JP2011181213A - スパークプラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、主体金具における溝部の強度を確保した上でスパークプラグを小型化することができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】スパークプラグ100の主体金具30において、溝部35の第1溝端部353における断面係数Z1と、溝部35の第2溝端部357における断面係数Z2との関係は、Z1≦Z2を満たす。
【選択図】図3

Description

本発明は、内燃機関において電気的に火花を発生させることによって燃料に着火させるスパークプラグ(点火プラグ)に関する。
スパークプラグには、中心電極を保持する絶縁碍子の外周に主体金具をカシメ固定したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このようなスパークプラグの主体金具は、外周方向に張り出した鍔状(フランジ状)の二つの鍔状部を備え、これら二つの鍔状部の間には、カシメ固定時に外周方向に膨出した円筒状の溝部が形成される。主体金具の鍔状部としては、例えば、スパークプラグをエンジンヘッドに取り付けるための工具に嵌合する多角形状の工具嵌合部や、エンジンヘッドに向けてガスケットを圧縮する胴部などがある。
特開平11−345676公報
近年、内燃機関の燃費改善や排出ガス低減を解決する種々の対策の一つとして、スパークプラグの小径化が検討されているが、スパークプラグの小型化に伴う主体金具の強度低下について十分な考慮がなされていなかった。例えば、スパークプラグを小型化する縮小比率で主体金具をそのまま小型化した場合、主体金具における溝部の強度を十分に確保できず、衝撃や応力腐食によってクラック(割れ)が発生してしまう場合があるという問題があった。
本発明は、上記した課題を踏まえ、主体金具における溝部の強度を確保した上でスパークプラグを小型化することができる技術を提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1] 適用例1のスパークプラグは、棒状の中心電極と、前記中心電極の外周を電気的に絶縁する絶縁碍子と、前記絶縁碍子の外周にカシメ固定された主体金具であって、外周方向に膨出した円筒状の溝部と、前記溝部の一端に隣接し、前記溝部よりも外周方向に張り出した多角形状の工具嵌合部と、前記溝部の前記一端とは異なる他端に隣接し、前記溝部よりも外周方向に張り出した胴部とを含む主体金具と、前記主体金具に接合され、前記中心電極との間に火花ギャップを形成する接地電極とを備えるスパークプラグであって、前記工具嵌合部の多角形状の対向する二辺の間の対辺間距離Sは12mm以下であり、前記溝部の前記一端における断面係数Z1と、前記溝部の前記他端における断面係数Z2との関係は、Z1≦Z2を満たすことを特徴とする。適用例1のスパークプラグによれば、工具嵌合部の対辺間距離が12mm以下であっても溝部の耐衝撃強度を確保することができる。したがって、主体金具における溝部の強度を確保した上でスパークプラグを小型化することができる。
[適用例2] 適用例1のスパークプラグにおいて、前記断面係数Z1は、Z1≧49mmを満たすと良い。適用例2のスパークプラグによれば、溝部の耐衝撃強度を十分に確保することができる。
[適用例3] 適用例1または適用例2のスパークプラグにおいて、前記溝部において最大外径をとる最外部から前記一端までの距離A、および前記最外部から前記他端までの距離Bと、前記断面係数Z2との関係は、A>Bの場合、Z2≧62mmを満たし、A≦Bの場合、Z2≧53mmを満たすと良い。適用例3のスパークプラグによれば、最外部から溝部の一端までの距離Aと、最外部から溝部の他端までの距離Bとの関係に応じて、溝部の耐衝撃強度を十分に確保することができる。
[適用例4] 適用例1ないし適用例3のいずれかのスパークプラグにおいて、前記胴部の肉厚であって前記溝部の前記他端に隣接する部位から前記中心電極の軸心に沿った肉厚Cは、C≧3mmを満たすと良い。適用例4のスパークプラグによれば、溝部に加わる衝撃を緩和させることができる。
