JP5754973B2 - ポリエステル系繊維品の難燃加工剤と難燃加工方法 - Google Patents

ポリエステル系繊維品の難燃加工剤と難燃加工方法 Download PDF

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本発明は、ポリエステル系繊維品の難燃加工に関し、詳しくは、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン(以下、HBCDという。)を難燃剤として用いることなく、しかも、HBCDを用いる場合に比較して、ポリエステル系繊維品にその種類を問わず、耐久性にすぐれる難燃性を付与することができる難燃加工剤と、そのような難燃加工剤を用いるポリエステル系繊維品の難燃加工方法と、そのような難燃加工剤を用いて得られる難燃加工ポリエステル系繊維品に関する。
従来、ポリエステル系繊維品に後加工によって難燃性を付与する代表的な方法として、HBCDを難燃剤として分散剤を用いて水に分散させてなる難燃加工剤をポリエステル系繊維品に付着させる方法がよく知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、HBCDを難燃剤としてポリエステル系繊維品に難燃性を付与する方法によれば、このHBCDが難分解性で高蓄積性であることから、環境や生物に有害な影響を及ぼす問題があり、かくして、現在では、繊維品の難燃加工において、HBCDを用いることが規制されるに至っている。
そこで、ポリエステル系繊維品に難燃性を付与することができるHBCD以外のハロゲン系難燃剤として、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを代表例とするイソシアヌレート系臭素化合物が提案されている。ポリエステル系繊維品の燃焼時、上記イソシアヌレート化合物は、その熱分解過程において、臭素ガスを発生して難燃性に寄与するが、同時に残渣も生じ、この残渣がポリエステル系繊維品の燃焼時、炭化物を生じて、ポリエステル系繊維品の溶融滴下を阻害するので、添加量が少量の場合には、却って燃焼を助長させることがある。そこで、ポリエステル系繊維品に十分な難燃性を付与するには、多量のイソシアヌレート系臭素化合物を使用せざるを得ず、かくして、難燃加工後のポリエステル系繊維品の風合いを硬化させるという望ましくない問題がある。また、そのように多量のイソシアヌレート系臭素化合物を使用する難燃加工は、経済性の面でも不利である。
そこで、上記イソシアヌレート系臭素化合物に液状のハロゲン化アルキルリン酸エステル、従来、例えば、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェートを併用することによって、ポリエステル系繊維品の有する風合いを維持しつつ、難燃加工する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、この方法において、上記ハロゲン化アルキルリン酸エステルと共に分散染料を用いて、ポリエステル系繊維品を難燃加工すると同時に染色する場合には、得られた難燃加工ポリエステル系繊維品は、染料のブリードアウトが生じやすく、摩擦堅牢度が低い問題がある。
また、上記イソシアヌレート系臭素化合物と固体のハロゲン化アルキルリン酸エステル、例えば、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートを併用する方法も、従来から、提案されているが(特許文献3参照)、上記トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートは、浴中処理による難燃加工において、ポリエステル系繊維品への吸尽率が非常に低く、実用上、浴中処理に用いることができない。
一方、HBCDをはじめとするハロゲン系難燃剤を用いずに、ポリエステル系繊維品に耐久性にすぐれた難燃性を付与することができる方法として、ある種の芳香族リン酸エステルアミドを難燃剤として水に分散させてなる難燃加工剤を用いる方法が提案されている(特許文献4参照)。この方法によれば、レギュラーポリエステルのほか、カチオン可染ポリエステルの一部については、すぐれた難燃性を付与することができるが、しかし、その種類を問わず、広い範囲にわたるポリエステル系繊維品に十分な難燃性を付与することは困難であり、汎用性において十分とはいえない問題が残されている。
特公昭53−8840号公報 特開2009−174109号公報 特開2009−203595号公報 特開2003−193368号公報
本発明は、従来のポリエステル系繊維品の難燃加工における上述した問題、特に、HBCDを難燃剤として用いることなく、しかも、HBCDを用いる場合に比較して、ポリエステル系繊維品にその種類を問わず、耐久性にすぐれる難燃性を付与することができる難燃加工剤を提供することを目的とする。
更に、本発明は、上記難燃加工剤を用いるポリエステル系繊維品の難燃加工方法と、そのような難燃加工剤を用いて、又は難燃加工方法によって得られる難燃加工ポリエステル系繊維品を提供することを目的とする。
本発明によれば、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対して、5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシド30〜300重量部をノニオン系界面活性剤とアニオン系界面活性剤の存在下に水に分散させ、又は乳化させてなることを特徴とするポリエステル系繊維品の難燃加工剤が提供される。
また、本発明によれば、上記難燃加工剤を用いてポリエステル系繊維品を難燃加工することを特徴とするポリエステル系繊維品の難燃加工方法が提供される。
更に、本発明によれば、上記ポリエステル系繊維品の難燃加工方法の好ましい態様として、上記難燃加工剤を用いて、ポリエステル系繊維品を60〜140℃の温度で浴中処理する方法、上記難燃加工剤と共に染料として少なくとも分散染料を用いて、ポリエステル系繊維品を60〜140℃の温度で浴中処理する方法、上記難燃加工剤をポリエステル系繊維品に付着させ、100〜200℃の温度範囲で熱処理する方法、及び上記難燃加工剤と共に硬仕上げ剤をポリエステル系繊維品に付着させ、100〜200℃の温度範囲で熱処理する方法が提供される。
また、本発明によれば、上記難燃加工方法において、ポリエステル系繊維品がカチオン可染ポリエステル繊維を含む布帛である方法、ポリエステル系繊維品がポリエステル紡績糸を含む布帛である方法が提供される。
上記に加えて、本発明によれば、上記ポリエステル系繊維品の難燃加工方法によって得られる難燃加工ポリエステル系繊維品と、前記難燃加工剤を用いてポリエステル系繊維品を難燃加工してなる難燃加工ポリエステル系繊維品が提供される。
本発明に従って、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートに所定の割合で5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドを組み合わせてなる難燃剤を含む難燃加工剤は、従来のポリエステル系繊維品の難燃加工における上述した問題を解決して、HBCDを難燃剤として用いることなく、しかも、HBCDを用いる場合に比較して、ポリエステル系繊維品にその種類を問わず、耐久性にすぐれる難燃性を付与することができる。
本発明による難燃加工剤は、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートと5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドの組み合わせを含むことから、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートと前述したような従来のリン酸エステルとの組み合わせを含む難燃加工剤と相違して、ポリエステル系繊維品にその種類を問わず、耐久性にすぐれる高い難燃性を付与することができる。
