JP3176592B2 - 長繊維不織布およびそれを含む人工皮革 - Google Patents

長繊維不織布およびそれを含む人工皮革

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長繊維不織布およ
びそれを含む人工皮革に関する。特に、本発明は、人工
皮革用の基布として有利に用いることのできる長繊維不
織布およびこの不織布を用いてなる人工皮革に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、皮革代替物としての人工皮革は、
軽さ、イージーケアなどの特徴が消費者に認められてき
ており、衣料用、一般資材、スポーツ分野などに幅広く
利用されるようになっている。しかしながら、天然皮革
の有する柔軟性、緻密な構造からくるドレープ性等につ
いても人工皮革に要求されてきており、これらの要求特
性に応えるために種々の提案がなされてきている。
【0003】特に、長繊維からなる不織布については、
短繊維からなる不織布に比べて、その製造方法として原
綿供給部、開繊装置、カード機、クロスレイ機などの一
連の大型設備を必要とせず、また長繊維からなることか
ら強度も短繊維の交絡不織布に比べても大きいという利
点があるため、各種提案がなされている(特公昭44−
29543号公報、特公昭60−12465号公報
等)。
【0004】さらに、長繊維からなる不織布において
は、短繊維からなる不織布と比べてカード工程も不要で
あるので、繊維に高い捲縮を付与する必要も無く、細い
繊度のものでも直接長繊維不織布とすることが可能であ
り、繊維間の空隙率をより低くして不織布を緻密化する
ことも容易である。さらに、審美性を向上させるため、
特公昭59−42108号公報においては、樹脂と単繊
維繊度0.3de以下の長繊維極細繊維集合体から作ら
れた絡合不織布とからなり、引裂強力が大きく、柔軟で
耐揉性に優れた不織布が提案されている。しかし、その
表面は少なくとも1つの表面が該繊維と該樹脂の混在に
よって形成された面であり、スエード調の立毛面、ある
いはポリマー単独の平滑面、いわゆる銀付き面とは異な
るものである。
【0005】また、特開平3−213555号公報にお
いては、2成分系剥離分割型複合繊維を用いた不織布が
提案されている。該公報によればこの不織布は医療用、
バッグ用などに用いることができると記載されている
が、繊維間が少なくとも1つの繊維形成成分である樹脂
によって部分的に接着されており、強力は高いものの、
反発性が大きすぎ、特に衣料用の人工皮革としては不適
当である。
【0006】さらに、特開平10−53948号公報で
は、原糸として剥離分割型複合繊維からなる集合体を、
ニードルパンチングや高圧水流交絡法などで機械的に交
絡させつつ、該長繊維を剥離分割して得た不織布を、沸
水または水蒸気にて加熱することで熱収縮させて、さら
に緻密化させる方法も提案されている。この方法で得ら
れた不織布を用いて得られた人工皮革は、熱収縮によっ
て見掛け密度が高く、それに伴って構造も緻密化されて
おり、人工皮革としての腰は有するものの、柔軟性に欠
け、また人工皮革の表面に高分子弾性体などの皮膜を形
成させた、いわゆる銀付き調の人工皮革を形成した場合
には、該人工皮革を折り曲げると大きな折り曲げ皺が発
生するという致命的な欠陥を内在しており、該人工皮革
を用いて特に銀付き調の人工皮革が多用されている、
靴、鞄、手袋あるいは家具などを成形した場合、当初の
審美性が使用に伴って損なわれるという問題があった。
【0007】一方、スウェード調人工皮革においても、
天然皮革のように緻密な立毛密度を有し、表面タッチに
優れるものは未だ得られておらず、天然皮革様の、柔軟
且つ伸び止め感のある風合いと審美性とを兼備した人工
皮革が要望されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的
は、上述の従来技術が有する問題点を解消し、人工皮革
に転換した際に、天然皮革様の柔らかさと腰とを兼備
し、折り曲げた時の座屈皺が無いか、または折り曲げ皺
の発生し難い銀付き調人工皮革や、従来にない優れたき
めの細かい表面タッチのヌバック調人工皮革に転換する
ことのできる長繊維不織布を提供することにある。
【0009】また、本発明の第2の目的は、上記の長繊
維不織布より転換される人工皮革を提供することにあ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、長繊維不
織布をその基布とする人工皮革において、柔軟性と腰の
強さとの両立、スウェード調の優れた表面タッチ、およ
び銀付き調皮革の折り曲げた時の座屈皺(以下、単に折
り曲げ皺と称することもある)の原因が不織布構造にあ
ることに着目し、極細繊維の交絡からなる不織布構造の
特性とその形成方法について鋭意検討を行って、人工皮
革の柔らかさと腰の強さとを兼備するためには、不織布
密度が緻密で且つ人工皮革の厚み方向に配列している繊
維束の本数が特定の範囲にあることが必須要因であるこ
とを究明した。
【0011】また、銀付き調人工皮革における折り曲げ
皺の発生が、剥離分割型複合繊維を用いた場合には、剥
離分割した極細繊維同士が、該複合繊維中に配されてい
た状態に近い繊維間距離で、依然として集合した状態に
あり、不織布中には800μm2 以上の大きな空隙が内
在しているという、剥離分割型複合繊維固有の構造に起
因していることをも究明した。すなわち、銀付き調人工
皮革における折り曲げ皺は、剥離分割型複合繊維の単糸
から剥離分割して生じた極細長繊維群が集合したマルチ
フィラメント状態で存在するので、剥離分割型複合繊維
間の交絡によって形成される不織布間に存在する大きな
空隙が極細長繊維群によって充填されないために生じる
ということが判明したのである。
【0012】一方、海島型複合繊維から形成された長繊
維不織布の場合には、天然皮革様の柔らかく充実感のあ
る風合いと、ヌバック調人工皮革とした場合の表面のタ
ッチは、上述したような繊維束を有する特定の構造と、
該繊維束に起因する物性から得られることを究明し、本
発明を完成するに至った。すなわち、本発明の第1の目
的は、繊維形成能を有する熱可塑性ポリマーにより形成
された長繊維からなり、下記(A)〜(D)の各要件を
同時に満足する長繊維不織布により達成することができ
る。
【0013】(A)繊維束が、不織布の厚み方向と平行
な任意の断面において、1cm当たり5〜70本の範
囲で存在すること。 (B)繊維束の占める総面積が、不織布の厚み方向に直
交する任意の断面において、断面積の5〜70%の範囲
であること。 (C)見掛け密度が0.10〜0.50g/cm3 であ
ること。
【0014】(D)不織布表面における繊維の切断端が
表面積1mm2 当たり5〜100個の範囲で存在してい
ること。また、本発明の第2の目的は、上記した本発明
の不織布およびこれに含浸された高分子弾性体を含み、
下記(I)〜()の各要件を同時に満足する人工皮革
により達成される。
【0015】(I)繊維束が、人工皮革の厚み方向と平
行な任意の断面において、1cm当たり5〜70本の
範囲で存在すること。 (J)繊維束の占める総面積が、人工皮革の厚み方向に
直交する任意の断面において、断面積の5〜70%の範
囲であること。 (K)含浸された高分子弾性体のうち、繊維間の接着に
寄与していない高分子弾性体が少なくとも一部存在する
こと。
【0016】(L)人工皮革の縦方向の20%引張応力
(σ20)と横方向の20%引張応力(σ20)とが夫
々、1.5〜10kg/cmの範囲にあること。 (M)人工皮革の縦方向の20%引張応力(σ20)と
曲げ硬さ(Rb(g/cm))との比および人工皮革の
横方向の20%引張応力(σ20)と曲げ硬さ(Rb
(g/cm))との比の平均値が3〜30であること。
【0017】(N)人工皮革の見掛け密度が0.20〜
0.60g/cm3 であること。
【0018】
【発明の実施の形態】先ず、本発明の長繊維不織布が有
するべき下記要件(A)〜(D)について詳述する。こ
れらの要件は、従来にない人工皮革を得るために用いる
ことのできる基布としての長繊維不織布に必須の要件で
ある。要件(A)について説明すれば、繊維束の本数
は、長繊維不織布の厚み方向と平行な任意の断面におい
て、幅1cm当たり5〜70本の範囲で存在する必要が
ある。
【0019】これは後述する不織布段階での交絡方法に
より発現する構造であり、表面に平行に配列しがちな長
繊維を、不織布の厚み方向に十分に絡合させ、結果とし
て人工皮革としたときの曲げ硬さをも低くし、緻密であ
りながら柔らかさと腰の強さ、充実感を両立させること
のできる構造を表している。また、厚み方向に配列させ
ることにより、層間剥離強度を大きく向上させる効果も
有するとともに適度な圧縮弾性をも発揮することができ
る。
【0020】ここで、該繊維束の本数が、幅1cm当た
り5本未満では上記効果が十分に表れず、逆に70本を
越えるようにすることは長繊維を交絡するに際し、事実
上困難である。該繊維束本数の好ましい範囲は10〜5
0本である。要件(B)について説明すれば、該繊維束
の占める総面積が、不織布の厚み方向に直交する任意の
断面において、該断面積の5〜70%であることが必要
である。
【0021】長繊維不織布の厚み方向に直交する任意の
断面において、繊維束は容易に観察することが可能であ
