JP2011195984A - ポリエステル繊維用難燃加工剤及び難燃加工方法 - Google Patents

ポリエステル繊維用難燃加工剤及び難燃加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】染色同浴処理の条件下においても、処理浴中でのトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの分散状態を安定化することができるポリエステル繊維用難燃加工剤、及び難燃加工方法を提供する。
【解決手段】トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを、ナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩系縮合物及びビスフェノールスルホン酸塩系縮合物から選択される少なくとも1種の高分子型アニオン性界面活性剤を前記トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートに対して20〜200質量%用いて、水中に分散又は乳化しているポリエステル繊維用難燃加工剤である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル繊維又はこれよりなる繊維製品に対し難燃性を付与することができる難燃加工剤、及びそれを用いた難燃加工方法に関する。
従来、ポリエステル繊維又はこれよりなる布帛等の繊維製品に対して後加工により難燃性を付与するための難燃加工剤としては、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)などの臭素系化合物を水に分散または乳化させたものが一般に使用されてきた(下記特許文献1)。
しかし、HBCDはポリエステル繊維又はこれよりなる繊維製品に対する収着率が低く、環境中に排出される量が多いため、環境負荷が大きいという問題があり、また最近ではHBCDが難分解・高蓄積性を有することが判明した。
これに対して、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを含有する水分散体又は水乳化体である難燃加工剤、および加工方法による代替処方が提案されている(下記特許文献2,3)。
特開平7−70924号公報 特開2009−203595号公報 特開2009−174109号公報
しかしながら、上記代替処方であるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを含有する水分散体にあっては、例えば染色同浴処理に用いる場合、未収着のトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが、染料を核とした凝集物や、タール状の物質に変化して、染色後の生地を汚染したり、染色機の缶体汚染を引き起こしたりする問題が発生している。
これら問題は、次のような理由による。すなわち、染色同浴処理では、通常60℃以下の温度から加工を開始し、最高温度120℃以上の状態にした後、80℃以下まで冷却を行うが、この熱履歴がトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの融点である100〜115℃を超える。そのため、融点付近での分散状態が不安定になって分散破壊が起こり、繊維素材溶出オリゴマーあるいは染料を核とした凝集物や、タール状の物質に変化していることを見出した。
本発明の目的は、染色同浴処理の条件下においても、処理浴中でのトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの分散・乳化状態を安定化することができるポリエステル繊維用難燃加工剤、及び難燃加工方法を提供することにある。
本発明に係る第1の態様は、下記式(I)で表されるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが、ナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩系縮合物及びビスフェノールスルホン酸塩系縮合物から選択される少なくとも1種を前記トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートに対して20〜200質量%用いて、水中に分散又は乳化されてなるポリエステル繊維用難燃加工剤にある。
Figure 2011195984
本発明に係る第2の態様は、前記式(I)で表されるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを界面活性剤で分散した分散液又は乳化した乳化物に、ナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩系縮合物及びビスフェノールスルホン酸塩系縮合物から選択される少なくとも1種を前記トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートに対して15〜200質量%添加してなるポリエステル繊維用難燃加工剤にある。
本発明に係る第3の態様は、上記第1又は第2の態様の難燃加工剤を、高温吸尽法による処理により、または、浸漬もしくはコーティングによりポリエステル繊維またはこれよりなる繊維製品に付与した後、80℃以上の熱処理を施すことを特徴とするポリエステル繊維の難燃加工方法にある。
