JP2004132809A - 微少漏洩検知方式 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガスメータ下流のガス流路及びガス消費設備からの微少漏洩の判定に、30日を要する冗長さを解消し、迅速かつ正確に微少漏洩の判断を行う。
【解決手段】ガス流路をガス自体の運動エネルギーで開閉する弁体を設け、流路を閉鎖した場合に、該弁体の上流側と下流側をバイパスするバイパス路に誘導される漏洩ガスの流速から流量を判断し、予め登録する下限閾値との比較によって、極めて短時間に微少漏洩か否かを論理判断する。
【選択図】 図1
【解決手段】ガス流路をガス自体の運動エネルギーで開閉する弁体を設け、流路を閉鎖した場合に、該弁体の上流側と下流側をバイパスするバイパス路に誘導される漏洩ガスの流速から流量を判断し、予め登録する下限閾値との比較によって、極めて短時間に微少漏洩か否かを論理判断する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス等の流体の導管等のガス流路及びガス消費設備等からの微少な漏洩を検出するに好適な微少漏洩検知方式及びその利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明は、気体、液体を問わず流体全般に適用が可能なものであるが、本明細書では、燃料ガス(都市ガス、LPガスを問わず)の場合について、以下の説明を行う。また、流量に係わる問題故に、メータ全般に適用が可能であるが、本明細書では、各種のガスメータの中、最も汎用性の高い膜式ガスメータを取り上げて説明を行う。
【0003】
一般家庭用の燃料ガス供給システムで言えば、都市ガスの場合はガスタンク等のガス供給源から道路に埋設された導管を経由して末端の暖房器具、調理器具等のガス消費設備へ供給される。またLPガスにあっては軒先のガスボンベやボンベ集積庫或はバルク貯槽等のガス供給源から、導管を経由して暖房器具、調理器具等のガス消費設備へ供給されるものであり、家庭用以外の業務用や工業用の場合であっても基本的な構成は全く同一である。
【0004】
この様な燃料ガス供給システムに於ける様々な問題の一つに、ガス流路及びガス消費設備からの不測のガス漏れ、中でも極めて微少な漏洩を、如何に早くかつ正確に検知するかと言う課題が有り、これに対して様々な微少漏洩検知方式が提案され、実施されて居る。第一の公知例として、消費者宅等のガス使用量を計量するガスメータの主流を占める膜式ガスメータの中、マイクロコンピュータを搭載した多機能ガスメータ(所謂マイコンメータ)を挙げるならば、その保有する数多くの機能の中で、基本機能であるガス流量計測機能を利用した、流量式微少漏洩警告機能及び圧力式微少漏洩警告機能が該当する微少漏洩検知方式である。
【0005】
そもそも膜式ガスメータに於ける流量計測の原理は、一定容積の計量室を構成する一対のゴム製計量膜の往復動に依り押出されるガスの体積を積算するもので、一般家庭用の膜式ガスメータとしては最も台数が多い、定格が2.5m3/hrのメータを例にとれば、計量室容積は一対で0.35×2=0.7Lである。従って1往復で押出されるガスの体積は0.7Lとなり、これに往復動の回数Nを乗じた0.7×NLがガスの流量となる。実際の膜式ガスメータでは、リンク機構を用い往復動を回転運動に変換し数字車を駆動して流量を機械的に積算表示している。なお以下の説明に於いては、特に断りが無い限り上に例示した、一対で0.7Lの計量室容積を有する、定格2.5m3/hrの膜式ガスメータを例にとった諸数値で説明する。
【0006】
多機能ガスメータ(所謂マイコンメータ)にあっては、流量データを採取するのに、例えば特開昭57−190425号に見られる様に、往復動する計量膜に固定される永久磁石に依って、これに対応する位置に設けられた、例えばリードスイッチ等の磁気感知素子をON−OFFし、流量パルス信号として電気的に認識する手段が一般的に採用されている。更に流量パルス信号に依る計量では、チャタリングや電気的ノイズに依ってガス使用量が狂う、所謂誤積算の問題が有り、例えば特許第3046791号で示される様に、ノイズ処理等に工夫を加え、誤積算を回避し、正確なガス使用量を得る工夫がされている。多機能ガスメータでは、計量膜の1往復で押出されるガスの体積0.7Lに、計数された流量パルス信号の数Pを乗じた0.7×PLがガス流量として認識される。例えば、1秒間に1パルスの一定割合で1時間計数し続けたとすれば、流量パルス信号の数は3600回となるのであるから、流量は0.7×3600L/hr=2.52m3/hrと認識されることになる。
【0007】
以上概説した膜式ガスメータの基本機能であるガス流量計測機能を利用した多機能ガスメータの流量式微少漏洩警告機能とは、少なくとも規定時間(例えば1時間)以上に亘り流量パルス信号が規定回数(例えば1回)以下ならば、微少漏洩は無いとの論理判断を行うものである。論理判断は法的に規制されて居る訳ではなく、規定時間や規定回数はメーカ独自の基準で設計されて居る。然しながら、流量監視区分や継続時間などは無秩序に設計されて居る訳ではなく、全メーカで基準が共通化されて居る。この共通化された基準に於いて、流量監視区分1に分類される流量21L/hr以下の場合、継続時間は制限時間なしとされるが、微少漏洩はこの流量監視区分1の流量域での判定となる為、勢い継続時間などは、各メーカ独自の基準を持たざるを得なくなる。何れにせよ多機能ガスメータでは、深夜であれ何時であれ24時間の間に、ガスが全く流れてない状態{正確には最低検知能力(検知が可能な最少の流量を言い、公称3L/hrのメータが多い)以下の状態}が規定時間以上継続する事が一度でも有れば、その日は微少漏洩なしの判定が確定する設計が殆どである。逆に上記の状態が24時間の間に一度も確認出来なかった場合には、微少漏洩の疑いと判定し、この判定が30日連続し、かつ湯沸器等の口火使用の登録や学習がなされていない限り、微少漏洩有りの判定が確定し、直ちに遮断ではなく警告表示を行い、集中監視システムに在っては監視センターへ通報する機能と定義される。
【0008】
一方多機能ガスメータの圧力式微少漏洩警告機能とは、前段の流量計測機能を構成する流量パルス信号が、15分間途絶えた場合にガスの使用が停止されたと判断し、内蔵する圧力センサに依って導管(圧力調整器からガス消費設備入り口迄)の静圧を計測し、当該計測値をガス使用停止直後の静圧(実際はガス使用停止15分後の静圧と言う事になる)として記憶する。そこから更に15分後にもう一度静圧を計測し、前回の計測値との差を圧力上昇値とする。その圧力上昇値が予め定める範囲を超えなければ、導管の何処かでガスが漏れている為に圧力上昇しないと論理判断し、注意フラグを立て、以後15分毎に本手順を繰返す。途中で圧力上昇値が予め定める範囲を超えた場合や流量パルス信号が観測された場合には注意フラグを取消し、次のガス使用停止を待つ。24時間注意フラグが継続すれば、その日は微少漏洩有りと判定し、この判定が30日間連続し、かつ湯沸器等の口火使用の登録や学習がなされていない限り、微少漏洩有りの判定が確定して直ちに遮断ではなく警告表示し、集中監視システムに在っては監視センターへ通報する機能と定義される。
【0009】
第二の公知例として特許第2587108号を挙げるならば、マンション等集合住宅のLPガス供給源の元圧力調整器の下流、全供給ガス量を積算する元ガスメータ上流の導管に設置される親圧力調整器の入口側と出口側をバイパスガス流路で結び、当該流路には親圧力調整器よりも調整圧力の高い子圧力調整器を設け、更に子圧力調節器には、バイパスガス流路の流量を計測する、例えば一般家庭用の多機能ガスメータを微少流量検知手段として一体に構成してある。かかる構成に於いて、一の導管に多数の消費者宅が繋がる集合住宅であっても、殆どの消費者宅がガスの使用を停止する夜間などには、ガスの流動が極端に少なくなり、その分ガスの供給圧力が上昇することになる。供給圧力が親圧力調整器の調整圧力を超えればダイアフラムが変位して開閉弁を閉じ、導管のガス流は遮断される。この時の調整圧力に対して、子圧力調整器の調整圧力を若干高目に設定する事により、同じ圧力でも子圧力調整器のダイアフラムを変位させず、開閉弁を開状態に保ち、バイパス流路を閉鎖せずにガス流路を確保し、ガスを流し続ける設定が可能となる。夜間や深夜にガス消費が殆ど停止し、ガスの流れが止まる時間帯が必ず存在する前提に立てば、第一の公知例と同様に多機能ガスメータの流量式微少漏洩警告機能により、極めて微量のガスの流れを検知する。即ち微少漏洩検知方式である。
【0010】
また、特開平11−160184号では更なる改善の工夫もなされていて、第二の公知例に示す微少流量検知手段としての多機能ガスメータに代え、ICフローセンサ等から構成されるガス流量有無検出手段を用いる事によって、例えば30日を要する現行の漏洩判定の所要時間に代え、15日に一度も流量が零にならない事でガス漏洩ありと判定する等、検知精度を向上し、検知時間を現行の半分に短縮せんとする提案がなされて居る。
【0011】
以上の従来例は流量を計測する事で漏洩を検知する方式であるが、流量から検知する方式の他に、流量には関係なく静圧計を用いる方式も存在する。当該方式は、供給側の元栓と消費設備側のガス器具の栓を全て閉じて、導管を密閉状態にして加圧し、圧力の低下が生じるか否かで漏洩の有無を判定する方式である。当然の事であるが、当該導管系に繋がる全ての消費者宅で、ガス使用を停止し栓を閉止する事が前提となる。従って戸別住宅ならいざ知らず、集合住宅や簡易ガスの場合は実施し難い方式で、第二の公知例に示す工夫が必要とされる所以である。都市ガスの場合には、長大な導管系に全消費者宅が接続されている訳であり、事情は全く同じであると言える。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べた様に、ガスの微少漏洩を検知する従来の方式では、ガス流量を確認する目的で導管に設置され、ガスの使用量を積算表示する膜式ガスメータの流量計測機能を利用し、微少漏洩を確認して居るものが主流であるから、微少漏洩の検知精度としては、ガスメータ自体の最低検知能力に依存せざるを得ないものである。即ち、現在一般的に使用される膜式ガスメータの多くが標榜する3L/hrが、現在公称される検知可能なガス漏洩の限界と言う事になる。つまり一戸建住宅であろうが集合住宅であろうが、現行の膜式ガスメータに依る限り、1時間に3L、言い換えると1分間に50CC以下のガス漏洩を検知する事は不可能と言う事になり、初期の極めて微量のガス漏洩を発見出来ないと言う問題は勿論、最低検知能力ぎりぎりの計測値の不確実さを補足する意味で採用して居る、微少漏洩の疑いとの判定が、30日の長期間連続して初めて警告表示(遮断ではない)すると言う冗長さを解消することも出来ない。
【0013】
更に現行の方式では3L/hrのガス流量を確認するのにも長時間を要する。具体的には流量パルス信号の間隔が14分(0.7/3×60≒14)と計時されて、初めて3L/hrの流量であると認識が出来る訳で、様々な問題が生じる。例えば、集合住宅の場合は、一の導管に繋がる全消費者宅が、少なくとも14分間足並みを揃えてガス使用を停止する状態が、少なくとも24時間に1回は担保されなければ、ガス漏洩の判定が出来ないと言う事であり、集合住宅の規模が大きくなればなる程ガス漏洩の検知が困難になる。更に判定に長時間を要するという事は、内蔵する電池を唯一の電源として、10年間無保守で稼働する事が求められる多機能ガスメータの場合、好ましい事では無い。
【0014】
また多機能ガスメータの圧力式微少漏洩警告機能で言う15分の間隔は、上記の14分に由来するが、導管に於ける静圧の上昇はガス使用停止と同時に発生するものであり、少なくともガス使用停止直後の静圧の計測迄の時間々隔は、現行の「15分間流量パルス信号が途絶える事を以ってガス使用停止を認識する」方式に頼らず、可能な限り短縮する事、言い換えると3L/hrの最低検知能力(分解能)を向上するなどの改善を加える事が好ましいのは言うまでもない。
【0015】
