JP2011212810A - ワイヤーソー用メインローラ - Google Patents

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Abstract

【課題】ワイヤー溝の仕切壁の剛性を高めて、切断精度を向上させ、加工品の歩留まりを向上させることができ、加工品の薄膜化に対しても、仕切壁の剛性を維持し歩留まりを高いレベルで維持すると共に、ワイヤー溝の早期摩耗を抑制して寿命を大幅に延ばすことのできるワイヤーソー用メインローラの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも外層がウレタン系樹脂で構成され、複数のワイヤー溝が外周面の周方向に形成されたワイヤーソー用メインローラであって、このウレタン系樹脂が、[A]1,5−ナフタレンジイソシアネート、[B]ポリエステル系ポリオール及び[C][B]ポリエステル系ポリオールの分子量より小さい分子量を有する硬化剤を含む組成物の硬化体であり、[C]成分が、(C1)ジオール、及び(C2)トリオールを含むことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、ワイヤーソー用メインローラに関する。
インゴット(SiC、サファイヤ、水晶、ガラス、磁性材料、セラミック等)など各種のワーク(被加工物)を切断するために、ワイヤーソーが用いられている。ワイヤーソーにおいては、複数の円柱状のメインローラが所定間隔おきに平行に配設され、それらのメインローラの外周面には、ワイヤーを掛装可能なように複数のワイヤー溝が所定ピッチで形成されている。
ワイヤーソーによるインゴットの切断加工は、メインローラを回転させて掛装されたワイヤーを走行させながら、そのワイヤー上に砥粒を含むスラリーを供給し、この状態でワイヤーに対してワークを圧接することによって行われる。メインローラに掛装されるワイヤーとしてはピアノ線が使用されるが、ダイヤモンドを電着もしくはボンドなどして得られた固定砥粒ワイヤーを使用する場合には、ワイヤー上に水性のクーラントを供給することにより、短時間でインゴットの切断加工をすることができる。
ワイヤーソー用メインローラの材料としては、ウレタン系樹脂やナイロン系樹脂やポリエチレン系樹脂などの合成樹脂が用いられているが、インゴット等の切断時に、ワイヤーとの摩擦に基づいて発熱し、ワイヤー溝の断面形状が変形してしまうことがある。このようにワイヤー溝の断面形状が変形すると、切断精度が低下して、例えば、ワークを所定厚み、所定平行度のウエハにスライスすることができなくなる。また、ワイヤー溝を隔てる仕切壁の剛性が不十分であると、加工時のワイヤーの張力により、ウエハの切断面が波打つ状態となり平面度が低下してしまうこともある。そして、これらが起こることで、ウエハの歩留まりが低下するという不都合が生じている。
特に、太陽電池用シリコンインゴットを切断するためのワイヤーソーでは、加工品であるシリコンウエハの薄膜化が進んでいるため、ワイヤー溝の形成ピッチ(溝相互の間隔)が狭小化しており、ワイヤー溝間の仕切壁の山頂幅や厚みが小さくなり、仕切壁の剛性が低下してきている。また、このようなウエハの薄膜化に対応して、インゴットの切断に使用するワイヤーも細線化が進み、また上述の固定砥粒化も進んでおり、ワイヤーに負荷される応力が大きくなっている。これらの結果、切断精度の低下による加工品の歩留まりの低下が非常に起こり易くなっていると共に、走行するワイヤーによるワイヤー溝の摩耗も加速している。そして、このような仕切壁の剛性低下とワイヤー溝の早期摩耗の発生により、ワイヤーソー用メインローラの寿命が短くなっているという不都合も起こっている。
従って、ワイヤー溝間の仕切壁の剛性を高めることにより、切断精度を向上させ、加工品の歩留まりを向上させることができると共に、太陽電池用シリコンウエハの薄膜化に対応したワイヤー溝の狭小化に対しても、仕切壁の剛性を維持して切断精度の低下を防止し加工物の歩留まりを高いレベルに維持することができ、また、そのような仕切壁の剛性の維持・向上と共に、ワイヤー溝の早期摩耗を抑制することによって、寿命を大幅に延ばすことのできるワイヤーソー用メインローラの開発が望まれている。
このような中、寿命を長くして摩損による交換頻度を少なくすることを目的として、例えば、特開2006−51567号公報には、外層体の材料として耐摩耗性に優れたポリウレタン樹脂を用いたワイヤーソー用ガイドローラが開示されている。しかし、この公報には、外層体を構成するポリウレタン樹脂について、イソシアネート成分以外の成分、すなわちポリオール成分や硬化剤成分については検討されておらず、得られるウレタン系樹脂の引裂強度などの物性値や耐摩耗性などは不十分なものとなっている。
特開2006−51567号公報
本発明はこれらの事情に基づいてなされたものであり、ワイヤー溝の仕切壁の剛性を高めることにより、切断精度を向上させ、加工品の歩留まりを向上させることができ、加工品の薄膜化に対しても、仕切壁の剛性を維持して、加工品の歩留まりを高いレベルで維持すると共に、ワイヤー溝の早期摩耗を抑制して、寿命を大幅に延ばすことのできるワイヤーソー用メインローラを提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するためになされた発明は、
少なくとも外層がウレタン系樹脂で構成され、複数のワイヤー溝が外周面の周方向に形成されたワイヤーソー用メインローラであって、
このウレタン系樹脂が、
[A]1,5−ナフタレンジイソシアネート、
[B]ポリエステル系ポリオール、及び
[C][B]ポリエステル系ポリオールの分子量より小さい分子量を有する硬化剤
を含む組成物の硬化体であり、
[C]硬化剤が、
(C1)ジオール、及び
(C2)トリオール
を含むことを特徴とする。
当該ワイヤーソー用メインローラは、[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネート及び[B]成分のポリエステル系ポリオールを含む組成物の硬化体であるウレタン系樹脂で構成されているので、格段に高い耐摩耗性及び耐荷重性を有しており、また耐熱性、耐油性等のその他の諸特性にも優れている。従って、当該ワイヤーソー用メインローラによれば、ワイヤー溝の早期摩耗を大幅に抑制することができる。また、[C]成分の硬化剤として、(C1)成分のジオールと(C2)成分のトリオールを併用することで、得られるウレタン系樹脂の引裂強度を向上させることができる。また、ワイヤー溝間の仕切壁の剛性を高めることで、切断精度を向上させ、加工品の歩留まりを向上させることができる。さらに、加工品の薄膜化に対応してワイヤー溝のピッチが狭小化しても、仕切壁の剛性を維持することができるので、切断精度の低下を防止して、加工品の歩留まりを高いレベルに維持することができる。このような早期摩耗の抑制と仕切壁の剛性の維持・向上により、当該ワイヤーソー用メインローラの寿命を大幅に延ばすことができる。その結果、シリコンウエハの加工単価を大幅にコストダウンすることができる。また、硬化反応性が非常に高い[A]1,5−ナフタレンジイソシアネートを用いているものの、[C]成分の硬化剤として、(C1)成分のジオールに加えて(C2)成分のトリオールを用いることで、ウレタン系樹脂形成組成物の硬化のポットライフ(組成物成分を混合してから硬化開始までに要する時間)を長くすることができるので、硬化時の攪拌・混合が不十分になるおそれを低減でき、ウレタン系樹脂の適切な成形が可能になる。また、後述する遠心成形を行う場合でも、ポットライフが長くなることで、成形操作の確実性が向上し、良好な物性を有するワイヤーソー用メインローラとすることができる。
