JP2011177822A - マグネシウム合金板の研磨方法およびマグネシウム合金板 - Google Patents

マグネシウム合金板の研磨方法およびマグネシウム合金板 Download PDF

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Abstract

【課題】マグネシウム合金板の表面を平滑に湿式研磨した場合に、その表面に研磨焼けが生じにくく、縞模様が目立たないようにすることができるマグネシウム合金板の研磨方法およびその研磨方法によって作製されたマグネシウム合金板を提供する。
【解決手段】マグネシウム合金板の研磨方法は、搬送されるマグネシウム合金板Pの表面を、研磨液13の使用下で研磨ベルト1A(研磨材)により研磨する研磨工程を具える。そして、研磨液13は、研磨ベルト1Aの幅方向の局所に噴射されることなく、マグネシウム合金板Pの上に噴射される。そうすることで、研磨液13をマグネシウム合金板Pの表面幅方向全体に均一に広げられ、マグネシウム合金板Pの幅方向に対して、研磨液13の濡れ状態に局所的な差が生じることを緩和することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、マグネシウム合金板の研磨方法およびその研磨方法により作製されたマグネシウム合金板に関するものである。特に、マグネシウム合金板の表面を湿式研磨した場合に、その表面に研磨焼けが生じにくく、縞模様が目立つことがないようにすることができる研磨方法およびその研磨方法によって作製されたマグネシウム合金板に関するものである。
近年、マグネシウム(以下、Mg)合金板が、携帯電話やノートパソコンの筺体などに利用されてきている。例えば、特許文献1には、微細な凹凸加工を後工程で均一にMg合金板に施すことができるよう、Mg合金の圧延材に対して、予備加工として、研磨加工を施すことが記載されている。その研磨加工の代表例として、湿式ベルト式研磨が挙げられている。
特開2009−120877号公報
近年、より金属質感の高いMg合金板に対するニーズがある。このようなニーズに対応するため、上記研磨加工の条件について試行した。その結果、Mg合金板の表面を湿式研磨加工すると、Mg合金板表面に研磨焼けや縞模様が目立つ場合があり、この縞模様の存在がMg合金板の金属質感の向上に対する阻害要因となり得ることが判明した。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、Mg合金板の表面を湿式研磨した場合に、その表面に研磨焼けが生じにくく、縞模様が目立たないようにすることができるMg合金板の研磨方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記本発明の研磨方法によって作製されたMg合金板を提供することにある。
本発明者らは、Mg合金板の表面に生じる研磨焼けおよび縞模様の原因を鋭意検討した。その結果、次の知見を得た。
(1)Mg合金板表面を湿式研磨すれば、研磨材の表面には直接研磨液がかかる箇所とかからない箇所とが生じ、研磨材の幅方向全域に研磨液が行き渡たらないことがある。つまり、研磨材とMg合金板とが接触する際、Mg合金板表面の幅方向全域に研磨液が行き渡らないまま研磨される。そのため、Mg合金板表面には研磨焼けが生じてしまう。
(2)その研磨焼けは、Mg合金板の表面粗さが平滑なほど、そして、研磨液が少量であるほど、発生し易い。
(3)そして、研磨材表面における研磨液の濡れ状態に局所的な差が生じることにより、研磨材の目詰まり度合いにばらつきが生じる。その局所的に目詰まりが生じた研磨材の表面形態がMg合金板に転写されて、Mg合金板の表面に縞模様を生じさせる一因となる。
(4)この転写によって生じる縞模様は、Mg合金板の表面が粗ければ比較的目立ち難いが、同表面の平滑性を高めるほど顕著に目立つ。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたもので、研磨の際に、Mg合金板の幅方向全域に研磨液が行き渡って研磨が施されるようにすることで上記の目的を達成する。
