JP2011137058A - インクジェット記録用水分散体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】粗大粒子が少なく、保存安定性に優れるインクジェット記録用水分散体の製造方法、及びその方法により得られる水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供する。
【解決手段】(1) 遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)、水不溶性ポリマー、水難溶性有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理する工程(3)を有する、インクジェット記録用水分散体の製造方法、及び(2)その方法により得られる水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクである。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水分散体の製造方法、及びその方法により得られる水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録部材として普通紙が使用可能、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
最近では、印刷物に耐候性や耐水性を付与するために、着色剤として顔料を用いるインクが広く用いられており、シアン又はブルー系の顔料として銅フタロシアニン顔料が用いられている。
例えば、特許文献1には、インキの保存安定性等に悪影響を及ぼす遊離銅の含有量を低減することを目的として、銅フタロシアニンクルードを濃硫酸に完全に溶解し、この硫酸溶液を水に加えて銅フタロシアニンを析出させ、これを濾過、水洗し、該顔料中に含まれる遊離銅の含有量を200ppm以下とした後、結晶転移処理を行って安定型結晶形を有する顔料に変換する安定型銅フタロシアニン顔料及び製造方法が開示されている。
特許文献2には、析出物のないインクジェット記録用インク組成物の提供を目的として、銅フタロシアニン顔料をエチレンジアミンテトラ酢酸又はその塩と接触させて得た、遊離銅イオン濃度が10ppm以下である銅錯体着色剤を含むインクジェット記録用インク組成物の製造方法が開示されている。
特開2004−189852号公報 特開2005−126725号公報
インクジェット記録方式において着色剤として顔料を用いた場合、多数の顔料粒子が凝集して生じる粗大粒子が存在すると、目詰まり等の吐出不良が起きやすくなるという問題があった。特にフタロシアニン顔料は、その環構造同士の相互作用が強く、凝集しやすいため、強固な粗大粒子が生じるという問題がある。
この問題に対して、従来より、顔料分散体やインクを遠心分離したり、濾過を繰り返すことで粗大粒子を取り除くことが行われている。しかし、これらの方法では、粗大粒子ばかりでなく、着色剤として必要な部分まで除去されてしまうという問題がある。また、顔料を製造する際に、顔料凝集物を粉砕して粗大粒子の発生を抑えようとしても、微細化し過ぎた顔料粒子がより凝集しやすくなり、かえって粗大粒子が増加するという問題がある。このことから、顔料を媒体に分散した際に粗大粒子が少ないインクジェット記録用インクとするために用いられる顔料分散体の製造方法が望まれていた。
また、顔料分散体は粒径分布を持つため、保存時に大きな粒径の粒子が沈降したり、粒径の小さすぎる粒子が凝集し、粘度が上昇する等の問題もあった。
本発明は、粗大粒子が少なく、保存安定性に優れるインクジェット記録用水分散体の製造方法、及びその方法により得られる水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供することを課題とする。
本発明者は、銅フタロシアニン顔料を用いたインクで、粗大粒子が発生し、保存安定性が低下する原因は、顔料に含まれる不純物にあるものと考え、検討を行った。その結果、遊離銅イオンの量を低減した銅フタロシアニン顔料と、水不溶性ポリマー、水難溶性有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理することによって、粗大粒子が少なく、保存安定性に優れる水分散体及び水系インクが得られることを見出した。
すなわち、本発明は、遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)、水不溶性ポリマー、水難溶性有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理する工程(3)を有するインクジェット記録用水分散体の製造方法、及びその方法により得られる水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供する。
本発明によれば、粗大粒子が少なく、保存安定性に優れるインクジェット記録用水分散体の製造方法、及びその方法により得られる水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供することができる。
本発明のインクジェット記録用水分散体の製造方法は、遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)、水不溶性ポリマー、水難溶性有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理する工程(3)を有することを特徴とするが、下記の工程(1)〜(3)を順次行うことが好ましい。
工程(1):粗銅フタロシアニン顔料を、中心温度80〜100℃、変動幅±4℃の条件下で、ソルベントソルトミリングして、β型銅フタロシアニン顔料(A)を得る工程
