JP3727181B2 - 人工皮革用不織布の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工皮革用の不織布に関する。さらに詳しくは、本発明は折り曲げ皺が発生しない銀付き調の人工皮革を与える均一で緻密な構造を有する不織布素材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
人工皮革の基材としては、生産性と柔軟な風合いとが優れ、且つ短繊維からなる不織布に比べ強い伸び止め感を有する極細連続フィラメント(以下、連続フィラメントを“FY”と略記する)の不織布があるが、皮革の有する柔軟性、緻密な構造からくるドレープ性等をさらに高めた人工皮革が市場では要求され、種々の提案がなされてきている。
【0003】
例えば、特開平10−53948号公報には、原糸として剥離分割型複合FYからなる集合体を、ニードルパンチングや高圧水流交絡法などで機械的に交絡させながら、該FYを剥離分割して得た不織布を、沸水または水蒸気にて加熱することで熱収縮させて、更に緻密化させることが開示されている。
【0004】
そして具体的な加熱収縮処理による緻密化手段としては、不織布の長手方向の各側縁部をクランプで把持し、不織布の進行方向で、不織布のサイドクランプの距離を縮小、つまり加熱処理の出口方向で収縮できるような形状のクランプを用い、また加熱処理の入り口の速度を、出口の速度よりも速くして不織布の長手方向の収縮もできるような加熱処理装置で、160〜180℃という高温で処理されている。
【0005】
この方法で得られた不織布を人工皮革に用いた場合、熱収縮によって見掛け密度が高く、それに伴って構造も緻密化されているため、単糸繊度の細さを生かしてスウェード調やヌバック調では柔軟な審美性の高い製品が得られる。
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、人工皮革の表面に高分子弾性体などの皮膜を形成させたいわゆる銀付調の人工皮革となした場合は、表面を内に折り曲げると大きな折り曲げ皺が発生するという致命的な欠陥を内在していることが発見された。
【0007】
そのため、銀付き調の人工皮革が多用されている、靴、鞄、手袋、あるいは家具などへ成形した場合、当初の審美性が使用に伴って損われることになる。このように、折り曲げ皺の問題は、業界において未だ未解決のまま放置されていたのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の課題は、極細FYを用いた不織布において、特に銀付き調の人工皮革とした場合に折り曲げ皺のない人工皮革用不織布の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、折り曲げ皺の原因が、極細FYを親糸である剥離分割型複合FYより生起させるため、該極細FY同士が、それらが生起される以前の剥離分割型複合FY中に存在していた状態に近いフィラメント間距離で、依然として集束された状態にあり、800μm2以上の大きな空隙が内在しているという極細FY固有の構造に起因していることを究明した。すなわち一つの剥離分割型複合FYから生起された極細FY群が集束されたマルチフィラメントの様に存在するため、極細FYが生起しても、親糸である剥離分割型複合FY間の交絡から形成された大きな空隙が解消されないためであることが判明したのである。
【0010】
このことから、不織布の見掛け密度を高くして構造を緻密化すると共に、不織布内にある800μm2以上の大きな空隙をなくして、構造を均一化することによって、折り曲げ皺の問題を解消したのが本発明である。
【0011】
かくして、本発明によれば
単繊度が0.01〜0.5デニールの極細FYをマトリックス成分とする不織布において、下記の要件(a)〜(c)
(a)不織布の見掛け密度が0.25〜0.45g/cm2であること;
(b)不織布断面におけるフィラメント間空隙の平均面積が走査型電子顕微鏡の画像解析による測定値で70〜220μm2の範囲にあること;および
(c)不織布断面における繊維間空隙の面積の標準偏差が走査型電子顕微鏡の画像解析による測定方法の値で200〜500μm2の範囲にあること;
を満足することを特徴とする不織布が提供される。
【0012】
そして、本発明の人工皮革用不織布の製造方法は、95℃の温水における熱収縮率が5%以上異なる少なくとも2種の極細FYからなる極細連続フィラメントの集束体を含み、且つ絡合処理を施された見掛け密度0.20〜0.42g/cm3のウェッブに、リラックス状態で60℃〜90℃の温水中および/または80〜120℃の乾熱で少なくとも20秒収縮処理して、該集束体の集束形態を破壊し、該ウェッブを面積収縮率で5〜50%収縮させ、下記要件(a)を満足させる方法である。
(a)不織布の見掛け密度が0.25〜0.45g/cm 3 であること。
【0013】
さらには、不織布に高分子弾性体を含浸させた、下記の要件(d)〜(h)
(d)該不織布に高分子弾性体を含浸していること;
(e)該不織布と高分子弾性体との割合が重量比で、97:3〜50:50であること;
(f)見掛け密度が0.27〜0.70g/cm3であること;
