JP2011213954A - タイヤトレッド用ゴム組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】末端が極性基で変性された非油展の末端変性スチレン−ブタジエンポリマーと、シリカと、分子中に硫黄を含むシランカップリング剤と、常温で液状のオイルと、を含み、シリカの一部が、ポリマーの極性基との親和力によってポリマーの末端近傍に配置されることにより、シリカが組成物全体に均一に分散されており、10点法を採用したフィラー分散度測定装置により測定されたシリカの分散度が9.0以上であることを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物である。
【選択図】図2
Description
これにより、グリップ性能の向上を目的としてゴム組成物中にオイルを配合した場合であっても、シリカを組成物全体に均一に分散させることができ、低い転がり抵抗が得られる。即ち、低い転がり抵抗と優れたグリップ性能を併せ持つタイヤトレッド用ゴム組成物が得られる。
同様に、上記ポリマーの分子量やガラス転移点についても特に限定されず、要求性能に応じて適宜設定される。
上述したように、シリカの粒子の表面に存在するシラノール基は、ポリマーの末端に導入された極性基と相互作用する。そのため、シリカの一部は、上記ポリマーの極性基との親和力によってポリマーの末端近傍に配置される。これにより、ゴム組成物中におけるシリカの分散性が向上する。
また、上記ポリマーに対する上記シリカの配合量も特に限定されず、要求性能に応じて適宜設定される。
また、上記ポリマーに対する上記シランカップリング剤の配合量も特に限定されず、要求性能に応じて適宜設定される。
また、加硫に必要な加硫剤、加硫促進剤および加硫促進助剤が、所定量、添加される。
本実施形態に係るゴム組成物の好ましい製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有する。以下、工程ごとに詳しく説明する。
第1工程では、第1マスターバッチを調製する。具体的には、末端が極性基で変性された非油展の末端変性スチレン−ブタジエンポリマーと、シリカと、分子中に硫黄を含むシランカップリング剤と、を混練することにより、第1マスターバッチを得る。
先ず、所定量の上記ポリマーに、シリカと、シランカップリング剤(例えばTESPT)とを、それぞれ所定のPHR量、添加する。添加後、加圧下で、例えばバンバリー形ミキサなどにより、所定温度下で所定時間、混練する。次いで、所定温度まで昇温させた後、加圧せずにバンバリー形ミキサなどにより、所定時間、混練する。次いで、冷却することにより、第1マスターバッチを得る。
第2工程では、第2マスターバッチを調製する。具体的には、第1工程で得た第1マスターバッチに、加硫系添加剤以外の添加剤と、常温で液状のオイルと、を添加して混練することにより、第2マスターバッチを得る。
第1工程で得た第1マスターバッチに、老化防止剤、ワックス、ステアリン酸および酸化亜鉛などを、それぞれ所定のPHR量、添加する。このとき、常温で液状のオイルも、所定のPHR量、添加する。添加後、所定温度まで昇温させるとともに、加圧下で、バンバリー形ミキサなどにより、所定時間、混練する。次いで、冷却することにより、第2マスターバッチを得る。
第3工程では、第2工程で得た第2マスターバッチに、加硫系添加剤を添加して混練する。
第3工程の具体的な操作手順の一例は、次の通りである。
第2工程で得た第2マスターバッチに、加硫剤、加硫促進剤および加硫促進助剤を、それぞれ所定のPHR量、添加する。添加後、例えばオープンロールなどにより、所定温度下で所定時間、混練する。
本実施形態では、末端が極性基で変性された非油展の末端変性スチレン−ブタジエンポリマーを用い、シリカとポリマーの極性基との親和力によって、シリカの一部をポリマーの末端近傍に配置させることにより、シリカの分散性を向上させた。
これにより、グリップ性能の向上を目的としてゴム組成物中にオイルを配合した場合であっても、シリカを組成物全体に均一に分散させることができ、低い転がり抵抗が得られる。即ち、低い転がり抵抗と優れたグリップ性能を併せ持つタイヤトレッド用ゴム組成物が得られる。
以下の第1工程、第2工程および第3工程で示した各操作手順に従って、実施例1〜4のタイヤトレッド用ゴム組成物を製造した(図4(A)参照)。
なお、混練が困難であったものについては、適宜、各工程間で再混練(リミル)などの操作を実施した。
先ず、ラボプラストミルに、所定量のポリマーを投入した。ポリマーとしては、日本ゼオン(株)製の溶液重合スチレン−ブタジエンポリマー「Nipol NS616」(非油展のシリカ用末端変性タイプであり、以下、非油展S−SBRという。)を用いた。ポリマーの配合量は、実施例1〜4いずれも同一とした。
