以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。この実施の形態に係る近距離無線通信装置は、例えば携帯電話機やデジタルカメラ、PDA、ラップトップPC等、バッテリ駆動する電子機器に設けられるものである。以下の説明では、携帯電話機に搭載される、近距離無線通信装置を例に挙げて説明する。
図1は、近距離無線通信機能を備えた携帯電話機の構成を示している。この携帯電話機は、主な構成要素として、無線通信部10と、表示部20と、通話部30と、操作部40と、カメラ部41と、記憶部50と、近距離無線通信部60と、GPS(global positioning system)受信部70と、モーションセンサ部80と、電源部90と、主制御部100とを備える。また、通信機能としては、基地局装置BS及び移動通信網NWを介した移動無線通信機能と、近距離無線通信機能を有する対向機器と無線通信を行なう近距離無線通信機能とを備える。
無線通信部10は、主制御部100の指示にしたがって、移動通信網NWに収容された基地局装置BSと無線通信を行なうものであって、これにより、音声データや電子メールデータ等の送受信、Webデータやストリーミングデータ等の受信を行なう。
表示部20は、主制御部100の制御により、画像(静止画像及び動画像)や文字情報等を表示して、視覚的にユーザに情報を伝達するものであり、当該携帯電話機の設定状態を示す情報等も表示する。
通話部30は、スピーカ31やマイクロホン32を備え、マイクロホン32を通じて入力されたユーザの音声を、主制御部100にて処理可能な音声データに変換して主制御部100に出力したり、無線通信部10あるいは近距離無線通信部60により受信された音声データを復号してスピーカ31から出力したりするものである。
操作部40は、複数のキースイッチ等を備え、これを通じてユーザから指示を受け付けるものである。
カメラ部41は、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)やCCD(charge-coupled device)等の撮像素子を用いて電子撮影するデジタルカメラであって、主制御部100の制御により、撮像によって得た画像データを例えばJPEG(joint photographic coding experts group)等の圧縮した画像データに変換し、後述する記憶部50に記録する。
記憶部50は、主制御部100の制御プログラムや制御データ、アプリケーションソフトウェア、通信相手の名称や電話番号等を対応づけたアドレスデータ、送受信した電子メールのデータ、WebブラウジングによりダウンロードしたWebデータや、ダウンロードしたコンテンツデータを記憶し、またストリーミングデータ等を一時的に記憶するものである。なお、記憶部50は、HDD、RAM、ROM、ICメモリ等の1つまたは複数の記憶手段を含むものである。
近距離無線通信部60は、近距離無線通信機能を有する対向機器(例えば、他の携帯電話機MS)と、例えば赤外線や電波等を用いて無線通信を行なうものであって、主制御部100によって動作設定がなされ、主制御部100から与えられる送信データを赤外線光や電波で送信したり、対向機器から赤外線光や電波で送信されるデータを受信し、これを受信データとして主制御部100に出力したりする。
GPS受信部70は、主制御部100の指示にしたがって、GPS衛星ST1〜STnから送信されるGPS信号を受信し、受信した複数のGPS信号に基づく測位演算処理を実行し、当該携帯電話機の緯度、経度、高度からなる位置情報を検出する。
モーションセンサ部80は、例えば3軸の加速度センサ等を備え、主制御部100の指示にしたがって、当該携帯電話機の物理的な動きを検出する。これにより、当該携帯電話機が動く方向や早さが検出される。この検出結果は、主制御部100に出力される。
電源部90は、主制御部100の指示にしたがって、当該携帯電話機の各部に、バッテリ(図示しない)に蓄えられる電力を供給するものである。
主制御部100は、マイクロプロセッサを備え、記憶部50が記憶する制御プログラムや制御データにしたがって動作し、当該携帯電話機の各部を統括して制御するものであって、無線通信部10を通じて、音声通信やデータ通信を行なうために、通信系の各部を制御する移動通信制御機能と、アプリケーション処理機能を備える。
アプリケーション処理機能は、記憶部50が記憶するアプリケーションソフトウェアにしたがって主制御部100が動作することにより実現するものであって、例えば、近距離無線通信部60を制御して対向機器とデータ通信を行なう近距離無線通信機能や、電子メールの送受信を行なう電子メール機能、Webページを閲覧するWebブラウジング機能等がある。
