JP2007176750A - 多孔質炭素繊維シートおよびその製造方法 - Google Patents

多孔質炭素繊維シートおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として多孔質炭素シートに求められる特性、具体的には、圧縮変形率が高いこと、両表面の圧縮残留歪みが小さいこと、導電性が高いこと、機械的特性が高いことを全て同時に満足する多孔質炭素シートを提供する。
【解決手段】炭素繊維を含む多孔質の構造を有するシート状物であって、加圧時の圧縮変形率が13〜30%であって、両表面の圧縮残留歪みが3〜10μmであることを特徴とする多孔質炭素繊維シート。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として好ましく用いられる多孔質炭素繊維シートとその製造方法に関する。
固体高分子型燃料電池は固体高分子電解質膜、触媒、ガス拡散体、セパレーターよりなるセルを複数枚積層した燃料電池スタックとして用いられる。自動車などの高い出力が要求される用途においては、200〜400個のセルをスタックして用いられるため、各構成素材の厚みが設計した厚みと異なるとスタック全体として大きなずれが生じることから、各構成素材には高い厚さ精度が求められる。固体高分子型燃料電池のガス拡散体は一般にシール材と呼ばれる一定厚さの素材で周りを囲み、スタック時にシール材と同等の厚さまで圧縮させることにより厚みをコントロールしている。したがって、ガス拡散体にはシール材と同等の厚みになるように圧縮変形率が高いこと(すなわち圧縮変形能に優れること)が求められる。この他にも、ガス拡散体には導電性やハンドリングのために機械的特性が求められる。
上記のような特性が必要とされる固体高分子型燃料電池のガス拡散体の材料として、特許文献1に示す炭素短繊維を樹脂炭化物で結着してなる多孔質炭素シートを用いたものが知られている。上記多孔質炭素シートは結着させる樹脂炭化物の量が少なく、低かさ密度のものが得られることから、かさ密度が低いことから圧縮変形率の大きい多孔質炭素シートが得られる。しかしながら、従来の多孔質炭素シートでは、より高出力を得るために高電流密度での発電性能が求められる場合には電池としたときの発電性能が十分ではなかったり、性能の安定性などの点で求められるレベルを満たすのは困難であった。
特開平9−157052
本発明は、燃料電池のガス拡散体としたときの圧縮変形率、導電性および機械的強度が高く、電池としたときの発電性能が高い多孔質炭素繊維シートとその製造方法を提供せんとするものである。
本発明者は、固体高分子型燃料電池のガス拡散体として従来の多孔質炭素繊維シートでは十分な発電性能を得られない原因を検討したところ、圧縮時に部分的に応力が加わるとその箇所に破壊が起こり永久歪みが生じ易く、そのため、燃料電池をスタックすると、多孔質炭素繊維シートがセパレーターに設けた溝へ大きく落ち込んでガス流路を塞ぐ場合があることを見出した。かかる現象が電池の性能低下を引き起こす原因であるとの仮説の下、永久歪みの生じ易さに対応する圧縮残留歪みを低減することに着目し検討を行ったところ、多孔質炭素繊維シートの表面の圧縮残留歪みが小さいことが高い発電性能を得るために必要であることを見出したが、表面の圧縮残留歪みが小さいことと従来必要とされていた圧縮変形率とはトレードオフの関係にある。すなわち、従来、圧縮変形率を高くするために多孔質炭素繊維シートのかさ密度を低下させていたことが、結果として表面の圧縮残留歪みを大きくしており、このことが性能上の限界の理由であった。かかる検討結果に基づき、従来の均質な多孔質炭素繊維シートではなく、厚み方向に機能を分離することが有効であろうとの仮説の下、厚み方向に適切に異なるかさ密度の領域を配置したところ、従来では困難であった圧縮変形率が高く、表面の圧縮変形歪みが小さいという特性を両立し、これを適用することにより、高い発電性能を有する固体高分子型燃料電池を得ることが出来る多孔質炭素シートおよびその製造方法を提供できることを見いだしたものである。すなわち、
(1) 炭素繊維を含む多孔質の構造を有するシート状物であって、加圧時の圧縮変形率が13〜30%、両表面の圧縮残留歪みが3〜10μmであることを特徴とする多孔質炭素繊維シート。
(2) 両表面の表面から50μmまでの厚さの領域のかさ密度Dが0.40〜0.60g/cmであり、厚み方向中央部20μmの領域のかさ密度Dとしたときに1<D/D<6である前記(1)に記載の多孔質炭素繊維シート。
(3) 厚さ方向の電気抵抗値が1〜8mΩcmである前記(1)〜(2)のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シート。
(4) 曲げ強度が10〜100MPaである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シート。
(5) 厚さ方向にかさ密度の異なる少なくとも2層以上の多孔質構造を有しており、両表面の多孔質構造のかさ密度が内部の多孔質構造のかさ密度より高い前記(1)〜(4)のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シート。
(6) 厚さ方向の真中を中心として対称な構造を有する前記(5)に記載の多孔質炭素繊維シート。
