JP2011157641A - オイル調皮革様シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 極細繊維からなる絡合不織布とその内部に高分子弾性体が含浸された基体の少なくとも表面に、ポリスチレン換算の数平均分子量が100000以上10000000以下であって、かつ、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸ビニル重合体、スチレン重合体、塩化ビニル重合体、ブチラール樹脂およびエチレン酢酸ビニル重合体から選ばれる少なくとも1つの重合体と、ポリビニルアルコール樹脂の混合物が存在していることを特徴とするオイル調皮革様シート。
【選択図】 なし
Description
一方で人工皮革は、天然皮革と比較して軽量であることを特長として、靴用素材に用いられているが、天然皮革のオイル調素材のようなしっとりとしたタッチを発現するためには、その構造上、何らかの表面処理を施す必要があった。
本発明を構成する基体の極細長繊維の製造方法としては、従来公知の方法を用いることが可能であるが、例えば、溶融状態で相溶性を有しておらず、溶解性または分解性の異なる2種類以上のポリマーを使用する混合紡糸法や複合紡糸法等により海島型構造繊維を製造する方法、または分割型複合繊維を製造する方法等により極細繊維発生型繊維を得たのち、その一部(例えば海成分)を抽出除去または分解除去して極細繊維とする方法、あるいは分割型複合繊維のポリマー界面で剥離させて極細繊維とする方法等が代表例として挙げられる。この方法以外に、溶融紡糸ノズルから繊維形成性ポリマーを吐出した直後に高速気体で吹き飛ばし繊維を細くする、いわゆるメルトブロー法などの方法を用いることもできる。しかしながら、繊維太さの管理や極細繊維や極細繊維束形成上の安定性から、上記極細繊維発生型繊維を経由する方法を採用することが好ましい。
また、これら樹脂は融点が160℃以上であることが好ましく、160℃未満の場合には、形態安定性が劣り、実用性の点から好ましくない。なお、融点は、示差走査熱量計(以下、DSCと称する。)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した場合の重合体の融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を採用している。
またこれらの樹脂には、紡糸の際の安定性を損なわない範囲でカーボンブラックで代表される顔料、染料等の着色剤が添加されていてもよい。
海島型繊維は前記の海成分と島成分を複合紡糸用口金から押出すことにより溶融紡糸する。紡糸温度(口金温度)は海島型繊維を構成するポリマーのそれぞれの融点よりも高く、180〜350℃が紡糸安定性の点で好ましい。口金から吐出した溶融状態の海島型繊維を冷却装置により冷却した後、エアジェットノズルなどの吸引装置を用いて、目的の繊度となるように1000〜6000m/分の引取り速度に相当する速度の高速気流により牽引細化し、移動式ネットなどの捕集面上に堆積させて長繊維ウェブを形成する。
本発明を構成する絡合不織布に含有させる高分子弾性体としては、皮革様シートの基体に用いられる公知の高分子弾性体を用いることが可能であるが、風合いの点からポリウレタン樹脂が用いられる。好ましいポリウレタン樹脂としては、ソフトセグメントとして、ジオールとジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とを反応させて得られるポリエステル系ジオール、ポリラクトン系ジオール、ポリカーボネート系ジオール、ポリエーテル系ジオール、ポリエーテルエステル系ジオール等からなる群から選ばれた数平均分子量が500〜5000の少なくとも1種類のポリマージオールを使用し、これとジイソシアネート化合物と低分子鎖伸長剤とを反応させて得られる、いわゆるセグメント化ポリウレタンが挙げられる。
本発明の皮革様シートは、高分子弾性体が、絡合不織布に対して15質量%以下であることが、混合物を付与したときのオイル調の天然皮革様の風合いおよびタッチに優れる点で好ましく、10質量%以下がゴムライクな風合いを避ける点でより好ましい。
本発明のオイル調皮革様シートは、極細繊維からなる絡合不織布とその内部に高分子弾性体が含浸された基体からなる皮革様シートに対して、ポリスチレン換算の数平均分子量が100000以上10000000以下であって、かつ、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸ビニル重合体、スチレン重合体、塩化ビニル重合体、ブチラール樹脂およびエチレン酢酸ビニル重合体から選ばれる少なくとも1つの重合体と、ポリビニルアルコール樹脂および水からなるエマルジョンを付与し乾燥することで製造方法することが可能である。
