(実施形態1)
以下、図1〜図9に基づいて本実施形態の赤外線センサAを説明する。
赤外線センサAは、赤外線イメージセンサに利用可能な赤外線アレイセンサであり、熱型赤外線検出部3を有する画素部2が、半導体基板1の一表面側においてアレイ状(ここでは、2次元アレイ状)に配列されている(図8および図9参照)。この赤外線センサAは、1つの半導体基板1の上記一表面側にm×n個(図8および図9に示した例では、8×8個)の画素部2が形成されているが、画素部2の数や配列は特に限定するものではない。また、画素部2は、半導体基板1の上記一表面側に形成された画素選択用のスイッチング素子であるMOSトランジスタ4を有している。ここで、各画素部2においては、熱型赤外線検出部3とMOSトランジスタ4とが並んで配置されている。また、半導体基板1としては、シリコン基板を用いている。
また、本実施形態では、熱型赤外線検出部3の感温部30が、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30aを直列接続することにより構成されている。図9では、熱型赤外線検出部3における感温部30の等価回路を、当該感温部30の熱起電力に対応する電圧源Vsで表してある。
また、赤外線センサAは、図1、図2および図9に示すように、各列の複数の熱型赤外線検出部3の感温部30の一端が上述のMOSトランジスタ4を介して各列ごとに共通接続された複数の垂直読み出し線7と、各行の熱型赤外線検出部3の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続された複数の水平信号線6とを備えている。また、赤外線センサAは、各列のMOSトランジスタ4のp+形ウェル領域41が各列ごとに共通接続された複数のグラウンド線8と、各グラウンド線8が共通接続された共通グラウンド線9を備えている。さらに、赤外線センサAは、各列の複数個の熱型赤外線検出部3の感温部30の他端が各列ごとに共通接続された複数の基準バイアス線5を備えている。しかして、赤外線センサAは、全ての熱型赤外線検出部3の感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。要するに、本実施形態の赤外線センサAは、半導体基板1の上記一表面側に、熱型赤外線検出部3と当該熱型赤外線検出部3に並設され当該熱型赤外線検出部3の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4とを有する複数の画素部2が形成されている。
ここで、MOSトランジスタ4は、ゲート電極46が水平信号線6に接続され、ソース電極48が感温部30を介して基準バイアス線5に接続され、ドレイン電極47が垂直読み出し線7に接続されている。ここで、各水平信号線6それぞれは、各別の画素選択用のパッドVselに電気的に接続され、各基準バイアス線5は、共通基準バイアス線5aに共通接続され、各垂直読み出し線7それぞれは、各別の出力用のパッドVoutに電気的に接続されている。また、共通グラウンド線9は、グラウンド用のパッドGndに電気的に接続され、共通基準バイアス線5aは、基準バイアス用のパッドVrefと電気的に接続され、半導体基板1は、基板用のパッドVddに電気的に接続されている。
しかして、MOSトランジスタ4が、順次、オン状態になるように各画素選択用のパッドVselの電位を制御することで各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。例えば、基準バイアス用のパッドVrefの電位を1.65、グラウンド用のパッドGndの電位を0V、基板用のパッドVddの電位を5Vとしておき、画素選択用のパッドVselの電位を5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、出力用のパッドVoutから画素部2の出力電圧(1.65V+感温部30の出力電圧)が読み出される。また、画素選択用のパッドVselの電位を0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、出力用のパッドVoutから画素部2の出力電圧は読み出されない。なお、図8では、図9における画素選択用のパッドVsel、基準バイアス用のパッドVref、グラウンド用のパッドGnd、出力用のパッドVoutなどを区別せずに、全てパッド80として図示してある。
以下、熱型赤外線検出部3およびMOSトランジスタ4それぞれの構造について説明する。なお、本実施形態では、上述の半導体基板1として、導電形がn形で上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いている。
各画素部2の熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の形成用領域A1(図2参照)に形成されている。また、各画素部2のMOSトランジスタ4は、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2(図2参照)に形成されている。
赤外線センサAは、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成されている。熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備えている。第1の薄膜構造部3aは、赤外線を吸収する赤外線吸収部33(図2(b)参照)と、感温部30とを備えている。また、第1の薄膜構造部3aは、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、互いに対向する第2の薄膜構造部3aaどうしを連結し第2の薄膜構造部3aaにかかる応力を緩和する応力緩和構造部3cとを有している。なお、図1の例の熱型赤外線検出部3では、複数の線状のスリット13を設けることにより、第1の薄膜構造部3aが6つの第2の薄膜構造部3aaに分離されている。以下では、第1の赤外線吸収部33のうち第2の薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を第2の赤外線吸収部33aと称する。
熱型赤外線検出部3は、第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられている。ここで、サーモパイル30aは、温接点T1が、第2の薄膜構造部3aaに設けられ、冷接点T2が、支持部3dに設けられている。要するに、温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる第1の領域に形成され、冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない第2の領域に形成されている。