また、従来、難燃性を付与することが困難であるカチオン可染ポリエステル系繊維品についても、本発明による難燃加工剤を用いて難燃加工することによって、上記ポリエステル系繊維品に高性能で耐久性のある難燃性を付与することができる。
更に、カチオン可染ポリエステル繊維と共にポリエステル紡績糸を含み、従来、難燃性を付与することが極めて困難であったポリエステル系繊維品についても、本発明による難燃加工剤を用いて難燃加工することによって、そのようなポリエステル系繊維品に高性能で耐久性のある難燃性を付与することができる。
本発明において、ポリエステル系繊維品とは、芳香族及び脂肪族を問わず、少なくともポリエステル繊維を含む繊維と、そのような繊維を含む糸、綿、編織布や不織布の布帛をいい、好ましくは、ポリエステル繊維、これよりなる糸、綿、編織布や不織布等の布帛をいう。
従って、上記ポリエステル系繊維として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/5−スルホイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリオキシベンゾイル、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート等の芳香族ポリエステル系繊維、ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、D−乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体、D−乳酸とL−乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボンとの共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)等のポリカプロラクトン、ポリリンゴ酸、ポリヒドロキシカルボン酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、β−ヒドロキシ酪酸(3HB)−3−ヒドロキシ吉草酸(3HV)ランダム共重合体等のポリ脂肪族ヒドロキシカルボン酸、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート−アジペート共重合体等のグリコールと脂肪族ジカルボン酸とのポリエステル等の脂肪族ポリエステル系繊維を挙げることができる。
しかし、本発明において、ポリエステル系繊維は、上記例示したものに限定されることはなく、更に、難燃性化合物をポリエステルの製造時にポリエステル中に共重合させたもの、また、重合時又は製糸時に難燃性化合物をブレンドした難燃原糸であってもよい。
本発明に従って難燃加工されたポリエステル系繊維品は、例えば、座席シート、シートカバー、カーテン、ロールブラインド、プリーツブラインド、壁紙、天井クロス、カーペット、緞帳、建築養生シート、テント、帆布、ブラウス、ユニフォーム等の衣服、エプロン等に好適に用いられる。
先ず、本発明によるポリエステル系繊維品のための難燃加工剤について説明する。
本発明によるポリエステル系繊維品の難燃加工剤は、次式(I)
Figure 0005754973
で表されるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対して、次式(II)
Figure 0005754973
で表される5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシド30〜300重量部をノニオン系界面活性剤とアニオン系界面活性剤の存在下に水に分散させ、又は乳化させてなるものである。
本発明において難燃剤として用いる上記5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドは、1種の有機リン酸エステルであって、芳香族基と脂肪族基を併せ有するので、芳香脂肪族有機リン酸エステルということができる。そこで、以下においては、前述したような従来のリン酸エステルと区別するために、特に、断りのない限り、芳香脂肪族有機リン酸エステルは、5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドを意味するものとする。この芳香脂肪族有機リン酸エステルは、既に知られている化合物である(国際公開(WO)第2007/032277号)。
本発明による難燃加工剤において、上記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの配合割合は、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対して、芳香脂肪族有機リン酸エステルが30〜300重量部の範囲であり、好ましくは、35〜200重量部の範囲であり、最も好ましくは40〜150重量部の範囲である。トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対して、芳香脂肪族有機リン酸エステルの割合が30重量部よりも少ないときは、ポリエステル系繊維品が燃焼する際に炭化傾向を示すため、十分な難燃性を得ることができず、他方、300重量部を越えても、ポリエステル系繊維品への難燃剤の吸尽率が芳香脂肪族有機リン酸エステルの量に見合って上がらないので、徒に多量の芳香脂肪族有機リン酸エステルを用いることとなり、難燃加工の経済性の点でも不利である。
ポリエステルは、本来、燃焼時は溶融型のポリマーであるところ、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートは、前述したように、ポリエステル系繊維品の燃焼時、その熱分解過程で残渣を生じ、炭化物を形成して、ポリエステル系繊維品の溶融滴下を妨げるので、添加量が少量の場合には、ポリエステル系繊維品の燃焼を却って助長させることがあるため、ポリエステル系繊維品に十分な難燃性を付与するには、多量の難燃剤を付与することを必要とする。一方、本発明において用いる前記芳香脂肪族有機リン酸エステルは、上記トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートと相違して、ポリエステル系繊維品の燃焼時の熱分解過程において、実質的に残渣を生じず、本来、熱溶融型のポリエステル系繊維品の燃焼時の熱分解過程において、可塑剤として作用することによって、即ち、ポリエステル系繊維品の燃焼時の溶融滴下を促進することによって難燃性を付与する。
そこで、本発明によれば、前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの上記作用に基づく難燃化を阻害しない範囲において、これにポリエステル系繊維品の燃焼時、残渣を生じるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを組み合わせて難燃剤とし、これをポリエステル系繊維品に付着させて、難燃性を付与するものである。
このような難燃剤によれば、ポリエステル系繊維品の燃焼に際して、臭素系難燃剤であるトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが前述したように臭素ガスを発生し、燃焼の連鎖を抑制する効果と、前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの溶融促進効果との相乗効果によって、HBCDと同等又はそれ以上のすぐれた難燃性をポリエステル系繊維品に付与することができる。また、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートと前述したような従来のリン酸エステルとの組み合わせと比較すれば、ポリエステル系繊維品にその種類を問わず、耐久性にすぐれる難燃性を付与することができる。
