JP2011177616A - 不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒および該触媒を用いた不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造方法 - Google Patents

不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒および該触媒を用いた不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
プロピレン、イソブチレンまたはターシャリーブチルアルコールを分子状酸素を用いて接触気相酸化してそれぞれ対応する不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を製造するための機械的強度の高く、かつ、目的生成物を高収率で製造するための触媒を提供する。
【解決手段】
モリブデン及びビスマスを必須成分とする触媒活性成分を含有し、かつ、酸量が0.05mmol/g以下である無機質繊維を含有する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用の触媒。
【選択図】 なし

Description

本発明は、不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒、詳しくは、プロピレン、イソブチレンまたはターシャリーブチルアルコール(以下、「TBA」と記することがある)の分子状酸素を用いた接触気相酸化によりそれぞれ対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を製造するに好適な触媒、およびこの触媒を用いたこれら不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造方法に関する。
従来、プロピレンの分子状酸素を用いた接触気相酸化によりアクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する際に使用する触媒や、イソブチレンまたはTBAの接触気相酸化によりメタクロレインおよび/またはメタクリル酸を製造する際に使用する触媒に関して、触媒の機械的強度の向上を目的とした提案が数多くなされている。
例えば、触媒物質もしくは触媒前駆体あるいは担体物質もしくは担体前駆体および無機質あるいは有機質繊維を分散したスラリーに不活性基材を浸漬し、乾燥もしくは焼成することを特徴とするコート触媒(特許文献1)、繊維平均直径が1μm以下のウィスカを担持助材として用いた担持触媒(特許文献2)、モリブデン及びビスマスを必須成分として含む担持触媒において、平均直径が2〜200μmの無機質繊維を担持補助剤として用いた触媒(特許文献3)、モリブデンおよびビスマスを必須成分とするリング状に成型してなる触媒において、無機質繊維を含有する触媒(特許文献4)などが開示されている。
特開昭56−44045号公報 特開昭59−173140号公報 特開平06−381号公報 特開2002−273229号公報
しかしながら、前記した触媒はいずれも機械的強度はある程度改善されるものの、目的とする不飽和アルデヒドや不飽和カルボン酸の収率はまだ十分ではないため、より高い機械的強度を有し、かつ、高収率で目的生成物を得ることができる触媒が望まれている。
本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、プロピレン、イソブチレンまたはTBAの分子状酸素を用いた接触気相酸化により、それぞれ対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を製造するに好適な触媒、具体的には機械的強度に優れ、かつ、目的生成物を高収率で製造可能である触媒を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、プロピレン、イソブチレンまたはTBAの分子状酸素を用いた接触気相酸化により、それぞれ対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を製造するためのモリブデン−ビスマス系触媒において、その機械的強度の向上を目的に含有する無機質繊維として今まで全く着目されていない無機質繊維の酸量を特定範囲とすることで、機械的強度のみならず高収率で目的生成物を製造可能であることを見出した。具体的には、モリブデンおよびビスマスを必須として含む触媒活性成分と、酸量が0.05mmol/g以下である無機質繊維とを含有する触媒が、機械的強度が高く、高収率で目的生成物を製造することができることを見出し、本発明に至った。その理由については明らかでないが、種々の検討により無機質繊維の酸量が前記範囲外では、触媒の活性および選択性が低下することがわかった。
さらには、無機質繊維の含有量を触媒活性成分に対し、0.5質量%〜30質量%とすることで、前記した無機質繊維の触媒性能への悪影響を抑制できることも見出した。