また、主制御部100は、受信データやダウンロードしたストリーミングデータ等の画像データ(静止画像や動画像のデータ)に基づいて、映像を表示部20に表示したりする画像処理機能を備える。この画像処理機能は、主制御部100が、上記画像データを復号し、この復号データに画像処理を施して、画像を表示部20に表示する。
そして、主制御部100は、ユーザからの指示なしに近距離無線通信部60を間欠的に動作させることで、近距離無線通信を容易に行なえるようにしている。なお、近距離無線通信部60により送受信されるデータは、画像データに限らず、アドレスデータや、テキストデータをはじめとする種々のドキュメントファイル、実行形式のデータファイル等種々の形式のデータを送受信可能である。
すなわち、主制御部100は、図2に示すように、近距離無線通信部60を制御する機能として、近距離無線通信部60への電力供給を制御してON/OFF制御を行なう電源制御機能100aと、任意の経過時間を測定するタイマー機能100bと、当該携帯電話機の状態を検出及び判定する状態判定機能100cと、近距離無線通信により取得したデータの記録/削除等を行なうデータ記録機能100dと、近距離無線通信によって受信したデータを判定する受信データ判別処理機能100eと、操作部40を通じたユーザ操作を検出するユーザ操作検出機能100fとを備える。
次に、上記構成の携帯電話機の動作について説明する。以下の説明では特に、近距離無線通信部60を用いた無線通信の動作について説明する。図3に示すフローチャートは、主制御部100による近距離無線通信部60に対する制御動作を説明するものであって、当該携帯電話機の電源が投入されると、電源がオフにされるまでの少なくとも一部の期間で繰り返し実行する。
まずステップ3aにおいて主制御部100は、電源制御機能100aによって近距離無線通信部60への電力供給を開始して、近距離無線通信部60を動作させ、赤外線や電波等を用いた無線による信号の受信を待機する状態にし、ステップ3bに移行する。
ステップ3bにおいて主制御部100は、タイマー機能100bによる計時を開始させて(既に動作中の場合は、0から再開させて)、ステップ3cに移行する。ここで計時される時間は、近距離無線通信部60が動作している時間に相当するものである。
ステップ3cにおいて主制御部100は、状態判定機能100cにより、GPS受信部70が検出した位置情報と、ユーザの指定により記憶部50に記憶された領域情報を比較し、現在位置が上記領域情報で示される範囲内であるか否かを判定する。ここで、現在位置が上記領域情報で示される範囲内である場合には、ステップ3dに移行し、一方、現在位置が上記領域情報で示される範囲外の場合には、ステップ3iに移行する。なお、領域情報は、ユーザによって任意に登録された領域の座標(緯度、経度、高度)の範囲を示すものであって、赤外線通信を許可するエリア(通信を許可しないエリア外のエリア)に相当する。
ステップ3dにおいて主制御部100は、状態判定機能100cにより、無線通信部10による移動通信(音声通信やデータ通信)が行なわれているか否かを判定する。ここで、移動通信が行なわれている場合には、ステップ3iに移行し、一方、移動通信が行なわれていない場合には、ステップ3eに移行する。
ステップ3eにおいて主制御部100は、状態判定機能100cにより、モーションセンサ部80の検出結果を予め記憶部50に記録しておいた検出パターンと比較して、当該携帯電話機をユーザが持ち運んだり、手に握っている状態にあるか否かを判定する。すなわち、モーションセンサ部80の検出結果が、予め設定した検出パターンに所定レベル内で類似しているか否かを判定する。ここで、モーションセンサ部80の検出結果が、予め設定したパターンに類似した動きである場合には、ステップ3fに移行し、一方、予め設定したパターンに類似した動きを検出しない場合には、ステップ3iに移行する。
ステップ3fにおいて主制御部100は、ステップ3bでスタートしたタイマー機能100bによる計時時間tが、予め設定した時間T1(タイムアウト時間)に達したか否かを判定する。ここで、時間T1が経過した場合(記距離無線通信部60が一定時間以上、受信待機状態にあった場合)には、ステップ3iに移行し、一方、経過していない場合には、ステップ3gに移行する。
ステップ3gにおいて主制御部100は、他の近距離無線通信機器から近距離無線通信部60が無線通信を要求する信号を受信したか否かを判定する。ここで無線通信を要求する信号を受信した場合には、ステップ3hに移行し、一方、無線通信を要求する信号を受信していない場合には、ステップ3cに移行する。
ステップ3hにおいて主制御部100は、図4に示す近距離無線通信処理を開始する。詳細については後述する。
ステップ3iにおいて主制御部100は、電源制御機能100aによって近距離無線通信部60への電力供給を停止して、近距離無線通信部60の動作を停止させ、無線による信号の受信の待機をできない状態にし、ステップ3jに移行する。