本発明による難燃加工剤は、その製造方法において、特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、前記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートと界面活性剤と水を混合し、湿式粉砕機を用いて、上記難燃剤を微粒子に粉砕し、水に分散させることによって、水分散体としての難燃加工剤を得ることができる。また、別の方法として、前記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートのそれぞれの単独の水分散体を同様にして製造し、得られたそれぞれの水分散体を混合することによっても、本発明の難燃加工剤を得ることもできる。
本発明においては、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートと前記芳香脂肪族有機リン酸エステルを水中に分散させると共に、後述するように、得られる難燃加工剤が高温度での難燃加工の際にも安定性にすぐれるように、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤が併用される。
上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪族エステルアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン型非イオン系界面活性剤や、アルキルグリコキシド、ショ糖脂肪酸エステル等の多価アルコール型非イオン系界面活性剤を挙げることができる。
例えば、2−ブチルオクタノールの酸化エチレン12モルと酸化プロピレン12モル付加体は、本発明において、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物として好ましく用いることができるノニオン界面活性剤の一例である。
一方、上記アニオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化脂肪酸エステル塩、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩や、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ビス(スチレン化フェニルエーテルアルキレンオキサイド付加物)コハク酸エステルスルホン化物の塩等のスルホン酸塩、トリスチレン化フェノール酸化エチレン付加物のスルホコハク酸エステルナトリウム塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等を挙げることができる。
例えば、トリスチレン化フェノール酸化エチレン10モル付加物のスルホコハク酸エステルナトリウム塩は、本発明において好ましく用いることができるアニオン界面活性剤の一例である。
また、本発明による難燃加工剤は、必要に応じて、乳化物として得ることもできる。好ましくは、例えば、前記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを適宜の有機溶剤に溶解させ、これを適宜の界面活性剤を用いて水に乳化させることによって、本発明による難燃加工剤を乳化物として得ることができる。別の方法として、前記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートのそれぞれの単独の乳化物を同様にして製造し、得られたそれぞれの乳化物を混合することによっても、本発明の難燃加工剤を得ることもできる。
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アルキルナフタレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ジオキサン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、メチレンクロライド、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類を挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、また、必要に応じて、2種以上組み合わせて用いてもよい。このような有機溶剤を用いる場合は、その使用量は、通常、難燃剤に対して、1〜20重量%の範囲である。
このように、本発明に従って、前記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを難燃剤として併用し、これらを水に分散させ、又は乳化させて、本発明による難燃加工剤を製造する際に、ポリエステル系繊維品に付与する難燃性に有害な影響を与えない範囲において、その他の難燃剤を含んでいてもよい。例えば、本発明による難燃加工剤は、前述したような従来から知られているリン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、ホスファゼン系難燃剤等のリン系難燃剤、グアニジン等の窒素系難燃剤、臭素化ビスフェノールAとその誘導体、臭素化ビスフェノールSとその誘導体等の臭素系難燃剤等を含んでいてもよい。
本発明による難燃加工剤は、前記芳香脂肪族有機リン酸エステル、即ち、5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを通常、合計にて20〜60重量%の割合で含んでいる。難燃加工剤における難燃剤の割合が余りに低いときは、難燃加工に際して、徒に多量の難燃加工剤を用いざるを得ず、難燃加工の効率が低下し、一方、難燃加工剤における難燃剤の割合が余りに高いときは、難燃加工剤が安定性に欠けるおそれがある。好ましくは、本発明による難燃加工剤は、上記難燃剤を合計にて30〜50重量%の割合で含んでいる。
次に、本発明に従って、上述した難燃加工剤を用いるポリエステル系繊維品の難燃加工について説明する。
本発明による難燃加工剤を用いて、ポリエステル系繊維品を難燃加工し、ポリエステル系繊維品に難燃性を付与する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、パディング法、スプレー法、コーティング法、捺染法、スクリーン印刷法等によって、難燃加工剤をポリエステル系繊維品に付着させ、100〜200℃の温度で熱処理して、前記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを繊維に固着させる方法を挙げることができる。
より詳細には、例えば、パディング法によるときは、本発明による難燃加工剤にポリエステル系繊維品を浸漬して、所定の付着量になるようにマングル等で絞った後、例えば、100〜200℃、好ましくは150〜190℃の範囲の温度で数秒から数分間、乾熱処理を行う。
また、本発明による難燃加工剤をポリエステル系繊維品に付与して、難燃加工する別の方法として、浴中処理によることができる。この方法によるときは、例えば、難燃加工剤を入れた処理浴にポリエステル系繊維品を浸漬し、処理浴中で60〜140℃の温度、好ましくは、80〜135℃の温度にて処理して、前記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを繊維に固着させる。この方法によるときは、例えば、液流染色機、ビーム染色機、チーズ染色機等のパッケージ染色機を用いることができる。
本発明によれば、上述した浴中処理を行う場合に、難燃加工剤と共に少なくとも分散染料を含む処理浴中にポリエステル系繊維品を浸漬して、難燃加工すると同時に染色することができる。染料としては、ポリエステル系繊維品がレギュラーポリエステル繊維糸を含むときは、分散染料が好ましく用いられるが、例えば、ポリエステル系繊維品がレギュラーポリエステル繊維糸とカチオン可染ポリエステル繊維糸との混織品であるときは、分散染料と共にカチオン染料が用いられる。このように、浴中処理によって、ポリエステル系繊維品の難燃加工と同時に染色を行う場合には、所要の染料と共に、必要に応じて、均染剤や緩染剤等を併用し、更に、pH調整剤やpH緩衝剤を用いて、処理浴のpHを3〜6に調整することが望ましい。