工程(2):β型銅フタロシアニン顔料(A)を、洗浄処理し、遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)を得る工程
工程(3):遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)、水不溶性ポリマー、水難溶性有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理する工程
銅フタロシアニン顔料中の遊離銅イオンの含有量を500ppm以下とすることによって、得られる水分散体及び水系インクの粗大粒子が少なく、保存安定性に優れる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
銅フタロシアニン顔料中の不純物、特にイオン性の化合物は、該顔料をイオン性の水不溶性ポリマーで分散する際に阻害剤として働く。特に遊離銅イオンは多価イオンであるため、水不溶性ポリマーのアニオン性基とイオン結合し、水不溶性ポリマーの分散剤としての効果を低下させる。そのため、遊離銅イオンの含有量を前記範囲まで減少させるように洗浄することで、水不溶性ポリマーの分散剤としての効果を発揮させ、分散性を向上し、粗大粒子が少なく、保存安定性に優れる水分散体及び水系インクが得られるものと考えられる。
以下、本発明の各工程、及び用いられる各成分等について説明する。
工程(1)
工程(1)は、粗銅フタロシアニン顔料を、中心温度80〜100℃、変動幅±4℃の条件下で、ソルベントソルトミリングして、β型銅フタロシアニン顔料(A)を得る工程である。
ソルベントソルトミリングとは、粗銅フタロシアニン顔料を磨砕助剤と有機溶媒の存在下で、ニーダー等により混練し、該顔料を磨砕することにより、微細化する方法である。
銅フタロシアニン顔料としては、α型(C.I.ピグメント・ブルー15、同15:1及び同15:2)、β型(C.I.ピグメント・ブルー15:3、同15:4)及びε型(C.I.ピグメント・ブルー15:6)等の結晶型が知られており、特に制限はないが、熱や溶剤に対する安定性の観点から、β型を用いることが好ましい。
β型粗銅フタロシアニン顔料を用いることで、最終的に微細なβ型銅フタロシアニン顔料を得ることができ、本発明の効果を十分に発揮させることができる。
原料として用いられるβ型粗銅フタロシアニン顔料は、公知の方法により合成することができる。例えば、(i)フタル酸又はその誘導体、尿素又はその誘導体を銅化合物及び触媒の存在下に有機溶剤中で加熱反応させる尿素法(ワイラー法)、(ii)フタロニトリルを銅化合物の存在下に有機溶剤中で加熱反応させるフタロニトリル法、(iii)トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、同イミド、同エステルの如き誘導体の存在下で無水フタル酸と尿素と銅塩を反応させる方法(特開昭61−203175号公報)、(iv)パラフィン系炭化水素溶媒とナフテン系炭化水素溶媒とを併用して銅フタロシアニンを合成する方法(特開平8−27388号公報)等が挙げられる。
β型粗銅フタロシアニン顔料の市販品としては、DIC株式会社製のFastogen Blue TGR WET、Fastogen Blue GNT、大日精化工業株式会社製のクロモファインブルー4911、4920、4940等が挙げられる。
粗銅フタロシアニン顔料の平均粒径に特に制限はないが、ソルベントソルトミリングを効率的に行う観点から、100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。
(磨砕助剤)
ソルベントソルトミリングに使用する磨砕助剤に特に制限はないが、後工程で除去する観点から、20℃の水100gに10g以上溶解しうる程度の水溶性の無機塩であることが好ましい。また、20℃のソルベントソルトミリングに使用する後述の有機溶媒100gに10mg以下しか溶解しない程度の不溶性であることが好ましく、実質的に該有機溶媒に不溶であることがより好ましい。
かかる無機塩の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、無水硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム等が挙げられるが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、無水硫酸ナトリウムが好ましく、塩化ナトリウムがより好ましい。
い。上記の磨砕助剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
磨砕助剤の平均粒径は、粗製顔料を効率的に磨砕する観点から、0.1〜100μmが好ましく、0.3〜50μmがより好ましく、1〜10μmが更に好ましい。
(有機溶媒)
ソルベントソルトミリングに使用する有機溶媒は、特に制限はないが、必要に応じて、後工程で有機溶媒を除去する観点から、20℃の水100gに10g以上溶解しうる程度の水溶性であることが好ましい。有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましく、中でもジエチレングリコールが好ましい。
上記の有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ソルベントソルトミリングを行う際の粗銅フタロシアニン顔料に対する磨砕助剤と有機溶媒の量は、顔料の微粒化を効率よく行う観点から、(磨砕助剤/粗銅フタロシアニン顔料)(質量比)で3〜20、好ましくは5〜15であり、(有機溶媒/粗銅フタロシアニン顔料)(質量比)で0.01〜5、好ましくは0.1〜3である。