(g)人工皮革の断面におけるフィラメント間空隙の平均面積が、走査型電子顕微鏡の画像解析による測定値で70〜120μm2の範囲にあること;および
(h)人工皮革の断面におけるフィラメント間空隙の面積の標準偏差が、走査型電子顕微鏡の画像解析による測定値で50〜250μm2の範囲にあること
を満足する人工皮革が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
先ず、不織布の要件(a)〜(c)の意義について述べる。この発明は、従来の分割使いの不織布に内在する“大きな空隙(800μm2以上)”が折り曲げ皺の原因となっていることに端を発している。
【0015】
そこで、前記の大きな空隙のない不織布構造を規制されるものとして、(a)〜(c)の要件が巧みに選定されたものである。
【0016】
ここで、(a)の要件である見掛け密度は、不織布構造の均一化および得られた不織布の腰やドレープ性から、0.25〜0.45g/cm3が必要であり、好ましくは0.30〜0.40g/cm3である。見掛け密度が0.25g/cm3未満では、本発明の収縮処理を施しても均一で緻密な不織布構造は得られず、見掛け密度が0.45g/cm3を超えると腰は強いがドレープ性の低い不織布となる。そのため、見掛け密度は0.25〜0.45g/cm3の範囲にあることが不可欠である。
【0017】
次に(b)の要件である空隙の平均面積は、従来の不織布が折り曲げ皺を惹起する800μm2以上の大きな空隙を有していたことを上限として、高々220μm2に抑えたものである。他方下限値は、折り曲げ皺には関係ない不織布の腰やドレープ性といった面から、70μm2以上が必要である。該平均面積が70μm2未満の場合は、従来にない高密度でかつ均一な緻密な不織布となって腰は強いが、ドレープ性の低い不織布となる。
【0018】
最後に(c)の要件である空隙の面積の標準偏差は、要件(b)と同様に、従来の不織布が折り曲げ皺を惹起する800μm2以上の大きな空隙を有していたことを上限として、高々500μm2に抑えたものである。500μm2を超えると平均値が本発明の目的とする範囲に入っていても大きな空隙が散在することを意味し、折り曲げ皺が発生する。他方、下限値は、小さいほど均一な構造となるので好ましいが、現実には200μm2程度が限度である。
【0019】
上述の3つの要件をすべて満足することによって、本発明の不織布は800μm2以上の大きな空隙がほとんどない均一で緻密な構造となり、極細FY使いの柔軟な風合いで、且つ折り曲げ皺のない銀付き調の人工皮革となる。
【0020】
本発明の不織布の断面における繊維間の空隙の平均面積は、次のような走査型電子顕微鏡の画像解析による方法で測定ができる。
【0021】
(1)試料作成;測定しようとする不織布の断面試料を日本電子(株)製のイオンスパッタリング装置「JFC−1500」を使用して、使用圧力は0.1Pa以下、コーティング膜厚800オングストロームの条件下でイオンスパッタリング法にて金の皮膜を形成させる。
【0022】
(2)電子顕微鏡撮影;上記(1)で作成した試料を日本電子(株)製の走査顕微鏡「JSM−6100」を使用して、加速電圧;5kV、フィラメント電流;2.2A、走査速度;15.7秒/line(水平、60Hz)の条件下で観察用CRTに画像信号波形を表示し、波形のピークと最低レベルとを電位目盛のそれぞれ5Vと0Vとに一致させ、波形モニターをオフとして露出を決定し、倍率を200に設定する。
【0023】
(3)画像処理;旭化成(株)製高精細画像解析システム「IP−1000PC」を使用して、画像を走査顕微鏡より入力(自動)し、「開孔計測」の画像処理を選択して測定する。この場合の画像処理の2値化のしきい値は、画像解析から得た輝度分布のピークの位置の輝度と最低レベルの輝度(輝度0)との中点の輝度とする。そして、該しきい値によって囲まれた輝度の低い部分を空隙部分として抽出する。
【0024】
(4)平均面積および標準偏差の算出:不織布断面の0.25mm2の領域に存在する上述の抽出された空隙部分の面積をそれぞれ測定し、同様の操作を少なくとも不織布断面の異なる位置で3回繰り返す。以上のようにして得られた空隙部分の面積から、平均面積と標準偏差とを求める。
【0025】
本発明の記載における不織布および人工皮革用基材の断面における極細FY間の空隙の平均面積は、すべて上記記載の方法によるものである。
【0026】
得られた不織布は、特に銀付き調の人工皮革用途に好適なものとなるが、その他にも衣料用途、内装材、インテリア材、工業用ワイパーやワイピングクロスなどのワイパー用途、バグフィルターや濾過布などのフィルター等の用途にも好適に用いられる。
【0027】
本発明の不織布の製造方法について述べる。不織布を構成する極細FYは、好ましくは、海島型複合FYまたは剥離分割型複合FYなどを用い、不織布製造工程中の適当な時期に極細FYに変性して用いる。特に好ましくは、後者の剥離分割型複合FYである。
【0028】
ただ、上述のような複合FYは、交絡した後、単に極細FYに変成したのでは、親糸である複合FYの交絡形態に近い、極細FYの集束体として交絡し、依然として前述の800μm2以上の大きな空隙が発生する。
【0029】