(7) 全体の厚さが120〜400μmである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シート。
(8) 分散している炭素短繊維と樹脂炭化物を含み、該炭素短繊維の少なくとも1部は、前記樹脂炭化物で結着されてなる前記(1)〜(7)のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シート。
(9) 熱硬化性樹脂を含む前駆体繊維シート1枚以上を含む2枚以上の前駆体繊維シートを積層し、互いに平行な一対の熱板で加熱加圧処理して接着させる圧縮工程と、圧縮処理された該前駆体繊維シートを加熱して炭化処理をする炭化工程とを有する多孔質炭素繊維シートの製造方法であって、前記圧縮工程において、接着後の前記前駆体繊維シートの両表面のかさ密度が内部のかさ密度より高くなるように前駆体繊維シートの積層方向、および/または、積層順序を設定することを特徴とする多孔質炭素繊維シートの製造方法。
(10) 前記圧縮工程において、接着後の前記前駆体繊維シートが厚さ方向にそのかさ密度分布が面対称に分布した構造を有する前記(9)に記載の多孔質炭素繊維シートの製造方法。
(11) 前記前駆体繊維シートの少なくとも2枚以上が炭素繊維と熱硬化性樹脂を含む前駆体繊維シートであることを特徴とする前記(9)または(10)に記載の多孔質炭素繊維シートの製造方法。
(12) 前記圧縮工程において、厚さ方向にかさ密度の異なる2枚の前記前駆体繊維シートをかさ密度の低い面が対向するように積層方向を設定する前記(9)〜(11)のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シートの製造方法。
(13) 前記圧縮工程において、かさ密度の異なる前記前駆体繊維シートをかさ密度の高いシート2枚でかさ密度の低いシートを挟むように積層順序を設定する前記(9)〜(11)のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シートの製造方法。
(14) 前記炭化工程において、前記前駆体繊維シートを不活性雰囲気に保った加熱炉内を連続的に走行せしめながら100〜10,000℃/分の範囲内の速度で少なくとも1,200まで昇温し、焼成して前記熱硬化性樹脂を炭素化した後、ロール状に巻き取る前記(9)〜(13)のいずれかに記載の多孔質炭素シートの製造方法。
多孔質炭素シートおよびその製造方法に関する各種特性値の測定方法は、次の通りである。
多孔質炭素シートの加圧時の圧縮変形率と両表面の圧縮残留歪みは、測定子の断面が直径5mmの円形であるマイクロメーターを用いて、該シートの厚さ方向に0.33MPaの面圧を付与したときの厚さをdとし、その後該シートの厚さ方向に1.6MPaの面圧付与および開放を2回繰り返してから0.33MPaの面圧を付与したときの厚さをdとし、その1.6MPaの面圧を付与したときの厚さをdとして、次の(I)、(II)式より求めることが出来る。測定回数は3回とし、その平均値から算出する。圧縮残留歪みは多孔質炭素シートの両表面それぞれから測定を行う。
圧縮残留歪み=d−d (I)式
圧縮変形率=(d−d)/d (II)式
多孔質炭素シートの電気抵抗の測定は、金メッキしたステンレスブロックに電流用と電圧用の端子を設けたものを2個用意する。金メッキステンレスブロック2個の間に20mm×25mmに切った多孔質炭素板を挟みサンプルに1MPaの圧力がかかるよう加圧する。このとき電圧用端子はサンプルを挟んだ面の近くに、電流用端子はサンプルを挟んだ面の反対側の面の近くに来るようにする。電流用端子間に1Aを流し、電圧用端子間で電圧V(V)を測定して次の(III)式により抵抗値を算出する。
電気抵抗(mΩ・cm)=V×2×2.5×1000 (III)式
多孔質炭素シートの曲げ強さはJIS K6911に準拠した3点曲げ試験で測定する。ただし、試験片の幅(W)は15mm、支点間距離(Lv)は15mmとする。また、支点と加圧くさびのRは3mm、荷重速度は2mm/minとする。測定回数は5回とし、その平均値から算出する。
多孔質炭素シートの厚さは、上述のマイクロメーターを用いて、該シートの厚さ方向に0.15MPaの面圧を付与して測定する。測定点は1.5cm間隔の格子状で測定回数は20回以上とし、その平均値を厚さとする。
多孔質繊維シートの目付(単位面積当たりの重さ)は、10cm×10cm角の多孔質繊維シートの重さを10回測定し、その平均値から算出する。
多孔質繊維シートのかさ密度Dは、上述した多孔質炭素シートの厚さと目付から算出する。
両表面から50μmまでのかさ密度D、厚み方向中央部20μmの領域のかさ密度Dの測定方法は、まず厚さT、かさ密度Dの多孔質炭素シートの両表面から一定厚さT(50〜60μm)ずつ削りとり、削り取った残りの多孔質炭素シートの厚さ、目付より厚み方向中央部20μmの領域のかさ密度Dを算出する。これらより、次の(IV)式によりDを算出する。
両表面のかさ密度D(g/cm)=(T−(T−2T)D)/2T(IV)式
本発明の多孔質炭素シートは固体高分子型燃料電池のガス拡散体として用いたとき、セパレーターの溝への落ち込みが小さいため、電池としたときの発電性能が高い固体高分子型燃料電池が得られる。
