JP2011173271A - 複層押出成形装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィードブロック方式の複層押出成形装置として、樹脂同士の流動特性の差や層同士の厚み差が大きい共押出しに適用した場合でも、各層の幅方向の厚みが均一な複層フィルムを確実に安定的に製出し得るものを提供する。
【解決手段】フィードブロック2Aは、単層Tダイ1の押出流路10に直線的に連通する偏平な主流路21と、主流路21に対して同幅で斜めに合流する偏平な副流路22とを備え、主流路21と副流路22との合流部20に、主流路21に対して副流路22側から出退動作して主流路1の流路断面積を厚み方向に拡縮する主流路チョークバー3と、副流路22に対して出退動作して副流路2の流路断面積を厚み方向に拡縮する副流路チョークバー4とが設けられ、主流路チョークバー3と副流路チョークバー4とが共に同一の分割パターンで幅方向に3以上に分割構成され、各チョーク分割片31,41を個別に出退動作させるチョーク操作手段5を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、複層フィルムを共押出によって製造する複層押出成形装置、特に複数の溶融樹脂流を該フィードブロックで合流させ、その合流溶融樹脂を単層Tダイから押し出して複層フィルムを製出するフィードブロック方式の複層押出成形装置に関する。
この種の複層押出成形装置では、例えば図5(a)(b)に示すように、単層Tダイ1の上流側に連結用プレート24を介してフィードブロック2が連結されており、各々溶融押出機(図示省略)から供給される複数(図では3つ)の溶融樹脂流P1〜P3を各々導入口2aよりフィードブロック2内に導入し、該フィードブロック2内で各々偏平な流路25を通して合流させ、その合流溶融樹脂P10を単層Tダイ1の押出流路(マニホールド)10へ送り込み、該単層Tダイ1で幅方向に展開して押出口11から所要幅の複層フィルムFとして押し出す。なお、図示を省略しているが、フィードブロック2の流路25や単層Tダイ1の押出流路10に厚さ調整用のチョークバーを設けることも多い。しかして、このような複層押出成形装置においては、単層Tダイ1とフィードブロック2の組合せを変えることにより、複層フィルムFの樹脂種、層数、フィルム幅、各層の厚み比率等の変更に対応できるという利点がある。
ところで、共押出による複層押出成形では、溶融樹脂流がTダイによって幅方向に展開する行程で、幅方向の位置によって移動距離、流路抵抗、流速分布、温度分布、圧力分布等に違いを生じて層厚に影響するため、製出する複層フィルムFの各層の厚みを均一にすることが普遍的な課題である。この点、マルチマニホールド方式の複層押出成形装置では、Tダイ自体に設けた複数のマニホールドを各々通過した溶融樹脂をチョークバーによって厚み調整した上で合流させるのが一般的であるが、合流から押出口までの距離が短く、且つ合流部から押出口への幅方向の展開が比較的に小さいため、その移動過程での幅方向の変動因子による層厚への影響が少なくなる。そして、幅方向の厚みの均一化についても、一般的に各流路に介在するチョークバーを撓ませて幅方向の間隙調整を行うことで対応できる。また、マルチマニホールド方式において、合流前の流路壁に形成した薄肉部をボルトを介して幅方向複数箇所で押し引きして変位させ、もって幅方向の厚み調整を行う方法も知られている(特許文献1,2)。
しかるに、フィードブロック方式では、図示のようにフィードブロック2の合流部20から単層Tダイ1の押出口11までの距離が長い上、フィードブロック2の流路出口2bから押出口11へ幅方向に通常10倍前後と大きく展開するため、合流部20の手前でチョークバーを介して各流路の厚み調整を行っても、押出口までの移動過程で種々の変動因子による影響を受けて層厚が変わり易く、特に各層の幅方向の厚みを均一にすることが非常に難しくなる。しかも、フィードブロック2の各流路25の幅が狭く、それだけ介在させるチョークバーも短くなるため、これを撓ませて幅方向の間隙調整を行うことは困難である。また、前記マルチマニホールド方式における流路壁の薄肉部を変位させる構成をフィードブロック方式に適用しても、やはり流路幅が狭いため、薄肉部の変位度合及び変位パターンが制約され、幅方向の間隙を大きく複雑に調整できない上、押し引きするボルトに負荷がかかって折損し易くなるという問題もある。
