JP2011162685A - 紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】発泡絶縁層の発泡度のバラツキを抑制でき、しかも生産性が高い紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法を提供する。
【解決手段】紫外線硬化樹脂組成物中にガスを溶解させた後に、この組成物を導体3上に塗布し、紫外線を照射し、樹脂が硬化する際のガスの溶解度の低下によって気泡4を成長させながら硬化することで気泡を形成し、発泡絶縁層5を形成する方法である。
【選択図】図1
【解決手段】紫外線硬化樹脂組成物中にガスを溶解させた後に、この組成物を導体3上に塗布し、紫外線を照射し、樹脂が硬化する際のガスの溶解度の低下によって気泡4を成長させながら硬化することで気泡を形成し、発泡絶縁層5を形成する方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、情報機器等に用いられる紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法に関するものである。
情報機器においては、伝送信号の高速化が進んでおり、これに使用する電線は低誘電率性を重視し、ポリエチレンやふっ素樹脂を押出し発泡成形した発泡絶縁体を用いた発泡電線が用いられている。
近年、機器の小型化や高密度化が一層進み、機器に使用する電線は、例えば外径0.3mm以下のものが必要になってきている。この細径電線を押出し発泡成形で製造することが技術的に難しくなってきているため、特許文献1〜8に示されるように、導体上に気体や発泡剤を含む紫外線硬化樹脂を塗布、紫外線硬化して発泡電線を製造する方法が提案されている。また、特許文献9〜11では、微細発泡を形成する方法が提案されている。
成形加工シンポジア’08、p.115−116
しかしながら、特許文献1〜8の方法は、高速に、効率良く発泡絶縁層(絶縁体層)を形成する方式としては優れた方法であるが、気泡を成長させながら、発泡絶縁層を形成していくプロセスであり、気泡の成長度合いをコントロールすることが困難であり、発泡度(気泡と樹脂の割合)にバラツキが生じ易い欠点があった。なお、発泡絶縁層の発泡度にバラツキが生じた場合は発泡絶縁層の誘電率にバラツキが生じ、発泡電線の伝送特性にバラツキが生じ、信号の遅延が生じるという問題が発生する。
特許文献9の方法は、光照射で酸が発生することで分解する化合物を含むポリマを用いて微細発泡を作製する方法であり、酸が発生し導体である金属を腐食させるため、電線の絶縁体層に用いることはできない。
また、特許文献10,11では、キャストフィルム作製時に加湿状態で有機溶媒を除去しフィルムを形成することで多孔質膜を作る方法が提案されているが、この方法では製造に時間がかかり、電線の製造に適用するには問題がある。
そこで、本発明の目的は、発泡絶縁層の発泡度のバラツキを抑制でき、しかも生産性が高い紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、紫外線硬化樹脂組成物中にガスを溶解させた後に、この組成物を導体上に塗布し、紫外線を照射し、樹脂が硬化する際のガスの溶解度の低下によって気泡を成長させながら硬化することで気泡を形成し、発泡絶縁層を形成する紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法である。
請求項2の発明は、前記ガスが炭酸ガスである請求項1に記載の紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法である。
請求項3の発明は、前記ガスは、加圧により前記紫外線硬化樹脂組成物中に溶解させ、その後常圧に戻す請求項1又は2に記載の紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法である。
請求項4の発明は、導線の外周に、紫外線硬化樹脂組成物を発泡させて得られる発泡絶縁層が設けられた紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法であって、前記紫外線硬化樹脂組成物を加圧してガスを溶解させる工程と、前記紫外線硬化樹脂組成物を常圧に戻す工程と、前記紫外線硬化樹脂組成物を導線に塗布する工程と、前記紫外線硬化樹脂組成物を塗布した前記導線に紫外線を照射する工程とを含む紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法である。
本発明によれば、発泡絶縁層の発泡度のバラツキを抑制でき、しかも生産性が高い紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の紫外線架橋発泡絶縁電線の一例を示す断面図である。