当該ワイヤーソー用メインローラを構成するウレタン系樹脂の[C]成分の硬化剤としては、(C1)成分のジオール100質量部に対して、(C2)成分のトリオールを1質量部以上50質量部以下含むことが好ましい。(C1)成分と(C2)成分との配合比を上記範囲とすることで、得られるウレタン系樹脂の耐摩耗性及び耐荷重性等の特性並びに引裂強度を向上させることができ、その結果、当該メインローラのワイヤー溝の耐摩耗性と仕切壁の剛性とを向上させることができる。それによって加工品の歩留まりをさらに向上させることができると共に、当該ワイヤーソー用メインローラの寿命をさらに延ばすことができる。また、上記配合比に設定することで、上述の物性が得られるだけでなく、ウレタン系樹脂の硬化のポットライフを長くすることができるため、プレポリマーと硬化剤との攪拌・混合がより確実となり、より均一かつ良好な物性を有するワイヤーソー用メインローラとすることができる。
当該ワイヤーソー用メインローラのウレタン系樹脂を形成する組成物の成分として、(C1)成分のジオールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも1種であり、(C2)トリオールが、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール及び1,2,4−ベンゼントリオールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。(C1)成分及び(C2)成分として、上記特定の化合物の組合せを採用することで、剛直な構造を有する[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネートを含むウレタンプレポリマーを効果的に架橋させることにより、得られるウレタン系樹脂の耐摩耗性及び耐荷重性等の特性をさらに発揮させ、また引裂強度をさらに高めることができる。その結果、当該メインローラのワイヤー溝の早期摩耗をさらに抑制すると共に、仕切壁の剛性をさらに向上させることができる。それによって、加工品の歩留まりを一段と向上させることができると共に、当該メインローラの寿命をさらに延ばすことができる。また、ウレタン系樹脂の硬化反応をさらに適度な速度で行うことができるので、さらに均一かつ良好な物性を有するワイヤーソー用メインローラとすることができる。
当該ワイヤーソー用メインローラのウレタン系樹脂を形成する組成物の成分として、[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネート100質量部に対する(C1)成分のジオール及び(C2)成分のトリオールの合計配合量が、5質量部以上40質量部以下であることが好ましい。[C]成分の硬化剤のジオール及びトリオール成分の合計配合量を上記範囲とすることで、得られるウレタン系樹脂の架橋密度が最適化され、表面硬度が向上するので、当該メインローラの仕切壁の剛性がさらに向上する。その結果、加工品の歩留まりをさらに向上させることができる。
当該ワイヤーソー用メインローラは、ウレタン系樹脂の硬化前に遠心成形を行うことによって得られるとよい。遠心力を利用した成形方法を採用し、ウレタン系樹脂と空気との密度差及び遠心力を利用することによって、硬化前のウレタン系樹脂の注型液内部に存在する気泡を、当該メインローラの外周面の周辺から中心軸方向へと速やかに追いやることができる。従って、ウレタン系樹脂の硬化前に遠心成形を行うことによって、内部に包含される微細気泡の密度がローラの中心軸から外周面方向に向かって漸進的に疎になる状態を容易に作り出すことが可能になり、[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネートを含むウレタン系樹脂が本来的に有する高度な耐摩耗性及びこのウレタンで構成されるメインローラのワイヤー溝間の仕切壁の高い剛性が確実に発揮され、その結果、当該ワイヤーソー用メインローラによる加工品の切断精度がさらに向上し、歩留まりをさらに上げることが可能となる。また、当該ワイヤーソー用メインローラは、ウレタン樹脂の形成組成物中の[C]成分の硬化剤に(C1)ジオールに加えて、(C2)トリオールを用いているので、組成物のポットライフを適度に長くすることができるため、遠心力を利用した成形方法を用いることで、ウレタン内部の気泡を確実に除去することができる。従って、ワイヤーソー用メインローラーとして溝加工を施したときに、ウレタン内部の気泡の影響が低減された、かつ上述の良好な物性を有するワイヤーソー用メインローラーを得ることができる。
ワイヤーソー用メインローラが有する複数のワイヤー溝は、100μm以上1,000μm以下のピッチで形成されていてよい。このように当該メインローラが有する複数のワイヤー溝が極めて小さいピッチで形成されている場合であっても、当該メインローラが上記成分を有する組成物の硬化体であるウレタン系樹脂で構成されていることで、ワイヤー溝間の仕切壁の剛性を維持・向上することができ、加工品の歩留まりを高いレベルに維持又は向上することができる。従って当該ワイヤーソー用メインローラによれば、太陽電池用シリコンウエハ等の薄膜化の要求に応えることも可能となる。
以上説明したように、本発明のワイヤーソー用メインローラは、1,5−ナフタレンジイソシアネートを用い、硬化剤としてジオール及びトリオールを併用して得られるウレタン系樹脂で構成されていることから、ワイヤー溝の早期摩耗が大幅に抑制されると共に、ワイヤー溝間の仕切壁の剛性を高めることができる。その結果、切断精度が向上し、加工品の歩留まりを高いレベルで維持・向上させることができる。また、当該メインローラの寿命を大幅に延ばすことができるので、切断作業の大幅なコストダウンを図ることができる。さらにこのようなウレタン系樹脂を形成する組成物のポットライフを適度な時間に延ばすことができるので、適切な成形操作を行うことができ、均一かつ良好な物性のワイヤーソー用メインローラとすることができると共に、複雑な形状を有するメインローラの成形も可能になる。
本発明の一実施形態のワイヤーソー用メインローラを示す斜視図である。 ワイヤーソー用メインローラを備えるマルチワイヤーソー装置を示す斜視図である。 (a)ワイヤーソー用メインローラの溝形状を示す部分拡大断面図である。 (b)ワイヤー溝摩耗後のワイヤーソー用メインローラの溝形状を示す部分拡大断面図である。
本発明のワイヤーソー用メインローラは、
少なくとも外層がウレタン系樹脂で構成され、複数のワイヤー溝が外周面の周方向に形成されたワイヤーソー用メインローラであって、
このウレタン系樹脂が、
[A]1,5−ナフタレンジイソシアネート、
[B]ポリエステル系ポリオール化合物、及び
[C][B]ポリオール化合物の分子量より小さい分子量を有する硬化剤
を含む組成物の硬化体であり、
[C]成分が、
(C1)ジオール、及び
(C2)トリオール
を含むことを特徴とする。以下、各成分について順に説明する。
〈[A]成分:1,5−ナフタレンジイソシアネート〉