次いで、80PHRのシリカと、6.4PHRのシランカップリング剤(TESPT)を投入した。投入後、加圧ラム(ピストン)を下降させて圧力をかけた状態で、ラボプラストミルバンバリー形ミキサB−600により、設定温度70℃の条件下で約2分間、混練した。
次いで、145℃まで昇温させた後、加圧ラム(ピストン)を上昇させて圧力をかけない状態で、バンバリー形ミキサB−600により、約2分間、混練した。混練している間は、ミキサの回転数を制御して温度を145℃に維持し、シリカとシランカップリング剤の反応を十分に進行させた。
次いで、シリカとシランカップリング剤の反応副生成物であるアルコール(エタノール)の発生が十分に終息したことを確認した上で、加圧ラム(ピストン)を下降させて圧力をかけた状態で、更に約2分間、混練した。これにより、第1マスターバッチを得た。
第1工程で得た第1マスターバッチに対して、表1に示すように、3.0PHRの老化防止剤、2.0PHRのワックス、2.4PHRのステアリン酸および3.0PHRの酸化亜鉛を投入した。また、表1に示す配合量で、常温で液状のオイルを投入した。投入後、加圧ラム(ピストン)を下降させて圧力をかけた状態で、バンバリー形ミキサB−600により、約2分間、混練した。
第2工程で得た第2マスターバッチを取出して、オープンロール型の混練機に投入した。そこに、1.4PHRの加硫剤、1.7PHRの加硫促進剤および2.0PHRの加硫促進助剤を投入した。
次いで、得られたゴム組成物を、160℃下で20分間加硫することにより、実施例1〜4のタイヤトレッド用ゴム組成物を得た。
第2工程で投入したオイルを第1工程で投入した以外は、実施例1〜4と同様の操作を行うことにより、比較例1〜4のタイヤトレッド用ゴム組成物を得た(図4(C)参照)。
なお、比較例1〜4のオイル配合量は、実施例1〜4に対応させて、表1に示す通りとした。
ポリマーとして、非油展S−SBRと、日本ゼオン(株)製の溶液重合スチレン−ブタジエンポリマー「Nipol NS460」(油展のカーボン用末端変性タイプであり、以下、油展S−SBRという。)を用い、オイルを投入しなかった以外は、実施例1〜4と同様の操作を行うことにより、比較例5〜8のタイヤトレッド用ゴム組成物を得た(図4(D)参照)。
なお、非油展S−SBRと油展S−SBRとの配合割合は、表1に示す通りとした。
ポリマーとして、日本ゼオン(株)製の乳化重合スチレン−ブタジエンポリマー「Nipol 1502」(非油展タイプであり、以下、非油展E−SBRという。)を用いた以外は、実施例1〜4と同様の操作を行うことにより、比較例9〜12のタイヤトレッド用ゴム組成物を得た(図4(B)参照)。
なお、比較例9〜12のポリマーの配合量は、表1に示すように同一とした。
第2工程で投入したオイルを第1工程で投入した以外は、比較例9〜12と同様の操作を行うことにより、比較例13〜16のタイヤトレッド用ゴム組成物を得た(図4(C)参照)。
なお、比較例13〜16のオイル配合量は、比較例9〜12に対応させて、表1に示す通りとした。
ポリマーとして、非油展E−SBRと、日本ゼオン(株)製の乳化重合スチレン−ブタジエンポリマー「Nipol 1723」(油展タイプであり、以下、油展E−SBRという。)を用い、オイルを投入しなかった以外は、実施例1〜4と同様の操作を行うことにより、比較例17〜20のタイヤトレッド用ゴム組成物を得た(図4(D)参照)。
なお、非油展E−SBRと油展E−SBRとの配合割合は、表1に示す通りとした。
上記実施例および比較例で得られた各タイヤトレッドゴム組成物について、以下の評価を実施した。
上記実施例および比較例の加硫前の第2マスターバッチ0.5gを、約1mm角に裁断した後、それをメッシュかごに入れて良溶媒であるトルエン中に浸漬させた。浸漬させてから72時間経過後、シリカと結合しているゴム(ポリマー)は、シリカと分離することなく膨潤した。一方、シリカと結合していないゴム(ポリマー)は、溶媒中に溶出した。浸漬後にメッシュかごをトルエンから取り出し、十分乾燥させた後に精秤した。その測定結果に基づいて、第2マスターバッチ中におけるシリカと結合しているゴムの割合を算出した。この割合をバウンドラバー率として、結果を表1に示した。
なお、バウンドラバー率は、その値が高いほど、ゴム(ポリマー)とシリカとの結合が多く形成されていることを意味する。
上記実施例および比較例で得たタイヤトレッド用ゴム組成物について、TECHPRO社製のフィラー分散度測定装置「DisperGrader」を用いて、シリカの分散度を測定した。結果を表1に示した。
