JP2011153181A - コバルト−ケトイミナト錯体、および当該錯体を用いたポリカルボナートの製造方法 - Google Patents
コバルト−ケトイミナト錯体、および当該錯体を用いたポリカルボナートの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
本発明は、エポキシド化合物と二酸化炭素を共重合するためのコバルト−ケトイミナト錯体に関する。また、本発明は、コバルト−ケトイミナト錯体を用いてエポキシド化合物と二酸化炭素を共重合することを含む、ポリカルボナートの製造方法に関する。
エポキシド化合物と二酸化炭素との共重合によって得られるポリカルボナートは、二酸化炭素を合成樹脂の原料に利用する点で興味深い。また、脂肪族ポリカルボナートは、透明性を有しかつ所定温度以上に加熱すると完全に分解するため、一般成形物、フィルム、ファイバーなどの用途に使用できることに加えて、光ファイバー、光ディスクなどの光学材料、あるいはセラミックバインダー、ロストフォームキャスティングなどの熱分解性材料として利用することも可能である。さらに、脂肪族ポリカルボナートは、生体内で分解可能であるため、徐放性の薬剤カプセルなどの医用材料、生分解性樹脂の添加剤または生分解性樹脂の主成分として応用できる。
脂肪族ポリカルボナートは、これまでに様々な触媒または触媒システムを用いることによって合成されている。例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2006/0089252号)には、特定の構造式を有するコバルト系触媒を好ましくは塩の形態の助触媒と組み合わせて用いてプロピレンオキシドと二酸化炭素を共重合させることにより、ポリ(プロピレンカルボナート)を製造することが記載されている。
特許文献2(特許公開2009−215529号)には、光学活性コバルト錯体触媒の存在下、場合により求核剤を用いて、二酸化炭素とエポキシドを交互共重合させることを特徴とする、ポリカルボナート樹脂の製造方法が記載されている。
ポリカルボナートの合成において、エポキシド化合物と二酸化炭素が一分子ずつ反応した副生成物である環状カルボナートの生成量や、ポリカルボナート鎖の規則性を乱すことになる、ポリカルボナート鎖中のポリエーテル単位の比率を可能な限り低く抑えつつ、高い触媒活性、例えば高いTOF(Turnover Frequency、触媒中の金属の単位モル数または触媒の単位質量当たり、単位時間当たりの、エポキシド化合物のポリマーへの転化量)を発揮する触媒が、依然として必要とされている。
また、一般的な触媒反応においては、反応温度をより高温にすると、反応速度を向上させる、すなわち触媒活性を高めてより短時間で反応を完了させることができるが、同時に副生成物の生成量も増加する場合がある。このことは、一般に室温近辺〜約40℃で使用されるポリカルボナート合成用の触媒についても当てはまり、例えば60℃以上の高温条件下でこれらの触媒を使用すると、環状カルボナートの生成量が増大することが多い。この環状カルボナートは、ポリカルボナートが解重合によって末端から分解されて生成すると考えられている。そのため、効率的にポリカルボナートを合成するために、高温条件下でも環状カルボナートの生成を最小限に抑えることが可能な触媒が望まれている。
本願は、上記課題を解決するために以下の発明を提供する。
1.式(I):
または式(II):
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換のアルコキシ基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR1とR2またはR2とR3が互いに結合して置換または非置換の脂肪族環を形成してもよく;R4は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換のアルコキシ基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されるか、あるいは隣り合う芳香族炭素原子上の2つのR4が互いに結合して置換または非置換の脂肪族環または芳香族環を形成してもよく;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表されるコバルト−ケトイミナト錯体を用いて、エポキシド化合物と二酸化炭素を共重合させることを特徴とする、ポリカルボナートの製造方法。
2.前記式(I)または(II)において、R1、R2およびR3が、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択され;R4が水素原子である、項目1に記載の方法。
3.前記式(I)において、Zが、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、およびペンタフルオロベンゾアートからなる群から選択されるアニオン性配位子である、項目1または2のいずれかに記載の方法。
4.前記コバルト−ケトイミナト錯体が、式(I−1):
式(II−1):
式(I−2):
または式(II−2):
(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、およびペンタフルオロベンゾアートからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)のいずれかで表される、項目1〜3のいずれか1つに記載の方法。
5.前記エポキシド化合物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1〜4のいずれか1つに記載の方法。
6.[R5 4N]+、[R5 4P]+、[R5 3P=N=PR5 3]+および式(III):
(式中、R5は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、R6は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩からなる助触媒を前記コバルト−ケトイミナト錯体と組み合わせて用いて、エポキシド化合物と二酸化炭素を共重合させることを特徴とする、項目1〜5のいずれか1つに記載の方法。
7.式(I):
または式(II):
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換のアルコキシ基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR1とR2またはR2とR3が互いに結合して置換または非置換の脂肪族環を形成してもよく;R4は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換のアルコキシ基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されるか、あるいは隣り合う芳香族炭素原子上の2つのR4が互いに結合して置換または非置換の脂肪族環または芳香族環を形成してもよく;Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表されるコバルト−ケトイミナト錯体。
8.前記式(I)または(II)において、R1、R2およびR3が、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択され;R4が水素原子である、項目7に記載のコバルト−ケトイミナト錯体。
9.前記式(I)において、Zが、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、およびペンタフルオロベンゾアートからなる群から選択されるアニオン性配位子である、項目7または8のいずれかに記載のコバルト−ケトイミナト錯体。
10.前記コバルト−ケトイミナト錯体が、式(I−1):
式(II−1):
式(I−2):
または式(II−2):