以下、本発明の多孔質炭素シートおよびその製造方法の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の多孔質炭素シートの製造方法の圧縮工程における一実施態様にかかる前駆体繊維シートの積層方法を示す概略図である。1は、かさ密度の高い前駆体繊維シート、2はかさ密度の低い前駆体シートであり、これらを図の積層順序により圧縮工程にて一体化する。
図2は本発明の多孔質炭素シートの製造方法の圧縮工程における別の実施態様にかかる前駆体繊維シートの積層方法を示す概略図である。3は厚さ方向にかさ密度の異なる前駆体繊維シートのかさ密度が高い面、4は、厚さ方向にかさ密度の異なる前駆体繊維シートのかさ密度が低い面であり、3,4の境界は明確なかさ密度差があっても良いし、徐々に変化しても良い。これらを圧縮工程にてかさ密度が低い面を合わせる方向で一体化する。
図3は本発明の多孔質繊維シートの製造方法の圧縮工程の一態様を示す概略図である。5が、例えば図1や図2に示される積層した前駆体繊維シートであり、これをホットプレス6により、上熱板7と下熱板8間で圧縮して一体化する。この時、9:スペーサー9で厚みを規制することも好ましい。
固体高分子型燃料電池のガス拡散体として用いられる多孔質炭素シートとしては、カーボンペーパー、炭素繊維織物、炭素繊維不織布などが用いられる。ここで、カーボンペーパーとは炭素短繊維がシート面内において顕著な配向を持たず概ね無作為な方向に存在しており、炭素短繊維が樹脂炭化物で結着されているもののことである。
多孔質炭素シートは上記いずれの形態においても、そのかさ密度を小さくすると圧縮変形量が大きくなる。すなわち、カーボンペーパーにおいてはかさ密度を小さくするために単位体積内の樹脂炭化物量を低下させると、樹脂炭化物量の低下により炭素繊維の樹脂炭化物による結着点が減少するため、圧縮した際の変形量が大きくなる。また、カーボンペーパー、炭素繊維織物、炭素繊維不織布のかさ密度を小さくするために、単位体積内の炭素繊維量を低下させると、炭素繊維同士の接点が減少することから圧縮した際の変形量が大きくなる。しかしながら、かさ密度を小さくすることによって、樹脂炭化物による結着点の減少や炭素繊維同士の接点が減少することから圧縮した箇所に破壊が起こり永久歪みが大きくなってしまう。本発明では、圧縮箇所の破壊に伴う永久歪みに対応する特性として先に測定法を示した圧縮残留歪みを指標とした。
本発明は、上記課題、すなわち固体高分子型燃料電池のガス拡散体として用いたときにシール材と同等の厚みまで圧縮されるほど圧縮変形率が高く、セパレーターの溝への落ち込みが小さく、導電性が高く、ハンドリング性が良い多孔質炭素シートについて、鋭意検討し、圧縮変形率と圧縮残留歪みを特定の範囲内にある多孔質炭素材を作ってみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
本発明の多孔質炭素シートは、後述する製造方法により、該シートの加圧時の圧縮変形率を13〜30%、両表面の圧縮残留歪みが3〜10μmの範囲に制御することにより、従来全てを同時に満足することが困難であった燃料電池のガス拡散体として多孔質炭素シートに求められる特性、圧縮変形率が大きいこと、表面の圧縮残留歪みが小さいこと、導電性が高いこと、機械的強度が高いことを全て同時に満足する。
加圧時の圧縮変形率が13%未満であると、固体高分子型燃料電池のガス拡散体として用いたときに、ある一定厚さに設計したシール材の厚さまで圧縮されず、スタックとして全体の大きさに大きなズレが発生したり、ガスシールのためのシール材より厚くなることから十分なシール性を得られず電池としての性能が低下するため好ましくない。圧縮変形率が30%より大きいと、圧縮残留歪みが大きくなってしまったり、機械的強度が低くハンドリング性に問題が出るため好ましくない。
前記シートの圧縮変形率は13〜25%の範囲内に有ることが好ましく、13〜20%の範囲内にあることがさらに好ましい。
両表面の圧縮残留歪みが10μmよりも大きいと固体高分子型燃料電池のガス拡散体として用いたときに、セパレーターに設けた溝に大きく落ち込んでガス流路を塞ぎ電池としての性能を低下させてしまうため好ましくない。本発明の多孔質繊維シートは多孔質な材料であり、両表面の圧縮残留歪みを低減できたとしても3μmが限界である。
前記シートの両表面の圧縮残留歪みは、3〜7μmがより好ましく、3〜5μmがさらに好ましい。
ここで、本発明の多孔質炭素シートは、好適な圧縮変形率と圧縮残留歪みを持つために表面と内部の構造が異なることが好ましい。すなわち、上記のように該多孔質炭素シートの表面のかさ密度を高くすることにより、表面の圧縮残留歪みを低減することで固体高分子型燃料電池のガス拡散体として用いたときのスタック時にガス拡散体がセパレーターに設けた溝に落ち込んでガス流路を塞ぐことによる電池性能低下を防ぐことができる。そして、内部のかさ密度を低くすることにより、該多孔質繊維シート全体の圧縮変形率を大きくし、ガス拡散体としてシール材の厚みまで圧縮されずにスタックとしての大きなズレを防止することができるため好ましい。
本発明の多孔質炭素シートは表面から50μmまでのかさ密度が0.40〜0.60g/cmの範囲内にあることが好ましく、0.45〜0.55g/cmの範囲内にあることがより好ましい。かさ密度が0.40g/cm未満であると、多孔質炭素シートの機械的強度、具体的には曲げ強度が低くなり、ハンドリングしにくくなるため好ましくない。また、かさ密度が0.60g/cmを越えると、固体高分子型燃料電池のガス拡散体として用い、燃料電池を高い出力密度で運転した場合に精製水の水詰まりによる電池性能低下を引き起こすことがあるため好ましくない。