本発明によれば、プロピレン、イソブチレンまたはTBAの接触気相酸化により、それぞれ対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を製造するための機械的強度の高い触媒が得られ、かつ、目的生成物を高収率で製造することが可能となる。
以下、本発明にかかる不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒および該触媒を用いた不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し、実施することができる。
本発明における不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒としては、モリブデンおよびビスマスを必須成分とする触媒活性成分と、酸量が0.05mmol/g以下である無機質繊維とを含有することが重要であり、モリブデンおよびビスマスを必須成分とする触媒活性成分としては、下記一般式(1)
Mo12BiFe (1)
(ここで、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Aはコバルトおよびニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素、Bはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、Cはタングステン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンから選ばれる少なくとも1種の元素、Dはリン、テルル、アンチモン、スズ、セリウム、鉛、ニオブ、マンガン、砒素、ホウ素および亜鉛から選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素であり、a、b、c、d、e、fおよびxはそれぞれBi、Fe、A、B、C、DおよびOの原子比を表し、0<a≦10、0<b≦20、2≦c≦20、0<d≦10、0≦e≦30、0≦f≦4であり、xはそれぞれの元素の酸化状態によって定まる数値である。)で表される触媒活性成分が好適である。
前記無機質繊維としては、その酸量が0.05mmol/g以下であればよく、好ましくは0.03mmol/g以下である。本発明において酸量を測定する方法としては、アンモニア吸着昇温脱離法を採用する。当該法は当業者間では一般的な手法であり、例えば、測定試料を予め乾燥し重量を測定した後、アンモニアを当該試料に通過させ、次いで昇温し、排出されるアンモニア量を測定するものである。具体的には、TPD(昇温脱離法)により、予め120〜300℃で1〜4時間乾燥した試料に、50〜120℃の雰囲気下でアンモニアガスを通気して試料に飽和吸着させ、その後400〜700℃まで昇温して脱離するアンモニア量を測定する方法等が挙げられる。
前記無機質繊維の種類としては、その酸量が0.05mmol/g以下となるものであれば特に限定されず、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、炭素繊維などを使用することができ、その結晶構造も多結晶質でも単結晶質でもよい。中でも、その汎用性の面からガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維およびシリカ−アルミナ繊維が好適である。前記無機質繊維としては、2種類以上を適宜組み合わせて使用しても、あるいは酸量が異なるものや後述する平均繊維長や平均繊維径の異なるものを適宜組み合わせて使用することもできる。
また、前記無機質繊維としては、アルカリ成分の含有量が1質量%未満であるものが好ましい。その理由については明らかではないが、無機質繊維に含まれるアルカリ成分が触媒活性成分中に溶出することで、触媒の活性および選択性に悪影響を及ぼすものと推測される。
無機質繊維中のアルカリ成分の含有量については、JIS R3420に記載のアルカリ含有率の測定方法に準じて測定することができる。
前記無機質繊維の大きさとしては、平均繊維径が0.5μm〜50μm、好ましくは2μm〜20μm、平均繊維長が10μm〜1000μm、好ましくは30μm〜500μmのものが好適である。平均繊維長は、触媒中において前記範囲内であればよく、予め10μm〜1000μmの平均繊維長を有する無機質繊維を用いても、あるいは1000μmを超える平均繊維長を有する無機質繊維を触媒活性成分の一部または全部と混合した後、強く攪拌して繊維を切断し、結果的に平均繊維長が10μm〜1000μmの範囲に入るようにしてもよい。しかし、後者の場合、無機質繊維の分散性が悪くなることから、予め10μm〜1000μm平均繊維長を有する無機質繊維を用いるのが好ましい。
さらに、前記無機質繊維の含有量は、前記触媒活性成分量に対して0.5質量%〜30質量%の範囲が好ましく、1質量%〜15質量%の範囲がより好ましい。含有量が前記範囲より少ないと機械的強度向上効果が十分でなく、また前記範囲より多いと触媒中に含有される触媒活性成分量が少なくなり、触媒性能が低下してしまうほか触媒寿命の面からも好ましくない。
