JP2011181511A - 固体高分子型燃料電池用の多孔質電極基材 - Google Patents

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Abstract

【課題】厚み方向の見かけの熱拡散率が低く、高加湿条件下または高電流密度領域においてもフラッディング耐性の高い多孔質電極基材、ならびにその基材を用いてなる膜−電極接合体および固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】周期加熱法により測定された厚み方向の見かけの熱拡散率が0.05〜0.50mm2/sである固体高分子型燃料電池用の多孔質電極基材。平面状に分散せしめられた平均繊維径が3〜9μmの炭素短繊維と、フィブリル化された合成パルプとを含む炭素繊維紙に、炭素前駆体樹脂を付着させた樹脂付着炭素繊維紙を得る工程;前記樹脂付着炭素繊維紙を加熱プレス硬化して、中間基材を得る工程;および前記中間基材を最高温度1000〜1800℃で加熱して、前記炭素前駆体樹脂を炭素化する工程;を有する方法により、多孔質電極基材を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池に用いられる多孔質電極基材およびその製造方法、ならびにその基材を用いてなる膜−電極接合体および固体高分子型燃料電池等に関するものである。
固体高分子型燃料電池用の多孔質電極基材としては、炭素短繊維同士を樹脂炭化物で結着した基材が用いられる。多孔質電極基材は、一般に、炭素短繊維とポリビニルアルコール等の有機質バインダーを含む抄造媒体との混合物を抄造してシート状中間基材を得た後、その中間基材を加熱すると炭素化する樹脂、例えば熱硬化性樹脂であるレゾール型フェノール樹脂を付着させ、さらに樹脂付着中間基材を加熱して炭素化することにより製造される。
多孔質電極基材の重要な役割のひとつに、触媒層での反応に必要な電子または生成される電子をセパレーターへ伝導する機能がある。高い導電性を有する多孔質電極基材を得るためには、樹脂や炭素短繊維をできるだけ高温で処理することにより黒鉛型結晶を成長させるのが良いとされ、例えば特許文献1や特許文献2に開示されるように、炭素化処理の最高温度を1200〜3000℃とするなど多くの製造方法が提案されている。しかし、高温で炭素化処理された多孔質電極基材が組み込まれた固体高分子型燃料電池は、温度や加湿の条件によって発電性能が大きく変動し、特に高加湿条件においてフラッディングが起こりやすい。なお、フラッディングとは、液体水が電解質膜付近に滞留することによりガス拡散が阻害され、電池性能が著しく低下することである。
フラッディング耐性を高めるひとつの方法として、液体水とガスの経路を分離することが考えられ、例えば特許文献3では、細孔径分布が2つのピークを有する多孔質電極基材が提案されている。しかし、この多孔質電極基材でも、高加湿条件下、高電流密度領域において生成水の凝縮が増えると、フラッディングのおそれがあるという問題がある。
特開2004−288489号公報 特開2006−89331号公報 国際公開第2005/124907号パンフレット
本発明は、これら従来の技術の課題を解決するもので、厚み方向の見かけの熱拡散率が低く、高加湿条件下または高電流密度領域においてもフラッディング耐性の高い多孔質電極基材、ならびにその基材を用いてなる膜−電極接合体および固体高分子型燃料電池を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は下記の構成からなる。
(1)周期加熱法により測定された厚み方向の見かけの熱拡散率が0.05〜0.50mm 2 /sである固体高分子型燃料電池用の多孔質電極基材。
(2)前記熱拡散率が、0.30〜0.50mm 2 /sである前記(1)に記載の多孔質電極基材。
(3)平面状に分散せしめられた平均繊維径が3〜9μmの炭素短繊維と、フィブリル化された合成パルプとを含む炭素繊維紙に、炭素前駆体樹脂を付着させた樹脂付着炭素繊維紙を得る工程;前記樹脂付着炭素繊維紙を加熱プレス硬化して、中間基材を得る工程;および前記中間基材を最高温度1000〜1800℃で加熱して、前記炭素前駆体樹脂を炭素化する工程;によって製造される、前記(1)または(2)に記載の多孔質電極基材。
(4)前記フィブリル化された合成パルプのJIS P8121(パルプ濾水度試験法:カナダ標準型)で定義される濾水度が400〜900mlである前記(3)に記載の多孔質電極基材。
(5)前記炭素繊維紙に付着させる前記炭素前駆体樹脂の量が、前記炭素短繊維100質量部に対して70〜120質量部である前記(3)または(4)に記載の多孔質電極基材。
(6)前記中間基材を加熱する最高温度が、1400〜1700℃である前記(3)〜(5)のいずれかに記載の多孔質電極基材。
(7)前記炭素短繊維が、ポリアクリロニトリル系炭素繊維である前記(3)〜(6)のいずれかに記載の多孔質電極基材。