ソルベントソルトミリングを行う際には、調色のために、本発明の目的を阻害しない範囲内で、他の顔料を混合して使用することもできる。また、上記の混練処理前又は処理中に、必要に応じて樹脂、界面活性剤等を添加することもできる。
(混練装置)
ソルベントソルトミリングに用いる混練装置は、粗銅フタロシアニン顔料を機械的に摩砕することができる装置であればよく、特に制限はない。混練装置としてはニーダーが代表的であるが、その他に、スーパーミキサー(株式会社カワタ製)、トリミックス(株式会社井上製作所製)等のバッチ型混練機、KCKミル(浅田鉄工株式会社製)等の連続混練機を用いることもできる。
ニーダー等の混練装置は、高速で回転する1個以上のロータを備えた混練室を有し、混練室中の材料全てが混練されながら、ロータと繰り返し接触する構造を有する。ロータは、たとえばプロペラ、羽根車又は鋸歯刃付きホイール等の形態を有することができる。
ニーダーとしては、双腕型ニーダー、2軸混練機ニーダー、加圧ニーダー、エクストルーダが好ましく、双腕型ニーダー、2軸混練機ニーダーがより好ましく、双腕型ニーダーが更に好ましい。
ニーダーのブレードの配列は、タンジェンシャル(ディファレンシャル)方式(切線形式、回転比は任意)、オーバラップ方式(重畳形式、回転比は1:1又は回転比1:2)が好ましく、オーバラップ方式がより好ましい。
(混練条件)
ソルベントソルトミリングを行う際の混練条件は、得られる水分散体及び水系インクの粗大粒子を低減し、保存安定性を向上させる観点から、混練温度は、中心温度80〜100℃、変動幅±4℃の条件下が好ましく、中心温度85〜95℃、変動幅±4℃の条件下がより好ましい。
また、混練温度の温度変動幅は設定温度に達した時点から±4℃に維持することが好ましく、ニーダー運転時間のうち、80%以上は80〜100℃を中心温度として±4℃の条件で運転することが好ましい。混練温度の温度変動幅は±4℃が好ましく、±3℃がより好ましく、±2℃が更に好ましい。
前記温度条件下でソルベントソルトミリングすることによって、得られる水分散体及び水系インクの粗大粒子が少なく、保存安定性に優れる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
溶媒存在下で銅フタロシアニン顔料を加熱すると、溶媒によって結晶の成長が促進される。そこで適度な温度領域で温度変動幅を抑えて混練処理を行うと、顔料の凝集物の粉砕及び微細化と結晶の成長のバランスが取れ、大きな結晶や細かすぎて凝集しやすい結晶ができることなく、均一な粒径の顔料結晶粒子が得られ、その結果、得られる水分散体及び水系インクの粗大粒子が少なく、保存安定性に優れるものとなると考えられる。
ニーダー等の混練装置のロータの回転速度は、均一なせん断状態下で、混練される顔料、磨砕助剤等が均等に移動し、温度が前記範囲内にあるように設定されることが好ましい。混練、磨砕効率の観点から、ロータの回転速度は好ましくは1〜100rpm、より好ましくは5〜50rpm、更に好ましくは10〜40rpmである。
混練時間は、有機顔料の種類と粒子径、最終製品の粒子径、磨砕助剤の粒子径、材料の量、回転速度、及び混練温度に依存するが、通常2〜24時間、好ましくは5〜12時間程度である。
ソルベントソルトミリングで得られた顔料は、原料に由来する不純物、混練の際に使用した磨砕助剤や有機溶媒等を効率的に除くために、希塩酸等の酸性水溶液中で攪拌し、濾過することにより、β型銅フタロシアニン顔料を得ることができる。
工程(2)
工程(2)は、工程(1)で得られたβ型銅フタロシアニン顔料(A)を、洗浄処理し、遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)を得る工程である。工程(2)は、工程(1)で得られたβ型銅フタロシアニン顔料(A)を、60℃以上の温水で洗浄処理し、遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)を得る工程であることが好ましい。
得られるβ型銅フタロシアニン顔料(B)の遊離銅イオンの含有量は、保存安定性の観点から、1〜400ppmであることが好ましく、1〜300ppmであることがより好ましい。
工程(2)の温水処理に用いられる温水には、本発明の効果を損なわない範囲で、顔料を溶解しない水溶性有機溶媒、酸やアルカリ等を混合して使用することができる。水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール、ジオール、トリオール等が挙げられる。
温水の温度は60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。
銅フタロシアニン顔料を、60℃以上の温水で洗浄処理することによって、効率的に銅フタロシアニン顔料中の遊離銅イオンの含有量を500ppm以下とすることができる。
更に、銅フタロシアニン顔料はソルベントソルトミリングしたものが好ましいが、ここで用いられる有機溶媒、磨砕助剤等も分散時に残留することで、分散剤としての効果を低下させる。このことから、有機溶媒、磨砕助剤等、更には遊離銅イオンの溶解度を向上させ、これらを効率よく除去するためにも60℃以上の温水で洗浄することが好ましい。温水洗浄以外の方法で遊離銅イオンを減らすこともできるが、温水洗浄により混練処理において添加される不純物も同時に除去できるため、より効果的に粗大粒子が少なく、保存安定性に優れる水分散体及び水系インクが得られるものと考えられる。
工程(2)で用いられる温水の量は、顔料1重量部に対して500重量部以上が好ましく、700重量部以上がより好ましく、1000重量部以上が更に好ましい。温水処理時間は1〜12時間が好ましい。また、工程(2)においては、温水での洗浄処理と濾過をセットで2回以上行うことが好ましく、洗浄効果の観点から2〜10回がより好ましく、3〜5回が更に好ましい。