本発明の方法において、一大特徴とするところは、上述の問題を解消し、該空隙を排除し均一で緻密な構造を生起させるために、交絡処理した後の見掛け密度が0.20〜0.42g/cm3の異収縮性ウェッブ、すなわち少なくとも一方の成分が熱収縮性を有し、且つ該成分と他方の成分との95℃の温水中での熱収縮率の差が少なくとも5%で、単糸繊度が共に0.01〜0.5デニールであるような2種以上の極細FYが混在したウェッブをリラックス状態で、且つ60℃〜90℃の温水中および/または80〜120℃の乾熱で、緩やかに少なくとも20秒収縮処理を施し、該ウェッブを面積収縮率で5〜50%収縮させることにある。
【0030】
該加熱収縮処理によって、親糸である複合フィラメントの配列状態に近い、極細FYの集束体は、極細FY間の熱収縮の差によって、その集束形態が破壊され均一で緻密な構造が得られる。
【0031】
この場合、熱収縮性成分と他成分の熱収縮率差が、5%未満の場合は、本発明の効果が十分に得られない。特に好ましくは10%以上である。本発明でいう熱収縮率とは、極細FYを0.5g/deの荷重下で30分間95℃の温水中で収縮処理した時の収縮率から求められる。ここでの収縮率は、(収縮処理前の長さ-収縮処理後の長さ)/(収縮処理前の長さ)×100%で求められる。また、面積収縮率とは、{(収縮前のウェッブ面積−収縮後のウェッブ面積)/(収縮前のウェッブ面積)}×100(%)で求められる。
【0032】
本発明においてリラックス状態とは、特にウェッブを3〜30%のオーバーフィード率の下に一方向に前進させる状態をいう。その際、面積収縮率を重要視する本発明の趣旨に則して、ウェッブの前進方向と直交するウェッブの側縁部は無把持状態に保つことが好ましい。
【0033】
該オーバーフィード率は、目的とする面積収縮率によって決定すれば良いが、オーバーフィード率が3%〜30%の範囲を外れると、収縮処理を施した際に5〜50%の面積収縮率は得難い。
【0034】
ちなみに、特開平10−53948号公報に記載されているような、より緻密化を目的とする高温加熱収縮処理条件(乾熱:160〜180℃)では、過度の加熱処理となり、フィラメントの熱収縮の速度が速くなって、高収縮側の極細FYが、低収縮側の極細FYを一部連れ込みながら移動してしまい、極細FYの集束構造の破壊が十分に進まない。
【0035】
上述のリラックス状態での収縮処理の好ましい態様としては、ウェッブが浮力によって更に緊張が緩和された状態になる温水中での処理である。温水の温度が、60℃未満では収縮が不充分であり、他方、90℃を超えると急激に収縮速度が速くなるために均一な収縮が発現しない。特に好ましい温水温度は、70〜85℃である。
【0036】
一方、乾熱収縮処理の場合は、当然のことながら、温水よりも比較的高い温度が必要とされるが、温水と同様の理由から、実質的に上記の温水温度に対応する80〜120℃の温度範囲が採用される。
【0037】
また、ウェッブの収縮処理時間は、5%以上の面積収縮率を発現させる上で、少なくとも20秒は必要である。一方収縮処理時間の上限については、特に制約されないが、10分もあれば十分である。但し、化学的な分割処理と同時に処理され、分割処理に必要な時間が10分を越える場合は、分割処理に必要な時間を優先して採用すれば良い。
【0038】
このように、極細FYの集束体が交絡した従来の不織布を、無緊張状態で緩やかに収縮処理することにより、極細FY間の収縮差の発現により、集束構造が崩され、極細FYがランダムに交絡した構造となる。
【0039】
ここで、面積収縮率が5%未満であると、均一な微細な構造の不織布が得られない。一方、面積収縮率が50%を超えると収縮時に皺の発生が生じたり、繊維間の空隙が小さくなりすぎる。すなわち、収縮処理後のウェッブの見掛け密度が必要以上に高くなり腰は強いがドレープ性に乏しい不織布となる。特に交絡処理段階で十分に見かけ密度が高められ(例えば、0.27〜0.40g/cm3)、加熱収縮による緻密化が面積収縮率にして20%以下で良い場合は、より緩やかな加熱収縮処理が行え、得られた構造は更に均一化された緻密なものとなるので好ましい。
【0040】
このようにして得られるウェッブの見掛け密度は0.25〜0.45/cm3の範囲に調整する必要がある。好ましい範囲は0.3〜0.40g/cm3である。収縮処理により不織布構造の均一化を発現させようとすると、0.25g/cm3が見掛け密度の下限となる。一方、該密度が0.45g/cm3を越えた不織布は、前述のように腰は強いが、ドレープ性に乏しい不織布となる。
【0041】
この結果、従来の不織布に比較して、極細FY間で形成される空間の体積が微細化される。すなわち、従来のマイクロ不織布に比較して極細FY間で形成される空隙体積が小さく、かつ空隙数が多く存在するようになり、均一で微細な構造となる。そのため、銀付き調の人工皮革とした場合も、折り曲げ皺が発生しない。
【0042】
(I)以下に剥離分割型複合FYを、本発明に用いた場合を詳細に説明する。剥離分割型複合FYを構成する繊維形成性重合体は互いに相溶性でなければ、どのような繊維形成重合体でも使用することができ、好ましくは繊維形成性重合体としてポリエステルとポリアミドとを組合せることである。
【0043】
