JP2011159338A - 磁気ヘッド浮上性評価用ディスク及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
磁気ヘッドの浮上量が10nm以下となるような,浮上量の低い磁気ヘッドの評価に於いて,安価な透明ガラス基板を用いた場合であっても,磁気ヘッドとの接触確率を低減して磁気ヘッドを安定浮上させ,且つ,低浮上安定性を長期的に維持できる,磁気ヘッド浮上性評価用ディスク及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,透明ガラス基板3上に窒化珪素膜4,窒素を含むカーボン膜6,潤滑膜6を順次積層した多層膜を形成する。
【選択図】図1
磁気ヘッドの浮上量が10nm以下となるような,浮上量の低い磁気ヘッドの評価に於いて,安価な透明ガラス基板を用いた場合であっても,磁気ヘッドとの接触確率を低減して磁気ヘッドを安定浮上させ,且つ,低浮上安定性を長期的に維持できる,磁気ヘッド浮上性評価用ディスク及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,透明ガラス基板3上に窒化珪素膜4,窒素を含むカーボン膜6,潤滑膜6を順次積層した多層膜を形成する。
【選択図】図1
Description
磁気ヘッドの開発,品質評価などで実施されている浮上性評価に使用される磁気ヘッド浮上性評価用ディスク及びその製造方法に関する。
磁気ヘッドの浮上性評価は,その浮上量測定など,性能や品質管理として実施されている。測定原理には,光干渉法やフェーズシフト法などを利用しており,例えば非特許文献1に記載される技術が知られている。また,KLA−Tencor社,アイメス社,MicroPysics社など複数のメーカーから,フライング・ハイト・テスターとして測定装置が販売されている。
その浮上量測定には,透明性のある石英基板やガラスディスクが主に用いられている。その測定の際に,ヘッドとディスクとの接触によって,僅かな損傷がディスクに入っても測定できなくなっている。また最悪の事態,製品である磁気ヘッドにも損傷を与えてしまう問題があった。そして,複数のヘッドを一つのディスク上で測定することは,測定値の信頼性からも重要であり,本ディスクの耐久性向上として,潤滑剤やダイヤモンド様炭素コーティングを施す技術が知られている(特許文献1,2)。
また,フェーズシフト法による浮上量測定では,レーザー光の反射防止により,測定精度の向上とディスクの損傷防止を目的として,屈折率の異なる2種類の薄膜をコーティングするARコーティングと潤滑剤コーティングする技術も知られている。(特許文献3)
日本機械学会論文集(C編)58巻546号, 論文No.91−1773A
記録密度の向上のために,磁気ヘッドの浮上量は,減少の一途をたどり,浮上量10nm以下(極低浮上)は当たり前となり,最近では,ヘッド素子部に発熱体を内蔵し,それを加熱・膨張させて,更に,ディスク表面の接触近傍まで近づける技術が使われ始めている。しかしながら,この様な特性を持った磁気ヘッドを安定に浮上させるには,先に述べたような技術では,浮上性評価用ディスクの上で,安定に浮上させての評価ができなりつつある。
また,浮上間隔が小さくなったことからも,ディスクの耐久性といった寿命も著しく短くなってしまった。石英基板などは,それ自身高価であり,損傷によるディスク交換頻度の増加は,生産コストを上げることに繋がり,コストの為に,検査頻度を減らすことは,品質低下にも繋がる。
この様なことから,高価な石英基板を使用せずに,安価な透明ガラス(アルミノシリケートガラスやソーダライムガラス等)の基板を用いて浮上性評価が安定にできる浮上性評価用ディスクが望まれる。
特許文献2には,透明ガラス基板上にダイヤモンド様炭素をコーティングする技術が開示されている。しかしながら,耐久性の期待できるダイヤモンドライクカーボンは,例えば,原料として炭化水素系ガス(メタン,エチレン,アセチレンなど)を用いて化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)を使って,膜を形成する必要があるが,ガラスディスク等の絶縁物には,バイアス電圧を印加できないことから,実際には適用が難しい。
他の方法として,スパッタ法がある。カーボンをターゲット材料とし,カーボンをスパッタすることにより,透明ガラス基板上に直接カーボン膜を形成して浮上性評価用ディスクとすることができる。しかし,本方法で成膜したカーボン膜は,可視光領域でも光の吸収があり,耐久性を向上させるための膜厚を厚くできない(膜厚を厚くすると透明度が減少し,検査光が透過できなくなる)。また,スパッタ法で形成したカーボン膜は,膜厚が薄くなると被覆率が低下してしまう。この被覆率の低下により,薄膜ではヘッドの浮上安定性が極めて劣化し,ヘッドとディスクの接触頻度が増加してしまう。
