JP2011190532A - 混銑車における溶銑の脱りん処理方法 - Google Patents

混銑車における溶銑の脱りん処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】混銑車にて脱りん処理を行うに際して、脱りん処理の時間短縮を図りながらスラグのフォーミングの発生を抑制することができるようにする。
【解決手段】脱りん処理を3段階に分け、第1段階では、固体酸素の吹き込み速度を0.11〜0.18Nm3/min/tonとすると共に、CaOの吹き込み速度を0.50
〜0.85kg/min/tonする。第2段階では、固体酸素の吹き込み速度を0.07〜0.10Nm3/min/tonとすると共に、CaOの吹き込み速度を0.26〜
0.46kg/min/tonとする。第2段階後の第3段階では、固体酸素の吹き込み速度を第2段階に示した範囲と同じとした上で、固体酸素の吹き込み速度を0.20〜0.31Nm3/min/tonとする。第1段階、第2段階及び第3段階では、固体酸素
と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/ton以下にする。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば、Siの濃度が0.1〜0.3質量%の溶銑を混銑車に装入してCaOを含む精錬剤を用いて溶銑の脱りん処理を行う方法に関する。
従来より、高炉から出銑した溶銑を混銑車(トピードカー)に装入して、混銑車にて溶銑の脱りん処理等を行う様々な技術が開示されている。
特許文献1では、トーピードカー内の溶銑の上面から浸漬したランスを介して溶銑中にキャリアガスと共に粉状の脱りん剤を吹き込む溶銑の脱りん方法において、脱りん剤がCaOと酸化鉄を含有する焼結鉱および/またはCaOと酸化鉄を含有する焼結鉱のダストからなり、脱りん処理中に前記溶銑中に吹き込まれる脱りん剤中のCaOと酸化鉄からのOの重量比CaO/Oが0.40〜0.75の範囲を満足するようにしている。
特許文献1のように、トーピードカーに限定した脱りん処理ではないものの、溶銑の脱りん処理について開示した技術として、特許文献2〜特許文献4に示すものがある。
特許文献2では、処理容器内に保持された溶銑中に2本以上の浸漬ランスを介して酸化剤を吹込み脱珪・脱燐を行う溶銑の予備処理方法において、処理開始時は、浸漬ランスのうち、最初に浸漬される第一の浸漬ランスから酸化剤を溶銑中に吹込み脱珪・脱燐を進行させ、脱燐末期の段階で、第一の浸漬ランスの浸漬深さより浅い部分に第二の浸漬ランスを浸漬して、溶銑の上下方向で互いに離隔した状態で第一、第二の浸漬ランスから酸化剤を吹き込んでいる。
特許文献3では、容器内に入れられる溶銑の量が体積で容器容積の50%以上100%未満となる容器において転炉スラグを脱りん成分として利用して溶銑の脱りんをするに際し、前記転炉スラグとして塊状の転炉スラグを用い、この塊状転炉スラグを溶銑の上方から添加している。
特許文献4では、溶銑を保持した容器内に酸素源と石灰系の脱燐用フラックスとを添加して、溶銑に脱燐処理を施すことにより低燐溶銑を製造する方法において、上吹きランスを通じて酸素ガスと少なくとも一部の石灰系脱燐用フラックスとを溶銑浴面に吹き付けるとともに、搬送用ガスとともに溶銑中に吹き込んだ固体酸素源を、前記酸素ガスの吹き付けによって生じる火点近傍へ供給している。
特許第3740894号公報 特許第3786056号公報 特開2002−285219号公報 特開2007−9237号公報
特許文献1は、スラグのフォーミング(スロッピング)の発生を抑制するという技術であるが、出来る限り脱りん処理の時間短縮を図りながらフォーミングを抑制するということに着目したものではないため、この技術を用いた場合は脱りん処理時間が長くなってしまうのが実情であった。
一方、特許文献2〜特許文献4には、脱りん処理において、固体酸素の吹き込み速度、CaOの吹き込み速度、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計について部分的に開示
