JP2011162583A - 透明難燃熱可塑性樹脂組成物および樹脂成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明性、靱性、表面硬度、難燃性に優れた透明難燃熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】芳香族ビニル化合物に由来する構造単位とシアン化ビニル化合物に由来する構造単位を所定割合で含有する共重合体Aと、ゴム質重合体の存在下にグラフト重合して得られ、マトリックス成分の芳香族ビニル化合物に由来する構造単位、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位を所定割合で含有する共重合体Bと、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位、(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な単量体に由来する構造単位を所定割合で含有する重合体Cと、所定の難燃剤Dと、ポリテトラフルオロエチレンEとを所定割合で含有し、厚さ2.4mmの樹脂単独成形品について測定した全光線透過率が55%以上であり、UL94試験による難燃性がV−2規格に合格する透明難燃熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明難燃熱可塑性樹脂組成物および樹脂成形品に関する。
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)に代表される、ゴム強化スチレン系樹脂は、成形性、機械的強度に優れており、電気製品、OA機器、事務機器などの用途に広く使用されている。ところが、ABS樹脂は難燃性が高くなく、難燃性が要求される分野では、難燃剤、難燃助剤などを配合した難燃ABS樹脂組成物が一般に使用されている。
近年、デザイン上の要求として、透明性、及びそれに関係の深い着色性向上の要求が増えてきている。ところが、通常、ABS樹脂は不透明であり、ABS樹脂に難燃剤を配合した難燃性ABS樹脂組成物も当然不透明である。また、透明用途で従来使用されている透明ABS樹脂に、単純に難燃剤を配合した場合は、難燃性は得られるものの、透明性が損なわれる。そのため、特定の構成を有する樹脂組成物に、特定の構造を有する難燃剤を配合した難燃樹脂組成物が知られている(例えば特許文献1)。
しかしながら、上記の難燃樹脂組成物は、耐傷付性が充分とはいえないため、成形品の組み立てラインへの輸送、製品の市場への郵送などに際しては、特別の梱包材を使用する、個別に包装する、速度を落とす等、多大な手間とコストが必要となる場合がある。
従来、表面硬度を改良して耐傷付性を付与する手段として、樹脂組成物の一成分として(メタ)アクリレート樹脂を使用する方法が知られている。具体的には、耐傷付性と意匠性に優れ且つ耐衝撃性を付与した熱可塑性樹脂組成物として、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる単量体を共重合して成る共重合体と、ゴム強化スチレン系樹脂とメタクリル酸メチル単量体およびアクリル酸メチル単量体を共重合して成る共重合体とを配合して成る樹脂組成物が知られている(例えば特許文献2及び3)。
しかしながら、上記難燃樹脂組成物に(メタ)アクリレート樹脂を配合するだけでは、表面硬度は改良されるものの、透明性の低下を招くことがあり、また、難燃性が低下し、耐衝撃性が不十分な場合がある。
特開2000−344993号公報 特開2008−291158号公報 特開2009−67970号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、難燃性、透明性、耐傷付性、耐衝撃性に優れた透明難燃熱可塑性樹脂組成物、及びその樹脂成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)とメチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)とメチルメタクリレート樹脂(MMA樹脂)と難燃剤とポリテトラフルオロエチレンとで樹脂組成物を調整し、この際、使用するAS樹脂およびMABS樹脂のアクリロニトリル(AN)成分の含有量を特定範囲に調節し、ポリテトラフルオロエチレンの配合量を特定範囲とすることによって、意外にも、透明性、耐傷付性、耐衝撃性に優れた、溶融滴下性の難燃熱可塑性樹脂組成物を得ることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明の第1の要旨は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位64〜84質量%とシアン化ビニル化合物に由来する構造単位16〜36質量%を含有する共重合体A(但し、これら2つの構造単位の含有量の合計を100質量%とする)と、ゴム質重合体の存在下にグラフト重合して得られ、マトリックス成分の芳香族ビニル化合物に由来する構造単位1〜55質量%、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位0〜36質量%、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位45〜90質量%を含有する共重合体B(但し、これら3つの構造単位の含有量の合計を100質量%とする)と、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位70〜100質量%、(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な単量体に由来する構造単位0〜30質量%を含有する重合体C(但し、これら2つの構造単位の含有量の合計を100質量%とする)と、有機ハロゲン化合物および/または有機リン系化合物からなる難燃剤Dと、ポリテトラフルオロエチレンEとを含有し、A/B/C/Dの割合が5〜55/10〜50/10〜50/3〜25(質量比)であり、共重合体A、B、C及び難燃剤Dの含有量の合計100質量部に対するポリテトラフルオロエチレンEの割合が0.005〜0.1質量部であり、厚さ2.4mmの樹脂単独成形品について測定した全光線透過率が55%以上であり、UL94試験による難燃性がV−2規格に合格することを特徴とする透明難燃熱可塑性樹脂組成物に存する。