工程(2)の温水処理後は、フィルタープレス等の濾過機で濾過・水洗して、遊離銅イオンを0〜500ppm含有するβ型銅フタロシアニン顔料(B)を得ることが好ましい。
フィルタープレス等の濾過機から取り出したプレスケーキは、乾燥機で乾燥し、ハンマーミル等で粉砕して粉末状の微細なβ型銅フタロシアニン顔料を得ることができる。また、得られたプレスケーキに再び水を加えてスラリー化した後、スプレードライヤー法等で乾燥し、粉末状の微細なβ型銅フタロシアニン顔料とすることも好ましい。
工程(3)
工程(3)は、遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)(以下、「顔料(B)」又は単に「顔料」ともいう)、水不溶性ポリマー、水難溶性有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理する工程である。工程(3)は、工程(1)及び(2)を経て得られた遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)、水不溶性ポリマー、水難溶性有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理する工程であることが好ましい。
β型銅フタロシアニン顔料(B)の遊離銅イオンの含有量は、保存安定性の観点から、1〜400ppmが好ましく、1〜300ppmがより好ましい。
遊離銅イオンの含有量は、顔料(B)の洗浄液を原子吸光分光法で測定して求められる値である。具体的には実施例記載の方法によって求められる。
〔水不溶性ポリマー〕
本発明に用いられる水不溶性ポリマーは、顔料(B)を水系媒体中に分散させ、分散を安定に維持するために用いられる。
ここで、「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量は好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。アニオン性ポリマーの場合、溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
本発明に用いられる水不溶性ポリマーは、水分散体及びその水分散体を含むインクの分散安定化の観点から、アニオン性ポリマーが好ましい。
ここで、「アニオン性」とは、未中和の物質を、純水に分散又は溶解させた場合、pHが7未満となること、又は物質が純水に不溶であり、pHが明確に測定できない場合には、純水に分散させた分散体のゼータ電位が負となることをいう。
用いるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、水分散体の保存安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
水不溶性ビニル系ポリマーとしては、(a)アニオン性モノマー(以下「(a)成分」ともいう)と、(b)疎水性モノマー(以下「(b)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物(以下、単に「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるビニル系ポリマーが好ましい。このビニル系ポリマーは、(a)成分由来の構成単位と(b)成分由来の構成単位を有する。なかでも、更に(c)マクロマー(以下「(c)成分」ともいう)由来の構成単位を含有するものが好ましい。
((a)アニオン性モノマー)
(a)アニオン性モノマーは、水不溶性ポリマー粒子を水分散体中で安定に分散させるために、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いられる。
アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、水不溶性ポリマー粒子の水分散体中での分散安定性の観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
〔(b)疎水性モノマー〕
(b)疎水性モノマーは、水分散体の分散安定性の観点から、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレートがより好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(b)疎水性モノマーは、前記のモノマー2種類以上を使用することができるが、アルキル(メタ)アクリレートと芳香族基含有モノマーを併用することが好ましい。
〔(c)マクロマー〕
(c)マクロマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500〜100,000の化合物であり、アニオン性ポリマー粒子のインク中での保存安定性の観点から、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
(c)マクロマーの数平均分子量は1,000〜10,000が好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(c)マクロマーとしては、アニオン性ポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、芳香族基含有モノマー系マクロマー及びシリコーン系マクロマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記(b)疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
〔(d)ノニオン性モノマー〕
モノマー混合物には、更に、(d)ノニオン性モノマー(以下「(d)成分」ともいう)が含有されていることが好ましい。
