JP2011188745A - N−アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体の調製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)がαで結合した糖誘導体を、酵素的に調製する新規な方法を提供する。
【解決手段】 バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB1、B2またはB3を用いて、N−アセチルグルコサミンがαで結合したジメトキシトリアゾール (GlcNAc−α−DMT)と糖受容体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体を調製する方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB1、B2またはB3を用いて、N−アセチルグルコサミンがαで結合したジメトキシトリアゾール (GlcNAc−α−DMT)と糖受容体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体を調製する方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、抗ピロリ菌効果等を有する機能性オリゴ糖鎖として有用な、N−アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体を、酵素的に調製する新規な方法に関する。
近年、高等生物の胃や十二指腸腺粘液中のムチン型糖タンパク質糖鎖の非還元末端にN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)がαでガラクトース(Gal)に結合したオリゴ糖鎖、GlcNAcα1→4Gal−Rが存在することが報告されている(非特許文献1)。この糖鎖は近年、胃癌や胃潰瘍の原因とされるヘリコバクターピロリ菌を殺菌もしくは増殖抑制する物質として注目されており(非特許文献2)、最近になって、GlcNAcがαで結合した種々の誘導体の抗ピロリ菌効果が報告されるようになった。
また、最近、GlcNAcα1→4Gal−Rに関連する糖鎖に対するいくつかのモノクローナル抗体が商品化されたことから、GlcNAcがαで結合した糖鎖の新たな機能の発見が期待されている。これらの物質のうち、比較的高い抗ピロリ菌効果を有する物質は、少なくとも上記のようにGlcNAcがαでガラクトースに結合した物質であると考えられており、いくつかの化学的合成手法が試みられている(非特許文献3)。しかしながら、目的のオリゴ糖鎖を化学的に調製するためには、複雑で多段階の合成手法や技術が必要であるために、いまだに大量調製化への目途はたっていない。
また、上記の天然型糖鎖は、高等動物が有する糖転移酵素、α1,4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(α4GnT)の働きによって生成することが知られていることから、α4GnTによる調製も試みられている(非特許文献4、特許文献1)。しかしながら、この方法は高価な基質である糖ヌクレオチドを使用し、かつα4GnTの調製においても、動物細胞等しか生産媒体にできないために、大量生産には向かない。さらにα4GnTはその糖受容体に対する構造特異性が比較的厳密であるために、GlcNAcをαで結合した新しい糖鎖およびその誘導体を調製するには不向きであると考えられる。
一方、糖加水分解酵素によるオリゴ糖鎖の合成手法は、用いる糖供与体が比較的調製しやすく、酵素自体も微生物由来のものが多いために、目的とする物質の大量調製も視野に入れることができる。このような観点から、今までに多くの酵素的合成法が報告されてきた。しかしながら、GlcNAcをαで結合した糖鎖およびその誘導体の酵素的調製方法は今までに報告例がなく、本発明者ら自身も、多糖類(ヘパリン硫酸など)からGlcNAcを遊離する酵素として報告されているヒトのα−N−アセチルグルコサミニダーゼのアミノ酸配列に似た微生物由来の酵素ホモログ(これらのホモログはグリコシルハイドロラーゼファミリー89(GH89)に属する)を見出し (特許文献2)、既存の糖供与体(パラニトロフェニル誘導体(GlcNAc−α−pNP)、およびメチルウンベリフェリル誘導体(GlcNAc−α−MU))を糖供与体とする糖転移を試みてきたが、達成することはできなかった。したがって、新しい糖供与体と糖加水分解酵素の組み合わせによる調製方法が求められていた。
イシカワ ケー(Ishihara K)ら、バイオケミストリー ジャーナル(Biochemstry Journal)、1996年、第318巻、p.409-416.
カワクボ エム(Kawakubo M)ら、サイエンス(Science)、2004年、第305巻、p.1003-1006.
マナベ エス(Manabe S)ら、ジャーナル オブ オルガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)、2007年、第72巻、p.6107-6115.
ナカヤマ ジェー(Nakayama J)ら、プロシーディングズ オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンスィズ オブ ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of USA)、1999年、第96 巻、p.8991-8996.