そして、本発明の第2の要旨は、上記の透明難燃熱可塑性樹脂組成物から成ることを特徴とする樹脂成形品に存する。
本発明により、難燃性、透明性、耐傷付性、耐衝撃性に優れた透明難燃熱可塑性樹脂組成物、及びその熱可塑性樹脂成形品が提供される。
図1は、本発明の樹脂組成物に一層高度な透明性を付与する観点から決定された、共重合体A中のシアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有量(質量%):AN(A)と共重合体B中のシアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有量(質量%):AN(B)との好ましい関係を示すグラフであり、横軸はAN(A)の質量%、縦軸はAN(B)の質量%を表す。
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。本発明の透明難燃性熱可塑性樹脂組成物を単に「樹脂組成物」と略記する。また、便宜上、共重合体体中の各「単量体に由来する構造単位」を単に「単量体」として表現することがある。
本発明で使用する共重合体Aは、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を含有する単量体組成物(A)を重合して得られる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、これらは二種以上を併用してもよい。これらの中ではスチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。一方、シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等が挙げられ、これらの中ではアクリロニトリルが好ましい。
共重合体Aの芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量は、64〜84質量%、好ましくは67〜82質量%、更に好ましくは70〜80質量%であり、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有量は、16〜36質量%、好ましくは18〜33質量%、更に好ましくは20〜30質量%、特に好ましくは21〜27質量%である(なお、上記の2種類の構造単位の含有量の合計を100質量%とする)。
芳香族ビニル化合物の含有量が64質量%未満(シアン化ビニル化合物の含有量が36質量%超過)の場合は、最終目的物である樹脂組成物の色調および透明性が低下し、芳香族ビニル化合物の含有量が84質量%超過(シアン化ビニル化合物の含有量が16質量%未満)の場合は、樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。
共重合体Aの重量平均分子量は、通常50,000〜200,000、好ましくは70,000〜180,000であり、重量平均分子量が50,000未満の場合は最終目的物である樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、200,000超過の場合は樹脂組成物の成形加工性が低下する傾向がある。重量平均分子量は、例えば、溶媒としてテトラヒドロフランを使用したGPC法によって測定することが出来る。
共重合体Aの製造の際、最終目的物である樹脂組成物の透明性など、目的とする性能を阻害しない範囲で芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の他に共重合可能な単量体を使用することが出来る。共重合可能な単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルや同様な置換体のメタクリル酸エステル以外の単量体であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのアクリル酸類;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体などが挙げられる。これらの中では、N−フェニルマレイミド又はグリシジルメタクリレートが好ましい。これらの単量体の使用量は、通常10質量%未満、好ましくは5質量%未満、更に好ましくは3質量%未満である。
本発明で使用する共重合体Bは、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する単量体組成物(B)をグラフト重合して得られる。
ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリブタジエンの水素添加物、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、エチレン−ブテン−1−(非共役ジエン)共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、SEBSなどの水素添加ジエン系(ブロック、ランダム、ホモ)重合体、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。上記スチレン−ブタジエン共重合体としては、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物などが挙げられる。更に、上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物には、上記ブロック共重合体の水素添加物の他に、スチレンブロックとスチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物などが含まれる。ゴム質重合体は2種以上を併用することも出来る。
ゴム質重合体の体積平均粒径は、通常150〜500nm、好ましくは150〜400nm、更に好ましくは200〜350nmである。体積平均粒径が150nm未満では、最終目的物である樹脂組成物の耐衝撃性が低く、一方、500nmを超えると、樹脂組成物の透明性が低下する傾向がある。
