JP2006089331A - 炭素繊維基材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
炭素繊維と樹脂炭化物との結着面での剥離や、樹脂炭化物のひび割れが少なく、高い導電性を有する炭素繊維基材を、高い生産性と低コストで提供すること。
【解決手段】
炭素繊維と熱硬化性樹脂とを含む前駆体繊維シートを圧縮処理する圧縮工程と、圧縮処理された前駆体繊維シートを加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成することにより該熱硬化性樹脂を炭化処理する炭化工程とを有する炭素繊維基材の製造方法であって、圧縮工程と炭化工程との間に該前駆体繊維シートを加熱処理する加熱工程を介在させることを特徴とする炭素繊維基材の製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として好ましく用いられる炭素繊維基材の製造方法に関するものである。詳しくは、本発明は、炭素繊維と樹脂炭化物との結着面での剥離や、樹脂炭化物のひび割れが少なく、高い導電性を有する炭素繊維基材を、高い生産性と低コストで製造する方法に関するものである。
従来、燃料電池のガス拡散体を構成する基材として、炭素繊維を樹脂炭化物で結着してなる炭素繊維基材が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、これらの炭素繊維基材は、枚葉状でバッチ式の焼成を行うことにより得られるものであるため、生産性が低く、高コストであるという問題があった。
これらの問題に対して、ロール状の電極基材ならびにその製造方法が提案されており、この提案では、炭素繊維基材の焼成を連続焼成炉で行うことにより、炭化工程の連続化を図っている(特許文献2参照)。この電極基材の製造方法は確かに、一定温度に保った加熱炉中を連続的に搬送させながら炭素繊維基材を焼成することにより、前駆体繊維シートを加熱炉に仕込んで昇降温を行うバッチ式の焼成と比べて、より大きな昇温速度を取ることができるため、大幅な生産性の向上を図ることができる。
しかしながら、この電極基材の製造方法では、焼成時における昇温速度が向上するに従って、前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂が急激に炭化され、熱硬化性樹脂の炭化収率が低下する。そのため、単に連続焼成炉を用いただけでは、熱硬化性樹脂の炭化収率が低下する、すなわち、炭化時に熱硬化性樹脂がより大きく収縮するため、樹脂炭化物と炭素繊維との結着面での剥離が大量に生じたり、樹脂炭化物部分に著しいひび割れが生じたりするという問題がある。
炭素繊維基材の製法として、さらに熱硬化性樹脂の硬化度合に着目した別の提案があり、この提案では、炭素繊維基材の前駆体繊維シートの厚み精度向上を目的としている(特許文献3参照)。しかしながら、この提案では、上述した連続焼成における炭化収率低下を抑制するためには、熱硬化性樹脂の未反応の官能基がほとんど残らない状態が要求され、成形工程のみで十分な硬化度を達成するためには、必要なプレスの有効長が長くなり装置が大規模になるという問題が生じる。また、この特許文献3には、プレス装置を用いることなく、効率よく、十分な熱硬化性樹脂の硬化度を達成するための具体的な手段や条件などは提示されていない。
特開平7−220735号公報(第1頁、段落番号0005) WO 01/56103号公報(第3頁) 特開2004−134108号公報(第2頁、段落番号0006)
本発明は、従来の技術における上述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、炭素繊維基材のための焼成前に加熱処理を行うことで、熱硬化性樹脂の硬化反応を促進させて、連続焼成における炭化収率の低下を抑制することにより、炭素繊維と樹脂炭化物との結着面での剥離や、樹脂炭化物にひび割れが少ない炭素繊維基材を、高い生産性と低コストで製造する製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、次の手段を採用する。すなわち、本発明の炭素繊維基材の製造方法は、炭素繊維と熱硬化性樹脂とを含む前駆体繊維シートを圧縮処理する圧縮工程と、圧縮処理された前駆体繊維シートを加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成することにより該熱硬化性樹脂を炭化処理する炭化工程とを有する炭素繊維基材の製造方法であって、圧縮工程と炭化工程との間に該前駆体繊維シートを加熱処理する加熱工程を介在させることを特徴とする炭素繊維基材の製造方法である。
本発明では、炭素繊維基材のための炭化工程の前に加熱処理を行うことで、熱硬化性樹脂の硬化反応を促進させる、つまり、熱硬化性樹脂内の共有結合による三次元網目構造を発達させる。これにより、熱硬化性樹脂の炭化時における低分子量の熱分解物の発生を抑制し、炭化収率を向上させることができる。熱硬化性樹脂の硬化反応の促進の度合を表す指標としては、後述する硬化度を用いることができる。