多機能メータの微少漏洩警告機能は、流量式も圧力式も共に口火使用の登録や学習と言う複雑なロジックを付加して、一旦確定した微少漏洩の疑いとの判定を取消す論理判断機能を具備している。口火使用の登録や学習とは、従来では主としてガス湯沸器のパイロットバーナ等、極めて少量のガスを点けっ放しで長時間連続使用するケースで、当該バーナ等が連続30日使用されると微少漏洩有りが確定してしまう矛盾を解決する為に考えられた機能である。即ち、予めパイロットバーナ等流量監視区分1(21L/hr以下)が長時間継続することが予想される消費者宅で口火使用の登録を行うと、14日間最少流量(流量パルス信号の間隔が1時間以下でかつ最も長いものを最少流量と認識)を学習し、当該最少流量を異常値の閾値として記憶し、閾値を超えていなければ、例え微少漏洩有りの判断がなされても、当該判断をキャンセルする機能の事である。従って新規に開栓した場合など、最初から微少漏洩が存在して居て、それを含めて流量監視区分1に相当する流量を学習したと仮定すると、口火の使用であってガス漏洩ではないと判定してしまい、微少漏洩有りをキャンセルし警告表示する事が出来ないことになり、遮断する機能も保有している多機能ガスメータが折角微少漏洩を検知しても、遮断はおろか警告表示すら出来ない矛盾を生じると言うことである。更に多機能ガスメータにとって不都合な事には、近年益々ガス器具の改良が進み、火力調節が極めて精密になり、パイロットバーナ以外にも、煮込み料理や保温の為のとろ火或はエコバーナと称する極めて微量(10L/hr程度)のガス消費量迄もが実用に供される様になり、この傾向は今後益々加速されるものと思われ、口火使用の学習と微少漏洩検知の矛盾が更に顕在化するものと思われる。
【0016】
最近では、例えば特開平11−94612号に見られる様に、バイパス路は用いないで、直接導管の流体状態の変化を検出する、圧力センサなどの変化検出手段を備え、流量低下に対応する変化を検出した場合にのみサンプリング周期を短縮し、最少流量の検知能力を改善する方法や、特開平11−160184号に見られる様に、流量低下時に弁の開閉手段に拠って自動的にバイパス流路に切替えられたガス流量を、マイコンメータに代え、ICセンサで構成する瞬時流量計を用いることで、検出時間を短縮し最少流量の検知能力を改善する工夫が提案されて居る。然し、これらの改善は、流体状態の変化検知手段を具備した上で、弁の開閉手段など流路切替え手段を備え、最低検知能力の改善を意図するもので、コスト面で不利になる事は避けられない。
【0017】
この他にも膜式のガスメータの計量機能には、自然現象に由来する厄介な課題が幾つか存在する。先ず水撃現象(ウォーターハンマー)が挙げられる。管路を流れる流体が下流で遮断されると、運動エネルギーを持った流体は遮断面に衝突し、ほぼ音速の反射波となって管路を遡上し、上流の反射面(代表的な例に計量膜がある)で再反射される。エネルギーが減衰する迄極めて短い間隔で反射が繰返されるので、上流側の反射面となる計量膜が激しく揺動する結果、ガスの消費を伴わない流量パルス信号が多数発生してしまい、誤積算の原因となっていた。
【0018】
また別に、呼吸現象と呼ばれる問題が存在する。即ち、ガス不使用時の閉鎖された管路に滞留して居るガスは、例えば陽が差す時と陰る時、日中と夜間の様に温度差が与えられると膨張・収縮を繰返し、恰も静かに呼吸するが如くに流動する。これも又ガスの消費を伴わない流量パルス信号による誤積算の原因となる事は勿論であるが、微量のガス流が、呼吸現象に依るものなのか、はたまたガス漏洩に依るものなのかを弁別する事が、最低検知能力(分解能)を改善し、極めて微量のガス流そのものを直接計測しようとする微少漏洩検知法式にとっては、より重要な課題である。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記諸課題を解決するために本発明では、流速センサを利用した高い分解能を持つ漏洩検知部を具備した上で、ひとつの手段として、多機能ガスメータの流量パルス信号の間隔から流量を算出する機能を活用し、流量監視区分1に相当する流量状態を検出した場合、具体的には流量パルス信号の間隔が2分を超えた(流量が21L/hr以下になった)時点で、従来の流量を0.7Lの計量室が一杯になるのに要する時間から換算する方式を排除し、代わって、次に述べる漏洩検知部に通電し、微量のガス流を高精度の流速センサに依り、直接瞬時に流速を計測する方式で、漏洩ガス流の有無を論理判断する微少漏洩検知方式を採用することを特徴として居る。
【0020】
更に構成を詳しく述べるならば、多機能ガスメータの計量室以降メータ出口迄のガス流路に、流下するガスの運動エネルギーのみで開いてガス流路を開放し、運動エネルギーが低下し自重を支えきれなくなると元に戻りガス流路を閉鎖する弁体を設け、該弁体の上流と下流を連通する細管から成るバイパス路を形成する。更に当該バイパス路には、薄膜のヒータ及び対向する一対の感熱センサから成る熱線式流速センサ等、極めて高感度の流速センサを具備し、漏洩検知部を構成する事を要諦としている。
【0021】
本発明の要諦である漏洩検知部によれば、流下するガス自身の運動エネルギーの増減で弁体を開閉するので、特にガスセンサ、圧力センサ等流体状態の変化を検知するための手段や、別途電磁弁、圧力調整弁と言った様なガス流路をバイパス路へ切替える手段を備える事なく、ガス使用停止に即応して極めて正確かつ安いコストで、ガス流路をバイパス路側へ切替える動作が実現出来る。即ち、例えば流量監視区分1に相当する、流れがほぼ停止同然の状態では、その運動エネルギーが弁体の自重を支える限界を下回るから、弁体は自重でガス流路を閉鎖する様に作動する。弁体がガス流路を閉じた場合、仮にガス漏洩に起因する微量のガス流が存在していても、弁体を回動させるだけの運動エネルギーは無く、微量の漏洩ガス流は全量が細管から成るバイパス路を経由して流下する。従って該ガス流に見合った細管内径を設計することに依り、漏洩ガスの流量をレイノルズ数2000以下の層流域で計測することが可能となり、従来の膜式メータの分解能では、間接的手法のため不可能であった、微量(1分間に50CC以下)の漏洩ガスの流量を直接かつ精度良く計測可能にするものである。
【0022】
本明細書では、熱線式流速センサを例に説明して居るが、ガス流の変化に対応し変る物理量を計測するものであれば何でも良く、必ずしも熱線式流速センサに限定するものでない。即ち、差圧計に依ってバイパス路の動圧を計測したり、超音波の伝播速度を計測したり、カルマン渦に依る振動数を計測したり、タービン翼を回して仕事率を計測したり、センサは適性やコストを勘案し適宜選択し得る事は言うまでも無い。
【0023】
また、計量室が満杯になる迄は、流量パルス信号が発信されない従来の多機能ガスメータに於いては、14分以下に短縮しようとしても出来なかったガス使用停止認知迄の時間々隔を、本発明では微量のガス流を瞬時に検知出来る特性を活かし、即座に多機能ガスメータの演算回路へ微少流量情報として入力する事に依って、短時間での漏洩判断を可能とし、14分間を短縮する事は勿論、30日間を要していた従来の漏洩判定の冗長さまでも解決出来るものである。しかも流速センサ等、高精度のセンサの何れを選んでも、微少流量域に於ける精度、信頼性は格段に向上するので、従来は警告表示にとどめ、遮断は控えていた多機能ガスメータに、ガス漏洩判断に基づく積極的な遮断をも可能にするものである。
【0024】
また更に本発明を、消費者宅のガス使用量を計測する料金調停用として、計量精度の良さ、耐久性の高さ、価格の安さ等の高評価故に、現在最も数多く使用されて居る膜式のガスメータへ一体に組込む事や、アタッチメントとして組合せる事に依って、当該膜式のガスメータの弱点である微少流量域の分解能を大幅に向上し、多機能ガスメータの口火使用の登録や学習といった折角の機能が抱える、最初から漏洩分が含まれて居ると、判断を間違えてしまうと言う矛盾も解消出来るものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明は、多機能ガスメータの主流である膜式のガスメータの計量室下流であって、メータの出口に至る迄のガス流路の任意の箇所に、開閉自在な弁体と該弁体が当接する弁座を備え、更に弁体・弁座を挟んだガス流路の上流側と下流側を連結する細管からなるバイパス路とから主に構成される漏洩検知部を具備することを要諦とする。
【0026】
上記バイパス路には、例えば特許第1885523号に公知の、極めて高精度・低消費電力の流速センサを配備し、該バイパス路を流下するガスの流速を計測可能に配置されるので、いま仮に漏洩検出部の分解能を0.3〜3L/hr(1分当り5〜50CC)に設計しようとすれば、被計測ガスの動粘度は判明しているのであるから、当該流速センサの計測可能流速の範囲で、レイノルズ数が2000以下、最悪でも4000を超えない様(層流が確保される流速域)にバイパス管路の内径を設計すれば、層流が保たれ精度良くガス流速が計測可能となり、所期の分解能を極めて容易に実現可能にするものである。
【0027】
ガス供給設備からガス消費設備までの導管は、その殆どがガス管で構成され、メータ内部その他ガス流路を構成する部分もその大半は円形断面であるから、弁座として例えばゴム製のOリングを漏洩検知部の内壁に気密に装着し、ガスがその内径部分を通過する様に構成する。更にOリングの下流側に該Oリングの内径よりも大きな径の、ピンポン球がイメージされる様な軽量かつ球状の表面を有する弁体を設け、ガスが使用されていない静止状態の時には、弁体の球状表面がOリングと隙間無く当接し、ガス流路を閉鎖する様に構成される。また更に該弁体は、完全な球形である事を要せず、半球状或いは部分的な凸面状の方が軽量とすることが出来、かつ後述する揚力による不都合を回避出来る為、より好都合なものである。
【0028】
上述した静止状態の時に弁体の球状表面と弁座が隙間無く当接する形態は、漏洩検知部の設置姿勢と大いに関係する。即ち、ガスが下方から上方へ流れる垂直方向の場合は、ガスの運動エネルギーに依って上方(すなわち下流側)へ持ち上げられた弁体が、運動エネルギーが消滅すると共に自重で落下し弁座に当接する状態は、吹上げられたピンポン球が落下しOリングで止まる状況で説明出来る。しかし、ガス流路が水平方向の場合には当て嵌まらない。
【0029】
前項でガスの運動エネルギーがピンポン球の自重に抗し、これを吹き上げている趣旨の説明をしているが正確ではない。下から上へ向けて空気が層流状態(乱流では駄目)で吹き上げている中央へ、風船やピンポン球を持って行くと、恰も空中に浮遊する如く静止する現象は誰しもが経験している。この現象は正しくは、空気がピンポン球に衝突する運動エネルギーとピンポン球の自重が均衡する事のみで静止するのでは無く、ベルヌーイの定理で公知の通り、ガスの流れが生み出す揚力によって層流の中心に保持され、かつ球前方と後方の圧力差や球の後流に発生するカルマン渦の押付け力、更に自重が加味され微妙にバランスする結果であるが、本発明ではガスの運動エネルギーと自重のバランスと言う表現に止める。いま仮にパイプ状の円形断面のガス流路内にピンポン球を配置すると仮定すれば、ピンポン球が球形であるが故に前述の微妙なバランスは常に均衡し易く、通常使用状態のガス量が流れる場合には、流速も大きくなり、揚力も後流の推力も増大し、ピンポン球はますますその場を動かず、ガスは管壁とピンポン球の隙間を無理やりに通過する事態となる。即ち、弁体がガス流路の抵抗体となる不都合が推定される。
【0030】
そこで本発明の要諦である漏洩検知部では、弁体をあたかもカーブミラーの如く、中央部が上流側へ湾曲した凸面状に構成し、外周の鍔状部分の一端を上部管壁に設ける支点に回動自在に支承し、ガスが左方から右方へ流れる水平方向の場合にも、運動エネルギーに依って支点を中心に弧を画いて吹上げられた弁体が、ガス使用停止と同時に弧を画いて戻り、弁座に隙間無く当接した静止状態を実現する様に構成する事に依り、設置姿勢に依る影響はもとより、前述した揚力等により、弁体自体がガス流路の抵抗体となってしまう不都合も排除出来る様に工夫されている。
【0031】
かかる構成に依り、通常のガス使用時には、流下するガスの運動エネルギーで弁体は簡単に吹上げられ、管壁の支点を中心に弧を画いて弁座を離れてガス流路が開放される。一方で通常のガス使用が停止されると、弁体を如何に軽量に構成しても、口火やとろ火程度のガス消費量、或いはガス漏れに基づく微量のガス流量、即ち多機能ガスメータに於いては流量監視区分1に分類される程度のガス流量では、到底弁体を自重に抗して持上げるのに充分な運動エネルギーは確保できず、弁体は弁座に当接したままとなり、ガス流路は閉鎖される。ガス流路が弁体により閉鎖される結果、微量のガス流はその全量が弁体の上流側から、細管からなるバイパス路を経由して弁体の下流側へと流れる。従って、特別なセンサを備えてガス使用が止まった状態を検出する必要もなく、更に電磁弁や圧力調節弁等の流路切替手段の助けを借りる事もなく、ガスが実使用レベルの流量を下回った場合に、正確かつ自動的にガスの流れをバイパス路へ切替えることが可能となるものである。
【0032】