本発明のMg合金板の研磨方法は、搬送されるMg合金板の表面を、研磨液の使用下で研磨材により研磨する研磨工程を具える。そして、上記研磨液は、研磨材の幅方向の局所に噴射されることなく、Mg合金板上に噴射される。
上記の構成によれば、研磨液をMg合金板上の幅方向全体に均一に広げられ、Mg合金板の幅方向に対して、研磨液の濡れ状態に局所的な差が生じることを抑制することができる。したがって、Mg合金板表面の研磨焼けを抑制することができる。
また、上記濡れ状態の局所的な差の防止により、上記目詰まり度合いにばらつきが生じるのを抑制することができるので、Mg合金板上で研磨具合に局所的に差が生じることなく、均一に研磨を施すことができる。したがって、Mg合金板表面に生じる縞模様を抑制することができる。
本発明方法の一形態として、Mg合金板の搬送速度をV(m/min)、研磨材の回転速度をV(m/min)、Mg合金板の板幅をW(mm)とすると、研磨液の流量Q(L/min)は、0.4×10−6/(V×V×W)以上であることが挙げられる。
上記の構成によれば、Mg合金板表面を平滑に研磨した場合に、研磨焼けが発生し易くなるのを抑制することができる。また、Mg合金板の表面を平滑にした場合に、縞模様の発生をも抑制することができる。そして、その効果を得るために、流量Qは、0.8×10−6/(V×V×W)以上、特に、1.6×10−6/(V×V×W)以上であることが効果的である。
本発明方法の一形態として、Mg合金板の表面粗さが、算術平均粗さRa≦1.2μm、最大高さRmax≦20μm、及び十点平均高さRz≦12μmの少なくとも一つを満たすように研磨することが挙げられる。
上記の構成によれば、Mg合金板上の幅方向全域に均一に研磨液を行き渡らせることができ、上記の規定を満たす表面粗さにMg合金板の表面を研磨した場合に、Mg合金板表面の研磨焼けや縞模様の発生を抑制することに効果がある。そして、Mg合金板の表面粗さが、算術平均粗さRa≦0.6μm、最大高さRmax≦10μm、及び十点平均高さRz≦6μmの少なくとも一つを、特に、算術平均粗さRa≦0.3μm、最大高さRmax≦5μm、及び十点平均高さRz≦3μmの少なくとも一つを満たすときにより効果的である。
また、本発明のMg合金板は、上述したMg合金板の研磨方法により作製されたMg合金板である。
上記の構成によれば、Mg合金板は、その表面に研磨焼けが生じず、縞模様が目立つことなく、金属質感に優れる。
本発明Mg合金板の一形態として、Mg合金板は、アルミニウム(以下、Al)を7質量%以上12質量%以下含有するマグネシウム合金からなることが挙げられる。
上記の構成によれば、Alを含有することで、より硬度が高いマグネシウム合金とすることができる。つまり、研磨粉が研磨材に付着し難くなり、目詰まりの発生状態のばらつきを防止しやすくなる。したがって、マグネシウム合金板の表面に縞模様が目立つことなく、金属質感に優れる。
本発明のMg合金板の研磨方法は、Mg合金板を湿式研磨した場合に、Mg合金板の表面に研磨焼けが生じず、縞模様のないようにすることができる。
また、本発明のMg合金板は、本発明のMg合金板の研磨方法を用いて作製することで、Mg合金板の表面に研磨焼けや縞模様のないものとすることができる。
実施形態1に係る本発明の研磨方法が行われる処理加工ライン全体の模式図である。 実施形態1に係る本発明の研磨方法に用いる研磨材近傍の部分斜視図である。
<<実施形態1>>
以下、本発明の実施の形態を説明する。ここでは、長尺のMg合金板に研磨を施すMg合金板の研磨方法およびその後の表面処理方法を説明する。研磨方法は、搬送されるMg合金板に研磨を施す際、使用する研磨液が、研磨ベルト(研磨材)の幅方向の局所に噴射されることなく、Mg合金板上に噴射されて上記研磨が施されるという方法である。そして、その後の表面処理方法として、洗浄、吸水、乾燥の各工程を施し、Mg合金板は巻き取りロールにて巻き取られ、その全てをインラインで行う。本発明の特徴は、研磨の際、Mg合金板の幅方向全域に研磨液を行き渡らせることで、研磨液の濡れ状態に局所的な差が生じないようにする点にある。以下、研磨方法に上記表面処理方法を含めたものを表面加工方法と称し、図1、2を参照して研磨方法を説明する。その後、表面処理方法、加工対象のMg合金板の順に説明する。