単量体組成物(B)における香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物としては、単量体組成物(A)におけるのと同様のものが使用される。一方、(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミノアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル挙げられる。これらの中ではメチルアクリレート又はメチルメタクリレートが好ましい。
共重合体Bにおけるマトリックス成分の芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量は、1〜55質量%、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは15〜35質量%、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有は、0〜36質量%、好ましくは0〜31.5質量%、更に好ましくは4〜25質量%、特に好ましくは6.5〜19.5質量、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位の含有量は、45〜90質量%、好ましくは55〜80質量%、更に好ましくは62〜72質量%である(なお、上記の3種類の構造単位の含有量の合計を100質量%とする)。なお、マトリックス成分は、後述のように、例えば、アセトン可溶分として得ることが出来る。
芳香族ビニル化合物の含有量が1質量%未満の場合は、最終目的物である樹脂組成物の色調および透明性が低下し、芳香族ビニル化合物の含有量が55質量%超過の場合は、脂組成物の耐衝撃性および透明性が低下する。シアン化ビニル化合物の含有量が36質量%超過の場合は、樹脂組成物の色調およひ透明性が低下する。(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量が45質量%未満の場合は、最終目的物である樹脂組成物の表面硬度および透明性が低下し(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量が90質量%超過の場合は、樹脂組成物の耐衝撃性および透明性が低下する。
また、共重合体Bの製造の際、最終目的物である樹脂組成物の目的とする性能を阻害しない範囲で、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物の他に、共重合可能な単量体を共重合することが出来る。共重合可能な単量体としては、単量体組成物(A)における「共重合可能な単量体」の中から適宜選択することが出来る。これらの単量体の使用量は、通常10質量%未満、好ましくは5質量%未満、更に好ましくは3質量%未満である。
共重合体Bにおけるゴム質重合体の配合量は、通常5〜80質量%、好ましくは15〜70質量%、更に好ましくは30〜60質量%である。ゴム質重合体の配合量が5質量%未満では、最終目的物である樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、一方、60質量%を超える場合は、耐衝撃性および成形加工性が劣る傾向にある。
共重合体Bにおける単量体全成分の配合量は、通常95〜20質量%、好ましくは85〜30質量%、更に好ましくは70〜40質量%である。単量体全成分の配合量が95質量%超過の場合は、最終目的物である樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、一方、20質量%未満では、耐衝撃性および成形加工性が劣る傾向にある。
共重合体Bにおけるグラフト率は、通常10〜100%、好ましくは15〜90%、更に好ましくは20〜70%である。グラフト率が10%未満の場合は、最終目的物である樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、成形品とした際に外観不良を生じやすく、100%超過の場合は成形加工性が劣る傾向にある。
上記のグラフト率(%)は、ゴム強化重合体1g中のゴム成分質量をx、アセトン不溶分質量をyとすると、次式により求められた値である。
[数1]
グラフト率(%)=〔(y−x)/x〕×100
また、共重合体Bにおけるマトリックス成分であるアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(30℃、メチルエチルケトン中で測定)は、通常0.1〜1.0dl/g、好ましくは0.2〜0.9dl/g、更に好ましくは0.3〜0.7dl/gである。
極限粘度〔η〕が上記範囲内であると、最終目的物である樹脂組成物の耐衝撃性、成形加工性(流動性)が優れる。なお、上記のグラフト率(%)、極限粘度〔η〕は、共重合体Bの製造の際、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤などの種類や量、更には、重合時間、重合温度などを変えることにより、容易に制御することが出来る。
また、共重合体Bにおけるゴム質重合体(ゴム成分)の屈折率とマトリックス樹脂の屈折率との差は、最終目的物である樹脂組成物の透明性の観点から、通常0.05以下、好ましくは0.02以下、更に好ましくは0.01以下とされる。
本発明で使用する重合体Cは、(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合して得られるが、原料単量体は(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な単量体を併用した単量体組成物(C)でもよい。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、単量体組成物(B)において使用したのと同様なものが使用される。一方、(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が挙げられる。
重合体Cにおける(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位の含有量は、70〜100質量%、好ましくは85〜99.5質量%、更に好ましくは90〜99.5質量%、(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量は、0〜30質量%、好ましくは0.5〜15質量%、更に好ましくは0.5〜10質量%である(但し、これら2つの構造単位の含有量の合計を100質量%とする)。(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量が70質量%未満の場合、最終目的物である樹脂組成物の表面硬度が低下することがある。