潤滑剤をガラスディスク(石英)に直接塗布しただけでは,磁気ヘッドを安定浮上させることは難しく,スパッタ法によるカーボン薄膜を付けてから,潤滑剤を塗布しても,ヘッドの浮上安定性は,期待したほど効果は上がらず,極低浮上下での安定性は得られない。
本発明の目的は,磁気ヘッドの浮上量が10nm以下となるような,浮上量の低い磁気ヘッドの評価に於いて,安価な透明ガラス基板を用いた場合であっても,磁気ヘッドとの接触確率を低減して磁気ヘッドを安定浮上させ,且つ,低浮上安定性を長期的に維持できる,磁気ヘッド浮上性評価用ディスク及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための一実施形態として,磁気ヘッドの浮上性を評価するために用いる磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,透明ガラス基板上に窒化珪素膜,窒素を含むカーボン膜が順次構成され,その最表面には潤滑膜から成る多層膜を,少なくとも前記磁気ヘッドの浮上面側に有することを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスクとする。
また,磁気ヘッド浮上性評価に用いるディスクの製造方法において,透明ガラス基板の少なくとも片面上に窒化珪素膜を形成する工程と,前記窒化珪素膜上に窒素を含むカーボン膜を形成する工程と,前記窒素を含むカーボン膜が形成された前記透明ガラス基板上に潤滑膜を形成する工程と,その後,少なくとも片面に多層膜が形成された前記ガラス基板を各面の膜構成毎に異なるテープによってクリーニングする工程と,を有することを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法とする。
上記構成とすることにより安価な透明ガラス基板を用いた場合であっても,低浮上安定性を長期に渡って得られ,安定してヘッド浮上性評価を実施できるという効果を有する。
以下、実施例により説明する。
第1の実施例について図1,図2を用いて説明する。図1は,本実施例に係る磁気ヘッド浮上性評価用ディスクと,その上に浮上する磁気ヘッドの概略断面図である。
磁気ヘッド浮上性評価用ディスク1は,透明性のあるガラス基板3(以下,ガラス基板と略す。)の片面に,窒化珪素膜4,窒素を含むカーボン膜5,パーフルオロポリエーテル潤滑膜6を順次積層して多層膜を形成したものである。なお,本実施例ではこの多層膜をガラス基板3の片面にのみ形成したが,ガラス基板3の両面に形成してもよい。
この多層膜を形成したディスクを回転させ,成膜面上に,磁気ヘッド(スライダー)2をロードして浮上させ,その浮上量等の評価を実施した。
使用したガラス基板3はアルミノシリケートガラス基板であり,原子力間顕微鏡(AFM)で測定される平均粗さ(Rq)が0.3nm以下の物を使用した。そして,磁気ディスクの製造方法に於ける洗浄と同様にしてアルカリ洗剤や超音波を使って洗浄し,(スクラブブラシを使用しても良い。)更に純水や超音波により濯ぎ洗い,乾燥を経て,表面のゴミや微小突起を除去したものを使用する。なお,本実施例ではアルミノシリケートガラス基板を用いたが,平坦性に優れたソーダライムガラス基板や他の透明ガラス基板を使用することができる。
次に,本実施例に係る磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法を説明する。洗浄されたガラス基板3の片面に,真空成膜装置を使って,(今回は,米国Intevac社製,mdp250を使用した。)窒化珪素膜4,窒素を含むカーボン膜5を,連続成膜した。窒化珪素膜4の成膜には,ターゲット材料に単結晶シリコンを使い,スパッタガスには,アルゴンと窒素の混合ガスを使って,DCパルススパッタ法で膜を形成した。
パルスDCの周波数や,ガスの混合比などの成膜条件は,形成された膜のシリコン(Si),窒素(N)の組成比を,光電子分光法(XPS,またはESCA)を使って分析し,理想的なSi3N4となるN/Siの比率1.33になるように調整した。成膜された窒化珪素膜4のESCA分析時には,分析のために,ガラス基板3の上に金属膜を形成してから窒化珪素膜4を形成した。X線源としては,Mg−Kαを使って分光分析を実施した。Siの電子軌道2pからのスペクトルを使って,Si−Siの金属的結合(99.3eV),Si−Nの結合(〜101.7eV),Si−Oの結合(103.3eV)をピークフィッティング法により分離して,全シリコンに対する窒素比率:N/Si(Total)と窒素と結合したシリコンに対する窒素の比率:N/Si(N)を解析した。N/Si(Total)とN/Si(N)共に,1.33に近くなる成膜条件に設定することが,上述した課題を解決する上で,好ましい。本実施例の窒化珪素膜4は,N/Si(Total)が1.25,N/Si(N)が1.33であった。この成膜条件をガラスディスク上の窒化珪素膜形成に適用した。なお,N/Si(Total)については,1.25±0.2以内なら実用的な膜を得ることができる。1.25±0.1以内なら好適である。また,N/Si(N)については,1.33±0.2以内なら実用的な膜を得ることができる。1.33±0.1以内なら好適である。