ステップ3jにおいて主制御部100は、タイマー機能100bによる計時を0から再開させて、ステップ3kに移行する。ここで計時される時間は、近距離無線通信部60が動作していない時間に相当するものである。
ステップ3kにおいて主制御部100は、状態判定機能100cにより、GPS受信部70が検出した位置情報と、ユーザの指定により記憶部50に記憶された領域情報を比較し、現在位置が上記領域情報で示される範囲内であるか否かを判定する。ここで、現在位置が上記領域情報で示される範囲内である場合には、ステップ3nに移行し、一方、現在位置が上記領域情報で示される範囲外の場合には、ステップ3lに移行する。なお、領域情報は、ステップ3cと同様に、ユーザによって任意に登録された領域の座標(緯度、経度、高度)の範囲を示すものであって、赤外線通信を許可するエリア(通信を許可しないエリア外のエリア)に相当する。
ステップ3lにおいて主制御部100は、状態判定機能100cにより、モーションセンサ部80の検出結果を予め記憶部50に記録しておいた検出パターンと比較して、当該携帯電話機をユーザが持ち運んだり、手に握っている状態にあるか否かを判定する。すなわち、モーションセンサ部80の検出結果が、予め設定した検出パターンに所定レベル内で類似しているか否かを判定する。ここで、モーションセンサ部80の検出結果が、予め設定したパターンに類似した動きである場合には、ステップ3nに移行し、一方、予め設定したパターンに類似した動きを検出しない場合には、ステップ3mに移行する。
ステップ3mにおいて主制御部100は、ステップ3jでスタートしたタイマー機能100bによる計時時間tが、予め設定した時間T2(タイムアウト時間)に達したか否かを判定する。ここで、時間T2が経過した場合(近距離無線通信部60が一定時間以上、停止状態にあった場合)には、ステップ3nに移行し、一方、経過していない場合には、ステップ3kに移行する。
ステップ3nにおいて主制御部100は、状態判定機能100cにより、無線通信部10による移動通信(音声通信やデータ通信)が行なわれているか否かを判定する。ここで、移動通信が行なわれている場合には、ステップ3kに移行し、一方、移動通信が行なわれていない場合には、ステップ3aに移行する。
次に、図4を参照して、ステップ3hの近距離無線通信処理について説明する。まず、ステップ4aにおいて主制御部100は、近距離無線通信部60を制御して、他の近距離無線通信機器との間で、所定のプロトコルにしたがって、通信リンクを確立し、データ通信を行なって、上記近距離無線通信機器からデータを受信し、ステップ4bに移行する。
ステップ4bにおいて主制御部100は、データ記録機能100dにより、ステップ4aで受信したデータを記憶部50に記録して保存し、ステップ4cに移行する。
ステップ4cにおいて主制御部100は、データ記録機能100dにより、通信時刻、通信相手の識別情報、受信したデータのサイズ及び種類、ファイル名等をログとして記憶部50に記録して保存し、ステップ4dに移行する。
ステップ4dにおいて主制御部100は、受信データ判別処理機能100eにより、ステップ4bで保存したデータの種別を検出し、その種別が受信を許可されたものであるか否かを判定する。ここで、受信を許可されたものである場合には、ステップ4iに移行し、一方、受信を許可されたものでない場合には、ステップ4eに移行する。なお、受信を許可する種別については、記憶部50に予め記憶しておく。また、ここでの判定は、予め取得したウイルスのパターンファイルに基づいて、受信データに対してウイルスチェックを行なってもよい。
ステップ4eにおいて主制御部100は、データ記録機能100dにより、ステップ4cで記録したログに、有害なデータである可能性を有する旨を示す記録を追加して記憶部50に記録して保存し、ステップ4fに移行する。
ステップ4fにおいて主制御部100は、カメラ部41を制御して、写真撮影を行ない、これによって得た画像データを記憶部50に記録して、ステップ4gに移行する。ここで行なわれた自動撮影により、例えば周囲の状況が撮影され、これによって、有害データを当該携帯電話機に送りつけた者が撮影される可能性がある。
ステップ4gにおいて主制御部100は、ステップ4cでログに記録したファイル名のデータを、記憶部50から検出して消去(破棄)し、ステップ4hに移行する。
ステップ4hにおいて主制御部100は、無線通信部10を制御して、予め設定したe-mailアドレスに向けて、有害なデータを近距離無線通信によって受信した旨を示す電子メール送信し、ステップ3iに移行する。これによって上記e-mailアドレスのユーザに向けて、上記の旨を通知する。
一方、ステップ4iにおいて主制御部100は、ステップ4iに至る前の予め設定した時間の間に、ユーザ操作があったか否かを判定し、ユーザ操作があった場合には、ステップ4jに移行し、一方、ユーザ操作がない場合には、ステップ4nに移行する。ここでユーザ操作とは、操作部40に対する操作が考えられる。また、スライド式の筐体や開閉式の筐体等、外観の形状を変化させることが可能な携帯電話機の場合には、このような変化を検出するスイッチの検出結果に基づいて、上記ユーザ操作を判定する。