本発明によれば、厚み方向の見かけの熱拡散率が低く、高加湿条件下または高電流密度領域においてもフラッディング耐性の高い多孔質電極基材、ならびにそれを用いた膜−電極接合体および固体高分子型燃料電池を提供することができる。
本発明に係る多孔質電極基材の走査型電子顕微鏡による表面観察写真である。
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
<多孔質電極基材>
本発明の多孔質電極基材は、後述する製造方法より製造されたものである。この多孔質電極基材においては、平面状に分散せしめられた平均繊維径3〜9μmの炭素短繊維同士が、不定形の樹脂炭化物で結着され、さらに前記炭素短繊維同士が網状の樹脂炭化物により架橋された構造が形成されている。
〔炭素短繊維〕
本発明で使用する炭素短繊維の平均繊維径は、表面平滑性、導電性の付与に好適な3〜9μmであり、好ましくは4〜7μmである。また、表面平滑性および導電性の両立のため、異なる平均繊維径の炭素短繊維を2種類以上用いることも好ましい。異なる平均繊維径の炭素短繊維を2種以上用いるにあたっては、用いた炭素短繊維全体の平均繊維径が上記範囲に入ればよいが、各炭素短繊維の平均繊維径がそれぞれ上記範囲に入ることが好ましい。炭素短繊維の長さは、特に限定されないが、抄紙時の分散性および機械的強度を高めるために、3mm以上12mm以下が好ましい。
炭素短繊維の種類は、特に限定されるものでなく、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、フェノール樹脂系炭素繊維、再生セルロース系炭素繊維、セルロース系炭素繊維等を使用することができる。これらの炭素短繊維を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。特に、圧縮強度や引張強度が高いことから、PAN系炭素繊維が好ましい。
〔樹脂炭化物〕
本発明において、樹脂炭化物とは、後述する炭素前駆体樹脂を炭化してできた、炭素短繊維同士を結着する物質である。
多孔質電極基材における樹脂炭化物の量は、多孔質電極基材を100質量%としたときに、25〜40質量%であることが好ましく、28〜34質量%がより好ましい。樹脂炭化物が25質量%以上であれば、炭素短繊維同士を完全に結着し多孔質電極基材の機械的強度を十分なものとなる。なお、完全に結着されなかった炭素短繊維は、多孔質電極基材から脱落し、電解質膜に刺さり短絡の原因となることがある。一方、樹脂炭化物が40質量%以下であれば、多孔質電極基材中の炭素短繊維の比率を高く保ちつつ、炭素前駆体樹脂の硬化時の加圧により細孔が炭素前駆体樹脂で埋められることがなくなる。
〔不定形の樹脂炭化物〕
本発明では、炭素短繊維同士が、不定形の樹脂炭化物で結着されていることが必要である。
〔網状の樹脂炭化物〕
本発明では、炭素短繊維同士を結着する不定形の樹脂炭化物とともに、機械強度と反応ガス・水分管理を両立させるという観点から、炭素短繊維同士を架橋する網状の樹脂炭化物の存在が必要である。
この網状の樹脂炭化物は、炭素短繊維とは外観が異なる。また、炭素短繊維を構成する炭素は配向しているのに対して、網状の樹脂炭化物を構成する炭素は上述の不定形の樹脂炭化物と同様に配向していない。
〔構造〕
炭素短繊維同士が不定形の樹脂炭化物で結着され、かつ網状の樹脂炭化物で架橋されている様子を図1に示した。図1に示すように、炭素短繊維同士を不定形の樹脂炭化物で結着させると共に、網状の樹脂炭化物を架橋させることにより、直径2μm程度の小さな孔と直径50μm程度の大きな孔両方を混在させることができる。細い網状の樹脂炭化物は、炭素繊維に比して補強効果はあまり大きくないが、細孔を細分化するため、ガス透過度を小さくする傾向にある。しかし、高加湿条件下で小さな孔が生成水を吸収しても比較的大きな孔が存在しているため、ガスが流れなくなり性能が急に低下する(いわゆるフラッディング)ことはない。ガス透過度の高い従来の多孔質電極基材では、その上に形成される触媒層や高分子膜が乾きやすいという問題があったが、網状の樹脂炭化物の架橋を有する本発明の多孔質電極基材では、網状の樹脂炭化物が多数の小さい孔を形成しているので、保水性が良く、反応ガスの供給および排出のバランスも安定なので、固体高分子型燃料電池に組んだときの性能を向上させることができる。
〔水銀圧入法による細孔径分布〕
本発明の多孔質電極基材は、水銀圧入法により細孔径分布を測定したとき、5μm以上20μm未満の範囲と、20μm以上50μm以下の範囲とにそれぞれ1つずつ分布のピークを有することが好ましく、10μm以上18μm以下の範囲と、25μm以上40μm以下の範囲とにそれぞれ1つずつ分布のピークを有することがより好ましい。これにより、多孔質電極基材が、反応ガスを反応部(触媒層)に効率よく送り届ける機能だけでなく、反応ガスに含まれている水や発電により発生する水を効率よく排出する機能も有することとなる。反応ガスを効率よく反応部(触媒層)に送り届けるためには20μm以上50μm以下の範囲にピークを有する細孔の存在が有効であり、効率よく水を排出するためには、大量に水分が発生した時に水分を一時的に取り込むための孔として5μm以上20μm未満の範囲にピークを有する細孔の存在が有効である。