[適用例5] 適用例1ないし適用例4のいずれかのスパークプラグにおいて、前記溝部の前記一端から前記他端までの距離Dと、前記一端および前記他端を結ぶ直線から前記最外部までの距離Hとの関係は、(H/D)≦0.17を満たすと良い。適用例5のスパークプラグによれば、応力腐食割れへの耐性を向上させることができる。
[適用例6] 適用例1ないし適用例5のいずれかのスパークプラグにおいて、前記主体金具はニッケルメッキされても良い。適用例6のスパークプラグによれば、応力腐食割れに比較的に弱いニッケルメッキされた主体金具を利用しながら、主体金具における溝部の強度を確保した上でスパークプラグを小型化することができる。
[適用例7] 適用例1ないし適用例6のいずれかのスパークプラグにおいて、前記カシメ固定は冷間カシメであっても良い。適用例7のスパークプラグによれば、溝部の膨出が最外部を挟んで非対称になり易い冷間カシメを主体金具のカシメ固定に利用しながら、主体金具における溝部の強度を確保した上でスパークプラグを小型化することができる。
本発明の形態は、スパークプラグの形態に限るものではなく、例えば、スパークプラグの主体金具、スパークプラグを備える内燃機関、スパークプラグの製造方法などの種々の形態に適用することも可能である。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
スパークプラグを示す部分断面図である。 スパークプラグにおける主体金具の工具嵌合部を軸心に沿った方向から見た断面図である。 スパークプラグにおける主体金具の工具嵌合部、溝部、および胴部を拡大して示す部分断面図である。 溝部の断面係数および距離がスパークプラグの耐衝撃性能に与える影響を調べた評価試験の結果を示す説明図である。 胴部の肉厚がスパークプラグの耐衝撃性能に与える影響を調べた評価試験の結果を示す説明図である。 溝部の膨出比率がスパークプラグの耐応力腐食割れ性能に与える影響を調べた評価試験の結果を示す説明図である。
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明を適用したスパークプラグについて説明する。
A.実施例:
A−1.スパークプラグの構成:
図1は、スパークプラグ100を示す部分断面図である。図1には、スパークプラグ100の軸心O−Oを境界として、一方にスパークプラグ100の外観形状を図示し、他方にスパークプラグ100の断面形状を図示した。スパークプラグ100は、中心電極10と、絶縁碍子20と、主体金具30と、接地電極40とを備える。本実施例では、スパークプラグ100の軸心O−Oは、中心電極10、絶縁碍子20、主体金具30の各部材の軸心でもある。
スパークプラグ100において、棒状の中心電極10の外周は、絶縁碍子20によって電気的に絶縁されている。中心電極10の一端は、絶縁碍子20の一端から突出し、中心電極10の他端は、絶縁碍子20の他端へと電気的に接続されている。絶縁碍子20の外周には、中心電極10から電気的に絶縁された状態で主体金具30がカシメ固定されている。主体金具30には接地電極40が電気的に接続され、中心電極10と接地電極40との間には、火花を発生させる隙間である火花ギャップが形成される。スパークプラグ100は、内燃機関(図示しない)のエンジンヘッド200に形成された取付ネジ孔210に主体金具30を螺合させた状態で取り付けられ、2万〜3万ボルトの高電圧が中心電極10に印加されると、中心電極10と接地電極40との間に形成された火花ギャップに火花を発生させる。
スパークプラグ100の中心電極10は、有底筒状に成形された電極母材12の内部に、電極母材12よりも熱伝導性に優れる芯材14を埋設した棒状の電極である。本実施例では、中心電極10は、電極母材12の先端が絶縁碍子20の一端から突出する状態で絶縁碍子20に固定されると共に、シール体16、セラミック抵抗17、シール体18、端子金具19を介して絶縁碍子20の他端へと電気的に接続される。本実施例では、中心電極10の電極母材12は、インコネル(登録商標)を始めとするニッケルを主成分とするニッケル合金から成り、中心電極10の芯材14は、銅または銅を主成分とする合金から成る。
スパークプラグ100の接地電極40は、溶接によって主体金具30に接合され、中心電極10の軸心O−Oに交差する方向に屈曲して中心電極10の先端に対向する電極である。本実施例では、接地電極40は、インコネル(登録商標)を始めとするニッケルを主成分とするニッケル合金から成る。