本発明に係る第4の態様は、前記式(I)で表されるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを界面活性剤で分散した分散液又は乳化した乳化物とともに、ナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩系縮合物及びビスフェノールスルホン酸塩系縮合物から選択される少なくとも1種を前記トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートに対して15〜200質量%添加してなる処理液で、ポリエステル繊維またはこれよりなる繊維製品を処理することを特徴とするポリエステル繊維の難燃加工方法にある。
本発明によれば、難燃剤成分であるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートとともに、ナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩系縮合物及びビスフェノールスルホン酸塩系縮合物から選択される少なくとも1種の高分子型アニオン性界面活性剤を用いることにより、染色同浴処理の条件下においても、処理浴中でのトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの分散・乳化状態を安定化することができる。そのため、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを主成分とする凝集物の発生を抑えることができるので、染色機の缶体汚染や染色後の生地汚染を抑制することができ、ポリエステル繊維の安定した加工を行うことができる。
本発明では、難燃剤成分として上記式(I)で表されるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(以下、イソシアヌレート化合物ということがある。)が用いられる。かかるイソシアヌレート化合物を難燃剤成分として用いることにより、従来の臭素系難燃剤成分HBCDでの環境への問題点を解消しつつ、ポリエステル繊維に優れた耐久難燃性を付与することができる。
難燃剤成分としては、上記イソシアヌレート化合物とともに、臭素系難燃化合物、塩素系難燃化合物、リン系難燃化合物、窒素系難燃化合物及び無機系難燃化合物から選ばれた1種又は2種以上を併用することもできる。
併用可能な臭素系難燃化合物の具体例としては、ヘキサブロモシクロヘプタン、テトラブロモシクロヘプタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、その他の臭素化シクロアルカン、ポリブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA(以下、TBBA)、TBBA・エポキシオリゴマー、TBBA・カーボネートオリゴマー、TBBA・ビス(ジブロモプロピルエーテル)、TBBA・ビス(ジブロモメチルプロピルエーテル)、その他のTBBA誘導体、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1,2−ビス(2,4,6−トリスブロモフェノキシ)エタン、1,2−ビス(2,4,6−トリスブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,6−ジブロモモノフェノール、2,4−ジブロモモノフェノール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモフェニルアクリレート、ペンタブロモベンジルアリルエーテル、ペンタブロモベンジルアクリレート、ブロモアクリレートモノマー、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、ヘキサブロモベンゼン、2,4−ジアミノ−6−(3,3,3−トリブロモ−1−プロピル)−1,3,5−トリアジンのメチロール化合物、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどが挙げられる。
併用可能な塩素系難燃化合物の具体例としては、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェートなどが挙げられる。
併用可能なリン系難燃化合物の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、その他の芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、リン酸ジフェニルモノオルソキセニル、2−ナフチルジフェニルホスフェート、10−ベンジル−9,10−ジヒドロキシ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどが挙げられる。
併用可能な窒素系難燃化合物の具体例としては、グアニジン系化合物、グアニル尿素系化合物(例えば、リン酸グアニル尿素)、メラミン系化合物(例えば、ポリ化リン酸メラミン、硫酸メラミン、メラミンシアヌレート)及びポリリン酸アンモニウム塩などが挙げられる。
併用可能な無機系難燃化合物の具体例としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