(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、およびペンタフルオロベンゾアートからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)のいずれかで表される、項目7〜9のいずれか1つに記載のコバルト−ケトイミナト錯体。
11.[R5 4N]+、[R5 4P]+、[R5 3P=N=PR5 3]+および式(III):
(式中、R5は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、R6は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩からなる助触媒を、項目7〜10のいずれか1つに記載のコバルト−ケトイミナト錯体と組み合わせた触媒システム。
本発明によれば、反応温度を従来よりも高くできる(例えば約60℃、約80℃など)ため、触媒活性を高めて重合効率を向上させることができ(すなわち高いTOFを達成でき)、同時に環状カルボナートの生成量を低く抑えることができる。そのため、本発明によれば、特に大量スケールの場合に室温と比べて温度制御のし易い高温条件下で、ポリカルボナートを効率的に短時間で合成することができる。
本発明の一実施態様では、エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合によるポリカルボナートの製造に使用されるコバルト−ケトイミナト錯体を、以下の式(I):
または式(II):
で表すことができる。上記式(I)および(II)に示されるように、コバルト−ケトイミナト錯体では、イミン部分由来の2個の窒素原子およびケトン部分由来の2個の酸素原子(エノール酸素)が中心金属のコバルトに平面四座配位し、式(I)のコバルト−ケトイミナト錯体についてはアキシアル位にアニオン性配位子Zがさらに配位する。3価コバルトがエポキシド化合物と二酸化炭素の共重合に反応活性を有するため、式(II)のコバルト−ケトイミナト錯体を使用する場合は、例えば反応系中で2価コバルトをヨウ素などで3価に酸化し、必要に応じてアニオン交換により所望のアニオン性配位子Zを導入することによって、エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合を行うことができる。
R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換のアルコキシ基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR1とR2またはR2とR3が互いに結合して置換または非置換の脂肪族環を形成してもよい。
R1、R2およびR3の置換または非置換のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。アルキル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
R1、R2およびR3の置換または非置換のアルケニル基としては、炭素数2〜10の直鎖または分岐鎖状のアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖状のアルケニル基、例えば、ビニル基、2−プロペニル基などが挙げられる。アルケニル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
R1、R2およびR3のアリール基としては、炭素数6〜10の置換または非置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基などの置換または非置換のアリール基が挙げられる。アリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
R1、R2およびR3の置換または非置換のヘテロアリール基としては、炭素数5〜10の置換または非置換のヘテロアリール基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基などの置換または非置換のヘテロアリール基が挙げられる。ヘテロアリール基は、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ハロゲン原子基、ニトロ基、シアノ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
R1、R2およびR3の置換または非置換のアルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、アダマンチルオキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
R1、R2およびR3のアシル基としては、炭素数1〜20のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基などの脂肪族アシル基、ベンゾイル基、3,5−ジメチルベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、2,6−ジメトキシベンゾイル基、2,4,6−トリメトキシベンゾイル基、2,6−ジイソプロポキシベンゾイル基、1−ナフチルカルボニル基、2−ナフチルカルボニル基、9−アントリルカルボニル基などのアリールアシル基などが挙げられる。
R1、R2およびR3の置換または非置換のアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20の置換または非置換のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基が挙げられる。アルコキシカルボニル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
R1、R2およびR3の置換または非置換のアリールオキシカルボニル基としては、炭素数7〜20の置換または非置換のアリールオキシカルボニル基が好ましく、例えば、フェノキシカルボニル基が挙げられる。アリールオキシカルボニル基は、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
R1、R2およびR3の置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基としては、炭素数7〜20のアラルキルオキシカルボニル基が好ましく、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基などが挙げられる。アラルキルオキシカルボニル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシアルキレンオキシ基、例えばメトキシエチレンオキシ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
隣り合う炭素原子上のR1とR2またはR2とR3は、互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族環を形成してもよく、この場合、炭素数4〜10の置換または非置換の脂肪族環を形成することが好ましい。例えば、R2とR3が−(CH2)4−を介して互いに結合した場合、シクロヘキセン環を形成する。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基、ハロゲン原子などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
R4は、ベンゼン環上の置換基であり、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換のアルコキシ基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択される。R4の具体例および好適例は、R1〜R3について上述したものと同様である。
