以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る微少漏洩判断装置を含むガス供給システムの構成図である。ガス供給システム1は、ガスストーブ、ファンヒータ、給湯器、床暖房、ガステーブル、及び、ガスBF風呂釜などの各ガス器具10に燃料ガスを供給するものである。ここで、ガステーブルは、とろ火を伴うガス器具10である。とろ火とは、勢いが弱い最小域の火であって、ぬる火、とろとろ火ということもあり、具体的にテーブルコンロにあっては煮豆やおかゆなどを長時間煮込むときの火加減をいう。なお、とろ火を伴うガス器具10は、ガステーブルに限らず、又はガスコンロやテーブルコンロなど他のものも存在する。
このようなガス供給システム1は、複数のガス器具10に加え、ガス供給元の調整器20と、配管31,32と、ガスメータ(微少漏洩判断装置)40とを備えている。なお、図1に示す例では、ガスメータ40を微少漏洩判断装置の一例として挙げるが、微少漏洩判断装置はガスメータ40に限るものではない。
調整器20は上流からの燃料ガスを所定圧力に調整して第1配管31に流すものである。第1配管31は、調整器20とガスメータ40とを接続するものである。第2配管32はガスメータ40とガス器具10とを接続する配管である。ガスメータ40は、燃料ガスの流量を測定して積算流量を表示するものである。このようなガス供給システム1では、ガスメータ40内に第1配管31及び第2配管32とつながる流路が形成されており、調整器20を通じて流れてきた燃料ガスは第1配管31からガスメータ40、及び第2配管32を通じてガス器具10に到達し、ガス器具10において燃焼されることとなる。
図2は、図1に示したガスメータ40の詳細を示す構成図である。図2に示すようにガスメータ40は、ガスの微少漏洩を判断する機能を備えたものである。このガスメータ40は、流量センサ41と、圧力センサ42と、判断部43と、トリガ信号発生部44と、生成部45と、類似度推移記憶部46と、スペクトルデータ記憶部47と、流量値記憶部(記憶手段)48とを有している。これらの構成のうち、判断部43、生成部45、類似度推移記憶部46、スペクトルデータ記憶部47、及び、流量値記憶部48は、マイコンにより構成することができる。
流量センサ41は、ガスメータ40の流路内におけるガス流量に応じた計測値の信号を出力するものであって、超音波センサやフローセンサなどで構成される。圧力センサ42は、ガスメータ40の流路内におけるガス圧力に応じた計測値の信号を出力するものであって、ピエゾ抵抗式や静電容量式などのセンサによって構成される。
判断部43は、ガスメータ40における各種判断を行うものであって、例えば、流量センサ41からの信号及び圧力センサ42からの信号に基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断するものである。このような判断部43は、とろ火判断部(とろ火判断手段)43aと、微少漏洩判断部(微少漏洩判断手段)43bと、ガス漏れ/ガス器具判断部(ガス器具判断手段)43cと、サンプリング時間調整部(サンプリング時間調整手段)43dを有している。
とろ火判断部43aは、とろ火による流量を判断するものである。具体的にとろ火判断部43aは、図3に示す流量推移に基づいてとろ火による流量を判断する。
図3は、とろ火を伴うガス器具10の流量波形の一例を示す図である。図3に示すように、まず、とろ火を伴うガス器具10が時刻t1において使用開始されたとする。この際、初期的には着火のため、微少流量を超える流量が流れることとなり、流量値はF2を示す。
その後、ユーザがガス器具10の火力をとろ火にすべく、ガステーブルにあっては回転つまみを徐々に回転させていく。これにより、時刻t2〜時刻t3にかけて流量は徐々に低下し、時刻t3において微少流量F1を示す。なお、時刻t1の着火から時刻t3のとろ火となるまでの時間は、大抵の場合、数十分以内(所定時間の一例)である。
次に、時刻t3〜時刻t4において、とろ火による煮込み等が行われ、その後、とろ火を伴うガス器具10の使用が終了する。これにより、ガス器具10はとろ火状態から消火状態に移行し、流量値は0L/hとなる。
このように、とろ火を伴うガス器具10の使用時には、微少流量F1を超える流量F2の後に、微少流量F1が流れることとなる。しかも、流量F2の流れ出し(時刻t1)から、微少流量F1に至る(時刻t2)までの時間は、所定時間以内となる。
再度、図2を参照する。とろ火判断部43aは、図3に示したような流量推移を捉えて、とろ火による流量を判断する。すなわち、とろ火判断部43aは、微微少流量F1を超える流量F2が検出されてから所定時間以内に微少流量F1を検出した場合、微少流量F1がとろ火による流量と判断する。
微少漏洩判断部43bは、微少流量F1が微少漏洩による流量かを判断するものである。この微少漏洩判断部43bは、とろ火判断部43aによりとろ火による流量が判断された場合、微少流量F1が微少漏洩による流量でない判断する。すなわち、微少漏洩判断部43bは、図3に示したような流量推移が観察され、とろ火を伴うガス器具10が使用されていると推察できる場合に、微少流量F1が微少漏洩によるものでないと判断することとなる。
ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、ガス漏れが発生したか否かを判断すると共に、使用されたガス器具10を判断するものである。特に、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、とろ火を伴うガス器具10が使用されたか否かを判断する。この判断により、微少漏洩判断部43bは、一層微少漏洩と、とろ火による流量とを区別するようになっている。
詳細にガス漏れ/ガス器具判断部43cは、生成部45及び類似度推移記憶部46と協働して、ガス漏れ(微少漏洩を除く)を判断し、ガス漏れが発生していないと判断できる場合に、使用中のガス器具10を判断する(第1手法)。さらに、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、スペクトルデータ記憶部47と協働して、ガス漏れ(微少漏洩を除く)を判断し、ガス漏れが発生していないと判断できる場合に、使用中のガス器具10を判断する(第2手法)。いずれの手法においても、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、ガス流量及びガス圧力の少なくとも一方の所定以上の変化時からの微小時間(最大で2秒)中に計測された波形に基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断することとなる。
まず、第1手法について説明する。生成部45は、ガス漏れが発生したと仮定したときのガス漏れ振動波形を生成するものである。ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、生成部45により生成されたガス漏れ振動波形に基づいて、ガス漏れを判断することとなる。
図4は、図2に示した生成部45により生成されるガス漏れ振動波形の概略を示す図である。図4に示すように、生成部45は、圧力が時間の経過と共に低下しながら振動するガス漏れ振動波形を生成する。このガス漏れ振動波形は、減衰振動の周波数、ゲイン、及び減衰比を含む2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成された波形である。ここで、本件発明者らは、ガス漏れ発生直後の微小時間(最大で2秒)において圧力や流量の計測値に振動が発生することを見出した。このため、生成部45は、ガス漏れ判断にあたり必要となる情報として、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成し、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、生成部45に生成されたガス漏れ振動波形に基づいてガス漏れの発生を判断することとなる。
なお、図4に示すように、生成部45は圧力のガス漏れ振動波形を生成するが、これに限らず、流量が時間の経過と共に上昇しながら振動するガス漏れ振動波形を生成していてもよい。さらに、この波形も2次遅れのステップ応答の式に基づいて決定されることが望ましい。
再度、図2を参照する。ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、入力されたセンサ41,42からの微小時間における信号の波形と、生成部45に生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出する。なお、類似度推移とは、本実施形態において連続的な正規相互相関(NCC:Normalized Cross Correlation)をいう。より具体的には、以下の式(1)により類似度RNCCが求められる。ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、この式(1)による類似度RNCCの算出を連続的に行うことにより、類似度推移(以下、連続NCCという)を求める。
そして、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、算出した類似度推移に基づいて、ガス漏れの発生を判断する。特に、この実施形態においては、その一例として、ガス漏れ/ガス器具判断部43cにより算出された類似度推移の代表値が閾値以上である場合に、ガス漏れが発生していると判断する。ここで、代表値とは、類似度全体又は類似度全体のうち特定期間の平均値であってもよいし、圧力や流量の変化が発生してから、ある特定の時刻における類似度であってもよいし、他の値であってもよい。
次に、図5を参照してガス漏れ時における圧力変化を説明する。図5は、ガス漏れ時における圧力変化を示す図である。図5に示すように、ガス漏れ発生時には、圧力が低下しつつ振動する波形を示すこととなる。この波形は、図4に示したように生成部45により生成されたガス漏れ振動波形と相関が高い。このため、類似度推移の代表値は高い値を示すこととなり、ガス漏れ/ガス器具判断部43cはガス漏れが発生したと判断することとなる。