本発明に係る難燃加工剤及び加工方法では、ナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩系縮合物及びビスフェノールスルホン酸塩系縮合物から選択される少なくとも1種の高分子型アニオン性界面活性剤が必須成分として用いられる。
上記ナフタレンスルホン酸塩系縮合物は、ナフタレンスルホン酸塩を、例えばホルマリンで縮合させた形の縮合体であり、ナフタレン部分にはアルキル基などの置換基を有してもよい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの窒素含有塩基が挙げられる。ナフタレンスルホン酸塩の重合度を表す核体数については、特に限定されないが、2〜20であることが好ましい。また、分子量は、重量平均分子量で1,000〜20,000であることが好ましい。核体数はGPC保持時間の分布により決定される値であり、重量平均分子量はGPC測定によるポリスチレン換算の値である(以下同じ)。ナフタレンスルホン酸塩系縮合物の具体例としては、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物などが挙げられる。置換基としてのアルキル基としては、直鎖状のものでも、分枝状のものでもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの炭素数1〜12のものが挙げられる。
上記クレオソート油スルホン酸塩系縮合物としては、クレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物の塩が好ましく用いられる。塩としては、上記と同様のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、窒素含有塩基が挙げられる。分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で1,000〜20,000であることが好ましい。
上記リグニンスルホン酸塩は、木材の主要成分であるリグニンをスルホン化してなるものであり、塩としては、上記と同様のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、窒素含有塩基が挙げられる。
上記メラミンスルホン酸塩系縮合物としては、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩が好ましく用いられる。塩としては、上記と同様のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、窒素含有塩基が挙げられる。分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で500〜20,000であることが好ましい。
上記ビスフェノールスルホン酸塩系縮合物としては、ビスフェノールスルホン酸ホルマリン縮合物の塩が好ましく用いられる。塩としては、上記と同様のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、窒素含有塩基が挙げられる。分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で500〜20,000であることが好ましい。
以上の高分子型アニオン性界面活性剤は、難燃剤成分である上記イソシアヌレート化合物の分散・乳化状態を安定化させるために用いられるものであり、これには次の態様が挙げられる。
(1)上記イソシアヌレート化合物を水中に分散又は乳化する際に、上記高分子型アニオン性界面活性剤を使用することで得られる難燃加工剤。
(2)上記イソシアヌレート化合物を上記高分子型アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤で分散した分散液又は乳化した乳化液に、上記高分子型アニオン性界面活性剤を添加することで得られる難燃加工剤。
(3)上記イソシアヌレート化合物を上記高分子型アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤で分散した分散液又は乳化した乳化液を含む処理液でポリエステル繊維を処理する際に、該処理液に上記高分子型アニオン性界面活性剤を添加してポリエステル繊維を処理する難燃加工方法。
高分子型アニオン性界面活性剤の使用量は、(1)の態様では、上記イソシアヌレート化合物に対して20〜200質量%であり、好ましくは40〜150質量%である。(2)及び(3)の態様では、上記イソシアヌレート化合物に対して15〜200質量%であり、好ましくは20〜150質量%である。このような使用量とすることで、イソシアヌレート化合物の分散効果を最大化することができる。(2)及び(3)の態様において、(1)の態様に対し、高分子型アニオン界面活性剤の使用量の下限が小さいのは、他の界面活性剤でイソシアヌレート化合物を予め分散又は乳化させているからであり、比較的少量の使用でも該イソシアヌレート化合物の分散・乳化状態を安定化させることができる。
また、上記イソシアヌレート化合物は常温で固体であるため、上記(1)〜(3)の態様において、イソシアヌレート化合物は水中に分散されていることが好ましく、詳細には、ボールミル、ビーズミルなどを用いた機械的粉砕により微細化分散されていることがより好ましい。微細化分散により得られる分散微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、2.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0μmである。