本発明の触媒は、酸量が0.05mmol/g以下である無機質繊維を含有する点を除けば、公知の不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒の調製に一般に用いられている方法に準じて製造することができる。
具体的には、一般式(1)で表される触媒活性成分の原料として、各成分元素の酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩などの塩類や、それらの水溶液、ゾルなど、あるいは、複数の元素を含む化合物などを、例えば、水に混合して水溶液あるいは水性スラリー(以下、「出発原料混合液」と記すことがある)とする。
次に、必要に応じて、得られた出発原料混合液を加熱や減圧など各種方法により乾燥させて触媒前駆体とする。加熱による乾燥方法としては、例えば、スプレードライヤー、ドラムドライヤー等を用いて粉末状の触媒前駆体を得ることもできるし、箱型乾燥機、トンネル型乾燥機等を用いて気流中で加熱してブロック状またはフレーク状の触媒前駆体を得ることもできる。また、一旦、出発原料混合液を濃縮、蒸発乾固してケーキ状の固形物を得て、この固形物をさらに前記加熱処理する方法も採用できるほか、得られた前記触媒前駆体をさらに焼成して焼成物とする方法も採用できる。減圧による乾燥方法としては、例えば、真空乾燥機を用いて、ブロック状または粉末状の触媒前駆体を得ることができる。
得られた触媒前駆体あるいは焼成物は、必要に応じて適当な粒度の粉体を得るための粉砕工程や分級工程を経て、続く成形工程に送られる。なお、上記触媒前駆体あるいは焼成物の粉体の粒度は、特に限定されないが、成形性に優れる点で500μm以下が好ましい。
触媒の成形方法としては、前記触媒前駆体、焼成物あるいはそれらと粉体状の不活性担体との混合物を押し出し成形法や打錠成形法などにより一定の形状に成形する方法、一定の形状を有する任意の不活性担体上に担持する担持法などがあるが、生成物の逐次反応を抑制するため触媒自体の厚みは少ない方が好ましいことから、後者の不活性担体上に担持する担持法が好ましい。
無機質繊維の添加方法については、特に制限はなく、触媒活性成分中に無機質繊維が均一に分散、含有されるようにし得るものであれば、いずれの方法も用いることができる。例えば、一般式(1)で表される触媒活性成分の出発原料混合液に無機質繊維を添加しても、あるいは触媒活性成分の出発原料混合液を乾燥あるいはさらに焼成した後に得られる触媒前駆体に無機質繊維を添加してもよい。後者の場合、触媒前駆体粉体と無機質繊維とを粉粒状態で混合してもあるいは水などの溶媒に分散させて混合してもよい。なかでも、触媒活性成分の出発原料混合液に混合する方が、無機質繊維の分散性の面から好ましい。また、無機質繊維は一括して添加しても、あるいは分割して添加してもよく、例えば、その一部を出発原料混合液に添加し、残りを乾燥あるいはさらに焼成した後に得られる触媒前駆体に添加してもよい。
押し出し成形法や打錠成形法等の場合、その形状に特に制限はなく、球状、円柱状、リング状、不定形などのいずれの形状でもよい。もちろん球状の場合、真球である必要はなく実質的に球状であればよく、円柱状およびリング状についても同様に断面形状は真円である必要は無く、実質的に円形であればよい。
担持法としては、例えば、特公昭49−11371号公報に記載の一定の形状を有する不活性担体に出発原料混合液を加熱攪拌しながら蒸発乾固して担体に付着させる方法、特開昭59−173140あるいは特開平6−381号公報に記載の出発原料混合液のスラリーを不活性担体に付着させつつ、同時に溶媒を気化蒸発させて担持する方法、特開昭63−200839号公報、特開平10−28877号公報あるいは特開2004−136267号公報に記載の不活性担体に前記触媒前駆体や焼成物を粉体状で担持させる方法などにしたがって製造することができる。
不活性担体としては、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、マグネシア、ステアタイト、コージェライト、シリカ−マグネシア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ゼオライト等が挙げられる。その形状についても特に制限はなく、球状、円柱状、リング状など公知の形状のものが使用できる。不活性担体に対する触媒活性成分の担持量については、特に限定されないが、20質量%〜300質量%の範囲が好ましく、50質量%〜200質量%の範囲がより好ましい。担持量が前記範囲より少なすぎると触媒寿命の低下が懸念され、前記範囲より多すぎると担持した際の機械的強度が低下する可能性がある。
成形工程においては、成形性を向上させるための成形補助剤やバインダー、触媒に適度な細孔を形成させるための気孔形成剤などを用いることができる。具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピオン酸、マレイン酸、ベンジルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールまたはフェノール類の有機化合物や水、硝酸、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。