スパークプラグ100の絶縁碍子20は、アルミナを始めとする絶縁性セラミックス材料を焼成して形成される。絶縁碍子20は、中心電極10を収容する軸孔28を有する筒状体であり、中心電極10が突出する側から軸心O−Oに沿って順に、脚長部22と、第1碍子胴部24と、碍子鍔部25と、第2碍子胴部26とを備える。絶縁碍子20の脚長部22は、中心電極10が突出する側に向けて外径が小さくなる筒状の部位である。絶縁碍子20の第1碍子胴部24は、脚長部22よりも大きな外径を有する筒状の部位である。絶縁碍子20の碍子鍔部25は、第1碍子胴部24よりも更に大きな外径を有する筒状の部位である。絶縁碍子20の第2碍子胴部26は、碍子鍔部25よりも小さな外径を有する筒状の部位であり、主体金具30と端子金具19との間に十分な絶縁距離を確保する。
スパークプラグ100の主体金具30は、本実施例では、ニッケルメッキされた低炭素鋼製の部材であるが、他の実施形態において、亜鉛メッキされた低炭素鋼製の部材であっても良いし、無メッキのニッケル合金製の部材であっても良い。本実施例では、絶縁碍子20に対する主体金具30のカシメ固定は、冷間カシメであるが、他の実施形態において、熱間カシメであっても良い。
主体金具30は、中心電極10が突出する側から軸心O−Oに沿って順に、端面31と、取付ネジ部32と、胴部34と、溝部35と、工具嵌合部36と、カシメ部38とを備える。主体金具30の端面31は、取付ネジ部32の先端に形成された中空円状の面であり、端面31には、接地電極40が接合され、端面31の中央からは、絶縁碍子20の脚長部22に包まれた中心電極10が突出する。主体金具30の取付ネジ部32は、エンジンヘッド200の取付ネジ孔210に螺合するネジ山を外周に有する円筒状の部位である。主体金具30のカシメ部38は、工具嵌合部36に隣接して設けられ、主体金具30を絶縁碍子20にカシメ固定する際に、絶縁碍子20の第2碍子胴部26に密着するように塑性加工された部位である。主体金具30のカシメ部38と、絶縁碍子20の碍子鍔部25との間の領域には、粉末のタルク(滑石)を充填した充填部63が形成され、充填部63は、パッキン62,64で封止されている。
主体金具30の溝部35は、胴部34および工具嵌合部36の間に設けられ、主体金具30を絶縁碍子20にカシメ固定する際に外周方向に膨出した部位である。本実施例では、溝部35の膨出形状は、冷間カシメの結果として部材が外周方向に湾曲した形状であるが、熱間カシメの場合には、圧縮加工により成形された形状である。主体金具30の胴部34は、溝部35に隣接して設けられ、溝部35よりも外周方向に張り出した鍔状部であり、エンジンヘッド200に向けてガスケット50を圧縮する。主体金具30の工具嵌合部36は、溝部35に隣接して設けられ、溝部35よりも外周方向に張り出した鍔状部であり、スパークプラグ100をエンジンヘッド200に取り付けるための工具(図示しない)に嵌合する多角形状に成形されている。本実施例では、工具嵌合部36は六角形状であるが、他の実施形態において、四角形や八角形など他の多角形であっても良い。
図2は、スパークプラグ100における主体金具30の工具嵌合部36を軸心O−Oに沿った方向から見た断面図である。なお、図2の断面図は、図1の矢印F2−F2によって示す位置で切断した工具嵌合部36を見た図である。本実施例では、工具嵌合部36は、図2に示すように、六角レンチ(図示しない)に嵌合する六角形状に成形され、時計回りに、六つの嵌合面361,362,363,364,365,366を有する。これら六つの嵌合面のうち相互に対向する嵌合面361,364、嵌合面362,365、嵌合面363,366の各々の対辺間距離Sは、本実施例では12mm(ミリメートル)であるが、他の実施形態において、11mm、10mm、9mmなど12mmよりも小さくても良い。
図3は、スパークプラグ100における主体金具30の工具嵌合部36、溝部35、および胴部34を拡大して示す部分断面図である。主体金具30の溝部35は、第1溝端部353と、最外部355と、第2溝端部357とを備える。溝部35の第1溝端部353は、主体金具30の工具嵌合部36に隣接する部位である。溝部35の最外部355は、第1溝端部353と第2溝端部357との間に位置し、溝部35において最大外径をとる部位である。溝部35の第2溝端部357は、主体金具30の胴部34に隣接する部位である。