<表面加工方法>
[研磨方法]
研磨工程1では、図1に示すように、繰り出しロールSからMg合金板Pを巻き戻して搬送し、その搬送されたMg合金板Pに研磨を施す。この研磨加工は、上記Mg合金板Pの表面を、研磨液13の使用下で研磨材により研磨する。研磨材には研磨ベルト1Aを使用する。研磨ベルト1Aの砥粒の粒度は、Mg合金板Pの表面粗さが所望の粗さとなるように適宜選択するとよいが、♯320以上が好ましく、♯400以上、特に♯600以上がより好ましい。後述する所定の表面粗さに研磨することができれば、研磨材の形態は問わない。例えば、ベルト以外でブラシやホイールの砥石などを研磨材に使用しても構わない。
その上記所定の表面粗さとは、算術平均粗さRa≦1.2μm、最大高さRmax≦20μm、及び十点平均高さRz≦12μmの少なくとも一つを満たすことである。そして、算術平均粗さRa≦0.6μm、最大高さRmax≦10μm、及び十点平均高さRz≦6μmのうち少なくとも一つを、特に、算術平均粗さRa≦0.3μm、最大高さRmax≦5μm、及び十点平均高さRz≦3μmのうち少なくとも一つを満たすことがより好ましい。
また、本例では、研磨加工を2段階に分けて施す。その場合、例えば、Mg合金板Pの上流側の研磨ベルト10を♯320(♯400)、下流側の研磨ベルト11を♯400(♯600)のように、2段階の研磨ベルト1Aは、その砥粒の粒度を、上記下流側を上記上流側より細かくするとよい。そうすることで、Mg合金板Pの表面をより均一に平滑に研磨することができる。さらに、研磨加工を3段階以上設ける場合であっても、上記2段階の時と同様に、上流側から下流側に向かって砥粒の粒度が細かくなるよう設計するとよい。
この研磨加工は、Mg合金板Pの表裏面に対して施す。ここでは、表裏面に設置される研磨ベルト1AはMg合金板Pの長手方向に互いにずれて位置する。Mg合金板Pの表裏面を挟んで研磨ベルト1Aの対向する位置には、基準ロール(図示せず)が設けられている。つまり、上記基準ロールを設けることで、Mg合金板Pの表裏面における研磨量をより均等にし易くできる。そして、上記のずれによって、Mg合金板Pの裏面(鉛直下方側)が先に研磨されるように研磨ベルト1Aを設置することが好ましい。上記裏面を先に研磨加工する場合、研磨液13の噴射も上記裏面側が先になるが、その研磨液13がMg合金板Pの表面に回り込むことがないので、上記表裏面で研磨液13との接触開始位置を制御し易くなる。また、研磨ベルト1AがMg合金板Pの表裏面を挟んで対向するように位置してもよい。この研磨ベルト1Aによる研磨形式は、Mg合金板Pの搬送方向と同じ方向に回転するダウンカットであることが好ましい。そうすることで、より平滑なMg合金板Pが得られる研磨を施すことができる。但し、研磨効率を求める場合、Mg合金板Pの搬送方向と逆向きに研磨ベルト1Aが回転するアップカットを行っても構わない。特に、研磨効率と研磨面の平滑性との両立を考慮すると、上流側の研磨ベルト10をアップカットとし、下流側の研磨ベルト11をダウンカットとしてもよい。
そして、研磨を行う際、上記ダウンカットか、アップカットかによらず、研磨液13は、図2に示すように、研磨ベルト10、11のそれぞれに対してMg合金板Pの上流側に配置されたスプレーノズル12から、研磨ベルト10、11の幅方向(図1に対し、紙面に垂直方向、以下同様)の局所には噴射せず、Mg合金板Pの表面上に噴射される。本例では、Mg合金板Pの幅に対応する長さを有する棒状のスプレーノズル12に複数の噴射口(図示せず)が上記幅方向に等間隔に並んで設けられ、それらの噴射口からMg合金板Pの表面に向かって鉛直下方に噴射する。この場合、Mg合金板Pの幅方向に研磨液13が広がり易い点でより好ましい。また、研磨液13は、研磨ベルト10、11の上流側から鉛直下方よりも研磨ベルト10、11の側のMg合金板Pに向かって傾斜方向に噴射させてもよい。この場合、研磨ベルト10、11とMg合金板Pとの接触箇所付近に研磨液13をより供給し易い。上記各噴射口は、Mg合金板Pの表面上における幅方向全域に研磨液13が行き渡るように、その数、径、および間隔は適宜選択して設けるとよい。