また、隣り合う芳香族炭素原子上の2つのR4が互いに結合して、置換または非置換の脂肪族環または芳香族環を形成してもよい。隣り合う芳香族炭素原子上の2つのR4が環を形成する場合、コバルト−ケトイミナト錯体の分子内に、R4の結合しているベンゼン環と複合した多環構造、例えば、テトラヒドロナフタレン環、ナフタレン環などが形成される。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基、ハロゲン原子などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されることが好ましい。R1は水素原子であることがより好ましい。R2は、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されることがより好ましい。R3は、水素原子、または置換もしくは非置換のアルキル基、特にメチル基であることがより好ましい。
R4は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択されることが好ましい。R4は水素原子であることがより好ましい。
Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。アニオン性配位子Zはエポキシド化合物のエポキシド炭素に対して求核性を有する場合がある。Zの具体例として、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、プロピオナート、シクロヘキシルカルボキシラートなどの脂肪族カルボキシラート;ベンゾアート(-OBz)、p−メチルベンゾアート、3,5−ジクロロベンゾアート、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート(-OBz(4−Me2N))、4−tert−ブチルベンゾアート、ペンタフルオロベンゾアート(-OBzF5)、ナフタレンカルボキシラートなどの芳香族カルボキシラート;メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシドなどのアルコキシド;フェノキシド、o−ニトロフェノキシド、p−ニトロフェノキシド、m−ニトロフェノキシド、2,4−ジニトロフェノキシド、3,5−ジニトロフェノキシド、3,5−ジフルオロフェノキシド、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシド、1−ナフトキシド、2−ナフトキシドなどのアリールオキシドなどが挙げられる。Zは、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることがより好ましく、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが特に好ましい。
上述したコバルト−ケトイミナト錯体の中でも、
式(I−1):
式(II−1):
式(I−2):
または式(II−2):
が特に好ましい。Zは上記のとおりであり、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、およびペンタフルオロベンゾアートからなる群から選択されることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、およびペンタフルオロベンゾアートからなる群から選択されることがより好ましく、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、およびペンタフルオロベンゾアートからなる群から選択されることがさらにより好ましい。
式(I−1):
上記コバルト−ケトイミナト錯体に助触媒をさらに組み合わせた触媒システムを用いて、エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合を行うこともできる。助触媒をさらに用いることにより、共重合の反応速度を高める、および/または共重合体の交互規則性を高める、および/または副生成物である環状カルボナートの生成を抑制することができる。
上記コバルト−ケトイミナト錯体と組み合わせることが可能な助触媒の一例は、リンおよび/または窒素を含むカチオンと対アニオンとからなる塩である。そのような助触媒として、[R5 4N]+、[R5 4P]+、[R5 3P=N=PR5 3]+(式中、R5は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)および式(III):
(式中、R5は、上記説明したとおりであり、R6は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩を使用できる。
R5およびR6の具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などの、直鎖または分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基などの置換または非置換のアリール基が挙げられる。R5およびR6は、上記カチオン([R5 4N]+、[R5 4P]+、[R5 3P=N=PR5 3]+、式(III)のイミダゾリウム)が全体として共重合反応に有利な立体的効果を発揮する、すなわち適切な嵩高さを有するように、選択して組み合わせることができる。
上記塩を構成するカチオンとして、[R5 4N]+、[R5 3P=N=PR5 3]+、または式(III)のイミダゾリウムを使用することが好ましく、[R5 3P=N=PR5 3]+を使用することがより好ましい。
四級アンモニウム[R5 4N]+の具体例として、テトラブチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、トリシクロヘキシルメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウムなどが挙げられる。
四級ホスホニウム[R5 4P]+の具体例として、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、テトラシクロヘキシルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、テトラ(メトキシフェニル)ホスホニウムなどが挙げられる。
ビス(ホスホラニリデン)アンモニウム[R5 3P=N=PR5 3]+の具体例として、ビス(トリブチルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(エチルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(n−ブチルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(ジメチルフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリトリルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリナフチルホスホラニリデン)アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムが好ましい。
式(III)のイミダゾリウムの具体例として、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
上記塩を構成するアニオンとして、Zについて上述したものを挙げることができ、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることがより好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが特に好ましい。