そこで、フィードブロック方式について、フィードブロックの合流域の各流路に幅方向に重なる複数のチョークバーを設け、各チョークバーを独立に移動調整することにより、流路断面形状を単層Tダイから押し出される複層フィルムの幅方向の厚み分布が均一になるように調整する手段が提案されている(特許文献3)。
特開平10−217310号公報 特開平10−235710号公報 特許第2818354号公報
しかしながら、前記従来の提案手段は、流動特性が近似した樹脂同士をほぼ同じ厚みで共押出しする際には有用であるが、樹脂同士の流動特性の差や層同士の厚み差が大きい共押出しに適用した場合に、各層の幅方向の厚みが均一な複層フィルムを製出することは極めて困難であった。とりわけ、近年においては資源リサイクルの観点より、再生ペレットを原料とする主層の片面又は両面をバージン樹脂の表層で覆った形態のリサイクルフィルムの需要が増大しているが、その製造に前記提案手段を用いた場合、フィードブロック内の合流域における各流路の断面形状を前記複数のチョークバーで調整しても、単層Tダイから押し出される各層の幅方向の厚みの均一化に繋がらず、満足な品質のフィルムは得られなかった。
本発明者らは、上述の事情に鑑みて、フィードブロック方式の複層押出成形において、樹脂同士の流動特性の差や層同士の厚み差が大きい共押出しに適用した場合でも、各層の幅方向の厚みが均一な複層フィルムを製出し得る手段を究明すべく、実験研究を重ねる過程で、まず既述の従来手段による問題を生じる要因について様々な角度から検討した。その結果、例えば前記の再生ペレットを原料とする主層を有する複層フィルムの場合、その主層の再生樹脂と表層のバージン樹脂とで溶融状態での流動特性が大きく異なる上、該主層と表層とで厚みの差が大きいことから、フィードブロック内の各流路の断面形状を前記複数のチョークバーによって様々に調整しても、合流部では樹脂流が相互に干渉し合い、特に流量の少ない表層側の樹脂流が乱されることにより、調整した流路断面形状が単層Tダイから押し出される各層の幅方向の厚みにうまく反映せず、幅方向の厚み分布を設定するための充分な指標が得られないことが判明した。
そして、上記知見に基づいて更なる実験研究を重ねた結果、フィードブロック内で特定方向に設定した主流路と複流路との合流部に、主流路及び複流路に幅方向に分割したチョークバーを特定配置で介在させることにより、該合流部における樹脂流の相互干渉を抑えて流れの乱れを防止でき、もって各流路で調整した流路断面形状を単層Tダイから押し出される各層の幅方向の厚みに確実に反映させることが可能となり、これによって樹脂同士の流動特性の差や層同士の厚み差が大きい共押出しに適用した場合でも、幅方向の各層の厚みが均一な高品位の複層フィルムを安定的に製出できることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明の課題解決手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明は、単層Tダイ1の上流側にフィードブロック2A(2B)が連結され、複数の溶融樹脂流P1,P2(P3)をフィードブロック2A(2B)で合流させ、その合流溶融樹脂P10を単層Tダイ1から押し出して複層フィルムFを製出する複層押出成形装置において、フィードブロック2A(2B)は、単層Tダイ1の押出流路10に直線的に連通する偏平な主流路21と、該主流路21に対して同幅で斜めに合流する偏平な副流路22とを備え、該フィードブロック2A(2B)の主流路21と副流路22との合流部20に、主流路21に対して副流路22側から出退動作して当該主流路1の流路断面積を厚み方向に拡縮する主流路チョークバー3と、副流路22に対して出退動作して当該副流路2の流路断面積を厚み方向に拡縮する副流路チョークバー4とが設けられ、主流路チョークバー3と副流路チョークバー4とが共に同一の分割パターンで幅方向に3以上に分割構成され、その各チョーク分割片31,41を個別に出退動作させるチョーク操作手段5を有することを特徴としている。