前述した様に当該バイパス路は、流量監視区分1程度の微少流量でも、計測に好適な層流域が確保出来る管径に設計されているので、流速センサの感度範囲内で、流速値が正確にしかも瞬時に計測可能となるものである。当然のことであるが、流速の大小は流量の多少と完全に相関して居り、換算が可能である。従ってバイパス路内径を、流量3L/hr(1分当り50CC)以下、例えば0.3L/hr(1分当り5CC)の時でも、レイノルズ数が2000以下になる様に設計する事で、従来の多機能ガスメータに於いては膜式のメータなるが故に不可能であった、0.3L/hrと言う様な極めて微量のガス流も瞬時に計測する水準の分解能を付与することが出来るものである。
【0033】
分解能の向上により、従来は30日間を要していた漏洩の判定が極めて短時間に可能となる。即ち正常な使用状況に於けるガス器具の最少流量は口火やとろ火であるから、例え口火やとろ火を連続使用する家庭に於いても、当該流量に相当する約10L/hr程度を下回るガスの流量は存在しない事になる。従って、口火もとろ火も使用しない家庭を含めて、例えば流量3L/hrに相当する限界流量を設定し、当該流量に相当する限界流速を下回る流速が計測された時点で、なお限界流速を下回る流速を検出し続けたら、30日もの長期間の監視するロジックを排除し、例えば数時間から精々1日の監視でガス漏洩であると正確に断定するロジックの構築が可能になる。
【0034】
又、作業員が現場に赴き、法に定められた供給開始時点検・調査等の保安業務を行う事を前提にすれば、本発明の微少漏洩検知方式を採用した多機能ガスメータを用いれば、従来は14日間を要していた口火使用の学習も極めて短時間に完了する事が出来る。即ち、口火やとろ火を登録しようとする時は、メータ取付けや開栓を行う作業員が、漏洩の無い事を確認した上で口火だけを点火し、直ちに多機能ガスメータの学習をスタートさせれば、僅か数秒間で流速の計測が済み、極めて短時間に当該学習を完了させる事が可能になる。現地で短時間に作業を完了できる効果は、単に学習時間の短縮に止まらず、更に大きな合理化をもたらすものである。
【0035】
消費者宅での開栓や供給開始時点検・調査に際し、多大な時間と熟練を必要として居たガス漏洩を確認する作業を大幅に合理化出来る。即ち、作業員は最初に消費者宅のガス消費設備を全て止めた上で元栓を開ける。ガス消費設備の繋ぎ忘れやゴムホースの抜け等の不備が有って大量のガスが漏れると、多機能ガスメータ本来の機能に依り即刻ガスが遮断されるので直ちに判断が出来る。メータ以降に全く漏洩が無ければ、前記の遮断は無く、勿論漏洩検知部が作動する事も無い。仮に微少な漏洩が有ったとすれば、0.3L/hrと言う様な極めて微量のガス流も瞬時に計測する水準の分解能を付与されて居るのであるから、微量のガス流を検知したら直ちに遮断予告の表示を行う事に依って、微少漏洩の存在を目視確認する事が可能である。即ち、作業員は何の習熟も必要としないで、漏洩の有無を現場で即座に判断出来る事になる。直ちに漏洩の原因究明と処置を行い、再度元栓を開け、今度は漏洩が無いことを確認して前項の口火やとろ火の登録作業に移行すれば良く、大幅な保安作業の合理化が実現出来る。
【0036】
本発明では、流速センサとして特許第1885523号を例示したが、当該センサを使えば、流速以外にも、流れの方向も必要に応じて検出する事が可能である。即ち、弁体と弁座を挟んで、上流側と下流側を連通するバイパス路が設けられて居るので、通常のガス使用時であって、弁体が簡単に吹き上げられガス流路が開放されている時でも、弁座がオリフィスの役目を果たし、バイパス路両端の開口部には、例え僅かにしても差圧が生じる。従って弁体がガス流路を閉鎖して居る時に限らず開放して居る通常のガス使用時にも、流量センサに通電する事に依りガス流の順・逆方向を検知する事が可能である。
【0037】
微少流量域の分解能が向上し、然もガスが順・逆方向どちらに流れているかを判定出来る事で、多機能メータに対して、以下に述べる様な機能を付加する事が出来る。即ち、水撃現象に依る誤積算の防止に関して説明するならば、そもそも弁体が逆流伝播する衝撃波を阻止する様に作用するが、弁体の上流と下流がバイパス路で連通している為、これを通過して逆流する微量のガス流が存在する。例示した特許第1885523号の流速センサを用いれば、流速の計測と同時に順・逆の流れ方向も判定可能なので、流量パルス信号を検知した(計量膜が動いた)瞬間の流れの方向も識別する事が出来る。つまり水撃現象が生じている時は、ガスが使われてないのに、比較的短いインターバルで順・逆方向の流れが繰返されるので、これを異常な流量パルス信号と判断して、ガス使用量の積算値から減算するロジックの構築が可能となる。
【0038】
更に、管内滞留ガスが日照等の影響に依り膨張・収縮する所謂呼吸現象に依る誤積算の防止、及び呼吸現象と漏洩との判別に関して説明する。例えば流量3L/hrに相当する下限流速を下回り、ガス使用停止時と判断されている時に流量パルス信号が発生しても、流速センサが下流から上流へ向けた逆方向の流れを検知し続けていれば、呼吸現象に依る異常なパルス信号と判断して排除するロジックの構築が可能となる。また反対に、下流へ向けた順方向の流れが検知される場合は、膨張収縮に依るものなのか、漏洩に依るものなのかを判断する事が必要となる。そこで、漏洩は常に順方向に微量のガス流が続き、呼吸現象であれば、必ず昼夜で順・逆方向が一度は反転する事実に着目し、例えば6時間のタイマーに依り、間隔を置いて流れ方向を最大5回(24時間が経過)チェックする中に反転が確認されれば呼吸現象、順方向が継続すれば漏洩と判定するロジックの構築が可能となる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例につき図面をもとに説明する。図1に於いて、多機能ガスメータ1の上部に開口するメータ入口2は、供給設備からガスを供給する導管の終端へ接続され、ガスの流入口となる。メータ入口2と対象の箇所にはメータ出口8が設けられ、消費設備へガスを供給する導管の始端へ接続される。第一計量室30と第二計量室40とは一対のものであり、夫々が第一計量室前室31と第一計量室後室32、及び第二計量室前室41と第二計量室後室42とから講成され、主としてゴム製の膜で構成される第一ダイアフラム33及び第二ダイアフラム43で夫々気密に仕切られて居る。各計量室は第一切換弁51、及び第二切換弁52が第一ダイアフラム33及び第二ダイアフラム43と連動しながらスライドする事に依って交互に排出管6と連通する仕組みになって居る。排出管6はメータ出口8へと繋がり、ガス消費設備まで繋がるガス流路7の起点である。図1ではメータ出口8の直前に、次項に詳述する漏洩検知部10を、ガスが下から上へ流れる場合に対応した垂直方向に組込んでいるが、左方から右方への水平方向の流れに対応する為には、図中Aの二点鎖線で囲んだ位置に水平方向に組込めば良い事は言うまでも無い。なお少なくとも1個のダイアフラムには、流量計測の為の仕組、例えば永久磁石91とリードスイッチ等の磁気感知素子92が装着される。第一計量室後室32にガスが流入し次第に第一計量室前室31のガスが押し出され、第一ダイアフラム33が図の左端に達すると、永久磁石91は磁気感知素子92に最接近し、流量パルス信号が発信される。
【0040】
図2は水平方向に設置された漏洩検知部10を拡大して示して居る。例えばゴム製のOリング等からなる弁座11は、漏洩検知部筐体12の管壁に固定された回転軸13に回動自在に支承された弁体14と隙間無く当接する。弁体14は例えばプラスッチックや軽金属等の剛性が高くかつ軽い材質で作られ、弁座11に当接する表面を例えば凸面形状とし、外周の鍔状部の一部を筒状に形成して、回転軸13へ挿入し、弁体14全体が回転軸13に吊下げられ、回転軸13を支点として振子の様に自在に回動する。この時回転軸13の中心と弁体14の重心位置の関係から、弁体14の回転先端部分(図の下端)の弁座11への当接が弱くなり、弁体と弁座に隙間が生じる場合が想定される。この場合は弁体14の回転モーメントが最大となる下端部分、または当接する弁座11の相対する部分に磁性材料(磁性ゴム、磁性塗料等)を適宜に用い、磁力に依る若干の吸着力を付与する事も好ましい。他にも髭ぜんまいを利用し、ばね力で調節自在に閉鎖方向にわずかに付勢する事も考えられる。又本実施例では、入手が簡単な標準的なOリングを弁座として利用しているが、弁体と弁座の密着性を良くする工夫としては、リップシール等、より密着性の高いものの利用も考えられる。
【0041】
弁体14の上流側と下流側は細いパイプ状のバイパス路15で連通されて居り、該バイパス路の上流側開口17及び下流側開口18は、共にガス流路7に対して直角に開口している。従って、弁体14がガス流路7を閉鎖している場合、極めて微量のガス流が存在する時は、全量が上流側開口17から下流側開口18へ向け、図中に細い矢印で示す方向に流下する。バイパス路15の中間部分には薄膜のヒータ及びヒータを挟んで対向する一対の感熱センサから成る熱線式の流速センサ16が配設される。流速センサ16の電力は多機能メータ1の電池(図示せず)から供給され、得られる流速と流れ方向のデータは多機能メータ1の演算回路(図示せず)へ集められ論理判断に使われる。
【0042】
図1では漏洩検知部10を多機能メータ1に、垂直または水平に内蔵した場合を示して居るが、図3に示す様にアタッチメント式に外付けすることも可能である。図3(a)は垂直方向に設置した状態を、図3(b)は水平方向に設置した状態を示して居る。設置姿勢で若干の違いがあることは既に述べたが、その作用、効果は基本的には同一である。以下図面に基づき、本発明の動作を説明する。
【0043】
ガス供給設備から供給されるガスはメータ入口2からメータ筐体内部に入り、第一切換弁51で塞がれていない方の開口部を通って第一計量室後室32へ流入する。すると次第に充満して来るガスに押されて第一ダイアフラム33は第一計量室前室31を押し、充満しているガスを第一切換弁51経由で連通する排出管6へ押し出す。この時第二計量室前室41は空の状態で、第二計量室後室42はガスが一杯に充満した状態であるが、両室とも第二切換弁52で塞がれていてガスの移動は無い。やがて第一ダイアフラム33は左端まで押され、第一計量室30は図1に示されている第二計量室40と同じ状態に至る。この時リンクしている第一切換弁51と第二切換弁52は、第一ダイアフラム33及び第二ダイアフラム43と連動しながら同時にスライドし、第一切換弁51は第一計量前室31及び第一計量後室32の開口部を両方とも塞ぎ、第二計量前室41及び第二計量後室42双方の開口部を塞いでいた第二切換弁52は、図の右方へスライドして第二計量前室41の開口部を開放する。第二計量後室42の開口部は、図1に示されている第一計量室前室31の開口部と同様、第二切換弁52経由で排出管6と連通し、第二計量前室41の開口部から流入するガスで第二ダイアフラム43が押されることで、第二計量室後室42に充満していたガスを排出管6へ押し出す。このサイクルを繰り返しながら、多機能メータは流量を積算しながらガス流路7へ連続的にガスを供給している。
【0044】
以上の様に、ガス流路7にコンスタントにガスが流れ、かつ通常のガス使用量であれば、ガス自体の運動エネルギーで弁体14は回転軸13を支点にして図1及び図2に二点鎖線で示す状態に吹き上げられ、ガス流路7は開放状態に保持されるので、流下するガスの殆ど全量がガス流路7を直進して通過する。この時、前にも説明した様に弁座11がオリフィスの役を果たすので、バイパス路15の両端(上流側開口17と下流側開口18の間)には差圧が生じ、バイパス路15を通過するガスは零にはならず、流速センサ16に通電すれば、当然流速データが得られる。然し、上流側開口17及び下流側開口18の開口面積が小さい事、バイパス路15の内径が小さい事等から層流が保たれる保障はなく、流量との相関に乏しくなる。従って流量データとしての意味は少ないものの、流れ方向に関し、図中に細い矢印で示す様に必ず上流側から下流側へ向かう順方向である事は重要であり、流速センサ16に依って容易に確認する事が出来る事は言うまでもない。
【0045】
ガス使用が終了してガス消費設備が全て止められると、図1に太い矢印で示すガスの流れは無くなり、弁体14は図1及び図2に実線で示す位置に戻り、弁座11に当接してガス流路7を閉鎖する。この時弁体14よりも下流側に微少漏洩が有れば、ガスは微かではあるが上流側から下流側へ向け、図中に細い矢印で示す経路で流れる。この微量のガス流には弁体14を押し上げるだけのエネルギーは無く、その殆ど全量が上流側開口17及び下流側開口18で開放状態になっているバイパス路15を通過して、漏洩部分へ向けて流下する。従って、弁体14がガス流路7を閉鎖した事が判明した時点で流速センサ16を起動し、計測されるガス流速にバイパス路15の平均断面積を乗ずれば漏洩量が判明する。以上の様な構成と動作を行う微少漏洩検知方式の論理判断に付き、図4及び図5のフローチャートを使って以下説明を行う。