重合体Cの重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用してGPC法によって測定した値として、通常50,000〜400,000、好ましくは70,000〜360,000である。重量平均分子量が上記範囲にあると、最終目的物である樹脂組成物の成形加工性に優れ、しかも、得られる成形品の耐衝撃性に優れる。重合体Cとしては、全体としての重量平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる重量平均分子量を有するアクリル系樹脂の2種以上を併用してもよい。
本発明において、共重合体Aのシアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有量(AN(A)%)と共重合体Bにおけるマトリックス成分のシアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有量(AN(B)%)との関係は、最終目的物である樹脂組成物に一層高度な透明性を付与する観点から、以下の式(1)を満足するのが好ましく、以下の式(2)を満足するのが更に好ましく、以下の式(3)を満足するのが特に好ましい。
[数2]
3/2×AN(A)−29 ≦ AN(B) ≦ 3/2×AN(A)−18 (1)
3/2×AN(A)−26 ≦ AN(B) ≦ 3/2×AN(A)−20 (2)
3/2×AN(A)−25 ≦ AN(B) ≦ 3/2×AN(A)−21 (3)
なお、上記の式(1)の範囲は、図1中においてアルファベットa〜eで囲まれた領域として表すことが出来る。
更に、本発明において、共重合体Aの溶解度パラメーター(SP(A))と共重合体Bにおけるマトリックス成分の溶解度パラメーター(SP(B))との関係は、最終目的物である樹脂組成物に透明性を付与する観点から、以下の式(i)を満足するのが好ましく、以下の式(ii)を満足するのが更に好ましく、以下の式(iii)を満足するのが特に好ましい。
[数3]
|SP(A)−SP(B)|≦ 0.30 (i)
|SP(A)−SP(B)|≦ 0.25 (ii)
|SP(A)−SP(B)|≦ 0.20 (iii)
同様に、共重合体Bにおけるマトリックス成分の溶解度パラメーター(SP(B))と共重合体Cの溶解度パラメーター(SP(C))との関係は、最終目的物である樹脂組成物に透明性を付与する観点から、以下の式(iv)を満足するのが好ましく、以下の式(v)を満足するのが更に好ましく、以下の式(vi)を満足するのが特に好ましい。
[数4]
|SP(B)−SP(C)|≦ 0.6 (iv)
|SP(B)−SP(C)|≦ 0.5 (v)
|SP(B)−SP(C)|≦ 0.4 (vi)
本発明において重合体の溶解度パラメーター(SP値)とは、以下の式(I)に従い計算により求めたものである。
[数5]
SP=a×SP+a×SP+a×SP+・・・ (I)
式(I)中、SP、SPおよびSPは各重合体の単量体成分に含まれる単量体を単独で重合した際に得られるそれぞれのホモポリマーのSP値を表し、「POLYMER HANDBOOK FORTH EDITION」に記載されている値を引用した値である。また、a、aおよびaは各重合体を形成するのに使用した単量体成分に含まれる単量体のそれぞれの質量分率を表す。なお、ホモポリマーのSP値(cal/cm1/2として上記の文献に記載される値の中の、ポリスチレン:9.1、ポリアクリロニトリル:12.5、ポリメチルメタクリレート:9.3を使用した。
共重合体Aの代表例はアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)であり、共重合体Bの代表例はメルチメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)であり、重合体Cの代表例はメルチメタクリレート樹脂(MMA樹脂)であり、何れも、それ自体は製造方法を含め良く知られて樹脂であり、本発明においては、例えば、公知の乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法に従って上記の各共重合体を容易に得ることが出来る。これらの重合法における単量体組成物(A)〜(C)の組成は、本発明で使用する共重合体A〜Cを得ることが出来れば任意に選択することが出来る。また、共重合体の組成分析は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、熱分解ガスクロマトグラフィー、NMRなどを使用して行うことが出来る。
本発明で使用する難燃剤Dは、有機ハロゲン化合物および/または有機リン化合物である。有機ハロゲン化合物は臭素および/または塩素を含有する化合物であり、また、有機リン化合物はホスフェート化合物および/またはホスファゼン化合物である。
上記の有機ハロゲン化合物としては、ハロゲン化ビスフェノ一ル化合物、ハロゲン化エポキシ化合物およびハロゲン化トリアジン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種が好適である。
本発明で使用されるハロゲン化ビスフェノール化合物としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフエノールA、ジクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、ジブロモビスフェノールF、テ卜ラクロロビスフェノールF、ジクロロビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールS、ジブロモビスフェノールS、テトラクロロビスフェノールS、ジクロロビスフェノールS等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
本発明で使用されるハロゲン化エポキシ化合物は、ハロゲン化ビスフェノール化合物とエピハロヒドリン又はハロゲン化ビスフエノールジグリシジルエーテルとの反応生成物であり、下記一般式で表される。