また、高分子型アニオン性界面活性剤は、例えば染色同浴処理のような加熱された処理浴中での上記イソシアヌレート化合物の分散状態を安定化させるため、少なくともそのような処理浴(処理液)の段階で配合されていればよい。そのため、上記(1)のようにイソシアヌレート化合物を分散化させる際に用いる場合はもちろんのこと、上記(2)のようにイソシアヌレート化合物を予め水中に分散させたものに添加してもよく、更には上記(3)のように難燃加工処理の段階で処理液に添加してもよい。
上記(1)の態様において、イソシアヌレート化合物は、高分子型アニオン性界面活性剤単独で水中に分散又は乳化されてもよく、あるいはまた、他の界面活性剤との併用により水中に分散又は乳化されてもよい。
上記(1)の態様において併用する他の界面活性剤や、上記(2)及び(3)の態様においてイソシアヌレート化合物を事前に分散又は乳化させるための界面活性剤としては、公知の非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤をそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。好ましくは、非イオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤を用いることである。
このような非イオン界面活性剤の具体的な例としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、アルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。また、アニオン界面活性剤の具体的な例としては、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボキシレート塩、ポリカルボン酸塩、ロート油、石油スルホネート、アルキルジフェニルエーテルスルホネート塩等が挙げられる。
上記(1)の態様において併用する他の界面活性剤や、上記(2)及び(3)の態様においてイソシアヌレート化合物を事前に分散又は乳化させるための界面活性剤として、特に好ましくは、下記一般式(II)で表される非イオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤を用いることである。
Figure 2011195984
但し、一般式(II)におけるXは水素原子またはアニオン性基を表し、Yは次式で表される置換基を示し、m及びnは、m=1〜5、n=1〜200の数を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。Xは水素原子のみ又はアニオン性基のみであっても、混合物であってもよい。
Figure 2011195984
式(II)で表される非イオン界面活性剤として、具体的には、ポリオキシアルキレンモノベンジル化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジベンジル化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレントリベンジル化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル及びポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテルの一種又は二種以上の混合物が挙げられる。
式(II)で表されるアニオン界面活性剤のアニオン性基の例としては、硫酸エステル塩やリン酸エステル塩を形成するもの、即ち次のものが挙げられる。
Figure 2011195984
Figure 2011195984
上記各式におけるM及びM’は、水素原子、金属原子、アンモニウムまたは炭化水素基を示す。
式(II)で表されるアニオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンモノベンジル化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジベンジル化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリベンジル化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンモノベンジル化フェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジベンジル化フェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリベンジル化フェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンモノスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンモノスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル塩、及びポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルの一種又は二種以上の混合物が挙げられる。