本発明の多孔質電極基材は、炭素短繊維同士が不定形の樹脂炭化物で結着されてできる大きい細孔と、炭素短繊維同士が網状の樹脂炭化物で架橋されて形成される小さい孔とを有するため、上述の細孔半径の分布を有することが可能となる。
〔周期加熱法〕
周期加熱法(温度波熱分析法、交流法、交流加熱法、交流ジュール熱法、acカロリーメータ法等とも称される)とは、膜状または平板状試料の厚み方向の熱拡散率を測定するのに適した非定常熱拡散率測定方法の一種であり、例えば特許第4093333号公報に開示されている。
周期加熱法は、平板状試料の表面に交流ヒーターを配置すると共に、当該試料の裏面に温度波測定用センサーを配置し、試料表面で発生する交流発熱の波形と、試料裏面で測定される温度波形の位相差を求め、この位相差と交流電流の周波数との関係式から被測定試料の厚さ方向の熱拡散率を求める方法である。試料の厚みをdとすると、位相差Δθはx=0面とx=dの面での位相の差分で、以下のように表せる。
Δθ=−d・√(ω/2α)−π/4
この式より、厚みdが既知の試料について、一方の面で変調周波数ωを変化させて交流状に加熱し、そのときの裏面における温度変化の位相遅れΔθを測定することにより、熱拡散率αを求めることができる。この測定においては、試料の加熱面と裏面における温度変化の位相差により熱拡散率を求めるため、温度の絶対値を必要とせず、高精度な測定が可能となる。
非定常熱拡散率測定方法として他にレーザーフラッシュ法が知られている。レーザーフラッシュ法では試料表面にレーザー光を照射し、それにより生じた試料裏面の温度の絶対変化を赤外センサー等で検出し、熱拡散率を算出する。しかし、多孔質電極基材のようにレーザー光が透過するような試料の場合、例えばレーザー光の入射面を黒化膜や金属スパッタリングで被覆する必要があり、このような処理により測定精度が低下するという問題がある。また、測定理論に均質材料の温度の過渡応答を用いているため、複数の材料が接続している場合の測定には向かない。従って、多孔質電極基材の厚み方向の熱拡散率測定方法としては周期加熱法がより好ましい。
〔熱拡散率〕
熱拡散率は、温度勾配により運ばれる温度(熱エネルギー)の拡散係数を意味し、熱伝導率(媒質中の温度勾配に沿って運ばれる熱流束の大きさを規定する量)と次式の関係にある。
(熱伝導率)=(熱拡散率)×(定圧比熱容量)×(密度)
単位は拡散係数と共通であり、m2/sあるいはmm2/s等が用いられる。本発明の多孔質電極基材における熱伝導媒体は、炭素短繊維、不定形の樹脂炭化物、網状の樹脂炭化物、および空孔中の空気である。従って、多孔質電極基材の熱拡散率は、均質材料の熱拡散率とは異なり、炭素質と空気の熱拡散率からなる見かけの熱拡散率である。
フラッディング耐性の高い多孔質電極基材となるためには、見かけの熱拡散率は0.05〜0.50mm2/sであることが好ましく、0.30〜0.50mm2/sであることがより好ましい。見かけの熱拡散率が0.50mm2/s以下であることにより、燃料電池の発電により生じた熱が外部に散逸しにくく、生成水の蒸発熱として消費されるため、生成水は凝縮しにくくフラッディング耐性が高くなる。また、見かけの熱拡散率が0.05mm2/s以上であることにより、多孔質電極基材に蓄熱されすぎることなく適度な保湿性を維持することができる。
<多孔質電極基材の製造方法>
本発明の多孔質電極基材の製造方法は、平面状に分散せしめられた平均繊維径が3〜9μmの炭素短繊維と、フィブリル状物とを含む炭素繊維紙に、炭素前駆体樹脂を含む樹脂付着炭素繊維紙を得る工程;前記樹脂付着炭素繊維紙を加熱プレス硬化して、中間基材を得る工程;および前記中間基材を最高温度1000〜1800℃で加熱して、前記炭素前駆体樹脂を炭素化する工程;を有する。製造コストの低下ができるという点から、全工程にわたり連続的に行われることが好ましい。
〔フィブリル状物〕
本発明では、多孔質電極基材中で、
1)炭素短繊維同士が不定形の樹脂炭化物で結着され、
2)炭素短繊維同士が網状の樹脂炭化物によりで架橋された
構造を形成するために、フィブリル状物(フィブリル化された合成パルプ)を使用する。
フィブリル状物は、樹脂の炭素化により消失するが、フィブリル状物の周りに付着した炭素前駆体樹脂が樹脂炭化物として残り、網状の樹脂炭化物の形成に寄与する。フィブリル化の度合いは、JIS P8121(パルプ濾水度試験法:カナダ標準型)で定義される濾水度によって評価することができる。フィブリル状物におけるフィブリル化の度合いについては、JIS P8121(パルプ濾水度試験法:カナダ標準型)で定義される濾水度が400〜900mlであることが好ましい。濾水度を400ml以上とすることにより、多孔質電極基材の表面状態を良好なものとすることができ、また、炭素繊維紙を抄紙によって製造する場合には、抄紙時の水抜けが良好なものとなる。一方、濾水度を900ml以下とすることにより、フィブリル状物を形成する繊維の直径を適切なものとすることができ、多孔質電極基材の表面が粗になることがなく、固体高分子型燃料電池としたときに他の部材との接触を良好に保つことができる。