その後の窒素を含むカーボン膜5の形成には,ターゲット剤としてグラファイトカーボンを使い,スパッタガスには,アルゴンと窒素の混合ガスを使って,DCマグネトロンスパッタ法で膜を形成した。本カーボン膜5の成膜には低レートで形成することが,上述した課題を解決するために好ましく,本実施例では2nm/sの成膜レートで窒素含有量は,ESCAによる分析で20%になるように条件を調整した。窒素含有量は15〜25%が好ましい。なお,本実施例ではDCマグネトロンスパッタ法を用いたが,イオンビームスパッタ法,フィルタード・カソーディック・アーク法等ガラス基板にバイアスを印加しない膜形成方法を適用することができる。
図1に,本実施例で使用したガラス基板3と,成膜された各層の光学定数である屈折率(N値),吸収係数(K値)の表を示す。
各値は,波長633nmのエリプソメータを使って測定し,その際に必要となる各層の膜厚は,X線反射率フィッティグ法を使って求めた値を使用した。(以後の膜厚の表記には,X線反射率フィッティグ法を用いて測定した値を使用している。)Si3N4の光学定数であるN値:2.0211,K値:0.0000であり,表1に示す,窒化珪素膜4の光学定数もそれに近い値を示しており,先のESCAによる分析の結果と同様に理想的なSi3N4に近い膜であり,可視光領域では透明で光の吸収がほとんど無いことを示している。
窒素を含むカーボン膜5では,N値は,窒化珪素膜に近いかやや高い値を示し,K値は,ガラス基板3や窒化珪素膜4よりも大きい値を示し,光の吸収が有ることを示している。従って,膜厚をあまり厚くすると,ヘッドの浮上性評価に影響を与えてしまうことを表している。K値は,窒素の含有量等の成膜条件によって変わってくる。本測定のためには,K値が小さい方が好ましい。窒素を含有させる目的の一つに潤滑剤の濡れ性や吸着性を高める事がある。これらが悪くなると,潤滑剤の斑が生じやすく,磁気ヘッドの浮上安定性を阻害することとなる。
本実施例においては,窒化珪素膜,窒素を含むカーボン膜及び潤滑剤が積層されたガラス基板の光透過率が10%以上なら磁気ヘッド浮上性評価用ディスクとして使用することができる。実用的には透過率50%以上が望ましく,90%以上なら好適である。検査光としては可視光(波長900nm〜350nm)を用いることができる。
窒化珪素膜4,窒素を含むカーボン膜5を連続成膜した後は,できるだけ早く,潤滑剤6を塗布することが好ましい。使用するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤としては,ソルベイ・ソレクシス社製のFOMBLIN Z TETRAOLが磁気ディスク用潤滑剤として広く使われているが,これらを使用することができる。他には,旭硝子社製のTA−30やMORESCO社製のA20Hなども挙げられる。本実施例では,TA−30を使用したが,限定する物ではない。潤滑剤を住友3M社製のフッ素形容剤HFE7100DLに希釈して濃度を0.01〜0.02%として,先に成膜したディスクを浸漬してからゆっくりと一定の速度で引き上げることにより,均一な潤滑膜を形成した。膜厚は1nmになるよう調整することがより好ましい。先の真空成膜時にガラス基板3の片面にのみ膜形成を行った場合には,その反対側は,ガラス基板3の上に直接潤滑膜6が塗布されることになる。使用したパーフルオロポリエーテル系潤滑剤のN値は,1.25〜1.35,K値は,0〜0.01であった。
次に,潤滑膜6が形成された表面をテープでクリーニングを施した。使用するテープには,以下の物が使用できる。ガラス基板3上に多層膜を形成した面には,0.3μmの球形アルミナ砥粒をコートしたテープを用い,その反対側のガラス基板3に潤滑剤のみが塗布された面には,2μmの球形アクリル樹脂をコートされたテープと,それぞれの面毎に異なったテープを使用する。これらのテープを両面同時に回転するディスクへ押し当てて,ディスクの内周側から外周側へ移動させる(スキャン)ことで研磨と同時にクリーニング処理を行った。
ガラス基板と潤滑膜だけの面には,球形アクリル樹脂コートのテープを使用したのは,ガラス基板3上にスクラッチ等の傷を付けてしまうことを防ぐためである。この様に,各面の膜構成に合わせて,テープの種類を変更することが,傷を付けずに研磨・クリーニングすることがポイントである。機械的な加工条件である,ディスクの回転数,テープの押しつけ加重,スキャン速度等は,ディスク両側の面に対し,同一条件で処理することも,重要である。
テープによるクリーニング処理の後は,潤滑剤をよりカーボン膜5へ吸着させるために加熱処理や紫外線照射を行っても良い。磁気ヘッドの浮上性評価時に,ディスクに塗布された潤滑剤が,ヘッドの方に移着する場合などが見られ,浮上性評価に影響が出た時には,本方法が有効である。