本発明の炭素繊維基材の製造方法のひとつの実施態様において、前記の加熱工程における加熱温度は200〜400℃の範囲であることが好ましく、加熱時間は1〜120分の範囲であることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維基材の製造方法のひとつの実施態様において、前記の炭化工程直前の前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度は90%以上であることが好ましい。
前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度は、前駆体繊維シートには熱硬化性樹脂が均一に付着していると考えられるため、圧縮工程前の前駆体繊維シート、および、炭化工程前の前駆体繊維シートの単位重量当たりの残存硬化発熱量をそれぞれQa、Qbとして、次の(I)式により求めることができる。
硬化度(%)=(Qa−Qb)÷Qa×100 (I)
前駆体繊維シートの残存発熱量は、表1に示す装置と条件で、示差走査熱量計法(DSC法:Differential Scanning Calorimetry)を用いて測定する。
また、本発明の炭素繊維基材の製造方法のひとつの実施態様において、前記の炭化工程においては、前駆体繊維のシートを400〜10000℃/分の範囲内の昇温速度で、少なくとも1200℃の温度まで昇温し、加熱して熱硬化性樹脂を炭素化することが好ましい。
前駆体繊維シートの炭化工程における昇温速度は、加熱炉入口の温度と、加熱炉内の最高温度と、加熱炉入口から導入されるシートが最高温度域まで移動するのに要する時間(移動時間)とから、次の(II)式によって求める。ここで、加熱炉入口とは、雰囲気が大気から不活性雰囲気へと切り替わる加熱炉入口側の部位である。
V=(T2−T1)/t (II)
ただし、V :昇温速度(℃/分)
T1:加熱炉入口の温度(℃)
T2:加熱炉内の最高温度(℃)
t :移動時間
なお、加熱炉はただ1個である必要はなく、2個以上の加熱炉による多段焼成を行うこともできる。2個の加熱炉を用いる場合には、1段目の加熱炉の昇温速度は上記の(II)式から求め、2段目の加熱炉の昇温速度は、上記の(II)式におけるT1を、前段の加熱炉の最高温度、すなわち1段目の加熱炉の最高温度として求める。3個以上の加熱炉を用いる場合にも同様である。
また、本発明の炭素繊維基材の製造方法のひとつの実施態様において、前記の炭化工程における加熱炉の最高温度は1200〜2500℃の範囲であることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維基材の製造方法のひとつの実施態様において、前記の前駆体繊維シートには炭素質粉末を含ませることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維基材の製造方法のひとつの実施態様において、前記の圧縮工程は、互いに平行に位置する熱板間を、前駆体繊維シートが間欠的に搬送されながら通過し、搬送が停止している間に、該熱板により、停止している該前駆体繊維シートが加熱加圧され、加熱加圧後、再び、該前駆体繊維シートの搬送が開始され、これらの搬送と停止とを交互に行う工程であることが好ましい。
本発明によれば、以下の説明からも明らかなように、炭素繊維と樹脂炭化物の結着面での剥離や、樹脂炭化物にひび割れが少ない炭素繊維基材を、高い生産性と低コストで製造することが可能である。また、本発明で得られる炭素繊維基材は、撥水処理による導電性低下が少なく、固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として好適である。
以下、本発明の炭素繊維基材の製造方法の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る炭素繊維基材1の製造工程の一形態を示す工程図である。また、図2および図3は、本発明の炭素繊維基材の製造方法により製造される炭素繊維基材1の表面の電子顕微鏡写真である。
本発明の炭素繊維基材1の製造方法は、図1において示される加熱工程を有することに特徴がある。本発明では、炭素繊維2をバインダーで結着してなる紙と熱硬化性樹脂とを含む前駆体繊維シートを、加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成して炭素繊維基材1を製造する方法において、焼成前の前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度を90%以上とすることができる。
熱硬化性樹脂の硬化度を90%以上とすると、熱硬化性樹脂内の共有結合による三次元網目構造が発達する。これにより、熱硬化性樹脂の炭化時における低分子量の熱分解物の発生が抑制され、熱硬化性樹脂の炭化収率が向上する。したがって、炭化時における熱硬化性樹脂の炭化収縮が抑制されるため、図3に示される、炭素繊維基材1中の炭素繊維2と樹脂炭化物3との結着面での剥離5や、樹脂炭化物3のひび割れ6を抑えることができる。
本発明のこの効果は、炭化工程における昇温速度が速いほど顕著に現れる傾向にある。硬化度が90%未満であると熱硬化性樹脂の炭化収率が低下し、樹脂炭化物3の剥離5やひび割れ6が増大する。前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度は、より好ましくは95%以上であり、更に好ましくは100%である。硬化度が100%とは、樹脂の硬化反応が完全に進行した状態をいい、上述したDSC法において、樹脂の残存硬化発熱によるピークが見られないことをいう。