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、N-アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体を、簡便にかつ大量に製造できる、新規な酵素的調製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記現状にかんがみ、まずGlcNAcがαで結合した糖鎖からGlcNAcを遊離する酵素の遺伝子と考えられるいくつかのDNA配列情報を基に、いくつかの組換えタンパク質を作製したところ、あるアミノ酸配列を持つタンパク質がGlcNAcα1→4Gal−Rの糖鎖をはじめとするいくつかのGlcNAcがαで結合した糖誘導体からGlcNAcを遊離する活性を持つことを見出していた(特許文献2)。しかしながら、既存の糖供与体(パラニトロフェニル誘導体、GlcNAc−α−pNP、およびメチルウンベリフェリル誘導体、GlcNAc−α−MU)で上記α−N−アセチルグルコサミニダーゼによる糖転移を試みたが、目的とする糖誘導体を得ることはできなかった。
そこで、近年、糖加水分解酵素によりすみやかに加水分解されるDMT(ジメトキシトリアゾール)化糖に焦点を当て、N−アセチルグルコサミンがαで結合したジメトキシトリアゾール(GlcNAc−α−DMT。4,6-ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)に対するα−N−アセチルグルコサミニダーゼの水溶液中における挙動を調査したところ、上記の合成基質よりも、すみやかに加水分解されることをつきとめ、本発明の調製方法を完成するに至った。
本発明は、水溶液中一段階で調製できるジメトキシトリアゾールをαで有するN−アセチルグルコサミン(GlcNAc−α−DMT)を糖供与体として、微生物由来の糖加水分解酵素の作用により、抗ピロリ菌効果を有するオリゴ糖鎖(GlcNAcα1→4Gal−R)を調製する方法である。また、用いる糖加水分解酵素により、位置特異性の異なるオリゴ糖鎖およびその誘導体を得ることもできる。
すなわち、本発明は、以下の調製方法を提供するものである。
[1] バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB1、B2またはB3を用いて、N−アセチルグルコサミンがαで結合したジメトキシトリアゾール (GlcNAc−α−DMT。4,6-ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)と糖受容体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体を調製する方法。
[2] 糖受容体がアルコール類である[1]記載の調製方法。
[3] バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB1を用いて、GlcNAc−α−DMTとガラクトース誘導体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがガラクトース残基にα1→4で結合した糖誘導体を調製する方法。
[4] バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N-アセチルグルコサミニダーゼB2またはB3を用いて、GlcNAc−α−DMTとガラクトース誘導体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがガラクトース残基にα1→2で結合した糖誘導体、およびα1→6で結合した糖誘導体を調製する方法。
[5] グリコシルハイドロラーゼファミリー89(GH89)に属する酵素を用いて、GlcNAc−α−DMTと糖受容体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体を調製する方法。
[1] バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB1、B2またはB3を用いて、N−アセチルグルコサミンがαで結合したジメトキシトリアゾール (GlcNAc−α−DMT。4,6-ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)と糖受容体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体を調製する方法。
[2] 糖受容体がアルコール類である[1]記載の調製方法。
[3] バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB1を用いて、GlcNAc−α−DMTとガラクトース誘導体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがガラクトース残基にα1→4で結合した糖誘導体を調製する方法。
[4] バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N-アセチルグルコサミニダーゼB2またはB3を用いて、GlcNAc−α−DMTとガラクトース誘導体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがガラクトース残基にα1→2で結合した糖誘導体、およびα1→6で結合した糖誘導体を調製する方法。
[5] グリコシルハイドロラーゼファミリー89(GH89)に属する酵素を用いて、GlcNAc−α−DMTと糖受容体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体を調製する方法。