請求項2の発明は、上記請求項1の複層押出成形装置において、主流路チョークバー3が副流路22に沿って出退動作するように主流路21に対して傾斜配置すると共に、この主流路チョークバー3の外側側面3bが該副流路22の幅方向に沿う片側流路壁を構成してなる。
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の複層押出成形装置において、主流路21に対して複数本の副流路22が合流し、各副流路2の合流部20毎に主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4が配置してなる構成としている。
請求項4の発明は、上記請求項3の複層押出成形装置において、主流路21に対して少なくとも一対の副流路22,22が該主流路21の厚み方向両側から同位置で合流し、その厚み方向両側の合流部20,20に各々対応して主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4が配置してなる構成としている。
請求項5の発明は、上記請求項1〜4の何れかの複層押出成形装置において、フィードブロック2A(2B)の合流部20における主流路21の最小流路断面積が副流路22の最大流路断面積よりも大きく設定されてなるものとしている。
請求項6の発明は、上記請求項1〜5の何れかの複層押出成形装置において、チョーク操作手段5は、各チョーク分割片31,41に内端を固着して外端側がフィードブロック2A(2B)の外側へ突出したねじ軸51と、該ねじ軸51の外端側の雄ねじ部51aに螺合し、フィードブロック2A(2B)に回転可能で且つ軸方向移動不能に保持された雌ねじ筒52とで構成され、該雌ねじ筒52の捻回操作でねじ軸51を軸方向移動するように構成されてなる。
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係る複層押出成形装置では、フィードブロック2A(2B)内の主流路21と副流路22との合流部20に、該主流路1及び副流路2を各々厚み方向に拡縮する主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4が設けられているが、両チョークバー3,4が同一の分割パターンで幅方向に3以上に分割構成され、その各チョーク分割片31,41が個別に出退動作できるから、主流路1側及び副流路2側からそれぞれ合流する溶融樹脂流P1,P2(P3)の厚みを、各チョーク分割片31,41に対応する幅方向の区間毎に増減調整できる。しかして、主流路チョークバー3は主流路21に対して副流路22側から出退動作する構成であり、前記幅方向の区間単位で、副流路チョークバー4によって調整される副流路22側の溶融樹脂流P2(P3)の増減に対応して、主流路21側の溶融樹脂流P1を副流路22側から狭めることができるから、その狭めることで空いた合流部20の空間領域に副流路22側からの溶融樹脂流P2(P3)がそのままスムーズに入り込めて、主流路21側からの溶融樹脂流P1を押し退ける形にはならない。しかも、主流路21が単層Tダイ1の押出流路10に直線的に連通しており、主流路21側からの溶融樹脂流P1は合流部20で狭められても変化せずに一貫して単層Tダイ1の押出流路10へ向かう直線的な流れを維持するから、この溶融樹脂流P1に対して副流路22側からの溶融樹脂流P2(P3)が順流として干渉し合うことなく合流し、以降の合流溶融樹脂P10は合流部20での融樹脂流P1,P2(P3)の乱れのない積層状態を保ったまま単層Tダイ1の押出流路10へ移動してゆく。
従って、この複層押出成形装置によれば、合流部20において主流路21及び副流路22を幅方向の区間単位で調整した流路断面形状が押し出された積層フィルムFの各層の幅方向の厚みに確実に反映するから、該流路断面形状と複層フィルムFの各層の幅方向の厚みプロフィールとの相関より、得られる複層フィルムFの各層の幅方向の厚みが均一になる流路断面形状を容易に且つ確実に見出すことができる。もって、この複層押出成形装置は、樹脂同士の流動特性の差や層同士の厚み差が大きい共押出しに適用した場合でも、幅方向の各層の厚みが均一な高品位の複層フィルムを安定的に製造できる。