されているものの、スラグのフォーミングの発生を抑制することを目的とした技術ではないため、時間短縮を図りながらスラグのフォーミングの発生を抑制することは困難であった。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、脱りん処理の時間短縮を図りながらスラグのフォーミングの発生を抑制することができる混銑車における溶銑の脱りん方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、[Si]が0.1〜0.3質量%の溶銑を混銑車に装入し、CaO、気体酸素及び固体酸素を用いて溶銑の脱りん処理を行う方法において、溶銑中の[Si]が処理開始から0.08〜0.12質量%になる第1段階では、溶銑に供給する固体酸素の吹き込み速度を0.11〜0.18Nm3/mi
n/tonとすると共に、CaOの吹き込み速度を0.50〜0.85kg/min/tonとし、且つ、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/
ton以下にし、スラグの塩基度が2.0〜2.3になる第2段階では、固体酸素の吹き込み速度を0.07〜0.10Nm3/min/tonとすると共に、CaOの吹き込み
速度を0.26〜0.46kg/min/tonとし、且つ、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/ton以下にし、第2段階後の第3段階では
、固体酸素の吹き込み速度、及び、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を第2段階に示した範囲と同じとした上で、固体酸素の吹き込み速度を0.20〜0.31Nm3
min/tonとする点にある。
本発明によれば、混銑車にて脱りん処理を行うに際して、脱りん処理の時間短縮を図りながらスラグのフォーミングの発生を抑制することができる。
混銑車による溶銑の脱りん処理を示す図である。 第1段階及び第2段階における固体酸素吹き込み速度及びCaO吹き込み速度を示す図である。 スラグの塩基度とスラグの付着量との関係図である。 第2段階及び第3段階における固体酸素吹き込み速度及びCaO吹き込み速度を示す図である。 各段階における固体酸素吹き込み速度及びCaO吹き込み速度を示す図である。 脱りん時間と溶銑温度との関係を示した図である。 溶銑温度と地金付着との関係を示した図である。 実施例2を例示した図である。 比較例29を例示した図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、混銑車による溶銑の脱りん処理を示す図である。
図1に示すように、混銑車1にて溶銑2の脱りん処理を行うには、まず、高炉から出銑した溶銑2を混銑車1の容器3に装入し、混銑車1にて脱りん処理を行うために当該混銑車を脱りんステーションに移動する。そして、脱りんステーションでは、混銑車1の容器3における開口部4に、気体酸素を溶銑2に吹くための吹付けランス5を挿入すると共に、精錬剤等を溶銑2に吹き込むための吹込みランス6を挿入する。
そして、吹付けランス5を用いて溶銑2に向けて気体酸素を吹き込むと共に、溶銑2に向けて吹込みランス6を用いてCaOや固体酸素(FeO、Fe23)を含む精錬剤を吹き込むことによって溶銑2の脱りん処理を行う。
なお、後述するCaOの吹き込み速度とは、精錬剤の吹き込み速度(供給速度)をCaOに対する吹き込み速度に換算したものである。また、固体酸素の吹き込み速度とは、精錬剤の吹き込み速度(供給速度)を固体酸素(FeO、Fe23)に対する吹き込み速度に換算したものである。即ち、固体酸素の吹き込み速度は精錬剤中のFeO、Fe23の濃度から、精錬剤中のO2濃度(Nm3/kg)を算出し、精錬剤の吹き込み速度で換算している(単位は、Nm3/min/ton)。この実施形態では、精錬剤中にCaOと固
体酸素との両方を含ませて供給しているが、CaOと固体酸素とを個別に供給してもよい。
以下、本発明の溶銑の脱りん方法について詳しく説明する。
本発明の溶銑の脱りん方法は、混銑車1に装入された溶銑2に対して脱りん処理を行うもの対象としていて転炉等にて行う脱りん処理は対象外である。この脱りん処理では、珪素濃度[Si]が0.1〜0.3質量%となる溶銑を処理するものとしている。このことは、例えば、特開2001−329309号公報に記載されているように、一般的なことである。また、この脱りん処理では、精錬剤、気体酸素及び固体酸素などを連続的に供給することにしている。さらに、脱りん処理では、後述するように、第1段階、第2段階、第3段階の3つの段階に分けて、固体酸素の吹き込み速度、CaOの吹き込み速度、固体酸素と気体酸素との吹き込み速度の合計を調整している。