式(II)で表される界面活性剤のポリオキシアルキレンの付加モル数nは1〜200が好ましく、より好ましくは5〜50である。また、Yで表される置換基の数mは、1〜5であり、好ましくは置換基の数m=3〜5の割合が30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは75質量%以上である。更に、Rで表されるアルキレン基は、エチレン基及び/又はプロピレン基であることが好ましく、より好ましくはエチレン基である。
式(II)で表される界面活性剤の使用量は特に限定されないが、通常、上記イソシアヌレート化合物を含む難燃剤成分に対して2〜50質量%の範囲内で用いられ、より好ましくは5〜30質量%である。このような使用量とすることで、優れた分散効果が得られやすくなる。また、このように式(II)で表される界面活性剤を使用する場合、上記高分子型アニオン性界面活性剤を、式(II)で表される界面活性剤に対して質量比で0.5〜30倍の量で用いることが好ましく、より好ましくは0.5〜20倍の量である。この質量比が0.5倍よりも小さいと併用の効果が小さく、逆に30倍を超えると併用効果が頭打ちとなり不経済である。
上記難燃加工剤には、また、水溶性高分子を配合してもよい。水溶性高分子は、上記イソシアヌレート化合物を水中に分散させた後に添加することができ、水溶性高分子を配合することで、分散液の粘度を好適に調整してスラリーの沈降を抑制することができ、製品化後の製品分離を抑制することができる。
使用可能な水溶性高分子の例としては、カルボキシメチルセルロース塩、キサンタンガム(ザンタンガム)、アラビアガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、自己乳化型ポリエステル化合物、水溶性ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、可溶性でんぷん、カルボキシメチルでんぷん、カチオン化でんぷん等などを挙げることができる。この中でも、カルボキシメチルセルロース塩及びキサンタンガムが、得られる溶液の物性やその安定性などの観点から好ましい。
難燃加工剤には、また、分散状態を安定させるため、アルコール類、芳香族系溶剤類、グリコールエーテル類、アルキレングリコール類、テルペン類等の有機溶剤を含有させてもよい。
本発明の難燃加工剤には、また、キャリヤー成分や、キレート成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合することもできる。キャリヤー成分としては、例えば、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、芳香族ハロゲン化合物、N−アルキルフタルイミド類、メチルナフタレン、ジフェニル、ジフェニルエステル類、ナフトールエステル類、フェノールエーテル類およびヒドロキシジフェニル類などを挙げることができる。
本発明に係る難燃加工剤は、難燃剤成分である上記イソシアヌレート化合物をポリエステル繊維に吸尽させるために好適に用いられ、即ち、ポリエステル繊維に対して後加工処理により付与することが好適である。
難燃加工方法としては、ポリエステル繊維に対し後加工処理により上記難燃加工剤を付与し、80℃以上の熱処理を施す工程よりなることが好ましい。このような後加工処理の例としては、高温吸尽法やパッドサーモ法、コーティング法等が挙げられる。
高温吸尽法では、難燃加工剤を添加した処理浴(処理液)中にポリエステル繊維を浸漬し、高温(通常80℃以上、好ましくは110〜140℃)で所定時間(例えば2〜60分間)処理することにより、難燃剤成分を繊維に収着させる。好ましくは、難燃剤成分を染料と同時に繊維に収着させる染色同浴法を用いることである。すなわち、難燃加工剤を染色浴に添加しておいて、この染色浴中にポリエステル繊維を浸漬して、高温にて吸尽処理を行うことが効率的であり、好ましい。
パッドサーモ法では、難燃加工剤を含む処理液にポリエステル繊維を浸漬し、所定の付着量になるようにマングル等で絞り、乾熱処理や、加熱スチーム処理などの蒸熱処理によって熱処理を行うことにより、難燃剤成分を繊維に収着させる。熱処理温度は通常110〜210℃の範囲内である。好ましくは、浸漬後、マングルで絞り、乾燥、熱セットを行うパッド・ドライ・サーモキュア法により処理する。
コーティング法では、樹脂バインダーと難燃加工剤、更には必要に応じて難燃助剤等を混合・増粘した塗布液(処理液)を、ポリエステル繊維にコートし、その後、乾燥、熱処理する。
上記(3)の態様では、これらの後加工処理における処理液に、イソシアヌレート化合物を分散・乳化させた液を添加しておくとともに、高分子型アニオン性界面活性剤も添加しておき、該処理液でポリエステル繊維を処理する。
なお、処理対象のポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリトリメチレンテレフタレート(PTT)の他、これらにイソフタル酸、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸、ポリエチレングリコールなどの第3成分を共重合したものなどが挙げられ、特に、カチオン可染ポリエステル(CD−PET)が含まれるものが好適に用いられる。その他、糸を生成する際、顔料を練り込んで作る原着糸も使用できる。また、処理対象の繊維製品には、各種の糸、織編物、不織布、ロープなどが含まれ、上記繊維の異なった糸を使用した交織布、複合素材であってもよく、例えばポリエステル原着糸交織布等が含まれる。繊維製品は、他の合成繊維、天然繊維、又は半合成繊維が混紡等により組み合わされたものであってもよい。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.難燃加工剤の調製