溝部35の第1溝端部353における軸心O−Oに関する断面係数Z1と、溝部35の第2溝端部357における軸心O−Oに関する断面係数Z2との関係は、Z1≦Z2を満たすことが好ましい。なお、断面係数Z1は、次の数式1で表され、断面係数Z2は、次の数式2で表される。
Z1=(π/32)・[{(d2)−(d1)}/(d2)] …(1)
Z2=(π/32)・[{(d4)−(d3)}/(d4)] …(2)
数式1の「d1」は第1溝端部353における内径を示し、「d2」は第1溝端部353における外径を示す。数式2の「d3」は第2溝端部357における内径を示し、「d4」は第2溝端部357における外径を示す。
溝部35の第1溝端部353における断面係数Z1は、Z1≧49mmを満たすことが好ましい。溝部35の第2溝端部357における断面係数Z2は、溝部35の第1溝端部353から最外部355までの軸心O−Oに沿った距離Aと、溝部35の最外部355から第2溝端部357までの軸心O−Oに沿った距離Bとの関係で、A>Bの場合、Z2≧62mmを満たし、A≦Bの場合、Z2≧53mmを満たすことが好ましい。断面係数Z1および断面係数Z2の評価値については後述する。
胴部34の形状に関し、溝部35の第2溝端部357に隣接する部位から軸心O−Oに沿った胴部34の肉厚Cは、C≧3.0mmを満たすことが好ましい。胴部34の肉厚Cの評価値については後述する。
溝部35の第1溝端部353から第2溝端部357までの軸心O−Oに沿った距離Dと、溝部35の第1溝端部353および第2溝端部357を結ぶ直線から最外部355までの距離Hとの関係は、(H/D)≦0.17を満たすことが好ましい。溝部35が外周方向に膨出する割合を示す膨出比率(H/D)の評価値については後述する。
A−2.溝部35の断面係数Z1,Z2の評価値:
図4は、溝部35の断面係数Z1,Z2および距離A,Bがスパークプラグ100の耐衝撃性能に与える影響を調べた評価試験の結果を示す説明図である。図4の評価試験では、図4に示すように、断面係数Z1,Z2の値の組み合わせが異なる20個の試験品を製作し、これらの試験品に対して「JIS B8031」に準拠する耐衝撃性試験を実施した。図4の試験品については、断面係数Z1を「71mm」、「66mm」、「62mm」、「58mm」、「53mm」、「49mm」、「45mm」の各値のいずれかに調整し、断面係数Z2を「74mm」、「71mm」、「66mm」、「62mm」、「58mm」、「53mm」、「49mm」、「45mm」の各値のいずれかに調整すると共に、距離A,Bの大小関係を変化させた。図4の試験品では、胴部34の肉厚Cを「3.0mm」とし、溝部35の膨出比率(H/D)を「0.15」とした。
図4の耐衝撃性試験では、常温および常湿の条件で、試験品を耐衝撃性試験装置に取り付け、毎分400回の割合で60分間衝撃を加えた後、主体金具30の溝部35を切断した断面におけるクラックの有無を調べた。図4には、試験品を特定する試験品番号に続いて、断面係数Z1の数値、断面係数Z2の数値、距離Aと距離Bとの大小関係、クラックの有無を示した。図4におけるクラックの有無の欄には、溝部35における第1溝端部353側にクラックが有る場合に「A側」と示し、溝部35における第2溝端部357側にクラックが有る場合に「B側」と示した。
図4の試験結果によれば、特に、断面係数Z1が「66mm」よりも小さな試験品についてのクラック有無の対比から、断面係数Z1と断面係数Z2との関係が「Z1≦Z2」を満たす場合にはクラック発生を抑制できることが分かった。この結果は、溝部35の湾曲形状が第1溝端部353側よりも第2溝端部357側で緩やかになることで、溝部35に発生する衝撃応力が緩和することに起因すると考えられる。したがって、断面係数Z1と断面係数Z2との関係は、「Z1≦Z2」を満たすことが好適である。
また、図4の試験結果によれば、試験品番号「71」の試験品のように、断面係数Z1と断面係数Z2との関係が「Z1≦Z2」を満たす場合であっても、断面係数Z1が「49mm」よりも小さな「45mm」である場合にはクラックが発生することが分かった。したがって、断面係数Z1は、「Z1≧49mm」を満たすことが好適である。