フィブリル状物は、炭素短繊維と一緒に分散し、炭素短繊維の再収束を防止する役割も果たす。また、炭素前駆体樹脂によっては、その硬化時に縮合水を生成するものもあるが、フィブリル状物には、その水を吸収・排出する役割も期待できる。そのため、水との親和性にも優れているものが好ましい。
フィブリル状物としては、炭素繊維以外のフィブリル状物であることが必要であるが、フィブリル化されたポリエチレン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維などの合成パルプを用いることができる。炭素繊維との親和性、取り扱い性、コストの点から、フィブリル化されたポリエチレン繊維が好ましい。
なお、炭素繊維紙を抄紙によって製造する場合は、フィブリル状物には、抄紙時の分散媒に不溶でかつ膨潤しないことが求められる。分散媒に溶解するフィブリル状物を用いた場合は、炭素前駆体樹脂が付着する段階で形状が既に変化しているため、網状の樹脂炭化物を形成することができない。
架橋構造を効率的に形成するという点から、フィブリル状物を構成する繊維の表面自由エネルギーが、使用する炭素短繊維の表面自由エネルギーより大きいものが好ましい。フィブリル状物を構成する繊維の表面自由エネルギーが炭素短繊維より大きいことで、炭素前駆体樹脂が炭素繊維に優先的に付着し、炭素化後、網状の架橋構造が形成されやすくなる。
炭素繊維紙中のフィブリル状物の質量比率は、10〜70質量%であることが好ましい。フィブリル状物の質量割合を10質量%以上とすることで、網状の樹脂炭化物を十分に発達させることができ、多孔質電極基材に十分な機械強度とガス透過度を付与できる。また、フィブリル状物は、樹脂を加圧下で硬化するときに生じるうねりやシワ等の外力に打ち勝つための補強材としてもはたらくため、10質量%以上であることが好ましい。一方、フィブリル状物の質量割合を70質量%以下としておけば、炭素短繊維に付着する炭素前駆体樹脂の不足により多孔質電極基材が崩れやすくなったり、厚み制御が難しくなるのを防いだりすることができる。
〔有機高分子化合物〕
本発明の多孔質電極機材の製造方法では、炭素繊維紙の構成材料として、有機高分子化合物を加えることができる。有機高分子化合物は、炭素繊維紙中で各成分をつなぎとめるバインダーとしてはたらく。有機高分子化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル、セルロース、ポリ酢酸ビニル等を用いることができる。その中でも、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等が好ましく用いられる。特にポリビニルアルコールは抄紙工程での結着力に優れるため、炭素短繊維の脱落が少なく、バインダーとしての有機高分子化合物として好適である。本発明では、繊維状の有機高分子化合物を用いることも可能である。
〔炭素繊維紙の抄紙〕
炭素繊維紙は、抄紙によって好適に得られる。抄紙方法としては、液体の媒体中に炭素短繊維を分散させて抄造する湿式法や、空気中に炭素短繊維を分散させて降り積もらせる乾式法が適用できる。中でも、湿式法が好ましい。また、前述したように、炭素短繊維同士の開繊、および再収束を防止する役割を果たすフィブリル状物を適当量混ぜることが必要であり、炭素短繊維同士を結着させるバインダーとして適当量の有機高分子化合物を混ぜることが好ましい。
フィブリル状物および必要に応じて用いる有機高分子化合物を炭素短繊維に混入する方法としては、炭素短繊維とともに水中で攪拌分散させる方法や、直接混ぜ込む方法があるが、均一に分散させるためには水中で拡散分散させる方法が好ましい。有機高分子化合物は混ぜなくても構わないが、有機高分子化合物を混ぜることにより、炭素繊維紙の強度を保持し、その製造途中で炭素繊維紙から炭素短繊維が剥離したり、炭素短繊維の配向が変化したりするのを防止することができる。
また、抄紙には連続で行う方法やバッチ式で行う方法があるが、本発明において行う抄紙は、特に目付のコントロールが容易であるという点と生産性および機械的強度の観点から、連続抄紙が好ましい。
〔炭素前駆体樹脂〕
炭素繊維紙に付着させる炭素前駆体樹脂は、常温において粘着性または流動性を示す樹脂で、かつ炭素化後も導電性物質(樹脂炭化物)として残存する物質が好ましく、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ピッチ等を単独または混合物として用いることができる。中でも、炭素短繊維との結着力が強く、炭化時の残存重量が大きいことから、フェノール樹脂が好ましい。