【0046】
図4のチャートは供給開始の現地作業の際に、微少漏洩の有無を判定する為の下限閾値を決定、記憶する流れを示すものである。本発明の保安点検の作業方法は、法に定められた保安業務を現場で必ず実施する事を基本として居り、現場での供給開始時点検・調査の一環として、漏洩の有無を確認する。具体的な確認作業は、消費者宅の全てのガス消費設備を止め、引続き元栓を開けた時に、本発明の微少漏洩検知方式を採用した多機能メータが、合計流量遮断など従来の機能に依る遮断をする事が無く、かつ以下に詳述する論理判断に基づき、微少漏洩を警告する遮断予告表示もしなければ、漏洩は無いと判定するものである。漏洩が有れば原因を究明して処置を行い、完全に漏洩が無い事が確認出来た時点で、次のステップで各消費者宅の漏洩を判定する為の閾値を決める。
【0047】
若しも口火やとろ火を使う消費者宅であれば、「登録する」を選択し、口火又はとろ火のみを点火して学習をスタートさせる。仮に両方とも使う可能性のある消費者宅であれば、ガス消費量の多い方を点火する。学習の流れとしては、漏洩検知部10を起動して、流速センサ16に通電し、流速を計測し記憶する。これを例えば1秒間隔で複数回繰り返し、規定する誤差範囲で規定する回数連続して一致を見た時に、登録流速として確定し、当該消費者宅の下限閾値として多機能メータの記憶回路へ登録する。即ち、従来14日を要した口火使用の学習が数秒で完了するものである。
【0048】
一方で口火もとろ火も使わない消費者宅では「登録せず」を選択し、直ちに固定値を下限閾値として確定する。固定値としては、最低検知能力(分解能)の大幅な改善を踏まえて、例えば従来の多機能メータが標榜する3L/hrの10倍の分解能である0.3L/hr(1分当り5CC)に相当する流速を登録流速として確定し、当該消費者宅の下限閾値として多機能メータの記憶回路へ登録する。
【0049】
図5のチャートは、不規則に発生する水撃現象や呼吸現象も視野に置き、微少漏洩を確定する流れを示すものである。本実施例では、微少漏洩を検知するタイミングを得る手段として、従来の多機能メータが流量パルス信号の間隔から流量を換算している機能を活用して、常に該信号の間隔を監視し、間隔が一定するのを待ち、微少漏洩検知の論理判断を開始する。即ち、流量監視区分1の21L/hr以上に相当する2分間隔以下、及び定格2.5m3/hr以内に相当する1秒間隔以上の場合は、多機能メータの通常の論理判断で処理する。本発明の微少漏洩検知方式の論理判断は、流量パルス信号の間隔が2分以上の場合と1秒以下の場合に展開される。
【0050】
先ず流量パルス信号の間隔が2分以上の場合に関して説明するに、この流量状態は、それまで流量パルス信号の間隔が2分以下故に通常のガス使用状態と判断される状態から、突然2分以上にパルス間隔が伸びる事、及びパルス間隔が一定している事で、流量監視区分1の流量状態に在るのが判る。即ち、漏洩或いは口火やとろ火等の極めてガス流量が少ない、運動エネルギーが乏しくて弁体14を押上げられない状態が推定出来る。そこで直ちに漏洩検知回路10を起動して、流速センサ16に通電し、バイパス路15の流速を計測する。流速が多機能メータに登録された下限閾値を超えていれば、流量監視区分1(21L/hr以下)ではあるが、当該消費者宅に想定した危険微少流量域には達していないと判断出来るので、取敢えず危険は無いとして、漏洩検知回路10を閉じて通常のルーチンへ戻る。
【0051】
逆に下限閾値を下回った場合は、ガス漏洩の疑いが極めて強いと判断されるので、この状態が引き続き確認されれば遮断する前提で、流速センサ16による流れ方向を確認するステップへ進む。流れが図中に細い矢印で示すのとは逆方向の、下流側から上流側への流れであれば、膨張・収縮の過程で、下流側の残留ガスが緩やかに膨張している最中と判断出来るので、取敢えず危険は無いとして、漏洩検知回路10を閉じて通常のルーチンへ戻る。
【0052】
前項とは反対に、流れが図中に細い矢印で示す順方向の流れであれば、膨張・収縮の過程に於いて、下流側の残留ガスが緩やかに収縮している最中、若しくは微少漏洩のどちらかと判断出来る。そこで取敢えず遮断予告を表示や警報音や通報など適宜な手段でおこない、遮断予告カウンタをカウントアップする。その上で収縮であるから心配無いのか、微少漏洩だから対応しなければならないのかを判断するステップに進む。
【0053】
膨張・収縮であれば1日のうちには必ず順・逆が入替るので、24時間監視を続け、1回でも下流側から上流側への逆方向の流れが確認出来れば呼吸現象、順方向しか観測されなければ、ガス漏洩との判断が出来る事はいうまでも無いが、流れ方向の確認ステップは、流速センサ16に通電し続けなくてはならず、前にも述べた様に、10年間内蔵電池だけでの稼動を求められる多機能メータには無理な注文である。そこで、漏洩検知回路10は常には停止して置き、遮断予告を行っている場合のみ内蔵タイマーに依り、例えば24時間に5回、6時間毎に起動し、流量パルス信号の間隔が短縮した場合は使用中と判定し、流量パルス信号の間隔が同一状態である場合は、ガスが使用中でない事が確認出来たとした上で、次の基準で微少漏洩の判定をおこなう。使用中判定が0回の場合は5回連続、使用中判定が1回の場合は5回中4回、使用中判定が2回の場合は5回中3回、使用中判定が3回の場合は5回中2回順方向と確認されれば、微少漏洩と論理判断し遮断や警報出力を行う。
【0054】
次に流量パルス信号の間隔が1秒以下の場合に関して説明するに、この状態は水撃現象と考えられる。戸建住宅や集合住宅の場合は、多機能メータとガス消費設備は至近距離に有り、流量パルス信号の間隔は1秒以下で、しかも順・逆方向が繰返し切替ることから判断が可能である。従って、1秒以下のパルス間隔が確認された場合には、漏洩検知回路を起動して、流速を計測するのではなく、直ちに連続して流れ方向のチェックを行い、切替りの回数をカウントするが、パルス間隔が1秒を超えた時点で水撃現象の影響は治まったと判断し、当該切替りの回数を流量パルス信号の積算値から減算して、誤積算を防止する。尚、都市ガスの様に流路が長大な場合は、1秒を超える事も有るが、伝播速度と距離から衝撃波の間隔は計算可能で、監視時間を変えて同様な微少漏洩の論理判断が出来る事は言うまでもない。
【0055】
以上本実施例に於いては、微少漏洩を検知するタイミングを流量パルス信号の間隔から選択する事例を説明した。然し本発明の目的からして、漏洩検知部10を起動するタイミングとしては、ガス流量が極端に低下した状態を検知したならば、流速センサ16に通電すれば良いのであって、唯一流量パルス信号の間隔から選択する方法に限定するものではない。例えば、膜式ガスメータの流量パルス信号を得る手段同様に、弁体14の外周の一部分に磁性塗料など適宜な方法で磁力を付与し、該磁性部分と対応する弁座11の外淵部に磁気感知素子を配置し、弁体14が弁座11に当接するか若しくは接したと同然に近接した事を、磁気的検知に依り選択する事も可能である。更に他にも光学的に、弁体14が弁座11に当接するか若しくは接したと同然に近接した事を、検知する手段等も考えられる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明によれば以下に示す効果が期待できる。
【0057】
流下する燃料ガス自体の運動エネルギーで回動する弁体を設ける事で、流量状態の検出手段も流路を強制的に切替える手段も要せずに、通常のガス使用時にはガス流路を自動的に開放し、ガス使用停止時にはガス流路を自動的に閉鎖する正確な自動制御を、極めて低いコストで実現し、ガス漏洩と疑わしい微量のガス流が存在した場合にのみ、選択的に当該ガス流をバイパスに導き、瞬時にしかも高い精度で微少漏洩を検知できる。
【0058】
流下する燃料ガス自体の運動エネルギーで回動する弁体を設ける事で、水撃現象に依る反射波が管路を遡上すれば、計量膜に到達する以前に弁体を弁座へ圧接させ、ガス流路を閉鎖する様に作動する結果、反射波が計量膜に到達する前に弁体で再反射され、計量膜まで影響が及ぶのを防ぎ誤積算を防止する。
【0059】
ガス漏洩と疑わしい微量のガス流を細いバイパス路に集約し、流速センサで直接計測し、予め登録してある下限閾値と比較する事で、分解能の大幅な向上を実現し0.3L/hr(1分当り5CC)もの微少ガス漏洩を正確にしかも瞬時に検知可能にする。
【0060】
微量のガス流の流速と同時に、流れ方向の検知を可能にした事で、微少漏洩に基づく流れと呼吸現象に基づく流れとを弁別可能にし、微量のガス流の中からガス漏洩を的確に判定する論理判断が実現できる。
【0061】
微量のガス流の流速と同時に、流れ方向の検知を可能にした事で、呼吸現象や水撃現象に依るガス消費を伴わない流量パルス信号を選別可能にし、当該信号数を減算処理する事で誤積算を防止できる。
【0062】
流速センサに依る瞬時の計測を可能にした事で、流量パルス信号の間隔から流量を判定していた従来の方式では、14日を要していた口火使用の学習が、数秒で完了可能となる。
【0063】
遮断予告表示を導入する事で、微少漏洩の疑いが現場で即座に判り、漏洩検査に必要だった熟練を不要とし、開栓作業や保安作業の簡略化、スピードアップ、信頼性向上が図れ、大幅な業務改善を可能にする。
【0064】
極めて短時間、しかも必要なタイミングで、選択的に流速センサに通電する工夫に依って、電池の消耗を防ぎ、10年間無保守での稼動を求められる多機能メータに、熱線式流速センサを利用する事を可能にする。
【0065】
本発明を多機能メータに利用して微少漏洩の正確な判定を可能にした事に依り、従来は精度に対する懸念から警告に止めていた、微少漏洩検知時の積極的遮断を可能とし、かつ検知時間の大幅な短縮に依り、30日を要していた従来の流量式微少漏洩検知機能に代えて、微少漏洩の判定時間を24時間以内に短縮出来、微少漏洩が確定したら直ちにメータを遮断する事で、事故防止機能の強化が図れる。
【0066】
同じ理由から、従来は15分以上を要していた多機能メータの圧力式微少漏洩検知機能の判定時間を数分以内に短縮出来て、事故防止機能の強化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方式を採用した膜式の多機能ガスメータ内部を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の微少漏洩検知部を拡大して示す断面図である。
【図3】微少漏洩検知部を外付けで用いる場合を示す外観図である。
【図4】本発明方式を採用した多機能ガスメータを使用して行う保安点検の作業方法の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明方式の論理判断の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 多機能ガスメータ
2 メータ入口
7 ガス流路
8 メータ出口
10 微少漏洩検知部
11 弁座
13 回転軸
14 弁体
15 バイパス路
16 流速センサ
30 第一計量室
33 第一ダイアフラム
40 第二計量室
43 第二ダイアフラム
51 第一切換弁
52 第二切換弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス等の流体の導管等のガス流路及びガス消費設備等からの微少な漏洩を検出するに好適な微少漏洩検知方式及びその利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明は、気体、液体を問わず流体全般に適用が可能なものであるが、本明細書では、燃料ガス(都市ガス、LPガスを問わず)の場合について、以下の説明を行う。また、流量に係わる問題故に、メータ全般に適用が可能であるが、本明細書では、各種のガスメータの中、最も汎用性の高い膜式ガスメータを取り上げて説明を行う。
【0003】
一般家庭用の燃料ガス供給システムで言えば、都市ガスの場合はガスタンク等のガス供給源から道路に埋設された導管を経由して末端の暖房器具、調理器具等のガス消費設備へ供給される。またLPガスにあっては軒先のガスボンベやボンベ集積庫或はバルク貯槽等のガス供給源から、導管を経由して暖房器具、調理器具等のガス消費設備へ供給されるものであり、家庭用以外の業務用や工業用の場合であっても基本的な構成は全く同一である。
【0004】