この場合、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを主成分とするもの等が挙げられる。特に交絡・剥離分割処理後の熱収縮性を上げるために、斯界で慣用されている結晶化抑制成分が共重合または配合されたポリマーであることがより好ましい。なお、ポリエステルとしては、必ずしも一種を用いることに限定されず、例えば金属塩スルホネートを含有するポリエステルと該スルホネート基を含有しないポリマーとを組合せても良い。
【0044】
ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12等の繊維形成性重合体が挙げられる。
【0045】
ポリマーのの組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン−6の組み合わせが好ましい。さらに本発明の目的を奏する範囲内であれば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、マイカ、金属微細粉、有機顔料、無機顔料などを添加しても良く、これらの添加剤には重合体への着色効果と共に該重合体の溶融粘度を高くまたは低くする効果もあり、繊維横断面を調節する際に有効である。
【0046】
上述の剥離分割型複合FYは繊維断面において、放射状に2種のポリマーが交互に配列されて紡出された構造である。配列数においては特に限定されないが、工程性や剥離分割性を考慮し、8〜24が好ましい。またその形状は、中空環状であることが分割性の面から好ましい。この場合、中空率は25%以下であるのが好ましい。ここでいう中空率とは、繊維の横断面積に対する中空部分の面積の割合である。
【0047】
また、剥離分割型複合FYの一成分の全断面積に対して占める割合は、繊維の分割性および紡糸性の面から30〜70%が好ましく、特に40〜60%が好ましい。該割合は配列数が偶数の場合、通常50:50であるが、70:30のように割合を変化させることは、ウェッブ内に異デニールの極細FYが混在されたものが得られるので、好ましい態様である。
【0048】
剥離分割型複合FYの繊度は、分割数と剥離分割後の繊度とから決定されるが、1〜10デニールが好ましい。上述の剥離分割型複合FYは、スパンボンド法または、低速下での紡出糸を延伸して一旦巻き取るか、引続き高速の牽引流体により開繊しながら多孔補集面上にウエブとして補集するなど周知の方法によりウエブ化される。特にその中でも、口金より紡出された糸条を高速牽引し、補集ネット上に噴射・補集するスパンボンド法が生産性の点から特に好ましく採用される。
【0049】
ここで、高速牽引の速度としては、3000〜8000m/分の範囲にあればよく、紡出糸条をエジェクターやエアサッカーなどにより上述の速度にて高速牽引すればよい。剥離分割型複合FYを高速牽引して得た細化物は開繊されながら補集ネット上に補集される。ネット上に補集される際、他の連続FYや短繊維などを混綿、積層または混合してもよい。混綿、積層または混合される他の連続FYや短繊維特としては、特に制約はない。しかしながら、本発明が意図する均一で緻密な構造を達成するためには、混綿または混合される他の繊維の割合は30%未満が好ましい。もちろんより好ましくは本発明の剥離分割型複合FYを100%使いでウェブ化することである。
【0050】
上記のようにして得られたウェブは、単独または複数枚を積層して、必要に応じて弱熱接着され、一旦巻き取った後、またはそのまま連続で三次元的に機械的交絡処理が施される。ウェブの交絡処理はニードルパンチ等のようにバーブ付の針でパンチングする方法、あるいは高圧水流によって繊維を交絡させる周知の手段によってなされる。この際、十分に交絡させることによって繊維の充填状態がより緻密化する。
【0051】
ここで、ニードルパンチを用いる場合はパンチ数、パンチ針の深さ、針の種類により繊維密度は制御可能である。パンチ数は600〜1500P/cm2が好ましい。針の深度は表面の凹凸およびニードルパターンのでない範囲にあれば良い。ただ、積層体に対しては、層間剥離強度を高める必要があるので、その深度は前記の欠点が出ない範囲で、より深くすることが好ましい。ニードル針としてはバーブ数の多い方が効率的であるが、針折れと繊維の切断が生じない範囲で1〜9バーブの中から選ぶことができる。またニードルによる繊維の破壊、およびニードルの破損を防ぐため、あらかじめ繊維表面に油剤を0.5〜5wt%付着させておくことが好ましい。
【0052】
ウェッブの交絡処理の際、できるだけ親糸である剥離分割型複合FYを極力剥離分割するように処理する必要があるので、ニードルパンチングの後に高圧水流交絡処理を行うことが効果的である。例えば、目付150g/m2の不織布を得ようとすれば、孔径0.05〜0.5mmのオリフィスが0.5〜1.5mmの間隔で設けられたノズルから水圧50〜200kg/cm2の柱状水流を不織布の表面及び裏面にそれぞれ1〜4回ずつ噴射すればよい。
【0053】
また、より分割処理を念入りに行うため、交絡後に機械的および/または化学的な剥離分割処理を更に施すことが好ましい。機械的な分割処理としては、ローラー間で加圧する方法、超音波処理を行う方法、衝撃を与える方法など公知の方法を用いることができる。化学的な分割処理としては、該剥離分割型複合繊維を構成する少なくとも1成分を膨潤させるような薬液、または少なくとも1成分を溶解するような薬液により浸漬処理するなど従来公知の方法を用いることができる。これらの分割処理は単独で行っても、組み合わせても良い。