また、図4の試験結果によれば、距離Aと距離Bとの関係が「A>B」を満たす試験品(特に、試験品番号「23」、「33」を参照)についてのクラック有無の対比から、断面係数Z2が「62mm」以上である場合にはクラック発生を回避できることが分かった。したがって、距離A,Bと断面係数Z2との関係は、「A>Bの場合、Z2≧62mm」を満たすことが好適である。
また、図4の試験結果によれば、距離Aと距離Bとの関係が「A≦B」を満たす試験品(特に、試験品番号「52」、「61」、「62」、「71」を参照)についてのクラック有無の対比から、断面係数Z2が「53mm」以上である場合にはクラック発生を回避できることが分かった。したがって、距離A,Bと断面係数Z2との関係は、「A≦Bの場合、Z2≧53mm」を満たすことが好適である。
A−3.胴部34の肉厚Cの評価値:
図5は、胴部34の肉厚Cがスパークプラグ100の耐衝撃性能に与える影響を調べた評価試験の結果を示す説明図である。図5の評価試験では、図5に示すように、胴部34の肉厚Cが異なる5個の試験品を製作し、これらの試験品に対して、図4の評価試験と同様に、耐衝撃性試験を実施した後、溝部35におけるクラックの有無を調べた。図5の試験品については、胴部34の肉厚Cを「4.0mm」、「3.5mm」、「3.0mm」、「2.5mm」、「2.0mm」の各値に調整した。図5の試験品では、溝部35の断面係数Z1を「71mm」とし、溝部35の断面係数Z2を「66mm」とし、距離A,Bの大小関係を「A>B」とし、溝部35の膨出比率(H/D)を「0.15」とした。図5には、試験品を特定する試験品番号に続いて、肉厚Cの数値、クラックの有無を示した。
図5の試験結果によれば、胴部34の肉厚Cが「3.0mm」以上である場合にはクラック発生を抑制できることが分かった。この結果は、胴部34の肉厚Cの増大に伴い胴部34の剛性が高くなることで、溝部35に加わる取付ネジ部32を支点とする衝撃曲げモーメントが緩和することに起因すると考えられる。したがって、胴部34の肉厚Cは、「C≧3.0mm」を満たすことが好適である。
A−4.溝部35の膨出比率(H/D)の評価値:
図6は、溝部35の膨出比率(H/D)がスパークプラグ100の耐応力腐食割れ性能に与える影響を調べた評価試験の結果を示す説明図である。図6の評価試験では、図6に示すように、溝部35の膨出比率(H/D)が異なる5個の試験品を製作し、これらの試験品に対して、応力腐食割れ試験を実施した。図6の試験品については、溝部35の膨出比率(H/D)を「0.14」、「0.15」、「0.16」、「0.17」、「0.18」の各値に調整した。図6の試験品では、溝部35の断面係数Z1を「71mm」とし、溝部35の断面係数Z2を「66mm」とし、胴部34の肉厚Cを「3.0mm」とし、距離A,Bの大小関係を「A>B」とした。図6の応力腐食割れ試験では、130℃の試験水溶液(硝酸カルシウム四水和物85g+硝酸アンモニウム5g+水10g)に試験品を60時間浸し、クラック(応力腐食割れ)の有無を調べた。図5には、試験品を特定する試験品番号に続いて、膨出比率(H/D)の数値、クラックの有無を示した。
図6の試験結果によれば、溝部35の膨出比率(H/D)が「0.17」以下である場合には応力腐食割れを抑制できることが分かった。この結果は、溝部35の膨出量を抑制することで、カシメ固定時に発生した溝部35の残留応力が緩和することに起因すると考えられる。したがって、溝部35の膨出比率(H/D)は、「(H/D)≦0.17」を満たすことが好適である。
A−5.効果:
以上説明したスパークプラグ100によれば、溝部35の断面係数Z1,Z2が「Z1≦Z2」を満たすことによって、工具嵌合部の対辺間距離が12mm以下であっても溝部35の耐衝撃強度を確保することができる。したがって、主体金具30における溝部35の強度を確保した上でスパークプラグ100を小型化することができる。また、溝部35の断面係数Z1が「Z1≧49mm」を満たすことによって、溝部35の耐衝撃強度を十分に確保することができる。また、溝部35の断面係数Z2が、「A>B」の場合、「Z2≧62mm」を満たし、「A≦B」の場合、「Z2≧53mm」を満たすことによって、距離A,Bとの関係に応じて、溝部35の耐衝撃強度を十分に確保することができる。また、胴部34の肉厚Cが「C≧3mm」を満たすことによって、溝部35に加わる衝撃を緩和させることができる。また、溝部35の膨出比率(H/D)が「(H/D)≦0.17」を満たすことによって、応力腐食割れへの耐性を向上させることができる。