上記成形工程で得られた成形体あるいは担持体は、続く焼成工程に送られる。焼成温度としては350℃〜600℃、好ましくは400℃〜550℃、更に好ましくは420℃〜500℃、焼成時間としては好ましくは1〜10時間である。焼成雰囲気としては、酸化雰囲気であれば良いが、分子状酸素含有ガス雰囲気が好ましく、特に、分子状酸素含有ガス流通下に焼成工程を行うのが好ましい。分子状酸素含有ガスとしては空気が好適に用いられる。
なお、焼成工程で用いる焼成炉としては特に制限はなく、一般的に使用される箱型焼成炉あるいはトンネル型焼成炉等を用いればよい。
本発明におけるプロピレン、イソブチレンまたはTBAの分子状酸素を用いた接触気相酸化により対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を製造するのに用いられる反応器については、固定床反応器である限り特段の制限はないが、特に固定床多管式反応器が好ましい。その反応管の内径は通常15〜50mm、より好ましくは20〜40mm、さらに好ましくは22〜38mmである。
固定床多管式反応器の各反応管には、必ずしも単一の触媒を充填する必要はなく、従来公知の複数種の触媒をそれぞれ層(以下、「反応帯」と記すことがある)をなすように充填することも可能である。例えば、特開平4−217932号公報のような異なる占有容積を有する複数の触媒を原料ガス入口側から出口側に向かって占有容積が小さくなるように充填する方法、あるいは特開平10−168003号公報のような担持率の異なる複数の触媒を原料ガス入口側から出口側に向かって担持率が高くなるように充填する方法、あるいは特開2005−320315号公報のような触媒の一部を不活性な担体などで希釈する方法、あるいはこれらを組み合わせる方法などを採用してもよい。この時、反応帯の数は、反応条件や反応器の規模により適宜決定されるが、反応帯の数が多すぎると触媒の充填作業が煩雑になるなどの問題が発生するため工業的には2〜6程度までが望ましい。
本発明における反応条件には特に制限は無く、この種の反応に一般に用いられている条件であればいずれも実施することが可能である。例えば、原料ガスとして1〜15容量%、好ましくは4〜12容量%のプロピレン、イソブチレンまたはTBA、0.5〜25容量%、好ましくは2〜20容量%の分子状酸素、0〜30容量%、好ましくは0〜25容量%の水蒸気、残部が窒素などの不活性ガスからなる混合ガスを250〜450℃の温度範囲で0.1〜1.0MPaの圧力下、300〜5,000Hr−1(STP)の空間速度で触媒に接触させればよい。
反応原料ガスとしてのグレードについては特に制限はなく、例えば、原料としてプロピレンを用いる場合、ポリマーグレードやケミカルグレードのプロピレンなどを用いることができる。また、プロパンの酸化脱水素反応によって得られるプロピレン含有の混合ガスも使用可能であり、この混合ガスに必要に応じ、空気または酸素などを添加して使用することもできる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」、と記すことがある。実施例および比較例における転化率および収率は、次式によって求めた。
転化率[mol%]
=(反応した出発原料のmol数)/(供給した原料のmol数)×100
収率[mol%]
=(生成した不飽和アルデヒドおよび生成した不飽和カルボン酸の合計mol数)/(供給した出発原料のmol数)×100
[酸量の測定方法]
酸量の測定は、日本ベル(株)製の触媒分析装置BEL−CATを用いたアンモニアTPD法(昇温脱離法)により以下の条件で測定した。
試料量:約0.1g
キャリアーガス:ヘリウム
検出器:TCD(熱伝導型検出器)
前処理温度/時間:200℃×2時間
アンモニア吸着温度:100℃
昇温範囲:100℃〜600℃
昇温速度:10℃/分
[触媒の機械的強度測定方法]
内径25mm、長さ5000mmのステンレス製反応管を鉛直方向に設置し、該反応管の下端を厚さ1mmのステンレス製受け板で塞ぐ。約50gの触媒を該反応管の上端から反応管内に落下させた後、反応管下端のステンレス製受け板を外し、反応管から触媒を静かに抜き出す。抜き出した触媒を目開き5mmの篩で篩い、篩上に残った触媒の質量を計量した。
触媒強度[質量%]
=篩上に残った触媒の質量/反応管上端から落下させた触媒の質量×100
<実施例1>
〔触媒調製〕
蒸留水3000部にパラモリブデン酸アンモニウム500部および硝酸カリウム1.9部を溶解した(A液)。別に蒸留水300部に65重量%硝酸20部を添加し、硝酸ビスマス91.6部、硝酸コバルト426部、硝酸鉄143部および硝酸ニッケル227部を溶解した(B液)。得られたA液にB液を添加し、30分攪拌し続けた。その後、酸量が0.027mmol/g、平均繊維径4μmおよび平均繊維長50μmのシリカーアルミナ繊維を触媒活性成分に対して3質量%となるよう添加し、さらに2時間攪拌し続けスラリーを得た。得られたスラリーを加熱攪拌してケーキ状の固形物とし、得られた固形物を空気雰囲気下200℃で約5時間乾燥を行った。乾燥後の固形物を500μm以下に粉砕し、触媒粉体を得た。転動造粒装置に平均粒径4.5mmのシリカ−アルミナ球形担体390部を投入し、次いで結合剤として15質量%の硝酸アンモニウム水溶液と共に触媒粉体を徐々に投入して担体に担持させた後、空気雰囲気下470℃で6時間焼成して触媒1を得た。この触媒1の担持率は約150質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。