(d)成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでもポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートが好ましく、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレートがより好ましい。
商業的に入手しうる(d)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM−20G、同40G、同90G等、日油株式会社のブレンマーPE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400等、PP−500、同800等、AP−150、同400、同550等、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE−600B等が挙げられる。
上記(a)〜(d)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
ビニル系ポリマー製造時における、上記(a)〜(c)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又はビニル系ポリマー中における(a)〜(c)成分に由来する構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、水不溶性ポリマー粒子を水分散体中で安定に分散させる観点から、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは4〜30重量%、特に好ましくは5〜25重量%である。
(b)成分の含有量は、アニオン性ポリマー粒子の水分散体中での分散安定性の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜80重量%である。
(c)成分の含有量は、アニオン性ポリマー粒子の水分散体中での分散安定性の観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、水不溶性ポリマー粒子の水分散体中での分散安定性、及び水分散体及びその水分散体を含むインクの印字濃度の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.50である。
(水不溶性ポリマーの製造)
前記水不溶性ポリマーは、モノマー混合物を公知の重合法により共重合させることによって製造される。重合法としては溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等の極性有機溶媒が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられ、メチルエチルケトンが好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好ましく、重合連鎖移動剤としては、2−メルカプトエタノールが好ましい。
好ましい重合条件は、重合開始剤の種類等によって異なるが、重合温度は50〜80℃が好ましく、重合時間は1〜20時間であることが好ましい。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
本発明で用いられる水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、水不溶性ポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、5,000〜50万が好ましく、1万〜40万がより好ましく、1万〜30万がより好ましく、2万〜20万が更に好ましい。なお、水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、実施例記載の方法により測定される。
〔水難溶性有機溶媒〕
本発明に用いられる水難溶性有機溶媒とは、25℃の水100gに溶解する溶解量が1〜100gである有機溶媒をいい、その溶解量は好ましくは5〜80g、より好ましくは10〜60gである。水難溶性有機溶媒の具体例としては、ブタノール等の炭素数4〜6のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等の炭素数4〜6のケトン系溶媒、及びジブチルエーテル等の炭素数6〜10の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の炭素数4〜5の環状エーテル等のエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの中では、炭素数4〜6のケトン系溶媒が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンがより好ましい。
これらの水難溶性有機溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(分散処理)
工程(3)においては、遊離銅イオンを0〜500ppm含有するβ型銅フタロシアニン顔料(B)、水不溶性ポリマー、水難溶性有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理する。この分散処理は、水不溶性ポリマーを水難溶性有機溶媒に溶解させ、得られた水不溶性ポリマーの有機溶媒溶液にβ型銅フタロシアニン顔料(B)、水、及び必要に応じて、中和剤、界面活性剤等を加えて混合し、得られた混合物を分散処理して、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。水不溶性ポリマーの有機溶媒溶液に顔料等を加える順序に制限はないが、中和剤、水、顔料の順に加えることが好ましい。