フェノール樹脂としては、アルカリ触媒存在下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって得られるレゾール型フェノール樹脂を用いることができる。また、レゾール型の流動性フェノール樹脂に公知の方法によって酸性触媒下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する、固体の熱融着性を示すノボラック型のフェノール樹脂を溶解混入させることもできる。この場合は、ヘキサメチレンジアミン等の硬化剤を含有した自己架橋タイプのものが好ましい。
フェノール類としては、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシロール等が用いられる。アルデヒド類としては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール等が用いられる。また、これらを混合物として用いることができる。これらはフェノール樹脂として市販品を利用することも可能である。
〔炭素前駆体樹脂の付着量〕
炭素繊維紙に付着させる炭素前駆体樹脂の量は、炭素短繊維100質量部に対して70〜120質量部の範囲が好ましく、80〜100質量部の範囲がさらに好ましい。炭素前駆体樹脂の種類や炭素繊維紙への付着量により、最終的に多孔質電極基材に炭化物として残る割合が異なるが、炭素繊維紙に付着させる炭素前駆体樹脂の量を上記範囲とすることで、炭素前駆体樹脂を炭化した樹脂炭化物の残存量が所望の値となりやすい。
〔炭素前駆体樹脂を付着させる方法〕
炭素繊維紙に炭素前駆体樹脂を付着させる方法としては、特段の制限はないが、コーターを用いて炭素繊維紙表面に炭素前駆体樹脂を均一にコートする方法、絞り装置を用いるdip−nip方法、または炭素繊維紙と炭素前駆体樹脂フィルムを重ねて炭素前駆体樹脂を炭素繊維紙に転写する方法が、連続的に行うことができ、生産性および長尺ものも製造できるという点で好ましい。
〔加熱プレス硬化〕
続いて、樹脂付着炭素繊維紙を加熱プレス硬化して、炭素繊維紙表面を平滑にした中間基材を得る。この工程がない場合でも良好な強度とガス透過度とを共に有する多孔質電極基材が得られるが、その多孔質電極基材に大きな起伏が生じるため、セルを組んだときに多孔質電極基材と周辺基材との接触が十分でなくなる。
加熱プレス硬化の方法としては、特に限定されないが、上下両面から平滑な剛板にて熱プレスする方法や連続ベルトプレス装置を用いて行う方法がある。中でも、長尺の多孔質電極基材を製造できるという点で、連続ベルトプレス装置を用いて行う方法が好ましい。すなわち、樹脂付着炭素繊維紙の加熱プレス硬化を、炭素繊維紙の全長にわたって連続して行うことが好ましい。多孔質電極基材が長尺であれば、多孔質電極基材の生産性が高くなるだけでなく、その後のMEA製造も連続で行うことができ、燃料電池のコスト低減化に大きく寄与することができる。
連続ベルトプレス装置におけるプレス方法としては、ロールプレスによりベルトに線圧で圧力を加える方法と液圧ヘッドプレスにより面圧でプレスする方法があるが、後者の方がより平滑な多孔質電極基材が得られるという点で好ましい。効果的に表面を平滑にするためには、炭素前駆体樹脂が最も軟化する温度でプレスし、その後加熱または冷却により樹脂を固定する方法が最もよい。炭素繊維紙に付着した炭素前駆体樹脂の比率が多い場合は、プレス圧が低くても平滑にすることが容易である。このとき必要以上にプレス圧を高くすることは、多孔質電極基材としたときその組織が緻密になりすぎる、激しく変形するなどの問題が生じる場合がある。多孔質電極基材の組織が緻密になりすぎた場合は、焼成時に発生するガスがうまく排出されず、多孔質電極基材の組織を壊してしまう場合もある。
剛板に挟んで、または連続ベルト装置で炭素繊維紙に付着した炭素前駆体樹脂の硬化を行う時は、剛板やベルトに炭素前駆体樹脂が付着しないようにあらかじめ剥離剤を塗っておくか、炭素繊維紙と剛板やベルトとの間に離型紙を挟んで行うことが好ましい。
加熱プレス硬化の条件としては、5〜15MPaの面圧でプレスし、140〜220℃で1〜5分とすることが好ましい。
〔炭素化〕
続いて、中間基材を炭素化することで、多孔質電極基材を得る。多孔質電極基材の導電性を高めるために、不活性ガス中で炭素化することが好ましい。炭素化は、中間基材の全長にわたって連続で行うことが好ましい。多孔質電極基材が長尺であれば、多孔質電極基材の生産性が高くなるだけでなく、その後工程のMembrane Electrode Assembly(MEA)製造も連続で行うことができ、燃料電池のコスト低減化に大きく寄与することができる。
炭素化は、中間基材を最高焼成温度1000〜1800℃、好ましくは1400〜1700℃で加熱する。また、炭素化の前に、不活性雰囲気下、300〜800℃での前炭素化を行っても良い。
<膜−電極接合体>