本発明の多孔質炭素シートの表面から50μmまでの厚さのかさ密度D、厚み方向中央部20μmの領域のかさ密度Dとしたときに1<D/D<6であることが好ましく、1.2<D/D<4であることがより好ましく、1.4<D/D<2であることがさらに好ましい。D/Dが6を越えると厚み方向中央部20μmの領域のかさ密度であるDが小さくなりすぎてしまい、導電性の低下を引き起こすため好ましくない。また、本発明の多孔質繊維シートはDが厚み方向中央部20μmの領域のかさ密度Dより高いことが好ましいことからD/Dが1未満となることは無い。
本発明の多孔質炭素シートは厚さ方向の電気抵抗値が1〜8Ωcmの範囲内にあることが好ましい。電気抵抗値が8Ωcm以下であると、燃料電池としたときのガス拡散体自体の抵抗によるオーム損による電池性能低下を抑制することができる。厚さ方向の電気抵抗値が小さいほどオーム損を低減できるが、カーボンペーパー、炭素繊維織物、炭素繊維不織布の形態をとる限り1Ωcm程度が限界となる。
本発明の多孔質炭素シートは曲げ強度が10〜100MPaであることが好ましく、15〜80MPaであることがより好ましく、20〜60MPaであることがさらに好ましい。曲げ強度が10MPa未満であると、該多孔質炭素シート搬送時や取り扱い時に割れたり欠けたりするためハンドリング性に問題が生じ好ましくない。また、曲げ強度が100MPa以上であると、該多孔質炭素シートの剛性が高くなりすぎてしまい、ロール状で取り扱う場合は大きな径の紙管にしか巻くことが出来なくなってしまい、非常に大スペースを必要とするため扱いにくく好ましくない。
ここで、一般的に、多孔質炭素シートを基材としたガス拡散体は、それらを、両面に触媒層を有する固体高分子電解質膜に接合することで膜−電極接合体を構成している。また、その膜−電極接合体の両側にシール材を介して反応に必要なガス流路となる溝を設けたセパレーターで挟んだ物を複数個積層することによって固体高分子型燃料電池を構成している。したがって、ガス拡散体がセパレーターに接する面はそれぞれ片面だけであり、上述の溝への落ち込みを防ぐためには片側表面の圧縮残留歪みが小さければ良い。しかしながら、一方の面のかさ密度が高く、他方の面のかさ密度が低い多孔質繊維シートは両表面のかさ密度が異なることから、後述する製造工程の炭化工程において、両表面の収縮率の違いから反りが発生しやすいという問題があるため好ましくない。また、同様の理由で該多孔質炭素シートは厚さ方向の真中を中心として対称構造を取らないと、そりが発生しやすい。したがって、本発明の多孔質炭素シートは厚さ方向にかさ密度の異なる少なくとも2層以上の多孔質構造を有し、両表面の多孔質構造のかさ密度が内部の多孔質構造のかさ密度より高いことが好ましい。また、本発明の多孔質炭素シートは厚さ方向の真中を中心として対称な構造を有することが好ましい。厚さ方向の真中とは、多孔質炭素シートの厚さのおおよそ50%のところであり、厚さ方向の真中を中心として対称な構造とは、真中から両表面までのかさ密度の変化がおおむね同じであり、真中から両表面までのカーボンペーパーや織物、不織布といった積層の形態が同一であることであり、厳密に対称な構造をしている必要はない。
本発明の多孔質炭素シートは厚さが120〜400μmの範囲内にあることが好ましく、130〜300μmの範囲内にあることがより好ましく、140〜220μmの範囲内にあることがさらに好ましい。厚さが120μm未満では、十分な機械的強度が得られないため好ましくない。また、厚さが400μmを越えると、多孔質炭素シートの柔軟性が大きく低下し、後述するロールへの巻き取りが難しくなる。
本発明の多孔質炭素シートの少なくとも一部は上記のカーボンペーパーの形態であることが好ましい。すなわち、分散している炭素短繊維と樹脂炭化物を含み、該炭素短繊維の少なくとも一部は、前記樹脂炭化物で結着されてなる構造であることが好ましい。該炭素繊維シートは、後述する多孔質炭素シートの製造方法の圧縮工程において、複数枚積層されて圧縮し、接着することになるため、多孔質炭素シートの前駆体シートは接着させる樹脂を含むことが望ましく、炭化工程後も樹脂炭化物となって炭素繊維を結着することが好ましい。
カーボンペーパーを構成する炭素短繊維の平均直径は、好適な圧縮変形率、機械的強度を得るために、6〜20μmの範囲内であることが好ましく、6〜13μmの範囲内にあることが好ましく、6〜10μmの範囲内にあることがより好ましい。
炭素短繊維を構成する炭素繊維としてはポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系等の炭素繊維を用いることができる。なかでも、機械的強度に優れ、しかも、ハンドリング性に優れた多孔質炭素シートが得られることから、PAN系やピッチ系、特にPAN系の炭素繊維を用いることが好ましい。
前記カーボンペーパーは、炭素質粉末を含むことが好ましい。炭素質粉末を含むことで多孔質繊維シートの導電性が向上する。炭素質粉末の平均繊維径は0.01〜10μmの範囲内であることが好ましく、1〜8μmの範囲内がより好ましく、3〜6μmの範囲内がさらに好ましい。また、炭素質粉末は、黒鉛またはカーボンブラックの粉末であることが好ましく、黒鉛粉末であることがさらに好ましい。黒鉛粉末の平均粒子径は、動的光散乱測定を行い、求めた粒径分布の体積平均径から求めることができる。