ここで、DSC法による前駆体繊維シートの残存硬化発熱量の測定結果の一例を図4に示す。図4は、横軸に温度を、そして縦軸に熱流を示している。図4において、50〜60℃の温度のところに見られる上に凸のピークは、前駆体繊維シートに含まれる残存溶媒の揮発による吸熱ピークを示し、また200℃の温度付近に見られる下に凸のピークは、前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化反応による発熱ピークを示している。このような曲線に対して、破線で示すような補助線を引く。曲線と破線で囲まれた斜線で示す部分の面積と、表1に示した昇温速度(10℃/分)および試料量(2.6mg)から、残存硬化発熱量Qaを算出したところ、46J/gであった。炭化工程前の前駆体繊維シートの単位重量当たりの残存硬化発熱量Qbも同様に求めることができ、得られたQaとQbから、前記の(I)式を用いて前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度を求めることができる。
熱硬化性樹脂の硬化度を90%以上とするために、後述する樹脂含浸工程と圧縮工程を経た前駆体繊維シートを、好ましくは200〜400℃の範囲の温度で加熱する工程、すなわち、加熱工程を介在させることが好ましい。加熱温度は、より好ましくは250〜350℃の範囲であり、更に好ましくは270〜320℃の範囲である。
硬化反応を効率的に促進させるために、加熱工程における加熱温度は、前駆体繊維シートを圧縮工程で加熱加圧するときよりも高い温度に設定することが好ましい。加熱工程における加熱温度は、200℃よりも低いと硬化反応の進行が遅くなるため加熱工程の設備が大規模となり、また400℃よりも高いと前駆体繊維シートの酸化が進行して強度低下などの問題を起こすことがある。さらに高温のため設備維持や工程管理が難しくなる。
加熱工程における前駆体繊維シートの加熱時間は1〜120分の範囲が好ましく、より好ましくは1〜60分の範囲であり、更に好ましくは2〜30分の範囲である。加熱時間が1分未満であると硬化の進行が不十分となり、また120分を超えると酸化により前駆体繊維シートの強度低下を引き起こし、また、加熱工程の設備が大規模となることがある。
加熱工程では、前駆体繊維シートを、上記温度に設定したオーブンの中を連続的に走行させることにより加熱してもよいし、ロール状に巻き取った前駆体繊維シートをそのままオーブンに入れてバッチ式で加熱してもよい。
本発明の炭素繊維基材1の製造方法では、図1の抄紙工程において、好適な長さに切断した炭素繊維2を水中に均一に分散させた後に、金網上に抄造し、さらにそれをポリビニルアルコール等の水溶液に浸漬し、引き上げて乾燥させることが好ましい。これによりポリビニルアルコールがバインダーとなり、炭素繊維2を互いに結着させて炭素繊維2が実質的に二次元平面内においてランダムな方向に分散せしめられた炭素繊維シートを得ることができる。
炭素繊維の長さは3〜20mmとすることが好ましく、更に炭素繊維の長さを5〜15mmとすることにより、炭素繊維2を分散させ抄紙して炭素繊維シートを得る際に、炭素繊維2の分散性を向上させることができる。
炭素繊維2の繊維径は4〜20μmとすることが好ましく、更に炭素繊維の繊維径を4〜13μmとすることにより、特に4〜10μmとすることが炭素繊維基材1のハンドリング性を向上させ、また、高い電池特性を発現させるために好適な細孔径を得ることができる。
本発明の炭素繊維基材1の製造方法では、図1の樹脂含浸工程において、熱硬化性樹脂に炭素質粉末4を添加することが好ましい。炭素質粉末4を含むことで、炭素繊維基材1の厚さ方向の導電性を向上させることができる。また、熱硬化性樹脂の炭化時に昇温速度が速い場合には、炭素繊維2と樹脂炭化物3との結着面での剥離5や、樹脂炭化物3にひび割れ6がより顕著に生じ、炭素繊維基材1の厚さ方向の導電性の低下や、強度の低下を引き起こす問題がある。しかしながら、炭素質粉末4を含ませることで、上記の剥離5やひび割れ6を抑制し、このような問題を解消することができる。
前駆体繊維シートにおいては、炭素繊維100重量部に対して、熱硬化性樹脂が20〜300重量部で、炭素質粉末が1〜200重量部の範囲内にあることが好ましく、熱硬化性樹脂が30〜250重量部で、炭素質粉末が10〜160重量部の範囲内にあることがより好ましく、熱硬化性樹脂が40〜200重量部で、炭素質粉末が20〜120重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。熱硬化性樹脂が少なくなりすぎると、焼成後の炭素繊維基材が厚くなりすぎ、厚さ方向の導電性が低下する。また、熱硬化性樹脂が多くなりすぎると、炭素繊維基材の空隙率が低く、細孔径が小さくなりすぎる傾向を示す。そのため、燃料電池のガス拡散体として用いたときのガス拡散性や排水性が悪くなり、電池性能が低下する。炭素質粉末が少なくなりすぎると導電性向上の効果が低下し、また、多くなりすぎると熱硬化性樹脂の場合と同様に空隙率が低く、細孔径が小さくなり過ぎ、また、炭素質粉末を多く入れることはコストの面から見ても好ましくない。