図6は、ガス漏れ時における連続NCCを示すグラフである。なお、図6において実線と破線は、各家庭における配管状態の相違、ガス漏れ箇所の相違、及び、ガス漏れ流量の相違などの条件が異なる場合の連続NCCを示している。
図6に示すように、ガス漏れ時において圧力変化の発生直後(時刻0秒付近)における連続NCCは、「0.7」から「0.8」程度の値を示す。しかし、時刻0.025秒以降について連続NCCは「0.9」以上の値を示す。よって、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、類似度推移ガス漏れ/ガス器具判断部43cにより算出された類似度推移の代表値が「0.9」以上である場合に、ガス漏れが発生していると判断する。
一方、図7に示すようにガス器具使用時には、ガス漏れ時と異なる振動波形を示すこととなる。図7は、ガス器具使用開始時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における圧力変化を示し、(c)は給湯器使用開始時における圧力変化を示している。
図7(a)に示すように、ガステーブルの使用開始時には圧力が2.9kPa程度で滑らかに振動する圧力波形が得られる。また、図7(b)に示すように、小型湯沸器の使用終了時には圧力が2.93kPaを基準にして0.1kPa強振動する圧力波形が得られる。さらに、図7(c)に示すように、給湯器の使用終了時には圧力が2.93kPaを基準にして小型湯沸器よりもやや粗い振動を示す圧力波形が得られる。
図8は、図2に示したガス漏れ/ガス器具判断部43cにより算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における連続NCCを示し、(c)は給湯器使用開始時における連続NCCを示している。
ガステーブルの使用が開始した場合、図7(a)の振動波形が得られ、ガス漏れ/ガス器具判断部43cにより算出される連続NCCは図8(a)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「1.0」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.04秒において「0.95」まで復帰する。そして、連続NCCは、約0.1秒において「0.5」程度となり、その後「0.65」付近までゆっくりと上昇する。
また、小型湯沸器の使用が開始した場合、図7(b)の振動波形が得られ、ガス漏れ/ガス器具判断部43cにより算出される連続NCCは図8(b)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「1.0」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.04秒において「0.9」まで復帰する。そして、連続NCCは、再度「0.4」程度まで低下し、その後、「0.7」付近までゆっくりと上昇する。
また、給湯器の使用が開始した場合、図7(c)の振動波形が得られ、ガス漏れ/ガス器具判断部43cにより算出される連続NCCは図8(c)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.8」弱を示し、その後「0.2」を下回り、約0.02秒において「0.7」まで復帰する。そして、連続NCCは、「0.6」程度まで低下し、次いで「0.7」程度まで復帰する。その後、連続NCCは再び「0.5」程度まで低下した後に、約0.1秒において「0.6」弱となる。以後、連続NCCは「0.65」付近までゆっくりと上昇していく。
このようにガス器具10の使用開始時において、連続NCCは大半の期間で「0.9」以上を示さない。このため、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、連続NCCの代表値が閾値以上でない場合、ガス器具10が使用されたと判断する。
また、連続NCCはガス器具10毎に異なっている。このため、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、このような連続NCCのパターンから使用されたガス器具10を判断する。具体的には図4に示す類似度推移記憶部46に、各ガス器具10の連続NCCのパターンを記憶させておく。すなわち、類似度推移記憶部46は、ガステーブルについて図8(a)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、小型湯沸器について図8(b)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、給湯器について図8(c)に示したような連続NCCのパターンを記憶している。そして、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、類似度推移記憶部46により記憶された連続NCCデータのうち、算出された連続NCCと最も近い連続NCCデータが示すガス器具10が使用されたと判断する。特に、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、最も近い連続NCCデータが示すガス器具10がガステーブルである場合には、とろ火を伴うガス器具10が使用されたと判断する。