下記表1,2に示す配合(質量%)に従って、分散体A〜Tの難燃加工剤を調製した。詳細には、表1,2の分散処方の欄に従って、各処方液を混合撹拌し、スラリーを得た後、このスラリーと同じ容積の直径2.0mmのガラスビーズを混合攪拌し、これをアイメックス(株)製サンドグラインダーに充填し、2時間粉砕処理することにより、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを水中に微細化分散させた。粉砕処理後100メッシュのろ布によりガラスビーズと分散体とを分離した。次いで、得られた分散体に対し、表1,2の後添加処方の欄に示す配合の水溶性高分子や高分子型アニオン性界面活性剤を含む水溶液にて粘度調整、分散安定化を行うことで、難燃加工剤を調製した。
なお、界面活性剤(1)〜(5)は、石井義朗著「非イオン界面活性剤」(誠文堂新光社)第2章に記載の方法により製造した。
各難燃加工剤について平均粒子径を測定するとともに、分散状態を評価した。平均粒子径の測定は、(株)島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置「SALD−2200」を用いた。また、分散状態の評価は、調製後7日間又は14日間室温にて放置後の分散体が沈殿や二相分離していないものを「○」、二相分離しているものを「×」とした。
結果は、表1,2に示す通りであり、いずれの難燃加工剤も平均粒子径が小さく、7日後の分散状態は良好であった。また、上記特定の高分子型アニオン性界面活性剤の単独使用や上記式(II)の界面活性剤を使用した分散体A〜Q及びSであると、平均粒子径がより小さく、14日後の分散状態も良好であった。
Figure 2011195984
Figure 2011195984
2.染色試験機による評価
(1)空焚き試験
上記分散体A〜Tの難燃加工剤を用いて、染色工程における熱履歴に対する分散、乳化の安定性を確認するため、通常加工条件よりも大過剰の難燃加工剤、染料を使用した空焚き試験(繊維素材を投入しない試験)を実施した。詳細には、染色機として(株)テクサム技研製Mini−Colorを用い、浴量300mLで下記に示す染色浴処方について、60℃から昇温して、140℃で30分間処理した後、80℃まで降温してからポットを取り出し、評価を行った。
[染色浴処方]
Dianix Red AC−E 2.0g/L
Dianix Yellow AC−E 1.2g/L
Dianix Blue AC−E 0.2g/L
Kayacryl Black BS−ED 3.0g/L
(以上、日本化薬(株)製)
酢 酸 1.0g/L
無水酢酸ナトリウム 3.0g/L
加工薬剤 X g/L(表3,4に記載)
上記において、分散性を調べた空焚き試験の結果を表3,4に示す。なお、分散性の評価方法は以下の通りである。
[ポットの汚れ]…処理浴をポットから廃液した際、内部に汚れが無いものを「○」、凝集物の付着が認められるものを「×」とした。
[凝集物の発生]…処理浴をろ過した際に凝集物が残留しないものを「○」、凝集物が発生し凝集物が1g以上のものを「×」、1g以下のものを「△」とした。
(2)難燃性の評価
レギュラーポリエステル/カチオン可染ポリエステル混素材(CD混率(カチオン可染ポリエステルの混合率)=50%)に対し染色同浴法により難燃加工を施した。詳細には、染色機として(株)テクサム技研製Mini−Colorを用い、下記に示す染色浴処方について、浴比1:20で、60℃から昇温して、140℃で30分間処理した。処理後、80℃まで降温してから織物を取り出し、湯水洗5分間の後、下記の還元洗浄浴処方、浴比1:20、80℃で10分間還元洗浄を行い、更に、湯水洗5分間の後、180℃で30秒間ヒートセットを行った。なお、%owf(on the weight of fiber)は、繊維重量に対する比率であり、表3,4中の「%」は「%owf」である。また、比較例5はブランクとして、加工薬剤(難燃加工剤)が未添加の例である。
[染色浴処方]
Dianix Red AC−E 0.20%owf
Dianix Yellow AC−E 0.12%owf
Dianix Blue AC−E 0.02%owf
Kayacryl Black BS−ED 0.30%owf
酢 酸 1.0 g/L
無水酢酸ナトリウム 3.0 g/L
加工薬剤 X %owf(表3,4に記載)
[還元洗浄浴処方]
ハイドロサルファイトナトリウム 2.0g/L
ソーダ灰 1.0g/L
トライポールTK(第一工業製薬(株)製) 1.0g/L
上記において、難燃性を調べた結果を表3,4に示す。なお、難燃性の評価方法は以下の通りである。
[難燃性]
難燃加工した織物について、加工上りのものと、これを下記条件で水洗濯又はドライクリーニングしたものについて、JIS L 1091 A−1法(ミクロバーナー法)及びD法(コイル法)にて難燃性を測定した。評価は、ミクロバーナー法で1分加熱後及び着炎3秒後ともに、残炎が3秒以下で、残塵が5秒以下、かつ炭化面積が30cm以下であり、更に、コイル法で接炎回数3回以上であるものを「○」とし、それ以外を「×」とした。
(水洗濯)JIS K 3371に従って、弱アルカリ性第1種洗剤を1g/Lの割合で用い、浴比1:40として、60℃±2℃で15分間水洗濯した後、40℃±2℃で5分間のすすぎを3回行い、遠心脱水を2分間行い、その後、60℃±5℃で熱風乾燥する処理を1回として、これを5回行った。