また、熱型赤外線検出部3の感温部30は、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で、全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。図1の例では、感温部30は、6個のサーモパイル30aを直列接続してある。ただし、上述の接続関係は、複数個のサーモパイル30aの全てを直列接続する接続関係に限らない。例えば、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続すれば、6個のサーモパイル30aが並列接続されている場合や、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて、感度を高めることができる。また、6個のサーモパイル30aの全てが直列接続されている場合に比べて、感温部30の電気抵抗を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。
ここで、熱型赤外線検出部3では、第2の薄膜構造部3aaごとに、支持部3dと第2の赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の周方向に離間して形成されている。これにより、2つのブリッジ部3bb,3bbと第2の赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視コ字状のスリット14が形成されている。熱型赤外線検出部3のうち、平面視において薄膜構造部3aを囲む部位である支持部3dは、矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、上述の各スリット13,14により、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dそれぞれとの連結部位以外の部分が、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dと空間的に分離されている。ここで、第2の薄膜構造部3aaは、支持部3dからの延長方向の寸法を93μm、この延長方向に直交する幅方向の寸法を75μmとし、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
第1の薄膜構造部3aは、半導体基板1の上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜1bと、当該シリコン酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、当該シリコン窒化膜32上に形成された感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。なお、層間絶縁膜50は、BPSG膜により構成し、パッシベーション膜60は、PSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜により構成してあるが、これらの層構造や材料は特に限定するものではない。
上述の熱型赤外線検出部3では、シリコン窒化膜32のうち第1の薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が第1の赤外線吸収部33を構成している。また、支持部3dは、シリコン酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とで構成されている。
また、赤外線センサAは、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、半導体基板1の上記一表面側において、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されており、この積層膜のうち、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が赤外線吸収膜70(図2(b)参照)を兼ねている。ここで、赤外線吸収膜70の屈折率をn2、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4n2に設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n2=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を0.5μm、NSG膜の膜厚を0.5μm)としてある。また、赤外線吸収膜70は、上述の構成に限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
サーモパイル30aは、シリコン窒化膜32上で第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨って形成されたn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との一端部同士を第2の赤外線吸収部33aの赤外線入射面側で金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部36により電気的に接続した複数個(図1に示した例では、9個)の熱電対を有している。また、サーモパイル30aは、半導体基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部37により接合され電気的に接続されている。ここで、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と接続部36とで温接点T1を構成している。また、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と接続部37とで冷接点T2を構成している。