【0054】
分割処理後の極細FYの繊度は、0.01〜0.5デニールである。0.01デニール未満の場合には、剥離分割後にあまりにも繊維が細いため繊維間で膠着が生じ、人工皮革として高分子弾性体を含浸せしめることが困難となる。また0.5デニールを超えると極細FYが太すぎるため本発明の目的となる均一で微細な構造の不織布が得られない。このように交絡、剥離分割処理された不織布は、既に述べた本発明の一大特徴とするリラックス状態での加熱収縮処理に付される。この加熱収縮処理を施す時期は、高圧水流処理や化学的な処理を施し水洗した場合は、収縮性能が残るような温度で乾燥させて後でもよいし、そのまま加熱収縮処理を施してもよい。
【0055】
上述の面積収縮率および見掛け密度は、本発明の剥離分割型複合FYの熱収縮成分の収縮度、交絡度、収縮工程の加熱温度、あるいは他の繊維の混綿度、混合度等によって容易に調整することができる。
【0056】
(II)ここまで、剥離分割型複合FYを用いた場合を説明してきたが、次に海島型複合FYを用いた場合について説明する。
使用される海島型複合FYは、島成分に熱収縮性の異なる2種以上の繊維形成性重合体(剥離分割型複合FYで例示したものと同様)を配し、海成分に溶解除去し易い任意の重合体を配せば良い。ここで島成分の2種の繊維形成性重合体は、特に非相溶性である必要はない。そして、ウェッブ化および交絡処理した後は、任意の溶剤により海成分を溶解除去する以外は剥離分割型複合FYと同様な処理を行えば、本発明の不織布が得られる。
【0057】
(III)以上に説明した本発明の不織布に高分子弾性体が含浸複合化され人工皮革となされる。高分子弾性体としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルエーテル共重合体、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、ネオプレン、スチレンブタジエン共重合体、シリコーン樹脂、ポリアミノ酸、ポリアミノ酸ポリウレタン共重合体などの合成樹脂あるいは天然高分子樹脂、あるいはこれらの混合物などがある。さらに必要によっては顔料、染料、架橋剤、充填剤、可塑剤、各種安定剤などを添加してもよい。ポリウレタンあるいはこれに他の樹脂を加えたものは柔軟な風合いが得られるので好ましく用いられる。
【0058】
上記の高分子弾性体は有機溶剤の溶液、または分散液として、あるいは水溶液、または水分散液として本発明の不織布に含浸処理される。凝固方法は、従来慣用されている方法を採用することができる。例えば、乾燥による方法があり、好ましくは感熱凝固法があり、さらに好ましくはW/O型エマルジョンからの乾燥による多孔凝固法がある。さらに例えば水と混和性のある有機溶剤から水を主体とした凝固浴中で多孔凝固させる湿式法がある。
【0059】
含浸される高分子弾性体の量の制御は含浸液中の高分子弾性体の濃度調整、および含浸時の含浸液のウエットピックアップ調整で簡単に達成できる。本発明では、該不織布と高分子弾性体との割合は重量比で97:3〜50:50であり、好ましくは90:10〜60:40である。高分子弾性体の比率が3重量%未満の場合は、柔軟なものが得られ易いが、腰がなく、また銀付調人工皮革となすため表面に高分子弾性体の膜を形成する場合の接着強度が得られ難い。また、該比率が50重量%を超えると高分子弾性体のゴム弾性の特徴が性格が強くなり過ぎる。
【0060】
本発明の不織布は構成フィラメントが緻密に均一に絡合されているため、含浸される高分子弾性体の量が少なくても腰の強い人工皮革が得られる。含浸処理された本発明の人工皮革は、その見掛け密度が0.27〜0.70g/cm3の範囲に収まっている必要がある。人工皮革の見掛け密度は使用する不織布の見掛け密度と含浸される高分子弾性体の含浸量によって決定されるが、いずれにしても0.27g/cm3未満の場合は、構造の均一性が得られ難く、腰の強さや必要強度が得られない。一方、見掛け密度が0.70g/cm3を越えると腰の強さは得られるが、柔軟性およびドレープ性が得られない。
【0061】
本発明の人工皮革の断面構造は、不織布と同様に走査型電子顕微鏡の画像解析による方法で測定される。本発明の人工皮革の断面におけるフィラメントと高分子弾性体とが形成する空隙の平均面積は70〜120μm2であり、その時の標準偏差の値は50〜250μm2の範囲に収まっていることが必要である。空隙の平均面積と標準偏差との上限を設けた理由は、不織布と同様に大きな空隙(人工皮革では400μm2以上)をなくすためである。不織布の場合は後工程に樹脂含浸があるので、800μm2以上のものがなければ良かったが、樹脂含浸した人工皮革の状態では、400μm2以上の大きな空隙がないことが、折り曲げ皺のない銀付き調の人工皮革を得るために必要である。
【0062】
つまり、平均面積が120μm2を超えると、本発明の緻密さが得られず、銀付き調の人工皮革とした場合折り曲げ皺が発生する。一方該空隙の平均面積が70μm2に満たない場合は緻密になりすぎて強い腰が得られるが、柔軟性やドレープ性が得られない。また、均一性を表わす標準偏差の値は小さい程好ましいが、現実には50μm2程度が限度であり、250μm2を超えると、例え空隙の平均面積が範囲(要件g)に入っていても大きな空隙が散在することを意味し、銀付き調の人工皮革となした場合、折り曲げ皺が発生する。