本発明の多孔質電極基材を、触媒を担持した炭素粉末を主体とする触媒層を介して高分子電解質膜の片面または両面に接合して、膜−電極接合体とすることができる。本発明の多孔質電極基材を接合する面は、アノード側でもカソード側でもよい。
高分子電解質膜としては、プロトン解離性の基、例えば−OH基、−OSO3H基、―COOH基、−SO3H基等が導入された高分子の膜を用いることが好ましく、化学的安定性およびプロトン伝導性の点から、パーフルオロスルホン酸系の膜または芳香族スルホン酸イミド系の膜を用いることがより好ましい。
触媒としては、白金、白金合金、パラジウム、マグネシウム、バナジウム等が挙げられるが、白金または白金合金を用いることが好ましい。
<固体高分子型燃料電池>
前述のような多孔質電極基材または膜−電極接合体は、固体高分子型燃料電池に好適である。
固体高分子型燃料電池のカソード側では、電極反応生成物としての水や高分子電解質膜を浸透した水が発生する。また、固体高分子型燃料電池のアノード側では、高分子電解質膜の乾燥を抑制するために加湿された燃料が供給される。このような点から、本発明に係る多孔質電極基材は、ガス透過性を確保するために、撥水剤として撥水性の高分子による撥水処理がされていることが好ましい。
撥水性の高分子としては、化学的に安定でかつ高い撥水性を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂を用いることが好ましい。
多孔質電極基材への撥水処理の方法としては、撥水性の高分子の微粒子が分散した分散水溶液中に多孔質電極基材を浸漬させるディップ法、分散水溶液を噴霧するスプレー法などを用いることができるが、面内方向、厚み方向への導入量の均一性の高いディップ法が好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例中の各物性値等は、以下の方法で測定した。
(1)厚み
多孔質電極基材の厚みは、厚み測定装置ダイヤルシックネスゲージ7321(商品名、株式会社ミツトヨ製)を使用して測定した。使用した測定子の大きさは直径10mmであり、測定圧力は1.5kPaとした。
(2)厚み方向の見かけの熱拡散率
多孔質電極基材の厚み方向の見かけの熱拡散率は、ISO規格22007−3に準拠した方法によって求めた。具体的には、周期加熱法熱拡散率測定装置FTC−1(商品名、アルバック理工株式会社製)を用い、10mm四方に切り取った多孔質電極基材の試料片を、12mm四方に切り取った厚さ7.6μmのポリイミドフィルム2枚で挟み、5kgの錘による荷重下、大気中、室温にて測定した。ヒーター電流は10mAとし、ヒーター電圧は16Vとした。測定周波数は5〜30Hzとし、同装置付属の解析ソフトウェアを使用して熱拡散率を求めた。
(3)細孔径分布
水銀ポロシメーターとしてPore Master−60(商品名、Quantachrome社製)を用い、水銀圧入法により細孔容積を測定し、そのデータから細孔径の分布を求めた。
(4)ガス透過度
多孔質電極基材のガス透過度は、JIS−P8117に準拠した方法によって求めた。具体的には、ガーレー式デンソメーター(熊谷理機工業株式会社製)を使用し、ガス流通部の径が3mmφの冶具(圧縮部面積:0.0707cm2)を有するセルに多孔質電極基材の試験片を挟み、孔から1.29kPaの圧力で200mLのガス(空気)を流し、ガスが通過する時間を測定することで、以下の式より算出した。
ガス透過度(m/sec/MPa)=気体透過量(m3)/気体透過孔面積(m2)/透過時間(sec)/透過圧(MPa)
(5)貫通抵抗
多孔質電極基材の厚さ方向の貫通抵抗は、試料を銅板に挟み、銅板の上下から1MPaで加圧し、10mA/cm2の電流密度で電流を流したときの抵抗値を測定し、次式より求めた。
貫通抵抗(Ω・cm2)=測定抵抗値(Ω)×試料面積(cm2
<実施例1>
平均繊維径が7μm、平均繊維長が3mmのポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維の短繊維束を、湿式短網連続抄紙装置のスラリータンクで水中に均一に分散させて解繊させた。炭素短繊維が十分に分散したところに、バインダーであるポリビニルアルコール(PVA)の短繊維(クラレ株式会社製、商品名:VBP105−1、カット長3mm)、およびフィブリル状物であるポリエチレンパルプ体(三井化学株式会社製、商品名:SWP、濾水度:450ml)を、炭素短繊維に対してそれぞれ18質量%および77質量%となるように均一に分散させ、送り出した。送り出されたウェブを短網板に通し、ドライヤー乾燥することで、坪量43g/m2、長さ100mの炭素繊維紙Aを得た。
次に、炭素繊維紙Aに、キスコート法により炭素前駆体樹脂を付着させた。具体的には、フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:フェノライトJ−325)の40質量%メタノール溶液が付着したローラーに、炭素繊維紙Aを均一に片面ずつ接触させ、連続的に熱風を吹きかけて乾燥することで、樹脂付着炭素繊維紙Bを得た。これによって、炭素繊維紙100質量部に対して46質量部のフェノール樹脂が付着した(炭素短繊維100質量部に対するフェノール樹脂の量は90質量部である)。