さて、まず、脱りん処理について時系列に見てみると、溶銑の[Si]が高い初期段階ではSiO2が優先的に生成し、[Si]が低くなってくるとSiO2の生成速度が低くなってCOガスの生成速度が大きくなる。そのため、[Si]が低くなりCOガスの生成速度が大きくなった段階では、COガスの発生に起因して生じるスラグのフォーミングを防止するためにも、固体酸素の吹き込み速度やCaOの吹き込み速度を小さくする必要がある。
そこで、本発明の脱りん処理の方法においては、図2に示すように、固体酸素等の吹き込みを開始して(処理開始)から、溶銑中の[Si]が0.08〜0.12質量%になる第1段階では、溶銑に供給する固体酸素の吹き込み速度を0.11〜0.18Nm3/m
in/tonの大きな範囲にするも、次の第2段階では、固体酸素の吹き込み速度を0.07〜0.10Nm3/min/tonの範囲に小さくしている。
つまり、溶銑中の[Si]が0.08質量%よりも小さくなりCOガスの生成速度が大きい状態においても、固体酸素の吹き込み速度を0.11〜0.18Nm3/min/t
onという大きな状態に維持してしまうと、固体酸素の吹き込み速度が大であるため、スラグのフォーミングが発生してしまうことになる。また、溶銑中の[Si]が0.12質量%よりも大きく、あまりCOガスの生成速度が大きくなっていない状態において固体酸素の吹き込み速度を小さくしてしまうと脱りん処理の時間が長くなる。
また、溶銑中の[Si]が0.08〜0.12質量%になる第1段階であっても、固体酸素の吹き込み速度を0.18Nm3/min/tonよりも大きくしてしまうと、固体
酸素の供給量が多い過ぎるために、スラグのフォーミングが発生してしまうことになる。また、第1段階において固体酸素の吹き込み速度を0.11Nm3/min/ton未満
にしてしまうと、固体酸素の供給量が少ないため脱りん処理の時間が長くなる。
加えて、本発明の脱りん処理の方法において、第1段階では、CaOの吹き込み速度を
0.50〜0.85kg/min/tonとし、且つ、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/ton以下にしている。
CaOの吹き込み速度を0.50kg/min/tonよりも小さくしてしまうと、SiO2に対してCaOの量が足りないためにスラグの塩基度が上昇せず、スラグ中にて発
生したCOガスが抜けにくくなり、スラグのフォーミングが発生してしまう。一方、CaOの吹き込み速度を0.85kg/min/tonよりも大きくしてしまうと、CaOの量が多いために脱りん処理後におけるスラグの塩基度が2.5を超えてしまい操業に支障が生じる。即ち、図3に示すように、脱りん処理後のスラグの塩基度が2.5以上になるとスラグの融点が高くなるため、混銑車内、特にスラグライン7から天井にかけてのスリーボード部8におけるスラグの付着量が増加する傾向にあることから、脱りん処理後のスラグの塩基度は2.5以下にする必要がある。なお、図3のプロット点は、10〜100ch(チャージ)の結果の平均値である。
また、本発明の脱りん処理の方法において、第1段階では、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/ton以下にしている。 固体酸素と気体酸
素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/tonよりも大きくしてしまうと、
上述したように固体酸素の吹き込み速度や気体酸素の吹き込み速度を設定したとしても酸素の供給量が多い過ぎてスラグのフォーミングが発生する場合がある。
このように、本発明の脱りん処理において、溶銑中の[Si]が処理開始から0.08〜0.12質量%になる第1段階では、溶銑に供給する固体酸素の吹き込み速度を0.11〜0.18Nm3/min/tonの範囲で一定とすると共に、CaOの吹き込み速度
を0.50〜0.85kg/min/tonの範囲で一定とし、且つ、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/ton以下にしている。