炭化工程における昇温速度が速い場合において、炭素繊維基材1の厚さ方向の導電性の低下や強度の低下を引き起こさないためには、炭素質粉末の粒径を、0.01〜10μm程度とすることが好ましく、0.5〜7μmとすることがより好ましく、1〜6μmとすることが、さらに好ましい。
以上のような炭素質粉末添加の効果を得るためには、炭素質粉末4としてカーボンブラック、黒鉛粉、膨張黒鉛および炭素質ミルド繊維等などを用いることが好ましく、特にカーボンブラックや黒鉛粉が好ましく、最も好ましいのは黒鉛粉である。
本発明では、熱硬化性樹脂には、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等を用いることができるが、炭化後の樹脂炭化物量が多いため炭素繊維基材の強度が高く、厚さ方向の導電性が高くなるフェノール樹脂を用いることが好ましい。
フェノール樹脂は、合成の際に金属触媒やアルカリ触媒を用いていないものを使用することが好ましい。フェノール樹脂としては、合成の際に酸触媒を用いるノボラック型フェノール樹脂、アルカリ触媒を用いるアルカリレゾール型フェノール樹脂、およびアンモニア触媒を用いるアンモニアレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。フェノール樹脂中に中にナトリウムやカルシウムなどのイオンが存在すると、これらの金属イオンが固体高分子電解質膜のプロトン伝導性の低下を引き起こし、電池性能が低下するという問題がある。そこで、フェノール樹脂としては、アンモニアレゾール型フェノール樹脂Rやノボラック型フェノール樹脂Nを用いることができ、両者の混合物を用いることで炭素繊維基材1の強度を向上させることができる。
その混合比率は、アンモニアレゾール型フェノール樹脂Rが多くなり過ぎると炭素繊維基材1の強度が低くなり、厚さ方向の電気抵抗が高くなること、ノボラック型フェノール樹脂Nが多くなり過ぎると後の加熱工程に置いて混合樹脂が十分固くならず扱いにくくなること、また樹脂の炭素化時に残る炭素分が少なくなってしまうことなどから、R:N=2:1〜1:3であることがより好ましく、さらに好ましくは、R:N=3:2〜1:2とする。
フェノール樹脂100重量部に対して炭素質粉末は、300重量部以下が好ましく、より好ましくは200重量部以下であり、更に好ましくは150重量部以下である。フェノール樹脂に対して炭素質粉末が多すぎると、樹脂炭化物が炭素繊維と炭素質粉末を十分に結着できず、炭素質粉末の粉落ちなどの問題が起こる。
本発明の炭素繊維基材1の製造方法では、図1の圧縮工程において、焼成前の前駆体繊維シートを、間欠的に搬送しながら互いに平行な熱板で連続加熱加圧することが好ましい。
図5に、本発明における圧縮工程の一形態における概略縦断面図を示す。図5において、前駆体繊維シート7を巻出し機8から巻取り機11に走行させる際に、前駆体繊維シート7を間欠的に搬送させながら互いに平行な熱板9で連続加熱加圧する。すなわち、前駆体繊維シート7の加圧と送りを交互に繰り返しながら、加熱加圧処理するのは、搬送方向に連続体である長尺の前駆体繊維シート7を、枚葉状にすることなく連続的に成形するためである。
この際、搬送方向の有効加圧長をLP、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シート7の送り量をLFとするとき、LF/LPは、0.04〜0.50の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.20の範囲である。LF/LPが小さいと、加熱加圧による成形効果をより平均化することができるが、処理時間における、プレス10の開閉、前駆体繊維シート7の送りに要する時間比率が増大し生産効率が悪くなる。また、LF/LPが0.98を超えると、送り量の誤差などによってLF/LPが1を超えた場合に加圧されない部分ができる。
ここで、有効加圧長とは、前駆体繊維シートが熱板9と接し、加熱加圧される部分の長さをいう。また、送り量とは、ホットプレス10を開いた際に搬送方向に送り出す(または引き取る)前駆体繊維シートの1回当たりの搬送量をいう。
互いに平行な熱板9での加熱加圧条件は、温度が140〜300℃の範囲であり、面圧が0.1〜4.0MPaの範囲で0.2〜15分間加熱加圧すればよい。
互いに平行な熱板9とは、少なくともその50%以上の面積において、平行度が1mm以下であるものをいう。平行度は、熱板上に配した鉛片を加熱加圧変形させ、変形後の鉛片の厚さの最大値と最小値の差とする。また、両方の熱板9の材質は同じであってもよいが、違う材質のものを用いることもできる。例えば、片方の熱板をステンレス製とし、もう片方の熱板をシリコンゴム製としてもよい。
より好ましい処理温度は160〜250℃の範囲であり、さらに好ましくは170〜230℃の範囲である。処理温度が低すぎる場合、加熱加圧による前駆体繊維シートの圧縮効果が不十分で、特に140℃未満ではその効果が小さい。また、処理温度が高すぎる場合、空気中では前駆体繊維シートの酸化が進行し、強度低下などの問題を起こすことがあり、さらに、高温のため設備維持や工程管理が難しくなる。