次に、樹脂付着炭素繊維紙Bを、例えば特許第3699447号に開示されている、一対のエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置(ダブルベルトプレス装置:DBP)にて連続的に加熱し、表面が平滑化された中間基材C(シート厚み:270μm)を得た。このときの予熱ゾーンでの予熱温度は150℃、予熱時間は5分であり、加熱加圧ゾーンでの温度は予熱ゾーンと同じ150℃、プレス方式は液圧プレス方式でプレス圧力は面圧2.0MPaであった。なお、ベルトに張り付かないように、樹脂付着炭素繊維紙Bを2枚の離型紙の間に挟んで通した。
その後、30cm幅で100m得られた中間基材Cを、窒素ガス雰囲気中にて500℃の連続焼成炉にて5分間フェノール樹脂の硬化処理および前炭素化処理をしたのち、窒素ガス雰囲気中にて1200℃の連続焼成炉において5分間加熱する炭素化処理をすることで長さ100mの多孔質電極基材を連続的に得て、外径30cmの円筒型紙管に巻き取った。得られた多孔質電極基材を評価した結果を表1に示す。
<実施例2>
連続焼成炉での炭素化処理において、窒素ガス雰囲気中にて5分間加熱する温度を1450℃としたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材を評価した結果を表1に示す。
<実施例3>
連続焼成炉での炭素化処理において、窒素ガス雰囲気中にて5分間加熱する温度を1100℃としたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材を評価した結果を表1に示す。
<実施例4>
連続焼成炉での炭素化処理において、窒素ガス雰囲気中にて5分間加熱する温度を1700℃としたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材を評価した結果を表1に示す。
<比較例1>
連続焼成炉での炭素化処理において、窒素ガス雰囲気中にて5分間加熱する温度を1900℃としたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材を評価した結果を表1に示す。
<比較例2>
連続焼成炉での炭素化処理において、窒素ガス雰囲気中にて5分間加熱する温度を2400℃としたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材を評価した結果を表1に示す。
<比較例3>
連続焼成炉での炭素化処理において、窒素ガス雰囲気中にて5分間加熱する温度を900℃としたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材を評価した結果を表1に示す。
<比較例4>
フィブリル状物であるポリエチレンパルプ体を使用せずに炭素繊維紙Bを得たこと以外は、実施例1と同様にして多孔質電極基材を得た。得られた多孔質電極基材を評価した結果を表1に示す。
最高焼成温度を高くすると、得られる多孔質電極基材の熱拡散率は高くなり、貫通抵抗は低くなった。一方、多孔質電極基材のガス透過度および細孔径分布は、最高焼成温度とほとんど相関がなかった。この結果は、最高焼成温度を変えることにより、3次元構造がほぼ同一でありながら、炭素短繊維または樹脂炭化物の結晶性が異なる多孔質電極基材が得られたことを示している。
<実施例5>
(1)膜−電極接合体(MEA)の作製
実施例1で得られた多孔質電極基材を、アノード用およびカソード用としてそれぞれ5cm四方にカットし、アノード用多孔質電極基材のみに撥水処理を行った。撥水処理としては、市販のPTFE水溶液(三井・デュポンフロロケミカル社製)を水で20質量%まで希釈したものに多孔質電極基材を浸漬し、乾燥後360℃で焼結させることで行った。そして、両面に触媒担持カーボン(触媒:Pt、触媒担持量:50質量%)からなる触媒層(触媒層面積:25cm2、Pt付着量:0.3mg/cm2)を形成したパーフルオロスルホン酸系の高分子電解質膜(膜厚:30μm)を、カソード用、アノード用の多孔質電極基材で挟持し、これらを接合してMEAを得た。
(2)MEAの燃料電池特性評価
前記(1)で作製したMEAを、蛇腹状のガス流路を有する2枚のカーボンセパレーターによって挟み、固体高分子型燃料電池(単セル)を形成した。
この単セルの電流密度−電圧特性を測定することによって、燃料電池特性評価を行った。燃料ガスとしては水素ガスを用い、酸化ガスとしては空気を用いた。単セルの温度を60℃、燃料ガス利用率を60%、酸化ガス利用率を40%とした。また、ガス加湿温度を60℃(相対湿度100%)または80℃(凝縮水が存在する条件)として電流密度−電圧特性を測定した。結果を表2に示す。いずれのガス加湿温度でも良好な特性を示した。