なお、数平均分子量の測定は、調整液(ジメチルホルムアミド3L+臭化リチウム3g)2mLで、試料を0.05%に調整してGPCにて測定する。
PVAは、重合体1に対して、10質量%以上50質量%以下の割合で添加される。PVAの添加量が10質量%未満の場合、混合物の均一分散性やエマルジョンの安定性が低下する。一方、添加量が50質量%を越える場合、風合いが硬くなる。
上記バインダーは本発明の上記混合物に対して、混合物:バインダー樹脂=10:1〜1:5の比率で混合していることが、オイル調の外観およびタッチ並びに混合物との接着性を兼ね備える点で好ましい。
皮革様シートの表面を発明者ら5名がモニターとなり、目視と触感および風合いに関してオイル調天然皮革と比較して、以下の判定のうち最も多かった結果を示した。オイル調天然皮革と同等以上:◎、オイル調天然皮革並:○、オイル調天然皮革に劣る:×
皮革様シートの試験サンプル片と、表面に白エナメル仕上げを施した測定片の表面同志を重ね合せ、1.1kgの荷重下で70℃・24時間放置後、試験サンプルの表面から白エナメル仕上げを施した測定片の表面への色移りの程度をグレースケール(JIS L0805に準ずる)により判定した。
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を海成分に用い、ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略すこともある。)を島成分とし、繊維1本あたりの島数が25島となるような溶融複合紡糸用口金を用い、海成分/島成分の質量比30/70となるように260℃で口金より吐出し、平均繊度2.0デシテックス(dtex)の長繊維をネットで捕集し、30g/m2のスパンボンドシートを得た。
上記スパンボンドシートをクロスラッピングにより8枚積層して総目付を240g/m2とした後、針折れ防止油剤をスプレー付与した。次いで、1バーブのニードル針を用いて両面から交互に3600P/cm2のニードルパンチング処理をおこない、長繊維絡合シートを作製した。このニードルパンチ処理による面積収縮率は53%であり、ニードルパンチ後の長繊維絡合シートの目付は350g/m2、層間剥離強力は9.2kg/2.5cmであった。
得られた基体の片面をシールならびにサンドペーパーにてバフして立毛表面を有する皮革様シートを得た。このシートをサーキュラー染色機染色して茶色のスエード調皮革様シートとした。次にスエード調皮革様シート表面を172℃の金属ロールを用いて線圧100N/mmで熱圧着し(裏面は非加熱のゴムロールに接触)、表面の繊維の一部を融着させると共に毛穴シボ模様を有する銀面を形成して、銀付調皮革様シートとした。その銀付調皮革様シート表面にポリスチレン換算での数平均分子量が1.7×106のポリエチレンとのPVAと水とからなるポリエチレンエマルジョン(PE381:固形分濃度53% 成瀬化学株式会社製)をさらに、ポリエチレンエマルジョン70に対して水30を添加し希釈した混合液をグラビアにて固形分付着量で15g/m2付着させ、110℃の熱風を表面から吹きつけて乾燥した。さらにそのシートを機械もみ処理してオイル調皮革様シートを得た。得られたオイル調皮革様シートは、マイグレーション防止に優れ、しっとりとして落ち着いたオイル調の外観、触感を有しており、オイル調天然皮革に極めて類似したものであった。
エマルジョンPE381を水系ポリウレタンエマルジョン(HA10C:固形分濃度40% 日華化学株式会社製)と混合比率PE381/HA10C=25/75で調整した混合物を実施例1で毛穴シボを形成した後の銀付調皮革様シート表面へグラビアロールを用いて固形分付着量で10g/m2転写し、110℃の熱風を表面から吹きつけて乾燥した。さらにそのシートを機械もみ処理してオイル調皮革様シートを得た。得られたオイル調皮革様シートは、実施例1に比べると外観は若干低いものの、マイグレーション防止に優れ、しっとりとしたオイル調の触感を有していた。いわゆるオイル調天然皮革に類似したものであった。
エマルジョンPE381と水系ポリウレタンエマルジョンHA10Cとを混合比率PE381/HA10C=25/75で調整した混合物を実施例1で毛穴シボを形成した後の銀付調皮革様シート表面へグラビアロールを用いて固形分付着量で10g/m2転写し、110℃の熱風を表面から吹きつけて乾燥し、さらに表面に鏡面模様を有する172℃の金属ロールを用いて線圧100N/mmで熱圧着し(裏面は非加熱のゴムロールに接触)、さらにそのシートを機械もみ処理してオイル調皮革様シートを得た。得られたオイル調皮革様シートは、マイグレーション防止に優れ、しっとりとして落ち着いたオイル調の外観、触感を有していた。いわゆるオイル調天然皮革に極めて類似したものであった。