[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネートは、2個のイソシアネート(−NCO)基が、ナフタレン環の1位と5位に結合した芳香族ジイソシアネート化合物である。[A]成分は、[B]成分とともに、ウレタン系樹脂の主要骨格を構成する。[A]成分がナフタレン骨格を有することで、ウレタン系樹脂の分子鎖の剛直性が上がるので、得られるウレタン系樹脂は、格段に高い耐摩耗性及び耐荷重性を有しており、また、耐熱性、耐油性等のその他の諸特性にも優れている。従って、このようなウレタン系樹脂で構成されるワイヤーソー用メインローラは、ワイヤー溝の耐摩耗性に非常に優れ、早期摩耗の発生が大幅に抑制されると共に、ワイヤー溝間の仕切壁の剛性が格段に高められるという非常に優れた特性を有する。
一方で[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネートは、ウレタン硬化の反応性が非常に高いという性質を有するため、注型中に硬化してしまうなどウレタン系樹脂の成形は困難を極め、または均一に硬化させることができず、そのため良好な物性の成形体を得ることが非常に難しいという面を有している。しかし、[C]成分の硬化剤として、(C1)ジオールとともに、(C2)トリオールを併用することによって、遅延剤等を使用しなくとも、硬化反応速度をウレタン系樹脂の成形に好適な速度まで遅くすること、すなわちポットライフを長くすることができ、混合不良を大幅に減らすことが可能となる。
〈[B]成分:ポリエステル系ポリオール〉
[B]成分のポリエステル系ポリオールは、[A]成分とともに、ウレタン系樹脂の主要骨格を構成する。ウレタン系樹脂を構成するポリオール成分として、ポリエステル系ポリオールを採用することにより、ウレタン系樹脂の耐摩耗性及び引張強度等の特性を向上させることができるので、得られるワイヤーソー用メインローラの早期摩耗を抑制することができ、寿命を延ばすことができる。[B]成分のポリエステル系ポリオールとしては特に限定されるものではなく、ウレタン系樹脂の構成成分として従来公知のポリエステル系ポリオールを用いることができる。
上記ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、
イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸及びこれらのジアルキルエステル、並びにマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸及びこれらのジアルキルエステル等から選択された少なくとも1種のジカルボン酸又はこれらのジアルキルエステルと、
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール等のグリコール、及びグリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン等のトリオールから選択された少なくとも1種の多価アルコール成分との縮重合により得ることができる。また、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール等のグリコールの1種以上を開始剤としてε−カプロラクトンやγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等のラクトン化合物を開環重合することによっても得ることができる。
アジピン酸をジカルボン酸成分のベースとしたポリエステル系ポリオールの具体例としては、
ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリジエチレンアジペート(PDA)、ポリプロピレンアジペート(PPA)、ポリテトラメチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)、及びこれらの成分を組み合わせた共重合体などが挙げられる。
[B]成分のポリエステル系ポリオールの分子量としては、得られるウレタン系樹脂の硬度を満足する限り特に限定されないものの、得られるウレタン系樹脂の耐摩耗性の観点から、数平均分子量(Mn)が400以上10,000以下が好ましく、500以上5,000以下がより好ましく、550以上3,000以下がさらに好ましい。また[B]成分のポリエステル系ポリオールは、結晶性でもよく非結晶性であってもよい。なお、上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で測定した値である。[B]成分のポリエステル系ポリオールは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
[B]成分のポリオール化合物の使用割合としては、NCO Index、すなわち[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネートが有するイソシアネート基の総モル数の[B]成分のポリエステル系ポリオールの有する水酸基の総モル数に対する比の下限としては、1.0以上が好ましく、1.04以上がより好ましく、1.06以上がさらに好ましい。一方、このモル数の比の上限としては1.5が好ましく、1.3がより好ましく、1.2がさらに好ましい。イソシアネート基の水酸基に対するモル比を1.0以上とすることによって、ワイヤーソー用メインローラの表面硬度を上げることができるので、ワイヤー溝間の仕切壁の剛性をさらに高めることができ、その結果ワークの切断精度を向上させて、加工品の歩留まりをさらに向上させることができる。またモル比を1.5以下とすることによって、ウレタン系樹脂の弾性をワイヤーソー用メインローラとして適度な範囲にすることができる。
〈[C]成分:[B]成分の分子量より小さい分子量を有する硬化剤〉
[C]成分の硬化剤は、イソシアネート基と反応可能な活性水素を有する官能基を2個以上有し、かつ[B]成分のポリエステル系ポリオールの分子量より小さい分子量を有するものである。[C]成分の分子量としては、例えば400以下である。[C]成分の硬化剤として、(C1)ジオール及び(C2)トリオールを併用することが重要である。[C]成分の硬化剤として、ジオール及びトリオールを併用することによって、得られるウレタン系樹脂の引裂強度が向上し、その結果、当該ワイヤーソー用メインローラのワイヤー溝間の仕切壁の剛性が向上する。また、[C]成分の硬化剤として(C1)ジオールに加えて、(C2)トリオールを用いることによって、ウレタン系樹脂の硬化の反応性が高い[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネートに対しても、硬化反応を適度な速度とすることができ、組成物の硬化のポットライフを適度な時間にすることができるので、当該メインローラの適切な成形が可能となり、均一かつ良好な物性を有するワイヤーソー用メインローラを得ることができると共に、複雑な形状を有するメインローラの成形も可能になる。
(C1)成分のジオール及び(C2)成分のトリオールが有する水酸基はアルコール性でも、フェノール性でもよく、アルコール性水酸基とフェノール性水酸基を両方有していてもよい。
(C1)成分のジオールとしては、2個の水酸基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。