浴中処理においては、上述したように、通常、難燃加工剤は高圧下に高温に加熱されるので、浴中処理の間、難燃加工剤は前記界面活性剤の存在下に溶融状態、即ち、乳化状態にある。そこで、用いる難燃剤がそのような高温下において乳化安定性が悪いときは、難燃加工中に難燃剤である前記芳香脂肪族有機リン酸エステルやトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが乳化破壊を起こし、ポリエステル系繊維中のポリエステルオリゴマーを取り込んで、ポリエステル系繊維品に汚れ物質として付着する不都合を生じる。更に、そのようにポリエステル系繊維品に付着した汚れ物質が加工機内を汚染する不都合も起こる。
ここに、難燃剤である前記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを水に分散させ、又は乳化させるに際して、ノニオン界面活性剤のみを用いるときは、得られる難燃加工剤が高温下において乳化安定性が悪くなり、上述したような不都合が生じる。そこで、本発明に従って、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤を併用することによって、難燃加工剤に高温下において高い乳化安定性を有せしめることができる。
このように、高温下において乳化安定性にすぐれる難燃加工剤を得るには、難燃剤である前記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの合計量に対してノニオン界面活性剤を2〜20重量%の範囲で用いると共に、アニオン界面活性剤を2〜10重量%の範囲で用いることが好ましい。
本発明によれば、少量の難燃加工剤を用いる難燃加工によって、通常のポリエステル系繊維品、即ち、レギュラーポリエステル系繊維品に容易に十分な難燃性を付与することができる。
しかし、本発明によれば、従来のポリエステル系繊維品のための難燃加工剤にみられない重要な特徴として、通常は、難燃性を付与することが困難であるカチオン可染ポリエステル系繊維品についても、本発明による難燃加工剤を用いて難燃加工することによって、高性能で耐久性のある難燃性を付与することができる。
更に、本発明によれば、従来、難燃性を付与することが極めて困難であるポリエステル紡績糸を含むポリエステル系繊維品や、従ってまた、カチオン可染ポリエステル繊維と共にポリエステル紡績糸を含むポリエステル系繊維品についても、本発明による難燃加工剤を用いて難燃加工することによって、高性能で耐久性のある難燃性を付与することができる。
本発明において、カチオン可染ポリエステル繊維を含む布帛とは、カチオン可染ポリエステル繊維糸とレギュラーポリエステル繊維糸との混織による布帛を意味し、カチオン可染ポリエステル繊維糸のみからなる布帛をも含めることとする。ポリエステル紡績糸含む布帛とは、ポリエステル紡績糸とレギュラーポリエステル繊維糸との混織による布帛を意味し、ポリエステル紡績糸のみからなる布帛をも含めることとする。また、カチオン可染ポリエステル繊維と共にポリエステル紡績糸を含む布帛とは、カチオン可染ポリエステル繊維糸とポリエステル紡績糸(とレギュラーポリエステル繊維糸)との混織による布帛を意味する。
ここに、カチオン可染ポリエステル繊維を含む布帛中に含まれるカチオン可染ポリエステル繊維糸の重量基準による割合(重量%)をカチオン可染ポリエステル繊維の混率といい、ポリエステル紡績糸を含む布帛におけるポリエステル紡績糸の重量基準による割合(重量%)をポリエステル紡績糸の混率という。
本発明による難燃加工剤を用いて、ポリエステル系繊維品を難燃加工するに際して、難燃剤、即ち、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートと前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの合計量のポリエステル系繊維品への付着量は、厳密には、そのポリエステル系繊維品の種類にもよるが、一般に、0.1〜10重量%の範囲であり、好ましくは、本発明によれば、0.3〜6重量%の範囲の付着量でポリエステル系繊維品に十分な難燃性を付与することができる。
ポリエステル系繊維品への難燃剤の付着量が0.1重量%よりも少ないときは、通常のポリエステル系繊維品であっても、これに十分な難燃性を付与することができず、他方、10重量%を越えるときは、難燃加工後の繊維品の染色堅牢度が低下する等の不具合を生じる。
難燃加工のほかに、ポリエステル系繊維品に無機化合物を触媒として用いる光触媒加工や、また、フッ素樹脂を撥水剤として用いる撥水加工のような付加的な機能を施す場合や、また、ポリエステル系繊維品に無機顔料を印刷して、意匠加工を施す場合には、このような種々の加工に用いられた上記無機物質や樹脂類が燃焼時の熱分解過程において残渣を生じ、ポリエステル系繊維品の燃焼時、その溶融滴下を阻害して、燃焼を助長させることがあり、一般に、難燃化を困難にするので、そのようなポリエステル系繊維品に十分な難燃性を付与するには、6重量%以上の付着量を必要とすることがある。
カチオン可染ポリエステル混織布帛は、前述したように、カチオン可染ポリエステル繊維糸を含む布帛であり、そのポリエステル繊維を形成するポリエステルの分子中にカチオン染料による染色を容易にするために、例えば、5−スルホイソフタル酸のようなスルホン酸基を有するジカルボン酸モノマー成分がポリエステル分子中に組み込まれている。このようなスルホン酸基を有するモノマー成分を含まないポリエステルからなる繊維がレギュラーポリエステル繊維である。このようなカチオン可染ポリエステル混織布帛は、レギュラーポリエステル系繊維品に比較して、燃焼後に燃焼残渣を生じやすく、また、燃焼後に生じた燃焼残渣がいわば「蝋燭の芯」の役割をして、レギュラーポリエステルのドリップを阻害するので、その難燃化が困難であるとされている。
即ち、カチオン可染ポリエステル繊維糸は融点約246℃、5%分解温度約373℃であり、レギュラーポリエステル繊維糸は融点約256℃、5%分解温度約400℃であるのでカチオン可染ポリエステル混織布帛が燃焼した場合、カチオン可染ポリエステル繊維糸の分解温度がレギュラーポリエステル繊維糸の分解温度よりも低く、燃焼残渣がレギュラーポリエステル繊維糸の分解前に形成され、その結果として、燃焼残渣が「蝋燭の芯」の役割をするとみられる。
このようなカチオン可染ポリエステル混織布帛、特に、カチオン可染ポリエステルの混率が25%以上のものは、レギュラーポリエステル系繊維品に比較して、従来、難燃化が困難であるといわれている。
しかしながら、本発明によれば、カチオン可染ポリエステル繊維を含む布帛を難燃加工するに際して、難燃剤のカチオン可染ポリエステル繊維を含む布帛への付着量は、通常、1〜10重量%の範囲であり、好ましくは、1.5〜5重量%の範囲であり、難燃剤のこのような付着量によって、カチオン可染ポリエステル繊維を含む布帛に十分な難燃性を付与することができる。
カチオン可染ポリエステル系繊維を含む布帛への難燃剤の付着量が1重量%よりも少ないときは、ポリエステル系繊維品に十分な難燃性を付与することができず、他方、10重量%を超えるときは、難燃加工後の繊維品の染色堅牢度が低下する等の不具合を生じる。
ポリエステル紡績糸は、短繊維をより合わせて製造されることから、繊維中に空気を抱え込み、燃焼を助長させる性質を有するので、このようなポリエステル紡績糸を含む布帛は、レギュラーポリエステル繊維品に比較して、難燃化が困難であるといわれている。