上記カチオンおよびアニオンからなる塩として、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアセタート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムフルオリド(PPNF)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムペンタフルオロベンゾアート(PPNOBzF5)、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウムクロリドなどが挙げられる。ある実施態様では、PPNF、PPNClまたはPPNOBzF5が好適に使用される。
上記のコバルト−ケトイミナト錯体を用いたポリカルボナートの合成に使用するエポキシド化合物として、式(IV):
(式中、R7およびR8は、同一でも異なっていてもよく、H、置換もしくは非置換のアルキル基、または置換もしくは非置換のアリール基であるか、またはR7とR8が互いに結合して置換もしくは非置換の環を形成してもよい。)で表されるものが使用できる。
R7およびR8のアルキル基として、炭素数1〜10の直鎖または分岐の置換または非置換のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−メチル−1−エチル−n−ペンチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、1−エチル−1,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−2,2−ジメチル−n−プロピル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられ、メチル基であることが好ましい。アルキル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または複数の置換基で置換されていてもよい。
R7およびR8の置換または非置換のアリール基として、置換または非置換の、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基などが挙げられ、フェニル基であることが好ましい。アリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの別のアリール基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子などから選択される1または複数の置換基で置換されていてもよい。
R7とR8は、互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、好ましくは炭素数4〜10の、置換または非置換の脂肪族環を形成してもよい。例えば、R7とR8が−(CH2)4−を介して互いに結合した場合、シクロヘキサン環を形成する。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子などから選択される1または複数の置換基で置換されていてもよい。
そのようなエポキシド化合物として、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、3−フェニルプロピレンオキシド、3,3,3−トリフルオロプロピレンオキシドなどが挙げられ、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、またはそれらの組み合わせが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはそれらの組み合わせがより好ましい。
エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合は、加圧可能な公知の重合反応装置、例えばオートクレーブを用いて行うことができる。共重合の反応温度は、一般に約0℃以上、約120℃以下とすることができ、約40℃以上、約100℃以下であることが好ましく、約60℃以上、約80℃以下であることがより好ましい。本発明のコバルト−ケトイミナト錯体を用いると、従来のポリカルボナート合成用触媒と比較して、高温で共重合を行っても環状カルボナートの生成を良好に抑制することができ、かつ短時間で反応を完了することができるため、高いTOFと高収率の両方を実現することができる。また、重合溶液(溶液重合の場合)または重合生成物(バルク重合の場合)の粘度は温度の上昇に伴い低下するのが一般的であるため、共重合をより高温で行うことが可能な本発明によれば、これらの重合溶液または重合生成物の攪拌効率が上がり、反応容器の単位体積当たりの生産性を向上できる場合がある。
共重合時の二酸化炭素の分圧は、一般に約0.1MPa以上、約10MPa以下とすることができ、約5MPa以下であることが好ましく、約3MPa以下であることがより好ましい。窒素、アルゴンなどの不活性ガスが二酸化炭素と一緒に反応雰囲気中に存在してもよい。
エポキシド化合物と両末端ジエポキシド化合物の合計と、触媒であるコバルト錯体とのモル比は、一般にエポキシド化合物の合計:コバルト錯体=約1000:1以上とすることができ、約2000:1以上であることが経済性の観点から好ましい。錯体濃度が低いと一般に反応時間が長くなるため、エポキシド化合物の合計:コバルト錯体=約100000:1以下、または約50000:1以下とすることが一般的である。必要に応じて使用される助触媒の量は、コバルト錯体1モルに対して、一般に約0.1〜約10モルとすることができ、約0.5〜約5モルであることが好ましく、約0.8〜約1.2モルであることがより好ましい。
共重合は無溶媒で行ってもよく、必要に応じて溶媒を使用して行ってもよい。使用可能な溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミドなどのアミド、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル、プロピレンカルボナート、ジメチルカルボナートなどのカルボナート系溶媒およびそれらの組み合わせを用いることができ、ジクロロメタン、トルエン、ジメチルホルムアミドおよび1,2−ジメトキシエタンが好ましく、ジクロロメタンおよび1,2−ジメトキシエタンがより好ましい。溶媒を使用する場合、その量は、エポキシド化合物1質量部に対して、一般に約0.1〜約100質量部とすることができ、約0.2〜約50質量部であることが好ましく、約0.5〜約20質量部であることがより好ましい。
所望量のエポキシド化合物が重合した後、公知の後処理を行うことができる。例えば、塩酸、メタノール、塩酸/メタノール混合物などを反応停止剤として反応混合物に投入し、必要に応じて昇温および/または攪拌して反応を終了することができる。その後、例えば、貧溶媒としてメタノール、ヘキサンなどを用いてポリマーを再沈殿してもよく、ソックスレー抽出器を利用して固体状混合物から錯体を抽出してもよい。また、カラムクロマトグラフィーなどの周知の手段を用いて、ポリマーをさらに精製してもよい。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、これらは本発明の例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例で得られた化合物の1H−NMRおよび13C−NMRスペクトルの測定は、日本電子株式会社製のJEOL−EX270またはGX−400において、溶媒として重クロロホルムあるいは重ジメチルスルホキシド、内部標準にはテトラメチルシランを用い、温度25℃で実施した。2価コバルト錯体のESI−MSの測定は、Waters社製LCT PremierXEを用いて、1μg/mLの測定試料のアセトニトリル溶液を10μL導入して行い、解析ソフトウェア(Mass Lynx)で処理して求めた。ポリプロピレンカルボナートの分子量測定は、高速液体クロマトグラフィーシステム(島津製作所製CTO−6A、日立製作所製L−6200、L−4200、D−2520、日本分光株式会社製RI−2031Plus、DG2080−53、LC−NetII/ADC)とSHODEX社製KF−804Lカラム2本を用いてテトラヒドロフランを溶出液として(40℃,1.0mL/分)、ポリスチレン標準を基準に換算して測定し、解析ソフトウェア(日本分光株式会社製ChromNAVクロマトグラフィデータステーションのGPC計算プログラム)で処理して求めた。