【0063】
上記の人工皮革は、表面を起毛すればスェード調、あるいはヌバック調の人工皮革となすことができる。この際、染色によってさらに価値を高めてもよい。また、表面に高分子弾性体の皮膜を設けることにより銀付調の人工皮革としてもよい。
【0064】
従来の銀付調の人工皮革は、ベース基材となる含浸不織布が緻密性および均一性の点で満足できるものではなく、折り曲げ皺が発生し易いものであった。そこで、該皮革を揉むことによって、折り曲げ皺をあらかじめ付与したり、表面に形成する高分子弾性体の層を必要以上に厚くしたりしてその欠点を補ってきた。それに対し、本発明の不織布をベースとした人工皮革は、表面に形成する銀層としての高分子弾性体の膜の厚さに関係なく、折り曲げ皺が発生しにくく、腰が強く柔軟でドレープ性のあるものとなる。
【0065】
銀層としての高分子弾性体を表面に形成する代表的な例としては、離型紙上に皮膜を形成して含浸不織布の表面に接着貼り合わせするラミネート方法があり、さらには高分子弾性体のW/O型エマルジョンを含浸不織布の表面に塗布し、乾燥によって多孔層を形成してエンボス加工、グラビア塗装などにより銀層を形成する方法、あるいは該多孔層の表面にラミネートにより皮膜を形成する方法、さらには高分子弾性体の水混和性有機溶剤溶液を含浸不織布の表面に塗布し、水を主体とした凝固浴中で多孔凝固させる湿式法で形成した多孔層にエンボス加工、グラビア塗装などで銀層を形成させる方法、あるいは該多孔層の表面イラミネートにより皮膜を形成する方法がある。
【0066】
以上のようにして得られた人工皮革は、柔軟性、表面の柄、色、艶などが調整されてスポーツシューズのアッパー材および副資材、サッカーボール、バスケットボール、バレーボールなどの各種ボール、鞄、ハンドバッグ、アッタシュケースなどの鞄袋物、ソファー、椅子張り、自動車シートなどのシート類、ゴルフ手袋、野球グローブ、スキー手袋などの手袋類、あるいは衣料などの広い用途に好ましく使用することが可能となる。
【0067】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断らない限り重量基準である。また、厚さ、引張応力、引張強力、破断伸度、曲げ硬さ、圧縮応力、および皮革ライク度はそれぞれ以下の方法で測定したものであり、特に断らない限り、測定値は5点の平均値である。
【0068】
(1)厚さ:厚み測定器(株式会社大栄科学精器製作所製、商品名「PEACOCKモデルH」)を使用し、試料1cm2当たり180gの荷重を加えた状態で測定した。
【0069】
(2)引張応力、引張強力および破断伸度:JIS L−1096法に準じ、幅5cm、長さ15cmの試料片をつかみ間隔10cmで把持し、定速伸長型引張試験機を用いて引張速度30cm/分で伸長し、5%と20%伸長時の応力を引張応力、切断時の荷重値および伸長率をそれぞれ引張強力、破断伸度とする。
【0070】
(3)曲げ硬さ:試験片25mm×90mmを準備し、長手方向片端の20mmを保持具で保持し、保持具より20mmの位置にあるUゲージの測定部に試験片のもう一方の片端の先端から20mmの中央部があたるように保持具をスライドさせて固定し、固定してから5分後の応力を記録計より読み取り、幅1cm当たりの応力に換算し、単位はg/cmで表わす。該曲げ硬さは、布帛の柔軟度を表し、低いものほど柔軟である。
【0071】
(4)圧縮応力:試験片25mm×90mmを準備し、長手方向片端の30mmの位置で折り曲げて、20mmの間隔にセットされた平板とUゲージの測定板との間に固定し、次いでUゲージの測定板を10mm/分の速度で平板と水平に下方へ移動させて試験片を圧縮し、平板とUゲージとの間隔が5mmとなったときの応力を記録計より読み取り、幅1cm当たりの応力に換算し、単位はg/cmで表わす。該圧縮応力は、布帛の腰の強さを表し、高いものほど腰が強い。
【0072】
(5)皮革ライク度:天然皮革は、その構造の緻密性と均一性によってもたらせれる“柔らかくて腰が強い”特性があり、この指標として、(圧縮応力)/(曲げ硬さ)を皮革ライク度として表わす。皮革ライク度は、天然皮革の一般的なカーフの値90〜130の範囲に入るものが良い。
【0073】
(6)分割率:剥離分割型複合FYの分割率は、不織布の断面を電子顕微鏡で200倍で撮影し、100本のフィラメントの断面を測定し、全体の面積と未分割(完全に分割していない、例えば、2個や3個程度に分割したものも含む)のフィラメントの断面積の差を全体の面積で除した値であり、値が大きいほどよく分割していることを示す。
【0074】
(7)伸び止め感:20%引張り応力を、5%引張り応力で割った場合の比が大きいものほど良く、経方向の該引張り応力の比と横方向の該引張り応力の比との平均値が6以上のものが良い。
【0075】
(8)折り曲げ皺:縦横各4cmの試料を作成し、該試料の縦方向(横方向)の側縁部の端から1cmを把持し、該把持部の間隔を、表面が内側に折れ曲がるように2cmから1cmにまで狭めた際の、表面に発生する折り曲げ皺の本数を目視にて確認し、0本を◎、1〜2本を○、3〜7本を△そして8本以上を×として表した。