図1に示すように、紫外線架橋発泡絶縁電線1は、複数本の素線2を撚り合わせてなる導体3の外周に、微細な気泡4が多数存在する発泡絶縁層(絶縁体層)5が形成されたものである。
導体3を構成する素線2は、銅、アルミニウム、鉄、銀等の金属単体あるいは合金からなる。本実施の形態においては、導体3を撚り線としたが、単線であってもよい。
発泡絶縁層5は、重合性オリゴマ、重合性モノマ、架橋開始剤を主に含む紫外線硬化樹脂組成物で構成される。
ここで、重合性オリゴマとは、例えばエポキシアクリレート系オリゴマ、エポキシ化油アクリレート系オリゴマ、ウレタンアクリレート系オリゴマ、ポリエステルウレタンアクリレート系オリゴマ、ポリエーテルウレタンアクリレート系オリゴマ、ポリエステルアクリレート系オリゴマ、ポリエーテルアクリレート系オリゴマ、ビニルアクリレート系オリゴマ、シリコーンアクリレート系オリゴマ、ポリブタジエンアクリレート系オリゴマ、ポリスチレンエチルメタアクリレート系オリゴマ、ポリカーボネートジカルボネート系オリゴマ、不飽和ポリエステル系オリゴマ、ポリエン/チオール系オリゴマ等の不飽和結合を有する官能基、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリル基、ビニル基等を2個以上有するものである。これらのものは一部の元素をふっ素置換したものでもよい。また、これらの重合性オリゴマは単独若しくはブレンドして使用することができる。
本実施の形態において重合性モノマとは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリル基、ビニル基等を2個以上有する重合性モノマである。
本実施の形態において架橋開始剤とは、光により分解してフリーラジカルを生成し、そのフリーラジカルが重合性オリゴマ、重合性モノマの硬化を開始させる機能を有するものである。
このような架橋開始剤としては、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等がある。
本発明においてはこの他に下記のような配合物を必要に応じて適宜配合することができる。即ち、このような配合物としては、開始助剤、接着防止剤、チクソ付与剤、充填剤、可塑剤、非反応性ポリマ、着色剤、難燃剤、難燃助剤、軟化防止剤、離型剤、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、沈殿防止剤、増粘剤、帯電防止剤、静電防止剤、防かび剤、防鼠剤、防蟻剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、皮張り防止剤、界面活性剤等がある。
次に、紫外線架橋発泡絶縁電線1の製造方法を説明する。
図2は、紫外線架橋発泡絶縁電線1の製造に用いる塗布硬化装置を示す模式図である。
図2に示すように、塗布硬化装置10は、導線3が巻き付けられた導体送出し機11と、導体送出し機11から送り出された導体3の外周に上述の紫外線硬化樹脂組成物を塗布する塗布ダイス12と、塗布ダイス12で塗布された紫外線硬化樹脂組成物に紫外線を照射する紫外線照射源としての紫外線照射ランプ13と、紫外線照射ランプ13により紫外線硬化樹脂組成物が硬化された紫外線架橋発泡絶縁電線1を引き取る電線引取り機14とを備える。紫外線照射ランプ13としては、低圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用いるとよい。
先ず、紫外線硬化樹脂組成物を圧力容器に入れ、この紫外線硬化樹脂組成物に炭酸ガスを加圧により溶解させた後常圧に戻し、これを塗布硬化装置10の塗布ダイス12にセットする。
その後、導体3を導体送出し機11から送り出して塗布ダイス12を通過させ、導体3上に炭酸ガスを溶解させた紫外線硬化樹脂組成物を塗布する。紫外線硬化樹脂組成物を塗布された導体3は、次いで紫外線照射ランプ13によって紫外線を照射され、紫外線硬化樹脂組成物が硬化する。
このとき、紫外線硬化樹脂組成物が硬化する際のガスの溶解度の低下によって気泡4を成長させながら硬化されて微細気泡が形成される。これにより、導体3の外周に発泡絶縁層5が形成され、紫外線架橋発泡絶縁電線1が得られる。
このように、本発明に係る紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法では、導体3上に塗布される紫外線硬化樹脂組成物は発泡しておらず、塗布後の紫外線照射により発泡され、それと同時に紫外線硬化樹脂組成物が硬化されて薄肉でありながら発泡度が高い発泡絶縁層5となる。そのため、発泡絶縁層5からのガス抜けがなく、均一に気泡4が分散された発泡絶縁層5が得られる。