この様な燃料ガス供給システムに於ける様々な問題の一つに、ガス流路及びガス消費設備からの不測のガス漏れ、中でも極めて微少な漏洩を、如何に早くかつ正確に検知するかと言う課題が有り、これに対して様々な微少漏洩検知方式が提案され、実施されて居る。第一の公知例として、消費者宅等のガス使用量を計量するガスメータの主流を占める膜式ガスメータの中、マイクロコンピュータを搭載した多機能ガスメータ(所謂マイコンメータ)を挙げるならば、その保有する数多くの機能の中で、基本機能であるガス流量計測機能を利用した、流量式微少漏洩警告機能及び圧力式微少漏洩警告機能が該当する微少漏洩検知方式である。
【0005】
そもそも膜式ガスメータに於ける流量計測の原理は、一定容積の計量室を構成する一対のゴム製計量膜の往復動に依り押出されるガスの体積を積算するもので、一般家庭用の膜式ガスメータとしては最も台数が多い、定格が2.5m3/hrのメータを例にとれば、計量室容積は一対で0.35×2=0.7Lである。従って1往復で押出されるガスの体積は0.7Lとなり、これに往復動の回数Nを乗じた0.7×NLがガスの流量となる。実際の膜式ガスメータでは、リンク機構を用い往復動を回転運動に変換し数字車を駆動して流量を機械的に積算表示している。なお以下の説明に於いては、特に断りが無い限り上に例示した、一対で0.7Lの計量室容積を有する、定格2.5m3/hrの膜式ガスメータを例にとった諸数値で説明する。
【0006】
多機能ガスメータ(所謂マイコンメータ)にあっては、流量データを採取するのに、例えば特開昭57−190425号に見られる様に、往復動する計量膜に固定される永久磁石に依って、これに対応する位置に設けられた、例えばリードスイッチ等の磁気感知素子をON−OFFし、流量パルス信号として電気的に認識する手段が一般的に採用されている。更に流量パルス信号に依る計量では、チャタリングや電気的ノイズに依ってガス使用量が狂う、所謂誤積算の問題が有り、例えば特許第3046791号で示される様に、ノイズ処理等に工夫を加え、誤積算を回避し、正確なガス使用量を得る工夫がされている。多機能ガスメータでは、計量膜の1往復で押出されるガスの体積0.7Lに、計数された流量パルス信号の数Pを乗じた0.7×PLがガス流量として認識される。例えば、1秒間に1パルスの一定割合で1時間計数し続けたとすれば、流量パルス信号の数は3600回となるのであるから、流量は0.7×3600L/hr=2.52m3/hrと認識されることになる。
【0007】
以上概説した膜式ガスメータの基本機能であるガス流量計測機能を利用した多機能ガスメータの流量式微少漏洩警告機能とは、少なくとも規定時間(例えば1時間)以上に亘り流量パルス信号が規定回数(例えば1回)以下ならば、微少漏洩は無いとの論理判断を行うものである。論理判断は法的に規制されて居る訳ではなく、規定時間や規定回数はメーカ独自の基準で設計されて居る。然しながら、流量監視区分や継続時間などは無秩序に設計されて居る訳ではなく、全メーカで基準が共通化されて居る。この共通化された基準に於いて、流量監視区分1に分類される流量21L/hr以下の場合、継続時間は制限時間なしとされるが、微少漏洩はこの流量監視区分1の流量域での判定となる為、勢い継続時間などは、各メーカ独自の基準を持たざるを得なくなる。何れにせよ多機能ガスメータでは、深夜であれ何時であれ24時間の間に、ガスが全く流れてない状態{正確には最低検知能力(検知が可能な最少の流量を言い、公称3L/hrのメータが多い)以下の状態}が規定時間以上継続する事が一度でも有れば、その日は微少漏洩なしの判定が確定する設計が殆どである。逆に上記の状態が24時間の間に一度も確認出来なかった場合には、微少漏洩の疑いと判定し、この判定が30日連続し、かつ湯沸器等の口火使用の登録や学習がなされていない限り、微少漏洩有りの判定が確定し、直ちに遮断ではなく警告表示を行い、集中監視システムに在っては監視センターへ通報する機能と定義される。
【0008】
一方多機能ガスメータの圧力式微少漏洩警告機能とは、前段の流量計測機能を構成する流量パルス信号が、15分間途絶えた場合にガスの使用が停止されたと判断し、内蔵する圧力センサに依って導管(圧力調整器からガス消費設備入り口迄)の静圧を計測し、当該計測値をガス使用停止直後の静圧(実際はガス使用停止15分後の静圧と言う事になる)として記憶する。そこから更に15分後にもう一度静圧を計測し、前回の計測値との差を圧力上昇値とする。その圧力上昇値が予め定める範囲を超えなければ、導管の何処かでガスが漏れている為に圧力上昇しないと論理判断し、注意フラグを立て、以後15分毎に本手順を繰返す。途中で圧力上昇値が予め定める範囲を超えた場合や流量パルス信号が観測された場合には注意フラグを取消し、次のガス使用停止を待つ。24時間注意フラグが継続すれば、その日は微少漏洩有りと判定し、この判定が30日間連続し、かつ湯沸器等の口火使用の登録や学習がなされていない限り、微少漏洩有りの判定が確定して直ちに遮断ではなく警告表示し、集中監視システムに在っては監視センターへ通報する機能と定義される。
【0009】
第二の公知例として特許第2587108号を挙げるならば、マンション等集合住宅のLPガス供給源の元圧力調整器の下流、全供給ガス量を積算する元ガスメータ上流の導管に設置される親圧力調整器の入口側と出口側をバイパスガス流路で結び、当該流路には親圧力調整器よりも調整圧力の高い子圧力調整器を設け、更に子圧力調節器には、バイパスガス流路の流量を計測する、例えば一般家庭用の多機能ガスメータを微少流量検知手段として一体に構成してある。かかる構成に於いて、一の導管に多数の消費者宅が繋がる集合住宅であっても、殆どの消費者宅がガスの使用を停止する夜間などには、ガスの流動が極端に少なくなり、その分ガスの供給圧力が上昇することになる。供給圧力が親圧力調整器の調整圧力を超えればダイアフラムが変位して開閉弁を閉じ、導管のガス流は遮断される。この時の調整圧力に対して、子圧力調整器の調整圧力を若干高目に設定する事により、同じ圧力でも子圧力調整器のダイアフラムを変位させず、開閉弁を開状態に保ち、バイパス流路を閉鎖せずにガス流路を確保し、ガスを流し続ける設定が可能となる。夜間や深夜にガス消費が殆ど停止し、ガスの流れが止まる時間帯が必ず存在する前提に立てば、第一の公知例と同様に多機能ガスメータの流量式微少漏洩警告機能により、極めて微量のガスの流れを検知する。即ち微少漏洩検知方式である。
【0010】
また、特開平11−160184号では更なる改善の工夫もなされていて、第二の公知例に示す微少流量検知手段としての多機能ガスメータに代え、ICフローセンサ等から構成されるガス流量有無検出手段を用いる事によって、例えば30日を要する現行の漏洩判定の所要時間に代え、15日に一度も流量が零にならない事でガス漏洩ありと判定する等、検知精度を向上し、検知時間を現行の半分に短縮せんとする提案がなされて居る。
【0011】
以上の従来例は流量を計測する事で漏洩を検知する方式であるが、流量から検知する方式の他に、流量には関係なく静圧計を用いる方式も存在する。当該方式は、供給側の元栓と消費設備側のガス器具の栓を全て閉じて、導管を密閉状態にして加圧し、圧力の低下が生じるか否かで漏洩の有無を判定する方式である。当然の事であるが、当該導管系に繋がる全ての消費者宅で、ガス使用を停止し栓を閉止する事が前提となる。従って戸別住宅ならいざ知らず、集合住宅や簡易ガスの場合は実施し難い方式で、第二の公知例に示す工夫が必要とされる所以である。都市ガスの場合には、長大な導管系に全消費者宅が接続されている訳であり、事情は全く同じであると言える。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べた様に、ガスの微少漏洩を検知する従来の方式では、ガス流量を確認する目的で導管に設置され、ガスの使用量を積算表示する膜式ガスメータの流量計測機能を利用し、微少漏洩を確認して居るものが主流であるから、微少漏洩の検知精度としては、ガスメータ自体の最低検知能力に依存せざるを得ないものである。即ち、現在一般的に使用される膜式ガスメータの多くが標榜する3L/hrが、現在公称される検知可能なガス漏洩の限界と言う事になる。つまり一戸建住宅であろうが集合住宅であろうが、現行の膜式ガスメータに依る限り、1時間に3L、言い換えると1分間に50CC以下のガス漏洩を検知する事は不可能と言う事になり、初期の極めて微量のガス漏洩を発見出来ないと言う問題は勿論、最低検知能力ぎりぎりの計測値の不確実さを補足する意味で採用して居る、微少漏洩の疑いとの判定が、30日の長期間連続して初めて警告表示(遮断ではない)すると言う冗長さを解消することも出来ない。
【0013】
更に現行の方式では3L/hrのガス流量を確認するのにも長時間を要する。具体的には流量パルス信号の間隔が14分(0.7/3×60≒14)と計時されて、初めて3L/hrの流量であると認識が出来る訳で、様々な問題が生じる。例えば、集合住宅の場合は、一の導管に繋がる全消費者宅が、少なくとも14分間足並みを揃えてガス使用を停止する状態が、少なくとも24時間に1回は担保されなければ、ガス漏洩の判定が出来ないと言う事であり、集合住宅の規模が大きくなればなる程ガス漏洩の検知が困難になる。更に判定に長時間を要するという事は、内蔵する電池を唯一の電源として、10年間無保守で稼働する事が求められる多機能ガスメータの場合、好ましい事では無い。
【0014】
また多機能ガスメータの圧力式微少漏洩警告機能で言う15分の間隔は、上記の14分に由来するが、導管に於ける静圧の上昇はガス使用停止と同時に発生するものであり、少なくともガス使用停止直後の静圧の計測迄の時間々隔は、現行の「15分間流量パルス信号が途絶える事を以ってガス使用停止を認識する」方式に頼らず、可能な限り短縮する事、言い換えると3L/hrの最低検知能力(分解能)を向上するなどの改善を加える事が好ましいのは言うまでもない。
【0015】
多機能メータの微少漏洩警告機能は、流量式も圧力式も共に口火使用の登録や学習と言う複雑なロジックを付加して、一旦確定した微少漏洩の疑いとの判定を取消す論理判断機能を具備している。口火使用の登録や学習とは、従来では主としてガス湯沸器のパイロットバーナ等、極めて少量のガスを点けっ放しで長時間連続使用するケースで、当該バーナ等が連続30日使用されると微少漏洩有りが確定してしまう矛盾を解決する為に考えられた機能である。即ち、予めパイロットバーナ等流量監視区分1(21L/hr以下)が長時間継続することが予想される消費者宅で口火使用の登録を行うと、14日間最少流量(流量パルス信号の間隔が1時間以下でかつ最も長いものを最少流量と認識)を学習し、当該最少流量を異常値の閾値として記憶し、閾値を超えていなければ、例え微少漏洩有りの判断がなされても、当該判断をキャンセルする機能の事である。従って新規に開栓した場合など、最初から微少漏洩が存在して居て、それを含めて流量監視区分1に相当する流量を学習したと仮定すると、口火の使用であってガス漏洩ではないと判定してしまい、微少漏洩有りをキャンセルし警告表示する事が出来ないことになり、遮断する機能も保有している多機能ガスメータが折角微少漏洩を検知しても、遮断はおろか警告表示すら出来ない矛盾を生じると言うことである。更に多機能ガスメータにとって不都合な事には、近年益々ガス器具の改良が進み、火力調節が極めて精密になり、パイロットバーナ以外にも、煮込み料理や保温の為のとろ火或はエコバーナと称する極めて微量(10L/hr程度)のガス消費量迄もが実用に供される様になり、この傾向は今後益々加速されるものと思われ、口火使用の学習と微少漏洩検知の矛盾が更に顕在化するものと思われる。
【0016】
最近では、例えば特開平11−94612号に見られる様に、バイパス路は用いないで、直接導管の流体状態の変化を検出する、圧力センサなどの変化検出手段を備え、流量低下に対応する変化を検出した場合にのみサンプリング周期を短縮し、最少流量の検知能力を改善する方法や、特開平11−160184号に見られる様に、流量低下時に弁の開閉手段に拠って自動的にバイパス流路に切替えられたガス流量を、マイコンメータに代え、ICセンサで構成する瞬時流量計を用いることで、検出時間を短縮し最少流量の検知能力を改善する工夫が提案されて居る。然し、これらの改善は、流体状態の変化検知手段を具備した上で、弁の開閉手段など流路切替え手段を備え、最低検知能力の改善を意図するもので、コスト面で不利になる事は避けられない。
【0017】
この他にも膜式のガスメータの計量機能には、自然現象に由来する厄介な課題が幾つか存在する。先ず水撃現象(ウォーターハンマー)が挙げられる。管路を流れる流体が下流で遮断されると、運動エネルギーを持った流体は遮断面に衝突し、ほぼ音速の反射波となって管路を遡上し、上流の反射面(代表的な例に計量膜がある)で再反射される。エネルギーが減衰する迄極めて短い間隔で反射が繰返されるので、上流側の反射面となる計量膜が激しく揺動する結果、ガスの消費を伴わない流量パルス信号が多数発生してしまい、誤積算の原因となっていた。