【0076】
[実施例1]
(不織布-1の作成) 第1成分としてテレフタル酸ジメチルに対してイソフタル酸ジメチルが10mol%を含む酸成分と、所要量のエチレングリコールとを重縮合した共重合ポリエチレンテレフタレート(O−クロロフェノール中の極限粘度0.64)、第2成分としてナイロン−6(m−クレゾール中の極限粘度1.1)を用いて、エクストルーダーにて溶融後フィラメント当たりの吐出量を2g/分にて中空口金より吐出し、エジェクター圧力3.5kg/cm2にて高速牽引した後、空気流とともに分散板に衝突させ、フィラメントを開繊し、図1に示すような16分割タイプの多層貼合せ型断面をもつ剥離分割型複合繊維からなるウエブとして補集ネットコンベアーで補集した。両成分の容積比率は50:50であり、両成分は交互に配列しており、配列数は16であった。この時のウェッブの目付けは、163g/m2であった。
【0077】
次いで、このウエブにシリコンを主成分とする油剤をスプレーで2wt%付着させた後、600P/cm2でニードルパンチング処理を行い、その後、高圧水流交絡処理を表面側から水圧50kg/cm2で1回、140kg/cm2を2回、続けて裏面側から水圧140kg/cm2を2回処理した。
【0078】
上記のウェッブを85℃の温水槽の中に30秒間浸漬させた後、110℃の熱風乾燥機で乾燥させて、不織布−1を得た。
【0079】
[実施例2]
(不織布−2の作成) 中実タイプの口金を用いて、繊維断面を図2に示すような形状に変更した以外は実施例1と同様な操作を繰り返し不織布−2を得た。
【0080】
[実施例3]
(不織布−3の作成) 実施例1において、高圧水流交絡処理を表面側および裏面側から各水圧70kg/cm2で1回ずつ処理し、引き続いてベンジルアルコール15%と非イオン界面活性剤1%の水エマルジョン中で80℃で10分間処理する以外は同様の操作を繰り返し、不織布−3を得た。
【0081】
[比較例1]
(不織布−4の作成) 加熱収縮処理を100℃の熱水に変えて、面積収縮率で14%収縮させた以外は、実施例2と同様の操作を繰り返し、不織布−4を得た。
【0082】
[比較例2]
(不織布−5の作成) 熱収縮処理を施さない以外は実施例2と同様の操作を繰り返し不織布−5を得た。
【0083】
[比較例3]
(不織布−6の作成) 加熱収縮処理が160℃の乾熱に変えた以外は、実施例2と同様の操作を繰り返し、不織布−6を得た。
【0084】
[比較例4]
(不織布−7の作成) ポリエチレンテレフタレートがイソフタル酸を含まない以外は実施例2と同様な操作を繰り返し、不織布−7を得た。
【0085】
実施例1〜3および比較例1〜4の結果を表1に示した。
【0086】
【表1】
【0087】
以下、表1の結果について考察する。本発明の実施例1〜3は、すべての要件を満足しており、得られた不織布の断面は、緻密で均一な構造であった。特に実施例1の中空断面のものは、フィラメント間の集束形態が元々低いため、非常に均一で緻密な構造を有していた。比較例1は、100℃の沸水で収縮処理したため、見掛け密度および空隙の平均面積は満足しているものの、部分的に800μm2を越える大きな空隙があり、緻密ではあるが均一な構造ではなかった。比較例3は、冒頭に引用した特開平10−53948号公報の方法によるものである。ここでは、160℃以上という高温の乾熱で収縮処理したため、見掛け密度は満足しているものの、フィラメントの集束形態の破壊が十分に進行せず、800μm2以上の大きな空隙が多数存在し、均一で緻密な構造のものではなかった。比較例2および4は、収縮処理が十分に施されてなく、得られた不織布の断面には、1500μm2を越える極めて大きな空隙があり、均一で緻密な構造のものではなかった。
【0088】
[実施例4]
(人工皮革−1の作成) 実施例1で作成した不織布−1にジフェニルメタンジイソシアネート、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリブチレンアジペートジオール、およびトリメチレングリコールから合成された100%伸長応力110kg/cm3のポリウレタンの16%メチルエチルケトンスラリー液100部に水を35部分散させたW/O型エマルジョンを含浸させ、表面の余分なエマルジョン液を掻き落として温度45℃、相対湿度70%の雰囲気中で凝固させた後、乾燥して人工皮革−1を得た。
【0089】
[実施例5]
(人工皮革−2の作成) 不織布を実施例2で作成した不織布−2に変えた以外は、実施例4と同様な操作を繰り返し、人工皮革−2を得た。
【0090】
[実施例6]
(人工皮革−3の作成) 実施例3で作成した不織布-3に、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンアジペートジオール、およびエチレングリコールから合成された100%伸長応力105kg/cm3ポリウレタンの10%ジメチルホルムアミド溶液を含浸させ、表面の余分な溶液を掻き落として水中にて浸漬凝固させた後、洗浄、乾燥して人工皮革−3を得た。
【0091】
[比較例5〜8]
(人工皮革−4〜7の作成) 不織布を比較例1〜4で作成した不織布4〜7に変えた以外は、実施例4と同様な操作を繰り返し、人工皮革−4〜7を得た。
【0092】