ここにおいて、本実施形態の赤外線センサAでは、上述の空洞部11の形状が四角錘状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっている。これに対して、第1の薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように各熱型赤外線検出部3におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。すなわち、図1の上下方向における真ん中の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図1および図3に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向に沿って接続部36を並べて配置してあるのに対し、当該上下方向における上側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図1および図4に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に接続部36を集中して配置してあり、当該上下方向における下側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図1に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に接続部36を集中して配置してある。しかして、本実施形態の赤外線センサAでは、図1の上下方向における上側、下側の第2の薄膜構造部3aaの複数の接続部36の配置が、真ん中の第2の薄膜構造部3aaの複数の接続部36の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上できる。
また、第2の薄膜構造部3aaは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、赤外線を吸収するn形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39(図1、図2参照)が形成されている。この赤外線吸収層39は、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制する機能も有している。
ところで、本実施形態では、熱型赤外線検出部3の空洞部11の内周形状が矩形状であり、応力緩和構造部3cは、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において並んだ第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。ここで、応力緩和構造部3cは、第2の薄膜構造部3aaよりも、ばね定数が小さい。この応力緩和構造部3cは、第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する第3の薄膜構造部3acに、多数の孔3gを設けることで形成してある。この孔3gは、第3の薄膜構造部3acの厚み方向に貫通しており、空洞部11と連通している。しかして、応力緩和構造部3は、応力緩和構造部3cと当該応力緩和構造部3cに連結された第2の薄膜構造部3aa,3aaとの並ぶ方向のばね定数が、この方向における第2の薄膜構造部3aa,3aaのばね定数よりも小さくなっている。また、本実施形態では、第3の薄膜構造部3acに4つの孔3gが形成されているが、これらの孔3gそれぞれを、隣り合うスリット13と連続して形成してある。
また、第3の薄膜構造部3acの孔3gは、矩形状に開口されているが、第3の薄膜構造部3acにおける孔3gの周部での応力集中を緩和するために、孔3gの内周面に面取り部3hを設けてある。しかして、面取り部3hが形成されていない場合に比べて、第3の薄膜構造部3acにおける孔3gの周部での応力集中を緩和でき、製造時に発生する残留応力を低減できるとともに製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。また、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止することが可能となる。
第3の薄膜構造部3acは、第1の薄膜構造部3aと同様に、半導体基板1の上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜1bと、当該シリコン酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、当該シリコン窒化膜32上に形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。
また、赤外線センサAは、各熱型赤外線検出部3に、支持部3dと一方のブリッジ部3bbと第2の赤外線吸収部33aと他方のブリッジ部3bbと支持部3dとに跨るように引き回されたn形ポリシリコン層からなる故障診断用の配線(以下、故障診断用配線と称する)139を設けて、全ての故障診断用配線139を直列接続してある。しかして、m×n個の故障診断用配線139の直列回路へ通電することで、ブリッジ部3bbの折れなどの破損の有無を検出することができる。
上述の赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34と同時に形成されている。また、p形ポリシリコン層35のp形不純物として例えばボロンを採用すればよく、不純物濃度を例えば1018〜1020cm−3程度の範囲で適宜設定すればよい。本実施形態では、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図れる。なお、赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、p形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてもよい。
ところで、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139の屈折率をn1、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの厚さt1をλ/4n1に設定するようにしている。しかして、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n1=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
また、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であるので、赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することができて、感温部30の出力のS/N比を高めることができる。また、赤外線吸収層39および故障診断用配線139をn形ポリシリコン層34と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