本発明の多孔質炭素シートの製造方法は、熱硬化性樹脂を含む前駆体繊維シートを少なくとも1枚以上を含む2枚以上の前駆体繊維シートを積層して、互いに平行に位置する一対の熱板で加熱加圧処理して接着させる圧縮工程と、圧縮処理された該前駆体繊維シートを加熱して炭化処理をする炭化工程とを有する多孔質炭素繊維シートの製造方法であって、該圧縮工程において、接着後の前記前駆体繊維シートの両表面のかさ密度が内部のかさ密度より高くなるように前駆体繊維シートの積層方向、および/または、積層順序を設定することにより、多孔質炭素シートの圧縮変形率と局所的に押した際の表面の圧縮残留歪みを適切に制御できることを見出したものである。
前記前駆体繊維シートに含まれる繊維としては、アクリル繊維を耐炎化してなるアクリル耐炎化繊維、レーヨン繊維、フェノール繊維、不融化ピッチ繊維、炭素繊維等を単独あるいは組み合わせて用いることができるが、特に、強度や弾性率といった諸特性に優れた炭素繊維、ひいては炭素繊維シートが得られるアクリル耐炎化繊維であるのが好ましい。
前期前駆体繊維シートとしては、織物、不織布、紙等の耐炎化繊維布帛を用いることができる。さらに、前駆体繊維シートとしては、炭素短繊維を抄紙してなる炭素繊維紙を熱硬化性樹脂で結着してなる紙を用いることもできる。また、炭素繊維織物や炭素繊維不織布を熱硬化性樹脂で結着してなる炭素繊維布帛を用いることもできるが、ハンドリング性や多孔質炭素シートとしての機械的強度から炭素繊維紙を熱硬化性樹脂で結着してなる紙を用いることが好ましい。該前駆体繊維シートは不織布や紙の形態の場合は単位面積あたりの繊維量を変えることによりかさ密度をコントロールすることができる。織物の場合は、織り密度や繊維束当たりの糸の本数を変えることによりかさ密度をコントロールできる。また、熱硬化性樹脂で結着してなるものの場合は、熱硬化性樹脂の量を変えることでかさ密度を自由にコントロールできる。
前期圧縮工程において、前期前駆体繊維シートを積層して、互いに平行に位置する一対の熱板で加熱加圧処理して、接着させる。加熱加圧処理にはホットプレスを用いることができる。前期圧縮工程の積層時には、該圧縮工程において接着後の前記前駆体繊維シートの両表面のかさ密度が内部のかさ密度より高くなるように前駆体繊維シートの積層方向、および/または、積層順序を設定する必要がある。また、該圧縮工程において、加熱加圧したときに積層した前駆体繊維シートを接着させる必要があるため、該前駆体繊維シートの少なくとも1枚以上は熱硬化性樹脂を含む必要があり、さらに2枚以上含むことが好ましい。
前期熱硬化性樹脂には炭素質粉末を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂内部に炭素質粉末が存在することにより、多孔質炭素シートの厚さ方向の導電性を向上させることができるため好ましい。
前期圧縮行程の積層する前駆体繊維シートの組み合わせとしては、2枚以上の様々な構造を有するものを積層することができるが、接着後の前駆体繊維シートは両表面が同じ構造を有するように積層方向、および/または、積層順序を設定することがそりを発生しにくくするためにも好ましく、接着後の前駆体繊維シートが厚さ方向の真中を中心として対称な構造を有することがさらに好ましい。例えば、図1に示すようにかさ密度の高い2枚の前駆体繊維シート1でかさ密度の低い前駆体繊維シート2を挟んで積層することで、両表面のかさ密度が高く、内部のかさ密度が低い多孔質炭素シートが得られ、また、厚さ方向の真中を中心として対称な構造を有するためそりが発生しにくくなり好ましい。
図2において厚さ方向にかさ密度が異なる前駆体繊維シートは、かさ密度が低い面4が接するように積層することで、両表面のかさ密度が高く、対称な構造を有する多孔質炭素シートが得られるため好ましい。厚さ方向にかさ密度が均一な前駆体繊維シートを用いる場合は両面のかさ密度が高く内部のかさ密度が低い多孔質炭素シートを得るために3枚以上の前駆体繊維シートを積層することが必要となるが、上記厚さ方向にかさ密度の異なる前駆体繊維シートを用いることで2枚積層するだけで上記の構造が得られるため、プロセス的にも容易であり好ましい。なお、図2に示すような厚さ方向にかさ密度の異なる前駆体繊維シートを用いる場合、かさ密度が高い面とかさ密度が低い面の境界は明確なかさ密度差があっても良いし、徐々に変化しても良い。厚さ方向にかさ密度が異なる前駆体繊維シートとしては、例えば、炭素繊維紙を熱硬化性樹脂を溶かした溶媒に含浸させて、乾燥して溶媒を蒸発させ、熱硬化性樹脂を付着させる方法において、乾燥時に片側から優先的に熱をかけることで、片側の樹脂が先に蒸発して濃度拡散により樹脂が移動し、片側に樹脂が多くついたかさ密度が異なる前駆体繊維シートを得ることができる。
前期炭化工程においては、バッチ式の加熱炉を用いることもできるが、生産性の観点から、前期前駆体繊維シートを不活性雰囲気に保った加熱炉内を連続的に走行せしめながら100〜10,000℃/分の範囲内の速度で少なくとも1,200℃まで昇温し、焼成して前期熱硬化性樹脂もしくは前期耐炎化繊維を炭素化した後、ロール状に巻き取る連続式であることが好ましい。炭化工程における昇温速度は、300〜7,000℃/分の範囲内の速度であることがより好ましく、500〜5,000℃/分であることがさらに好ましい。昇温速度が遅すぎる場合、多孔質炭素シートの生産性が低下する。早すぎる場合には、熱硬化性樹脂もしくは耐炎化繊維の急激な炭化収縮により樹脂炭化物にひび割れが生じたり、多孔質繊維シートにシワが生じたりする。