このような(C1)成分のジオールの具体例として、例えば、
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,2−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、1,2−ビスヒドロキシエトキシシクロヘキサン、1,3−ビスヒドロキシエトキシシクロヘキサン、1,4−ビスヒドロキシエトキシシクロヘキサン、1,2−ビスヒドロキシエトキシカルボニルシクロヘキサン、1,3−ビスヒドロキシエトキシカルボニルシクロヘキサン、1,4−ビスヒドロキシエトキシカルボニルシクロヘキサン、2,5−ジヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ジヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ジヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9−ジヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8−ジヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量400までのポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量400までのポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、分子量400までのポリブチレングリコール等の2価アルコール;カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の2価フェノール;これらの2価フェノールの部分エチレンオキサイド付加体又は部分プロピレンオキサイド付加体等のフェノールアルコール化合物などが挙げられる。この中で、得られるワイヤーソー用メインローラの耐摩耗性及び耐荷重性等の特性並びに引裂強度の高さの観点からエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール又は1,6−ヘキサンジオールが好ましい。(C1)成分のジオールは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
(C2)成分のトリオールとしては、3個の水酸基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。(C2)成分のトリオールの具体例としては例えば、
グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、5−メチル−1,2,4−ヘプタントリオール、1,2,3−シクロヘキサントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール等の3価アルコール;1,2,3−ベンゼントリオール、1,2,4−ベンゼントリオール、1,3,5−ベンゼントリオール等の3価フェノール、これらの3価フェノールの部分エチレンオキサイド付加体又は部分プロピレンオキサイド付加体等のフェノールアルコール化合物などが挙げられる。この中で、得られるワイヤーソー用メインローラの耐摩耗性及び耐荷重性等の特性並びに引裂強度の高さの観点から、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール又は1,2,4−ベンゼントリオールが好ましい。(C2)成分のトリオールは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
[C]成分の硬化剤として、(C1)成分のジオールとして上記化合物を用い、かつ(C2)成分のトリオールとして上記化合物を用いることが、得られるワイヤーソー用メインローラの耐摩耗性及び耐荷重性等の特性並びに引裂強度を高くする観点からは最も好ましい。[C]成分の硬化剤において、(C1)成分のジオール及び(C2)成分のトリオールは、本発明の効果を損なわない範囲で水酸基以外の他の官能基を有していてもよい。
[C]成分の硬化剤において、(C1)成分のジオールと(C2)成分のトリオールの使用比率としては、(C1)成分100質量部に対して(C2)成分が1質量部以上50質量部以下が好ましく、5質量部以上30質量部以下がより好ましく、10質量部以上20質量部以下がさらに好ましい。硬化剤におけるジオールに対するトリオールの使用比率を上記範囲とすることによって、得られるウレタン系樹脂の耐摩耗性及び耐荷重性等の特性並びに引裂特性を向上させることができ、当該ワイヤーソー用メインローラのワイヤー溝の耐摩耗性及び仕切壁の剛性を向上させることができる。
[C]成分の硬化剤の使用割合としては、[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネート100質量部に対する(C1)成分のジオール及び(C2)成分のトリオールの合計配合量が、5質量部以上40質量部以下が好ましく、10質量部以上35質量部以下がより好ましく、15質量部以上30質量部以下がさらに好ましい。(C1)成分と(C2)成分の合計配合量を上記範囲とすることによって得られるウレタン系樹脂の架橋密度が最適化され、表面硬度等の機械的特性が向上し、その結果、当該ワイヤーソー用メインローラのワイヤー溝間の仕切壁の剛性をさらに向上させることができる。
(その他の硬化剤)
[C]成分の硬化剤として、(C1)成分及び(C2)成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、その他の硬化剤、例えば、4価以上のアルコール、ポリアミン化合物、アミノアルコール化合物などを加えることができる。
上記4価以上のアルコールとしては、例えば、
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、エリスリトール、キシリトール、グルコース、スクロース、フルクトース、ソルビトール、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラオール、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラオール、シクロヘキサンペンタオール、イノシトールなどが挙げられる。
上記ポリアミン化合物としては、例えば、
エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;4,4’−メチレン−ビス−2−メチルシクロヘキシルアミン等の脂環族ポリアミン;1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノトルエン、1,5−ナフタレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1−メチル−3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5’−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、4,4’−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス−(オルト−クロロアニリン)、4,4’−メチレン−ビス―(2,3−ジクロロアニリン)、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス−(2−メチル−6−イソプロピルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、クロロアニリン変性ジクロロジアミノジフェニルメタン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、メチレンジアニリン/塩化ナトリウム錯体、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゼン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