請求項2の発明によれば、主流路チョークバー3が主流路21に対して傾斜配置し、その外側側面3bが副流路22の幅方向に沿う片側流路壁を構成するから、常に主流路チョークバー3の先端前方が合流点となり、該チョークバー3にて主流路21が断面調整された位置に副流路22側からの溶融樹脂流P2(P3)がそのまま合流するから、合流部20における流れの相互干渉がより効果的に抑えられると共に、主流路チョークバー3による主流路21の溶融樹脂流P1への抵抗が傾斜配置によって小さくなる。また、一般的にフィードブロック2A(2B)は複数の金型部材を組み合わせて構成するが、副流路22に臨んで金型分離面を設定することにより、簡素で且つ機能的な部材構成に容易に設定できる。
請求項3の発明によれば、主流路21に対して複数本の副流路22が合流し、各副流路2の合流部20毎に主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4が配置するから、3層以上の複層フィルムFとして、各層の幅方向の厚みが均一なものを確実に且つ安定的に製造できる。
請求項4の発明によれば、主流路21の同位置に厚み方向両側から副流路22,22が合流し、その両側の合流部20,20に各々対応して主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4が配置するから、主流路21を同位置で両側から主流路チョークバー3によって絞る形で空いた両側の空間領域に、両側の副流路22,22から溶融樹脂流P2,P3を同時に乱れなくスムーズに合流させ、もって3層以上の各層の厚みが均一な高品位の複層フィルムFを確実に得ることができると共に、3層以上の複層押出に適用するフィードブロック2Aを機能的でコンパクトに構成できる。
請求項5の発明によれば、フィードブロック2A(2B)の合流部20における主流路21の最小流路断面積が副流路22の最大流路断面積よりも大きいため、副流路22側からの溶融樹脂流P2は主流路21側からの溶融樹脂流P1よりも流量が少なくなって本来は乱され易いが、上記の両流路21,22と両チョークバー3,4の配置構成によって乱れが確実に抑えられ、もって主層に対して薄い副層が積層した複層フィルムとして高品位のものを安定的に製造できる。
請求項6の発明によれば、チョーク操作手段5の構成が簡素で且つ機能的であるから、主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4の各チョーク分割片31,41の出退調整を容易に確実に行えると共に、フィードブロック2A(2B)が構造簡単になる。
本発明の第一実施形態に係る複層押出成形装置のフィードブロックを示し、(a)は背面図、(b)は側面図、(c)は連結用プレートを取り外した状態での正面図である。 同フィードブロックの縦断側面図である。 図2のX−X線における上半部の断面矢視図である。 本発明の第二実施形態に係る複層押出成形装置のフィードブロックの縦断側面図である。 フィードブロック方式の複層押出成形装置を概略的に示し、(a)は横断平面図、(b)は(a)のY−Y線の縦断側面図である。
以下に、本発明に係る複層押出成形装置の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、この複層押出成形装置は、既述した図5で示す一般的なフィードブロック方式の複層押出成形装置と同様に単層Tダイの上流側にフィードブロックが連結された基本構造を有するから、図5での図示と共通する構成要素については同一符号を附してその説明を省略する。
第一実施形態の複層押出成形装置は、例えば再生ペレットを原料とする主層の両面をバージン樹脂からなる薄い表層で被覆したリサイクルフィルムのような3層構造の複層フィルムの製造に適用するために、図1〜図3で示す構成のフィードブロック2Aを備えるものである。
このフィードブロック2Aは、単層Tダイ1の押出流路10に直線的に連通する中央の主流路21と、該主流路21に対して厚み方向両側から同位置で斜めに合流する一対の副流路22,22とを備えており、図示省略した溶融押出機から供給される溶融樹脂流P1〜P3をそれぞれ、外面に設けた円形の導入口2aより前段展開部2cを経て偏平な各流路21,22,22へ導入するようになっている。また、主流路21と両副流路22,22は同幅の偏平な形状であるが、主流路21は各副流路22よりも厚み方向に広く流路断面積が大きく設定されている。