前期炭化工程における加熱温度は、1,500℃以上であることがより好ましく、1,800℃以上であることがさらに好ましい。加熱温度が低すぎると多孔質炭素シート中に不純物が多く残り、燃料電池のガス拡散体として用いた際に、固体高分子電解質膜のプロトン伝導を妨げ、電池性能を低下させる。加熱温度は加熱炉の耐久性や消費エネルギーの観点から2,500℃であることが好ましく、2,200℃以下であることがより好ましく、2,000℃以下であることがさらに好ましい。
(実施例1)
東レ株式会社製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ(登録商標)”T300−6K(平均単繊維径:7μm、単繊維数:6,000本)を12mmの長さにカットし、水を抄造媒体として連続的に抄造し、さらにポリビニルアルコールの10重量%水溶液に浸漬し、乾燥して、炭素短繊維の目付が約13g/mの長尺の炭素繊維紙を得てロール状に巻き取った。ポリビニルアルコールの付着量は、炭素繊維紙100重量部に対して20重量部に相当する。
中越黒鉛工業所社製鱗片状黒鉛BF−5A(平均粒径5μm)、フェノール樹脂、メタノールを1:4:16の重量比で混合した分散液を用意した。上記炭素繊維紙に、炭素繊維紙100重量部に対してフェノール樹脂が90重量部になるように、上記分散液に連続的に含浸し、90℃で3分間乾燥することによりかさ密度の低い前駆体繊維シートを得てロール状に巻き取った。また、炭素繊維紙100重量部に対してフェノール樹脂が200重量部になるように含浸したかさ密度の高い前駆体繊維シートについてもロール状に巻き取った。フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを1:1の重量比で混合した樹脂を用いた。
株式会社カワジリ社製100tプレスに熱板7,8が互いに平行となるようセットした。熱板8上にスペーサー9を樹脂含浸繊維紙の横に2枚配置した。この際熱板の有効加圧長LPは1200mmで、スペーサーの長さLSは1200mmとした。前駆体繊維シートの幅WPは600mmで、スペーサーの幅は100mmとした。前期かさ密度の低い前駆体繊維シート1枚を2枚の前期かさ密度の高い前駆体繊維シートで挟み込み、さらにその前駆体繊維シートで片側を離型処理した2枚の離型紙を離型処理した面が前駆体繊維シート側に向かうように挟み込み、熱板温度170℃、面圧0.8MPaで、プレスの開閉を繰り返しながら600mmの幅の積層した前駆体繊維シート5と離型紙を共に間欠的に搬送しつつ、同じ箇所がのべ6分間加熱加圧されるよう圧縮処理した。この際、熱板の有効加圧長LPは1200mmで、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シートの送り量LFを100mmとした。すなわち、30秒の加熱加圧、型開き、炭素繊維紙の送り(100mm)、を繰り返すことによって圧縮処理を行い、600mmの幅でロール状に巻き取った。
圧縮処理をした上記前駆体繊維シートを、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2,000℃の加熱炉に導入し、加熱炉内を連続的に走行させながら、約500℃/分(650℃までは400℃/分、650℃を超える温度では550℃/分)の昇温速度で焼成し、ロール状に巻き取った。得られた多孔質炭素基材の長さは100mであった。
得られた多孔質炭素基材の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
炭素繊維の平均繊維径 :7μm
かさ密度の高い前駆体繊維シートの厚さ :0.25mm
かさ密度の高い前駆体繊維シートのかさ密度:0.12g/cm
かさ密度の低い前駆体繊維シートの厚さ :0.26mm
かさ密度の低い前駆体繊維シートのかさ密度:0.08g/cm
圧縮工程後の前駆体繊維シートの厚さ :0.23mm
炭化工程の昇温速度 :500℃/分
炭化工程の最高温度 :2000℃
多孔質炭素繊維シートの厚さ :0.20mm
多孔質炭素繊維シートの目付 :80g/m
多孔質炭素繊維シートのかさ密度(DT) :0.40g/cm
圧縮変形率 :13%
表面の圧縮残留歪み :7μm
/DB :1.6
厚さ方向電気抵抗 :6mΩcm
曲げ強度 :25MPa

(実施例2)
抄造における炭素短繊維の目付が20g/m2の炭素繊維紙100重量部に対してフェノール樹脂が90重量部になるように含浸した前駆体繊維シートをかさ密度の低い前駆体繊維シートとした以外は実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。
得られた多孔質炭素基材の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
炭素繊維の平均繊維径 :7μm
かさ密度の高い前駆体繊維シートの厚さ :0.25mm
かさ密度の高い前駆体繊維シートのかさ密度:0.12g/cm
かさ密度の低い前駆体繊維シートの厚さ :0.39mm
かさ密度の低い前駆体繊維シートのかさ密度:0.08g/cm
圧縮工程後の前駆体繊維シートの厚さ :0.26mm