触媒1:Mo12Bi0.8Co6.2Fe1.5Ni3.30.08
なお、担持率は、下記式により求めた。
担持率[質量%]=担持された触媒活性成分の質量/用いた担体の質量×100
〔反応器〕
全長3000mm、内径25mmのSUS製反応管およびこれを覆う熱媒体を流すためのシェルからなる反応器を鉛直方向に用意した。反応管上部より得られた触媒1を落下させて、層長が2900mmとなるように充填した。
〔酸化反応〕
触媒を充填した反応管下部より、プロピレン8.3容量%、酸素15容量%、水蒸気3容量%、残部が窒素等の不活性ガス混合からなる混合ガスを空間速度2100hr−1(STP)で導入し、プロピレン酸化反応を行った。その際、プロピレン転化率が約97mol%となるように熱媒体温度(反応温度)を調節した。その結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1において、シリカーアルミナ繊維を添加しなかったことおよびシリカ−アルミナ球形担体の量を490部に変更したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒2を得た。この触媒2の担持率は約120質量%であり、酸素を除く金属元素組成は実施例1と同じであった。得られた触媒2を実施例1と同様に反応器に充填し、同条件で酸化反応を行った。その結果も表1に示す。表1に示すとおり、その機械的強度が弱いため触媒充填時に触媒活性成分が崩壊し反応時の圧力損失が高くなり、所定の転化率に調節できなかった。
<比較例2>
実施例1において、シリカーアルミナ繊維として酸量が0.084mmol/g、平均繊維径2μmおよび平均繊維長70μmのものを用いたいことおよびシリカ−アルミナ球形担体の量を490部に変更したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒3を得た。この触媒3の担持率は約120質量%であり、酸素を除く金属元素組成は実施例1と同じであった。得られた触媒3を実施例1と同様に反応器に充填し、同条件で酸化反応を行った。その結果も表1に示す。
<実施例2>
実施例1と同様にしてA液およびB液を調製した。得られたA液にB液を添加し、2時間攪拌し続けスラリーを得た。得られたスラリーを加熱攪拌してケーキ状の固形物とし、得られた固形物を空気雰囲気下200℃で約5時間乾燥を行った。乾燥後の固形物を500μm以下に粉砕し、触媒前駆体粉体を得た。得られた触媒前駆体粉体に、実施例1と同じシリカーアルミナ繊維を触媒活性成分に対して3質量%となるよう添加し、粉体混合し触媒粉体とした。転動造粒装置に平均粒径4.5mmのシリカ−アルミナ球形担体490部を投入し、次いで結合剤として15質量%の硝酸アンモニウム水溶液と共に触媒粉体を徐々に投入して担体に担持させた後、空気雰囲気下470℃で6時間焼成して触媒4を得た。この触媒4の担持率は約120質量%であり、酸素を除く金属元素組成は実施例1と同じであった。実施例1と同様に反応器に充填し、同条件で酸化反応を行った。その結果も表1に示す。
<実施例3>
実施例1と同様にしてA液およびB液を調製した。得られたA液にB液を添加し、2時間攪拌し続けスラリーを得た。得られたスラリーを加熱攪拌してケーキ状の固形物とし、得られた固形物を空気雰囲気下200℃で約5時間乾燥後、さらに490℃で6時間焼成を行った。焼成後の固形物を500μm以下に粉砕し、焼成粉体を得た。続いて得られた焼成粉体を蒸留水800部および実施例1と同じシリカーアルミナ繊維を触媒活性成分に対して3質量%となるよう添加した後、30分攪拌しスラリー状(C液)とした。伝熱ヒーターにより約200℃に加熱された回転ドラム内に平均粒径4.5mmのシリカ−アルミナ球形担体490部を投入した。該担体を回転ドラム内で流動させながら、C液をスプレーノズルを用いて徐々に吹きつけ、水分を気化蒸発させながら担持を行った後、担持体を120℃で3時間乾燥し触媒5を得た。この触媒5の担持率は約120質量%であり、酸素を除く金属元素組成は実施例1と同じであった。実施例1と同様に反応器に充填し、同条件で酸化反応を行った。その結果も表1に示す。
<実施例4>
〔触媒調製〕