表2は,上述した磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法に従って製作した実施例1に係る試料および比較例に係る試料の窒化珪素膜4,窒素を含むカーボン膜5の形成膜厚を示す。なお,実施例2に係る試料の窒化珪素膜4,窒素を含むカーボン膜5の形成膜厚も併せて示す。
本実施例では,窒素を含むカーボン膜の厚さを4.0nmで一定とし,窒化珪素膜の膜厚を変化させた。比較例では窒化珪素膜を形成せず,窒素を含むカーボン膜を4.0nmの厚さに形成した。使用したガラス基板,潤滑剤及び膜厚,テープによるクリーニング条件は,全て同一である。
本方法で得られた磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの浮上安定性について評価した。本評価には,浮上ヘッドとして,ディスクの回転数が変化するとそれに従って浮上量も変化するように設計されたスライダー(ピコスライダー)に,接触や振動などを検出するためのピエゾ素子を貼り付けたグライドヘッドを使用した。本スライダーは,予めある高さの突起を表面に形成したバンプディスクを使って,浮上量を校正して調整した。浮上性評価時のヘッド浮上量は,6nmである。
本実施例に係る磁気ヘッド浮上性評価用ディスク上,及び比較例のディスク上の,微小突起や浮上そのものの安定性を見るために,磁気ヘッドに搭載されたピエゾ素子から出力される電圧を測定して,微小突起との衝突や振動を評価した。突起と衝突した場合や,スライダーが振動している場合には,ピエゾ素子から得られる電圧が高くなる。
表2に示した本実施例に係るディスク上の磁気ヘッドの浮上性を,本グライドヘッドを使って評価した。ディスクのある半径位置での,ピエゾ素子からの出力を数周分二乗平均した値をTAA(Track Average Amplitude)として比較した。このピエゾ素子に負荷(突起や振動)が掛かっていない時のノイズレベルは,10mV程度であり,これに近い程,浮上安定性に優れることを表している。
実施例1及び比較例の評価結果を図2に示す。この時,評価用ディスクを製作してから間も無い時期(1週間以内)に評価したものを初期とし,長期安定性を見るために,常温(25℃)下,相対湿度90%下で1日放置した後に評価したものを加湿後とした。TAAは,ある半径位置での平均であるが,面全面に渡って評価しており,特異的な場所は見られず,図2に示す傾向と同様であった。
図2は,窒素含有カーボン膜を4.0nmと一定として,その直下の窒化珪素膜の膜厚を変化させた試料の評価結果である。比較例は,窒化珪素膜が無く,窒素含有カーボン膜が4.0nmの厚さだけ形成された試料である。
比較例のディスクのピエゾ出力であるTAAは,初期から加湿後共に著しく高く,半径位置を変えてもディスク面全域で同様に高く,ヘッドが大きく振動していた。即ち,浮上量6nmといった極低浮上では,窒化珪素膜が形成されていないガラス基板上に窒素含有カーボン膜を形成してもヘッドとディスクとの相互作用(引力)が大きく働き,浮上安定性に欠けると推定される。
一方,ガラス基板上に窒化珪素膜,窒素含有カーボン膜を順次積層して形成した本実施例に係るディスクでは,比較例のディスクに比較してTAAの値が1/10以下となっており極低浮上でも安定性が向上していること,また,加湿前後においてTAAに大幅な変動がないことから低浮上安定性を長期的に維持できることが分かる。また,TAAの値は,試料1〜試料5の評価結果から分かるように窒化珪素膜の膜厚が厚い程小さくなり,浮上の安定性が向上する。特に,窒化珪素膜の膜厚が1.5nm(試料3)では,加湿環境に曝してもTAAの値が加湿前の値と変わらないことが分かる。
なお,窒化珪素膜は,K値はゼロに近く透明なので,厚く形成しても良いが,厚みを厚くすることで,完成時の面粗さが荒くなったりすると,比較例ほど悪化するわけではないが,浮上性を悪化させるので好ましくない。また,製作のやり易さの観点からも,必要且つ十分であればよい。以上を考慮して,窒化珪素膜の厚さは1.0〜5.0nmの範囲が実用的,1.5〜2.5nmの範囲が好適である。
飛行型二次イオン質量分析でディスク表面の元素を分析した結果,TAAが高い比較例では,ナトリウムの量が多いことが判った。また,加湿暴露後TAAが高くなった試料5についても微量のナトリウムが検出された。ナトリウムはガラス基板中に含まれており,膜を付けても表面へ時間と共に拡散してきていると推定される。このナトリウムはイオン性が高く,磁気ヘッドと相互作用を高めることとなり浮上性を阻害すると推定される。窒化珪素膜は、ガラス基板からのナトリウム等の不純物の窒素含有カーボン膜への拡散を低減・防止しているものと考えられる。ナトリウムの拡散を防ぐためには,使用する基板を石英基板などに変更することも可能であるが,材料的にも高価となり,大量生産されるものの管理用として使用するにはコスト的に好ましくない。磁気ディスク用として通常使用されているガラス基板を,この様な工夫で使用できることは,コストメリットが大きい。