先ず、例えばレーザーブレードを用いて、各ゴム組成物を切断する(ステップ1)。このとき、ゴム組成物中の硬い成分であるフィラーとしてのシリカは、レーザーブレードに接触すると、ゴム組成物の内側に移動し(ステップ2)、切断後においては、応力緩和により元の位置に戻る(ステップ3)。これにより、切断面の表面には、シリカに起因する凹凸が形成される。
次いで、切断面に対して照射角度30°で光を照射し、その反射光を利用して光学顕微鏡による表面観察画像を取得する(ステップ4)。光学顕微鏡観察の際には、例えば測定面積を30mm×40mmとし、例えば測定倍率を100倍とする。このとき、切断面の表面に形成された凹凸がコントラストとなって現れる。このため、取得した画像のコントラストに応じて、10点法によりフィラーとしてのシリカの分散度を評価できる。
なお、シリカ分散度は、その値が高いほど、シリカの凝集が少なく、全体的に均一に分散されていることを意味する。
上記実施例および比較例で得たタイヤトレッド用ゴム組成物について、GABO社製の動的粘弾性測定装置「EPLEXOR」を用いて、転がり抵抗に相関のある60℃におけるtanδと、グリップ性能に相関のある0℃におけるtanδの測定を実施した。なお、測定は、動的負荷変位1%の条件下で実施した。結果を表1に示した。
なお、tanδは、損失正接と呼ばれ、弾性に相当する貯蔵弾性率(E’)と、粘性に相当する損失弾性率(E’’)との比である。このtanδのうち、60℃におけるtanδの値が小さいほど、低い転がり抵抗を有し、燃費が良いことを意味する。また、0℃におけるtanδの値が大きいほど、グリップ性能が優れていることを意味する。
上記実施例および比較例で得たタイヤトレッド用ゴム組成物と同等のものを、16Lのバンバリーミキサーにて混合したコンパウンドを用いて作成したサイズ195/65R15のタイヤを、2.0LのFF車(車重:約1300kg)に装着させ、100km/時からのWET状態における制動距離テストを実施した。比較例1のタイヤを100とする指標で評価を行い、結果を表1に示した。
なお、制動距離指数(WET)が高いほど、制動距離が短く、制動特性に優れていることを意味する。
上記実施例および比較例で得たタイヤトレッド用ゴム組成物と同等のものを、16Lのバンバリーミキサーにて混合したコンパウンドを用いて作成したサイズ195/65R15のタイヤについて、室内ドラム式タイヤ転がり試験機を用いて、転がり抵抗指数(RRC)の測定を実施した。実施例1のタイヤを100とする指標で評価を行い、結果を表1に示した。
なお、転がり抵抗指数(RRC)が高いほど、低い転がり抵抗を有し、燃費が良いことを意味する。
実施例4および比較例5で得たタイヤトレッド用ゴム組成物について、日本ビーコ社製の原子間力顕微鏡(AFM)「Multimode SPM system」を用いたSPM(走査型プローブ顕微鏡)表面観察を実施した。観察は、スキャンサイズを5μmとして行い、結果を図6に示した。
なお、AFM観察画像では、硬いシリカの部分が白く表示され、柔らかいゴムの部分が黒く表示される。これにより、シリカの分散状態が把握される。
表1に示すように、実施例1〜4のバウンドラバー率は、比較例1〜20に比して高いことが判った。この結果から、実施例1〜4では、比較例1〜20に比してゴム(ポリマー)とシリカとの結合が多く形成されており、シリカが組成物全体に亘って均一に分散されていることが確認された。
Claims (2)
- 末端が極性基で変性された非油展の末端変性スチレン−ブタジエンポリマーと、シリカと、分子中に硫黄を含むシランカップリング剤と、常温で液状のオイルと、を含み、
シリカの一部が、ポリマーの極性基との親和力によってポリマーの末端近傍に配置されることにより、シリカが組成物全体に均一に分散されており、
10点法を採用したフィラー分散度測定装置により測定されたシリカの分散度が9.0以上であることを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。 - タイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法であって、
末端が極性基で変性された非油展の末端変性スチレン−ブタジエンポリマーと、シリカと、分子中に硫黄を含むシランカップリング剤と、を混合し、第1マスターバッチを得る第1工程と、
前記第1マスターバッチに、加硫系添加剤以外の添加剤と、常温で液状のオイルと、を添加して混合し、第2マスターバッチを得る第2工程と、
前記第2マスターバッチに、加硫系添加剤を添加して混合する第3工程と、を有し、
当該第3工程を経た後に、加硫処理してゴム組成物を生成することを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
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