上記アミノアルコール化合物としては、例えば、
エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
[C]成分の硬化剤としては、(C1)成分のジオール及び(C2)成分のトリオール以外の硬化剤を含まないことが好ましい。[C]成分が(C1)成分及び(C2)成分以外の硬化剤を含まないことで、ウレタン系樹脂の硬化反応がより適度な速度で進行するため、硬化組成物のポットライフを適度な時間に維持することができるので、その結果、当該メインローラを適切に成形できると共に、さらに均一かつ良好な物性を有するワイヤーソー用メインローラとすることができる。
本発明の効果が損なわれない範囲において、当該ワイヤーソー用メインローラのウレタン系樹脂を形成する組成物の成分として、[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネート以外のイソシアネート成分を少量含んでいてもよい。このようなイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−トリジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族イソシアネート;
シクロペンタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
また、上記ウレタン樹脂を形成する組成物のポリオール成分として、[B]成分のポリエステル系ポリオール以外の他の系のポリオールを少量含んでいてもよい。このような他の系のポリオールとしては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等が挙げられる。
上記ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等が挙げられる。また上記ポリエーテル系ポリオールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール;グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン等のトリオール;ビスフェノールA又は水添ビスフェノールA等の2官能ヒドロキシ化合物などの1種以上を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを開環重合させることによっても得ることができる。
上記ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、
アルカンポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール等のポリオールと、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートとの反応により得られるポリカーボネートジオールが挙げられる。ポリカーボネート系ポリオールの代表例としてはポリヘキサメチレンカーボネート(PHC)などが挙げられる。
ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えば、
ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ひまし油変性ポリオール、ブタジエンとスチレンもしくはアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したもの等が挙げられる。
当該ワイヤーソー用メインローラを構成するウレタン系樹脂には、本発明の効果が損なわれない範囲において、各種の物質を任意成分として含有させることができる。かかる任意成分としては、触媒、酸化防止剤、脱泡剤、消泡剤、紫外線吸収剤、反応調節剤、補強剤、充填材、着色剤(染料又は顔料)、離型剤、安定剤、光安定剤、電気絶縁性向上剤、防かび剤、有機酸の金属塩、アミド系ワックス、金属酸化物、金属水酸化物、加水分解防止剤、レベリング剤、増量剤などを挙げることができる。
〈ワイヤーソー用メインローラ〉
本発明のワイヤーソー用メインローラは、図1に示すように、外層部分2と、芯体3とを主に備えている。外層部分2は、上述のウレタン系樹脂によって一体的に形成されており、その外周面にワイヤー溝4が形成されている。外層部分2の厚みは、強度保持及び製造コスト低減の観点から、例えば1mm以上20mm以下とすることが好ましい。ワイヤーソー用メインローラ1の外径は、要求される用途及びスケールによるが、典型的には10cm以上100cm以下とすることができる。
ワイヤー溝4は、ワイヤーソー用メインローラの外周面において周方向に複数形成されている。ワイヤー溝の断面形状は、ワイヤーソーの運転中においても、ワイヤーが安定して配置され得る限り、特に限定されるものではない。ワイヤー溝の断面形状の一般的な例としては、図4(a)に示すように、底部から上方の開口部に向かって開口角度θで拡張しており、底部がくの字状又は半円状に形成されている断面形状を挙げることができる。またワイヤー溝の底面周辺及び上部において、開口角度θに変化を設けてもよい。
ワイヤー溝4のピッチPは、ワークの切断・加工により製造する加工品の厚みの要求次第で変化させることができる。従って、このような構造を有するワイヤーソー用メインローラ1の外周面に形成されたワイヤー溝2のピッチPは、100μm以上1,000μm以下の程度にまで小さくすることが可能である。このように、加工品の良好な歩留まりを保ちつつワイヤー溝4のピッチPを極めて小さい値にまで狭小化することで、近年における太陽電池用シリコンウエハに代表されるように加工品の薄膜化傾向に十分対応することができる。なお、ワイヤー溝の底部から開口部までの垂直長さ、すなわちワイヤー溝の深さDは特に限定されないが、例えば、50μm以上400μm以下とすることができる。
仕切壁8は、ワイヤーソー用メインローラ1の外周面において周方向に形成された複数のワイヤー溝4同士を隔てる壁部である。仕切壁8は、ワイヤー溝4の各々にワイヤー6が配置される際に、各ワイヤーの両側においてワイヤーを接触・保持する。仕切壁8の側面形状は、ワイヤー溝4が形成されることで規定される。また、仕切壁8の厚みは、形成されるワイヤー溝4のピッチP及びワイヤー溝の開口角度θによって規定される。ワイヤーソー用メインローラ1を構成するウレタン系樹脂の引裂強度を高くすることで、この仕切壁8の剛性が高まり、その結果、切断精度が向上し、加工品の歩留まりを向上させることが可能になる。