そして、フィードブロック2Aには、主流路21と両副流路22,22との両側の合流部20,20にそれぞれ、主流路21に対して副流路22側から出退動作して当該主流路1の流路断面積を厚み方向に拡縮する主流路チョークバー3と、副流路22に対して出退動作して当該副流路2の流路断面積を厚み方向に拡縮する副流路チョークバー4とが設けられている。その主流路チョークバー3は、出退方向に長い形状で副流路22に沿うように主流路21に対して傾斜配置しており、主流路21に臨む先端面3aが流路方向と平行になると共に、外側側面3bが副流路22の幅方向に沿う片側流路壁22aを構成している。一方、副流路チョークバー4は、短い形状で主流路21に対して垂直な出退方向に配置しており、副流路22に臨む先端面4aが流路方向と平行になっている。また、合流部20における主流路21の最小流路断面積は副流路22の最大流路断面積よりも大きくなっている。
ここで、主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4は、図3に示すように、互いに同一の分割パターンで流路幅方向に5つに等分割されており、その各チョーク分割片31,41がチョーク操作手段5によって個別に出退動作できるようになっている。しかして、両チョークバー3,4における隣接するチョーク分割片31,31同士、ならびにチョーク分割片41,41同士は、相互の側面がメタルタッチで直接に接触している。
各チョーク分割片31,41を出退動作させるチョーク操作手段5は、各チョーク分割片31,41に内端を固着して外端側がフィードブロック2Aの外側へ突出したねじ軸51と、該ねじ軸51の外端側の雄ねじ部51aに螺合した雌ねじ筒52とで構成されている。そして、雌ねじ筒52は、フィードブロック2Aに固着された押さえバー26によって内端の径大部52aが抜け止めされ、もって該フィードブロック2Aに回転可能で且つ軸方向移動不能に保持されており、その捻回操作でねじ軸51がチョーク分割片31,41と一体に軸方向移動するようになっている。
フィードブロック2Aの前端の導出口2aは周囲が凸部28を形成しており、該凸部28を連結用プレート24の後面の凹陥部24bに嵌合すると共に、該連結用プレート24の前面の凸部24aを単層Tダイ1の後端の凹陥部1aに嵌合し、フィードブロック2Aと単層Tダイ1とを該連結用プレート24を介して連結一体化することにより、導出口2aがに連通接続する。なお、図1及び図2で示す27は、フィードブロック2Aの後端に固着された円板状の口金部材であり、主流路21の導入口2aを構成している。
上記構成の複層押出成形装置では、主流路21に導入された溶融樹脂流P1に対し、該主流路21の同位置における厚み方向両側の合流部20,20で、両側の副流路22,22から溶融樹脂流P2,P3が合流し、合流溶融樹脂流P10として単層Tダイ1の押出流路10へ送り込まれ、該単層Tダイ1で幅方向に展開されて押出口11より所要幅の3層の複層フィルムFとして押し出される。このとき、フィードブロック2A内の主流路21と各副流路22との各合流部20に、幅方向に同じ分割パターンで分割構成された主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4とが設けられているから、その各チョーク分割片31,41を個別に出退動作することにより、主流路1側及び副流路2側からそれぞれ合流する溶融樹脂流P1〜P3の厚みを、各チョーク分割片31,41に対応する幅方向の区間毎に増減調整できる。
しかして、各合流部20においては、主流路チョークバー3は主流路21に対して副流路22側から出退動作するから、前記幅方向の区間単位で、副流路チョークバー4によって調整される副流路22側の溶融樹脂流P2又はP3の増減に対応して、主流路21側の溶融樹脂流P1を副流路22側から狭めることができ、その狭めることで空いた合流部20の空間領域に副流路22側からの溶融樹脂流P2又はP3がそのままスムーズに入り込めるので、主流路21側からの溶融樹脂流P1を押し退ける形にはならない。しかも、主流路21が単層Tダイ1の押出流路10に直線的に連通しており、主流路21側からの溶融樹脂流P1は合流部20で狭められても変化せずに一貫して単層Tダイ1の押出流路10へ向かう直線的な流れを維持するから、この溶融樹脂流P1の流れに対して両副流路22,22側からの溶融樹脂流P2,P3が順流として干渉し合うことなく合流し、以降の合流溶融樹脂P10は合流部20,20での融樹脂流P1〜P3の乱れのない積層状態を保ったまま単層Tダイ1の押出流路10へ移動してゆく。