り、上記占有面積割合とすることによって、不織布の十
分な絡合と、人工皮革とした場合の緻密さと柔らかさの
両立、およびヌバック調人工皮革としたときの表面の立
毛タッチを優れたものとすることのできる構造とするこ
とができる。該占有総面積が3%未満であると上記効果
が十分に表れず、逆に70%を越えると事実上長繊維同
士を交絡させることが困難である。該占有面積の好まし
い範囲は、8〜50%である。
【0022】さらに、不織布の厚み方向に直交する任意
の断面において、該断面の面積1mm2 当たりに存在す
る繊維束の本数は、2〜20本であることが好ましい。
本発明の不織布における必須の要件である要件(A)お
よび要件(B)は、特に、従来公知の長繊維不織布より
なる人工皮革が持ち得なかった、柔らかさに寄与するも
のであって、且つ反発弾性が本発明で特定する範囲とな
るために必要な構造である。
【0023】要件(C)について説明すれば、長繊維不
織布の見掛け密度は、0.10〜0.50g/cm3
あることが必要である。該見掛け密度は、該長繊維不織
布の均一構造化および得られる長繊維不織布の有する腰
やドレープ性に寄与するものであり、好ましくは0.2
0〜0.40g/cm3 である。該見掛け密度が0.1
0g/cm3 未満であると均一で緻密な構造の不織布は
得られず、一方0.50g/cm3 を越えると腰は強い
もののドレープ性が低い不織布となる。
【0024】要件(D)について説明すれば、長繊維不
織布表面における繊維の切断端が、表面積1mm2 当た
り5〜100個の範囲で存在している必要がある。これ
は、不織布表面に平行に配列しがちな長繊維をある程度
切断することにより、不織布に対して柔らかさを付与す
るためである。該切断端が5個に満たない場合には、切
断端があったとしても柔らかさを発現することはでき
ず、後述する人工皮革へと転換しても柔らかなものは得
ることができない。一方、100個を越える場合には、
不織布の強度が低下してしまう。該切断端の好ましい範
囲は、10〜50個/mm2 である。
【0025】なお、長繊維として剥離分割型複合繊維を
用いる場合には、該切断端数は剥離分割後の不織布を、
長繊維として混合紡糸長繊維および/または混合紡糸長
繊維を用いる場合には、該切断端数は海成分を抽出除去
する前の不織布をそれぞれ上記の範囲とすればよい。こ
こで、本発明における“繊維束”及び要件(A)、
(B)の各要件を、添付図面をもって具体的に且つ詳細
に説明する。図1および図2は、本発明の実施例6の長
繊維不織布を用いて得られた人工皮革の、厚み方向に平
行な任意の断面図と厚み方向に直交する任意の断面図で
あって、この実施例6の長繊維不織布を用いて得られた
人工皮革の厚み方向と平行な任意の断面と厚み方向に直
交する任意の断面とを撮影した電子顕微鏡写真図である
図4(35倍)及び図5(50倍)の夫々を写し取った
ものである。
【0026】図1および図2における1が本発明でいう
“繊維束”であって、該長繊維不織布の厚み方向と略平
行に、繊維が束状態で配列しており、該束の直径が20
〜500μmであり、長さとしては不織布の厚み方向と
平行に、該長繊維不織布の厚みの半分以上の長さを有し
ているものをいう。また、ここで、幅1cm当たりと
は、上述の任意の不織布断面において、該不織布の厚み
方向と直交する直線距離1cm当たりのことをいう。
【0027】さらに、該繊維束は、極細繊維より構成さ
れることが好ましく、該極細繊維はその集合状態が密で
あっても粗であってもどちらでもよく、また該極細繊維
束を生じることが可能な長繊維、例えば、海島型繊維を
用いる場合には、該繊維における海成分を抽出・除去す
る前のものであっても、長繊維不織布を形成した後ある
いは人工皮革へと転換したあとで極細化可能なものであ
れば問題無く使用することができる。
【0028】また、本発明における要件(D)につい
て、添付図面をもって具体的に説明する。図3は、本発
明の長繊維不織布の表面図であって、実施例3において
得られた長繊維不織布の表面を撮影した電子顕微鏡写真
図である図6(200倍)を写し取ったものである。図
3におけるが繊維の切断端であって、該切断端は20
個/mm2 の密度で存在する。
【0029】一方、比較として図7に比較例4において
得られた従来公知の長繊維不織布表面の電子顕微鏡写真
図を示す。本発明の長繊維不織布表面を撮影した写真図
6と該写真図7とを比較すると明らかなように、図7に
おいて長繊維不織布表面に存在する繊維の切断端は1個
/mm2 以下であり、前述したように、本発明の長繊維
不織布においては、この繊維の切断端を特定の範囲で存
在せしめることによって、望ましい表面の柔らかさが発
現されるのである。
【0030】本発明において、長繊維不織布の厚み方向
の圧縮率は10〜30%の範囲であることが好ましい。
該圧縮率とは、100mm×100mmの試料片を準備
し、水平台上に設置して80g/cm2 の荷重をかけた
状態で試料片中央の厚さ(A)を測定し、次に500g
/cm2 の荷重をかけて上記と同じ位置の厚さ(B)を
測定し、〔(A−B)/A〕×100(%)として算出
したものであって、不織布に荷重をかけた際に元の厚み
に対してどれだけ厚みが減少したかを知る目安となり、
該圧縮率が上記の範囲内にある場合に、得られる不織布
の硬さがさらに良好なものとなる。該圧縮率は、12〜
18%の範囲であることがさらに好ましい。
【0031】本発明において、長繊維不織布を2成分以
上のポリマーからなる剥離分割型複合繊維から得られた
極細繊維から構成しようとする場合には、下記要件
(E)〜(H)を満足するようにすることが好ましい。 (E)各繊維の単繊維繊度が0.01〜0.5deであ
ること。 (F)不織布の見掛け密度が0.25〜0.45g/c
3 であること。
【0032】(G)不織布の任意の断面における空隙の
平均面積が走査型電子顕微鏡の画像解析による測定方法
の値で70〜300μm2 であること。 (H)不織布の任意の断面における空隙の面積の標準偏
差が走査型電子顕微鏡の画像解析による測定方法の値で
200〜450μm2 である均一構造を有すること。
【0033】以下、これらの各要件につき説明するなら
ば、要件(E)のように長繊維不織布を構成する単繊維
繊度0.01〜0.5deとなるようにすることによっ
て、人工皮革に転換する際に、高分子弾性体を含浸させ
ることがさらに容易になるとともに、本発明の目的であ
る均一で微細な構造を有する不織布を得ることがより容
易になる。
【0034】要件(F)について説明すると、見掛け密
度は0.25〜0.45g/cm3であることが好まし
く、特に好ましい範囲は0.3〜0.40g/cm3
ある。上記の範囲にある時には、収縮処理による不織布
構造の均一化によって発現される腰の強さとドレープ性
とがより優れたものとなる。要件(G)、(H)につい
て説明すると、本発明の長繊維不織布の任意の断面にお
ける空隙の平均面積を、従来の不織布が折り曲げ皺を引
き起こす800μm 2 以上の大きな面積を有していたこ
とに比べて、高々300μm2 に抑えたものである。一
方、折り曲げ皺とは相関の無い、不織布の腰やドレープ
性といった面から、70μm2 以上とすることが好まし
い。該平均面積が70μm2 未満の場合には、従来にな
い高密度でかつ均一な緻密な不織布となって腰は強い
が、ドレープ性の低い不織布となることがある。
【0035】さらに、該空隙面積の標準偏差は、上述の
平均面積と同様に、従来の不織布が折り曲げ皺を引き起
こす800μm2 以上の大きな空隙を有していたことに
比べて、高々450μm2 に抑えられている。該標準偏
差が450μm2 を越える場合には、上述の平均値が本
発明の目的とする範囲に入っていても大きな空隙が散在
し得ることを意味し、折り曲げ皺が発生しやすくなる。
一方、該偏差は小さいほど均一な構造となるので好まし
いが、現実的には200μm2 程度がほぼ限度である。
【0036】なお、本発明における空隙面積とは、後述
の実施例に記載した、走査型電子顕微鏡の画像解析によ
り測定されたものである。これらの(E)〜(H)の要
件全てを満たす、剥離分割型複合繊維からなる本発明の
極細長繊維不織布は、大きな空隙がほとんど無く、均一
で緻密な構造を有するものとなり、柔軟な風合いで、且
つ折り曲げ皺のない銀付き調の人工皮革へと転換するた
めの長繊維不織布としてさらに有用である。
【0037】また、本発明の長繊維不織布を構成する長
繊維を、島成分としての繊維形成能を有する熱可塑性ポ
リマーと、海成分としてのポリオレフィン系ポリマーと
が配された海島型複合繊維として、海島型混合紡糸長繊
維や海島型多芯複合紡糸長繊維とすることもできる。さ
らに、本発明の長繊維不織布を構成する長繊維を、下記
ポリマーブレンド(a)とポリマーブレンド(b)とを
多層接合型に貼り合わせた海島型混合複合紡糸長繊維と
することもできる。
【0038】ポリマーブレンド(a):島成分としての
繊維形成能を有する熱可塑性ポリマー(A)と海成分と
してのポリオレフィン系ポリマー(B)とのポリマーブ
レンド。 ポリマーブレンド(b):島成分としての繊維形成能を
有する熱可塑性ポリマー(A’)と海成分としてのポリ
オレフィン系ポリマー(B’)とからなるポリマーブレ
ンド。
【0039】上記の長繊維を形成するための、繊維形成
能を有する熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレンテ
レフタレート、エチレンテレフタレート単位を80モル
%以上含む共重合ポリエチレンテレフタレート、ナイロ
ン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、
ポリプロピレン、ポリウレタンエラストマー、ポリエス
テルエラストマー、ポリアミドエラストマーからなる群
から選ばれた、少なくとも1種のポリマーであれば、い
ずれも問題なく用いることができる。
【0040】次に、本発明における人工皮革について説
明する。本発明における人工皮革は、上述したような本
発明の不織布およびこれに含浸された高分子弾性体を含
み、下記(I)〜()の要件を同時に満足するもので
ある。 (I)繊維束が、人工皮革の厚み方向と平行な任意の断
面において、幅1cm当たり5〜70本の範囲で存在す
ること。
【0041】(J)繊維束の占める総面積が、人工皮革
の厚み方向と直交する任意の断面において、断面積の5
〜70%の範囲であること。 (K)含浸された高分子弾性体のうち、繊維間の接着に
寄与していない高分子弾性体が少なくとも一部存在する
こと。 (L)人工皮革の縦方向の20%引張応力(σ20)と
横方向の20%引張応力(σ20)とが夫々、1.5〜
10kg/cmの範囲にあること。
【0042】(M)人工皮革の縦方向の20%引張応力
(σ20)と曲げ硬さ(Rb(g/cm))との比およ
び人工皮革の横方向の20%引張応力(σ20)と曲げ
硬さ(Rb(g/cm))との比の平均値が3〜30で
あること。 (N)人工皮革の見掛け密度が0.20〜0.60g/
cm3 であること。ここで、要件(I)について説明す
るならば、繊維束の本数は、人工皮革の厚み方向と平行
な任意の断面において、幅1cm当たり5〜70本の範
囲で存在する必要がある。繊維束が該範囲にて存在する
ことによって、人工皮革としての曲げ硬さを適度なもの
とし、緻密な構造を有しつつ、柔らかさと腰の強さ、充
実感を兼備する構造を有するものとなる。
【0043】なお、該繊維束の本数は、本発明の人工皮
革に転換するための不織布が備えているべき要件でもあ
る。該繊維束の本数は、10〜50本であることが好ま
しい。要件(J)について説明するならば、該繊維束の
占める総面積が、人工皮革の厚み方向に直交する任意の
断面において、該断面積の5〜70%の範囲であること
が必要である。
【0044】該総面積は、人工皮革の緻密さと柔らかさ
の両立、およびヌバック調人工皮革としたときの表面の
優れた立毛タッチに寄与し、該総面積が5%未満である
と上記効果を十分に発揮することができず、一方70%
を越えると事実上長繊維の交絡が困難である。該総面積
は、好ましくは、8〜50%である。要件(K)につい
て説明するならば、不織布に含浸した高分子弾性体のう
ち、繊維間の接着に寄与していないところが少なくとも
一部存在していることが必要である。
【0045】通常の人工皮革においては充実感を付与す
るために、基材となる不織布などに高分子弾性体を含浸
付与するものであるが、その際高分子弾性体によって繊
維間を完全に接着固定してしまうと、高分子弾性体の弾
性が過分に人工皮革の物性に反映されてしまい、天然皮
革が有するような柔らかさを得ることができない。要件
(L)について説明するならば、人工皮革の縦方向の2
0%引張応力(σ20)と横方向の20%引張応力(σ
20)とが夫々、1.5〜10kg/cmの範囲にある
必要がある。該引張応力が1.5kg/cm未満では伸
び止め感に欠けて腰の弱いものとなり、10kg/cm
を越えると柔らかさが得られ難くなる。好ましい範囲は
2〜6kg/cmである。
【0046】ここで、人工皮革の縦方向及び横方向と
は、人工皮革の厚み方向と直交する平面上での全方位の
うち該平面上で直交する2軸方向であって、長繊維不織
布を製造する際の幅方向を横方向とし、もう一方を縦方
向とする。要件(M)について説明するならば、20%
引張応力(σ20)と曲げ硬さ(Rb(単位g/c
m))との比(σ20/Rb)は、縦方向と横方向との
平均値が3〜30である必要がある。ここでいう曲げ硬
さ(Rb)とは人工皮革を曲率半径2cmで曲げたとき
の反発力を表し、低い方が柔らかいということを示す。
該曲げ硬さは0.1〜3の範囲にあることが好ましい。
【0047】よって、(σ20/Rb)は、大きいほど
柔らかくかつ腰が強く、伸び止め感があることを示すも
のであるが、大きすぎると腰がなくなってしまう。該縦
方向と横方向との平均値は5〜20であることが好まし
い。要件(N)について説明すれば、見掛け密度は人工
皮革の構造の均一化および腰やドレープ性に寄与するも
のであり、該見掛け密度が0.20g/cm3 未満では
均一で緻密な構造は得られず、一方見掛け密度が0.6
0g/cm3 を越えると腰は強いが風合いの硬い人工皮
革となる。そのため、見掛け密度は0.20〜0.60
g/cm3 の範囲にあることが不可欠であり、好ましく
は0.30〜0.50g/cm3 である。
【0048】また、人工皮革用基材として、前述した2
成分以上のポリマーからなる剥離分割型複合繊維から得
られた極細繊維であって、前記(E)〜(H)の各要件
を満足する長繊維不織布を用いる場合には、該人工皮革
が下記(O)〜(Q)の各要件を同時に満足することが
好ましい。 (O)繊維束が、人工皮革の厚み方向と平行な任意の断
面において、幅1cm当たり10〜50本の範囲で存在
すること。
【0049】(P)人工皮革の任意の断面における空隙
の平均面積が走査型電子顕微鏡の画像解析による測定方
法の値で70〜140μm2 であること。 (Q)人工皮革の任意の断面における空隙の面積の標準
偏差が走査型電子顕微鏡の画像解析による測定方法の値
で80〜200μm2 である均一構造を有すること。
【0050】以下、上記の各要件について説明すると、
要件(O)により、人工皮革の曲げ硬さを適度なものと
し、緻密な構造を有しつつ、さらに格段の柔らかさと腰
の強さ、充実感を併せ持つことのできる構造を発現する
ことができる。該繊維束の数は、特に好ましくは12〜
30本である。また、ここで、幅1cm当たりとは、上
述の人工皮革断面において、繊維束に直交する直線距離
1cm当たりのことをいう。
【0051】要件(P)および(Q)について説明すれ
ば、該人工皮革に用いられる前記長繊維不織布の場合と
同様に、走査型電子顕微鏡の画像解析による方法で測定
され、該人工皮革の断面における長繊維と高分子弾性体
とが形成する空隙の平均面積は70〜140μm2 であ
ることが好ましく、そのときの標準偏差の値は80〜2
00μm2 の範囲内にあることが好ましい。これにより
長繊維不織布内に存在する大きな空隙がさらに減少され
る。
【0052】樹脂含浸した人工皮革の状態では、400
μm2 以上の大きな空隙がないことが、折り曲げ皺のな
い銀付き調の人工皮革を得るために好ましく、該範囲に
有るときには、さらに緻密な構造を有し、銀付き調人工
皮革とした場合にも折り曲げ皺が発生せず、しかも柔軟
性やドレープ性をもさらに高い水準で有する人工皮革と
することができる。
【0053】また、均一性を表す前記標準偏差の値は5
0〜200μm2 の範囲にあることがさらに好ましく、
該範囲内にあるときには、大きな空隙の散在がさらに抑
制され、銀付き調の人工皮革とした場合にも折り曲げ皺
の発生がさらに一段と抑制されたものとなる。なお、以
上に説明した本発明の長繊維不織布および人工皮革にお
いて、繊維束は、剥離分割型複合繊維から得られる繊維
束である場合には分割極細化後の単繊維繊度が例えば
0.2デニールであるとした場合に約10〜1000本
に相当する程度の繊維本数を有するのが好ましく、一方
海島型複合繊維をその構成繊維とする場合には極細化前
(海成分抽出前)の繊度が例えば4デニールであるとし
た場合に極細化前の繊維本数として約1〜500本に相
当する程度の繊維本数を有するのが好ましい。繊維束の
本数が上記範囲にあれば、均一な構造を有しつつ、これ
らの繊維束の存在によって得られる前述の効果を一層顕
著に発現させることができる。また、これらの繊維束の
横断面形状は、等方性を有する形状すなわち円形である
のが好ましく、略円形である楕円形状等であってもよ
い。
【0054】次に、本発明の長繊維不織布および人工皮
革の製造方法について述べる。不織布を構成する長繊維
は、剥離分割型複合繊維からの極細繊維や海島型複合繊
維等の極細化可能な繊維またはそれから得られる極細繊
維であってもよいし、スーパードロー法などの方法で直
接製造した極細長繊維でもよいが、特に海島型複合繊維
または剥離分割型複合繊維由来のものを用いることが好
ましい。
【0055】また、これらの長繊維の横断面形状は、円
形、楕円形、矩形、多葉断面形状、中空断面形状など公
知の横断面形状をいずれも採用することができる。該長
繊維を構成する熱可塑性ポリマーとしては、ポリエステ
ル、ポリアミド、ポリオレフィン、エラストマーなど従
来公知の熱可塑性ポリマー、および芳香族ポリアミド、
フッ素化ポリマーなども用いることができる。さらに、
本発明の目的を損なわない範囲内であれば、カーボンブ
ラック、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、
炭酸カルシウム、マイカ、金属微細粉、有機顔料、無機
顔料などを添加してもよく、これらの添加剤にはポリマ
ーへの着色効果と共に該ポリマーの溶融粘度を高くある