なお、図5〜図8については、圧力の振動波形及び圧力の振動波形に基づく連続NCCを示しているが、流量についても同様にしてガス漏れ判断を行うことができる。なお、以下の説明では、圧力の振動波形に基づくガス漏れ判断について説明するが、流量についても同様であることは言うまでもない。
次に、ガス漏れ振動波形の詳細について説明する。より詳細に説明すると、生成部45は、以下のようにしてガス漏れ振動波形を生成する。まず、生成部45は以下の式(2)を記憶している。
ここで、y(t)は圧力の変化量を示し、Kはゲインを示し、ωdは減衰振動の周波数を示し、ζは減衰比を示している。特に、ゲインK、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζは、圧力センサ42によって実際に計測された波形から求められるものである。次に、これらの算出方法について図5を参照して説明する。
生成部45は、以下の式(3)から、減衰振動の周波数ωdを算出する。
ここで、Tpは行き過ぎ時間であり、図5で示すように、圧力変化発生時から最初の極値V1(極小値V1)までの時間をいう。生成部45は、入力された信号から最初の極値V1が確認されると、行き過ぎ時間Tpを求め、式(3)から減衰振動の周波数ωdを算出する。
なお、減衰振動の周波数ωdは、式(3)から求める場合に限らず、圧力変化発生時から2つ目の極値M(極大点M)や、3つ目の極値V2(極小点V2)に基づいて算出してもよい。
次に、生成部45は、以下の式(4)から、ゲインKを算出する。
このような式であるため、生成部45は、入力された信号から極値V1,M,V2が確認されると、式(4)からゲインKを算出する。
なお、図5から明らかなように、ゲインKは圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることができる。従って、生成部45は、圧力変化が発生して圧力値が略一定値となったとき(図5では時刻0.4秒)に、差分からゲインKを求めてもよい。さらに、生成部45は、圧力変化発生時から4つ目以降の極値を加味してゲインKを算出してもよい。
次いで、生成部45は、以下の式(5)から、減衰比ζを算出する。
ここで、δは対数減衰率であり、mは周期数である。式(5)の場合、周期数mは「0.5」となる。
このような式であるため、生成部45は、入力された信号から極値V1,Mが確認されると、式(5)から減衰比ζを算出する。
以上のように、生成部45は、ゲインK、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを算出し、式(2)より振動波形の式を求める。そして、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、求めた式と、入力された圧力波形とから、式(1)に従って連続NCCを求めることとなる。
ここで、生成部45は、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを算出するようにしてもよい。すなわち、図5に示す振動波形は、ガス漏れ時の流量に依存する傾向にある。このため、生成部45は、流量値のみを変数に含む式を予め記憶し、この式に流量センサ41によって計測された流量値を代入して、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
具体的に生成部45は、以下の式(6)から減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを求める。
ここで、Lは流量値であり、a1,a2,b1,b2は定数である。このように、式(6)から求めることで演算量を減らして、算出処理の簡素化を図るようにしてもよい。なお、流量と圧力には一定の相関がある。このため、式(6)に代えて圧力値のみを変数に含む式を記憶し、この式から減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
さらに、この場合、生成部45は、ゲインKについて式(4)から算出することなく、圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることが望ましい。これにより、一層演算量を減らすことができるからである。
次に、第2手法によるガス漏れ及び使用ガス器具10の判断について詳細に説明する。図2に示すスペクトルデータ記憶部47は、ガス漏れ発生直後の微小時間に得られると予測される波形をフーリエ変換したスペクトルデータ、及び、各ガス器具10の使用直後の微小時間に得られると予想される波形をフーリエ変換したスペクトルデータを記憶している。
図9は、ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフであり、図10は、ガステーブルが使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。また、図11は、ガスBF風呂釜が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。