以上述べたように,本実施例によれば,透明性のあるガラス基板上に窒化珪素膜,窒素含有カーボン膜を順次積層することにより,磁気ヘッドの浮上量が10nm以下となるような,浮上量の低い磁気ヘッドの評価に於いて,安価な透明ガラス基板を用いた場合であっても,磁気ヘッドとの接触確率を低減して磁気ヘッドを安定浮上させ,且つ,低浮上安定性を長期的に維持できる,磁気ヘッド浮上性評価用ディスク及びその製造方法を提供することができる。また,窒化珪素膜の膜厚を所定の範囲とすることにより,浮上安定性や長期安定性を更に改善することができる。
第2の実施例について図3を用いて説明する。なお,実施例1に記載され,本実施例に未記載の事項は本実施例にも適用することができる。
図3は,窒化珪素膜を2.5nmと一定として,その上の窒素含有カーボン膜の膜厚を変化させ評価したものである。窒素含有カーボン膜の膜厚は,表2に示ように試料6で3.0nm,試料7で2.0nmとした。本実施例で評価した試料は実施例1に示した製造方法に従って作製した。
図3から,ガラス基板上に窒化珪素膜及び窒素含有カーボン膜が形成された本実施例に係るディスクでは,図2に示した比較例に比べ,TAAが約1/10になっており,極低浮上でも安定性が向上していること,また,加湿前後においてTAAに大幅な変動がないことから低浮上安定性を長期的に維持できることが分かる。
但し,窒素含有カーボン膜が薄くなるにしたがってTAAが大きくなり,浮上性が悪化することが判る。窒素含有カーボン膜が3.0nmの場合(試料6),初期では浮上性が良好であるが,比較例ほどではないが,加湿することで悪くなることから,寿命が短いことを表している。従って,窒素含有カーボン膜は,3.0nmより厚く,好ましくは3.5nm以上が望ましい。窒素含有カーボン膜を厚くすると,透明性が落ちてくる。透明性の低下を考慮して,窒素含有カーボン膜の厚さは,3.0〜10.0nmの範囲が実用的,3.5〜5.0nmの範囲が好適である。なお,実施例1に示した製造法を用いれば,膜厚分布を10%以内に十分に制御できる。
試料6の加湿後及び試料7の初期,加湿後の窒化珪素膜をESCAで分析した。先に述べた電子軌道2pからのスペクトルを使って,Si−Oの結合(103.3eV)成分を分離すると,この成分が実施例1で示した試料1と比べて増加していることが判った。窒化珪素膜も経時変化と共に(特に,水分によって)酸化させられ,粗さ評価からも荒くなっていることから,膜が酸化膨張して,浮上性を悪化させていると推定される。窒素含有カーボン膜は、窒化珪素膜の酸化を低減・防止しているものと考えられる。
以上述べたように,本実施例によれば,透明性のあるガラス基板上に窒化珪素膜,窒素含有カーボン膜を順次積層することにより,磁気ヘッドの浮上量が10nm以下となるような,浮上量の低い磁気ヘッドの評価に於いて,安価な透明ガラス基板を用いた場合であっても,磁気ヘッドとの接触確率を低減して磁気ヘッドを安定浮上させ,且つ,低浮上安定性を長期的に維持できる,磁気ヘッド浮上性評価用ディスク及びその製造方法を提供することができる。また,窒化含有カーボン膜の膜厚を所定の範囲とすることにより,浮上安定性や長期安定性を更に改善することができる。
1…磁気ヘッド浮上性評価用ディスク,2…磁気ヘッド(スライダー),3…ガラス基板,4…窒化珪素膜,5…窒素含有カーボン膜,6…パーフルオロポリエーテル系潤滑膜。
Claims (16)
- 磁気ヘッドの浮上性を評価するために用いる磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,
透明ガラス基板上に窒化珪素膜,窒素を含むカーボン膜が順次構成され,その最表面には潤滑膜から成る多層膜を,少なくとも前記磁気ヘッドの浮上面側に有することを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスク。 - 請求項1記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,
前記窒化珪素膜の膜厚は,1.0〜5.0nmの範囲内にあることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスク。 - 請求項2記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,
前記窒化珪素膜の膜厚は,1.5〜2.5nmの範囲内にあることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスク。 - 請求項1記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,