いは低くする効果もあり、繊維横断面の面積、形状等を
調節する際に有効である。
【0056】以下、剥離分割型複合繊維よりなる長繊維
不織布を製造する場合について説明すると、該剥離分割
型複合繊維を構成する繊維形成能を有する熱可塑性ポリ
マーとしては、互いに相溶性でなければ、どのようなポ
リマーでも組み合わせて使用することができ、特にポリ
エステルとポリアミドとを組み合わせて用いることが好
ましい。
【0057】この場合、ポリエステルとしては、ポリエ
チレンテレフタレート系ポリエステル、ポリブチレンテ
レフタレート系ポリエステル等を挙げることができる
が、特に交絡・剥離分割処理後の熱収縮性を上げること
が可能な、結晶化抑制成分が共重合または配合されたポ
リエステルであることが特に好ましい。なお、これらの
ポリエステルは、単独で用いても2種以上を併用しても
どちらでもよく、例えば、金属塩スルホネート基を含有
するポリエステルと該スルホネート基を含有しないポリ
エステルとを組み合わせて用いてもよい。
【0058】また、ポリアミドとしては、ナイロン6、
ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ポリフ
タルアミド等を挙げることができる。さらに、他の繊維
形成能を有する熱可塑性ポリマーとして、ポリプロピレ
ン、ポリエチレン、ポリウレタンエラストマー、ポリエ
ステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリオ
レフィンエラストマー等を用いてもよい。本発明の剥離
分割型複合繊維における熱可塑性ポリマーの組み合わせ
としては、ポリエチレンテレフタレートとナイロン6と
することが最も好ましい。
【0059】上述の剥離分割型複合繊維は、繊維横断面
において放射状に少なくとも二成分のポリマーが交互に
配列した構造であり、その配列数は特に限定しないが、
工程通過性や剥離分割性を考慮して、8〜24とするこ
とが好ましく、その繊維横断面形状を中空形状とすると
分割性をさらに高めることができる。この場合、中空率
を25%以下として繊維形成時に分割が起こらないよう
にすると、紡糸安定性が格段に向上するので好ましい。
ここでいう中空率とは、繊維の横断面積に対する中空部
分の面積の割合である。
【0060】また、繊維横断面の全面積を基準として、
剥離分割型複合繊維の複合成分のうち1成分が占める割
合は、繊維の分割性および紡糸性の面から30〜70%
とすることが好ましく、特に40〜60%が好ましい。
該割合は配列数が偶数であって、かつ2成分のみで構成
する場合、通常50:50であるが、70:30のよう
に割合を変化させれば、長繊維不織布内に異デニールの
極細長繊維を混在させることもできる。なお、該剥離分
割型複合繊維の単繊維繊度は、分割数と剥離分割後の単
繊維繊度とから決定されるが、一般には1〜10deで
あるのが好ましい。
【0061】上述の剥離分割型複合繊維は、スパンボン
ド法または、低速下での紡出糸を延伸して一旦巻き取る
か、引き続き高速の牽引流体により開繊しながら多孔補
集面上に不織布として補集する方法など、周知の長繊維
不織布形成方法のいずれをも採用することができる。特
に、生産性の点からみて、口金より紡出された糸条を高
速牽引し、補集ネット上に噴射して補集するスパンボン
ド法を採用するのが好ましい。
【0062】ここで、高速牽引の速度は従来公知の速度
範囲をいずれも採用することができ、紡出糸条をエジェ
クターやエアサッカーなどにより上述の速度で高速牽引
すればよい。高速牽引して得た細化物は開繊されながら
補集ネット上に補集されるが、これをネット上に補集す
る際に、他の長繊維や短繊維などと混綿、積層または混
合してもよい。
【0063】この際に用いる他の長繊維や短繊維として
は、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に制約は無
いが、均一で緻密な構造を有する長繊維不織布を得るた
めには、混綿または混合する他の繊維の割合は、使用す
る全繊維を基準として30%未満とすることが好まし
い。上記のようにして得られた長繊維不織布は、複数枚
を積層して、または単独で、必要に応じて予備的に熱接
着し、一旦巻き取った後に、あるいはそのままで連続し
て、機械的な三次元交絡処理を付与する。該交絡処理
は、ニードルパンチ等のようにバーブ付のニードルでパ
ンチングする方法、高圧水流によって繊維を交絡させる
方法、あるいは両者の併用等、周知の手段によって繊維
の充填状態をより緻密化させるものである。
【0064】従来のスパンボンド法により得られた長繊
維不織布は繊維のほとんどが該不織布の厚み方向に直交
する平面状に平行に配列しているものであり、人工皮革
の基布として用いた場合にどうしても柔らかさに欠ける
ものとなっており、これを単に収縮処理しただけでは不
織布としての構造は緻密となっても、人工皮革へと転換
した際に緻密さと柔らかさとを発現させることはできな
い。
【0065】本発明の長繊維不織布は、該不織布の厚み
方向と平行に配列している前述の繊維束を特定の範囲で
存在させていることが特徴であり、従って繊維束の形成
と三次元交絡とが顕著に現れる、ニードルパンチによっ
て交絡を付与することがより好ましい。該繊維束が特定
の範囲で存在することにより、人工皮革へと転換した際
に、柔らかさを付与できる。また、該繊維束が存在する
ことによって、長繊維不織布の層間剥離強度を大きく向
上させる効果を得ることもできる。
【0066】しかしながら、単にニードルパンチを施し
ただけでは、長繊維が激しく切断を起こし不織布の強度
を低下を招くため、本発明が得ようとする人工皮革は得
られない。ここで、本発明において特徴的なことは、上
述の繊維束の数を本発明で特定する範囲とすると共に、
従来公知のいずれかの技術とも異なって、不織布を構成
する長繊維を部分的に切断することにある。もちろん不
織布強度が下がるまで行うものではないが、その範囲内
で、積極的に切断をした方が人工皮革へと転換した場合
に、しなやかさ、柔らかさが付与され、天然皮革に類似
した風合いを有するものとなる。そのためには、油剤、
ニードル形状、ニードル深度、パンチ数を適宜設定する
必要がある。すなわち油剤は、一旦交絡した繊維が緩ま
ないようにするために、繊維−繊維間摩擦が大きいもの
がよく、例えば、脂肪族エステル系やポリシロキサン系
等を用いることができる。また、ニードル形状としては
バーブ数の多い方が効率的ではあるが、ニードル折れが
生じない範囲で1〜9バーブの中から選ぶことができ、
バーブの深さは0.02〜0.2mmとすることが交絡
性、ニードルの平滑性の点から好ましい。ニードル深度
は、ニードルの先端からバーブまでの距離により様々な
条件が考えられるが、ニードルトラッキングが強くでな
い範囲で、より深くすることが好ましい。パンチ数は3
00〜5000P/cm2 であることが好ましい。
【0067】らに述べるならば、ニードルによる長繊
維への必要以上の破壊、およびニードルの破損を防ぐた
め、予め長繊維表面に油剤を繊維重量を基準として0.
5〜5wt%付着させておく必要がある。付着させる油
剤の種類は、繊維間、および繊維とニードルとの間の摩
擦を下げすぎず、繊維切断も部分的に発生するような油
剤を選択する必要がある。
【0068】なお、三次元交絡処理と同時に、剥離分割
型複合繊維を分割させることが好ましいので、ニードル
パンチングの後に高圧水流交絡処理を行うことがさらに
効果的であり、例えば、目付150g/cm2 の不織布
を得ようとすれば、孔径0.05〜0.5mmのオリフ
ィスが0.5〜1.5mmの間隔で設けられたノズルか
ら水圧50〜200kg/cm2 の柱状水流を長繊維不
織布の表面および裏面にそれぞれ1〜4回程度噴射すれ
ばよい。
【0069】また、他の方法としては、交絡後に機械的
および/または化学的な剥離分割処理を施してもよく、
機械的な分割処理としては、ローラー間で加圧する方
法、超音波処理を行う方法、衝撃を与える方法、揉み処
理をする方法などの公知の方法を用いることができる。
化学的な分割処理としては、該剥離分割型複合繊維を構
成する少なくとも1成分を膨潤させるような薬液、また
は少なくとも1成分を溶解するような薬液に浸漬処理す
るなどの従来公知の方法を用いることができる。これら
の分割処理は、単独で施しても、2種以上を併用して施
してもどちらでもよい。
【0070】このように交絡、剥離分割処理された長繊
維不織布には、リラックス状態での加熱収縮処理を施す
ことが好ましい。該加熱収縮処理を施す時期は、高圧水
流処理や化学的な処理を施し、水洗した場合には、収縮
性能が残るような温度で乾燥させた後でもよいし、その
まま加熱収縮処理を施してもよい。また、上述の収縮
率、見掛け密度は、剥離分割型複合繊維の熱収縮成分の
収縮度、交絡度、収縮工程の加熱温度、あるいは他の繊
維の混綿度、混合度等によって容易に調整することがで
きる。
【0071】本発明の長繊維不織布において、該不織布
内部の大きな空隙を排除し、均一で緻密な構造を生起さ
せるために、該不織布を収縮性能の異なる長繊維から構
成するのであれば、一方の成分が熱収縮性を有している
複合繊維とすることが好ましく、該熱収縮性を有する成
分と他方の成分との95℃の温水中での熱収縮率の差は
5〜50%であることが好ましく、特に10〜30%で
あることが好ましく、単繊維繊度が共に0.01〜0.