さて、脱りん処理が進み、[Si]が徐々に小さくなってスラグの塩基度が2.0に近づくと、COガスが発生し易くスラグのフォーミングが発生し易い状態となる。そこで、スラグの塩基度が2.0を超えた付近では、出来るだけ固体酸素の吹き込み速度を下げてスラグのフォーミングが発生することを防止する必要がある。
本発明の脱りん処理の方法においては、図4に示すように、スラグの塩基度が2.0〜2.3になる第2段階では、固体酸素の吹き込み速度を0.07〜0.10Nm3/mi
n/tonとしている。
ここで、固体酸素の吹き込み速度を0.10Nm3/min/tonよりも大きくして
しまうと、固体酸素の吹き込み速度を第1段階よりも小さくしたとしても、COガスが多く発生してスラグのフォーミングが発生してしまう。一方、固体酸素の吹き込み速度を0.07Nm3/min/tonよりも小さくしてしまうと固体酸素の供給量が少ないため
、脱りん処理の時間が長くなる。
また、第2段階では、CaOの吹き込み速度を0.26〜0.46kg/min/tonとし、且つ、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/t
on以下にしている。
CaOの吹き込み速度を0.26kg/min/tonよりも小さくしてしまうと、スラグの塩基度が2.0に達するまでの時間が長くなり、その間に発生したCOガスによって、スラグのフォーミングが発生してしまう。一方、 CaOの吹き込み速度を0.46
kg/min/tonよりも大きくしてしまうと、スラグの塩基度が2.0に達するまでの時間が短くすることができるものの、上述したように、CaOの量が多いために脱りん処理後におけるスラグの塩基度が2.5を超えてしまい操業に支障が生じる。
さらに、第2段階では、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3
min/ton以下にしている。固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/tonよりも大きくしてしまうと、上述したように固体酸素の吹き込み速
度や気体酸素の吹き込み速度を設定したとしても酸素の供給量が多い過ぎてスラグのフォーミングが発生する場合がある。
このように、本発明の脱りん処理において、スラグの塩基度が2.0〜2.3になる第2段階では、固体酸素の吹き込み速度を0.07〜0.10Nm3/min/tonの範
囲で一定とすると共に、CaOの吹き込み速度を0.26〜0.46kg/min/tonの範囲で一定とし、且つ、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3
/min/ton以下にしている。
さて、脱りん処理が進み、スラグの塩基度が2.0以上になると、スラグのフォーミングは次第に発生し難くなる。そこで、本発明では、スラグの塩基度が2.0以上となった第3段階では、即ち、第2段階から第3段階に移行した後は、第2段階よりも固体酸素の吹き込み速度を上昇させて脱りん反応を促進させることとしている。
即ち、図4、5に示すように、第3段階では、固体酸素の吹き込み速度、及び、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を第2段階に示した範囲と同じとした上で、固体酸素の吹き込み速度を0.20〜0.31Nm3/min/tonとしている。
CaOの吹き込み速度を0.26kg/min/ton未満にしてしまうと、CaOの供給量が少なく脱りん処理に時間がかかってしまう。一方、 CaOの吹き込み速度を0
.46kg/min/tonよりも大きくしてしまうと、CaOの量が多いために脱りん処理後におけるスラグの塩基度が2.5を超えてしまい操業に支障が生じる。
また、第1段階や第2段階のように、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/tonよりも大きくしてしまうと、酸素の供給量が多い過ぎてスラ
グのフォーミングが発生し難い状況下でも、スラグのフォーミングが発生する虞がある。
さらに、固体酸素の吹き込み速度を0.31Nm3/min/tonよりも大きくして
しまうと脱りん反応は促進するものの、スラグのフォーミングが発生しにくい状況下でも、COガスが多く発生してスラグのフォーミングが発生してしまう。一方、固体酸素の吹き込み速度が0.20Nm3/min/tonを小さいと固体酸素の供給量が少ないため