面圧は、好ましくは0.2〜3.0MPaの範囲であり、より好ましくは0.3〜1.5MPaの範囲である。圧力が低いと前駆体繊維シートの圧縮効果が不十分である。圧力が高いと前駆体繊維シートを曲げたときに繊維の座屈ないしは繊維間の剥離によると思われる線状の模様が発生する他、焼成後の炭素繊維基材の気体透過性が低下して燃料電池のガス拡散体として良好な特性を発揮できなくなる。また、加圧面であるプレス面や離型紙に接着する等の問題が起こる。さらに、プレス設備も大規模なプレスシステムを用いるか、生産効率を落とし1回当たりの処理面積を小さくする必要が生じる。
加熱加圧時間は好ましくは0.5〜10分の範囲であり、より好ましくは1〜6分の範囲であり、更に好ましくは1.5〜4分の範囲である。加熱加圧時間が短いと加熱加圧による十分な成形効果が得られ難い。また、10分を超える加熱加圧を行っても、それ以上の圧縮効果の増大はあまり期待できない。
このように、焼成前の前駆体繊維シートを、間欠的に搬送しながら互いに平行な熱板9で連続加熱加圧することで、長尺の前駆体繊維シートを連続圧縮成形することができる。
また、従来のベルトプレスやロールプレスのように、線圧で圧力がかかる装置では、バッチ式の平板プレスと同等の厚み精度で前駆体繊維シートを成形することは困難であるという問題は、本発明に係る炭素繊維基材1の製造方法により解決することができる。
本発明の炭素繊維基材1の製造方法では、図1の炭化工程において、前駆体繊維シートを昇温し、加熱して熱硬化性樹脂を炭素化する。本発明の炭素繊維基材1の製造方法では、前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度を高め、焼成時の炭化収縮を抑制することにより、連続焼成における昇温速度を向上させても炭素繊維基材の導電性を維持することができる。
図6は、本発明の実施に用いられる炭素繊維基材の製造工程の一形態における炭化工程を示す概略縦断面図である。図6において、圧縮処理された前駆体繊維シート12は、巻出し機13から巻き出された後、搬送ロール14によって運ばれ、無端コンベヤベルト15によって前炭化処理用加熱炉16内に導入される。前炭化処理用加熱炉16内は、300〜1,200℃程度の温度の不活性ガス雰囲気下に保たれていて、圧縮処理された前駆体繊維シート12は、無端コンベヤベルト15によって無緊張下に搬送されている間に前炭化処理される。
前炭化処理された前駆体繊維シートは、次いで搬送ロール17を経て、無端コンベヤベルト18によって次の炭化処理用加熱炉19内に導入される。炭化処理用加熱炉19も前炭化処理用加熱炉16と同様に構成されているが、雰囲気は1,200〜3,000℃程度の温度の不活性ガス雰囲気下に保たれていて、前炭化処理された前駆体繊維シートは、無端コンベヤベルト18によって無緊張下に搬送されている間に炭化処理され、炭素繊維基材20となる。炭素繊維基材20は、搬送ロール21によって、例えば、巻取り機22に搬送される。
炭化工程における昇温速度は、400〜10000℃/分の範囲内であることが好ましく、 700〜5000℃/分の範囲内であることがより好ましく、1000〜3000℃/分の範囲内であることが更に好ましい。
以上のように、本発明は、熱硬化性樹脂の硬化度を90%以上とすることにより、連続焼成における熱硬化性樹脂の急激な炭化収縮による樹脂炭化物の剥離やひび割れを防止し、さらには、連続焼成における昇温速度を上げる、つまり、炭素繊維基材1の生産性を向上させ、製造コストを低減することができるという効果を有する。
本発明の炭素繊維基材は、固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料、各種電池の電極基材や脱水機用電極、電解槽用電極などとして好適に用いられる。
以下の実施例における炭素繊維基材に関する各特性値の定義、および/または、測定方法は、次のとおりである。
(炭素繊維基材に形成される細孔のうち細孔径が10μm以下の細孔の容積):
次に示す水銀圧入法による細孔径分布測定から求める。炭素繊維基材から約12mm×20mm角の試料片を3枚切り出し、精秤の後、重ならないように測定用セルに入れ、減圧下に水銀を注入する。これを、下記の表2に示す装置と条件で細孔径分布測定を行なう。測定回数は1回とする。細孔径が10μm以下の細孔は、図3に示す炭素繊維2と樹脂炭化物3の結着面での剥離部分5や、樹脂炭化物3のひび割れ部分6に起因するものと考えられ、該細孔の容積が小さいほど剥離やひび割れが小さいと言える。細孔容積は、10cc/gより小さいことが望ましい。
(厚み、目付、空隙率):
厚みは、マイクロメーターを用いて基材の厚み方向に0.15MPaの面圧を付与して測定する。測定回数は20回とし、その平均値を厚みとする。目付は、10cm×10cm角の炭素繊維基材の重さを10回測定を行い、その平均値から算出する。
空隙率は、炭素繊維基材の真密度と見掛密度とから算出する。見掛密度は基材の厚みと目付とから算出する。真密度の測定は、よく知られた浮遊法やピクノメータ法等によることができる。
(熱硬化性樹脂の炭化収率):