5deであるような2種以上の極細繊維が混在した長繊
維不織布をリラックス状態で、且つ70℃〜100℃の
温水中および/または80〜140℃の乾熱中で、緩や
かに20秒間〜10分間程度収縮処理を施し、該不織布
を面積収縮率で5〜50%となるように収縮させること
が特に好ましい。
【0072】なお、本発明でいう熱収縮率は長繊維を
0.5g/deの荷重下で30分間95℃の温水中で収
縮処理したときの収縮率から求められ、ここで収縮率は
(収縮処理前の長さ−収縮処理後の長さ)/(収縮処理
前の長さ)×100%で求められる。また、面積収縮率
は、〔(収縮前の長繊維不織布面積−収縮後の長繊維不
織布面積)/(収縮前の長繊維不織布面積)〕×100
(%)で求められる。
【0073】さらに、ここでいうリラックス状態とは、
特に長繊維不織布を3〜30%のオーバーフィード率の
下に一方向に前進させる状態をいう。その際、面積収縮
率を重要視する本発明の趣旨に則して、長繊維不織布の
前進方向と直交する長繊維不織布の側縁部は無把持状態
に保つことが好ましい。該オーバーフィード率は目的と
する面積収縮率によって決定すればよいが、該オーバー
フィード率が3〜30%の範囲であると5〜50%の面
積収縮率を得ることがさらに容易になるので好ましい。
【0074】なお、上述のリラックス状態での収縮処理
の好ましい態様として、長繊維不織布が浮力によってさ
らに張力が緩和された状態になる温水中で収縮させる場
合には、温水の温度は70〜100℃であることが好ま
しく、該範囲内に有る時にはさらに十分に収縮処理を行
うことができる。また、乾熱で収縮処理する場合には、
80〜140℃の雰囲気温度であることが好ましく、該
範囲内にある時にはさらに十分に収縮処理を行うことが
できる。
【0075】また、該リラックス状態での収縮処理時間
は、5%以上の面積収縮率を発現させるために少なくと
も20秒〜10分間の間で適宜設定すればよいが、化学
的な分割処理と同時に収縮処理を行う場合で、分割処理
に必要な時間が10分を越えるような場合には、分割処
理が完了するのに必要な時間を優先して適宜採用すれば
よい。
【0076】なお、面積収縮率が5〜50%の範囲にあ
るときには、さらに均一で緻密な構造の不織布が得ら
れ、長繊維不織布の見掛け密度もさらに適度なものとな
り、腰の強さとドレープ性とを格段に高い水準で有する
不織布となる。特に、交絡処理段階で十分に見かけ密度
が高められ、加熱収縮による緻密化を面積収縮率にして
10〜30%に設定した場合には、より緩やかな加熱収
縮処理を行うことができ、得られる長繊維不織布の構造
はさらに均一で緻密なものとなる。
【0077】この結果、極細長繊維間で形成される空間
の体積が微細化され、従来の極細繊維からなる不織布と
比較して繊維間に形成される空隙体積が小さく、一方空
隙数は多く存在するようになるので、得られる長繊維不
織布を銀付き調の人工皮革へと転換した場合にも折り曲
げ皺が発生しないという利点が得られる。以上、長繊維
不織布を構成する繊維として剥離分割型複合繊維を用い
る際の製造方法について説明してきたが、次に海島型複
合繊維を用いた場合の製造方法について説明する。
【0078】使用する海島型複合繊維には、島成分に熱
収縮性の異なる2種以上の繊維形成能を有する熱可塑性
ポリマー(剥離分割型複合繊維で例示したものと同様の
ポリマ−)を配し、海成分に溶解除去し易い任意のポリ
マーを配せばよい。また、海成分と島成分とがポリマー
ブレンドによる混合紡糸繊維からなるものや、あるいは
多芯芯鞘型複合繊維等、公知の海島型複合繊維の横断面
形状のいずれをも採用することができる。
【0079】さらに、該海島型複合繊維として、下記ポ
リマーブレンド(a)とポリマーブレンド(b)とを多
層接合型に貼り合わせた混合複合紡糸繊維からものであ
ってもよい。 ポリマーブレンド(a):島成分としての繊維形成能を
有する熱可塑性ポリマー(A)と海成分としてのポリオ
レフィン系ポリマー(B)とのポリマーブレンド。
【0080】ポリマーブレンド(b):島成分としての
繊維形成能を有する熱可塑性ポリマー(A’)と海成分
としてのポリオレフィン系ポリマー(B’)とからなる
ポリマーブレンド。これらのポリマーおよびポリマーブ
レンド中の熱可塑性ポリマーとしては、前述した剥離分
割型複合繊維を構成するポリマー種を用いることがで
き、熱可塑性ポリマー(A)と(A’)、ポリオレフィ
ン系ポリマー(B)と(B’)とは各々同一であっても
異なっていてもどちらでもよい。
【0081】そして、長繊維不織布化および交絡処理
は、剥離分割型複合繊維を用いる場合と同様に行えばよ
く、三次元交絡処理を施した後に、任意の溶剤により海
成分を溶解除去すれば、本発明の長繊維不織布を得るこ
とができる。得られる長繊維不織布は、特にヌバック調
の人工皮革用基材として有利に用いることができるが、
該ヌバック調人工皮革には、銀付き調人工皮革で得られ
る特徴に加えて、人工皮革表面の良好なタッチも得る必
要があるため、立毛密度を高くする必要がある。
【0082】ここで、本発明が特徴とする繊維束の特定
が非常に重要となり、繊維束を、該厚み方向と平行に配
列させるだけでなく、その繊維束を構成している長繊維
を部分的に切断させることが必要であり、これも剥離分
割型複合繊維を用いる場合と同様に繊維の切断が行われ
るようにニードルパンチ法を行うことによって容易に本
発明で特定される繊維束を形成することができる。
【0083】本発明においては、以上に説明したよう
な、剥離分割型繊維よりなる長繊維不織布、あるいは海
島型複合繊維よりなる長繊維不織布等の本発明の長繊維
不織布に高分子弾性体を含浸して複合化することによっ
て人工皮革へと転換される。該高分子弾性体としては、
例えば、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、
ポリエステルエーテルコポリマー、ポリアクリル酸エス
テルコポリマー、ポリウレタン、ネオプレン、スチレン
ブタジエンコポリマー、シリコーン樹脂、ポリアミノ
酸、ポリアミノ酸ポリウレタンコポリマーなどの合成樹
脂または天然高分子樹脂、またはそれらの混合物等を挙
げることができ、さらに必要によっては顔料、染料、架
橋剤、充填剤、可塑剤、各種安定剤などを添加してもよ
い。
【0084】ポリウレタンあるいはこれに他の樹脂を加
えたものは、柔軟な風合いが得られるので、高分子弾性
体として好ましく用いられる。上記の高分子弾性体は、
有機溶剤の溶液または分散液として、あるいは水溶液ま
たは水分散液として、本発明の不織布に含浸処理され
る。凝固方法は、従来慣用されている方法のいずれをも
採用することができ、例えば、乾燥による方法として、
好ましくは感熱凝固法があり、さらに好ましくはW/O
型エマルジョンからの乾燥による多孔凝固法がある。さ
らに、例えば高分子弾性体の水混和性有機溶剤溶液を含
浸させた長繊維不織布を、水を主体とした凝固浴中を通
過させ、多孔凝固させる湿式法がある。
【0085】高分子弾性体を含浸する際には、あらかじ
め基材となる不織布をシリコーンなどのエマルジョンで
処理するか、あるいはあらかじめ基材となる長繊維不織
布にPVAなどの水溶性高分子で処理し、高分子弾性体
が繊維表面に接着し、構成繊維間を完全に拘束してしま
うことを抑制することが好ましい。繊維表面を処理する
ことによって適度に繊維と高分子弾性体が変形や外部応
力に対して自由度をもって動くことが可能となるため、
柔らかさを付与することができる。
【0086】含浸する高分子弾性体の量の制御は、含浸
液中の高分子弾性体の濃度の調整および含浸時の含浸液
のウエットピックアップの調整で簡単に達成できる。本
発明においては、基材となる長繊維不織布と含浸する高
分子弾性体との重量割合は、人工皮革の全重量を基準と
して97:3〜50:50であるのが好ましく、さらに
好ましくは90:10〜60:40である。高分子弾性
体の比率が上記の範囲内にある時には、さらに柔軟で且
つ腰のある人工皮革が得られる。なお、本発明におい
て、人工皮革の基布とする長繊維不織布は、その構造に
おいて大きな空隙の存在が抑制されており、且つ均一で
あるので、含浸するための高分子弾性体の量が少なくて
も腰の強い人工皮革を得ることができる。
【0087】本発明の人工皮革は、表面を起毛すれば、
スウェード調、あるいはヌバック調の人工皮革となすこ
とができ、その際に染色することによってさらに商品価
値を高めることもできる。本発明の人工皮革は、さら
に、表面に高分子弾性体の皮膜を設けることにより銀付
き調の人工皮革とすることもできる。従来の銀付き調の
人工皮革は、基材となる含浸不織布が緻密性および均一
性の点で満足できるものではなく、折り曲げ皺が発生し
易いものであった。そこで、該銀付き調人工皮革を揉む
ことによって予め折り曲げ皺を付与したり、表面に設け
る皮膜を必要以上に厚くしたりしてその欠点を補ってき
た。
【0088】これに対し、本発明の長繊維不織布を転換
した人工皮革は、表面に形成する銀付き面としての皮膜
の厚さとは無関係に折り曲げ皺が発生しにくく、且つ腰
が強く柔軟でドレープ性のあるものとなる。ここで、該
皮膜の形成方法としては、公知の形成方法をいずれも採
用することができ、例えば、離型紙上に皮膜を形成して
含浸不織布の表面に接着して貼り合わせするラミネート
法、高分子弾性体のW/O型エマルジョンを含浸不織布
の表面に塗布し、乾燥によって多孔層を形成し、これに
エンボス加工、グラビア塗装などを施すことにより皮膜
を形成する方法、該多孔層の表面にラミネートにより皮
膜を形成する方法、高分子弾性体の水混和性有機溶剤溶
液を含浸不織布の表面に塗布し、水を主体とした凝固浴
中で多孔凝固させる湿式法により形成した多孔層に、さ
らにエンボス加工、グラビア塗装等を行って皮膜を形成
させる方法、あるいは該多孔層の表面にラミネートして
皮膜を形成する方法等を挙げることができる。
【0089】なお、長繊維不織布を構成する繊維として
海島型複合繊維を用いた場合には、得られる長繊維不織
布は、主にヌバック調人工皮革へと転換することができ