しかしながら、本発明によれば、ポリエステル紡績糸を含む布帛を難燃加工するに際して、難燃剤のポリエステル紡績糸を含む布帛への付着量は、通常、1〜10重量%の範囲であり、好ましくは、1.5〜5重量%の範囲であり、難燃剤のこのような付着量によって、ポリエステル紡績糸を含む布帛に十分な難燃性を付与することができる。
更には、ポリエステル紡績糸とカチオン可染ポリエステル繊維が混織された布帛の場合には、上述したことから明らかなように、カチオン可染ポリエステル繊維の混率が低いものでも、その難燃化は、一層、困難であり、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートや5,5−ジメチル−2−(2−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドを単独で用いて難燃加工しても、極めて不十分な難燃性を付与し得るにすぎない。
しかし、本発明による難燃剤を用いることによって、このようなカチオン可染ポリエステル繊維と共にポリエステル紡績糸を含む布帛であっても、十分な難燃性を有しせしめることができる。
本発明によれば、カチオン可染ポリエステル繊維と共にポリエステル紡績糸を含む布帛を難燃加工するに際して、難燃剤である前記芳香脂肪族有機リン酸エステルとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートのポリエステル繊維布帛への付着量は、通常、1.5〜10重量%の範囲であり、好ましくは、2〜6重量%の範囲である。ポリエステル系繊維品への難燃剤の付着量が1.5重量%よりも少ないときは、ポリエステル系繊維品に十分な難燃性を付与することができず、他方、10重量%を越えるときは、難燃加工後の繊維品の染色堅牢度が低下する等の不具合を生じる。
本発明による難燃加工剤を前述したパディング法にてポリエステル系繊維品に付与する場合には、必要に応じて、硬仕上げ剤を併せて用いてもよい。本発明による難燃加工剤は、常温で可塑剤として寄与するものではないので、本発明による難燃加工剤を用いる難燃加工方法は、風合いを軟化させることなく、ポリエステル系繊維品を難燃硬仕上げ加工するために好適である。
上記硬仕上げ剤としては、例えば、硬度の高いポリエステル樹脂が好ましく用いられる。例えば、ガラス転移点50〜70℃、軟化点130〜180℃、重量平均分子量20000〜40000、被膜の鉛筆硬度4H〜5Hのポリエステル樹脂が好ましく用いられる。このようなポリエステル樹脂は、例えば、互応化学工業(株)製のポリエステル樹脂水分散体プラスコートRZ−105、Z−565等として入手することができる。しかし、本発明において、硬仕上げ剤は、上記例示に限定されるものではない。
難燃加工剤と共に、このような硬仕上げ剤を用いて、ポリエステル系繊維品を難燃硬仕上げ加工するには、厳密には、用いるポリエステル樹脂の硬度や、加工後に布帛として要求される硬さにもよるが、通常、ポリエステル系繊維品に硬仕上げ剤を3〜30重量%の範囲で付着させればよく、好ましくは、5〜20重量%の範囲で付着させる。このように、難燃硬仕上げ加工されたポリエステル系繊維品は、ロールブラインドやプリーツブラインドの用途に好ましく供することができる。
本発明による難燃加工剤は、その性能が阻害されない範囲において、必要に応じて、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン糊等の分散安定剤、難燃加工剤の難燃性を高めるための難燃助剤、耐光堅牢度を高めるための紫外線吸収剤や酸化防止剤等を含んでいてもよい。更に、必要に応じて、従来から知られている難燃剤や界面活性剤を含んでいてもよい。
更に、本発明による難燃加工剤は、他の機能加工剤と併用することもできる。機能加工剤の例としては、上述した硬仕上げ剤のほか、柔軟剤、帯電防止剤、撥水撥油剤、風合い調整剤、SR剤等を挙げることできる。
以下に本発明による難燃加工剤の製造と本発明による難燃加工の実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下において、不揮発分とは、難燃加工剤中の難燃剤と、難燃加工剤に含まれるときは、界面活性剤と消泡剤を合わせた成分をいう。
I.難燃加工剤の製造
実施例I−1
(5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドの水分散体の製造)
前記芳香脂肪族有機リン酸エステル、即ち、5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシド40重量部と、界面活性剤として、2−ブチルオクタノールの酸化エチレン12モルと酸化プロピレン12モル付加体1.5重量部とトリスチレン化フェノール酸化エチレン10モル付加物のスルホコハク酸エステルナトリウム塩1.5重量部と、シリコーン系消泡剤0.1重量部を水30重量部と混合し、これを0.8mmのガラスビーズを充填したミルに仕込み、上記難燃剤の平均粒子径がレーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製SALD−2000J、以下、同じ。)で測定して1.0μmとなるまで粉砕し、105℃の温度で30分乾燥させたときの不揮発分濃度が40%(難燃剤濃度37%)となるように水で希釈して、上記芳香脂肪族有機リン酸エステルの水分散体を得た。
この5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドの水分散体を難燃加工剤として用いるとき、この難燃加工剤を比較例による難燃加工剤1という。
(トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの水分散体の製造)
トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート40重量部と、界面活性剤として、2−ブチルオクタノールの酸化エチレン12モルと酸化プロピレン12モル付加体1.5重量部とトリスチレン化フェノール酸化エチレン10モル付加物のスルホコハク酸エステルナトリウム塩1.5重量部と、シリコーン系消泡剤0.1重量部を水30重量部と混合し、これを0.8mmのガラスビーズを充填したミルに仕込み、上記難燃剤の平均粒子径がレーザー回折式粒度分布測定装置で測定して1.0μmとなるまで粉砕し、105℃の温度で30分乾燥させたときの不揮発分濃度が40%(難燃剤濃度37%)となるように水で希釈して、上記トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの水分散体を得た。
このトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの水分散体を難燃加工剤として用いるとき、この難燃加工剤を比較例による難燃加工剤2という。
(難燃加工剤Aの製造)
上記5,5−ジメチル−2−(2−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドの水分散体と上記トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの水分散体をトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対する上記芳香脂肪族有機リン酸エステルの割合が100重量部となるように混合して、不揮発分40%(難燃剤濃度37%)の水分散型の難燃加工剤Aを得た。
実施例I−2
(難燃加工剤Bの製造)
実施例I−1においてそれぞれ製造した前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの水分散体とトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの水分散体をトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対する前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの割合が40重量部となるように混合して、不揮発分40%(難燃剤濃度37%)の水分散型の難燃加工剤Bを得た。