熱硬化性樹脂の焼成前後の重量変化から算出する。焼成前の熱硬化性樹脂の重量は、前駆体繊維シートの重量と該シートに含まれる熱硬化性樹脂の重量分率から求める。熱硬化性樹脂の炭化物の重量は、炭素繊維基材の重量から、炭素繊維と炭素質粉末の重量を差し引いて求める。ここで、炭素繊維と炭素質粉末は、焼成前後で重量変化はないものとし、ポリビニルアルコールは炭化工程で全て熱分解するものとする。
(平均繊維径):
炭素繊維の平均繊維径は、基材の5,000倍の電子顕微鏡による繊維の断面写真から任意の10本の炭素繊維を選択してその繊維径を測定し、その単純平均値として求める。横断面の形状が円形でない、例えば楕円径である場合には、長径と短径の平均値を繊維径とする。また、電子顕微鏡写真の樹脂炭化物部分を確認することにより導電性粉末の有無を確認することができる。
(炭素繊維の平均繊維長):
炭素繊維基材を構成する炭素繊維の平均繊維長は、炭素繊維シートを大気中にて600℃の温度で加熱し、炭素繊維を残してそれ以外のバインダー等を焼き飛ばすことによって得られた任意の30本の炭素繊維について5倍の光学顕微鏡写真を撮影し、写真から各炭素繊維の長さを測定し、その単純平均値として求める。
(炭素質粉末の粒径):
炭素質粉末の粒径は、炭素繊維基材を製造する際に添加する炭素質粉末の動的光散乱測定を行い、求めた粒径分布の数平均粒径とする。
(電気抵抗の測定):
炭素繊維基材をPTFE水系ディスパージョンに浸漬後引き上げて乾燥し、炭素繊維基材へのPTFEの付着量を20重量%とした。得られたを380℃の温度で熱処理し、2.0cm×2.5cmの大きさに切り出して試験片とした。その試験片を金メッキを施したステンレス製の電極で挟み、1.0MPaの加圧下に電極間に1Aの電流を流したときの電圧降下から次式によって求める。
R=V×2.0×2.5×1,000
ただし、R:電気抵抗(mΩ・cm
V:電圧降下(V)
燃料電池のガス拡散体として炭素繊維基材を用いる場合、フッ素樹脂等を用いて撥水性を付与することが一般的である。炭素繊維基材を上記のように撥水処理したガス拡散体の厚み方向の電気抵抗は、燃料電池のオーム損による電圧降下を示す指標となり、電気抵抗が低いものが、優れていると判定した。
(実施例1)
東レ株式会社製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ”(登録商標)T−300−6K(平均単繊維径:7μm、単繊維数:6,000本)を12mmの長さにカットし、水を抄造媒体として連続的に抄造し、さらにポリビニルアルコールの10重量%水溶液に浸漬し、乾燥して、炭素繊維2の目付が約32g/mの長尺の炭素繊維紙を得てロール状に巻き取った。ポリビニルアルコールの付着量は、炭素繊維紙100重量部に対して20重量部に相当する。
中越黒鉛工業所社製鱗片状黒鉛BF−5A(平均粒径5μm)、フェノール樹脂およびメタノールを1:4:16の重量比で混合した分散液を用意した。上記炭素繊維紙に、炭素繊維紙100重量部に対してフェノール樹脂が110重量部になるように、上記分散液に連続的に含浸し、90℃の温度で3分間乾燥することにより樹脂含浸炭素繊維紙を得てロール状に巻き取った。フェノール樹脂には、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを1:1の重量比で混合した樹脂を用いた。
株式会社カワジリ社製100tプレス10に熱板9が互いに平行となるようセットし、熱板温度170℃、面圧0.8MPaで、プレスの開閉を繰り返しながら樹脂含浸炭素繊維紙を間欠的に搬送しつつ、同じ箇所がのべ6分間加熱加圧されるよう圧縮処理した。この際、熱板の有効加圧長LPは1200mmで、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シートの送り量LFを100mmとし、LF/LP=0.08とした。すなわち、30秒の加熱加圧、型開き、炭素繊維紙の送り(100mm)、を繰り返すことによって圧縮処理を行い、ロール状に巻き取った。
圧縮成形された樹脂含浸炭素繊維紙を巻き取ったロールを、200℃の温度に設定したオーブン中で2時間加熱することにより、炭素繊維紙に含まれる熱硬化性樹脂の加熱処理を行った。加熱処理後の熱硬化性樹脂の硬化度は100%であった。
熱硬化性樹脂の加熱処理をした上記炭素繊維紙を前駆体繊維シートとして、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2,000℃の加熱炉に導入し、加熱炉内を連続的に走行させながら、約500℃/分(650℃までは400℃/分、650℃を超える温度では550℃/分)の昇温速度で焼成し、ロール状に巻き取った。得られた炭素繊維基材1の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
炭素繊維の平均繊維径 :7μm
炭素質粉末の粒径 :5μm
炭素繊維の平均繊維長 :12mm
厚み :0.13mm
目付 :57g/m
空隙率 :78%
前駆体繊維シートに含まれる
熱硬化性樹脂の硬化度 :100%
炭化工程の昇温速度 :500℃/分
熱硬化性樹脂の炭化収率 :47%
細孔径が10μm以下の細孔の容積 :0.07cc/g
電気抵抗 :9mΩ・cm
(実施例2)