、脱りん処理の時間が長くなる。
このように、本発明の脱りん処理において、第3段階では、固体酸素の吹き込み速度、及び、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を第2段階に示した範囲と同じとした上で、固体酸素の吹き込み速度を0.20〜0.31Nm3/min/tonの範囲で一定
としている。
表1は、本発明の溶銑の脱りん方法にて脱りん処理を行った実施例と、本発明の溶銑の脱りん方法とは異なる方法にて脱りん処理を行った比較例との実施条件をまとめたものである。表2は、表1に示した精錬剤をまとめたものである。
まず、実施条件について説明する。
表1に示すように、精錬剤は、精錬剤A、精錬剤B、精錬剤C、精錬剤Dの4種類とし、表1に示す精錬剤供給速度は、精錬剤A、精錬剤B、精錬剤C、精錬剤D及び気体酸素を溶銑2に供給した場合の値である。精錬剤A、精錬剤B、精錬剤C、精錬剤Dの各種成分は、表2に示すものである。なお、3種類の精錬剤を使用しているが、これに限定されない。
表2に示す各精錬剤中に含有するO2量(固体酸素)は、式(1)により求めた。その
他は、脱りんに寄与しない成分である。
スラグの塩基度(計算塩基度C/S)は、当業者常法通りに、例えば、式(2)より求めた。式(2)において混銑車内脱珪スラグ量は、発生脱珪スラグ量から除去脱珪スラグ量の測定を行い、実測値の平均である1500kgを定数として使用する。また、塩基度を求めるに際しての処理中溶銑[Si]は、当業者常法通りに、例えば、式(3)により求めた。
脱珪酸素効率は、「鉄と鋼、vol.15(1983),1738-1445,混銑車脱珪の処理前Si濃度と脱珪酸素効率の関係、野見山寛、市川浩、丸川雄浄、姉崎正治、植木弘三満」のfig6の
中心値を使用して式(4)により求めた。
表3〜表5は、本発明の溶銑の脱りん方法にて脱りん処理を行った実施例と、本発明の溶銑2の脱りん方法とは異なる方法にて脱りん処理を行った比較例をまとめたものである。
実施例及び比較例において、スラグのフォーミングの有無は、脱りんスラグがフォーミングして、当該スラグが混銑車の開口部4から外部へと流出すれば、フォーミング有り(有、「×」)とし、スラグが開口部4から外部へ流出しなげれば、フォーミング無し(無、「○」)とした。なお、混銑車を用いた脱りん処理では、スラグを保持できるフリーボード部分が溶銑1トン当たり0.13m3程度(最大でも0.2m3)しか確保できないため、一端、大きなフォーミングが発生すると、スラグは外部へ流出してしまうことから、上述したように、スラグの流出の有無によりフォーミングの発生の有無を判断しても問題がない。また、スラグのフォーミングについては、例えば、「鉄と鋼、vol.78 No2 (1992),p200-208,原茂太、萩野和巳著」に記載されている。
スラグの付着量については、脱りん処理前と脱りん処理後の混銑車の空の重量(鉄皮+耐火物+付着物の総重量)をロードセルにて測定し、重量の増加量をスラグの付着量とした。混銑車の空の重量の測定は、脱りん処理後に溶銑を溶銑鍋に排出後、混銑車内に残ったスラグを排出した後に行った。脱りん処理前後において混銑車の重量の増減が無い場合には、スラグ付着無しとし、スラグの付着量が1.5ton/ch以下の場合を「小」とし、スラグの付着量が3.0ton/chよりも大きい場合を「大」とした。混銑車へのスラグ付着は主に溶銑処理中の溶銑より上部のスラグよりも上部側にて発生する。特に、1チャージ当たりのスラグの付着量が3.0tonを超えて大きくなると、上部側に付着したスラグによって混銑車のバランスが不安定になったり、溶銑の積載量(装入量)が大幅に低下することにより生産性が低下する場合がある。
さて、図6に示すように、脱りん処理時間が50分を超えると、実績処理後温度(処理後の溶銑の実績温度)と計算処理後温度(処理後の溶銑の計算温度)との差が大きくなる傾向(マイナス側に偏る傾向)にあり、処理終了後に実際の溶銑温度が目標温度から外れることになる。
例えば、気体酸素の吹きつけ(吹き込み)を一定として考えた場合、気体酸素の吹き込みを行っている間は、発生したCOガスがCO2に変わる2次燃焼反応により、雰囲気温