【0018】
また別に、呼吸現象と呼ばれる問題が存在する。即ち、ガス不使用時の閉鎖された管路に滞留して居るガスは、例えば陽が差す時と陰る時、日中と夜間の様に温度差が与えられると膨張・収縮を繰返し、恰も静かに呼吸するが如くに流動する。これも又ガスの消費を伴わない流量パルス信号による誤積算の原因となる事は勿論であるが、微量のガス流が、呼吸現象に依るものなのか、はたまたガス漏洩に依るものなのかを弁別する事が、最低検知能力(分解能)を改善し、極めて微量のガス流そのものを直接計測しようとする微少漏洩検知法式にとっては、より重要な課題である。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記諸課題を解決するために本発明では、流速センサを利用した高い分解能を持つ漏洩検知部を具備した上で、ひとつの手段として、多機能ガスメータの流量パルス信号の間隔から流量を算出する機能を活用し、流量監視区分1に相当する流量状態を検出した場合、具体的には流量パルス信号の間隔が2分を超えた(流量が21L/hr以下になった)時点で、従来の流量を0.7Lの計量室が一杯になるのに要する時間から換算する方式を排除し、代わって、次に述べる漏洩検知部に通電し、微量のガス流を高精度の流速センサに依り、直接瞬時に流速を計測する方式で、漏洩ガス流の有無を論理判断する微少漏洩検知方式を採用することを特徴として居る。
【0020】
更に構成を詳しく述べるならば、多機能ガスメータの計量室以降メータ出口迄のガス流路に、流下するガスの運動エネルギーのみで開いてガス流路を開放し、運動エネルギーが低下し自重を支えきれなくなると元に戻りガス流路を閉鎖する弁体を設け、該弁体の上流と下流を連通する細管から成るバイパス路を形成する。更に当該バイパス路には、薄膜のヒータ及び対向する一対の感熱センサから成る熱線式流速センサ等、極めて高感度の流速センサを具備し、漏洩検知部を構成する事を要諦としている。
【0021】
本発明の要諦である漏洩検知部によれば、流下するガス自身の運動エネルギーの増減で弁体を開閉するので、特にガスセンサ、圧力センサ等流体状態の変化を検知するための手段や、別途電磁弁、圧力調整弁と言った様なガス流路をバイパス路へ切替える手段を備える事なく、ガス使用停止に即応して極めて正確かつ安いコストで、ガス流路をバイパス路側へ切替える動作が実現出来る。即ち、例えば流量監視区分1に相当する、流れがほぼ停止同然の状態では、その運動エネルギーが弁体の自重を支える限界を下回るから、弁体は自重でガス流路を閉鎖する様に作動する。弁体がガス流路を閉じた場合、仮にガス漏洩に起因する微量のガス流が存在していても、弁体を回動させるだけの運動エネルギーは無く、微量の漏洩ガス流は全量が細管から成るバイパス路を経由して流下する。従って該ガス流に見合った細管内径を設計することに依り、漏洩ガスの流量をレイノルズ数2000以下の層流域で計測することが可能となり、従来の膜式メータの分解能では、間接的手法のため不可能であった、微量(1分間に50CC以下)の漏洩ガスの流量を直接かつ精度良く計測可能にするものである。
【0022】
本明細書では、熱線式流速センサを例に説明して居るが、ガス流の変化に対応し変る物理量を計測するものであれば何でも良く、必ずしも熱線式流速センサに限定するものでない。即ち、差圧計に依ってバイパス路の動圧を計測したり、超音波の伝播速度を計測したり、カルマン渦に依る振動数を計測したり、タービン翼を回して仕事率を計測したり、センサは適性やコストを勘案し適宜選択し得る事は言うまでも無い。
【0023】
また、計量室が満杯になる迄は、流量パルス信号が発信されない従来の多機能ガスメータに於いては、14分以下に短縮しようとしても出来なかったガス使用停止認知迄の時間々隔を、本発明では微量のガス流を瞬時に検知出来る特性を活かし、即座に多機能ガスメータの演算回路へ微少流量情報として入力する事に依って、短時間での漏洩判断を可能とし、14分間を短縮する事は勿論、30日間を要していた従来の漏洩判定の冗長さまでも解決出来るものである。しかも流速センサ等、高精度のセンサの何れを選んでも、微少流量域に於ける精度、信頼性は格段に向上するので、従来は警告表示にとどめ、遮断は控えていた多機能ガスメータに、ガス漏洩判断に基づく積極的な遮断をも可能にするものである。
【0024】
また更に本発明を、消費者宅のガス使用量を計測する料金調停用として、計量精度の良さ、耐久性の高さ、価格の安さ等の高評価故に、現在最も数多く使用されて居る膜式のガスメータへ一体に組込む事や、アタッチメントとして組合せる事に依って、当該膜式のガスメータの弱点である微少流量域の分解能を大幅に向上し、多機能ガスメータの口火使用の登録や学習といった折角の機能が抱える、最初から漏洩分が含まれて居ると、判断を間違えてしまうと言う矛盾も解消出来るものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明は、多機能ガスメータの主流である膜式のガスメータの計量室下流であって、メータの出口に至る迄のガス流路の任意の箇所に、開閉自在な弁体と該弁体が当接する弁座を備え、更に弁体・弁座を挟んだガス流路の上流側と下流側を連結する細管からなるバイパス路とから主に構成される漏洩検知部を具備することを要諦とする。
【0026】
上記バイパス路には、例えば特許第1885523号に公知の、極めて高精度・低消費電力の流速センサを配備し、該バイパス路を流下するガスの流速を計測可能に配置されるので、いま仮に漏洩検出部の分解能を0.3〜3L/hr(1分当り5〜50CC)に設計しようとすれば、被計測ガスの動粘度は判明しているのであるから、当該流速センサの計測可能流速の範囲で、レイノルズ数が2000以下、最悪でも4000を超えない様(層流が確保される流速域)にバイパス管路の内径を設計すれば、層流が保たれ精度良くガス流速が計測可能となり、所期の分解能を極めて容易に実現可能にするものである。
【0027】
ガス供給設備からガス消費設備までの導管は、その殆どがガス管で構成され、メータ内部その他ガス流路を構成する部分もその大半は円形断面であるから、弁座として例えばゴム製のOリングを漏洩検知部の内壁に気密に装着し、ガスがその内径部分を通過する様に構成する。更にOリングの下流側に該Oリングの内径よりも大きな径の、ピンポン球がイメージされる様な軽量かつ球状の表面を有する弁体を設け、ガスが使用されていない静止状態の時には、弁体の球状表面がOリングと隙間無く当接し、ガス流路を閉鎖する様に構成される。また更に該弁体は、完全な球形である事を要せず、半球状或いは部分的な凸面状の方が軽量とすることが出来、かつ後述する揚力による不都合を回避出来る為、より好都合なものである。
【0028】
上述した静止状態の時に弁体の球状表面と弁座が隙間無く当接する形態は、漏洩検知部の設置姿勢と大いに関係する。即ち、ガスが下方から上方へ流れる垂直方向の場合は、ガスの運動エネルギーに依って上方(すなわち下流側)へ持ち上げられた弁体が、運動エネルギーが消滅すると共に自重で落下し弁座に当接する状態は、吹上げられたピンポン球が落下しOリングで止まる状況で説明出来る。しかし、ガス流路が水平方向の場合には当て嵌まらない。
【0029】
前項でガスの運動エネルギーがピンポン球の自重に抗し、これを吹き上げている趣旨の説明をしているが正確ではない。下から上へ向けて空気が層流状態(乱流では駄目)で吹き上げている中央へ、風船やピンポン球を持って行くと、恰も空中に浮遊する如く静止する現象は誰しもが経験している。この現象は正しくは、空気がピンポン球に衝突する運動エネルギーとピンポン球の自重が均衡する事のみで静止するのでは無く、ベルヌーイの定理で公知の通り、ガスの流れが生み出す揚力によって層流の中心に保持され、かつ球前方と後方の圧力差や球の後流に発生するカルマン渦の押付け力、更に自重が加味され微妙にバランスする結果であるが、本発明ではガスの運動エネルギーと自重のバランスと言う表現に止める。いま仮にパイプ状の円形断面のガス流路内にピンポン球を配置すると仮定すれば、ピンポン球が球形であるが故に前述の微妙なバランスは常に均衡し易く、通常使用状態のガス量が流れる場合には、流速も大きくなり、揚力も後流の推力も増大し、ピンポン球はますますその場を動かず、ガスは管壁とピンポン球の隙間を無理やりに通過する事態となる。即ち、弁体がガス流路の抵抗体となる不都合が推定される。
【0030】
そこで本発明の要諦である漏洩検知部では、弁体をあたかもカーブミラーの如く、中央部が上流側へ湾曲した凸面状に構成し、外周の鍔状部分の一端を上部管壁に設ける支点に回動自在に支承し、ガスが左方から右方へ流れる水平方向の場合にも、運動エネルギーに依って支点を中心に弧を画いて吹上げられた弁体が、ガス使用停止と同時に弧を画いて戻り、弁座に隙間無く当接した静止状態を実現する様に構成する事に依り、設置姿勢に依る影響はもとより、前述した揚力等により、弁体自体がガス流路の抵抗体となってしまう不都合も排除出来る様に工夫されている。
【0031】
かかる構成に依り、通常のガス使用時には、流下するガスの運動エネルギーで弁体は簡単に吹上げられ、管壁の支点を中心に弧を画いて弁座を離れてガス流路が開放される。一方で通常のガス使用が停止されると、弁体を如何に軽量に構成しても、口火やとろ火程度のガス消費量、或いはガス漏れに基づく微量のガス流量、即ち多機能ガスメータに於いては流量監視区分1に分類される程度のガス流量では、到底弁体を自重に抗して持上げるのに充分な運動エネルギーは確保できず、弁体は弁座に当接したままとなり、ガス流路は閉鎖される。ガス流路が弁体により閉鎖される結果、微量のガス流はその全量が弁体の上流側から、細管からなるバイパス路を経由して弁体の下流側へと流れる。従って、特別なセンサを備えてガス使用が止まった状態を検出する必要もなく、更に電磁弁や圧力調節弁等の流路切替手段の助けを借りる事もなく、ガスが実使用レベルの流量を下回った場合に、正確かつ自動的にガスの流れをバイパス路へ切替えることが可能となるものである。
【0032】
前述した様に当該バイパス路は、流量監視区分1程度の微少流量でも、計測に好適な層流域が確保出来る管径に設計されているので、流速センサの感度範囲内で、流速値が正確にしかも瞬時に計測可能となるものである。当然のことであるが、流速の大小は流量の多少と完全に相関して居り、換算が可能である。従ってバイパス路内径を、流量3L/hr(1分当り50CC)以下、例えば0.3L/hr(1分当り5CC)の時でも、レイノルズ数が2000以下になる様に設計する事で、従来の多機能ガスメータに於いては膜式のメータなるが故に不可能であった、0.3L/hrと言う様な極めて微量のガス流も瞬時に計測する水準の分解能を付与することが出来るものである。
【0033】
分解能の向上により、従来は30日間を要していた漏洩の判定が極めて短時間に可能となる。即ち正常な使用状況に於けるガス器具の最少流量は口火やとろ火であるから、例え口火やとろ火を連続使用する家庭に於いても、当該流量に相当する約10L/hr程度を下回るガスの流量は存在しない事になる。従って、口火もとろ火も使用しない家庭を含めて、例えば流量3L/hrに相当する限界流量を設定し、当該流量に相当する限界流速を下回る流速が計測された時点で、なお限界流速を下回る流速を検出し続けたら、30日もの長期間の監視するロジックを排除し、例えば数時間から精々1日の監視でガス漏洩であると正確に断定するロジックの構築が可能になる。
【0034】
又、作業員が現場に赴き、法に定められた供給開始時点検・調査等の保安業務を行う事を前提にすれば、本発明の微少漏洩検知方式を採用した多機能ガスメータを用いれば、従来は14日間を要していた口火使用の学習も極めて短時間に完了する事が出来る。即ち、口火やとろ火を登録しようとする時は、メータ取付けや開栓を行う作業員が、漏洩の無い事を確認した上で口火だけを点火し、直ちに多機能ガスメータの学習をスタートさせれば、僅か数秒間で流速の計測が済み、極めて短時間に当該学習を完了させる事が可能になる。現地で短時間に作業を完了できる効果は、単に学習時間の短縮に止まらず、更に大きな合理化をもたらすものである。
【0035】
消費者宅での開栓や供給開始時点検・調査に際し、多大な時間と熟練を必要として居たガス漏洩を確認する作業を大幅に合理化出来る。即ち、作業員は最初に消費者宅のガス消費設備を全て止めた上で元栓を開ける。ガス消費設備の繋ぎ忘れやゴムホースの抜け等の不備が有って大量のガスが漏れると、多機能ガスメータ本来の機能に依り即刻ガスが遮断されるので直ちに判断が出来る。メータ以降に全く漏洩が無ければ、前記の遮断は無く、勿論漏洩検知部が作動する事も無い。仮に微少な漏洩が有ったとすれば、0.3L/hrと言う様な極めて微量のガス流も瞬時に計測する水準の分解能を付与されて居るのであるから、微量のガス流を検知したら直ちに遮断予告の表示を行う事に依って、微少漏洩の存在を目視確認する事が可能である。即ち、作業員は何の習熟も必要としないで、漏洩の有無を現場で即座に判断出来る事になる。直ちに漏洩の原因究明と処置を行い、再度元栓を開け、今度は漏洩が無いことを確認して前項の口火やとろ火の登録作業に移行すれば良く、大幅な保安作業の合理化が実現出来る。