ここで、感温部30の接続部36と接続部37とは、半導体基板1の上記一表面側において、層間絶縁膜50によって絶縁分離されている(図5および図6参照)。すなわち、温接点T1側の接続部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a1,50a2を通して、両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続されている。また、冷接点T2側の接続部37は、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a3,50a4を通して、両ポリシリコン層34,35の上記各他端部と電気的に接続されている。
また、本実施形態では、応力緩和構造部3cのヤング率が、第2の薄膜構造部3aaのヤング率よりも小さくなっている。ここで、第3の薄膜構造部3acおよび第2の薄膜構造部3aaそれぞれが複数の薄膜の積層構造を有している場合、半導体基板1側からi番目(i=1,・・・,n)の薄膜の材料のヤング率をEiとすると、応力緩和構造部3c、第2の薄膜構造部3aaそれぞれのヤング率Eは、下記(1)式で各別に計算することができる。ここにおいて、第3の薄膜構造部3acに孔3gを形成することで形成された応力緩和構造部3cに関するヤング率の計算にあたっては、シリコン酸化膜1b、シリコン窒化膜32、層間絶縁膜50、パッシベーション膜60それぞれを薄膜とし、第2の薄膜構造部3aaでは、シリコン酸化膜1b、シリコン窒化膜32、層間絶縁膜50、パッシベーション膜60それぞれを薄膜とする。また、第2の薄膜構造部3aaに関するヤング率の計算にあたっては、シリコン酸化膜1b、シリコン窒化膜32、ポリシリコン層(n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と故障診断用配線139とをまとめて1層のポリシリコン層とみなす)、層間絶縁膜50、パッシベーション膜60それぞれを薄膜とする。
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。
MOSトランジスタ4は、図2および図7に示すように、半導体基板1の上記一表面側にp+形ウェル領域41が形成され、p+形ウェル領域41内に、n+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44とが離間して形成されている。さらに、p+形ウェル領域41内には、n+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44とを囲むp++形チャネルストッパ領域42が形成されている。
p+形ウェル領域41においてn+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。
また、n+形ドレイン領域43上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、n+形ソース領域44上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。
ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50によって絶縁分離されている。ここで、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してn+形ドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してn+形ソース領域44と電気的に接続されている。
赤外線センサAの各画素部2では、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が基準バイアス線5に電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が垂直読み出し線7と電気的に接続され、ゲート電極46が当該ゲート電極46と連続一体に形成されたn形ポリシリコン配線からなる水平信号線6と電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のp++形チャネルストッパ領域42上に、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるグラウンド用の電極(以下、グラウンド用電極と称する)49が形成されている。このグラウンド用電極49は、当該p++形チャネルストッパ領域42をn+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44よりも低電位にバイアスして素子分離するための共通グラウンド線8と電気的に接続されている。なお、グラウンド用電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してp++形チャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
以下、赤外線センサAの製造方法について図10〜図13を参照しながら簡説明する。
まず、シリコン基板からなる半導体基板1の上記一表面側に第1の所定膜厚(例えば、0.3μm)の第1のシリコン酸化膜31と第2の所定膜厚(例えば、0.1μm)のシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して当該絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域A2に対応する部分をエッチング除去する絶縁層パターニング工程を行うことによって、図10(a)に示す構造を得る。ここにおいて、シリコン酸化膜31は、半導体基板1を所定温度(例えば、1100℃)で熱酸化することにより形成し、シリコン窒化膜32は、LPCVD法により形成している。