従って、この複層押出成形装置によれば、樹脂同士の流動特性の差や層同士の厚み差が大きい共押出しに適用した場合でも、両合流部20,20において主流路21及び両副流路22,22を幅方向の区間単位で調整した流路断面形状が、押し出された積層フィルムFの各層の幅方向の厚みに確実に反映することになる。そこで、設定した該流路断面形状と複層フィルムFの各層の幅方向の厚みプロフィールとの相関から、得られる複層フィルムFの各層の幅方向の厚みが均一になる流路断面形状を容易に且つ確実に見出すことができ、その見出された最適な流路断面形状を維持することにより、以降は幅方向の各層の厚みが均一な高品位の複層フィルムFを安定的に連続して製造できる。
図3の仮想線は流路断面形状の調整例を示している。この場合、主流路チョークバー3の各チョーク分割片31の突出量を流路幅方向の中央側のものほど大きくし、もって主流路21の流路断面形状を流路幅方向の中空側ほど狭める一方、副流路チョークバー4の各チョーク分割片41の突出量を流路幅方向の中央側のものほど小さくし、もって副流路22の流路断面形状を流路幅方向の中空側ほど拡げる形にしている。なお、主流路21と副流路22の流路幅方向の各位置における拡縮の関係は、図3の仮想線による例示の如く概してチョーク分割片31,41の幅単位で一方側を狭めて他方側を拡げる形になるが、相互の流路断面の拡縮量は必ずしも一致しない。これは、溶融樹脂流P1,P2の流動特性及び供給圧力の違いや、両流路21,22間での流路幅方向の流路抵抗及び温度分布の差等により、製出する複層フィルムFの各層の幅方向の厚みが影響を受けることによる。
上記第一実施形態では主層の両側に薄い表層を備える3層構造の複層フィルムFの押出成形に適用する構成を例示したが、本発明の複層押出成形装置は、フィードブロックの流路設定によって2層構造又は4層以上の多層の複層フィルムFの押出成形にも支障なく適用できる。
図4に示すフィードブロック2Bは、第二実施形態として主層の片側に薄い表層を備えた2層構造の複層フィルムFを押出成形する複層押出成形装置に用いるもので、前記第一実施形態のフィードブロック2Aにおける片側の副流路22を除いた形態であり、単層Tダイ1の押出流路10に直線的に連通する主流路21と、該主流路21に対して片側から斜めに合流する副流路22とを備えている。そして、主流路21と副流路22との合流部20には、第一実施形態と同様に、主流路21に対して副流路22側から出退動作する主流路チョークバー3と、副流路22に対して出退動作する副流路チョークバー4とが設けられている。これら両チョークバー3,4は、第一実施形態と同様に、互いに同一の分割パターンで流路幅方向に5つに等分割されており、その各チョーク分割片31,41がチョーク操作手段5によって個別に出退動作できるようになっている(図3参照)。また、合流部20における主流路21の最小流路断面積は副流路22の最大流路断面積よりも大きくなっている。
この第二実施形態の複層押出成形装置では、主流路21に導入された溶融樹脂流P1に対し、合流部20で副流路22溶融樹脂流P2が合流し、合流溶融樹脂流P10として単層Tダイ1の押出流路10へ送り込まれ、該単層Tダイ1で幅方向に展開されて押出口11より所要幅の2層の複層フィルムFとして押し出される。このとき、フィードブロック2B内の合流部20において、主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4の各チョーク分割片31,41を個別に出退動作することにより、主流路1側及び副流路2側からそれぞれ合流する溶融樹脂流P1,P2の厚みを、各チョーク分割片31,41に対応する幅方向の区間毎に増減調整できる。そして、主流路チョークバー3は主流路21に対して副流路22側から出退動作するから、前記幅方向の区間単位で、副流路チョークバー4によって調整される副流路22側の溶融樹脂流P2の増減に対応して、主流路21側の溶融樹脂流P1を副流路22側から狭めることで空いた空間領域に副流路22側からの溶融樹脂流P2がスムーズに入り込めると共に、主流路21側からの溶融樹脂流P1は一貫して単層Tダイ1の押出流路10へ向かう直線的な流れを維持するから、この溶融樹脂流P1に対して溶融樹脂流P2が順流として干渉し合うことなく合流し、以降の合流溶融樹脂P10は乱れのない積層状態で単層Tダイ1の押出流路10へ移動してゆく。