【0036】
本発明では、流速センサとして特許第1885523号を例示したが、当該センサを使えば、流速以外にも、流れの方向も必要に応じて検出する事が可能である。即ち、弁体と弁座を挟んで、上流側と下流側を連通するバイパス路が設けられて居るので、通常のガス使用時であって、弁体が簡単に吹き上げられガス流路が開放されている時でも、弁座がオリフィスの役目を果たし、バイパス路両端の開口部には、例え僅かにしても差圧が生じる。従って弁体がガス流路を閉鎖して居る時に限らず開放して居る通常のガス使用時にも、流量センサに通電する事に依りガス流の順・逆方向を検知する事が可能である。
【0037】
微少流量域の分解能が向上し、然もガスが順・逆方向どちらに流れているかを判定出来る事で、多機能メータに対して、以下に述べる様な機能を付加する事が出来る。即ち、水撃現象に依る誤積算の防止に関して説明するならば、そもそも弁体が逆流伝播する衝撃波を阻止する様に作用するが、弁体の上流と下流がバイパス路で連通している為、これを通過して逆流する微量のガス流が存在する。例示した特許第1885523号の流速センサを用いれば、流速の計測と同時に順・逆の流れ方向も判定可能なので、流量パルス信号を検知した(計量膜が動いた)瞬間の流れの方向も識別する事が出来る。つまり水撃現象が生じている時は、ガスが使われてないのに、比較的短いインターバルで順・逆方向の流れが繰返されるので、これを異常な流量パルス信号と判断して、ガス使用量の積算値から減算するロジックの構築が可能となる。
【0038】
更に、管内滞留ガスが日照等の影響に依り膨張・収縮する所謂呼吸現象に依る誤積算の防止、及び呼吸現象と漏洩との判別に関して説明する。例えば流量3L/hrに相当する下限流速を下回り、ガス使用停止時と判断されている時に流量パルス信号が発生しても、流速センサが下流から上流へ向けた逆方向の流れを検知し続けていれば、呼吸現象に依る異常なパルス信号と判断して排除するロジックの構築が可能となる。また反対に、下流へ向けた順方向の流れが検知される場合は、膨張収縮に依るものなのか、漏洩に依るものなのかを判断する事が必要となる。そこで、漏洩は常に順方向に微量のガス流が続き、呼吸現象であれば、必ず昼夜で順・逆方向が一度は反転する事実に着目し、例えば6時間のタイマーに依り、間隔を置いて流れ方向を最大5回(24時間が経過)チェックする中に反転が確認されれば呼吸現象、順方向が継続すれば漏洩と判定するロジックの構築が可能となる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例につき図面をもとに説明する。図1に於いて、多機能ガスメータ1の上部に開口するメータ入口2は、供給設備からガスを供給する導管の終端へ接続され、ガスの流入口となる。メータ入口2と対象の箇所にはメータ出口8が設けられ、消費設備へガスを供給する導管の始端へ接続される。第一計量室30と第二計量室40とは一対のものであり、夫々が第一計量室前室31と第一計量室後室32、及び第二計量室前室41と第二計量室後室42とから講成され、主としてゴム製の膜で構成される第一ダイアフラム33及び第二ダイアフラム43で夫々気密に仕切られて居る。各計量室は第一切換弁51、及び第二切換弁52が第一ダイアフラム33及び第二ダイアフラム43と連動しながらスライドする事に依って交互に排出管6と連通する仕組みになって居る。排出管6はメータ出口8へと繋がり、ガス消費設備まで繋がるガス流路7の起点である。図1ではメータ出口8の直前に、次項に詳述する漏洩検知部10を、ガスが下から上へ流れる場合に対応した垂直方向に組込んでいるが、左方から右方への水平方向の流れに対応する為には、図中Aの二点鎖線で囲んだ位置に水平方向に組込めば良い事は言うまでも無い。なお少なくとも1個のダイアフラムには、流量計測の為の仕組、例えば永久磁石91とリードスイッチ等の磁気感知素子92が装着される。第一計量室後室32にガスが流入し次第に第一計量室前室31のガスが押し出され、第一ダイアフラム33が図の左端に達すると、永久磁石91は磁気感知素子92に最接近し、流量パルス信号が発信される。
【0040】
図2は水平方向に設置された漏洩検知部10を拡大して示して居る。例えばゴム製のOリング等からなる弁座11は、漏洩検知部筐体12の管壁に固定された回転軸13に回動自在に支承された弁体14と隙間無く当接する。弁体14は例えばプラスッチックや軽金属等の剛性が高くかつ軽い材質で作られ、弁座11に当接する表面を例えば凸面形状とし、外周の鍔状部の一部を筒状に形成して、回転軸13へ挿入し、弁体14全体が回転軸13に吊下げられ、回転軸13を支点として振子の様に自在に回動する。この時回転軸13の中心と弁体14の重心位置の関係から、弁体14の回転先端部分(図の下端)の弁座11への当接が弱くなり、弁体と弁座に隙間が生じる場合が想定される。この場合は弁体14の回転モーメントが最大となる下端部分、または当接する弁座11の相対する部分に磁性材料(磁性ゴム、磁性塗料等)を適宜に用い、磁力に依る若干の吸着力を付与する事も好ましい。他にも髭ぜんまいを利用し、ばね力で調節自在に閉鎖方向にわずかに付勢する事も考えられる。又本実施例では、入手が簡単な標準的なOリングを弁座として利用しているが、弁体と弁座の密着性を良くする工夫としては、リップシール等、より密着性の高いものの利用も考えられる。
【0041】
弁体14の上流側と下流側は細いパイプ状のバイパス路15で連通されて居り、該バイパス路の上流側開口17及び下流側開口18は、共にガス流路7に対して直角に開口している。従って、弁体14がガス流路7を閉鎖している場合、極めて微量のガス流が存在する時は、全量が上流側開口17から下流側開口18へ向け、図中に細い矢印で示す方向に流下する。バイパス路15の中間部分には薄膜のヒータ及びヒータを挟んで対向する一対の感熱センサから成る熱線式の流速センサ16が配設される。流速センサ16の電力は多機能メータ1の電池(図示せず)から供給され、得られる流速と流れ方向のデータは多機能メータ1の演算回路(図示せず)へ集められ論理判断に使われる。
【0042】
図1では漏洩検知部10を多機能メータ1に、垂直または水平に内蔵した場合を示して居るが、図3に示す様にアタッチメント式に外付けすることも可能である。図3(a)は垂直方向に設置した状態を、図3(b)は水平方向に設置した状態を示して居る。設置姿勢で若干の違いがあることは既に述べたが、その作用、効果は基本的には同一である。以下図面に基づき、本発明の動作を説明する。
【0043】
ガス供給設備から供給されるガスはメータ入口2からメータ筐体内部に入り、第一切換弁51で塞がれていない方の開口部を通って第一計量室後室32へ流入する。すると次第に充満して来るガスに押されて第一ダイアフラム33は第一計量室前室31を押し、充満しているガスを第一切換弁51経由で連通する排出管6へ押し出す。この時第二計量室前室41は空の状態で、第二計量室後室42はガスが一杯に充満した状態であるが、両室とも第二切換弁52で塞がれていてガスの移動は無い。やがて第一ダイアフラム33は左端まで押され、第一計量室30は図1に示されている第二計量室40と同じ状態に至る。この時リンクしている第一切換弁51と第二切換弁52は、第一ダイアフラム33及び第二ダイアフラム43と連動しながら同時にスライドし、第一切換弁51は第一計量前室31及び第一計量後室32の開口部を両方とも塞ぎ、第二計量前室41及び第二計量後室42双方の開口部を塞いでいた第二切換弁52は、図の右方へスライドして第二計量前室41の開口部を開放する。第二計量後室42の開口部は、図1に示されている第一計量室前室31の開口部と同様、第二切換弁52経由で排出管6と連通し、第二計量前室41の開口部から流入するガスで第二ダイアフラム43が押されることで、第二計量室後室42に充満していたガスを排出管6へ押し出す。このサイクルを繰り返しながら、多機能メータは流量を積算しながらガス流路7へ連続的にガスを供給している。
【0044】
以上の様に、ガス流路7にコンスタントにガスが流れ、かつ通常のガス使用量であれば、ガス自体の運動エネルギーで弁体14は回転軸13を支点にして図1及び図2に二点鎖線で示す状態に吹き上げられ、ガス流路7は開放状態に保持されるので、流下するガスの殆ど全量がガス流路7を直進して通過する。この時、前にも説明した様に弁座11がオリフィスの役を果たすので、バイパス路15の両端(上流側開口17と下流側開口18の間)には差圧が生じ、バイパス路15を通過するガスは零にはならず、流速センサ16に通電すれば、当然流速データが得られる。然し、上流側開口17及び下流側開口18の開口面積が小さい事、バイパス路15の内径が小さい事等から層流が保たれる保障はなく、流量との相関に乏しくなる。従って流量データとしての意味は少ないものの、流れ方向に関し、図中に細い矢印で示す様に必ず上流側から下流側へ向かう順方向である事は重要であり、流速センサ16に依って容易に確認する事が出来る事は言うまでもない。
【0045】
ガス使用が終了してガス消費設備が全て止められると、図1に太い矢印で示すガスの流れは無くなり、弁体14は図1及び図2に実線で示す位置に戻り、弁座11に当接してガス流路7を閉鎖する。この時弁体14よりも下流側に微少漏洩が有れば、ガスは微かではあるが上流側から下流側へ向け、図中に細い矢印で示す経路で流れる。この微量のガス流には弁体14を押し上げるだけのエネルギーは無く、その殆ど全量が上流側開口17及び下流側開口18で開放状態になっているバイパス路15を通過して、漏洩部分へ向けて流下する。従って、弁体14がガス流路7を閉鎖した事が判明した時点で流速センサ16を起動し、計測されるガス流速にバイパス路15の平均断面積を乗ずれば漏洩量が判明する。以上の様な構成と動作を行う微少漏洩検知方式の論理判断に付き、図4及び図5のフローチャートを使って以下説明を行う。
【0046】
図4のチャートは供給開始の現地作業の際に、微少漏洩の有無を判定する為の下限閾値を決定、記憶する流れを示すものである。本発明の保安点検の作業方法は、法に定められた保安業務を現場で必ず実施する事を基本として居り、現場での供給開始時点検・調査の一環として、漏洩の有無を確認する。具体的な確認作業は、消費者宅の全てのガス消費設備を止め、引続き元栓を開けた時に、本発明の微少漏洩検知方式を採用した多機能メータが、合計流量遮断など従来の機能に依る遮断をする事が無く、かつ以下に詳述する論理判断に基づき、微少漏洩を警告する遮断予告表示もしなければ、漏洩は無いと判定するものである。漏洩が有れば原因を究明して処置を行い、完全に漏洩が無い事が確認出来た時点で、次のステップで各消費者宅の漏洩を判定する為の閾値を決める。
【0047】
若しも口火やとろ火を使う消費者宅であれば、「登録する」を選択し、口火又はとろ火のみを点火して学習をスタートさせる。仮に両方とも使う可能性のある消費者宅であれば、ガス消費量の多い方を点火する。学習の流れとしては、漏洩検知部10を起動して、流速センサ16に通電し、流速を計測し記憶する。これを例えば1秒間隔で複数回繰り返し、規定する誤差範囲で規定する回数連続して一致を見た時に、登録流速として確定し、当該消費者宅の下限閾値として多機能メータの記憶回路へ登録する。即ち、従来14日を要した口火使用の学習が数秒で完了するものである。
【0048】
一方で口火もとろ火も使わない消費者宅では「登録せず」を選択し、直ちに固定値を下限閾値として確定する。固定値としては、最低検知能力(分解能)の大幅な改善を踏まえて、例えば従来の多機能メータが標榜する3L/hrの10倍の分解能である0.3L/hr(1分当り5CC)に相当する流速を登録流速として確定し、当該消費者宅の下限閾値として多機能メータの記憶回路へ登録する。
【0049】
図5のチャートは、不規則に発生する水撃現象や呼吸現象も視野に置き、微少漏洩を確定する流れを示すものである。本実施例では、微少漏洩を検知するタイミングを得る手段として、従来の多機能メータが流量パルス信号の間隔から流量を換算している機能を活用して、常に該信号の間隔を監視し、間隔が一定するのを待ち、微少漏洩検知の論理判断を開始する。即ち、流量監視区分1の21L/hr以上に相当する2分間隔以下、及び定格2.5m3/hr以内に相当する1秒間隔以上の場合は、多機能メータの通常の論理判断で処理する。本発明の微少漏洩検知方式の論理判断は、流量パルス信号の間隔が2分以上の場合と1秒以下の場合に展開される。