例えば、各噴射口は30mm程度の間隔で設けられることが挙げられる。そして、Mg合金板Pに対する研磨液13の噴射位置は、Mg合金板Pと研磨ベルト10、11との接触箇所からおよそ50mmの位置が好適である。そうすることで、Mg合金板Pの表面上で研磨液13が幅方向全体に行き渡るので、研磨焼けの発生を抑制することができる。また、上記のように幅方向全体に研磨液13が行き渡るので、研磨材の目詰まりをも軽減することができる。そのことによって、Mg合金板Pの幅方向に対して、研磨具合に部分的な差が生じず、均一な研磨を施すことができる。その結果、縞模様のないMg合金板Pが得られる。また、上流側にスプレーノズルを配置すると、研磨によるMg合金板Pと研磨ベルト1Aの摩擦熱および摩擦抵抗を低減することができる。
研磨液13の流量Q(L/min)は、0.4×10−6/(V×V×W)以上であることが好ましく、0.8×10−6/(V×V×W)以上、特に1.6×10−6/(V×V×W)以上が好ましい。研磨液流量が上記下限値以上であれば、Mg合金板Pの表面を平滑にする場合、研磨焼けの発生を抑制し易い。そして、その研磨液流量は、8.0×10−6/(V×V×W)までとする。上記規定の上限値以下であれば、研磨材とMg合金板Pとの間のスリップを起こすことなく研磨を施すことができる。ここで、上記VはMg合金板Pの搬送速度(m/min)を、上記Vは研磨材の回転速度(m/min)を、WはMg合金板Pの板幅(mm)を示している。
本例のようにダウンカットの場合、上記研磨ベルト10、11のそれぞれの下流側には、スプレーノズル12と同様のスプレーノズルが設けられていなくても構わないが設けることが好ましい。下流側にもスプレーノズルを設ければ、より一層研磨箇所の摩擦抵抗と摩擦熱の低減を図ることができる。そして、下流側のスプレーノズルからは、研磨ベルト10、11に研磨液13を噴射してもよいし、Mg合金板Pの上に噴射してもよい。研磨ベルト10、11に研磨液13を噴射した場合、同ベルトの幅方向における局所的な目詰まりを抑制することができる。また、Mg合金板Pの上に研磨液13を噴射した場合、研磨粉を効率的に洗い流すことができる。一方、アップカットの場合、研磨ベルト10、11の下流側には、スプレーノズルを設置して、その下流側のスプレーノズルからは、研磨ベルト10、11に研磨液13を噴射することが好ましい。そうすることで、研磨によるMg合金板Pと研磨ベルト1Aの摩擦熱および摩擦抵抗を低減することができる。
そして、この研磨液13は、研磨によるMg合金板Pと研磨ベルト1Aの摩擦熱および摩擦抵抗を低減するもの、あるいは研磨粉を排出することができ研磨粉が研磨ベルト1AとMg合金板Pの間に詰まることを抑制することができるもの、であることが好ましい。さらに、Mg合金板Pと反応しにくい研磨液であれば特に好ましい。また、研磨液13を使用することで、研磨対象がMg合金のように活性な物質であっても研磨粉が粉塵爆発することを防ぐことができる。
{表面処理方法}
上記研磨加工後に、後述する洗浄、吸水、乾燥の各工程を施すことが、Mg合金板表面の腐食の点を考慮すると好ましい。以下、その点について上記各工程を、図1より説明する。
(洗浄工程)
洗浄工程2では、上記研磨加工を施したMg合金板Pに付着している研磨液13や研磨粉を洗浄液21により洗い流す。本例では、洗浄液21には、水を使用する。この洗浄液21は、研磨液13を洗い流せて、研磨対象と反応し難いものであれば特に問わない。
そして、この洗浄工程2では、洗浄液21を吹き出す洗浄ノズル20は、Mg合金板Pの表裏面を挟んで対向する位置にある。そうすることで、Mg合金板Pの表裏面における液の除去程度に殆ど差が生じることなく研磨液13を洗い流すことができ、上記研磨ベルト1AのずれによるMg合金板Pの表裏面における液に接触している時間の差は許容できる。また、上記研磨ベルト1Aと同様に、Mg合金板Pの表裏面における洗浄ノズル20がMg合金板Pの長手方向にずれて位置していてもよい。そうすれば、表裏面で液に接触している時間に差が生じ難くすることができる。
(吸水工程)