Figure 2011162583
上記一般式中、nは0以上の整数を、Xは臭素または塩素を、a,b,c,dは1〜4の整数を、Rは、イソプロピリデン基、メチレン基またはスルホン基を、R、Rは、それぞれ2,3−エポキシプロピル基または−CHCH(OH)CHOR基(Rは、臭素もしくは塩素で置換されていてもよいアルキル基またはアリル基)を示す。
ハロゲン化エポキシ化合物の原料として使用されるハロゲン化ビスフェノール化合物の具体例としては、前述と同様のものが挙げられる。ハロゲン化エポキシ化合物の重合度nは、好ましくは0〜15の整数であり、重合度nの異なるもの2種類以上を併用することも出来る。
ハロゲン化エポキシ化合物の末端は、エポキシ基でもよいが、アリル基、アルキル基などでエポキシ基が封止されていてもよい。末端を封止するアリル基やアルキル基は、必要に応じ、塩素、臭素などのハロゲン元素で修飾されていてもよい。末端封止基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基などの無置換アリル基、トリブロモフェニル基、ぺンタブロモフェニル基、トリクロロフェニル基、ぺンタクロロフェニル基などのハロゲン化アリル基、ステアリル基などのアルキル基が挙げられる。本発明で使用されるハロゲン化エポキシ化合物の末端は一方の末端と他方の末端の構造は同一でも異なっていてもよい。
本発明で使用されるハロゲン化トリアジン化合物とは、トリアジン骨格を有する有機ハロゲン化合物であって、下記一般式で表される。
Figure 2011162583
上記一般式中、Yは−O−基または−NH−基、Rは、それぞれ臭素化もしくは塩素化されたアリル基および/またはアルキル基、または水素原子を示す。
上記一般式で表される化合物は、一般に、シアヌル酸、メラミン等のトリアジン骨格含有化合物に、臭素化または塩素化されたフェノールアルコール類などの水酸基含有化合物やアミン化合物を反応させることにより得られる。
本発明で使用されるホスフェート化合物は、リン酸とフエノール類とのエステルであって下記一般式で表される。
Figure 2011162583
上記一般式中、nは0〜10の整数、Rはアルキル基および/またはハロゲン元素で修飾されていてもよいアリル基および/またはアルキル基を示す。
難燃剤Dは、二種以上を併用してもよく、有機ハロゲン化合物と有機リン化合物とを併用することも出来る。
本発明で使用するポリテトラフルオロエチレンEは、燃焼時のドリッピング(溶融液だれ)を防止することが知られており、通常、ドリッピング防止のために配合される。しかしながら、驚くべきことに、本発明の樹脂組成物においては、適当な難燃剤との配合によって、特定の極少量を配合することによってドリッピングを促進し、UL94試験による難燃性試験において、V−2規格に合格する。
ポリテトラフルオロエチレンEは、テトラフルオロエチレン単独重合体の他、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンなどを共重合したものであってもよい。好ましくは、テトラフルオロエチレン単独重合体である。
本発明の樹脂組成物は、前記の各成分から調製されるが、表面硬度は共重合体Cの増加に伴い向上する傾向にあり、耐衝撃性は共重合体Bの増加に伴い向上の傾向する傾向があり、成形加工性および透明性は、共重合体B又は共重合体Cの増加に伴い向上する傾向にある。
本発明の樹脂組成物において、前記の各成分の割合(質量比)、すなわち、A/B/C/Dは、5〜55/10〜50/10〜50/3〜25、好ましくは10〜50/15〜45/15〜45/5〜20、更に好ましくは15〜40/20〜40/20〜40/7〜15である。上記の範囲において、耐傷付性と耐衝撃性がバランスした上で共に良好であり、しかも、優れた透明性が得られる。難燃剤の割合が3質量部未満の場合は、最終目的物である樹脂組成物に十分な難燃性を付与することが出来ず、25質量部超過の場合は、最終目的物である樹脂組成物を成形品にした際に各種の機械的性質や耐光性が低下する。
また、ポリテトラフルオロエチレンEの割合は、共重合体A、B、C及び難燃剤Dの含有量の合計100質量部に対する値として、0.005〜0.1質量部、好ましくは0.005〜0.08質量部、更に好ましくは0.007〜0.07質量部である。ポリテトラフルオロエチレンEの割合が0.005質量部未満の場合は、最終目的物である樹脂組成物の難燃性が劣り、0.1質量部超過の場合は、滴下防止の効果が現れてV−2が達成できない。
本発明の樹脂組成物は、厚さ2.4mmの樹脂単独成形品について測定した全光線透過率が55%以上であり、UL94試験による難燃性がV−2規格に合格する。全光線透過率は、好ましくは60%以上であり、更に好ましくは65%以上である。本発明の樹脂組成物は、上記の特性を有することにより、鮮やかな色や深みのある色への着色も可能となり、意匠性に優れる。なお、「樹脂単独成形品」とは、樹脂以外の成分、例えば、以下に説明する添加剤や着色剤を含まない成形品を意味する。
本発明の樹脂組成物は耐傷付性に優れる。ここで、耐傷付性は、次の方法で評価することが出来る。例えば往復動摩擦試験器を使用し、布、ティシュペーパー(ドライ)で成形品表面を往復摩擦する、一定の高さから砂などを成形品に落とす、重ねた成形品を揺り動かす等の後、その表面を観察する、或いは樹脂成形品の硬度を測定することによって評価する。
本発明の透明難燃熱可塑性樹脂組成物には、難燃助剤を併用することが出来る。この難燃助剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化鉄、塩素化ポリエチレン、ポリオルガノシロキサン系重合体などが挙げられ、これらは2種以上を併用することも出来る。難燃助剤の使用量は、共重合体A、B、C及び難燃剤Dの合計100質量部に対する値として、通常0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜7質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