(1)錯体の調製
下式で表されるケトイミナト配位子L−1およびL−2は、Z. Anorg. Allg. Chem. 1966, 346, p. 76に記載された方法を用いて合成した。下式で表されるケトイミナト配位子LC−1およびLC−2は、Inorg. Chim. Acta 1997, 255, p. 295に記載された方法を用いて合成した。ペンタフルオロ安息香酸銀および4−(ジメチルアミノ)安息香酸銀はDalton Trans. 2006, p. 5536に記載された方法を用いて合成した。また、反応に用いたメタノール、トリエチルアミン、ヨウ素は純正化学株式会社から購入したものを用いた。塩化メチレン、無水塩化コバルト、安息香酸銀は関東化学株式会社から購入したものを用いた。
下式で表されるケトイミナト配位子L−1およびL−2は、Z. Anorg. Allg. Chem. 1966, 346, p. 76に記載された方法を用いて合成した。下式で表されるケトイミナト配位子LC−1およびLC−2は、Inorg. Chim. Acta 1997, 255, p. 295に記載された方法を用いて合成した。ペンタフルオロ安息香酸銀および4−(ジメチルアミノ)安息香酸銀はDalton Trans. 2006, p. 5536に記載された方法を用いて合成した。また、反応に用いたメタノール、トリエチルアミン、ヨウ素は純正化学株式会社から購入したものを用いた。塩化メチレン、無水塩化コバルト、安息香酸銀は関東化学株式会社から購入したものを用いた。
錯体II−1の合成
反応は窒素雰囲気下で行った。配位子L−1 550mg(1.42mmol)を脱気したメタノール15mLに溶かし、トリエチルアミン301mg(2.97mmol)を加え、58℃に加熱した後、無水塩化コバルト(II)276mg(2.12mmol)を脱気メタノール5mLに溶かした溶液を加え、58℃で30分撹拌した。室温に冷却後、脱気した水を加え、窒素雰囲気下で濾過し、少量の脱気した水およびメタノールで洗浄後、減圧下で乾燥した。得られた固体の重量(581mg)から、収率は92%であると計算された。この2価コバルト錯体II−1は常磁性であり、NMRによる測定などの純度の決定に代えて、ESI−MSによる同定を行った。
ESI−MS(+) 計算値:分子式C20H22CoN2O6、C20H22CoN2O6 +(M+)=445.08044、C20H23CoN2O6 +(M+H+)=446.08099;実測値:445.0829、446.0866
反応は窒素雰囲気下で行った。配位子L−1 550mg(1.42mmol)を脱気したメタノール15mLに溶かし、トリエチルアミン301mg(2.97mmol)を加え、58℃に加熱した後、無水塩化コバルト(II)276mg(2.12mmol)を脱気メタノール5mLに溶かした溶液を加え、58℃で30分撹拌した。室温に冷却後、脱気した水を加え、窒素雰囲気下で濾過し、少量の脱気した水およびメタノールで洗浄後、減圧下で乾燥した。得られた固体の重量(581mg)から、収率は92%であると計算された。この2価コバルト錯体II−1は常磁性であり、NMRによる測定などの純度の決定に代えて、ESI−MSによる同定を行った。
ESI−MS(+) 計算値:分子式C20H22CoN2O6、C20H22CoN2O6 +(M+)=445.08044、C20H23CoN2O6 +(M+H+)=446.08099;実測値:445.0829、446.0866
錯体II−2の合成
反応は錯体II−1の合成と同様の方法により行った。配位子L−2 478mg(1.46mmol)を用いて489.1mgの固体を得た。重量から、収率は87%と計算された。錯体II−1と同様にこの錯体も常磁性であり、NMRによる測定などの純度の決定に代えて、ESI−MSによる同定を行った。
ESI−MS(+) 計算値:分子式C18H18CoN2O4、C18H18CoN2O4 +(M+)=385.05931、C18H19CoN2O4 +(M+H+)=386.06713;実測値:385.0843、386.0690
反応は錯体II−1の合成と同様の方法により行った。配位子L−2 478mg(1.46mmol)を用いて489.1mgの固体を得た。重量から、収率は87%と計算された。錯体II−1と同様にこの錯体も常磁性であり、NMRによる測定などの純度の決定に代えて、ESI−MSによる同定を行った。
ESI−MS(+) 計算値:分子式C18H18CoN2O4、C18H18CoN2O4 +(M+)=385.05931、C18H19CoN2O4 +(M+H+)=386.06713;実測値:385.0843、386.0690
錯体I−1a(Z=I-)の合成
反応は窒素雰囲気下で行った。コバルト(II)錯体II−1 581mg(130mmol)を脱気した無水塩化メチレン30mLに懸濁させ、ヨウ素182mg(0.718mmol)を室温で加えた。反応混合物を18時間室温で撹拌した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した(展開溶媒は最初クロロホルム、途中からクロロホルム/メタノールの50/1混合溶媒を用いた)。得られた生成物を塩化メチレンに溶解後、ヘキサンで沈殿させることにより、錯体I−1aを659mg(1.15mmol)得た。収率は89%であった。錯体I−1aの1H−NMRチャートを図1に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ1.35(t,J=6.8Hz,6H),3.02(s,6H),4.28(q,J=6.8Hz,4H),7.42(dd,J=6.4,3.2Hz,2H),8.26(dd,J=6.4,3.2Hz,2H),8.54(s,2H).
反応は窒素雰囲気下で行った。コバルト(II)錯体II−1 581mg(130mmol)を脱気した無水塩化メチレン30mLに懸濁させ、ヨウ素182mg(0.718mmol)を室温で加えた。反応混合物を18時間室温で撹拌した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した(展開溶媒は最初クロロホルム、途中からクロロホルム/メタノールの50/1混合溶媒を用いた)。得られた生成物を塩化メチレンに溶解後、ヘキサンで沈殿させることにより、錯体I−1aを659mg(1.15mmol)得た。収率は89%であった。錯体I−1aの1H−NMRチャートを図1に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ1.35(t,J=6.8Hz,6H),3.02(s,6H),4.28(q,J=6.8Hz,4H),7.42(dd,J=6.4,3.2Hz,2H),8.26(dd,J=6.4,3.2Hz,2H),8.54(s,2H).
錯体I−1b(Z=-OBz(ベンゾアート))の合成
反応は窒素雰囲気下で行った。コバルト錯体I−1a 150mg(0.262mmol)および安息香酸銀66.0mg(0.288mmol)を脱気した無水塩化メチレン15mLに溶かし、12時間室温で撹拌した。反応混合物を濾過して得られた溶液を濃縮し、塩化メチレンに溶かした後ヘキサンを加えて錯体を沈殿させ、錯体I−1bを130.3mg(0.230mmol)得た。収率は88%であった。錯体I−1bの1H−NMRチャートを図2に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ1.03(t,J=8.6Hz,6H),3.01(s,6H),4.65(q,J=8.6Hz,4H),8.22−8.40(m,5H),8.49(dd,J=8.6,4.3Hz,2H),9.47(dd,J=8.6,4.3Hz,2H),9.95(s,2H).