ワイヤーソー用メインローラ1を切断等の加工に長時間使用すると、図4(b)に示すように、ワイヤー溝4に掛装されたワイヤー6の張力により、ワイヤー6が強く同溝2の底面に押さえつけられた状態での走行が継続される結果、ワイヤー溝4の底面の摩耗が進行して溝深さDが増大する。新品時の溝深さDと、使用後の溝深さD’との差を、ワイヤー摩耗部深さWとする。メインローラ1を一定時間使用した後のワイヤー摩耗部深さWの値は、ワイヤー溝4の早期摩耗のし易さの指標となる。当該ワイヤーソー用メインローラ1によれば、上記成分を有する組成物から形成されたウレタン系樹脂で構成されているので、耐摩耗性が格段に高く、このようなワイヤー溝4の摩耗の進行を大幅に抑制することができる。
ワイヤーソー用メインローラ1を構成するウレタン系樹脂のJIS−A硬度の下限としては、80が好ましく、85がより好ましく、90がさらに好ましい。当該メインローラ1を構成するウレタン系樹脂のJIS−A硬度が80以上であることで、ワイヤー溝間の仕切壁の剛性を向上させることができ、結果として、切断精度を向上することができ、ワイヤーソーによる加工品の歩留まりを向上させることができる。
ワイヤーソー用メインローラ1を構成するウレタン系樹脂の引裂強度の下限としては130kg/cmが好ましく、140kg/cmがより好ましく、150kg/cmがさらに好ましい。当該メインローラを構成するウレタン系樹脂の引裂強度が130kg/cm以上であることにより、使用するワイヤーの径がさらに細くなった場合においても、ワイヤーによるウレタン系樹脂の摩耗が抑制されたメインローラを提供することができる。
芯体3は、中空の円柱形状を有している。芯体3の外径は、特に限定されないが、典型的には100mm以上400mm以下である。また、芯体3の長さは、用いられる用途等によって異なるが、典型的には10cm以上100cm以下である。芯体3の材料は、ワークの加工・切断時にかかる応力に耐えうると共に、回転による振れ精度を十分確保することができる程度の剛性を有するものである限り特に限定されないが、例えば鋼鉄、硬質クロム鋼、モリブデン鋼、ステンレス、炭素繊維等の中から適宜選択される。芯体4の形成方法としては、特に限定されず、鋳造、鍛造、半溶融鍛造などの公知の方法を採用することができる。
〈ワイヤーソー用メインローラの製造方法〉
(ウレタン系樹脂の製造方法)
当該ワイヤーソー用メインローラ1を構成するウレタン系樹脂の製造方法としては特に限定されず、プレポリマー法、擬プレポリマー法、ワンショット法、擬ワンショット法が挙げられるが、プレポリマー法が最も一般的である。プレポリマー法においては、典型的に[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネートと[B]成分のポリオール化合物とを約50〜150℃で反応させることによってウレタンプレポリマーを調製し、このウレタンプレポリマー、並びに(C1)成分のジオール及び(C2)成分のトリオールを含む[C]成分の硬化剤(並びに他の任意成分)を混合して約50〜150℃で加熱することによって反応硬化体であるウレタン系樹脂を製造することができる。ウレタン系樹脂の成形は、所望の形状を有する金型に液状の原料(ウレタンプレポリマー及び[C]成分等)を注入し、加熱硬化させることによって行うことができ、例えば、芯体3の外周に上記ウレタン系樹脂で構成される外周部分2を備えるワイヤーソー用メインローラ1を得ることができる。
当該ワイヤーソー用メインローラ1を製造する際において、ウレタン系樹脂の硬化前に遠心成形を行うことも有効である。メインローラ1では、その外周面から厚さ5mmの表層部分から、直径20μm以上の微細気泡を排除することで、ウレタン系樹脂の特性である高度な耐摩耗性が十分に発現され、メインローラ1の仕切壁8の剛性をより強化することができると共に、ワイヤー溝4の摩耗方向をより精度良く溝底方向に向かわせることができる。このように、ウレタン系樹脂の硬化前に遠心成形を行うことで、硬化反応性の高い[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネートを用いる場合でも、ウレタン系樹脂と空気との密度差及び遠心力により、硬化前のウレタン系樹脂の注型液内部に存在する気泡を、メインローラ1の外周面の周辺から中心軸方向へと速やかに追いやることが可能となる。すなわち、このような遠心力を利用した方法で、当該ワイヤーソー用メインローラ1を形成することによって、内部に包含される微細気泡の密度が、中心軸から外周面方向に向かって漸進的に疎になる状態、好ましくは外周面から厚さ5mmの表層部分において直径20μm以上の微細気泡が存在しない状態を効率良く作り出すことができる。
ワイヤーソー用メインローラ1の遠心成形のためには、遠心金型ドラムを用いることができる。遠心金型ドラムは、高速で回転可能な円筒体である。遠心金型メインの原理は、ドラム内部に成形原料を入れ、ドラムを高速で回転させることによって、成形原料に重力効果Gを与えてドラムの内壁方向に押し付けると共に、成形原料の内部に包含される気体(微細気泡)をドラムの中心軸方向(空気面)に追いやり、微細気泡を含まない成形体を製造するというものである。遠心金型ドラムの寸法は、特に限定されず、目的とするメインローラの形状や大きさに合わせて設計される。
この場合のワイヤーソー用メインローラ1の遠心成形は、例えば以下の工程により行うことができる。まず、[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネートと[B]成分のポリオール化合物とを反応させることによって得られたウレタンプレポリマーに、(C1)成分及び(C2)成分を含む[C]成分の硬化剤を加え、空気が巻き込まれないように攪拌器(「アジター」と称される。)により約30〜120秒間、混合・攪拌する。次いで、遠心金型ドラムの内面に適宜離型剤を塗布し、金型温度を約50〜150℃、ドラムの回転数を約100〜300rpmに設定して、ウレタンプレポリマー及び[C]成分の硬化剤等を混合した注型液を遠心金型ドラムに入れる。遠心金型ドラムにこの注型液を全て入れた時点で、ドラムの回転数を約500〜5000rpm(典型的には約900〜2500rpm)に上昇させて約2〜10分間回転させる。この時のドラムの回転は、気泡の追いやり効果を最大化する観点から、好ましくは約10以上3000以下の重力効果Gを生じるように行われる。次いで、ドラムの回転数を約200〜500rpmに下降させて約60〜120分間回転させる。そして、遠心金型ドラムから脱型し、約50〜150℃で約2〜60時間のアフターキュアを行うことによってウレタン系樹脂の成形体を得ることができる。上記の重力効果Gは、数式G=F/M=r(2πN/60)/g(F=遠心力(kg);M=質量(kg);r=半径(cm);N=回転数(rpm);g=重力加速度(980cm/sec))によって算出される無単位の値である。
(ワイヤーソー用メインローラのワイヤー溝形成方法)