更に、本発明の樹脂組成物においては、公知の添加剤、例えば、可塑剤、滑剤(例えば、高級脂肪酸およびその金属塩、高級脂肪酸アミド類など)、熱安定化剤、酸化防止剤(例えば、フェノール系、フォスファイト系、チオジブロプロピオン酸エステル型のチオエーテル等)、耐候剤(例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、蓚酸誘導体、ヒンダードアミン系等)、帯電防止剤(例えば、ポリアミドエラストマー、四級アンモニウム塩系、ピリジン誘導体、脂肪族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩共重合体、硫酸エステル塩、多価アルコール部分エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリアルキレングリコール誘導体、ベタイン系、イミダゾリン誘導体など)、抗菌剤、抗カビ剤、摺動性改良剤(例えば、低分子量ポリエチレン等の炭化水素系、高級アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル、脂肪酸と多価アルコールとのフル又は部分エステル、脂肪酸とポリグリコールとのフル又は部分エステル、シリコーン系、フッ素樹脂系など)等をその目的に合わせて任意の割合で配合することが出来る。これらの添加剤は二種以上を併用してもよい。
また、意匠性を付与する目的で、公知の着色剤、例えば、無機顔料、有機系顔料、メタリック顔料、染料を添加することが出来る。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、酸化亜鉛系顔料、カドミウム系顔料などが挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料どのアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料などが挙げられる。
メタリック顔料としては、例えば、リン片状のアルミのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミ顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属をメッキやスパッタリングで被覆したもの等が含まれる。
染料としては、例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料、ペリレン染料、ペリノン染料などが挙げられる。
上記の着色剤は、二種以上を併用してもよい。例えば黒色に着色したい場合は、赤、緑、黄色などの染料を組み合わせて黒色を発色することにより、より深みのある黒色を発現することが出来る。
着色剤の使用量は特に制限されないが、本発明の効果を高める観点から、無機顔料、有機顔料、カーボンブラックの総量は、通常0.3質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。
また、有機染料の総量は、通常0.1〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%、更に好ましくは0.2〜0.5質量%である。斯かる条件により、通常の透明樹脂と変わらない様な深みのある色調を発現することが出来る。0.1質量%未満の場合は色調の発現が不足し、2質量%超過の場合は、コスト高となるばかりでなく、成形時にモールドデポジット等で外観不良現象が発生し易い。
なお、ここで言う、無機顔料、有機顔料、有機染料の分類は、ポリオレフィン等衛生協議会発行のポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準(第2部ポジティブリスト、2−3色材)第8版に記載されている分類に基づくものであるが、カーボンブラックを含めて使用出来る染顔料の種類を限定するものではない。
本発明の樹脂組成物は、前記の各成分を溶融混合することにより得られる。溶融混合には、ミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等のバッチ式混練機;単軸押出機、2軸押出機などの連続式混練機が使用される。また、混練の順序は、特に制限されず、例えば成分の全量を一括して混練する方法などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物の成形には、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空成形、プレス成形などを採用することが出来る。また、射出成形や射出圧縮成形の場合の金型温度は、特に制限されないが、樹脂注入時の金型キャビティの表面温度として、通常50℃以上、更に好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上である。このように金型温度を高くすることにより、曇りが消えて色調の発現に好ましい傾向がある。金型キャビティの表面温度の上限は通常100℃である。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の要旨を超えない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において部及び%は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例及び比較例中の各種測定は、下記の方法に拠った。
(1)燃焼性:
米国アンダーライターラボラトリーズ発行のUL94規格に定められた方法により、長さ5インチ、幅1/2インチ、厚み1/12インチの試験片について垂直燃焼試験を行った。本発明においては、評価結果を、UL94規格V−2ランクを「V2」、V−2不適合を「×」と記載した。
(2)透明性:
射出成形機(日本製鋼社製「J−35AD」)を使用し、シリンダー温度:210℃、金型温度:50℃にて、5cm×9cm、厚み2.4mmの平板を射出成形した。この平板を使用し、ASTM D1003に準じて全光線透過率を測定し、以下の基準で評価した。
◎:全光線透過率が65%以上
○:全光線透過率が55%以上65%未満
△:全光線透過率が30%以上55%未満
×:全光線透過率が30%未満
(3)耐傷付性:
上記(1)と同様に平板を作成し、東測精密工業株式会社製の往復動摩擦試験器を使用し、ティッシュペーパー、垂直荷重1kgで試験片表面を50往復摩擦後、当該表面を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:傷が観察されない。