炭化工程の昇温速度 :500℃/分
炭化工程の最高温度 :2000℃
炭素繊維シートの厚さ :0.23mm
炭素繊維シートの目付 :90g/m
炭素繊維シートのかさ密度(DT) :0.39g/cm
圧縮変形率 :14%
表面の圧縮残留歪み :10μm
/D :1.7
厚さ方向電気抵抗 :6mΩcm
曲げ強度 :23MPa
(比較例1)
圧縮工程において、かさ密度の低い前駆体繊維シートのみを3枚積層した以外は実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。
得られた多孔質炭素の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
炭素繊維の平均繊維径 :7μm
かさ密度の低い前駆体繊維シートの厚さ :0.26mm
かさ密度の低い前駆体繊維シートのかさ密度 :0.08g/cm
圧縮工程後の前駆体繊維シートの厚さ :0.23mm
炭化工程の昇温速度 :500℃/分
炭化工程の最高温度 :2000℃
炭素繊維シートの厚さ :0.21mm
炭素繊維シートの目付 :60g/m
炭素繊維シートのかさ密度(DT) :0.29g/cm
圧縮変形率 :15%
表面の圧縮残留歪み :16μm
/D :1
厚さ方向電気抵抗 :10mΩcm
曲げ強度 :8MPa
(比較例2)
圧縮工程において、かさ密度の高い前駆体繊維シートのみを3枚積層した以外は実施例1と同様にして多孔質炭素シートを得た。
得られた多孔質炭素の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
炭素繊維の平均繊維径 :7μm
かさ密度の高い前駆体繊維シートの厚さ :0.25mm
かさ密度の高い前駆体繊維シートのかさ密度 :0.12g/cm
圧縮工程後の前駆体繊維シートの厚さ :0.23mm
炭化工程の昇温速度 :500℃/分
炭化工程の最高温度 :2000℃
炭素繊維シートの厚さ :0.19mm
炭素繊維シートの目付 :90g/m
炭素繊維シートのかさ密度(DT) :0.47g/cm
圧縮変形率 :10%
表面の圧縮残留歪み :5μm
/D :1
厚さ方向電気抵抗 :5mΩcm
曲げ強度 :30MPa
(比較例3)
東レ株式会社製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ(登録商標)”T300−6K(平均単繊維径:7μm、単繊維数:6,000本)を12mmの長さにカットし、水を抄造媒体として連続的に抄造し、さらにポリビニルアルコールの10重量%水溶液に浸漬し、乾燥して、炭素繊維の目付が約23g/mの長尺の炭素繊維紙を得てロール状に巻き取った。ポリビニルアルコールの付着量は、炭素繊維紙100重量部に対して20重量部に相当する。
次に、上記炭素繊維紙に、フェノール樹脂の10重量%メタノール溶液を炭素繊維紙100重量部に対してフェノール樹脂が150重量部になるように、上記容液に連続的に含浸し、90℃で3分間乾燥することにより前駆体繊維シートを得た。フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを1:1の重量比で混合した樹脂を用いた。
株式会社カワジリ社製100tプレスに熱板が互いに平行となるようセットし、熱板温度150℃、面圧0.5MPaで、上記前駆体繊維シートを2枚積層したものを上下から離型紙で挟み込んでプレスし、30分間加熱加圧されるよう圧縮処理した。
圧縮成形した炭素繊維紙を前駆体繊維シートとして、窒素ガス雰囲気に保たれたバッチ式の加熱炉で、最高温度が2,000℃で、約1.4℃/分(800℃までは1℃/分、800℃を超える温度では2℃/分)の昇温速度で焼成した。
得られた多孔質炭素の諸元、製造条件および評価結果を以下に示す。
炭素繊維の平均繊維径 :7μm
前駆体繊維シートの厚さ :0.40mm
前駆体繊維シートのかさ密度 :0.16g/cm
圧縮工程後の前駆体繊維シートの厚さ :0.23mm
炭化工程の昇温速度 :1.4℃/分
炭化工程の最高温度 :2000℃
炭素繊維シートの厚さ :0.20mm
炭素繊維シートの目付 :85g/m
炭素繊維シートのかさ密度(DT) :0.43g/cm
圧縮変形率 :10%
表面の圧縮残留歪み :10μm
/D :1
厚さ方向電気抵抗 :5mΩcm
曲げ強度 :20MPa
以上の実施例および比較例について、多孔質炭素シートの諸元、製造条件および評価結果のうち主要なものを次の表1にまとめた。
Figure 2007176750
上記実施例1および2の多孔質炭素シートは、両表面のかさ密度が内部のかさ密度よりも高くなるように圧縮工程で積層されて製造されているため、圧縮変形率が13〜30%、両表面の圧縮残留歪みが3〜10μmの適切な範囲に制御されている。したがって、実施例1および2の多孔質繊維シートは、圧縮変形率、両表面の圧縮残留歪みに優れ、厚さ方向の電気抵抗、曲げ強度いずれの評価結果においても十分な値を示しており、燃料電池のガス拡散体の材料として多孔質炭素シートに求められる特性を全て同時に満足している。
一方、比較例1は両表面と内部のかさ密度が同じになるように圧縮工程で積層されて製造されており、かさ密度が低いことから圧縮変形率については、優れた値を示すが、同時に両表面の圧縮残留歪みが高くなってしまっている。また、厚さ方向電気抵抗、曲げ強度についても高くなっている。