従って、この第二実施形態の複層押出成形装置においても、合流部20において主流路21及び副流路22を幅方向の区間単位で調整した流路断面形状が、押し出された積層フィルムFの各層の幅方向の厚みに確実に反映することになり、設定した該流路断面形状と複層フィルムFの各層の幅方向の厚みプロフィールとの相関から、得られる複層フィルムFの各層の幅方向の厚みが均一になる流路断面形状を容易に且つ確実に見出すことができ、以降は最適な流路断面形状を固定化して幅方向の各層の厚みが均一な高品位の複層フィルムFを安定的に連続して製造できる。
本発明の複層押出成形装置においては、フィードブロックにおける主流路21に対して複数本の副流路22を合流させる構成において、各合流部を主流路21における流路方向の異なる位置に設定してもよい。この場合でも、各副流路2の合流部20毎に前記分割構成の主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4を第二実施形態の如く配置することにより、3層以上の複層フィルムFとして、各層の幅方向の厚みが均一なものを確実に且つ安定的に製造することが可能となる。ただし、3層以上の多層の複層フィルムの押出成形では、一対あるいは複数対の副流路22,22を第一実施形態のように主流路21に対して厚み方向両側から同位置で斜めに合流する形にすることにより、フィードブロックをコンパクトに機能的に構成できるという利点がある。
主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4は、第一及び第二実施形態では5つに等分割しているが、その分割数及び分割パターンは種々変更可能である。ただし、分割数については、副層フィルムの幅方向中央部と両側部との厚みプロフィールを設定する上で3分割以上にする必要がある。また、主流路チョークバー3と副流路チョークバー4の分割は、幅方向の分割区間単位で合流部20の流路断面形状と副層フィルムの厚みプロフィールとの相関を検出する必要から、同一パターンに設定する必要がある。
なお、第一及び第二実施形態のように、主流路21に対して傾斜配置した主流路チョークバー3の片側側面3bが副流路22の片側流路壁をなす構造では、この主流路チョークバー3の先端前方が合流点となり、該チョークバー3にて主流路21が断面調整された位置に副流路22側からの溶融樹脂流P2又はP3がそのまま合流し、合流部20における流れの相互干渉がより効果的に抑えられると共に、主流路チョークバー3による主流路21の溶融樹脂流P1への抵抗が傾斜配置によって小さくなるという利点がある。また、一般的にフィードブロックは複数の金型部材を組み合わせて構成するが、実施形態の構造では、副流路22に臨んで金型分離面を設定することにより、簡素で且つ機能的な部材構成に容易に設定できるという利点もある。
更に、第一及び第二実施形態のように、フィードブロック2A,2Bの合流部20における主流路21の最小流路断面積は副流路22の最大流路断面積よりも大きい場合、副流路22側からの溶融樹脂流P2は主流路21側からの溶融樹脂流P1よりも流量が少なくなって本来は乱され易いが、上記の両流路21,22と両チョークバー3,4の配置構成によって乱れが確実に抑えられるから、主層に対して薄い副層が積層した複層フィルムとして高品位のものを安定的に製造できる。
一方、チョーク操作手段5については、実施形態で例示した以外の種々の構造を採用できるが、実施形態のように各チョーク分割片31,41に内端を固着して外端側がフィードブロック2Aの外側へ突出したねじ軸51と、該ねじ軸51の外端側の雄ねじ部51aに螺合した雌ねじ筒52とで構成すれば、主流路チョークバー3及び副流路チョークバー4の各チョーク分割片31,41の出退調整を容易に確実に行えると共に、フィードブロック2が構造簡単になる。