本発明により、GlcNAcがαで結合した糖誘導体および糖鎖を、より簡単かつ大量に調製可能となる。特異的にピロリ菌増殖を抑制する化合物、およびそれを含み安全で、耐性菌を生じさせないピロリ菌増殖抑制剤の調製が可能となる。さらに、従来の方法では調製できなかった多くの種類の糖誘導体が調製可能となることから、より強い抗ピロリ剤を見出す可能性を有する。
本発明において用いる酵素は、バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来の3種のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB1,B2またはB3が特に好ましいが、グリコシルハイドロラーゼファミリー89(GH89)に属するα−N−アセチルグルコサミニダーゼのホモログは上記以外の宿主にも多数見出すことができので、それらも本法と同様に用いることができると考えられる。特に、ヒト、マウス、蛇由来のα−N−アセチルグルコサミニダーゼではGlcNAc−α−pNPだけでなくヘパリン構成糖であるGlcNAc−α1,4−IdoA−RやGlcNAc−α1,4−GlcA−Rにも加水分解活性があるので、同様に糖受容体としてイズロン酸誘導体(IdoA−R)やグルクロン酸誘導体(GlcA−R)も用いることができる。
バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来の3種のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB1,B2またはB3は、特許文献2を参照してリコンビナント蛋白質として調製できる。グリコシルハイドロラーゼファミリー89(GH89)に属するα−N−アセチルグルコサミニダーゼも、それぞれの出典の文献(ヒト由来のリコンビナント酵素調製(ウェバー ビー (Webber B.)ら、プロテイン エクスプレッション アンド ピュアリフィケーション(Protein Expression and Purification)、2001年、第21 巻2号、p.251-259)、蛇毒からの調製(アンドリュー ジェー エヌ(Andrew J. N.)ら、ジャーナル オブ ケミカル アンド モレキュラー トキシコロジー(Journal of Biochemical and Molecular Toxicology)、2001年、第15巻4号、p.221-227)を参照してリコンビナント蛋白質としてもしくは天然からの抽出物として調製できる。
本発明において用いる糖受容体とは、水酸基を有する化合物であり糖供与体と反応できるものであれば特に限定しないが、具体的にはメタノール、フェニルアルコールなどのアルコール類、ベンジル β−D−ガラクトピラノシド(Gal−β−OBn)やp−メトキシフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(Gal−β−pMP)などのガラクトース誘導体、グルクロン酸やイズロン酸の誘導体などの例を挙げることができる。
本発明において酵素を用いる糖転移反応の条件は、公知の条件を用いることができるが、具体的には以下のようになる。
溶液は、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液などの例を挙げることができ、特にリン酸緩衝化生理食塩水(phosphate buffered saline,PBS)が好ましい。
溶液のpHは、中性付近が好ましく、pH6.0からpH8.0が特に好ましい。
反応の温度は、25℃から45℃が好ましく、37℃が特に好ましい。
反応の時間は、酵素濃度が数十から数百nMで数時間から24時間が好ましく、4〜5時間程度が特に好ましい。しかしながら、酵素濃度が数十nM以下においては、反応時間が24時間以上で、比較的高い糖転移収率を得ることがある。
反応容器においては、系内の温度を制御でき、かつ溶解しているタンパク質や糖質化合物を特に吸着させる容器でないかぎりどのようなものを用いてもよい。また、本発明において用いているリコンビナントタンパクや基質はいずれも室温から37℃付近では比較的安定であるために、反応において、振とうや撹拌操作を行えば、出発物質の分解もほとんどなく反応時間を短縮させることができる。
溶液は、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液などの例を挙げることができ、特にリン酸緩衝化生理食塩水(phosphate buffered saline,PBS)が好ましい。
溶液のpHは、中性付近が好ましく、pH6.0からpH8.0が特に好ましい。
反応の温度は、25℃から45℃が好ましく、37℃が特に好ましい。
反応の時間は、酵素濃度が数十から数百nMで数時間から24時間が好ましく、4〜5時間程度が特に好ましい。しかしながら、酵素濃度が数十nM以下においては、反応時間が24時間以上で、比較的高い糖転移収率を得ることがある。
反応容器においては、系内の温度を制御でき、かつ溶解しているタンパク質や糖質化合物を特に吸着させる容器でないかぎりどのようなものを用いてもよい。また、本発明において用いているリコンビナントタンパクや基質はいずれも室温から37℃付近では比較的安定であるために、反応において、振とうや撹拌操作を行えば、出発物質の分解もほとんどなく反応時間を短縮させることができる。
本発明で調製される糖誘導体には、糖鎖、糖蛋白質、糖脂質などが含まれる。
糖供与体として用いる、GlcNAc−α−DMTは、次のようにして合成した。