吸水工程3では、洗浄工程2を経たMg合金板Pに付着している洗浄液21を除去する。洗浄液21の除去には、スポンジ製の吸水ロール30のように、十分に除去することが可能なものを使用することが好適である。この吸水ロール30は、Mg合金板Pの幅と同等以上の幅を有していることが好ましい。そうすることで、Mg合金板Pに付着した洗浄液のMg合金板Pにおける幅方向に拭き残しが生じず、均一な拭き取りを行うことができる。
また、吸水ロール30は、Mg合金板Pの表裏面を挟んで対向する位置に設置する。そうすることで、Mg合金板Pの表裏面における液の除去程度に差が生じることなく洗浄液21を拭き取ることができるので、表裏面で液に接触している時間に差が生じ難い。また、上記研磨ベルト1Aと同様に上記洗浄ノズル20がMg合金板Pの長手方向にずれている場合は、Mg合金板Pの表裏面における吸水ロール30も同様に長手方向にずれるように設置してもよい。その場合であっても、表裏面で液に接触している時間に差が生じ難くすることができる。そして、この吸水工程3は、3段階以上設けてあっても構わない。そうすることで、より確実に洗浄液21を除去することができる。
(乾燥工程)
乾燥工程4では、吸水工程3後、Mg合金板Pに洗浄液21が残存している可能性があるので、その洗浄液21が残存しないように、洗浄液21を乾かす。乾かす手段として、エアブローが好適である。特に40℃以上の温風であればより好ましい。
この乾燥工程4も、吸水工程3と同様に、Mg合金板Pの表裏面を挟んで対向する位置にエア41を吹き出す送風口40を設置する。そうすることで、たとえMg合金板Pの表面に洗浄液21が残存していても、Mg合金板Pの表裏面で同じ位置で乾かすことができるので、表裏面で液に接触している時間に差が生じ難い。また、上述したように吸水ロール30がMg合金板Pの長手方向にずれている場合は、Mg合金板Pの表裏面における送風口40も同様に長手方向にずれるように設置してもよい。その場合であっても、表裏面で液に接触している時間に差が生じ難くすることができる。
本例では、エアブローは1段階しか設けていないが、より確実に洗浄液21を除去しようとするなら、乾燥工程4を2段階設けておくことが好ましい。その場合、上流側、下流側の少なくとも一方の乾燥工程を40℃以上の温風とすることが乾燥効率の点で好ましい。そして、上流側のエアの温度を40℃以上とし、下流側のエアの温度を上流側の温度よりも低くすれば、2段階のエアで乾燥の確実性を高めながら、両段階のエアを40℃以上とする場合に比べて乾燥工程4での消費エネルギーを削減できる。
(その他)
上記各工程は、インラインで行われる。例えば、耐食性に優れるMg合金板である場合は、インラインでなくても構わない。但し、インラインの場合、表面加工を手間無く実施することができる点で好ましい。また、上記各工程が、インラインで行われる際、上記腐食の点を考慮した場合、Mg合金板Pの搬送速度は速い方が好ましい。その場合、その速度は5m/min以上、特に10m/min以上であることがより好ましい。
(吸液工程)
さらに上記腐食の点を考慮すると、研磨工程1と洗浄工程2の間に、研磨液13を除去するための吸液工程を具えていることが好ましい。研磨液13が洗浄液21によって洗い流される前に、例えば、吸水工程3で使用した吸水ロール30と同様のスポンジからなる吸液ロールで、研磨液13を除去することで、Mg合金板Pの表面が研磨液13に接触している時間を極力短くすることができる。したがって、Mg合金板Pの腐食をより抑えることができる。この吸液ロールも、Mg合金板Pと同等もしくは同等以上の幅を有していることが好ましい。また、本例のように研磨加工を2段階に分けて施す場合、各段階間、つまり研磨ベルト10と研磨ベルト11の間でも上記吸液ロールを設けてあると、よりいっそうMg合金板Pが研磨液13に接触している時間を短くすることができるので好ましい。
<被加工材>
上記の表面加工方法を施すこのMg合金板Pは、鋳造より得られたものに圧延を施したものが好適である。その他に、鋳造材、圧延材にレベラー加工を施したもの、を被加工材としてもよい。また、それらの被加工材は、圧延前に溶体化処理を施しておいても構わない。
[形状]