<実施例6>
実施例2で得られた多孔質電極基材を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてMEAおよび単セルを形成し、電流密度−電圧特性を測定した。結果を表2に示す。いずれのガス加湿温度でも良好な特性を示した。
<実施例7>
実施例3で得られた多孔質電極基材を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてMEAおよび単セルを形成し、電流密度−電圧特性を測定した。結果を表2に示す。いずれのガス加湿温度でも良好な特性を示した。
<実施例8>
実施例4で得られた多孔質電極基材を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてMEAおよび単セルを形成し、電流密度−電圧特性を測定した。結果を表2に示す。いずれのガス加湿温度でも良好な特性を示した。
<比較例5>
比較例1で得られた多孔質電極基材を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてMEAおよび単セルを形成し、電流密度−電圧特性を測定した。結果を表2に示す。ガス加湿温度80℃(凝縮水存在)の条件では、電流密度が0.8A/cm2以上でフラッディングが起こった。
<比較例6>
比較例2で得られた多孔質電極基材を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてMEAおよび単セルを形成し、電流密度−電圧特性を測定した。結果を表2に示す。ガス加湿温度60℃(相対湿度100%)の条件では、電流密度が0.75A/cm2以上でフラッディングが起こった。また、ガス加湿温度80℃(凝縮水存在)の条件では、電流密度が0.6A/cm2以上でフラッディングが起こった。
<比較例7>
比較例3で得られた多孔質電極基材を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてMEAおよび単セルを形成し、電流密度−電圧特性を測定した。結果を表2に示す。いずれのガス加湿温度でもフラッディングは起こらなかったが、高い内部抵抗のためにセル電圧は低かった。
<比較例8>
比較例4で得られた多孔質電極基材を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてMEAおよび単セルを形成し、電流密度−電圧特性を測定した。結果を表2に示す。ガス加湿温度80℃(凝縮水存在)の条件では、電流密度が0.8A/cm2以上でフラッディングが起こった。5μm以上20μm未満の範囲にピークを有する細孔が存在しないため、大量の水分を一時的に取り込むことができなかったためと考えられる。
以上のように、実施例で得られた多孔質電極基材は、熱拡散率が低く、発電により生じた熱が外部に散逸しにくい。そして、その熱は生成水の蒸発熱として消費されるため、生成水は凝縮しにくく、その結果としてフラッディング耐性が高くなる。
本発明に係る多孔質電極基材は、特に固体高分子型燃料電池のガス拡散体として好適であるが、各種電池の電極基材などにも応用することができ、さらに、その応用範囲はこれらに限られるものではない。
1:炭素短繊維
2:不定形の樹脂炭化物
3:網状の樹脂炭化物
4:5μm以上20μm未満の細孔径分布ピークに相当する孔
5:20μm以上50μm以下の細孔径分布ピークに相当する孔

Claims (7)

  1. 周期加熱法により測定された厚み方向の見かけの熱拡散率が0.05〜0.50mm2/sである固体高分子型燃料電池用の多孔質電極基材。
  2. 前記熱拡散率が、0.30〜0.50mm2/sである請求項1に記載の多孔質電極基材。
  3. 平面状に分散せしめられた平均繊維径が3〜9μmの炭素短繊維と、フィブリル化された合成パルプとを含む炭素繊維紙に、炭素前駆体樹脂を付着させた樹脂付着炭素繊維紙を得る工程;前記樹脂付着炭素繊維紙を加熱プレス硬化して、中間基材を得る工程;および前記中間基材を最高温度1000〜1800℃で加熱して、前記炭素前駆体樹脂を炭素化する工程;によって製造される、請求項1または2に記載の多孔質電極基材。
  4. 前記フィブリル化された合成パルプのJIS P8121(パルプ濾水度試験法:カナダ標準型)で定義される濾水度が400〜900mlである請求項3に記載の多孔質電極基材。
  5. 前記炭素繊維紙に付着させる前記炭素前駆体樹脂の量が、前記炭素短繊維100質量部に対して70〜120質量部である請求項3または4に記載の多孔質電極基材。
  6. 前記中間基材を加熱する最高温度が、1400〜1700℃である請求項3〜5のいずれかに記載の多孔質電極基材。
  7. 前記炭素短繊維が、ポリアクリロニトリル系炭素繊維である請求項3〜6のいずれかに記載の多孔質電極基材。
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