以上の実施例4〜6および比較例5〜8の結果を表2に示した。
【0093】
【表2】
【0094】
以下、表2の結果について考察する。本発明の実施例4〜6は、すべての要件を満足しており、得られた人工皮革の断面は、緻密で均一な構造であった。また均一で緻密な構造を有するため、5%応力に比べ20%応力が非常に大きく、伸び止め感をも有するものであった。比較例1は、見掛け密度および空隙の平均面積は満足しているものの、部分的に400μm2を越える大きな空隙があり、緻密ではあるが均一な構造ではなかった。比較例3は、高温の乾熱で収縮処理したため、見掛け密度は満足しているものの、フィラメントの集束形態の破壊が十分に進行せず、400μm2以上の大きな空隙が多数存在し、均一で緻密な構造のものではなかった。比較例2および4は、収縮処理が十分に施されてなく、得られた不織布の断面には、1000μm2を越える極めて大きな空隙があり、均一で緻密な構造のものではなかった。特に構造が粗密な比較例6は、20%応力が低く、引張った際に伸び易く、伸び止め感を有するものではなかった。
【0095】
[実施例7〜9および比較例9〜12]
(銀付き調人工皮革−1〜7の作成) 実施例4〜6および比較例5〜8で作成した人工皮革−1〜7の表面に、離型紙上で作成した厚さ50μmのポリウレタンの皮膜を二液型ウレタン系接着剤を用いて接着し、乾燥および架橋反応を充分に行った後、離型紙を剥ぎ取り銀付調人工皮革−1〜7を得た。
以上の実施例7〜9および比較例9〜12の結果を表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
以下、表3の結果について考察する。実施例7〜9は、均一で緻密な構造を有するため、適度な柔軟性(曲げ硬さ)と、強い圧縮応力(腰)とを有し、皮革ライク度も110前後と非常に良く、表面を内側に折り曲げても、折り曲げ皺はほとんど見られない従来の銀付き調人工皮革には見られない均一で緻密なものであった。。比較例9および11は、緻密な構造を有し、腰の強いものであったが、内部に大きな空隙を有するため、表面を内側に折り曲げると、折り曲げ皺の発生が確認された。比較例10および12は、極めて大きな空隙があるため腰がなく、表面を内側に折り曲げると、折り曲げ皺が無数に発生するのが確認された。
【0098】
【発明の効果】
本発明製造方法の不織布は、極めて緻密にして均一かつ微細な構造を有するものである。かくして、該不織布あるいは該不織布を高分子弾性体に含浸させて得られる人工皮革は、柔らかくて腰が強く、均一で緻密な構造を有し、折り曲げ皺のない銀付き調人工皮革とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の剥離分離型複合FYの断面拡大図の一例を示す。
【図2】本発明の剥離分離型複合FYの断面拡大図の他方の一例を示す。
【符号の説明】
1 第一成分
2 第二成分
Claims (8)
- 単繊度が0.01〜0.5デニールの極細連続フィラメントからなる不織布の製造方法において、95℃の温水における熱収縮率が5%以上異なる少なくとも2種の極細連続フィラメントからなる極細連続フィラメントの集束体を含み、且つ絡合処理を施された見掛け密度が0.20〜0.42g/cm3のウェッブに、リラックス状態で60℃〜90℃の温水中および/または80〜120℃の乾熱で、少なくとも20秒以上収縮処理して、該集束体の集束形態を破壊し、該ウェッブを面積収縮率で5〜50%収縮させ、下記要件(a)を満足させることを特徴とする人工皮革用不織布の製造方法。
(a)不織布の見掛け密度が0.25〜0.45g/cm 3 であること。 - 該絡合処理を施されたウェッブの見掛け密度が、0.27〜0.40g/cm3である請求項1に記載の人工皮革用不織布の製造方法。
- 該ウェッブの面積収縮率が5〜20%収縮である請求項1または2に記載の人工皮革用不織布の製造方法。
- 該リラックス状態が、ウェッブを3〜30%のオーバーフィード率の下に一方向に前進させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工皮革用不織布の製造方法。
- ウェッブの前進方向と直交するウェッブが無把持状態である請求項4記載の人工皮革用不織布の製造方法。
- 該極細連続フィラメントが、互いに非相溶性の2成分以上の繊維形成性重合体を貼り合せた剥離分割型複合連続フィラメントを剥離分割して生起されたものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の人工皮革用不織布の製造方法。
- 互いに非相溶性の繊維形成性重合体の組合せが、ポリアミドとポリエステルとである請求項6に記載の人工皮革用不織布の製造方法。
- 不織布が、下記の要件(b)、(c)を満足する請求項1〜7のいずれか1項記載の人工皮革用不織布の製造方法。
(b)不織布断面におけるフィラメント間空隙の平均面積が走査型電子顕微鏡の画像解析による測定値で70〜220μm2の範囲にあること;および
(c)不織布断面における繊維間空隙の面積の標準偏差が走査型電子顕微鏡の画像解析による測定値で200〜500μm2の範囲にあること。
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