△:傷が僅かに観察される。
×:傷が明確に観察される。
(4)耐衝撃性
高速パンクチャー衝撃試験器(島津製作所「ハイドロショットHITS−P10」)を使用し、前述の射出成形機を用いて成形した縦55mm、横80mm、厚み2.4mmの試験片5枚を評価した。試験条件は、受け台穴径38.1mm、ポンチ直径15.9mm、打ち抜き速度2.4m/sとし、以下の基準で評価した。
○:5枚全部とも破片が飛び散らず延性破壊を示した。
△:5枚中3〜4枚が破片が飛び散らず延性破壊を示し、他は破片が飛び散るか又は 試験片に亀裂が生じ脆性破壊を示した。
×:5枚0〜2枚が破片が飛び散らず延性破壊を示し、他は破片が飛び散るか又は試 験片に亀裂が生じ脆性破壊を示した。
<共重合体A:AS樹脂の製造>
公知の乳化重合法により、表1−1に記載の共重合体:A−1〜2を製造した。共重合体の組成分析はフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)によって行った。以下に、共重合体(A−1)の製造例を示す。
アクリロニトリル24部、スチレン76部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、及びジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部を混合して、単量体混合物を調製した。
攪拌装置、原料及び助剤添加装置、温度計、加熱装置などを備えた、容量10Lのガラス製反応器に水150部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部を仕込み、攪拌しつつ、窒素気流下で、内温を55℃まで昇温した。55℃に達した時点で、上記単量体混合物及び、24部の水に、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.09部、硫酸第一鉄七水和物0.003部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、を溶解した水溶液を5時間にわたって連続添加した。
単量体混合物の添加開始時点から1時間後までに内温を67℃に昇温し、その後67℃を保持した。連続添加終了後、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.05部を添加し、更に1時間内温を保持し、重合反応を終了した。この共重合体ラテックスを、塩化カルシウムを使用して凝固し、水洗、乾燥し、粉末状の共重合体A−1を得た。
Figure 2011162583
<共重合体B:MABS樹脂の製造>
公知の乳化重合法により、以下の表1−2に記載の共重合体:B−1〜3を製造した。ゴム質重合体としては、体積平均粒子径300nmのポリブタジエンゴムラテックスを使用した。共重合体のグラフト率と極限粘度[η]は前述の方法で求め、マトリックス成分の組成分析はフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)によって行った。以下に、共重合体(B−1)の製造例を示す。
攪拌機を備えた内容積10リットルのガラス製フラスコに、体積平均粒子径300nmのポリブタジエン45部(固形分換算)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3部、およびイオン交換水100部を仕込み、次いで、スチレン3部、アクリロニトリル2部、およびメタクリル酸メチル9部を仕込んだ。これら混合物を攪拌しながら43℃まで昇温後、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.02部、硫酸第1鉄・7水和物0.001部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.08部およびイオン交換水6部よりなる水溶液、並びにクメンハイドロパーオキサイド0.04部を添加し、1時間反応を続けた。
その後、スチレン9部、アクリロニトリル5部、メタクリル酸メチル27部、t−ドデシルメルカプタン1.2部、クメンハイドロパーオキサイド0.1部からなる単量体混合物、及びエチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.01部、硫酸第1鉄・7水和物0.001部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.05部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3部、およびイオン交換水30部よりなる水溶液を4時間にわたって連続的に添加し、重合反応を続けた。添加終了後、さらにエチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.003部、硫酸第1鉄0.0002部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.01部、クメンハイドロパーオキサイド0.02部、及びイオン交換水1部を添加し、更に1時間攪拌を続けた後、冷却して反応を終了した。
その後、反応生成物にp−クレゾール・ジシクロペンタジエン・イソブチレンの反応生成物(東邦化学製「SANDWIN−45」)0.67部、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.5部を添加し、硫酸マグネシウムで凝固した。反応生成物を良く水洗し、脱水した後、80℃で24時間乾燥し、白色粉末のゴム強化重合体(B−1)を得た。重合転化率は、97.0%、グラフト率は60%、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕は、0.24dl/gであった。
同様の方法により、表1−2に示すように、単量体成分の種類・配合処方、連鎖移動剤の使用量、重合温度、重合時間などを変えて、B−2、B−3を得た。各共重合体中のゴム質重合体の割合は45質量%である。
Figure 2011162583
<共重合体C:MMA樹脂>
次の市販の樹脂を使用した。組成および物性については以下の表1−3に示す。
(C−1):三菱レイヨン社製「アクリペットMF001」