N−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc) 221mg (1.0mmol)を水 6.25mlに溶解し、塩化4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム(DMT−MM))553mg(2.0mmol)、次いで2,6−ルチジン 0.23ml(2.0mmol)を室温で加え、反応溶液を室温で24時間撹拌した。(化1)式の反応が進行した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応終了を確認後、減圧下溶媒を除去し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(展開溶媒: 酢酸エチル/メタノール=7/1)により精製して、4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド(GlcNAc−α−DMT) 288mg (0.80mmol, 80%)を得た。
以下に、本発明の調製方法(糖転移反応)を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
N−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc) 221mg (1.0mmol)を水 6.25mlに溶解し、塩化4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム(DMT−MM))553mg(2.0mmol)、次いで2,6−ルチジン 0.23ml(2.0mmol)を室温で加え、反応溶液を室温で24時間撹拌した。(化1)式の反応が進行した。薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応終了を確認後、減圧下溶媒を除去し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(展開溶媒: 酢酸エチル/メタノール=7/1)により精製して、4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド(GlcNAc−α−DMT) 288mg (0.80mmol, 80%)を得た。
糖供与体としてGlcNAc−α−DMT 1.8mg(5μmol, 終濃度50mM)をPBS溶液に溶解し、糖受容体としてメタノール12.3μl (300μM,12.3 vol.%)、およびBacteroides thetaiotaomicron VPI5482由来α−N−アセチルグルコサミニダーゼB2 (4.95μg、0.495μg/μl、特許文献2参照)のPBS溶液を加え、37℃で22時間インキュベートした。(化2)式の反応が進行した。反応溶液をHPLCで分析(カラム: TSK−GelAmide−80 (4.6×250mm, TOSOH),溶離液: アセトニトリル/水=3/1,流速: 1ml/min,温度: 30℃,検出: UV(214nm)したところ、メチル 2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド(GlcNAc−α−OMe)が27%の収率で生成していることを確認した。その結果を図1に示す。
糖供与体としてGlcNAc−α−DMT 1.8mg(5μmol, 終濃度 50mM)、糖受容体としてベンジル β−D−ガラクトピラノシド(Gal−β−OBn)9.5mg(35μM)をPBS溶液に溶解し、Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482由来α−N−アセチルグルコサミニダーゼB2 (4.95μg、0.495μg/μl、特許文献2参照)のPBS溶液を加え、37℃で6時間インキュベートした。(化3)式の反応が進行した。反応溶液をHPLCで分析(カラム: COSMOSIL Cholester(4.6×250mm,Nacalai Tesque), 溶離液: アセトニトリル/水=9/91, 流速: 1ml/min, 温度: 30 ℃, 検出: UV(254nm))したところ、ベンジル 6−O−(2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル) −β−D−ガラクトピラノシド(GlcNAc−α1→6−Gal−β−OBn)、ベンジル 2−O−(2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル) −β−D−ガラクトピラノシド(GlcNAc−α1→2−Gal−β−OBn)が、各々4%、8%の収率で生成していることを確認した。その結果を図2に示す。
糖供与体としてGlcNAc−α−DMT 0.36mg(1μmol, 終濃度 50mM)、糖受容体としてベンジル β−D−ガラクトピラノシド(Gal−β−OBn)1.9mg(7μmol)をPBS溶液に溶解し、Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482由来α−N−アセチルグルコサミニダーゼB3(0.10μg, 0.086μg/μl、特許文献2参照)のPBS溶液を加え、37 ℃で29時間インキュベートした。(化3)式の反応が進行した。反応溶液をHPLCで分析(カラム: COSMOSIL Cholester(4.6×250mm,Nakarai tesque) 溶離液: アセトニトリル/水=9/91, 流速: 1ml/min, 温度: 30 ℃, 検出: UV(254nm))したところ、ベンジル6−O−(2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル) −β−D−ガラクトピラノシド(GlcNAc−α1→6−Gal−β−OBn)、ベンジル 2−O−(2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル) −β−D−ガラクトピラノシド(GlcNAc−α1→2−Gal−β−OBn)が、各々0.4%、0.3%の収率で生成していることを確認した。その結果を図3に示す。