また、応力腐食割れに比較的に弱いニッケルメッキされた主体金具30を利用しながら、主体金具30における溝部35の強度を確保した上でスパークプラグ100を小型化することができる。また、溝部30の膨出が最外部355を挟んで非対称になり易い冷間カシメを主体金具30のカシメ固定に利用しながら、主体金具30における溝部35の強度を確保した上でスパークプラグ100を小型化することができる。
B.他の実施形態:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
10…中心電極
12…電極母材
14…芯材
16…シール体
17…セラミック抵抗
18…シール体
19…端子金具
20…絶縁碍子
22…脚長部
24…第1碍子胴部
25…碍子鍔部
26…第2碍子胴部
28…軸孔
30…主体金具
31…端面
32…取付ネジ部
34…胴部
35…溝部
36…工具嵌合部
38…カシメ部
40…接地電極
50…ガスケット
62,64…パッキン
63…充填部
100…スパークプラグ
200…エンジンヘッド
210…取付ネジ孔
353…第1溝端部
355…最外部
357…第2溝端部
361〜366…嵌合面
S…対辺間距離
A,B,D,H…距離
C…肉厚
Z1…断面係数
Z2…断面係数

Claims (7)

  1. 棒状の中心電極と、
    前記中心電極の外周を電気的に絶縁する絶縁碍子と、
    前記絶縁碍子の外周にカシメ固定された主体金具であって、
    外周方向に膨出した円筒状の溝部と、
    前記溝部の一端に隣接し、前記溝部よりも外周方向に張り出した多角形状の工具嵌合部と、
    前記溝部の前記一端とは異なる他端に隣接し、前記溝部よりも外周方向に張り出した胴部と
    を含む主体金具と、
    前記主体金具に接合され、前記中心電極との間に火花ギャップを形成する接地電極と
    を備えるスパークプラグであって、
    前記工具嵌合部の多角形状の対向する二辺の間の対辺間距離Sは12mm以下であり、
    前記溝部の前記一端における断面係数Z1と、前記溝部の前記他端における断面係数Z2との関係は、Z1≦Z2を満たすことを特徴とするスパークプラグ。
  2. 請求項1に記載のスパークプラグであって、前記断面係数Z1は、Z1≧49mmを満たすことを特徴とするスパークプラグ。
  3. 請求項1または請求項2に記載のスパークプラグであって、
    前記溝部において最大外径をとる最外部から前記一端までの距離A、および前記最外部から前記他端までの距離Bと、前記断面係数Z2との関係は、
    A>Bの場合、Z2≧62mmを満たし、
    A≦Bの場合、Z2≧53mmを満たすことを特徴とするスパークプラグ。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のスパークプラグであって、前記胴部の肉厚であって前記溝部の前記他端に隣接する部位から前記中心電極の軸心に沿った肉厚Cは、C≧3mmを満たすことを特徴とするスパークプラグ。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のスパークプラグであって、前記溝部の前記一端から前記他端までの距離Dと、前記一端および前記他端を結ぶ直線から前記最外部までの距離Hとの関係は、(H/D)≦0.17を満たすことを特徴とするスパークプラグ。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のスパークプラグであって、前記主体金具はニッケルメッキされたことを特徴とするスパークプラグ。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のスパークプラグであって、前記カシメ固定は冷間カシメであることを特徴とするスパークプラグ。
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