る。その理由として、(1)超極細繊維を容易に得るこ
とができる、(2)人工皮革の緻密さと表面の柔らかさ
とを両立させることができる、(3)表面タッチを優れ
たものとすることができる点で適しており、この際海成
分を抽出した後に残る島成分の平均単繊維繊度を0.0
001〜0.2deとなるようにすることが特に好まし
い。
【0090】このように、海島型複合繊維を長繊維不織
布の構成繊維として選択した際には、該複合繊維中の海
成分を抽出する必要があるが、該抽出工程は従来公知の
方法のいずれをも用いることができ、該抽出工程通過後
にウレタンなどの高分子弾性体を空隙に含浸させても、
高分子弾性体を含浸させた後に海成分を抽出しても、高
分子弾性体の含浸と同時に抽出を行ってもよく、これら
を適宜選択すればよいが、工程を省略することのできる
高分子弾性体の含浸と同時に海成分を抽出することが好
ましい。
【0091】
【発明の効果】本発明の長繊維不織布は、今までに得ら
れなかった風合いと柔軟性とを有する人工皮革へ転換す
るために有用である。また、得られる人工皮革は、柔軟
性、表面の柄、色、艶などを調整することによって、ス
ポーツシューズ等の靴類、サッカーボール、バスケット
ボール、バレーボールなどの各種ボール、鞄、ハンドバ
ッグ、アタッシュケースなどの鞄袋物、ソファー、椅子
張りシート、家具用シート、自動車用シートなどのシー
ト類、ゴルフ手袋、野球グローブ、スキー手袋などの各
種手袋類、あるいは衣料用品、各種手袋、ベルトなどの
広い用途に好適に使用することが可能である。
【0092】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定を受
けるものではない。なお、実施例中における各測定値
は、それぞれ以下の方法に従って求めたものであり、特
に断らない限り測定値は5点の平均値である。
【0093】極限粘度:試料を溶液となし、35℃下常
法に従って測定を行って求めた。なお、使用した溶媒に
ついては実施例中に記載した。試料の厚み: 厚み測定器(ミツトヨ製、「543−10
1F」)を使用し、径1cmの重しに0.98Nの荷重
を加えた状態で測定した。
【0094】引張応力、引張強力および破断伸度:JI
S L−1096記載の方法に準拠し、幅1cm、長さ
9cmの試料片をつかみ間隔5cmで把持し、万能引張
試験機を用いて引張速度6cm/minで伸長し、20
%伸長時の応力を引張応力(σ20)、切断時の荷重値
および伸長率をそれぞれ引張強力、破断伸度とした。
【0095】曲げ硬さ(Rb):幅2cm×長さ9cm
の試料片を準備し、長手方向片端を保持具で把持し、試
料片をU字形に90°曲げてその端にUゲージの測定端
を押しあててそのときの荷重値を読み取り、幅1cm当
たりに換算して求めた。単位はg/cmであり、該曲げ
硬さは、布帛の柔軟度を表し、低いものほど柔軟である
ことを表す。
【0096】20%引張応力と曲げ硬さとの比:天然皮
革は、その構造の緻密性と均一性とによって発現する
“柔らかくて腰が強い”特性があり、その指標として
(20%応力)/(曲げ硬さ)=(σ20/Rb)を採
用し、縦横の平均値で表した。圧縮率: 100mm×100mmの試料片を準備し、水
平台上に設置し、80g/cm 2 の荷重をかけて試料片
中央の厚さ(A)を測定する。次に、500g/cm2
の荷重をかけて上記と同じ位置の厚さ(B)を測定し、
〔(A−B)/A〕×100(%)として算出した。
【0097】不織布の厚み方向に平行に配列した繊維束
の本数:不織布の厚み方向と平行な任意の断面を電子顕
微鏡にて40倍の倍率で写真撮影し、該不織布の厚み方
向と直交する直線上の距離1cmの間に繊維束が何本存
在するかを目視により求めた。表面に平行な断面における繊維束の単位面積当たりの占
有率: 不織布の表面に平行な断面を電子顕微鏡で50倍
で写真撮影し、その写真をさらに200%に拡大複写
し、複写した紙面において繊維束に該当する部分を各々
切り取って面積を測定して総面積を求め、(繊維束の総
面積/写真の面積)×100(%)として面積当たりの
繊維束の面積占有率を算出した。
【0098】不織布表面における単位面積当たりの繊維
切断端数:不織布の表面を電子顕微鏡で100倍で写真
撮影し、0.5mm×0.5mm当たりの繊維切断端数
の数を数え、5カ所の平均を求め、面積当たりに換算
し、面積1mm2 当たりの繊維切断端数を算出した。分割率: 剥離分割型複合繊維の分割率は、不織布の断面
を電子顕微鏡で200倍で写真撮影し、100本の繊維
の断面積を測定し、全体の面積と未分割(完全に分割し
ていない、例えば、2個や3個程度に分割したものも含
む)のフィラメントの断面積の差を全体の面積で除して
求めた。該分割率が大きいほどよく分割していることを
示す。
【0099】空隙の平均面積および標準偏差:不織布断
面および人工皮革断面における繊維間の空隙の平均面積
は、以下のような走査型電子顕微鏡の画像解析による方
法で測定した。 (1)試料作成:測定しようとする不織布の断面試料を
日本電子(株)製のイオンスパッタリング装置「JFC
−1500」を使用して、使用圧力0.1Pa以下、コ
ーティング膜厚800オングストロームの条件下でイオ
ンスパッタリング法にて金の皮膜を形成する。
【0100】(2)電子顕微鏡撮影:上記(1)で作成
した試料を日本電子(株)製の走査型顕微鏡「JSM−
6100」を使用して、加速電圧5kV、フィラメント
電流2.2A、走査速度15.7秒/line(水平、
60Hz)の条件下で観察用CRTに画像信号波形を表
示し、波形の最高ピークレベルと最低ピークレベルとを
電位目盛りのそれぞれ5Vと0Vとに一致させ、露出を
決定し、倍率を200倍に設定する。
【0101】(3)画像処理:旭化成(株)製高精細画
像解析システム「IP−1000PC」を使用して、走
査型顕微鏡より自動入力された画像に対し、「開孔計
測」の画像処理を選択して測定する。この場合の画像処
理の2値化のしきい値は、画像解析から得た輝度分布の
最高ピークレベルと最低ピークレベル(輝度0)との中
点の輝度とする。そして、該しきい値によって囲まれた
輝度の低い部分を空隙部分として抽出する。
【0102】(4)平均面積および標準偏差の算出:不
織布断面の0.25mm2 の領域に存在する上述の抽出
された空隙部分の面積をそれぞれ測定し、同様の操作を
少なくとも不織布断面の異なる位置で3回繰り返す。以
上のようにして得られた空隙部分の面積から、平均面積
と標準偏差とを求めた。座屈皺: 縦横各4cmの試料を作成し、該試料の縦方向
(または横方向)の側縁部の端から1cmの部分を把持
し、該把持部の間隔を、表面が内側に折れ曲がるように
2cmから1cmにまで狭めた際の、表面に発生する座
屈皺の本数を目視にて確認し、下記基準に従って判定を
行った。該座屈皺が7本以下であれば、十分に実用に供
し得る。
【0103】 ◎ 座屈皺が0〜2本のもの。 ○ 座屈皺が3〜7本のもの。 × 座屈皺が8本以上のもの。ヌバック感: 縦横各4cmの試料を作成し、該試料のヌ
バック形成面を指でなぞり、その際の縦方向(または横
方向)の立毛状態と触感を確認し、下記基準に従って判
定を行った。
【0104】 ◎ 非常に立毛状態が緻密で細かく触感にも優れるも
の。 ○ 立毛状態は若干粗いが触感には優れるもの。 × 立毛状態は粗いが、触感は普通のもの。 実施例1 不織布1の作成 第1成分としての、テレフタル酸ジメチルを基準として
イソフタル酸ジメチルを10mol%含む酸成分と所要
量のエチレングリコールとを重縮合した共重合ポリエチ
レンテレフタレート(o−クロロフェノール中の極限粘
度0.64)と、第2成分としてのナイロン6(m−ク
レゾール中の極限粘度1.1)とをエクストルーダーに
供給して別々に溶融混練した後、フィラメント当たりの
吐出量を2g/分になるようにして中空口金より吐出
し、エジェクター圧力3.5kg/cm2 にて高速牽引
した後、空気流とともに分散板に衝突させてフィラメン
トを開繊し、図8に示すような16分割タイプの多層貼
合せ型断面をもつ剥離分割型複合繊維からなる長繊維不
織布として補集ネットコンベアーで補集した。両成分の
容積比率は50:50であり、両成分は交互に配列して
おり、その配列数は16であった。
【0105】次いで、この長繊維不織布を脂肪酸の金属
塩とシリコーンを主成分とする油剤をスプレーで、繊維
重量を基準として1.5wt%付着処理し、市販のニー
ドル(バーブ数9、バーブ深度0.08mm)を用いて
パンチ深度8.7mmにてパンチ数800P/cm
2 で、ニードルパンチング処理を行い、その後高圧水流
交絡処理を表面側から水圧50kg/cm2 で1回、1
40kg/cm2 で2回、続けて裏面側から水圧140
kg/cm2 で2回処理した。ニードルパンチの際に
は、長繊維の一部は切断され、且つ針折れは生じなかっ
た。
【0106】上記の長繊維不織布を90℃の温水槽中に
60秒間浸漬させた後、110℃の熱風乾燥機で乾燥さ
せて、不織布1を得た。 実施例2 不織布2の作成 実施例1において、吐出口金として中実タイプを用い、
繊維横断面を図9に示すような形状に変更したこと以外
は同様の操作を行って、不織布2を得た。
【0107】実施例3 不織布3の作成 実施例1において、ニードルパンチング処理の後、ベン
ジルアルコール10%と非イオン界面活性剤2%の水エ
マルジョンに、室温で10分間浸漬処理し、水洗、絞搾
後、95℃の温水槽中で20分間収縮処理させたこと以
外は同様の操作を行って、不織布3を得た。
【0108】比較例1 不織布4の作成 第1成分としてのポリエチレンテレフタレート(o−ク
ロロフェノール中の極限粘度0.63)と第2成分とし
てのナイロン6(m−クレゾール中の極限粘度1.1)
とを用い、フィラメント当たりの吐出量を2g/分にな
るようにして、通常の溶融紡糸法によって引取速度10
00m/分で巻き取って、図に示す繊維横断面形状を
有する6.6deの剥離分割型複合未延伸糸を得た。こ
の未延伸糸を40℃の温水中で2.0倍に延伸し、3.