また、チョーク操作手段5として、その操作を機械的に制御してμm単位の微量調整を可能にする構成としてもよい。例えば、実施形態で例示した雌ねじ筒52の回転をギヤ機構等を介して機械的に精密に駆動制御したり、チョーク分割片31,41に連結した押し軸に伝熱するヒーターを設け、該ヒーターの加熱による押し軸の熱膨張の度合でチョーク分割片31,41の進退量を微量調整することも可能である。
その他、本発明の複層押出成形装置では、フィードブロックと単層Tダイとの連結構造、フィードブロックにおける各流路の導入口の配置、フィードブロック及び単層Tダイの細部構成等について、実施形態以外に種々設計変更可能である。
本発明の複層押出成形装置は、単一のフィードブロックにより、各層の厚み比率及び樹脂材料が異なる複層フィルムついて、いずれも各層の幅方向の厚みが均一な高品位なものを安定的に押出成形できるから、同じフィードブロックと単層Tダイの組合せでも複数種の複層フィルム製品の製造に利用可能であるが、その組合せを変えることで更にフィルムの幅と総厚、層数、各層の厚み等が種々異なる多品種の複層フィルム製品の製造に対応できる。また、単一品種で量産が必要な複層フィルムについては、本発明の複層押出成形装置をパイロット装置として利用し、これによって判明したフィードブロックの合流部における最適な流路断面形状から、チョーク分割片31,41の隣接部の段差を均す形で非分割形態の主流路チョークバー及び副流路チョークバーを設計製作し、これら非分割形態のチョークバーを合流部に同様に組み込んだフィードブロックを用いて工業規模の量産を行うこともできる。
1 単層Tダイ
10 押出流路
11 押出口
2A,2B フィードブロック
20 合流部
21 主流路
22 副流路
3 主流路チョークバー
3b 外側側面
31 チョーク分割片
4 副流路チョークバー
41 チョーク分割片
5 チョーク操作手段
51 ねじ軸
52 雌ねじ筒
F 複層フィルム
P1〜P3 溶融樹脂流
P10 合流溶融樹脂流

Claims (6)

  1. 単層Tダイの上流側にフィードブロックが連結され、複数の溶融樹脂流をフィードブロックで合流させ、その合流溶融樹脂を単層Tダイから押し出して複層フィルムを製出する複層押出成形装置において、
    前記フィードブロックは、単層Tダイの押出流路に直線的に連通する偏平な主流路と、該主流路に対して同幅で斜めに合流する偏平な副流路とを備え、
    該フィードブロックの前記主流路と副流路との合流部に、主流路に対して副流路側から出退動作して当該主流路の流路断面積を厚み方向に拡縮する主流路チョークバーと、副流路に対して出退動作して当該副流路の流路断面積を厚み方向に拡縮する副流路チョークバーとが設けられ、
    前記主流路チョークバーと副流路チョークバーとが共に同一の分割パターンで幅方向に3以上に分割構成され、その各チョーク分割片を個別に出退動作させるチョーク操作手段を有することを特徴とする複層押出成形装置。
  2. 前記主流路チョークバーが副流路に沿って出退動作するように主流路に対して傾斜配置すると共に、この主流路チョークバーの外側側面が該副流路の幅方向に沿う片側流路壁を構成してなる請求項1に記載の複層押出成形装置。
  3. 前記主流路に対して複数本の副流路が合流し、各副流路の合流部毎に前記主流路チョークバー及び副流路チョークバーが配置してなる請求項1又は2に記載の複層押出成形装置。
  4. 前記主流路に対して少なくとも一対の副流路が該主流路の厚み方向両側から同位置で合流し、その厚み方向両側の合流部に各々対応して前記主流路チョークバー及び副流路チョークバーが配置してなる請求項3に記載の複層押出成形装置。
  5. 前記フィードブロックの合流部における主流路の最小流路断面積が副流路の最大流路断面積よりも大きく設定されてなる請求項1〜4の何れかに記載の複層押出成形装置。
  6. 前記チョーク操作手段は、前記各チョーク分割片に内端を固着して外端側がフィードブロックの外側へ突出したねじ軸と、該ねじ軸の外端側の雄ねじ部に螺合し、フィードブロックに回転可能で且つ軸方向移動不能に保持された雌ねじ筒とで構成され、該雌ねじ筒の捻回操作で前記ねじ軸を軸方向移動するように構成されてなる請求項1〜5の何れかに記載の複層押出成形装置。
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