反応は窒素雰囲気下で行った。コバルト錯体I−1a 150mg(0.262mmol)および安息香酸銀66.0mg(0.288mmol)を脱気した無水塩化メチレン15mLに溶かし、12時間室温で撹拌した。反応混合物を濾過して得られた溶液を濃縮し、塩化メチレンに溶かした後ヘキサンを加えて錯体を沈殿させ、錯体I−1bを130.3mg(0.230mmol)得た。収率は88%であった。錯体I−1bの1H−NMRチャートを図2に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ1.03(t,J=8.6Hz,6H),3.01(s,6H),4.65(q,J=8.6Hz,4H),8.22−8.40(m,5H),8.49(dd,J=8.6,4.3Hz,2H),9.47(dd,J=8.6,4.3Hz,2H),9.95(s,2H).
錯体I−1c(Z=-OBzF5(ペンタフルオロベンゾアート))の合成
反応は窒素雰囲気下で行った。コバルト錯体I−1a 200mg(0.350mmol)およびペンタフルオロ安息香酸銀123mg(0.384mmol)を脱気した無水塩化メチレン15mLに溶かし、12時間室温で撹拌した。反応混合物を濾過して得られた溶液を濃縮し、塩化メチレンに溶かした後ヘキサンを加えて錯体を沈殿させ、錯体I−1cを56.2mg(0.0856mmol)得た。収率は24%であった。錯体I−1cの1H−NMRチャートを図3に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ1.33(t,J=6.8Hz,6H),2.89(s,6H),4.24(q,J=6.8Hz,4H),7.32(dd,J=6.0,3.0Hz,2H),8.10(dd,J=6.0,3.0Hz,2H),8.43(s,2H).
反応は窒素雰囲気下で行った。コバルト錯体I−1a 200mg(0.350mmol)およびペンタフルオロ安息香酸銀123mg(0.384mmol)を脱気した無水塩化メチレン15mLに溶かし、12時間室温で撹拌した。反応混合物を濾過して得られた溶液を濃縮し、塩化メチレンに溶かした後ヘキサンを加えて錯体を沈殿させ、錯体I−1cを56.2mg(0.0856mmol)得た。収率は24%であった。錯体I−1cの1H−NMRチャートを図3に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ1.33(t,J=6.8Hz,6H),2.89(s,6H),4.24(q,J=6.8Hz,4H),7.32(dd,J=6.0,3.0Hz,2H),8.10(dd,J=6.0,3.0Hz,2H),8.43(s,2H).
錯体I−1d(Z=-OBz(4−Me2N)(4−(ジメチルアミノ)ベンゾアート))の合成
反応は窒素雰囲気下で行った。コバルト錯体I−1a 150mg(0.262mmol)および4−(ジメチルアミノ)安息香酸銀78.4mg(0.288mmol)を脱気した無水塩化メチレン15mLに溶かし、12時間室温で撹拌した。反応混合物を濾過して得られた溶液を濃縮し、塩化メチレンに溶かした後ヘキサンを加えて錯体を沈殿させ、錯体I−1dを153.6mg(0.252mmol)得た。収率は96%であった。錯体I−1dの1H−NMRチャートを図4に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ1.04(t,J=9.0Hz,6H),2.88(s,6H),2.99(s,6H),4.65(q,J=9.0Hz,4H),7.33(d,J=10.9Hz,2H),8.15(d,J=11.3Hz,2H),8.47(dd,J=7.8,3.9Hz,2H),9.44(dd,J=7.8,3.9Hz,2H),9.93(s,2H).
反応は窒素雰囲気下で行った。コバルト錯体I−1a 150mg(0.262mmol)および4−(ジメチルアミノ)安息香酸銀78.4mg(0.288mmol)を脱気した無水塩化メチレン15mLに溶かし、12時間室温で撹拌した。反応混合物を濾過して得られた溶液を濃縮し、塩化メチレンに溶かした後ヘキサンを加えて錯体を沈殿させ、錯体I−1dを153.6mg(0.252mmol)得た。収率は96%であった。錯体I−1dの1H−NMRチャートを図4に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ1.04(t,J=9.0Hz,6H),2.88(s,6H),2.99(s,6H),4.65(q,J=9.0Hz,4H),7.33(d,J=10.9Hz,2H),8.15(d,J=11.3Hz,2H),8.47(dd,J=7.8,3.9Hz,2H),9.44(dd,J=7.8,3.9Hz,2H),9.93(s,2H).
錯体I−2a(Z=I-)の合成
反応は錯体I−1aの合成と同様の方法により行った。コバルト(II)錯体II−2 450mg(1.17mmol)を用い、錯体I−2aを425mg(0.829mmol)得た。収率は71%であった。錯体I−2aの1H−NMRチャートを図5に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ2.62(s,6H),2.98(s,6H),7.40−7.45(m,2H),8.42−8.47(m,2H),8.50(s,2H).
反応は錯体I−1aの合成と同様の方法により行った。コバルト(II)錯体II−2 450mg(1.17mmol)を用い、錯体I−2aを425mg(0.829mmol)得た。収率は71%であった。錯体I−2aの1H−NMRチャートを図5に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ2.62(s,6H),2.98(s,6H),7.40−7.45(m,2H),8.42−8.47(m,2H),8.50(s,2H).
錯体I−2b(Z=-OBz)の合成
反応は錯体I−1bの合成と同様の方法により行った。コバルト錯体I−2a 128mg(0.250mmol)および安息香酸銀63.0mg(0.275mmol)を用い、錯体I−2bを45.3mg(0.0895mmol)得た。収率は36%であった。錯体I−2bの1H−NMRチャートを図6に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ2.52(s,6H),2.88(s,6H),7.06−7.10(m,2H),7.15−7.22(m,3H),7.29(dd,J=6.4,3.6Hz,2H),8.29(dd,J=6.4,3.2Hz,2H),8.43(s,2H).