3deの延伸糸を得た。次に、油剤を繊維重量を基準と
して0.3wt%付着させ、スタッファボックスを通し
て機械捲縮を与え、60℃のコンベア式の熱風乾燥機で
乾燥させ、45mmに切断して熱収縮性成分を含む剥離
分割型複合短繊維を得た。
【0109】上記の剥離分離型複合短繊維をパラレルカ
ードにて開繊し、得られた短繊維不織布をクロスレイヤ
ーにて積層させ、実施例1と同様のニードルを用いてパ
ンチ深度8.7mmにてパンチ数400P/cm2 で、
ニードルパンチング処理を行い、その後高圧水流交絡処
理を表面側から水圧50kg/cm2 で1回、140k
g/cm2 で2回、引き続き裏面側からも水圧140k
g/cm2 で2回処理することによって短繊維不織布と
した。このとき、不織布を構成する剥離分割型複合短繊
維のうち95%は剥離していた。
【0110】得られた不織布を75℃の温水槽の中に2
0秒間浸漬させて面積を19%収縮させ、320℃の熱
風乾燥機で乾燥させて平均単繊維繊度0.21deの不
織布4を得た。 比較例2a 不織布5aの作成 実施例3において、ニードルとしてバーブ数9、バーブ
深度0.03mmのものに変更し、パンチ深度6.4m
mにてパンチ数280P/cm2 で、ニードルパンチン
グ処理したこと以外は同様の操作を行って、不織布5a
を得た。得られた不織布には切断端がほとんど存在して
いなかった。
【0111】比較例2b 不織布5bの作成 実施例3において、油剤としてパラフィン系ワックスを
主体とした油剤を用いたこと以外は同様の操作を行っ
て、不織布5bを得た。 比較例3 不織布6の作成 テレフタル酸ジメチルを基準としてイソフタル酸ジメチ
ルを10mol%含む酸成分と、所要量のエチレングリ
コールとを重縮合した共重合ポリエチレンテレフタレー
ト(o−クロロフェノール中の極限粘度0.64)を用
いて、紡糸、延伸を行い、単繊維繊度2deの延伸糸を
得た。次に、油剤を繊維重量を基準として0.3wt%
付着させた後、スタッファボックスを通して機械捲縮を
付与し、60℃のコンベア式の熱風貫通型乾燥機で乾燥
させ、51mmに切断して熱収縮性短繊維を得た。同様
に、ポリエチレンテレフタレート(o−クロロフェノー
ル中の極限粘度0.63)を用いて単繊維繊度2de、
繊維長51mmの短繊維を得た。
【0112】これらの短繊維を、熱収縮性短繊維の全短
繊維重量を基準として混綿率が30重量%となるように
混綿し、パラレルカードにて開繊したカード短繊維不織
布をクロスレイヤーにて積層させ、市販のニードル(バ
ーブ数9、バーブ深度0.08mm)を用いてパンチ深
度8.7mmにてパンチ数1500P/cm2 で、ニー
ドルパンチング処理を行い、さらに80℃の温水中で熱
収縮処理を施して不織布6を得た。
【0113】実施例4 不織布7の作成 島成分としてのナイロン6(m−クレゾール中の極限粘
度1.34)と、海成分としてのポリエチレン(メルト
フローレート50)とを重量比50:50でチップにて
混合し、エクストルーダーにて溶融後、単孔当たりの吐
出量1.3g/分にて円形の孔を有する口金より吐出
し、エジェクター圧力2.5kg/cm2にて高速牽引
した後、空気流とともに分散板に衝突させ、フィラメン
トを開繊して海島型複合繊維からなる長繊維不織布とし
て補集ネットコンベアーで補集した。該繊維の単繊維繊
度は3.8deであった。次いで、この長繊維不織布に
脂肪酸の金属塩とシリコーンとを主成分とする油剤をス
プレーにより、繊維重量を基準として2wt%付着させ
た後、市販のニードル(バーブ数9、バーブ深度0.0
8mm)を用いてパンチ深度8.7mmにてパンチ数6
00P/cm2 で、ニードルパンチング処理を行い、不
織布7を得た。
【0114】実施例5 不織布8の作成 島成分としてのポリエチレンテレフタレート(o−クロ
ロフェノール中の極限粘度0.64)と、海成分として
のポリエチレン(メルトフローレート50)とをエクス
トルーダーで別々に溶融後、重量比70:30で島数1
9の海島複合型口金を用いて単孔当たりの吐出量1.3
g/分にて円形の孔を有する口金より吐出し、エジェク
ター圧力2.5kg/cm2 にて高速牽引した後、空気
流とともに分散板に衝突させ、フィラメントを開繊して
海島型複合繊維からなる長繊維不織布として補集ネット
コンベアーで補集した。該繊維の単繊維繊度は2.8d
eであった。次いで、この長繊維不織布に油剤をスプレ
ーにより繊維重量を基準として2wt%付着させた後、
市販のニードル(バーブ数9、バーブ深度0.08m
m)を用いてパンチ深度8.7mmにてパンチ数600
P/cm2 で、ニードルパンチング処理を行い、不織布
8を得た。
【0115】比較例4 不織布9の作成 島成分としてのナイロン6(m−クレゾール中の極限粘
度1.34)と、海成分としてのポリエチレン(メルト
フローレート50)とを重量比50:50でチップにて
混合し、通常の溶融紡糸法によって引取速度1000m
/分で巻き取り、引き続いて延伸して実施例5により得
られた繊維と同様の繊維横断面形状を有する8deの延
伸糸を得た。次に、油剤を繊維重量を基準として0.3
wt%付着させ、スタッファボックスを通して機械捲縮
を付与し、60℃のコンベア式の熱風乾燥機で乾燥さ
せ、繊維長45mmに切断して海島型複合短繊維を得
た。
【0116】上記の海島型複合短繊維をパラレルカード
にて開繊したカード短繊維不織布をクロスレイヤーにて
積層させ、市販のニードル(バーブ数1、バーブ深度
0.08mm)を用いてパンチ深度8.7mmにてパン
チ数2000P/cm2 で、ニードルパンチング処理を
行い、不織布9を得た。 実施例6 不織布10の作成 テレフタル酸ジメチルを基準としてイソフタル酸ジメチ
ルを10mol%含む酸成分と、所要量のエチレングリ
コールとを重縮合した共重合ポリエチレンテレフタレー
ト(o−クロロフェノール中の極限粘度0.64)を用
いて、エクストルーダーに供給して溶融混練した後、フ
ィラメント当たりの吐出量を1.1g/分になるように
して丸断面の孔径を有する口金より吐出し、エジェクタ
ー圧力3.5kg/cm2 にて高速牽引した後、空気流
とともに分散板に衝突させてフィラメントを開繊し、単
繊維繊度2deの長繊維不織布として補集ネットコンベ
アーで補集した。次いで、この長繊維不織布を脂肪酸の
金属塩とシリコンを主成分とする油剤をスプレーで、繊
維重量を基準として1.5wt%付着処理し、市販のニ
ードル(バーブ数9、バーブ深度0.08mm)を用い
てパンチ深度8.7mmにてパンチ数800P/cm2
で、ニードルパンチング処理を行い、次いで90℃の温
水槽中に60秒間浸漬させた後、110℃の熱風乾燥機
で乾燥させて、不織布10を得た。
【0117】以上で得られた不織布の諸特性を表1に示
す。
【0118】
【表1】
【0119】以下、表1の結果について考察する。実施
例1〜3は、本発明の全ての要件を満足しており、得ら
れた不織布断面は、緻密で均一な構造を有していた。特
に実施例1によって得られた、構成繊維が中空横断面形
状を有する剥離分割型複合繊維に由来する不織布は、繊
維同士が粗い集合形態を有しており、収縮処理を施すこ
とによって、非常に均一で緻密な構造を発現していた。
【0120】一方、比較例1及び3の操作により得られ
た不織布は短繊維より構成されており、見掛け密度およ
び空隙の平均面積は実施例の操作により得られた長繊維
不織布と同等ではあるが、短繊維不織布であるがゆえに
不織布表面の繊維の切断端数が100個/mm2 を越え
ており、本発明が目的とする十分な柔らかさと適度な曲
げ硬さを有する不織布を得ることはできなかった。
【0121】逆に、比較例2aでは不織布表面における
繊維の切断端数が5個/mm2 未満であり、同じく本発
明が目的とする十分な柔らかさと適度な曲げ硬さを有す
る不織布を得ることはできなかった。また、比較例2b
では油剤を変更したが、繊維束が十分形成されず、20
%応力が下ったほか、比較例2a以上に曲げ硬さが硬く
なり、十分な柔らかさを有するものではなかった。
【0122】実施例4、5は、海島型複合繊維をその構
成繊維とする長繊維不織布であり、一方比較例4は海島
型複合繊維をその構成繊維とする短繊維不織布である。
実施例4、5は本発明の不織布の要件を全て満足してお
り、伸び止め感に優れ、充実感のあるものであった。こ
れに対して比較例4では繊維束が5本/cm未満であ
り、柔らかいが腰のない不織布であった。
【0123】さらに、実施例6は、単繊維繊度が2.0
deの長繊維をその構成繊維とする長繊維不織布であ
り、軟らかさと腰のある風合いを兼ね備えた点で優れた
長繊維不織布であった。 実施例7〜10、比較例5〜7 銀付き調人工皮革1〜7の作成 実施例1〜3、実施例6、比較例1〜3で作成した不織
布1〜6、10に、ジメチルシロキサンの1.4%水エ
マルジョン液にピックアップ量が180%(含浸前の不
織布重量を基準として含浸後の不織布重量が180wt
%)となるように浸漬し、100℃で30分間乾燥させ
た。
【0124】その後、ジフェニルメタンジイソシアネー
ト、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレ
ングリコール、ポリブチレンアジペートジオール、およ
びトリメチレングリコールを用い、常法に従って100
%伸長応力が110kg/cm3 のポリウレタンを合成
し、該ポリウレタンを全スラリー重量を基準として16
重量%含むメチルエチルケトンスラリー液100重量部
中に水を35重量部の割合で分散させたW/O型エマル
ジョンを含浸させて、表面の余分なエマルジョン液を掻
き落とし、温度45℃、相対湿度70%の雰囲気下で凝
固・乾燥させた。さらに、離型紙上で作成した厚さ50
μmのポリウレタンの皮膜を二液型ウレタン系接着剤を
用いて接着し、乾燥および架橋反応を充分に行った後、
離型紙を剥ぎ取り、銀付き調人工皮革1〜7を得た。
【0125】以上の実施例7〜10および比較例5〜7
で得られた人工皮革の諸特性を表2に示す。また、天然
のカンガルー皮の特性(参考例1)、市販の人工皮革で
あるナイロン6/ポリエチレンテレフタレートの海島型
複合短繊維からなる人工皮革(参考例2)の特性も併せ
て記す。
【0126】
【表2】
【0127】以下、表2の結果について考察する。本発
明の実施例7〜9の操作により得られた人工皮革は、す
べての要件を満足しており、得られた人工皮革の断面
は、緻密で均一な構造であった。また、均一で緻密な構
造を有するため、人工皮革の縦方向と横方向とにおける
20%応力にも異方性はなく、伸び止め感をも有するも
のであり、柔軟でかつ腰のある風合いのものであった。
さらに、折り曲げたときには折れ皺のない審美性に優れ
た人工皮革であった。実施例10の剥離分割型でない繊
維からなる不織布を用いた人工皮革も、すべての要件を
満たし、従来の短繊維不織布からなるものでは得られな
い、柔らかさと腰の強さを両立するものであった。
【0128】一方、比較例5および7は、見掛け密度は
実施例と同等であるものの、基布として用いた短繊維不
織布の繊維束数が少なかったために、柔軟性はあるが曲
げ硬さが十分ではなく、さらに層間剥離強度の低いもの
であった。比較例6aは、基布として用いた長繊維不織
布表面の繊維切断端が少なかったために、曲げ硬さが大
きくなり、柔軟性に欠けるものであった。比較例6b
は、繊維束本数が少なく、曲げ硬さが大きくなる一方