本例では、コイル状に巻き取った長尺のMg合金板Pを使用するが、特に加工対象に関して限定はされないので、例えば、短尺板であってもよい。例えば、コイルにするなら、連続鋳造で、短尺板なら、ダイカストなどで成形するとよい。また、長尺板を必要サイズにカットして短尺板を作製してもよい。
[組成]
そして、上記のMg合金板Pは、Mgに種々の元素を添加したものが挙げられる。添加元素は、例えば、Al、Zn、Mn、Si、Cu、Ag、Y、Zrなどの元素群のうち少なくとも一種の元素が挙げられる。また、上記元素群から選択される複数の元素を含有していてもよい。具体的には、ASTM規格におけるAZ系なら例えばAZ31、AZ61、AZ91などを、AM系なら例えばAM60などを、その他、AS系、ZK系などのMg合金を利用することができる。特に、Alを7質量%〜12質量%含有するMg合金系は耐食性が高く、高強度である点で好適である。したがって、粘り気が少なく、研磨粉が研磨材に付着しにくいため、上記目詰まりのばらつきを防止しやすくなる。
<作用効果>
上述した実施形態1に係るMg合金板Pの研磨方法によれば、Mg合金板Pの表面を平滑に湿式研磨した場合、Mg合金板Pの幅方向における研磨液の濡れ状態に差が生じることを抑制することができるので、研磨焼けを生じさせず、さらに、研磨ベルト1Aの目詰まりのばらつきを抑制されるので、Mg合金板Pの表面に縞模様の発生を生じ難くすることができる。したがって、金属質感の高いMg合金板を得易い。
<試験例>
試験例として、Mg合金板Pをコイル状に巻いたものを用意し、そのMg合金板Pを図1に示す表面加工方法の手順で、研磨ベルトにおける砥粒を様々な粒度、及び、様々な研磨液流量で研磨加工を施した。研磨加工後、表面処理方法を施してから巻き取りロールEにて巻き取られたMg合金板Pの表面粗さを測定した。そして、そのMg合金板Pの表面を目視し、研磨焼けや縞模様の発生具合を比較した。
加工対象として、Mg合金板Pは、Mg−9.0質量%Al−1.0質量%Znを含有するAZ91相当の組成を持ち、双ロール連続鋳造より作製されたMg合金板を、コイル状に巻き取ったものを使用する。そのMg合金コイルに、以下に示す表面加工条件で表面加工を施す。そして、研磨ベルトにおける砥粒の粒度および研磨液流量を種々変更して、試料1〜16を作製した。但し、試料1〜9、13〜16は、図1のようにMg合金板P上に、試料10〜12は、Mg合金板Pではなく、図1の研磨ベルト1Aに対し、その幅方向の一部に研磨液13を噴射した。
[[表面加工条件]]
研磨方法:湿式ベルト研磨
砥粒の最終番手:試料No.1、4、7、10、13−♯320
試料No.2、5、8、11、14−♯400
試料No.3、6、9、12、15−♯600
試料No.16−♯240
研磨液流量:試料No.1〜3−0.4×10−6/(V×V×W)
試料No.4〜6−0.8×10−6/(V×V×W)
試料No.7〜12−1.6×10−6/(V×V×W)
試料No.13〜16−0.3×10−6/(V×V×W)
Mg合金板の搬送速度V:5m/min
研磨ベルトの周速V:1200m/min
Mg合金板の幅W:200mm
研磨液の温度:40℃
洗浄液の温度:40℃
乾燥工程:40℃のエアブロー
そして、試料1〜16の表面粗さを測定し、その表面を観察した。その結果を表1に示す。この表における○の表記は、研磨焼けがなく、縞模様もない金属質感に優れた表面であるという意味を表す。
Figure 2011177822
<結果>
試験例での表面加工後、試料No.1、4、5、7〜9、16は、その表面に研磨焼けや縞模様の発生は見られなかった。試料No.2、3、6、13〜15は、その表面に研磨焼けが発生した。これは、表面粗さが平滑な割に研磨液流量が十分でなく、研磨焼けが発生する結果となったと考えられる。試料No.10〜12は、縞模様がそれぞれ発生した。これは、研磨ベルトに局所的に研磨液を噴射したことで、研磨液が幅方向に十分に行き渡たらなかったために、研磨ベルトの幅方向における局所的な目詰まりを解消することができなかったからだと考えられる。その結果、研磨具合にMg合金板の幅方向で差が生じ、縞模様の発生を抑制できなかった。そして、表面粗さを測定したところ、同じ表面粗さ同士では、研磨液流量が多いほど、研磨焼けは発生せず、また、表面粗さが平滑になるほど、研磨液流量を多く必要とすることがわかった。一方、研磨液の噴射箇所を見てみると、研磨液流量を多くしても、研磨液を研磨材に噴射した場合は、縞模様が発生してしまうことがわかった。