前記窒素を含むカーボン膜の膜厚は,3.0〜10.0nmの範囲内にあることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスク。 - 請求項4記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,
前記窒素を含むカーボン膜の膜厚は,3.5〜5.0nmの範囲内にあることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスク。 - 請求項1記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,
前記透明ガラス基板は,アルミノシリケートガラス基板或いはソーダライムガラスであることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスク。 - 請求項1記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,
前記潤滑膜は,パーフルオロポリエーテル膜であることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスク。 - 請求項1記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,
前記多層膜は,前記透明ガラス基板の両面に設けられていることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスク。 - 可視光を用いて磁気ヘッドの浮上性を評価するための磁気ヘッド浮上性評価用ディスクにおいて,
透明ガラス基板と,前記透明ガラス基板上に順次形成された窒化珪素膜,窒素を含むカーボン膜及び潤滑膜を有することを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスク。 - 磁気ヘッド浮上性評価に用いるディスクの製造方法において,
透明ガラス基板の少なくとも片面上に窒化珪素膜を形成する工程と,
前記窒化珪素膜上に窒素を含むカーボン膜を形成する工程と,
前記窒素を含むカーボン膜が形成された前記透明ガラス基板上に潤滑膜を形成する工程と,
その後,少なくとも片面に多層膜が形成された前記ガラス基板を各面の膜構成毎に異なるテープによってクリーニングする工程と,を有することを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法。 - 請求項10記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法において,
前記窒化珪素膜を形成する工程と前記窒素を含むカーボン膜を形成する工程とは連続して行われることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法。 - 請求項10記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法において,
前記窒化珪素膜を形成する工程は,DCパルススパッタ法を用いることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法。 - 請求項10記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法において,
前記窒素を含むカーボン膜を形成する工程は,DCマグネトロンスパッタ法を用いることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法。 - 請求項10記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法において,
前記窒素を含むカーボン膜を形成する工程は,イオンビームスパッタ法或いはフィルタード・カソーディック・アーク法を用いることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法。 - 請求項10記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法において,
前記潤滑膜は,パーフルオロポリエーテル膜であることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法。 - 請求項10記載の磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法において,
前記多層膜が形成された側の前記透明ガラス基板をクリーニングするテープは,アルミナ砥粒をコートしたテープであり,成膜されていないガラス面には樹脂をコートしたテープであることを特徴とする磁気ヘッド浮上性評価用ディスクの製造方法。
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