上述の絶縁層パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側にp+形ウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行い、続いて、半導体基板1の上記一表面側におけるp+形ウェル領域41内にp++形チャネルストッパ領域42を形成するチャネルストッパ領域形成工程を行うことによって、図10(b)に示す構造を得る。ここで、ウェル領域形成工程では、まず、半導体基板1の上記一表面側の露出部位を所定温度で熱酸化することにより第2のシリコン酸化膜(熱酸化膜)51を選択的に形成する。その後、p+形ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン酸化膜51をパターニングする。続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、p+形ウェル領域41を形成する。また、チャネルストッパ領域形成工程では、半導体基板1の上記一表面側を所定温度で熱酸化することにより第3のシリコン酸化膜(熱酸化膜)52を選択的に形成する。その後、p++形チャネルストッパ領域42を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第3のシリコン酸化膜52をパターニングする。続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、p++形チャネルストッパ領域42を形成する。なお、第1のシリコン酸化膜31と第2のシリコン酸化膜51と第3のシリコン酸化膜52とで、半導体基板1の上記一表面側のシリコン酸化膜1bを構成している。
上述のチャネルストッパ領域形成工程の後、n+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44を形成するソース・ドレイン形成工程を行う。このソース・ドレイン形成工程では、p+形ウェル領域41におけるn+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44それぞれの形成予定領域にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブを行うことによって、n+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44を形成する。
ソース・ドレイン形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側に熱酸化により所定膜厚(例えば、600Å)のシリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側の全面にゲート電極46、水平信号線6(図1参照)、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139の基礎となる所定膜厚(例えば、0.69μm)のノンドープポリシリコン層をLPCVD法により形成するポリシリコン層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記ノンドープポリシリコン層のうちゲート電極46、水平信号線6、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139それぞれに対応する部分が残るようにパターニングするポリシリコン層パターニング工程を行う。続いて、上記ノンドープポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35に対応する部分にp形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりp形ポリシリコン層35を形成するp形ポリシリコン層形成工程を行う。その後、上記ノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および水平信号線6に対応する部分にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および水平信号線6を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図11(a)に示す構造を得る。なお、p形ポリシリコン層形成工程とn形ポリシリコン層形成工程との順序は逆でもよい。
上述のp形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程が終了した後、半導体基板1の上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して層間絶縁膜50に各コンタクトホール50a1,50a2,50a3,50a4,50d,50e,50f(図5〜図7参照)を形成するコンタクトホール形成工程を行うことによって、図11(b)に示す構造を得る。層間絶縁膜形成工程では、半導体基板1の上記一表面側に所定膜厚(例えば、0.8μm)のBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された層間絶縁膜50を形成する。
上述のコンタクトホール形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側の全面に接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなど(図9参照)の基礎となる所定膜厚(例えば、2μm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法などにより形成する金属膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることで接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなどを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図12(a)に示す構造を得る。なお、金属膜パターニング工程におけるエッチングはRIEにより行っている。
上述の金属膜パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)に所定膜厚(例えば、0.5μm)のPSG膜と所定膜厚(例えば、0.5μm)のNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60をCVD法により形成するパッシベーション膜形成工程を行うことによって、図12(b)に示す構造を得る。なお、パッシベーション膜60は、PSG膜とNSG膜との積層膜に限らず、例えば、シリコン窒化膜でもよい。
上述のパッシベーション膜形成工程の後、シリコン酸化膜31、シリコン窒化膜32、層間絶縁膜50、パッシベーション膜60などを備え、感温部30などが埋設された積層構造部をパターニングすることにより、第2の薄膜構造部3aaおよび応力緩和構造部3cを形成する積層構造部パターニング工程を行うことによって、図13(a)に示す構造を得る。なお、積層構造部パターニング工程において、各スリット13,14および孔3gを形成している。