以上より、研磨加工の際に、研磨液をMg合金板上の幅方向に均一に行き渡らせなければ、研磨焼けが、また、研磨材の目詰まりのばらつきを解消しなければ、縞模様がそれぞれ発生することがわかり、本発明の研磨方法を施せば、その研磨焼けおよび縞模様は生じ難いことが判明した。特に、表面をより平滑に、そして、研磨液流量をより多く使用することで研磨焼けが生じず、縞模様のない金属質感に優れたMg合金板が得られることが判明した。このような結果となった理由は、本発明の研磨方法では、研磨液をMg合金板の幅方向全体に均一に行き渡らせることで、Mg合金板表面の幅方向全域における研磨液の濡れ状態に局所的な差が生じなかったためである。その結果、研磨材の目詰まりがその表面で局所的に発生するのを抑制し、研磨具合に上記幅方向で局所的に差が生じず、Mg合金板の幅方向全域に均一に研磨を施すことができたからであると考えられる。
なお、上述した実施の形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。
本発明のMg合金板の研磨方法は、Mg合金板の表面を平滑に湿式研磨する際に利用することができる。
S 繰り出しロール
P Mg合金板
1 研磨工程 1A、10、11 研磨ベルト 12 スプレーノズル
13 研磨液
2 洗浄工程 20 洗浄ノズル 21 洗浄液
3 吸水工程 30 吸水ロール
4 乾燥工程 40 送風口 41 エア
E 巻き取りロール

Claims (9)

  1. 搬送されるマグネシウム合金板の表面を、研磨液の使用下で研磨材により研磨する研磨工程を具えるマグネシウム合金板の研磨方法であって、
    前記研磨液が、前記研磨材の幅方向の局所に噴射されることなく、前記マグネシウム合金板上に噴射されることを特徴とするマグネシウム合金板の研磨方法。
  2. 前記マグネシウム合金板の搬送速度をV(m/min)、前記研磨材の回転速度をV(m/min)、前記マグネシウム合金板の板幅をW(mm)とすると、前記研磨液の流量Q(L/min)は、0.4×10−6/(V×V×W)以上であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金板の研磨方法。
  3. 前記流量Q(L/min)は、0.8×10−6/(V×V×W)以上であることを特徴とする請求項2に記載のマグネシウム合金板の研磨方法。
  4. 前記流量Q(L/min)は、1.6×10−6/(V×V×W)以上であることを特徴とする請求項2に記載のマグネシウム合金板の研磨方法。
  5. 前記マグネシウム合金板の表面粗さが、算術平均粗さRa≦1.2μm、最大高さRmax≦20μm、及び十点平均高さRz≦12μmの少なくとも一つを満たすように研磨することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマグネシウム合金板の研磨方法。
  6. 前記表面粗さが、算術平均粗さRa≦0.6μm、最大高さRmax≦10μm、及び十点平均高さRz≦6μmの少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項5に記載のマグネシウム合金板の研磨方法。
  7. 前記表面粗さが、算術平均粗さRa≦0.3μm、最大高さRmax≦5μm、及び十点平均高さRz≦3μmの少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項5に記載のマグネシウム合金板の研磨方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のマグネシウム合金板の研磨方法によって作製されたことを特徴とするマグネシウム合金板。
  9. 前記マグネシウム合金板は、アルミニウムを7質量%以上12質量%以下含有するマグネシウム合金からなることを特徴とする請求項8に記載のマグネシウム合金板。
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