で、交絡状態の均一性にも欠け、折り曲げ皺本数の多い
ものであった。
【0129】また、特に構造が粗い比較例7で得られた
人工皮革や参考例2の人工皮革では、腰は強いが、表面
を内側に折り曲げると、折り曲げ皺が無数に発生するの
が確認された。 実施例11〜12、比較例8 ヌバック調人工皮革1〜3の作成 実施例4、5、比較例4で作成した不織布7〜9を、ジ
メチルシロキサンの1.4%水エマルジョン液にピック
アップ量が180%(含浸前の不織布重量を基準として
含浸後の不織布重量が180wt%)となるように浸漬
し、70℃で30分間乾燥させた。
【0130】ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリ
テトラメチレングリコール、エチレングリコール、ポリ
ブチレンアジペートジオールを常法に従って反応させて
得たイソシアナートに基づく窒素含有量が4.5%であ
るポリウレタンを、ジメチルホルムアミド溶液に溶解
し、ポリウレタンのジメチルホルムアミド(DMF)溶
液(濃度15wt%)とし、不織布7〜9のそれぞれに
ついて該溶液を含浸させ、さらに15wt%DMF水溶
液中に浸漬して凝固させた。その後、40℃の温水中で
十分洗浄し、135℃の熱風チャンバーで乾燥して、ウ
レタン含浸基材を得た。
【0131】この基材を80℃のトルエン中でディップ
とニップとを繰り返して、長繊維構成成分のうちの1種
であるポリエチレン成分を溶解除去し、海島型複合繊維
より極細繊維を発生させた。この後90℃の温水中で基
材に含まれているトルエンを共沸処理により除去し、1
20℃の熱風チャンバーで乾燥し、さらに600メッシ
ュのサンドペーパーで軽いバフィングを4回施し、ヌバ
ック調人工皮革1〜3を得た。
【0132】以上の実施例11〜12および比較例8の
操作により得られたヌバック調人工皮革の諸特性を表3
に示す。さらに、参考例3として市販の人工皮革である
ナイロン6/ポリエチレンからなる海島型混合短繊維か
らなる不織布を基材とした人工皮革の特性を示した。
【0133】
【表3】
【0134】以下、表3の結果について考察する。実施
例11〜12の操作によって得られた人工皮革は、均一
で緻密な構造を有し、繊維束数が多いため、σ20/R
bにも表されるように、適度な柔軟性と腰とを有するも
のであり、表面のヌバック調タッチも非常に良好なもの
であった。一方、比較例8の操作により得られた人工皮
革は繊維束数が1個/cm2 であり、伸び止め感に欠け
るとともに腰もないものであった。さらに、参考例3の
人工皮革は、腰は有るものの、柔らかさには欠け、天然
皮革の風合いとは異なるものであり、表面のヌバック感
にも劣るものであった。
【0135】実施例12 実施例7の操作により得られた人工皮革を靴のアッパー
材として使用し、2ヶ月間履用テストを行った。製造さ
れた靴は、人工皮革が有する柔軟性によって足の形にフ
ィットし、履き心地も良好であって、さらにテスト終了
後の耐久性も全く問題ないものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の長繊維不織布よりなる人工皮革の、厚
み方向と平行な任意の断面図であって、図4の電子顕微
鏡写真図(35倍)から写し取ったものである。
【図2】本発明の長繊維不織布よりなる人工皮革の、厚
み方向に直交する任意の断面図であって、図5の電子顕
微鏡写真図(50倍)から写し取ったものである。
【図3】本発明の長繊維不織布表面の図であって、図6
の電子顕微鏡写真図(200倍)から写し取ったもので
ある。
【図4】実施例7の操作により得られた人工皮革の、厚
み方向と平行な任意の断面において、繊維束の存在状態
を撮影した電子顕微鏡写真図(35倍)である。
【図5】実施例7の操作により得られた人工皮革の、厚
み方向と直交する任意の断面において、繊維束の存在状
態を撮影した電子顕微鏡写真図(50倍)である。
【図6】実施例3の操作により得られた長繊維不織布表
面の繊維切断端の存在状態を撮影した電子顕微鏡写真図
(200倍)である。
【図7】比較例3の操作により得られた長繊維不織布表
面を撮影した電子顕微鏡写真図(200倍)である。
【図8】実施例1において製造された剥離分割型複合繊
維の横断面形状を説明するための模式図である。
【図9】実施例2において製造された剥離分割型複合繊
維の横断面形状を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1…繊維束 2…人工皮革表面に付与した銀付き面 3…繊維切断端 4…共重合ポリエステル 5…ナイロン6
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大川 信夫 広島県三原市円一町1丁目1番1号 帝 人株式会社 三原事業所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06N 3/00 - 3/18

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維形成能を有する熱可塑性ポリマーに
    より形成された長繊維からなり、下記(A)〜(D)の
    各要件を同時に満足する長繊維不織布。 (A)繊維束が、不織布の厚み方向と平行な任意の断面
    において、幅1cm当たり5〜70本の範囲で存在する
    こと。 (B)繊維束の占める総面積が、不織布の厚み方向に直
    交する任意の断面において、該断面積の5〜70%の範
    囲であること。 (C)見掛け密度が0.10〜0.50g/cm3 であ
    ること。 (D)不織布表面における繊維の切断端が表面積1mm
    2 当たり5〜100個の範囲で存在していること。
  2. 【請求項2】 不織布の厚み方向の圧縮率が10〜30
    %の範囲である、請求項1記載の長繊維不織布。
  3. 【請求項3】 長繊維が2成分以上のポリマーからなる
    剥離分割型複合繊維から得られた極細繊維であって、下
    記(E)〜(H)の各要件を同時に満足する、請求項1
    記載の長繊維不織布。 (E)各繊維の単繊維繊度が0.01〜0.5deであ
    ること。 (F)不織布の見掛け密度が0.25〜0.45g/c
    3 であること。 (G)不織布の任意の断面における空隙の平均面積が走
    査型電子顕微鏡の画像解析による測定方法の値で70〜
    300μm2 であること。 (H)不織布の任意の断面における空隙の面積の標準偏
    差が走査型電子顕微鏡の画像解析による測定方法の値で
    200〜450μm2 である均一構造を有すること。
  4. 【請求項4】 長繊維が、島成分としての繊維形成能を
    有する熱可塑性ポリマーと、海成分としてのポリオレフ
    ィン系ポリマーとが配された海島型混合紡糸長繊維であ
    る、請求項1記載の長繊維不織布。
  5. 【請求項5】 長繊維が、島成分としての繊維形成能を
    有する熱可塑性ポリマーと、海成分としてのポリオレフ
    ィン系ポリマーとが配された海島型多芯複合紡糸長繊維
    である、請求項1記載の長繊維不織布。
  6. 【請求項6】 長繊維が、下記ポリマーブレンド(a)
    とポリマーブレンド(b)とを多層接合型に貼り合わせ
    た海島型混合複合紡糸長繊維である、請求項1記載の長
    繊維不織布。 ポリマーブレンド(a):島成分としての繊維形成能を
    有する熱可塑性ポリマー(A)と海成分としてのポリオ
    レフィン系ポリマー(B)とのポリマーブレンド。 ポリマーブレンド(b):島成分としての繊維形成能を
    有する熱可塑性ポリマー(A’)と海成分としてのポリ
    オレフィン系ポリマー(B’)とからなるポリマーブレ
    ンド。
  7. 【請求項7】 繊維形成能を有する熱可塑性ポリマー
    が、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレ
    ート単位を80モル%以上含む共重合ポリエチレンテレ
    フタレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン61
    0、ナイロン12、ポリプロピレン、ポリウレタンエラ
    ストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィン
    エラストマーおよびポリアミドエラストマーからなる群
    から選ばれた少なくとも1種のポリマーである、請求項
    1記載の長繊維不織布。
  8. 【請求項8】 請求項4、5または6記載の長繊維不織
    布から、海成分としてのポリマーを抽出除去して得られ
    る、極細長繊維不織布。
  9. 【請求項9】 請求項1に記載した長繊維不織布および
    これに含浸された高分子弾性体を含み、下記(I)〜
    )の各要件を同時に満足する人工皮革。 (I)繊維束が、人工皮革の厚み方向と平行な任意の断
    面において、幅1cm当たり5〜70本の範囲で存在す
    ること。 (J)繊維束の占める総面積が、人工皮革の厚み方向に
    直交する任意の断面において、断面積の5〜70%の範
    囲であること。 (K)含浸された高分子弾性体のうち、繊維間の接着に
    寄与していない高分子弾性体が少なくとも一部存在する
    こと。 (L)人工皮革の縦方向の20%引張応力(σ20)と
    横方向の20%引張応力(σ20)とが、夫々、1.5
    〜10kg/cmの範囲にあること。 (M)人工皮革の縦方向の20%引張応力(σ20)と
    曲げ硬さ(Rb(g/cm))との比および人工皮革の
    横方向の20%引張応力(σ20)と曲げ硬さ(Rb
    (g/cm))との比の平均値が3〜30であること。 (N)人工皮革の見掛け密度が0.20〜0.60g/
    cm3 であること。
  10. 【請求項10】 請求項3に記載した長繊維不織布およ
    びこれに含浸された高分子弾性体を含み、下記(O)〜
    (Q)の各要件を同時に満足する、請求項9記載の人工
    皮革。 (O)繊維束が、人工皮革の厚み方向と平行な任意の断
    面において、1cm当たり10〜50本の範囲で存在
    すること。 (P)人工皮革の任意の断面における空隙の平均面積が
    走査型電子顕微鏡の画像解析による測定方法の値で70
    〜140μm2 であること。 (Q)人工皮革の任意の断面における空隙の面積の標準
    偏差が走査型電子顕微鏡の画像解析による測定方法の値
    で80〜200μm2 である均一構造を有すること。
  11. 【請求項11】 請求項4、5または6に記載した海島
    型複合繊維からなる長繊維不織布に高分子弾性体を含浸
    すると同時に海成分としてのポリオレフィン系ポリマー
    を抽出除去して得られた、平均単繊維繊度0.0001
    〜0.2deの極細繊維を含む、請求項9記載の人工皮
    革。
  12. 【請求項12】 請求項7に記載した極細長繊維不織布
    に高分子弾性体を含浸して得られた、平均単繊維繊度
    0.0001〜0.2deの極細繊維を含む、請求項9
    記載の人工皮革。
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