比較例2および3は両表面と内部のかさ密度が同じになるように圧縮工程で積層されて製造されており、かさ密度が高いことから、両表面の圧縮残留歪みについては満足する値を示すが、圧縮変形率については低くなっている。したがって、比較例1〜3のように両表面と内部のかさ密度が同じになるように積層されて製造された多孔質炭素シートは圧縮変形率と両表面の圧縮残留歪みの両者を満足させることはできない。
以上のように、本発明の多孔質炭素シートの製造方法によれば、燃料電池のガス拡散体の材料として多孔質炭素シートに求められる特性、具体的には、圧縮変形率が高いこと、両表面の圧縮残留歪みが小さいこと、導電性が高いこと、機械的特性が高いことを全て同時に満足する多孔質炭素シートを提供することができる。
本発明に係る多孔質炭素シートは、固体高分子型燃料電池のガス拡散体に限らず、ダイレクトメタノール燃料電池など各電池の電極基材や脱水機用電極などにも応用することができるが、その応用範囲はこれらに限られるものではなく、有用である。
本発明の多孔質炭素シートの製造工程の圧縮工程の一形態における積層方法を示す概略図である。 本発明の多孔質炭素シートの製造工程の圧縮工程の一形態における積層方法を示す概略図である。 本発明の多孔質炭素シートの製造工程の一形態における圧縮工程を示す概略図である。
符号の説明
1:かさ密度の高い前駆体繊維シート
2:かさ密度の低い前駆体シート
3:厚さ方向にかさ密度の異なる前駆体繊維シートのかさ密度が高い面
4:厚さ方向にかさ密度の異なる前駆体繊維シートのかさ密度が低い面
5:積層した前駆体繊維シート
6:ホットプレス
7:上熱板
8:下熱板
9:スペーサー

Claims (14)

  1. 炭素繊維を含む多孔質の構造を有するシート状物であって、加圧時の圧縮変形率が13〜30%、両表面の圧縮残留歪みが3〜10μmであることを特徴とする多孔質炭素繊維シート。
  2. 両表面の表面から50μmまでの厚さの領域のかさ密度Dが0.40〜0.60g/cmであり、厚み方向中央部20μmの領域のかさ密度Dとしたときに1<D/D<6である請求項1に記載の多孔質炭素繊維シート。
  3. 厚さ方向の電気抵抗値が1〜8mΩcmである請求項1〜2のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シート。
  4. 曲げ強度が10〜100MPaである請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シート。
  5. 厚さ方向にかさ密度の異なる少なくとも2層以上の多孔質構造を有しており、両表面の多孔質構造の密度が内部の多孔質構造のかさ密度より高い請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シート。
  6. 厚さ方向の真中を中心として対称な構造を有する請求項5に記載の多孔質炭素繊維シート。
  7. 全体の厚さが120〜400μmである請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シート。
  8. 分散している炭素短繊維と樹脂炭化物を含み、該炭素短繊維の少なくとも1部は、前記樹脂炭化物で結着されてなる請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シート。
  9. 熱硬化性樹脂を含む前駆体繊維シート1枚以上を含む2枚以上の前駆体繊維シートを積層し、互いに平行な一対の熱板で加熱加圧処理して接着させる圧縮工程と、圧縮処理された該前駆体繊維シートを加熱して炭化処理をする炭化工程とを有する多孔質炭素繊維シートの製造方法であって、前記圧縮工程において、接着後の前記前駆体繊維シートの両表面のかさ密度が内部のかさ密度より高くなるように前駆体繊維シートの積層方向、および/または、積層順序を設定することを特徴とする多孔質炭素繊維シートの製造方法。
  10. 前記圧縮工程において、接着後の前記前駆体繊維シートが厚さ方向にそのかさ密度分布が面対称に分布した構造を有する請求項9に記載の多孔質炭素繊維シートの製造方法。
  11. 前記前駆体繊維シートの少なくとも2枚以上が炭素繊維と熱硬化性樹脂を含む前駆体繊維シートであることを特徴とする請求項9または10に記載の多孔質炭素繊維シートの製造方法。
  12. 前記圧縮工程において、厚さ方向にかさ密度の異なる2枚の前記前駆体繊維シートをかさ密度の低い面が対向するように積層方向を設定する請求項9〜11のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シートの製造方法。
  13. 前記圧縮工程において、かさ密度の異なる前記前駆体繊維シートをかさ密度の高いシート2枚でかさ密度の低いシートを挟むように積層順序を設定する請求項9〜11のいずれかに記載の多孔質炭素繊維シートの製造方法。
  14. 前記炭化工程において、前記前駆体繊維シートを不活性雰囲気に保った加熱炉内を連続的に走行せしめながら100〜10,000℃/分の範囲内の速度で少なくとも1,200まで昇温し、焼成して前記熱硬化性樹脂を炭素化した後、ロール状に巻き取る請求項9〜13のいずれかに記載の多孔質炭素シートの製造方法。
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