高分子エマルジョンPE381を水により質量比率PE381/水=20/80に調整した混合液を直接、実施例1で毛穴シボを形成した後の銀付調皮革様シートへ含浸し、マングルにより、ピックアップ率50%に調整して得られたシートを、110℃の熱風を表面から吹きつけて表面に混合物を偏在させながら乾燥した。次に、表面に鏡面模様を有する172℃の金属ロールを用いて線圧100N/mmで熱圧着し(裏面は非加熱のゴムロールに接触)、さらにそのシートを機械もみ処理してオイル調皮革様シートを得た。得られたオイル調皮革様シートは、マイグレーション防止に優れ、しっとりとして落ち着いたオイル調の外観、触感を有していた。いわゆるオイル調天然皮革に極めて類似したものであった。
実施例1で得られたスエード調皮革様シートの立毛面に実施例1で調整した混合液をグラビアにて固形分付着量で15g/m2転写し、110℃の熱風を表面から吹きつけて乾燥した。さらにそのシートの立毛面を整毛処理してオイル調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは、マイグレーション防止に優れ、しっとりとして落ち着いたオイル調の外観、触感を有しており、ヌバック感を有するオイル調天然皮革に極めて類似したものであった。
エマルジョンを用いないで、水系ポリウレタンエマルジョンHA10C(日華化学株式会社製)のみをグラビアにて固形分付着量で10g/m2で転写し、110℃の熱風を表面から吹きつけて乾燥する以外は実施例1と同様に処理して皮革様シートを得た。得られた皮革様シートは、かさかさとしたタッチであり、オイル感はなく、風合いも固いものであった。
実施例1で使用したエマルジョンの代わりに平均分子量が29万のスチレン−(イソプレン/ブタジエン)−スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物(セプトン4055:(株)クラレ製)を用い、この保持体に対し、油状物として重量比で5倍のパラフィン系オイル(PW−90:出光興産製;30℃における粘度:140mPa・s)を配合したトルエン溶液(ブロック共重合体濃度=3%)を調製し、実施例1で毛穴シボを形成した後の銀付調皮革様シート表面に、55メッシュのグラビアロールで、塗布量が保持体と油状物の合計量で6g/m2となる量で塗布し、乾燥してトルエンを蒸発させた。得られた皮革様シートは、しっとりとして落ち着いた外観、触感を有していた。しかしながら、マイグレーションに劣り、溶媒としてトルエンを使用しているため、環境への不可が大きいものであった。
Claims (7)
- 極細繊維からなる絡合不織布とその内部に高分子弾性体が含浸された基体の少なくとも表面に、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の数平均分子量が100000以上10000000以下であって、かつ、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸ビニル重合体、スチレン重合体、塩化ビニル重合体、ブチラール樹脂およびエチレン酢酸ビニル重合体から選ばれる少なくとも1つの重合体と、ポリビニルアルコール樹脂の混合物が存在していることを特徴とするオイル調皮革様シート。
- 絡合不織布が、平均繊度が0.001〜2dtexの極細繊維を5本以上含む繊維束からなり、かつ該繊維束の平均繊度が0.5〜10dtexである請求項1に記載のオイル調皮革様シート。
- 高分子弾性体が、絡合不織布に対して15質量%以下で存在している請求項1または2に記載のオイル調皮革様シート。
- 基体表面に、前記混合物が1〜50g/m2存在している請求項1〜3のいずれか1項に記載のオイル調皮革様シート。
- 基体の内部に、前記混合物が基体質量に対して1〜20質量%存在している請求項1〜4のいずれか1項に記載のオイル調皮革様シート。
- 前記混合物に対してさらにバインダー樹脂を前記混合物:バインダー樹脂=10:1〜1:5の固形分比率で混合してなる請求項1〜5に記載のオイル調皮革様シート
- 極細繊維からなる絡合不織布とその内部に高分子弾性体が含浸された基体からなる皮革様シートに対して、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の数平均分子量が100000以上10000000以下であって、かつ、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸ビニル重合体、スチレン重合体、塩化ビニル重合体、ブチラール樹脂およびエチレン酢酸ビニル重合体から選ばれる少なくとも1つの重合体と、ポリビニルアルコール樹脂および水からなるエマルジョンを付与することを特徴とするオイル調皮革様シートの製造方法。
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