実施例I−3
(難燃加工剤Cの製造)
実施例I−1においてそれぞれ製造した前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの水分散体とトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの水分散体をトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対する前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの割合が70重量部となるように混合して、不揮発分40%(難燃剤濃度37%)の水分散型の難燃加工剤Cを得た。
実施例I−4
(難燃加工剤Dの製造)
実施例I−1においてそれぞれ製造した前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの水分散体とトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの水分散体をトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対する前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの割合が140重量部となるように混合して、不揮発分40%(難燃剤濃度37%)の水分散型の難燃加工剤Dを得た。
実施例I−5
(難燃加工剤Eの製造)
実施例I−1においてそれぞれ製造した前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの水分散体とトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの水分散体をトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対する前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの割合が270重量部となるように混合して、不揮発分40%(難燃剤濃度37%)の水分散型の難燃加工剤Eを得た。
比較例I−1
(難燃加工剤aの製造)
実施例I−1においてそれぞれ製造した前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの水分散体とトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの水分散体をトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対する前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの割合が20重量部となるように混合して、不揮発分40%(難燃剤濃度37%)の水分散型の難燃加工剤aを得た。
比較例I−2
(難燃加工剤bの製造)
実施例I−1においてそれぞれ製造した前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの水分散体とトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートの水分散体をトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対する前記芳香脂肪族有機リン酸エステルの割合が400重量部となるように混合して、不揮発分40%(難燃剤濃度37%)の水分散型の難燃加工剤bを得た。
比較例I−3
(難燃加工剤cの製造)
難燃剤として1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン40重量部、界面活性剤としてジスチレン化フェノールエチレンオキサイド10モル付加物2重量部、トリスチレン化フェノールエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステルのアンモニウム塩1重量部とシリコーン系消泡剤0.1重量部を水30重量部と混合し、これを0.8mmのガラスビーズを充填したミルに仕込み、上記難燃剤の平均粒子径がレーザー回折式粒度分布測定装置で測定して1.0μmとなるまで粉砕し、105℃の温度で30分乾燥させたときの不揮発分が40%(難燃剤濃度37%)となるように水で希釈して、上記難燃剤を含む水分散型の難燃加工剤cを得た。
II.ポリエステル繊維系繊維品の難燃加工(その1−ポリエステル系繊維品がポリエステル紡績糸を含む布帛である場合)
実施例II−1
経糸としてフルダルポリエステル繊維からなる56デシテックス18フィラメントのポリエステル繊維を用い、緯糸としてフルダルポリエステル繊維からなるポリエステル紡績糸を用いて、密度縦130本/2.54cm×横70本/2.54cm、平織りとした織物に通常の方法によって精練、プレセットを施して、ポリエステル系紡績糸の混率33%の試料ポリエステル繊維布帛1とした。
上記試料ポリエステル繊維布帛1を本発明による難燃加工剤Aを用いて、以下に示すように、浴中処理によって染色と同時に難燃加工して、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
(難燃加工方法)
分散染料(Dianix Black CC−R)1.5%owfと本発明による難燃加工剤を難燃剤に換算して3.0%owf用い、浴比1:15にて試料ポリエステル繊維布帛aを染浴に投入し、染浴を氷酢酸でpH3.5〜5.0に調整した。
染浴を60℃から毎分2℃の昇温速度で130℃まで昇温し、その温度で60分間保持した後、毎分3℃の降温速度で60℃まで冷却した。この後、無水炭酸ナトリウム1g/L、ノニオン系精練剤1g/Lを溶解させた温湯を用いて、80℃で15分間ソーピングした。次いで、60℃で10分間湯洗いした後、5分間水洗し、乾燥後、170℃で1分間熱処理を行い、染色と同時に難燃加工して、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
実施例II−2
実施例II−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、本発明による難燃加工剤Bを用いた以外は、同様にして、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
実施例II−3
実施例II−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、本発明による難燃加工剤Cを用いた以外は、同様にして、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
実施例II−4
実施例II−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、本発明による難燃加工剤Dを用いた以外は、同様にして、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
実施例II−5
実施例II−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、本発明による難燃加工剤Eを用いた以外は、同様にして、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
比較例II−1
実施例II−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、比較例による難燃加工剤aを用いた以外は、同様にして、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