上述のようにして得られたウレタン系樹脂の円筒状成形体の外周面に、ワイヤー溝4を形成する方法は特に限定されず、公知の切削方法又は研削方法を用いることができる。ワイヤーソー用メインローラ1は、例えば、金型成形により芯体3の外周周りにウレタン系樹脂を形成させるか、ウレタン系樹脂を円筒状に成形したものを芯体3などに圧入する等により作製されたローラの外周面に、NC旋盤や研削機等を用いて、所望の形状及び寸法のワイヤー溝4及び仕切壁8が形成されることにより得られる。このワイヤーソー用メインローラ1は、上述のような利点を有するものであるため、長期間にわたる運転後でも、加工品の良好な歩留まりを維持することが可能であるが、製品の品質保全に完全を期するためには、ある程度の期間経過後に、摩耗が進行していない状態のメインローラ1に取換えることが好ましい。このようなメインローラ1の取換えの際には、ワイヤーソー用ローラ1から外層部分2をNC旋盤による切削等により取り除き、新たな外層部分2を芯体3の外周に形成させた後、NC旋盤や研削機等を用いてワイヤー溝4を形成させる方法を用いることもできるが、使用により摩耗したワイヤー溝部分をNC旋盤等で全て取り除いた後に、ワイヤー溝を再度形成する方法を採用して、ローラを再使用することもできる。
〈ワイヤーソー切断装置〉
ワイヤーソー用メインローラ1の実際の使用にあたっては、図3に示すように、複数(図中3つを例示)のワイヤーソー用メインローラ1を水平配置し、ワイヤーソー用メインローラ1の外周面に設けられた複数のワイヤー溝4にワイヤー6を掛装・配置することによって、ワイヤーソー切断装置5(ワイヤーソーにおけるワーク切断機構の部分)が構成される。ワイヤーソー切断装置5の運転においては、このワイヤー6を走行させて、これにワーク(図中ではインゴット7を例示)を圧接すると共に、ワイヤー6上にスラリー(砥粒を含むクーラント溶液)等を供給することによってワークを切断することができる。
ワイヤー6としては、ワークの切断が可能である限り特に限定されるものではないが、一般的に、ピアノ線と称される鋼線が用いられる。ワイヤー6の直径としては、使用するメインローラ1のワイヤー溝4に安定して配置可能である限り特に限定されるものではないが、例えば50μm以上300μm以下とすることができる。またワイヤー6として、ダイヤモンドの砥粒がピアノ線の外周面に、例えば無電解ニッケルメッキ等により電着したもの、もしくは接着剤等により固着されているものを用いてもよい。
砥粒の例としては、SiC、WC、Al等が挙げられる。クーラントとしては、油性又は水性のものを用いることができる。油性クーラントの例としては、鉱物油が挙げられる。また水性クーラントの例としては、水、または水及びエチレングリコールの混合物が挙げられる。ワイヤー6としてピアノ線を用いる場合には、スラリー(砥粒を含むクーラント溶液)を用いることができる。また、ワイヤー6としてダイヤモンドの砥粒が固定されたピアノ線を用いる場合には、砥粒を含まない水性クーラントのみを用いる。
ワイヤーソー切断装置5によって切断・加工するためのワークとしては、半導体インゴット等の脆性材料、代表的にはシリコンインゴットが挙げられる。また、シリコンインゴットから得られる加工品の例としては、半導体用シリコンウエハ、太陽電池用シリコンウエハ等が挙げられる。太陽電池用シリコンウエハとしては、約0.15〜0.30mmの厚みを有するものが使用されるため、この厚みにワイヤー6の直径及び砥粒の大きさを加えた程度のピッチを有するメインローラ1を備えたワイヤーソー切断装置5が必要とされる。ワイヤーソー用メインローラ1は、耐摩耗性に優れ、またこれを構成するウレタン系樹脂の引裂強度が高いので、ワイヤー溝のピッチを極めて小さくした場合でも、仕切壁の剛性低下及びワイヤーの脱線を効果的に抑制することが可能である。従って、当該ワイヤーソー切断装置5は、太陽電池用シリコンウエハに代表される加工品の薄膜化傾向に十分対応することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱することがない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〈ワイヤーソー用メインローラの作製〉
[実施例1]
反応槽に[A]成分の1,5−ナフタレンジイソシアネート720g、及び[B]成分として、100℃で4時間減圧乾燥したポリエステル系ポリオールであるポリエチレンアジペート(PEA)(数平均分子量:2,000)(住化バイエルウレタン株式会社製「Vulkollan(登録商標)2000MM」)2,400gを仕込み、窒素雰囲気下で125℃に加熱しプレポリマーを合成した。このとき、1,5−ナフタレンジイソシアネートが完全に溶解していることを確認した。このプレポリマーに、[C]成分の硬化剤として、(C1)成分のジオールとして1,4−ブタンジオール152g、及び(C2)成分のトリオールとしてトリメチロールプロパン17g(トリオール/ジオール(質量比)=11/100)を加え、エアーが巻き込まれないように攪拌機を用いて60秒間混合攪拌し、注型液を調製した。芯体の外周周りに厚み6mmの円筒状の硬化体が形成されるように対応した金型を用意し、予め金型の内面に離型剤を塗布して金型温度を135℃になるように設定した。次いで、調製した注型液をこの金型に投入し、90分間硬化させ、架橋反応によってウレタン系樹脂が得られていることを確認した。その後、このウレタン系樹脂を金型から脱型し、次いで、ウレタンの物性をさらに向上させるために、120℃で15時間、後架橋を行い、ウレタン系樹脂が外層部分を形成する直径222mmのローラを作製した。次いでNC旋盤を用いて、0.35mmのピッチで複数のワイヤー溝を外周面の周方向に形成することによって、実施例1に係るワイヤーソー用メインローラを作製した。
[実施例2]
実施例1において、[C]成分の硬化剤として、(C1)成分の1,4−ブタンジオールを135gに、(C2)成分のトリメチロールプロパンを34gとし、トリオール/ジオール(質量比)を25/100とした以外は実施例1と同様にして、実施例2に係るワイヤーソー用メインローラを作製した。
[実施例3]
実施例1において調製した注型液を、上記金型の代わりに、内径216mmの遠心金型ドラムを用意し、予め内面に離型剤を塗布して、金型温度を135℃になるように設定した。次いで、金型ドラムの回転数を200rpmに設定し、注型液を遠心金型ドラムに投入した。注型液の投入が終了し、遠心金型ドラムに蓋をした時点で、回転数を2,000rpmに設定し、注型液の内部に存在する気泡を、遠心力を用いて遠心金型ドラムの内側に追いやるようにした。遠心金型ドラムの半径と回転数とから算出されるこのときの遠心効果Gは、271.64であった。遠心金型ドラムの回転数を2,000rpmに設定してから5分経過後、回転数を150rpmにして90分間回転を続けた。架橋反応によってウレタン系樹脂が得られていることを確認した後、このウレタン系樹脂を金型から離型し、ウレタン系樹脂の円筒状成形体を得た。その後は、実施例1と同様にして、芯体の圧入とワイヤー溝の形成を行い、実施例3に係るワイヤーソー用メインローラを作製した。
[比較例1]
実施例1において、[C]成分の硬化剤として、(C1)成分のジオールである1,4−ブタンジオール170gのみを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に係るワイヤーソー用メインローラを作製した。
[比較例2]
