたものである請求項3または4のいずれか1項に記載のクッション性合成皮革。
  6. 前記基材層が織編物であり、且つそのカバーファクターが1300以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクッション性合成皮革。
  7. 前記基材層が、目開きが0.2mm以上の箇所を備える請求項1〜6のいずれか1項に記載のクッション性合成皮革。
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