また、本発明に係る紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法では、導体3上に紫外線硬化樹脂組成物を塗布し、これに紫外線を照射するだけで紫外線架橋発泡絶縁電線1を製造でき、生産性が顕著に高いものであり、工業上有用である。
なお、非特許文献1には、高効率に気泡を発生、成長、制御する方法が提案されており、本発明はこの技術を応用し、紫外線架橋発泡絶縁電線を製造する方法を提案したものである。
非特許文献1では、ポリスチレン(PS)に紫外線(UV)硬化モノマを添加し、二酸化炭素(CO2)を溶解させている。この系の材料組成では、電線の絶縁体層のような、曲げのストレス等を受ける部品への適用は困難であるため、本発明では伸び等が優れたウレタンアクリレート系等の材料を用いている。
非特許文献1の方法によりフィルムを作製することは可能であるが、電線に被覆することは難しい。本発明では、発泡効率の向上と電線への連続被覆性を考慮した塗布硬化装置10を用いている。
また、非特許文献1の方法では、加圧から減圧させ、減圧発泡を行ったものに、さらに紫外線を照射し、新たな気泡を形成している。これに対し、本発明では、加圧により炭酸ガスを溶解させたものを常圧に戻して、未発泡の状態で導線3に塗布することとなる。電線の絶縁体層のような、連続して塗布、発泡を行うようなプロセスでは、発泡した液を塗布することは、発泡度や発泡粒径、絶縁体層の膜厚を制御することが困難となる。そのため、非特許文献1では塗布工程と発泡工程を一緒に実施しているのに対し、本発明では塗布工程と発泡工程とを分離している。
本発明の紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法の実施例を説明する。
重合性オリゴマとしてウレタンアクリレート系オリゴマ80.0質量部、重合性モノマとしてアクリロイル基を有するモノマ20.0質量部、架橋開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア(登録商標)184 チバスペシャリティケミカルズ製)2質量部からなる紫外線硬化樹脂組成物を得た。
次いで、この紫外線硬化樹脂組成物を圧力容器に入れ、炭酸ガスを10MPaの圧力をかけて溶解させた。炭酸ガスの溶解した紫外線硬化樹脂組成物を常圧に戻し、図2で説明したような、導体送出し機11、塗布ダイス12、紫外線照射ランプ13(メタルハライドランプ 1kW)、電線引取り機14(引取り速度60m/分)からなる塗布硬化装置10を用いて紫外線架橋発泡絶縁電線1を製造した。ここで、導体3として25μm径の銅線7本からなる撚り線を用い、厚さ40μmの発泡絶縁層5を有する紫外線架橋発泡絶縁電線1を得た。得られた紫外線架橋発泡絶縁電線1の発泡絶縁層5では、平均粒径10μm(断面を切断後にSEM:走査型顕微鏡により測定)の気泡4が全絶縁体層の体積中で60%を有しており、気泡4が均一に形成されていた。
このように、本発明の紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法によれば、発泡絶縁層5における発泡度のバラツキを抑制でき、均一な特性の紫外線架橋発泡絶縁電線1が得られる。
1 紫外線架橋発泡絶縁電線
3 導体
4 気泡
5 発泡絶縁層
3 導体
4 気泡
5 発泡絶縁層
Claims (4)
- 紫外線硬化樹脂組成物中にガスを溶解させた後に、この組成物を導体上に塗布し、紫外線を照射し、樹脂が硬化する際のガスの溶解度の低下によって気泡を成長させながら硬化することで気泡を形成し、発泡絶縁層を形成することを特徴とする紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法。
- 前記ガスが炭酸ガスである請求項1に記載の紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法。
- 前記ガスは、加圧により前記紫外線硬化樹脂組成物中に溶解させ、その後常圧に戻す請求項1又は2に記載の紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法。
- 導線の外周に、紫外線硬化樹脂組成物を発泡させて得られる発泡絶縁層が設けられた紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法であって、
前記紫外線硬化樹脂組成物を加圧してガスを溶解させる工程と、
前記紫外線硬化樹脂組成物を常圧に戻す工程と、
前記紫外線硬化樹脂組成物を導線に塗布する工程と、
前記紫外線硬化樹脂組成物を塗布した前記導線に紫外線を照射する工程とを含むことを特徴とする紫外線架橋発泡絶縁電線の製造方法。
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