比較例II−2
実施例II−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、比較例による難燃加工剤bを用いた以外は、同様にして、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
比較例II−3
実施例II−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、比較例による難燃加工剤cを用いた以外は、同様にして、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
比較例II−4
実施例II−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、比較例による難燃加工剤1を用いた以外は、同様にして、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
比較例II−5
実施例II−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、比較例による難燃加工剤2を用いた以外は、同様にして、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
上記実施例II−1〜II−5及び比較例II−1〜II−5において得た難燃加工ポリエステル繊維布帛のそれぞれについて、下記のようにして、難燃剤の付着量、初期(水洗濯及びドライクリーニングする前)の難燃性能、水洗濯及びドライクリーニング後の難燃性能を測定した。結果を表1に示す。
(難燃剤の付着量)
上記実施例II−1〜II−5及び比較例II−1〜II−5の難燃加工における難燃剤の付着量は、次のようにして求めた。
即ち、一般に、難燃加工において、染色を同時に行わないとき、難燃加工前の被処理布帛の重量をW、難燃加工した処理布帛の重量をWとすれば、難燃加工前後の布帛の重量変化率ΔWが難燃剤の付着量Rである。従って、難燃剤の付着量Rは、式
R=ΔW=[(W−W)/W]×100 (%)
から求められる。
上記実施例II−1〜II−5及び比較例II−1〜II−5の難燃加工においては、難燃加工と同時に染色を行ったので、難燃剤の付着量Rは、染色処理のみによる重量変化率w(%)を別に求めて、下記式
R=ΔW−w (%)
から求めた。
(難燃性能試験)
難燃性能は、JIS L 1091 A−1法(ミクロバーナー法)とJIS L 1091 D法(コイル法)にて評価した。ミクロバーナー法においては、1分間加熱試験、着炎3秒加熱試験共に残炎が3秒以内、残塵が5秒以内、炭化面積が30cm以内のときを○とし、これらの条件に満たないときを×とした。コイル法においては、接炎回数が3回以上であれば、難燃性能にすぐれるといえる。
(水洗濯)
JIS K 3371に従って、弱アルカリ性第1種洗剤を1g/Lの割合で用い、浴比1:40として、60±2℃で15分間水洗濯した後、40±2℃で5分間の濯ぎを3回行い、遠心脱水を2分間行い、その後、60℃±5℃で熱風乾燥する処理を1サイクルとして、これを5サイクル行った。
(ドライクリーニング(DC))
試料1gにつき、テトラクロロエチレン12.6mL、チャージソープ0.265g(チャージソープの重量組成はノニオン系界面活性剤(ノニルフェニルエーテルのエチレンオキサイド10モル付加物)/アニオン系界面活性剤(ジオクチルコハク酸ナトリウム塩)/水=10/10/1)を用いて、30±2℃で15分間クリーニングする処理を1サイクルとして、これを5サイクル行った。
Figure 0005754973
実施例II−1〜II−5に示すように、本発明による難燃加工剤を用いてポリエステル紡績糸を含むポリエステル繊維布帛を難燃加工することによって、そのポリエステル繊維布帛に耐久性のあるすぐれた難燃性を付与することができる。
しかし、比較例II−1とII−2に示すように、難燃剤である5,5−ジメチル−2−(2−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドを本発明で規定する範囲外の割合で含む難燃加工剤を用いても、ポリエステル繊維布帛に十分な難燃性を付与することはできない。また、比較例II−4と比較例II−5に示すように、5,5−ジメチル−2−(2−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートのうちの一方のみを難燃剤として含む難燃加工剤を用いても、ポリエステル繊維布帛に十分な難燃性を付与することができない。
比較例II−3は、難燃剤としてHBCDを含む難燃加工剤を用いて、ポリエステル繊維布帛を難燃加工したものである。比較例II−3の結果を実施例II−1〜II−5の難燃加工と比較すれば明らかなように、本発明の難燃加工によれば、HBCDを用いる難燃加工よりも、すぐれた難燃性をポリエステル繊維布帛に付与することができる。
III.ポリエステル繊維系繊維品の難燃加工(その2−ポリエステル系繊維品がカチオン可染ポリエステル繊維を含む布帛である場合)
実施例III−1
経糸としてカチオン可染ポリエステル繊維からなる84デシテックス36フィラメントのポリエステル繊維を用い、緯糸として黒原着ポリエステル繊維からなる167デシテックス48フィラメントのポリエステル繊維を用いて、密度縦360本/2.54cm×横100本/2.54cm、両面朱子織とした織物に通常の方法によって精練、プレセットを施して、カチオン可染ポリエステル混織布帛の混率57.6%の試料ポリエステル繊維布帛2とした。
上記試料ポリエステル繊維布帛2を本発明による難燃加工剤Aを用いて、以下に示すように、浴中処理によって染色と同時に難燃加工して、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
(難燃加工方法)
分散染料(Dianix Black CC−R)1.5%owfと本発明による難燃加工剤を難燃剤に換算して3.6%owf用い、浴比1:15にて試料ポリエステル繊維布帛1を染浴に投入し、染浴を氷酢酸でpH3.5〜5.0に調整した。
染浴を60℃から毎分2℃の昇温温度で130℃まで昇温し、その温度で60分間保持した後、60℃まで毎分3℃の降温速度で冷却した。この後、無水炭酸ナトリウム2g/L、ノニオン系精練剤2g/Lを溶解させた温湯を用いて、80℃で15分間ソーピングした。次いで、60℃10分間湯洗いした後、5分間水洗し、乾燥後、170℃で1分間熱処理を行い、染色と同時に難燃加工して、難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
実施例III−2
実施例III−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、本発明による難燃加工剤Bを用いた以外は、同様にして、本発明による難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
実施例III−3
実施例III−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、本発明による難燃加工剤Eを用いた以外は、同様にして、本発明による難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
比較例III−1
実施例III−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、比較例による難燃加工剤aを用いた以外は、同様にして、比較例による難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
比較例III−2