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndを露出させる開口部(図示せず)を形成する開口部形成工程を行う。次に、各スリット13,14および各孔3gをエッチング液導入孔としてエッチング液を導入し半導体基板1を異方性エッチング(結晶異方性エッチング)することにより半導体基板1に空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことで、図13(b)に示す構造の赤外線センサAを得る。ここで、開口部形成工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、空洞部形成工程では、エッチング液として所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液を用いているが、エッチング液はTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、KOH溶液など)を用いてもよい。なお、空洞部形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサAに分離する分離工程を行えばよい。また、上述の説明から分かるように、MOSトランジスタ4の製造方法に関してみれば、周知の一般的なMOSトランジスタの製造方法を採用しており、熱酸化による熱酸化膜の形成、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術による熱酸化膜のパターニング、不純物のイオン注入、ドライブイン(不純物の拡散)の基本工程を繰り返すことにより、p+形ウェル領域41、p++形チャネルストッパ領域42、n+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44を形成している。
以上説明したように、本実施形態の赤外線センサAでは、熱型赤外線検出部3が、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備え、第1の薄膜構造部3aが、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、互いに対向する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結し第2の薄膜構造部3aaにかかる応力を緩和する応力緩和構造部3cとを有し、各第2の薄膜構造部3aaごとに第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨ってサーモパイル30aが設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。しかして、本実施形態の赤外線センサAでは、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されていることにより、感度の向上を図れる。また、本実施形態の赤外線センサAでは、第1の薄膜構造部3aが、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、互いに対向する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結し第2の薄膜構造部3aaにかかる応力を緩和する応力緩和構造部3cとを有し、各第2の薄膜構造部3aaごとに第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨ってサーモパイル30aが設けられていることにより、サーモパイル30aにかかる応力を低減することが可能となり、製品ごとの感度のばらつきや、実装基板などへの実装による外部応力を応力緩和構造部3cにおいて吸収することができ、外部応力に起因した特性の劣化、変動などを抑制することが可能となる。要するに、本実施形態の赤外線センサAでは、各第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
また、上述した赤外線センサAの製造方法では、半導体基板1の上記一表面側に熱型赤外線検出部3を形成した後で、スリット13,14および応力緩和構造部3cの孔3gを通して半導体基板1の一部を上記一表面側から結晶異方性エッチングすることにより空洞部11を形成するので、感度の向上を図れ、且つ、サーモパイル30aにかかる応力を低減することが可能な赤外線センサAを提供することができる。
また、本実施形態の赤外線センサAにおいては、応力緩和構造部3cのばね定数が、第2の薄膜構造部3aaのばね定数よりも小さいので、第2の薄膜構造部3aaに比べて応力緩和構造部3cの方が変形しやすく、応力緩和構造部3cにおいて効果的に応力を緩和することが可能となる。ここにおいて、本実施形態の赤外線センサAでは、応力緩和構造部3cと当該応力緩和構造部3cに連結された第2の薄膜構造部3aaとの並ぶ方向のばね定数に関して、応力緩和構造部3cのばね定数が、第2の薄膜構造部3aaのばね定数よりも小さいので、応力緩和構造部3cが当該応力緩和構造部3cと第2の薄膜構造部3aaとの並ぶ方向(つまり、平面方向)に容易に変形することができ、効果的に応力を緩和することが可能となる。
また、本実施形態の赤外線センサAは、上述の空洞部11を四角錘状に形成するので、半導体基板1が、上記一表面が(100)面のシリコン基板を用いて形成される場合に、空洞部11をアルカリ系溶液による結晶異方性エッチングによって容易に形成することができる。
また、本実施形態の赤外線センサAでは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側に、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35の他に、赤外線吸収層39および故障診断用配線139が形成されているので、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35の形成時にシリコン窒化膜32がエッチングされて薄くなるのを抑制する(ここでは、上述のポリシリコン層パターニング工程でn形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35の基礎となるノンドープポリシリコン層をエッチングする際のオーバーエッチング時にシリコン窒化膜32がエッチングされて薄くなるのを抑制する)ことができるとともに第1の薄膜構造部3aの応力バランスの均一性を高めることができ、赤外線吸収部33の薄膜化を図りながらも第2の薄膜構造部3aaの反りを防止することが可能となり、感度の向上を図れる。ここで、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、故障診断用配線139は、上述の空洞部形成工程において用いるエッチング液(例えば、TMAH溶液など)によりエッチングされるのを防止するため、スリット13,14の内側面に露出しないように平面視形状を設計する必要がある。