【0050】
先ず流量パルス信号の間隔が2分以上の場合に関して説明するに、この流量状態は、それまで流量パルス信号の間隔が2分以下故に通常のガス使用状態と判断される状態から、突然2分以上にパルス間隔が伸びる事、及びパルス間隔が一定している事で、流量監視区分1の流量状態に在るのが判る。即ち、漏洩或いは口火やとろ火等の極めてガス流量が少ない、運動エネルギーが乏しくて弁体14を押上げられない状態が推定出来る。そこで直ちに漏洩検知回路10を起動して、流速センサ16に通電し、バイパス路15の流速を計測する。流速が多機能メータに登録された下限閾値を超えていれば、流量監視区分1(21L/hr以下)ではあるが、当該消費者宅に想定した危険微少流量域には達していないと判断出来るので、取敢えず危険は無いとして、漏洩検知回路10を閉じて通常のルーチンへ戻る。
【0051】
逆に下限閾値を下回った場合は、ガス漏洩の疑いが極めて強いと判断されるので、この状態が引き続き確認されれば遮断する前提で、流速センサ16による流れ方向を確認するステップへ進む。流れが図中に細い矢印で示すのとは逆方向の、下流側から上流側への流れであれば、膨張・収縮の過程で、下流側の残留ガスが緩やかに膨張している最中と判断出来るので、取敢えず危険は無いとして、漏洩検知回路10を閉じて通常のルーチンへ戻る。
【0052】
前項とは反対に、流れが図中に細い矢印で示す順方向の流れであれば、膨張・収縮の過程に於いて、下流側の残留ガスが緩やかに収縮している最中、若しくは微少漏洩のどちらかと判断出来る。そこで取敢えず遮断予告を表示や警報音や通報など適宜な手段でおこない、遮断予告カウンタをカウントアップする。その上で収縮であるから心配無いのか、微少漏洩だから対応しなければならないのかを判断するステップに進む。
【0053】
膨張・収縮であれば1日のうちには必ず順・逆が入替るので、24時間監視を続け、1回でも下流側から上流側への逆方向の流れが確認出来れば呼吸現象、順方向しか観測されなければ、ガス漏洩との判断が出来る事はいうまでも無いが、流れ方向の確認ステップは、流速センサ16に通電し続けなくてはならず、前にも述べた様に、10年間内蔵電池だけでの稼動を求められる多機能メータには無理な注文である。そこで、漏洩検知回路10は常には停止して置き、遮断予告を行っている場合のみ内蔵タイマーに依り、例えば24時間に5回、6時間毎に起動し、流量パルス信号の間隔が短縮した場合は使用中と判定し、流量パルス信号の間隔が同一状態である場合は、ガスが使用中でない事が確認出来たとした上で、次の基準で微少漏洩の判定をおこなう。使用中判定が0回の場合は5回連続、使用中判定が1回の場合は5回中4回、使用中判定が2回の場合は5回中3回、使用中判定が3回の場合は5回中2回順方向と確認されれば、微少漏洩と論理判断し遮断や警報出力を行う。
【0054】
次に流量パルス信号の間隔が1秒以下の場合に関して説明するに、この状態は水撃現象と考えられる。戸建住宅や集合住宅の場合は、多機能メータとガス消費設備は至近距離に有り、流量パルス信号の間隔は1秒以下で、しかも順・逆方向が繰返し切替ることから判断が可能である。従って、1秒以下のパルス間隔が確認された場合には、漏洩検知回路を起動して、流速を計測するのではなく、直ちに連続して流れ方向のチェックを行い、切替りの回数をカウントするが、パルス間隔が1秒を超えた時点で水撃現象の影響は治まったと判断し、当該切替りの回数を流量パルス信号の積算値から減算して、誤積算を防止する。尚、都市ガスの様に流路が長大な場合は、1秒を超える事も有るが、伝播速度と距離から衝撃波の間隔は計算可能で、監視時間を変えて同様な微少漏洩の論理判断が出来る事は言うまでもない。
【0055】
以上本実施例に於いては、微少漏洩を検知するタイミングを流量パルス信号の間隔から選択する事例を説明した。然し本発明の目的からして、漏洩検知部10を起動するタイミングとしては、ガス流量が極端に低下した状態を検知したならば、流速センサ16に通電すれば良いのであって、唯一流量パルス信号の間隔から選択する方法に限定するものではない。例えば、膜式ガスメータの流量パルス信号を得る手段同様に、弁体14の外周の一部分に磁性塗料など適宜な方法で磁力を付与し、該磁性部分と対応する弁座11の外淵部に磁気感知素子を配置し、弁体14が弁座11に当接するか若しくは接したと同然に近接した事を、磁気的検知に依り選択する事も可能である。更に他にも光学的に、弁体14が弁座11に当接するか若しくは接したと同然に近接した事を、検知する手段等も考えられる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明によれば以下に示す効果が期待できる。
【0057】
流下する燃料ガス自体の運動エネルギーで回動する弁体を設ける事で、流量状態の検出手段も流路を強制的に切替える手段も要せずに、通常のガス使用時にはガス流路を自動的に開放し、ガス使用停止時にはガス流路を自動的に閉鎖する正確な自動制御を、極めて低いコストで実現し、ガス漏洩と疑わしい微量のガス流が存在した場合にのみ、選択的に当該ガス流をバイパスに導き、瞬時にしかも高い精度で微少漏洩を検知できる。
【0058】
流下する燃料ガス自体の運動エネルギーで回動する弁体を設ける事で、水撃現象に依る反射波が管路を遡上すれば、計量膜に到達する以前に弁体を弁座へ圧接させ、ガス流路を閉鎖する様に作動する結果、反射波が計量膜に到達する前に弁体で再反射され、計量膜まで影響が及ぶのを防ぎ誤積算を防止する。
【0059】
ガス漏洩と疑わしい微量のガス流を細いバイパス路に集約し、流速センサで直接計測し、予め登録してある下限閾値と比較する事で、分解能の大幅な向上を実現し0.3L/hr(1分当り5CC)もの微少ガス漏洩を正確にしかも瞬時に検知可能にする。
【0060】
微量のガス流の流速と同時に、流れ方向の検知を可能にした事で、微少漏洩に基づく流れと呼吸現象に基づく流れとを弁別可能にし、微量のガス流の中からガス漏洩を的確に判定する論理判断が実現できる。
【0061】
微量のガス流の流速と同時に、流れ方向の検知を可能にした事で、呼吸現象や水撃現象に依るガス消費を伴わない流量パルス信号を選別可能にし、当該信号数を減算処理する事で誤積算を防止できる。
【0062】
流速センサに依る瞬時の計測を可能にした事で、流量パルス信号の間隔から流量を判定していた従来の方式では、14日を要していた口火使用の学習が、数秒で完了可能となる。
【0063】
遮断予告表示を導入する事で、微少漏洩の疑いが現場で即座に判り、漏洩検査に必要だった熟練を不要とし、開栓作業や保安作業の簡略化、スピードアップ、信頼性向上が図れ、大幅な業務改善を可能にする。
【0064】
極めて短時間、しかも必要なタイミングで、選択的に流速センサに通電する工夫に依って、電池の消耗を防ぎ、10年間無保守での稼動を求められる多機能メータに、熱線式流速センサを利用する事を可能にする。
【0065】
本発明を多機能メータに利用して微少漏洩の正確な判定を可能にした事に依り、従来は精度に対する懸念から警告に止めていた、微少漏洩検知時の積極的遮断を可能とし、かつ検知時間の大幅な短縮に依り、30日を要していた従来の流量式微少漏洩検知機能に代えて、微少漏洩の判定時間を24時間以内に短縮出来、微少漏洩が確定したら直ちにメータを遮断する事で、事故防止機能の強化が図れる。
【0066】
同じ理由から、従来は15分以上を要していた多機能メータの圧力式微少漏洩検知機能の判定時間を数分以内に短縮出来て、事故防止機能の強化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方式を採用した膜式の多機能ガスメータ内部を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の微少漏洩検知部を拡大して示す断面図である。
【図3】微少漏洩検知部を外付けで用いる場合を示す外観図である。
【図4】本発明方式を採用した多機能ガスメータを使用して行う保安点検の作業方法の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明方式の論理判断の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 多機能ガスメータ
2 メータ入口
7 ガス流路
8 メータ出口
10 微少漏洩検知部
11 弁座
13 回転軸
14 弁体
15 バイパス路
16 流速センサ
30 第一計量室
33 第一ダイアフラム
40 第二計量室
43 第二ダイアフラム
51 第一切換弁
52 第二切換弁
Claims (9)
- 膜式ガスメータの計量室からメータ出口に至るガス流路の管壁に回動自在に支承され、該ガス流路の開放・閉鎖が可能な弁体と、該弁体を挟んで該ガス流路の上流側と下流側とを連通する細管からなるバイパス路と、該バイパス路に設置される流速センサとで主として構成され、ガス不使用時には弁体が弁座に密着してガス流路を閉鎖して居る状態から、ガス使用開始と共にガス流自体の運動エネルギーに依り弁体が押し開けられ、ガスが順方向に流下し、ガス使用を停止すると、運動エネルギーが消滅するのに伴い、弁体は自重等に依り自然に元の位置へ戻りガス流路を閉鎖する様に動作する漏洩検知部に於いて、閉鎖状態の時に、仮に極微量のガス流が存在する場合には、殆ど全量がバイパス路を通過する様に導かれる事を利用して、該ガス流の流速と流れ方向を、瞬時にしかも高精度で計測する漏洩検知部を構成し、ガス使用停止時の如く、ガス流量の極端な低下を検知した場合に該漏洩検知部に通電し、直接的に漏洩と疑わしいガス流のデータを採取し、演算処理してガス漏洩の有無を論理判断する事を特徴とする微少漏洩検知方式。
- 口火使用の学習に於いて、口火やとろ火を使用する消費者宅にあっては、口火若しくはとろ火だけを点火した上で流速センサに通電し、計測された流速を当該消費者宅の下限閾値とし、一方口火やとろ火を使用しない消費者宅にあっては、検知能力の下限に近い固定値を下限閾値として登録する事を特徴とする請求項1記載の微少漏洩検知方式。
- 使用停止時の如く、ガス流量が極端に低下した場合にのみ流速センサに通電し計測を行う漏洩検知方式に於いて、通電開始のタイミングを、流量パルス信号間隔の常時監視に依り、間隔が一定して居り、かつ規定時間々隔を超えているか否かに依り選択する事を特徴とする請求項1記載の微少漏洩検知方式。
- 使用停止時の如く、ガス流量が極端に低下した場合にのみ流速センサに通電し計測を行う漏洩検知方式に於いて、通電開始のタイミングを、弁体と弁座が当接するか若しくは近似的に接したと同然に近接した事を、磁気的検知に依り選択する事を特徴とする請求項1記載の微少漏洩検知方式。
- 使用停止時の如く、ガス流量が極端に低下した場合にのみ流速センサに通電し計測を行う漏洩検知方式に於いて、流れ方向が緩慢でかつ比較的長時間連続する、下流側から上流側へ向かう逆方向である事を検知した場合に、管内残留ガスの膨張に依る微量のガス流であると論理判断する事を特徴とする請求項1記載の微少漏洩検知方式。
- 使用停止時の如く、ガス流量が極端に低下した場合にのみ通電、計測を行う漏洩検知方式に於いて、流れ方向が上流側から下流側へ向かう順方向である事を検知した場合に、遮断予告表示の判断を行い、引き続き所定の時間々隔を置き、前記極端にガス流量が低下した場合と同一状態である事を確認した上で、流れ方向が上流側から下流側へ向かう順方向である事を引続き検知した場合に微少漏洩有り、一回でも逆方向或いは流速零と検知した場合に微少漏洩なしと論理判断する事を特徴とする請求項1記載の微少漏洩検知方式。
- 通電開始のタイミングを、流量パルス信号間隔の常時監視により選択する漏洩検知方式に於いて、間隔が一定して居り、かつ定格流量を超える様な極めて短い間隔で流量パルス信号を感知した場合に、連続して流れ方向のチェックを行い、順方向と逆方向の流れを交互に検知した場合に、水撃現象に起因する無効な流量パルス信号として、積算値から減算する様に論理判断する事を特徴とする請求項1記載の微少漏洩検知方式。
- 請求項1から7に示す微少漏洩検知方式の中、一項乃至複数項を採用した事を特徴とする膜式ガスメータ。
- 開栓時及び供給開始時等の保安点検に際し、加圧後に圧力の減衰を観察するガス漏洩調査に代えて、請求項8の膜式ガスメータに表示される遮断予告を根拠に、メータ以降のガス漏洩の有無を判定する事を特徴とする保安点検の作業方法。
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