度が高くなり熱ロスが少ないため、溶銑温度が急激に低下する事は無いと考えられるが、固体酸素のみの吹込み時間が長くなると、処理容器の上部や耐火物からの熱ロスが大きくなるため、溶銑温度が急激に低下してしまう。特に脱りん処理時間が50分を越えた場合は、放熱ロスが大きくなるため、実績の処理後温度が低くなる。
このように、溶銑処理後温度が低下した場合は、次工程以降で溶銑が凝固し、容器に地金が付着する等の問題が発生するため、トラブル等に繋がる。さらには、次工程の転炉で熱源であるSiやCを投入する必要があるため、スラグ発生量が増加することや転炉での処
理時間が延長するということも考えられる。
このようなことから、脱りん処理時間(トータル脱りん処理時間)については、当該処理時間が50分以内であれば、良好「○」とし、50分を超えると不良、「×」)とした。なお、計算処理後温度とは、固体酸素と気体酸素の投入量から処理温度を計算した温度のことである。この計算処理後温度は、特開昭62−161908公報の考え方に基づき、気体酸素と固体酸素の投入量の割合から計算処理後温度を求めた。即ち、当該公報では、固体酸素量が大きくなると、ΔT(処理前溶銑温度-処理後溶銑温度)が大きくなると
して、処理目標温度に一致するように気体酸素原単位と固体酸素原単位を割り振るという方法を行っている。
なお、脱りん処理時間が50分を越えた場合は気体酸素の吹き付け量を増やして溶銑を昇熱することも考えられるが、気体酸素を追加で昇熱した場合は、溶銑中のCと気体酸素
の脱炭反応が進行するため、溶銑中の[C]濃度が低下してしまう。溶銑中の[C]濃度が低下することにより、溶銑の凝固温度が上がるため、次工程以降ではさらに地金が付着しやすくなる問題が発生する。また、固体酸素の吹込み速度が遅い事に合わせて、気体酸素の吹き込み速度も併せて低減させる考え方もあるが、気体酸素の吹き込み速度を低下した場合、攪拌力を一定にするためには、気体酸素の吹き込みランスを溶銑に近づける必要がある。この場合、脱りん処理中の溶銑のスプラッシュ等により気体酸素の吹き込みランスの溶損が進むことから気体酸素の吹き込み速度を低減することは望ましくない。
図7に示すように、脱りん処理後の溶銑温度が1270℃未満になると、溶銑を取鍋に装入した後(払い出した後)に取鍋に付着する地金付着量が増加する傾向にある。即ち、1270℃未満となる溶銑を取鍋内に払い出して取鍋を搬送した場合、取鍋を搬送中に放熱して溶銑の凝固温度に近づくために、取鍋に付着する地金が増加すると考えられる。
このようなことから、脱りん処理後の溶銑温度については、当該溶銑温度が1270℃以上であれば、良好「○」とし、1270℃未満であれば不良「×」とした。
脱りん効率は、脱りん処理前のりん濃度[Pi質量%]と、脱りん処理後のりん濃度[Pf質
量%]との比(Pi/Pf)を、処理時間(t)で割った値であり、式(5)で表すことができる。式(5)における「ln」は、自然対数eが底となるものを示している。
なお、式(5)にて求められる脱りん効率が0.030以上であれば、脱りん処理時間
が50分以上となりやすく、脱りん処理後の溶銑温度が1270℃以上となる傾向があることから、その値が0.030以上であれば良好「○」とし、0.030未満であれば不良「×」とした。
図8は、実施例2を例示したものである。図8及び表に示すように、実施例2では、まず、溶銑の[Si]が0.09質量%になるまでの第1段階(表3、切り替え時の溶銑Siの欄)において、固体酸素の吹き込み速度を0.13Nm3/min/tonとし、C
aOの吹き込み速度を0.64kg/min/tonとし、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計(総酸素供給速度)を0.26Nm3/min/tonにしている。
また、スラグの塩基度が2.0になるまでの第2段階においては、固体酸素の吹き込み速度を0.07Nm3/min/tonに下げ、CaOの吹き込み速度を0.31kg/
min/tonに下げ、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.24Nm3/m
in/tonにしている。さらに、実施例2では、スラグの塩基度が2.0になった時点で第3段階に移行しており、当該第3段階では、固体酸素の吹き込み速度を0.22Nm3/min/tonに上げ、CaOの吹き込み速度を0.35kg/min/tonに上