ステップ4jにおいて主制御部100は、ステップ4cでログに記録した通信相手の識別情報が、無線による信号の受信を拒否する対象者として、予め記憶部50に記録されているか否かを判定する。ここで、無線による信号の受信を拒否する対象者として、予め記憶部50に記録されている場合には、ステップ4nに移行し、一方、記録されていない場合には、ステップ4kに移行する。
ステップ4kにおいて主制御部100は、ステップ4bで記憶部50に保存したデータが、破損や欠落等がない完全に正常なデータであるか否かを判定する。ここで、正常なデータの場合には、ステップ4lに移行し、一方、正常なデータではない場合には、ステップ4nに移行する。
ステップ4lにおいて主制御部100は、表示部20を制御して、無線通信によるデータ受信が正常に終了した旨と、この受信したデータを保存してよいかを問う表示を行ない、ステップ4mに移行する。なお、視覚的な報知以外にも、音声やメロディ等の音によって報知するようにしてもよい。また、複数のデータを受信した旨を報知する場合には、データを識別する情報(ファイル名等)をリスト化して表示することにより、報知する。
ステップ4mにおいて主制御部100は、操作部40に対するユーザ操作を監視し、受信データを保存する操作がユーザから与えられたか否かを判定する。ここで、保存する操作があった場合には、当該処理を終了して、ステップ3cに移行し、一方、保存する操作がない場合には、ステップ4nに移行する。
ステップ4nにおいて主制御部100は、ステップ4cでログに記録したファイル名のデータを、記憶部50から検出して消去(破棄)し、当該処理を終了して、ステップ3cに移行する。
以上のように、上記構成の携帯電話機では、特別なユーザ操作が無くても、所定時間の経過の検出、滞在するエリアの検出、動き検出等に基づいて、近距離無線通信部60のオン/オフを切り替えるようにしている。
したがって、上記構成の携帯電話機によれば、ユーザの特別な操作なしに、ユーザが近距離無線通信機能を容易に使えるようにしつつ、近距離無線通信部60は所定の条件が整うとオフにされるので、バッテリやハードウェア資源の浪費を防止することができる。
また、近距離無線通信によりデータを受信しても、一定時間ユーザ操作を検出しない場合や、送信元の識別情報、データの種別、データが正常であるか、移動通信中であるか等の判定結果に応じて、受信したデータを消去するようにしているので、ユーザが知らぬ間に悪意の送信者から不要なデータが送りつけられた場合に、当該不要なデータにより記憶部50の記憶容量が圧迫されることを抑制できる。
ここで、悪意のある第3者から送りつけられる不要なデータとしては、連続波、所望周波数外の干渉波、意味のないデータ列、システムソフトウェアの破損を目的としたデータ等が想定される。
このうち、連続波に関しては、例えば連続的にCW信号等を送りつけることにより、他の受信ができる時間の隙間をなくすように妨害したり、受信に伴なう電力損失を発生せしめる等の攻撃が考えられる。
また、所望周波数外の干渉波に関して言えば、赤外線受光部に対して、強い外光や屋外の直射光を意図的に照射することが考えられる。電波に対しては、他の周波数で利用している無線送信波による干渉により、受信機側の受信感度を低下させることが考えられる。例えばWi−Fiのビーコンに干渉派を重畳させる等が考えられる。
さらに、意味のないデータ列に関しては、意味のないデータ列を送信して、受信及びデータ処理を強いることにより、リソース消費を起こさせることが考えられる。これには、スパムメール等の、ユーザが所望しないデータの受信を含んでいる。
また、システムソフトウェアの破損を目的としたデータに関しては、実行ファイル(.exe)形式のファイル等、実行するとシステムクラッシュを引き起こすものが考えられる。
これらのうち、連続波及び所望周波数外の干渉波については、受信電力により、到来しているか否かを判断可能である。この場合、図5に示すように、近距離無線通信部60に電力検知部60aを設け、時間軸に対する電力値の変化を検出することで判別することができる。
また、意味のないデータ列及びシステムソフトウェアの破損を目的としたデータについては、主制御部100の受信データ判別処理機能100eにより、復調後のデータの種別検知結果に基づいて判別することができる。
なお、この発明は上記した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を種々変形して具体化することができる。また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良いものである。