蒸留水3000部にパラモリブデン酸アンモニウム500部および硝酸カリウム1.4部を溶解した(A液)。別に蒸留水300部に65重量%硝酸20部を添加し、硝酸ビスマス195部、硝酸コバルト522部および硝酸鉄172部を溶解した(B液)。得られたA液にB液を添加し、30分攪拌し続けた。その後、酸量が0.043mmol/g、平均繊維径7μmおよび平均繊維長30μmのアルミナ繊維を触媒活性成分に対して5質量%となるよう添加し、さらに2時間攪拌し続けスラリーを得た。得られたスラリーを加熱攪拌してケーキ状の固形物とし、得られた固形物を空気雰囲気下150℃で約5時間乾燥を行った。乾燥後の固形物を500μm以下に粉砕し、触媒粉体を得た。転動造粒装置に平均粒径4.5mmのシリカ−アルミナ球形担体460部を投入し、次いで結合剤として15質量%の硝酸アンモニウム水溶液と共に触媒粉体を投入して担体に担持させた後、空気雰囲気下480℃で6時間焼成して触媒6を得た。この触媒6の担持率は約130質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。
触媒6:Mo12Bi1.7Co7.6Fe1.80.06
〔酸化反応〕
実施例1と同様に反応器に充填し、同条件で酸化反応を行った。その結果も表1に示す。
<比較例3>
実施例4において、アルミナ繊維として酸量が0.11mmol/g、平均繊維径5μmおよび平均繊維長10μmのものを触媒活性成分に対して8質量%となるよう添加したこと以外は実施例4と同様に調製し、触媒7を得た。この触媒7の担持率は約130質量%であり、酸素を除く金属元素組成は実施例4と同じであった。得られた触媒7を実施例1と同様に反応器に充填し、同条件で酸化反応を行った。その結果も表1に示す。
<実施例5>
〔触媒調製〕
蒸留水3000部にパラモリブデン酸アンモニウム500部および硝酸カリウム2.9部を溶解した(A液)。別に蒸留水300部に65重量%硝酸20部を添加し、硝酸ビスマス149部、硝酸コバルト364部、硝酸鉄114部および硝酸ニッケル182部を溶解した(B液)。得られたA液にB液を添加し、30分攪拌し続けた。その後、酸量が0.003mmol/g、平均繊維径10μmおよび平均繊維長420μmのガラス繊維(旭ファイバーグラス(株)製ミルドファイバー)を触媒活性成分に対して12質量%となるよう添加し、さらに2時間攪拌し続けスラリーを得た。得られたスラリーを加熱攪拌してケーキ状の固形物とし、得られた固形物を空気雰囲気下180℃で約5時間乾燥を行った。乾燥後の固形物を500μm以下に粉砕し、触媒粉体を得た。転動造粒装置に平均粒径4.5mmのシリカ−アルミナ球形担体300部を投入し、次いで結合剤として15質量%の硝酸アンモニウム水溶液と共に触媒粉体を投入して担体に担持させた後、空気雰囲気下470℃で6時間焼成して触媒8を得た。この触媒8の担持率は約190質量%であり、酸素を除く金属元素組成は次のとおりであった。
触媒8:Mo12Bi1.3Co5.3Fe1.2Ni2.50.12
〔酸化反応〕
実施例1と同様に反応器に充填し、同条件で酸化反応を行った。その結果も表1に示す。
Figure 2011177616

Claims (4)

  1. モリブデンおよびビスマスを必須成分とする下記一般式(1)で表される触媒活性成分、および、酸量が0.05mmol/g以下である無機質繊維を含有することを特徴とする不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用の触媒。
    Mo12BiFe (1)
    (式中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Aはコバルトおよびニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素、Bはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、Cはタングステン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンから選ばれる少なくとも1種の元素、Dはリン、テルル、アンチモン、スズ、セリウム、鉛、ニオブ、マンガン、砒素および亜鉛から選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素であり、a、b、c、d、e、fおよびxはそれぞれBi、Fe、A、B、C、DおよびOの原子比を表し、0<a≦10、0<b≦20、2≦c≦20、0<d≦10、0≦e≦30、0≦f≦4であり、xはそれぞれの元素の酸化状態によって定まる数値である。)
  2. 前記無機質繊維の含有量が、前記触媒活性成分に対し0.5質量%〜30質量%の範囲である請求項1に記載の触媒。
  3. 前記触媒活性成分および前記無機質繊維を不活性担体に担持してなる請求項1または2に記載の触媒。
  4. プロピレン、イソブチレンまたはターシャリーブチルアルコールを、分子状酸素を用いて接触気相酸化してそれぞれ対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を製造するにあたり、請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒を用いることを特徴とする不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造方法。
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