げ、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.29Nm3/min/tonに上げ
ている。
他の実施例においても、第1段階では、固体酸素の吹き込み速度を0.11〜0.18Nm3/min/tonの範囲にし、CaOの吹き込み速度を0.50〜0.85kg/
min/tonの範囲にし、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3
/min/ton以下にしている。
また、他の実施例において、第2段階では、固体酸素の吹き込み速度を0.07〜0.10Nm3/min/tonの範囲にし、CaOの吹き込み速度を0.26〜0.46k
g/min/tonの範囲にし、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/ton以下の範囲にしている。
さらに、他の実施例において、第3段階では、固体酸素の吹き込み速度、及び、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を第2段階に示した範囲と同じとした上で、固体酸素の吹き込み速度を0.20〜0.31Nm3/min/tonとしている。
以上、実施例1〜実施例23では、どの段階においてもスラグのフォーミングは発生することがなかった。また、実施例1〜実施例23では、脱りん処理時間を50分以内にすることができると共に、脱りん処理後の溶銑温度を1270℃以下にすることができ、さらに、1分当たりの脱りん効率も0.030以上とすることができた。加えて、実施例1〜実施例15において、処理終了後におけるスラグ付着量は、非常に少なく(表中「小」)、スラグ付着が無いものもあった(表中「無」)。
図9は、比較例29を例示したものである。図9及び表に示すように、比較例29では、第2段階においても固体酸素の吹き込み速度を0.12Nm3/min/tonに維持
したため、スラグのフォーミングが発生し、脱りん処理を一時的に停止しなければならない状況になった。
比較例24〜比較例39に示すように、各段階にて、固体酸素の吹き込み速度、CaOの吹き込み速度、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計等が本発明の規定する条件のいずれか1つでも外れた場合、スラグのフォーミングの発生があったり、脱りん処理時間が50分を超えたり、脱りん処理後の溶銑温度が1270℃を超えることが見受けられた。その他、処理終了後におけるスラグ付着量が大となる場合(表中「大」)や1分当たりの脱りん効率が0.030を下回ることもあった。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 混銑車
2 溶銑
3 容器
4 開口部
5 吹付けランス
6 吹込みランス

Claims (1)

  1. [Si]が0.1〜0.3質量%の溶銑を混銑車に装入し、CaO、気体酸素及び固体酸素を用いて溶銑の脱りん処理を行う方法において、
    溶銑中の[Si]が処理開始から0.08〜0.12質量%になる第1段階では、溶銑に供給する固体酸素の吹き込み速度を0.11〜0.18Nm3/min/tonとする
    と共に、CaOの吹き込み速度を0.50〜0.85kg/min/tonとし、且つ、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/ton以下にし、
    スラグの塩基度が2.0〜2.3になる第2段階では、固体酸素の吹き込み速度を0.07〜0.10Nm3/min/tonとすると共に、CaOの吹き込み速度を0.26
    〜0.46kg/min/tonとし、且つ、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を0.34Nm3/min/ton以下にし、
    第2段階後の第3段階では、固体酸素の吹き込み速度、及び、固体酸素と気体酸素の吹き込み速度の合計を第2段階に示した範囲と同じとした上で、固体酸素の吹き込み速度を0.20〜0.31Nm3/min/tonとすることを特徴とする混銑車における脱り
    ん処理方法。
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