また、本実施形態の赤外線センサAでは、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と故障診断用配線139とが同一の厚さに設定されているので、第2の薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制することができる。
また、本実施形態の赤外線センサAは、各画素部2ごとに感温部30の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4を有しているので、出力用のパッドVoutの数を少なくでき、小型化および低コスト化を図れる。
(実施形態2)
本実施形態の赤外線センサAの基本構成は実施形態1と略同じであって、図14に示すように、半導体基板1における空洞部11が、半導体基板1の厚み方向に貫設されている点のみが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
ところで、実施形態1では、空洞部11を形成する空洞部形成工程において、半導体基板1の上記一表面側からスリット13,14および孔3gを通してエッチング液を導入して半導体基板1を結晶異方性エッチングすることで空洞部11を形成している。
これに対して、本実施形態の赤外線センサAの製造にあたっては、空洞部11を形成する空洞部形成工程において、半導体基板1の上記一表面とは反対の他表面側から、半導体基板1における空洞部11の形成予定領域を、例えば誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置を用いた異方性エッチング技術を利用して形成すればよい。
しかして、本実施形態の赤外線センサAによれば、第1の薄膜構造部3aの第2の薄膜構造部3aaから半導体基板1への熱伝達をより抑制することができ、より一層の高感度化を図れる。
(実施形態3)
図15に示す本実施形態の赤外線センサAの基本構成は実施形態1と略同じであり、応力緩和構造部3cの配置および形状などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
ところで、実施形態1の赤外線センサAにおいては、応力緩和構造部3cが、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
これに対して、本実施形態の赤外線センサAでは、応力緩和構造部3cが、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において並んだ第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
ここで、本実施形態の赤外線センサAでは、平面視で上記延長方向において隣接する第2の薄膜構造部33a,33a同士が、上記延長方向に直交する方向の全長に亘って応力緩和構造部3cにより連結されている。また、応力緩和構造部3cは、多数の孔3gが仮想的な二次元正方格子の各格子点に対応する部位に形成されている。ここにおいて、二次元正方格子は、基本単位となる正方形の一方の対角線が上記延長方向に一致し、他方の対角線が上記延長方向に直交する方向に一致するように規定している。
本実施形態の赤外線センサAの製造方法は、実施形態1で説明した製造方法と略同じであり、一部相違するだけなので相違点について説明する。
本実施形態の赤外線センサAの製造方法では、応力緩和構造部3cに、シリコン窒化膜32が残らないように、実施形態1で説明した絶縁層パターニング工程において、シリコン窒化膜32のうち応力緩和構造部3cに対応する部位をエッチング除去する。また、応力緩和構造部3cに、ポリシリコン層が残らないように、ポリシリコン層パターニング工程において、ポリシリコン層のうち応力緩和構造部3cに対応する部位をエッチング除去する。しかして、本実施形態の赤外線センサでは、実施形態1に比べて、応力緩和構造部3cのばね定数を小さくすることができる。
また、実施形態1で説明した赤外線センサAの製造方法では、積層構造部パターニング工程により各スリット13,14および孔3gが形成されることで、図17(a)に示す構造が得られ、その後、空洞部形成工程により空洞部11を形成することで、図17(d)に示す構造が得られる。この空洞部11を形成する際の結晶異方性エッチングは、図17(b)→図17(c)→図17(d)のように進行する。すなわち、まず、半導体基板1の上記一表面のうちスリット13,14および孔3gにより露出した部位が結晶異方性エッチングされ(図17(b))、その後、結晶異方性エッチングが進行することにより第2の薄膜構造部3aaの直下の一部がなくなり(図17(c))、さらに結晶異方性エッチングが進行することにより第2の薄膜構造部3aaが半導体基板1から完全に分離されて空洞部11が形成される。
本実施形態における応力緩和構造部3cの孔3gは、半導体基板1の結晶異方性エッチングの開始後に隣り合う孔3g同士、隣り合う孔3gとスリット13とが、半導体基板1の上記一表面における空洞部11の形成予定領域の一部に形成された凹部の内部空間を介して連通するように配置してある。
しかして、本実施形態の赤外線センサAの製造時には、積層構造部パターニング工程を行うことにより図16(a)に示す構造を得た後で、空洞部形成工程において結晶異方性エッチングを行うことにより、図16(b)の斜線部→図16(c)の斜線部→図16(d)の斜線部のようにエッチングが進行する。ここにおいて、図16(c)および図17(c)に示すように半導体基板1のうち第2の薄膜構造部3aa直下の部位がエッチング除去されることにより、第2の薄膜構造部3aaの残留応力が開放され、半導体基板1の上記一表面側の角部付近(図16(c)、図17(c)において矢印で指した付近)に応力が集中して第2の薄膜構造部3aaが破壊される可能性があるが、応力緩和構造部3cにより応力を吸収することができ、第2の薄膜構造部3aaの応力を緩和することができるから、製造時の歩留まりを向上できる。