糖供与体としてGlcNAc−α−DMT 0.22mg(0.6μmol, 終濃度 30mM)、糖受容体としてp−メトキシフェニル β−D−ガラクトピラノシド(Gal−β−pMP)0.17mg(0.6μmol)をPBS溶液に溶解し、Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482由来α−N−アセチルグルコサミニダーゼB1(14.4μg, 14.4μg/μl、特許文献2参照)のPBS溶液を加え、37 ℃で5時間インキュベートした。(化4)式の反応が進行した。反応溶液をHPLCで分析(カラム: Inertsil ODS−3(4.6×250mm,GL−Science), 溶離液: アセトニトリル/水=5/95→15/85(0→25min), 流速: 1ml/min, 温度: 30 ℃, 検出: UV(280nm))したところ、p−メトキシフェニル 4−O−(2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル)−β−D−ガラクトピラノシド(GlcNAc−α1→4−Gal−β−pMP)が、10%の収率で生成していることを確認した。その結果を図4に示す。
N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)がαでガラクトース(Gal)に結合したオリゴ糖鎖(αGlcNAc含有オリゴ糖鎖)は、従来の抗生物質とは全く異なり、あらゆるピロリ菌の生育に必須の増殖活動を抑制するという機序でピロリ菌に対する抗菌作用を示すから、抗ピロリ菌剤として有用である。また、本発明によりαGlcNAc含有オリゴ糖鎖を、人工高分子担体だけでなく、クラゲや卵白などの容易に入手可能な天然のムチン型糖蛋白質糖鎖へも導入可能であることが明らかである。
したがって、調製した物質は、ピロリ菌増殖抑制剤として、サプリメントや飲食品添加物として有用であると考えられる。またそのピロリ菌増殖抑制剤を含有する飲食品は、機能性飲食品や健康飲食品として有用である。そのピロリ菌増殖抑制剤を含有する医薬製剤は、ピロリ菌に起因する消化器系疾患、特に胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍のような胃疾患を軽減したり治癒したり予防したりする医薬品として、有用である。
Claims (5)
- バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB1、B2またはB3を用いて、N−アセチルグルコサミンがαで結合したジメトキシトリアゾール(GlcNAc−α−DMT。4,6-ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル2−アセタミド−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)と糖受容体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体を調製する方法。
- 糖受容体がアルコール類である請求項1記載の調製方法
- バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB1を用いて、GlcNAc−α−DMTとガラクトース誘導体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがガラクトース残基にα1→4で結合した糖誘導体を調製する方法。
- バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron VPI5482)由来のα−N−アセチルグルコサミニダーゼB2またはB3を用いて、GlcNAc−α−DMTとガラクトース誘導体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがガラクトース残基にα1→2で結合した糖誘導体、およびα1→6で結合した糖誘導体を調製する方法。
- グリコシルハイドロラーゼファミリー89(GH89)に属する酵素を用いて、GlcNAc−α−DMTと糖受容体を反応させて、N−アセチルグルコサミンがαで結合した糖誘導体を調製する方法。
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JP (2) | JP2011188745A (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2014132468A1 (ja) * | 2013-03-01 | 2014-09-04 | 独立行政法人理化学研究所 | 糖鎖化合物および糖鎖化合物の製造方法 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5425481B2 (ja) * | 2008-01-15 | 2014-02-26 | 公益財団法人野口研究所 | α−N−アセチルグルコサミニル結合を加水分解する新規な糖質加水分解酵素 |
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2010
- 2010-03-11 JP JP2010054874A patent/JP2011188745A/ja active Pending
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2011
- 2011-08-31 JP JP2011190079A patent/JP5892750B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
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JP5892750B2 (ja) | 2016-03-23 |
JP2011244832A (ja) | 2011-12-08 |
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