(ドライクリーニング)試料1gにつき、テトラクロロエチレン12.6mL、チャージソープ(ノニオン界面活性剤/アニオン界面活性剤/水=10/10/1(質量比))0.265gを用いて、30℃±2℃で15分間の処理を1回とし、これを5回行った。
表3,4に示された結果から分かるように、本発明に係る実施例であると、特定の高分子型アニオン性界面活性剤を用いたことにより、染色同浴処理の条件下においても、処理浴中でのトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの分散状態を安定化することができ、そのため、当該イソシアヌレート化合物を主成分とする凝集物の発生を抑え、また染色試験機のポットの汚れを抑制することができた。しかも、カチオン可染ポリエステルの混合率の高い繊維素材でありながら、優れた耐久難燃性が得られた。
なお、比較例1,2では、ナフタレンスルホン酸塩縮合物を用いたものの、その使用量が上記イソシアヌレート化合物に対して10質量%と少ないため、上記凝集物の発生を十分に抑えることができなかった。
Figure 2011195984
Figure 2011195984
3.液流染色機を用いた実加工
染色機としてサーキュラーラピット染色機を使用し、表5に示した染色処方を用いた以外は上記染色試験機による難燃性評価と同様にして、染色同浴法による難燃加工を実施した。加工特性と難燃性の結果を表5に示す。加工特性の評価方法は以下の通りであり、難燃性の評価は上記染色試験機による難燃性評価と同じである。
[缶体の汚染]…生地取り出し後の染色機内部に汚れが無いものを「○」、汚れの付着が認められるものを「×」とした。
[凝集物の発生]…加工後に熱交換器フィルターがきれいなものを「○」、凝集物が付着しているものを「×」とした。
[生地の汚れ]…加工後の生地がきれいなものを「○」、凝集物の付着、染色ムラが発生しているものを「×」とした。
表5に示された結果から分かるように、実機試験においても、染色試験機での評価と同様に、本発明に係る実施例であると、カチオン可染ポリエステルの混合率の高い繊維素材に対して優れた耐久難燃性を付与しつつ、処理浴中でのトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの分散状態を安定化することができ、凝集物の発生、染色機缶体の汚染、染色後の生地の汚れを抑制することができた。
Figure 2011195984
本発明の難燃加工剤又は難燃加工方法は、ポリエステル繊維製品全般、例えばカーテン、布製ブラインド、絨毯その他の敷物、壁張り材等の各種インテリア用途、カーシート用表皮材のような自動車内装材料、ソファーその他の表皮材、暗幕、緞帳等に広く用いられる。

Claims (4)

  1. 下記式(I)で表されるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが、ナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩系縮合物及びビスフェノールスルホン酸塩系縮合物から選択される少なくとも1種を前記トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートに対して20〜200質量%用いて、水中に分散又は乳化されてなることを特徴とするポリエステル繊維用難燃加工剤。
    Figure 2011195984
  2. 下記式(I)で表されるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを界面活性剤で分散した分散液又は乳化した乳化物に、ナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩系縮合物及びビスフェノールスルホン酸塩系縮合物から選択される少なくとも1種を前記トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートに対して15〜200質量%添加してなることを特徴とするポリエステル繊維用難燃加工剤。
    Figure 2011195984
  3. 請求項1又は2に記載の難燃加工剤を、高温吸尽法による処理により、または、浸漬もしくはコーティングによりポリエステル繊維またはこれよりなる繊維製品に付与した後、80℃以上の熱処理を施すことを特徴とするポリエステル繊維の難燃加工方法。
  4. 下記式(I)で表されるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを界面活性剤で分散した分散液又は乳化した乳化物とともに、ナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩系縮合物及びビスフェノールスルホン酸塩系縮合物から選択される少なくとも1種を前記トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートに対して15〜200質量%添加してなる処理液で、ポリエステル繊維またはこれよりなる繊維製品を処理することを特徴とするポリエステル繊維の難燃加工方法。
    Figure 2011195984
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