図9に示すように、ガス漏れが発生した場合、得られる圧力波形には20Hz以上の周波数成分が殆ど含まれていない。また、図10に示すように、ガステーブルが使用された場合、得られる圧力波形には20Hz以上の周波数成分が殆ど含まれていないが、約10Hz付近の周波数成分において大きな振幅を示す傾向がある。また、図11に示すように、ガスBF風呂釜が使用された場合、得られる圧力波形には70Hz〜100Hzの周波数成分においてやや大きな振幅を示す傾向がある。なお、図9〜図11において60Hz付近に存在するピークは、商用電源によるノイズである。
再度、図2を参照する。スペクトルデータ記憶部47は、図9〜図11に示したようなスペクトルデータを記憶している。そして、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、このスペクトルデータに基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断する。具体的にガス漏れ/ガス器具判断部43cは、微小時間における圧力波形を得た後に、この波形をフーリエ変換してスペクトルデータを生成する。スペクトルデータを生成後、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、スペクトルデータ記憶部47の記憶内容を読み出し、記憶されたスペクトルデータのうち、生成したスペクトルデータに最も近いものを特定する。特定されたスペクトルデータがガス漏れを示すものである場合、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、ガス漏れが発生したと判断する。また、特定されたスペクトルデータがガス漏れのものでない場合、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、特定されたスペクトルデータが示すガス器具10が使用されたと判断する。特に、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、特定されたスペクトルデータが示すガス器具10がガステーブルである場合には、とろ火を伴うガス器具10が使用されたと判断する。
再度、図2を参照する。トリガ信号発生部44は、ガス流量やガス圧力の変化時を検出し、トリガ信号を出力するものである。例えばトリガ信号発生部44は、微分回路を含んで構成されており、微分回路により所定以上の変化を検出する。
トリガ信号は各センサ41,42及びサンプリング時間調整部43dに入力される。サンプリング時間調整部43dは、トリガ信号が入力されると予め定められた通常のサンプリング時間(例えば流量では2秒、圧力では10秒)よりもサンプリング時間を短縮する。このとき、判断部43は、微小時間だけサンプリング時間を短縮する。これにより、判断部43は、微小時間における波形を詳細に計測する。すなわち、ガス漏れ/ガス器具判断部43cによる判断を正確ならしめるために高速サンプリング実施する。また、各センサ41,42は、トリガ信号が入力されると、高速サンプリングにあわせて信号を出力することとなる。加えて、通常状態におけるセンサ41,42の駆動電流を小さくしておき、トリガ信号入力後に駆動電流を通常電流に大きくするようにしてもよい。
また、サンプリング時間調整部43dは、トリガ信号発生部44によりトリガ信号が発生されるまで、ガス流量及びガス圧力の少なくとも一方のサンプリング時間を、通常のサンプリング時間よりも長くし、例えば流量について10秒としておく。ここで、トリガ信号が発生しておらず、流量や圧力に所定以上の変化がない場合とは、流量や圧力が安定しており、計測の必要性が少ない場合といえる。よって、本実施形態では、このような場合にサンプリング時間を長くしておくことで、消費電力を軽減させる。
流量値記憶部48は、とろ火判断部43aにより微少流量F1がとろ火による流量と判断された場合、とろ火による流量値を記憶するものである。このため、とろ火判断部43aは、流量値記憶部48にとろ火の流量値が記憶された後に、この流量値と規定範囲以内の流量値が検出された場合、その規定範囲以内の流量がとろ火による流量と判断する。これにより、図3に示したような流量推移を観察しなくとも迅速にとろ火を判断できることとなる。
次に、本実施形態に係る微少漏洩判断方法について説明する。図12は、本実施形態に係る微少漏洩判断方法の一例を示すフローチャートである。図12に示すように、まず、判断部43は、流量センサ41からの信号に基づいて微少流量F1があったか否かを判断する(S1)。微少流量F1がなかったと判断した場合(S1:NO)、微少流量F1があったと判断されるまで、この処理が繰り返される。
微少流量F1があったと判断した場合(S1:YES)、とろ火判断部43aは、流量値記憶部48にとろ火時における流量値が記憶されているか否かを判断する(S2)。記憶されていないと判断した場合(S2:NO)、処理はステップS4に移行する。