実施例III−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、比較例による難燃加工剤bを用いた以外は、同様にして、比較例による難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
比較例III−3
実施例III−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、比較例による難燃加工剤cを用いた以外は、同様にして、比較例による難燃加工ポリエステル繊維布帛を得た。
上記実施例II−1〜II−3及び比較例II−1〜3において得た難燃加工ポリエステル繊維布帛のそれぞれについて、前述したと同様にして、難燃剤の付着量、初期の難燃性能、水洗濯及びドライクリーニング後の難燃性能を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0005754973
実施例III−1〜III−3を比較例III−3と比較すれば明らかなように、本発明による難燃加工剤を用いて、カチオン可染ポリエステル繊維を含むポリエステル繊維布帛を難燃加工することによって、HBCDを用いる難燃加工と同等か、又はよりすぐれた難燃性をポリエステル繊維布帛に付与することができる。
しかし、比較例III−1とIII−2に示すように、5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドとトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを本発明で規定する範囲外の割合で含む難燃加工剤を用いても、ポリエステル繊維布帛に十分な難燃性を付与することはできない。
IV.ポリエステル繊維系繊維品の難燃加工(その3−難燃加工剤と共に硬仕上げ剤を併用してポリエステル系繊維品を難燃硬仕上げ加工する場合)
実施例IV−1
経糸としてレギュラーポリエステル繊維からなる180デシテックス84フィラメントのポリエステル繊維を用い、緯糸としてレギュラーポリエステル繊維からなる355デシテックス120フィラメントのポリエステル繊維を用いて、密度縦120本/2.54cm×横51本/2.54cm、平織とした織物に通常の方法によって精練、プレセットを施して、試料ポリエステル繊維布帛3とし、分散染料(Dianix Black CC−R)3.0%owfを用いて染色して、被処理ポリエステル繊維布帛とした。これを以下に示すように難燃硬仕上げ加工して、本発明による難燃加工ポリエステル系繊維品を得た。
(難燃硬仕上げ方法)
硬仕上げ剤としてポリエステル樹脂水分散体(互応化学工業(株)製プラスコートRZ−570、固形分25%、樹脂被膜の鉛筆硬度4H)50重量%と難燃加工剤A5重量%と水45重量%とからなる難燃硬仕上げ処理液をパディング法にて上記被処理ポリエステル繊維布帛にピックアップ85%にて付着させた。引き続き、130℃で3分間乾燥した後、170℃で1分間熱処理を行って、難燃硬仕上げポリエステル繊維布帛を得た。
実施例IV−2
実施例IV−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、本発明による難燃加工剤Cを用いた以外は、同様にして、難燃硬仕上げポリエステル繊維布帛を得た。
実施例IV−3
実施例IV−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、本発明による難燃加工剤Dを用いた以外は、同様にして、難燃硬仕上げポリエステル繊維布帛を得た。
比較例IV−1
実施例IV−1において、本発明による難燃加工剤を含まない硬仕上げ処理液を用いた以外は、同様にして、硬仕上げポリエステル繊維布帛を得た。
比較例IV−2
実施例IV−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、比較例による難燃加工剤2を含む難燃硬仕上げ処理液を用いた以外は、同様にして、難燃硬仕上げポリエステル繊維布帛を得た。
比較例IV−3
実施例IV−1において、本発明による難燃加工剤Aに代えて、比較例による難燃加工剤1を含む難燃硬仕上げ処理液を用いた以外は、同様にして、難燃硬仕上げポリエステル繊維布帛を得た。
上記実施例IV−1〜IV−3及び比較例IV−1〜IV−3において得た硬仕上げ又は難燃硬仕上げポリエステル繊維布帛のそれぞれについて、下記のようにして、難燃剤の付着量を求めると共に、前述したと同様にして、初期の難燃性能を測定した。結果を表3に示す。
(難燃剤の付着量)
実施例IV−1〜IV−3と比較例IV−1〜IV−3において、被処理ポリエステル繊維布帛に染色処理をした後の重量変化率はいずれも、+1.1%であった。その後、実施例IV−1〜IV−3及び比較例IV−1〜IV−3においては、上述したように染色処理したポリエステル繊維布帛に対して、硬仕上げ剤と難燃加工剤をパディング法にて同時に付与したので、パディング法による加工前後の布帛の重量変化率から、比較例IV−1におけるように、硬仕上げ剤のみを付与した場合の重量変化率+10.5%を減じたものを難燃剤の付着率とした。
Figure 0005754973
実施例IV−1〜IV−3に示すように、本発明による難燃加工剤を用いることによって、ポリエステル繊維布帛にすぐれた難燃性を付与することができる。
しかし、比較例IV−1に示すように、本発明による難燃加工を施さず、硬仕上げ剤を用いる硬仕上げ加工のみを行ったポリエステル繊維布帛は難燃性をもたない。比較例IV−2とIV−3に示すように、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートと5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドのうちの一方のみを難燃剤として含む難燃加工剤を用いても、ポリエステル繊維布帛に十分な難燃性を付与することができない。

Claims (10)

  1. トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート100重量部に対して、5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシド30〜300重量部をノニオン系界面活性剤とアニオン系界面活性剤の存在下に水に分散させ、又は乳化させてなることを特徴とするポリエステル系繊維品の難燃加工剤。
  2. 請求項1に記載の難燃加工剤を用いてポリエステル系繊維品を難燃加工することを特徴とするポリエステル系繊維品の難燃加工方法。
  3. 請求項1に記載の難燃加工剤を用いて、ポリエステル系繊維品を60〜140℃の温度で浴中処理することを特徴とするポリエステル系繊維品の難燃加工方法。
  4. 請求項1に記載の難燃加工剤と共に染料として少なくとも分散染料を用いて、ポリエステル系繊維品を60〜140℃の温度で浴中処理することを特徴とするポリエステル系繊維品の難燃加工方法。
  5. 請求項1に記載の難燃加工剤をポリエステル系繊維品に付着させ、100〜200℃の温度範囲で熱処理することを特徴とするポリエステル系繊維品の難燃加工方法。
  6. 請求項1に記載の難燃加工剤と共に硬仕上げ剤をポリエステル系繊維品に付着させ、100〜200℃の温度範囲で熱処理することを特徴とするポリエステル系繊維品の難燃加工方法。
  7. 請求項2から6のいずれかに記載の難燃加工方法において、ポリエステル系繊維品がカチオン可染ポリエステル繊維を含む布帛である難燃加工方法。
  8. 請求項2から6のいずれかに記載の方法において、ポリエステル系繊維品がポリエステル紡績糸を含む布帛である難燃加工方法。
  9. 請求項2から8のいずれかに記載の方法によって得られる難燃加工ポリエステル系繊維品。
  10. 請求項1に記載の難燃加工剤を用いて難燃加工してなることを特徴とする難燃加工ポリエステル系繊維品。
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