反応は錯体I−1bの合成と同様の方法により行った。コバルト錯体I−2a 128mg(0.250mmol)および安息香酸銀63.0mg(0.275mmol)を用い、錯体I−2bを45.3mg(0.0895mmol)得た。収率は36%であった。錯体I−2bの1H−NMRチャートを図6に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ2.52(s,6H),2.88(s,6H),7.06−7.10(m,2H),7.15−7.22(m,3H),7.29(dd,J=6.4,3.6Hz,2H),8.29(dd,J=6.4,3.2Hz,2H),8.43(s,2H).
反応は錯体II−1およびI−1aの合成と同様の方法により行った。配位子LC−1 3.49g(8.85mmol)および無水塩化コバルト(II)1.72g(13.3mmol)を用い、コバルト(II)錯体を3.73g(8.27mmol)得た。収率は93%であった。得られたコバルト(II)錯体3.73g(8.27mmol)およびヨウ素を用い、錯体C−1aを4.00g(6.92mmol)得た。収率は84%であった。
反応は錯体I−1bの合成と同様の方法により行った。コバルト錯体C−1a 300mg(0.519mmol)および安息香酸銀131mg(0.571mmol)を用い、錯体C−1bを157mg(0.274mmol)得た。収率は53%であった。
反応は錯体I−1cの合成と同様の方法により行った。コバルト錯体C−1a 300mg(0.519mmol)およびペンタフルオロ安息香酸銀182mg(0.571mmol)を用い、錯体C−1cを191mg(0.288mmol)得た。収率は55%であった。
反応は錯体II−1およびI−1aの合成と同様の方法により行った。配位子LC−2 1.67g(5.00mmol)および無水塩化コバルト(II)974mg(7.50mmol)を用い、コバルト(II)錯体を1.56g(4.00mmol)得た。収率は80%であった。得られたコバルト(II)錯体1.20g(3.07mmol)およびヨウ素を用い、錯体C−2aを906mg(1.75mmol)得た。収率は57%であった。
反応は錯体I−1bの合成と同様の方法により行った。コバルト錯体C−2a 200mg(0.386mmol)および安息香酸銀97.3mg(0.425mmol)を用い、錯体C−2bを172mg(0.335mmol)得た。収率は87%であった。
(2)重合反応の実施
以下の重合実験に使用したプロピレンオキシドは、東京化成工業から入手した試薬を特に精製することなくそのまま使用した。ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)はSigma-Aldrich Co.より購入したものを使用した。
以下の重合実験に使用したプロピレンオキシドは、東京化成工業から入手した試薬を特に精製することなくそのまま使用した。ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)はSigma-Aldrich Co.より購入したものを使用した。
選択性は、反応溶液の1H−NMRスペクトルにおける以下のピークの積分値から算出した。
ポリプロピレンカルボナート(PPC) 5.0ppm
環状カルボナート(PC) 4.6ppm
ポリエーテル単位 3.5ppm
ポリプロピレンカルボナート(PPC) 5.0ppm
環状カルボナート(PC) 4.6ppm
ポリエーテル単位 3.5ppm
収率は生成物の重量から以下のようにして算出した。
収率(%)=[単離したポリマーの重量]/[仕込みエポキシドがすべて重合したと仮定した際の重量]×100
仕込みエポキシドがすべて反応したと仮定した際の重量=
[エポキシドの重量]×[ポリカルボナート単位の式量]/[エポキシドの分子量]
収率(%)=[単離したポリマーの重量]/[仕込みエポキシドがすべて重合したと仮定した際の重量]×100
仕込みエポキシドがすべて反応したと仮定した際の重量=
[エポキシドの重量]×[ポリカルボナート単位の式量]/[エポキシドの分子量]
各錯体の触媒活性は錯体1g当たり、1時間当たりのエポキシド化合物のポリマーへの転化量(単離後)(g)(以下TOF、単位はg(PPC)/[g(錯体)・h(時間)])によって評価した。
例1
容量30mLのステンレス耐圧容器に、コバルト−ケトイミナト錯体I−1a(Z=I-)0.0143mmolおよびビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)0.0143mmolを入れ、プロピレンオキシド28.6mmolを加えた後、二酸化炭素を圧力をかけて注入し、全圧が2.0MPaとなるように調整した。室温で12時間反応させた後、二酸化炭素を抜き、この反応混合物について1H−NMRを測定し、残存するプロピレンオキシド(PO)の特性ピーク(2.99ppm)の積分値と、生成したポリカルボナート(PPC)の特性ピーク(5.01ppm)および環状カルボナート(PC)の特性ピーク(4.56ppm)の積分値から転化率を決定した。転化率は以下の式にしたがって計算した。
転化率(%)=(PPCの積分値+PCの積分値)/(POの積分値+PPCの積分値+PCの積分値)×100
容量30mLのステンレス耐圧容器に、コバルト−ケトイミナト錯体I−1a(Z=I-)0.0143mmolおよびビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)0.0143mmolを入れ、プロピレンオキシド28.6mmolを加えた後、二酸化炭素を圧力をかけて注入し、全圧が2.0MPaとなるように調整した。室温で12時間反応させた後、二酸化炭素を抜き、この反応混合物について1H−NMRを測定し、残存するプロピレンオキシド(PO)の特性ピーク(2.99ppm)の積分値と、生成したポリカルボナート(PPC)の特性ピーク(5.01ppm)および環状カルボナート(PC)の特性ピーク(4.56ppm)の積分値から転化率を決定した。転化率は以下の式にしたがって計算した。
転化率(%)=(PPCの積分値+PCの積分値)/(POの積分値+PPCの積分値+PCの積分値)×100
反応混合物中の、二酸化炭素とプロピレンオキシドとが交互に反応したポリカルボナート(PPC)と、二酸化炭素とプロピレンオキシドとが1分子ずつ反応した環状カルボナート(PC)の比率は、62:38であった。1H−NMRから、ポリカルボナート鎖に含まれるカルボナート結合の割合は97%であった。ポリカルボナートの収率は15%であり、TOFは4g(PPC)/[g(錯体)・h(時間)]であった。13C−NMRから、頭−尾(Head−to−Tail)結合選択性は86%であった。得られたポリカルボナートをGPCで分析したところ、数平均分子量Mnは7200、分子量分布Mw/Mnは1.15であった。結果を表1に示す。
例2
温度を80℃、時間を1時間とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
温度を80℃、時間を1時間とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
例3〜7
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体I−1b(Z=-OBz)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(例3)、40℃/6時間(例4)、60℃/3時間(例5)、80℃/1時間(例6)、80℃/0.5時間(例7)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体I−1b(Z=-OBz)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(例3)、40℃/6時間(例4)、60℃/3時間(例5)、80℃/1時間(例6)、80℃/0.5時間(例7)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
例8〜9
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体I−1c(Z=-OBzF5)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(例8)、80℃/1時間(例9)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体I−1c(Z=-OBzF5)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(例8)、80℃/1時間(例9)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
例10〜11
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体I−1d(Z=-OBz(4−Me2N))を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(例10)、80℃/1時間(例11)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体I−1d(Z=-OBz(4−Me2N))を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(例10)、80℃/1時間(例11)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