加熱工程における加熱処理を30℃の温度に設定したオーブン中での5分間の加熱とし、炭化工程における昇温速度を約1600℃/分(650℃までは1300℃/分、650℃を超える温度では1700℃/分)としたこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維基材1を得た。得られた炭素繊維基材1の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
炭素繊維の平均繊維径 :7μm
炭素質粉末の粒径 :5μm
炭素繊維の平均繊維長 :12mm
厚み :0.14mm
目付 :57g/m
空隙率 :80%
前駆体繊維シートに含まれる
熱硬化性樹脂の硬化度 :100%
炭化工程の昇温速度 :1600℃/分
熱硬化性樹脂の炭化収率 :47%
細孔径が10μm以下の細孔の容積 :0.06cc/g
電気抵抗 :10mΩ・cm
(比較例1)
東レ株式会社製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ”(登録商標)T−300−6K(平均単繊維径:7μm、単繊維数:6,000本)を12mmの長さにカットし、水を抄造媒体として連続的に抄造し、さらにポリビニルアルコールの10重量%水溶液に浸漬し、乾燥して、炭素繊維の目付が約50g/mの長尺の炭素繊維紙を得てロール状に巻き取った。ポリビニルアルコールの付着量は、炭素繊維紙100重量部に対して20重量部に相当する。
フェノール樹脂とメタノールを1:4の重量比で混合した溶液を用意した。上記炭素繊維紙に、炭素繊維紙100重量部に対してフェノール樹脂が150重量部になるように、上記容液に連続的に含浸し、90℃の温度で3分間乾燥することにより樹脂含浸炭素繊維紙を得てロール状に巻き取った。フェノール樹脂には、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを1:1の重量比で混合した樹脂を用いた。
上記樹脂含浸炭素繊維紙のロールを裁断し、枚葉の形状に切り出した。枚葉炭素繊維紙を、株式会社カワジリ社製100tプレス10に熱板9が互いに平行となるようセットし、熱板温度150℃、面圧0.5MPaで、30分間加熱加圧されるよう圧縮処理した。圧縮成形した炭素繊維紙を前駆体繊維シートとして、窒素ガス雰囲気に保たれたバッチ式の加熱炉で、最高温度が2,000℃で、約1.4℃/分(800℃までは1℃/分、800℃を超える温度では2℃/分)の昇温速度で焼成した。得られた炭素繊維基材の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
炭素繊維の平均繊維径 :7μm
炭素繊維の平均繊維長 :12mm
厚み :0.19mm
目付 :86g/m
空隙率 :78%
前駆体繊維シートに含まれる
熱硬化性樹脂の硬化度 :55%
炭化工程の昇温速度 :1.4℃/分
熱硬化性樹脂の炭化収率 :47%
細孔径が10μm以下の細孔の容積 :0.04cc/g
電気抵抗 :9mΩ・cm
(比較例2)
炭化工程において連続焼成炉を用い、昇温速度を約500℃/分(650℃までは400℃/分、650℃を超える温度では550℃/分)としたこと以外の製造条件は、比較例1と同様にして炭素繊維基材を得た。得られた炭素繊維基材の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
炭素繊維の平均繊維径 :7μm
炭素繊維の平均繊維長 :12mm
厚み :0.25mm
目付 :80g/m
空隙率 :84%
前駆体繊維シートに含まれる
熱硬化性樹脂の硬化度 :57%
炭化工程の昇温速度 :500℃/分
熱硬化性樹脂の炭化収率 :40%
細孔径が10μm以下の細孔の容積 :0.17cc/g
電気抵抗 :39mΩ・cm
以上の実施例および比較例について、炭素繊維基材の諸元、製造条件および評価結果のうち主要なものを、次の表3にまとめた。
上記実施例1および実施例2の炭素繊維基材は、細孔径が10μm以下の細孔の容積が0.07および0.06cc/gと小さく、撥水処理を施したときの厚み方向の電気抵抗も9、10mΩ・cmと低く導電性が高い。また、熱硬化性樹脂の炭化収率は、どちらも47%と高い。これは、前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度がどちらも100%と高いため、炭化工程における昇温速度がそれぞれ500、1600℃/分と高い条件においても、樹脂の炭化収率の低下を抑制できているためである。
一方、比較例1は、前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度が55%と低いが、バッチ式の炭化工程により1.4℃/分と低い昇温速度であるため、熱硬化性樹脂の炭化収率も47%と実施例1および実施例2と同等である。細孔径が10μm以下の細孔容積は0.04cc/gと小さく、撥水処理を施したときの厚み方向の電気抵抗も9mΩ・cmと低い。しかしながら、炭化工程の昇温速度が1.4℃/分であるということは、炭素繊維基材の生産性の面で、上記実施例1および実施例2と比較して大きく劣ることを意味する。