記憶されていると判断した場合(S2:YES)、とろ火判断部43aは、微少流量F1が流量値記憶部48に記憶された流量値の規定範囲以内であるか否かを判断する(S3)。規定範囲以内であると判断した場合(S3:YES)、処理はステップS5に移行する。
一方、規定範囲以内でないと判断した場合(S3:NO)、とろ火判断部43aは、図3に示したような流量推移があったか否かを判断する(S4)。流量推移があったと判断した場合(S4:YES)、処理はステップS5に移行する。
また、流量推移がなかったと判断した場合(S4:NO)、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、とろ火を伴うガス器具10が使用されたか否かを判断する(S6)。とろ火を伴うガス器具10が使用されたと判断した場合(S6:YES)、処理はステップS5に移行する。
一方、とろ火を伴うガス器具10が使用されていないと判断した場合(S6:NO)、微少漏洩判断部43bは、微少流量F1が微少漏洩によるものであると判断する(S7)。その後、図12に示す処理は終了する。
また、ステップS5においてとろ火判断部43aは、微少流量F1がとろ火による流量であると判断する(S5)。そして、とろ火判断部43aは、流量値記憶部48にとろ火時における流量値が記憶されているか否かを再度判断する(S8)。記憶されていると判断した場合(S8:YES)、図12に示す処理は終了する。一方、記憶されていないと判断した場合(S8:NO)、流量値記憶部47は、微少流量F1を記憶し(S9)、図12に示す処理は終了する。
なお、ステップS6に示した処理、すなわちとろ火を伴うガス器具10が使用されたか否かは、図13〜図15に示すようにして判断される。このとき、本実施形態に係るガスメータ40では、とろ火を伴うガス器具10が使用されたか否かのみならず、ガス漏れ(微少漏洩を除く)及び使用ガス器具10の判断が行われる。
図13は、ガス漏れ/ガス器具判断の基本フローチャートである。まず、ガス漏れやガス器具10が使用された場合、ガス流量及びガス圧力に所定以上の変化が発生する。このため、判断部43は、図13に示すように、トリガ信号が入力されたか否かを判断する(S11)。トリガ信号が入力されなかったと判断した場合(S11:NO)、トリガ信号が入力されたと判断されるまで、この処理が繰り返される。
一方、トリガ信号が入力された判断した場合(S11:YES)、サンプリング時間調整部43dは、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮し、短縮されたサンプリング時間で圧力を計測する(S12)。具体的には、サンプリング時間を10秒から1マイクロ秒に短縮する。
その後、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、微小時間経過したか否かを判断する(S13)。微小時間経過していないと判断した場合(S13:NO)、処理はステップS12に移行する。なお、ステップS12では、圧力のサンプリング時間を短縮しているが、圧力のサンプリング時間に代えて、流量のサンプリング時間を短縮するようにしてもよい。
微小時間経過したと判断した場合(S13:YES)、判断部S14はガス漏れ/ガス器具判断を実行する(S14)。このガス漏れ/ガス器具判断によって、ガス漏れ及び使用ガス器具10が判断され、とろ火を伴うガス器具10が使用されたか否かが判断されることとなる。そして、図13に示す処理は終了する。
図14は、図13のステップS14に示したガス漏れ/ガス器具判断の詳細を示す第1フローチャートであって、第1手法を示している。まず、生成部45は、減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを決定する(S21)。このとき、生成部45は、減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを式(3)〜式(5)に基づいて算出してもよいし、式(6)から求めてもよい。
次に、生成部45は、ステップS21により決定された減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζから、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成する(S22)。このとき、生成部45は、ステップS21により決定された減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを式(2)に代入することにより、ガス漏れ振動波形を生成する。
そして、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、ステップS22により決定されたガス漏れ振動波形と、図13のステップS12において計測された計測値からなる波形とに基づいて、式(1)から連続NCCを算出する(S23)。次に、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、連続NCCの代表値を決定し、代表値が閾値以上であるか否かを判断する(S24)。