例12〜14
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体I−2a(Z=I-)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(例12)、60℃/3時間(例13)、80℃/1時間(例14)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体I−2a(Z=I-)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(例12)、60℃/3時間(例13)、80℃/1時間(例14)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
例15〜17
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体I−2b(Z=-OBz)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(例15)、60℃/3時間(例16)、80℃/1時間(例17)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体I−2b(Z=-OBz)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(例15)、60℃/3時間(例16)、80℃/1時間(例17)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
比較例1〜2
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体C−1a(Z=I-)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(比較例1)、80℃/1時間(比較例2)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体C−1a(Z=I-)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(比較例1)、80℃/1時間(比較例2)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
比較例3〜6
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体C−1b(Z=-OBz)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(比較例3)、40℃/6時間(比較例4)、60℃/3時間(比較例5)、80℃/1時間(比較例6)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体C−1b(Z=-OBz)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(比較例3)、40℃/6時間(比較例4)、60℃/3時間(比較例5)、80℃/1時間(比較例6)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
比較例7〜8
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体C−1c(Z=-OBzF5)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(比較例7)、80℃/1時間(比較例8)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体C−1c(Z=-OBzF5)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(比較例7)、80℃/1時間(比較例8)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
比較例9〜11
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体C−2a(Z=I-)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(比較例9)、60℃/3時間(比較例10)、80℃/1時間(比較例11)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体C−2a(Z=I-)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(比較例9)、60℃/3時間(比較例10)、80℃/1時間(比較例11)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
比較例12〜14
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体C−2b(Z=-OBz)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(比較例12)、60℃/3時間(比較例13)、80℃/1時間(比較例14)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
錯体I−1a(Z=I-)の代わりに、錯体C−2b(Z=-OBz)を使用し、反応温度と時間をそれぞれ、室温/12時間(比較例12)、60℃/3時間(比較例13)、80℃/1時間(比較例14)とした以外は、例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
上記結果から、アニオン性配位子Zを同一とし、高温短時間(60℃/3時間、または80℃/1時間)という反応条件下では、本発明のコバルト−ケトイミナト錯体を使用することにより、環状カルボナートの生成を良好に抑制することができ、同時により高いTOFを達成することができる。そのため、本発明によれば、反応時間を短縮しつつ投入したプロピレンオキシドを有効にポリマーへと転換することができ、例えば大量生産時に製造設備の稼働効率を大幅に高めることができる。
本発明は、二酸化炭素を炭素源として利用したポリカルボナートを工業的に製造するのに非常に有用である。また、本発明によって得られるポリカルボナートは、例えば光学材料、熱分解性材料、医用材料、生分解性樹脂などとして、様々な用途で利用することができる。
Claims (11)
- 式(I):
- 前記式(I)または(II)において、R1、R2およびR3が、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択され;R4が水素原子である、請求項1に記載の方法。
- 前記式(I)において、Zが、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、およびペンタフルオロベンゾアートからなる群から選択されるアニオン性配位子である、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
- 前記エポキシド化合物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
- [R5 4N]+、[R5 4P]+、[R5 3P=N=PR5 3]+および式(III):
- 式(I):
- 前記式(I)または(II)において、R1、R2およびR3が、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換のアルキル基、アシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、および置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基からなる群から選択され;R4が水素原子である、請求項7に記載のコバルト−ケトイミナト錯体。
- 前記式(I)において、Zが、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、およびペンタフルオロベンゾアートからなる群から選択されるアニオン性配位子である、請求項7または8のいずれかに記載のコバルト−ケトイミナト錯体。
- [R5 4N]+、[R5 4P]+、[R5 3P=N=PR5 3]+および式(III):
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WO2009137540A1 (en) * | 2008-05-09 | 2009-11-12 | Cornell University | Polymers of ethylene oxide and carbon dioxide |
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