実施例1において、イソシアネートとポリオールとを配合する代わりに、トルエンジイソシアネート(TDI)と、ポリエステル系ポリオールであるポリエチレンアジペート(PEA)から得られるプレポリマー(イソシアネート基含有量約5.0質量%、硬度95°タイプ)(三井化学株式会社製「サイアナプレン」)2,860gを用い、[C]成分の硬化剤として、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)(イハラケミカル工業株式会社製「キュアミンMT」439gを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係るワイヤーソー用メインローラを作製した。
[比較例3]
比較例2において、イソシアネートとポリオールから合成したプレポリマーとして、トルエンジイソシアネート(TDI)と、ポリエーテル系ポリオールであるポリテトラメチレングリコール(PTMG)から得られるプレポリマー(イソシアネート基含有量約5.0質量%、硬度95°タイプ)(東京材料株式会社製「アジプレン(登録商標)」2,797gを用い、[C]成分の硬化剤として、上記と同じ3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)503gを用いた以外は比較例2と同様にして、比較例3に係るワイヤーソー用メインローラを作製した。
各実施例及び比較例で用いられている略称の意味を示す。
NDI: 1,5−ナフタレンジイソシアネート
TDI: トルエンジイソシアネート
PEA: ポリエチレンアジペート
PTMG:ポリテトラメチレングリコール
BD: 1,4−ブタンジオール
TMP: トリメチロールプロパン
MOCA:3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
〈物性及び特性の評価〉
実施例及び比較例で作製したワイヤーソー用メインローラについて、JIS−A硬度、引張強度、引裂強度、DIN摩擦試験、及びワイヤー摩耗部深さWを評価した。それぞれの測定結果を表1に示す。
〔JIS−A硬度の測定〕
JIS−K6253−2006に準拠して、厚さ10mmの試験片を用い、タイプAデュロメータを用いて、20℃において測定した。n=3で測定しその平均値を算出した。
〔引張強度の測定〕
JIS−K6251に準拠して、厚さ2mmのJIS−3号に規定されたダンベル状の試験片を用い、500mm/分の引張速度で、20℃において測定した。
〔引裂強度の測定〕
JIS−K6252:2007に準拠して、切り込みなしアングル形の試験片を用い、引張試験機を用いて、試験片つかみ具の移動速度500mm/分の条件で、20℃において測定した。
〔DIN摩耗量の測定〕
JIS−K6264−2:2005に準拠して、直径16.0±0.2mm、厚さ6mm以上の円盤状の試験片を用い、DIN摩耗試験機を用いて、直径150.0±0.2mm、長さ500mmのドラムを40回/分で回転させ、荷重1kgfで、摩耗距離を40.0±0.2mとしたときの摩耗量(DIN摩耗量:単位mg)を測定した。
〔ワイヤー摩耗部深さWの測定〕
上記作製したワイヤーソー用メインローラの耐ワイヤー特性を、以下に説明する摩耗評価機を用いて評価した。すなわち、設置したメインローラの溝に直径0.10〜0.3mmのワイヤーを掛装してから、砥粒を含むスラリーを供給しつつ、ワイヤー張力25Nとなるように走行させると共に、ローラをワイヤーの走行方向とは逆向きにスリップ率が1,000%になるように回転させた。このような試験を5時間継続した後、メインローラの溝をビデオマイクロスコープを用いて観察し、試験前後のワイヤー溝の深さの差を求めワイヤー摩耗部深さW(単位:μm)とした。
Figure 2011212810
表1の結果より、イソシアネート成分として[A]1,5−ナフタレンジイソシアネートを用い、[C]成分の硬化剤として、(C1)ジオール及び(C2)トリオールを併用して得られたウレタン系樹脂は、高い引裂強度を有すると共に、耐摩耗性に優れ、実際のワイヤーによるワイヤー溝の耐摩耗性も非常に優れることが示された。これらは、比較例2及び3において、イソシアネート成分として[A]成分ではないトルエンジイソシアネートを用い、[C]成分の硬化剤として、水酸基を有する化合物を用いなかった場合に比べると、格段の向上が見られる。
一方、比較例1の結果から、[C]成分の硬化剤として、(C2)トリオールを用いない場合には、得られたウレタン系樹脂の引裂強度が低くなり、その結果、実際のワイヤーによる溝の耐摩耗性に劣ることも示された。
以上のように、本発明のワイヤーソー用メインローラは、加工品の切断精度を向上させて、歩留まりを向上させることができ、加工品の薄膜化の要求に対しても、ワイヤー溝間の仕切壁の剛性を維持して、加工品の歩留まりを高いレベルで維持すると共に、ワイヤー溝の早期摩耗を抑制して、寿命を大幅に延ばすことができ、切断作業の大幅なコストダウンを図ることができる。従って、当該ワイヤーソー用メインローラは、ワイヤーソーによる半導体用シリコンウエハや太陽電池用シリコンウエハの製造のために好適に用いることができる。
1 ワイヤーソー用メインローラ
2 外層部分
3 芯体
4 ワイヤー溝
5 ワイヤーソー切断装置
6 ワイヤー
7 インゴット
8 仕切壁
P ワイヤー溝のピッチ
D ワイヤー溝の深さ
θ ワイヤー溝の開口角度
W ワイヤー摩耗部深さ

Claims (6)

  1. 少なくとも外層がウレタン系樹脂で構成され、複数のワイヤー溝が外周面の周方向に形成されたワイヤーソー用メインローラであって、
    このウレタン系樹脂が、
    [A]1,5−ナフタレンジイソシアネート、
    [B]ポリエステル系ポリオール、及び
    [C][B]ポリエステル系ポリオールの分子量より小さい分子量を有する硬化剤
    を含む組成物の硬化体であり、
    [C]硬化剤が、
    (C1)ジオール、及び
    (C2)トリオール
    を含むことを特徴とするワイヤーソー用メインローラ。
  2. [C]硬化剤が、(C1)ジオール100質量部に対して、(C2)トリオールを1質量部以上50質量部以下含む請求項1に記載のワイヤーソー用メインローラ。
  3. (C1)ジオールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    (C2)トリオールが、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール及び1,2,4−ベンゼントリオールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載のワイヤーソー用メインローラ。
  4. [A]1,5−ナフタレンジイソシアネート100質量部に対する(C1)ジオール及び(C2)トリオールの合計配合量が、5質量部以上40質量部以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のワイヤーソー用メインローラ。
  5. 上記ウレタン系樹脂の硬化前に遠心成形を行うことによって得られる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤーソー用メインローラ。
  6. 上記複数のワイヤー溝が、100μm以上1000μm以下のピッチで形成されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワイヤーソー用メインローラ。
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