代表値が閾値以上であると判断した場合(S24:YES)、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、ガス漏れが発生していると判断する(S25)。その後、図14に示す処理は終了する。
代表値が閾値以上でないと判断した場合(S24:NO)、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、類似度推移記憶部46からガス器具毎の類似度推移データを読み出す(S26)。次いで、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、ステップS26にて読み出したガス器具毎の連続NCCデータのうち、ステップS23において算出した連続NCCと最も近いものを特定し、使用ガス器具10を判断する(S27)。このステップS27の処理においてとろ火を伴うガス器具10が使用されたと判断した場合、図12のステップS6では「YES」と判断されることとなる。そして、図14に示す処理は終了する。
図15は、図13のステップS14に示したガス漏れ/ガス器具判断の詳細を示す第2フローチャートであって、第2手法を示している。図15に示すように、まず、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、図13のステップS12において計測したガス圧力の波形をフーリエ変換する(S31)。
その後、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、スペクトルデータ記憶部47に記憶されたガス漏れ発生時のスペクトルデータを読み出す(S32)。そして、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、ステップS31のフーリエ変換により得られたスペクトルデータと、ステップS32において読み出したスペクトルデータとの類似度を算出する(S33)。この類似度は上記NCCであってもよいし、他の算出方法により算出されてもよい。次いで、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、ステップS33にて算出した類似度が特定値以上であるか否かを判断する(S34)。
ステップS33にて算出した類似度が特定値以上であると判断した場合(S34:YES)、ガス漏れ/ガス器具判断部43cはガス漏れが発生したと判断する(S35)。そして、図15示す処理は終了する。
ところで、ステップS33にて算出した類似度が特定値以上でないと判断した場合(S34:NO)、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、ガス器具10毎のスペクトルデータを読み出し(S36)、それぞれのスペクトルデータとの類似度を算出する(S37)。そして、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、類似度が最大となったスペクトルデータが示す種類のガス器具10が使用されたと判断する(S38)。このステップS38の処理においてとろ火を伴うガス器具10が使用されたと判断した場合、図12のステップS6では「YES」と判断されることとなる。そして、図15に示す処理は終了する。
なお、図15に示すステップS37,S38の処理では、記憶されたガス器具10毎の全スペクトルデータとの類似度を求めて最も高いスペクトルデータが示すガス器具10が使用されたと判断している。しかし、これに限らず、記憶されたガス器具10毎のスペクトルデータとの類似度を順次求めていき、類似度が予め定められた値以上となった時点でそのスペクトルデータが示すガス器具10が使用されたと判断し、その後類似度の算出を中止するようにしてもよい。このようにすることで、類似度の算出数が減り、消費電力の低下につなげることができるからである。
さらに、本実施形態では圧力センサ42からの電気信号によって得られる波形をフーリエ変換して、ガス器具10の種類を判断すると共にガス漏れを判断している。しかし、圧力と流量とには一定の相関があるため、流量センサ41からの電気信号によって得られる波形をフーリエ変換して、ガス器具10の種類を判断すると共にガス漏れを判断するようにしてもよい。
このようにして、本実施形態に係るガスメータ40及び微少漏洩判断方法によれば、微少流量を超える流量が検出されてから所定時間以内に微少流量を検出した場合、微少流量がとろ火による流量と判断する。ここで、とろ火を伴うガス器具10(例えばガスコンロやガステーブル)では、まず着火時に大流量が流れ、その後火力を調整することによりとろ火となって微少流量が流れる傾向にある。このように、とろ火を伴うガス器具10では流量が上記の推移を示す。このため、この流量推移が得られた場合、微少流量については微少漏洩によるものではなく、とろ火によるものと推察できる。よって、このような流量推移が観察されたときに、微少流量が微少漏洩によるものでないと判断することで、微少漏洩の判断精度を向上させることができる。