本実施形態の赤外線センサAによれば、応力緩和構造部3cが、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結しているので、第2の薄膜構造部3aa,3aaの一端側が支持部3dに直接支持される一方で、他端側が応力緩和構造部3cと別の第2の薄膜構造部3aaとを介して支持部3dに支持され、結果的に、各第2の薄膜構造部3aaが支持部3dに両持ち支持されるから、第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、感度が安定するとともに、製造歩留まりが向上する。なお、2つの薄膜構造部33a,33a同士を連結する応力緩和構造部3cは、複数に分割して設けてもよい。
(実施形態4)
図18および図19に示す本実施形態の赤外線センサAの基本構成は実施形態3と略同じであり、応力緩和構造部3cの配置および形状が相違する。なお、実施形態3と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態における応力緩和構造部3cは、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に並んだ第2の薄膜構造部3aa,33a同士だけでなく、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向(第2の薄膜構造部3aaの幅方向、つまり、図18の上下方向)において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士も連結している。なお、応力緩和構造部3cは、第2の薄膜構造部3aaのうちブリッジ部3bbから遠い部位に設けることが好ましい。
本実施形態の赤外線センサAによれば、応力緩和構造部3cが、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結しているので、各第2の薄膜構造部3aaのねじり剛性が大きくなって、各第2の薄膜構造部3aaのねじり変形を低減でき、感度が安定するとともに、製造歩留まりが向上する。
ここにおいて、本実施形態の赤外線センサAでは、実施形態3と同様、半導体基板1の上記一表面が(100)面であり、この半導体基板1の結晶方位に基づいて方向を規定すれば、半導体基板1の孔3gにより露出する領域の外接する<110>方向の接線によりできる矩形(図19(a)中に破線で示してある)が、隣り合う孔3gにより露出する領域の外接する<110>方向の接線によりできる矩形(図19(a)中に破線で示してある)と重なるように多数の孔3gを配置してある。しかして、空洞部形成工程での半導体基板1の結晶異方性エッチングの開始後に速やかに隣り合う孔3g同士が半導体基板1の上記一表面側にエッチング領域を通して連通し、応力緩和構造部3cの応力緩和機能が直ちに発揮できるようになる。
なお、応力緩和構造部3cは、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士のみを連結するように設けてもよい。また、実施形態2,3における孔3gの配置は、本実施形態の孔3gの配置と同様である。
(実施形態5)
図20に示す本実施形態の赤外線センサAの基本構成は実施形態4と略同じであり、応力緩和構造部3cの積層構造が相違する。なお、実施形態4と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の赤外線センサAにおける応力緩和構造部3cは、シリコン酸化膜1b上のシリコン窒化膜32上に、n形ポリシリコン層からなる補強層39bが形成されており、シリコン窒化膜32の表面側で補強層39bを覆うように層間絶縁膜50が形成され、層間絶縁膜50上にパッシベーション膜60が形成されている。
ここで、補強層39bは、応力緩和構造部3cにおける第3の薄膜構造部3acの機械的強度を高めるために設けたものである。なお、本実施形態のように半導体基板1がシリコン基板であり、補強層39bがn形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、平面視において補強層39bの側縁が露出しないように、補強層39bを配置する必要がある。
補強層39bは、サーモパイル30aのn形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34と同時に形成されている。また、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。
しかして、本実施形態の赤外線センサAでは、応力緩和構造部3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止でき、また、製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。
(実施形態6)
図21に示す本実施形態の赤外線センサAの基本構成は実施形態4と略同じであり、応力緩和構造部3cの形状が相違する。なお、実施形態4と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の赤外線センサAにおける応力緩和構造部3cは、コルゲート板状(波形板状)に形成されている。しかして、本実施形態では、孔3gを設けることなく応力緩和構造部3cのばね定数を低減でき、応力緩和構造部3cのばね定数をより小さくすることが可能となるとともに、応力緩和構造部3cの破損する可能性を低減できる。
コルゲート板状の応力緩和構造部3cの形成にあたっては、実施形態1にて説明した絶縁層形成工程の前に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して図22(a)に示すように半導体基板1の上記一表面側において応力緩和構造部3cの形成予定領域に複数の凹溝1dを形成し、その後、シリコン酸化膜1b、シリコン窒化膜32を順次形成すればよい。そして、最終的に空洞部形成工程においてスリット131,14を通して空洞部11を形成することにより応力緩和構造部3cを半導体基板1から分離すればよい。ここで、凹溝1dを形成する際のエッチングは、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングでもよいし、ウェットエッチングでもよい。
なお、他の実施形態において応力緩和構造部3cをコルゲート板状に形成してもよい。
ところで、上記各実施形態の赤外線センサAは、各画素部2にMOSトランジスタ4を設けてあるが、MOSトランジスタ4は必ずしも設ける必要はない。
また、赤外線センサAは、必ずしも画素部2をアレイ状に備えた赤外線アレイセンサである必要はなく、少なくとも1つの熱型赤外線検出部3を備えたものであればよい。