Figure 2011162583
<難燃剤D−1>
以下の式で表される縮合リン酸エステル(大八化学工業社製「PX200」)
Figure 2011162583
<難燃剤D−2>
以下の式で表される末端封止型テトラブロモビスフェノールA型エポキシオリゴマー((n=0,1の混合物)(東都化成社製「エポトートTB62」)
Figure 2011162583
<ポリテトラフルオロエチレンE−1>
ダイキン工業社製「ポリフロン FA−500」
<難燃助剤>
三酸化アンチモン(ローレルインダストリー社製「ファイアシールドH」)
<酸化防止剤>
フェノール系酸化防止剤(住友化学工業社製「スミライザーGS」)
<滑剤−1>
シリコーン系滑剤(信越化学工業社製「KF54」)
<滑剤−2>
エチレンビスステアリン酸アマイド(花王社製「KAOWAX EB−FF」)
実施例1:
共重合体A−1:25.5質量部、共重合体B−1:32質量部、共重合体C−1:30質量部、難燃剤D−1:12.5質量部、ポリテトラフルオロエチレンE−1:0.05質量部、酸化防止剤:0.1質量部、滑剤−1:0.9質量部、滑剤−2:1.0質量部を混合した後、これをホッパーに投入し、一軸押出機(ナカタニ機械社製「NVC」、L/D=36)を使用し、シリンダー設定温度230℃、スクリュー回転数120rpm、混練樹脂の吐出速度25kg/hrの条件で混練して樹脂ペレットを得、各特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例2〜3及び比較例1〜9:
表2に示す組成割合で各成分を配合し、実施例1と同様にして樹脂ペレットを得、評価を行った。評価結果を表2及び表3に示す。
Figure 2011162583
Figure 2011162583
表2及び表3から次のことが明らかである。
実施例1〜3に示すように、本発明の透明熱可塑性樹脂組成物は、難燃性、透明性、耐衝撃性、耐傷付性に優れた成形物を提供することが出来る。特に、実施例1は、式(3)、式(iii)及び式(vi)を満足することにより、実施例2及び3に比し、透明性に特に優れる。
比較例1は、共重合体Cが配合されておらず、透明性、耐傷付性が劣る。比較例2は、難燃剤が配合されておらず、難燃性でV−2不合格となる。比較例3は、ポリテトラフルオロエチレンが配合されておらず、難燃性でV−2不合格となる。比較例4は、ポリテトラフルオロエチレンの配合量が多いため、難燃性でV−2不合格となる。比較例5は、本発明で規定する共重合体B、及びポリテトラフルオロエチレンが配合されておらず、難燃性がV−2不合格となり、透明性が劣る。比較例6は、本発明で規定する共重合体B、及びポリテトラフルオロエチレンが配合されておらず、透明性が劣る。比較例7は、本発明で規定する共重合体Bが配合されておらず、ポリテトラフルオロエチレンの配合量が多いため、難燃性がV−2不合格となり、透明性が劣る。比較例8は、本発明で規定する共重合体B、共重合体C及びポリテトラフルオロエチレンが配合されておらず、透明性、耐傷付性が劣る。比較例9は、本発明で規定する共重合体B、共重合体C及びポリテトラフルオロエチレンが配合されておらず、難燃性がV−2不合格となり、透明性、耐傷付性が劣る。

Claims (4)

  1. 芳香族ビニル化合物に由来する構造単位64〜84質量%とシアン化ビニル化合物に由来する構造単位16〜36質量%を含有する共重合体A(但し、これら2つの構造単位の含有量の合計を100質量%とする)と、ゴム質重合体の存在下にグラフト重合して得られ、マトリックス成分の芳香族ビニル化合物に由来する構造単位1〜55質量%、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位0〜36質量%、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位45〜90質量%を含有する共重合体B(但し、これら3つの構造単位の含有量の合計を100質量%とする)と、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構造単位70〜100質量%、(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な単量体に由来する構造単位0〜30質量%を含有する重合体C(但し、これら2つの構造単位の含有量の合計を100質量%とする)と、有機ハロゲン化合物および/または有機リン系化合物からなる難燃剤Dと、ポリテトラフルオロエチレンEとを含有し、A/B/C/Dの割合が5〜55/10〜50/10〜50/3〜25(質量比)であり、共重合体A、B、C及び難燃剤Dの含有量の合計100質量部に対する、ポリテトラフルオロエチレンEの割合が0.005〜0.1質量部であり、厚さ2.4mmの樹脂単独成形品について測定した全光線透過率が55%以上であり、UL94試験による難燃性がV−2規格に合格することを特徴とする透明難燃熱可塑性樹脂組成物。
  2. 共重合体Aのシアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有量(AN(A)%)と共重合体Bのシアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有量(AN(B)%)との関係が以下の式(1)を満足する請求項1に記載の透明難燃熱可塑性樹脂組成物。
    [数1]
    3/2×AN(A)−29 ≦ AN(B) ≦ 3/2×AN(A)−18 (1)
  3. 共重合体Aの溶解度パラメーター(SP(A))と共重合体Bにおけるマトリックス成分の溶解度パラメーター(SP(B))との関係が以下の式(i)を満足し、共重合体Bの溶解度パラメーター(SP(B))と共重合体Cの溶解度パラメーター(SP(C))との関係が以下の式(iv)を満足する請求項1又は2に記載の透明難燃熱可塑性樹脂組成物。
    [数2]
    |SP(A)−SP(B)|≦ 0.3 (i)
    |SP(A)−SP(B)|≦ 0.3 (iv)
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の透明難燃熱可塑性樹脂組成物から成ることを特徴とする樹脂成形品。
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