また、とろ火を伴うガス器具10が使用されたか否かを判断し、とろ火を伴うガス器具10が使用されたと判断された場合に、微少流量がとろ火によるものと判断する。このため、とろ火を伴うガス器具10の使用が判断された場合には、一層微少漏洩が発生している可能性を否定できる。従って、一層微少漏洩の判断精度を向上させることができる。
また、流量及び圧力の少なくとも一方の所定以上の変化時からの微小時間中に計測された波形に基づいて、とろ火を伴うガス器具10が使用されたか否かを判断する。ここで、ガス器具10が使用開始された場合、開始直後の微小時間(例えば最大で2秒など)においてガス器具特有の波形を示す傾向にある。このため、この微小時間における波形に基づいてとろ火を伴うガス器具を判断することで、短時間でとろ火を伴うガス器具10を判断することができる。
また、流量及び圧力の少なくとも一方の所定以上の変化時にトリガ信号を発生させ、トリガ信号が発生された場合に、流量及び圧力の少なくとも一方のサンプリング時間を、微小時間だけ短縮する。このため、微小時間における波形を取得するにあたり、波形の取得もれを防止することができる。
また、トリガ信号が発生されるまで、流量及び圧力の少なくとも一方のサンプリング時間を、通常のサンプリング時間よりも長くしておく。ここで、トリガ信号が発生しておらず、流量や圧力に所定以上の変化がない場合とは、流量や圧力が安定しており、計測の必要性が少ない場合といえる。よって、このような場合に、サンプリング時間を長くしておくことで、消費電力を軽減させることができる。
また、微少流量がとろ火による流量と判断された場合、当該とろ火による流量値を記憶し、記憶されたとろ火による流量値と規定範囲以内の流量値が検出された場合、その規定範囲以内の流量がとろ火による流量と判断する。このように、とろ火の流量値を記憶するため、一層微少漏洩の判断精度を向上させることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
また、本実施形態において微少漏洩判断装置はガスメータ40であるが、これに限らず、微少漏洩判断装置をガスメータ40とは別に構成してもよい。
さらに、本実施形態において類似度推移を式(1)により算出しているが、これに限らず、他の方法で類似度推移を算出するようにしてもよい。
また、本実施形態においてガス漏れ/ガス器具判断部43cは、類似度推移記憶部46に記憶された連続NCCデータのうち、算出した連続NCCと近いものが存在しない場合、類似度推移記憶部46に記憶された連続NCCデータが示すガス器具10に不足があると判断してもよい。スペクトルデータについても同様にして、ガス器具10に不足があると判断してもよい。
また、本実施形態では燃料ガスをLPガスとする場合の例について説明したが、これに限らず、都市ガスの場合にも適用可能である。
また、本実施形態では微小時間を最大で2秒としているが、これに限らず、数十秒などのより長い時間であってもよい。
また、本実施形態においてガス漏れ/ガス器具判断部43cは、スペクトルデータの全周波数域で類似度を算出しているが、これに限らず一部の周波数域のみで類似度を算出してもよい。例えば、給湯器では100Hz以上の周波数域においてもスペクトルデータに大きな振幅が得られるという特徴があるため、100Hz以上の周波数域についてスペクトルデータの類似度を算出することによっても使用ガス器具10を特定することができる。このように、一部の周波数域のみで類似度を算出して演算量を減らすこともできる。
また、ガス漏れ/ガス器具判断部43cは、類似度推移(連続NCC)とスペクトルデータとから、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断しているが、これに限らず、例えば、図5や図7に示すような微小時間における波形を直接記憶しておき、波形同士の類似度などから、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断するようにしてもよい。さらには、波形の特定点など波形の直接の特徴からガス漏れ及び使用ガス器具10を判断するようにしてもよい。
さらに、本実施形態においてガス漏れ/ガス器具判断部43cは、図3でいうところの時刻t1から微小時間中に得られる波形に基づいて、使用されたガス器具10を判断している。これは、上記したように、ガス器具10が使用開始直後の微小時間においてガス器具10毎の特有の振動波形を示すからである。しかし、これに限らず、時刻t4から微小時間中に得られた波形に基づいて、使用されたガス器具10を判断してもよい。使用開始時と同じように、ガス器具10は、使用終了直後の微小時間においてもガス器具10毎の特有の振動波形を示すからである。
また、使用終了直後の微小時間中に得られる振動波形からガス器具10を判断する場合、サンプリング時間調整部43dは、使用終了直後の微小時間だけ、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮することが望ましい。これにより、使用終了直後の微小時間中に得られる振動波形の取得もれを防止できるからである。