また、比較例2は、前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度が57%と低いにも関わらず、炭化工程における昇温速度が500℃/分と高い条件で焼成を行ったため、細孔径が10μm以下の細孔容積も0.17cc/gと大きく、撥水処理を施したときの厚み方向の電気抵抗も39mΩ・cmと高い。電気抵抗が高いのは、図3に示すような炭素繊維と樹脂炭化物との結着面での剥離部分や、樹脂炭化物のひび割れ部分に、フッ素樹脂が入り込んで電気伝導を阻害するためであると考えられる。
以上のように、本発明の炭素繊維基材の製造方法によれば、炭素繊維と樹脂炭化物との結着面での剥離や、樹脂炭化物のひび割れが少なく、高い導電性を有する炭素繊維基材を、高い生産性と低コストで供給することができる。
本発明に係る炭素繊維基材は、燃料電池のガス拡散体に限らず、各種電池の電極基材や脱水機用電極などにも応用することができるが、その応用範囲はこれらに限られるものではなく、有用である。
図1は、本発明の実施に用いる炭素繊維基材の製造工程の一形態を示す工程図である。 図2は、本発明の一形態に係る炭素繊維基材1の表面の繊維の形状を示す電子顕微鏡写真(倍率250倍)である。 図3は、本発明の一形態に係る炭素繊維基材1の表面の繊維の形状を示す電子顕微鏡写真(倍率2000倍)である。 図4は、DSC法による前駆体繊維シートの残存硬化発熱量の測定結果の一例である。 図5は、本発明の実施に用いる炭素繊維基材の製造工程の一形態における圧縮工程を示す概略縦断面図である。 図6は、本発明の実施に用いる炭素繊維基材の製造工程の一形態における炭化工程を示す概略縦断面図である。 図7は、炭素繊維基材における炭素繊維と樹脂炭化物の結着面での剥離部分の繊維の形状を示す電子顕微鏡写真(倍率:4000倍)である。 図8は、炭素繊維基材における樹脂炭化物のひび割れ部分の繊維の形状を示す電子顕微鏡写真(倍率:250倍)である。
符号の説明
1:炭素繊維基材
2:炭素繊維
3:樹脂炭化物
4:炭素質粉末
5:剥離
6:ひび割れ
7:前駆体繊維シート
8:巻出し機
9:熱板
10:ホットプレス
11:巻取り機
12:圧縮処理された前駆体繊維シート
13:巻出し機
14:搬送ロール
15:無端コンベヤベルト
16:前炭化処理用加熱炉
17:搬送ロール
18:無端コンベヤベルト
19:炭化処理用加熱炉
20:炭素繊維基材
21:搬送ロール
22:巻取り機

Claims (7)

  1. 炭素繊維と熱硬化性樹脂とを含む前駆体繊維シートを圧縮処理する圧縮工程と、圧縮処理された前駆体繊維シートを加熱炉中を連続的に搬送しながら焼成することにより該熱硬化性樹脂を炭化処理する炭化工程とを有する炭素繊維基材の製造方法であって、圧縮工程と炭化工程との間に該前駆体繊維シートを加熱処理する加熱工程を介在させることを特徴とする炭素繊維基材の製造方法。
  2. 加熱工程における加熱温度が200〜400℃の範囲であり、加熱時間が1〜120分の範囲である請求項1に記載の炭素繊維基材の製造方法。
  3. 炭化工程直前の前駆体繊維シートに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度が90%以上である請求項1または2に記載の炭素繊維基材の製造方法。
  4. 炭化工程において、前駆体繊維のシートを400〜10000℃/分の範囲内の昇温速度で、少なくとも1200℃の温度まで昇温し、加熱して熱硬化性樹脂を炭素化する請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維基材の製造方法。
  5. 炭化工程における加熱炉の最高温度が1200〜2500℃の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維基材の製造方法。
  6. 前駆体繊維シートが炭素質粉末を含む請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維基材の製造方法。
  7. 圧縮工程が、互いに平行に位置する熱板間を、前駆体繊維シートが間欠的に搬送されながら通過し、搬送が停止している間に、該熱板により、停止している該前駆体繊維シートが加熱加圧され、加熱加圧後、再び、該前駆体繊維シートの搬送が開始され、これらの搬送と停止とを交互に行う工程である請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維基材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102104152A (zh) * 2009-12-22 2011-06-22 三菱丽阳株式会社 多孔质电极基材及其制造方法、使用了该基材的膜-电极接合体及固体高分子型燃料电池
CN103329323A (zh) * 2011-01-27 2013-09-25 三菱丽阳株式会社 多孔电极基材、其制造方法、前体片材、膜-电极接合体及固体高分子型燃料电池
CN111118472A (zh) * 2020-01-07 2020-05-08 山东理工大学 一种碳化硅膜连续碳纤维板的制备方法
CN113878835A (zh) * 2021-12-08 2022-01-04 国家电投集团氢能科技发展有限公司 聚四氟乙烯/碳纤维复合离型膜及其制备方法和应用

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