該混合物中、顔料(B)は、25〜90重量%が好ましく、50〜75重量%がより好ましく、水不溶性ポリマーは、10〜90重量%が好ましく、25〜75重量%がより好ましく、(有機溶媒/水)比は、0.1〜0.9が好ましく、0.15〜0.8がより好ましく、該混合物の固形分は、5〜75重量%が好ましく、7〜30重量%がより好ましい。
前記水不溶性ポリマーの量に対する顔料(B)の量の重量比〔顔料(B)/水不溶性ポリマー〕は、分散安定性の観点から、40/60〜90/10であることが好ましく、50/50〜75/25であることがより好ましい。
また、最終的に得られる水分散体のpHが7〜11であるように、中和剤を用いて中和することが好ましい。
工程(3)における混合物の分散方法に特に制限はない。本分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
工程(3)の分散における温度は、0〜50℃が好ましく、0〜35℃がより好ましく、分散時間は1〜30時間が好ましく、2〜25時間がより好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置、なかでも高速撹拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社、商品名)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
混合物の分散処理後、分散体に含有される水難溶性有機溶媒を除去する。
得られた顔料粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は0.1重量%以下が好ましく、0.01重量%以下であることがより好ましい。
また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散体を加熱撹拌処理することもできる。
得られた水分散体は、ポリマーが付着した顔料粒子の固体分が水を主媒体とする中に分散しているものであり、顔料粒子の形態は、顔料と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されている、「顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子」であることが好ましい。粒子の形態としては、例えば、水不溶性ポリマーに顔料が内包された粒子形態、水不溶性ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、水不溶性ポリマー粒子表面に顔料が露出された粒子形態等が含まれる。
[インクジェット記録用水分散体]
本発明の製造方法により得られた水分散体中に分散している「顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子」の平均粒径は、分散性、印字濃度の観点から、好ましくは30〜300nm、より好ましくは40〜200nm、更に好ましくは50〜150nmである。なお、平均粒径は、実施例記載の方法により測定される。
本発明の水分散体には、乾燥防止のために、保湿剤、有機溶媒を添加することができ、また、水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を添加して、そのまま水系インクとして用いることもできる。
本発明の製造方法で得られる水分散体中の各成分の含有量は、下記のとおりである。
顔料の含有量は、印字濃度を高める観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは2〜20重量%、更に好ましくは4〜15重量%、特に好ましくは4〜10重量である。水の含有量は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。
本発明の水分散体の好ましい表面張力(20℃)は、30〜70mN/m、より好ましくは35〜65mN/mである。
本発明の水分散体の20重量%(固形分)の粘度(20℃)は、好ましくは1〜12mPa・s、より好ましくは1〜9mPa・s、より好ましくは2〜6mPa・s、更に好ましくは2〜5mPa・sである。
[インクジェット記録用水系インク]
本発明のインクジェット記録用水系インクは、本発明の製造方法で得られた水分散体を含有するものであるが、水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を添加することができる。
本発明の水系インク中の各成分の含有量は、下記のとおりである。
本発明の水系インクに用いられる「顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子」に含まれる顔料の含有量は、水系インクの印字濃度を高める観点から、水系インク中で、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは2〜20重量%、より好ましくは4〜15重量%、更に好ましくは5〜12重量である。
水の含有量は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。
本発明の水系インクの好ましい表面張力(20℃)は、23〜50mN/m、より好ましくは23〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mである。
本発明の水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出信頼性を維持するために、好ましくは2〜20mPa・sであり、より好ましくは2.5〜16mPa・s、更に好ましくは2.5〜12mPa・sである。
本発明の水系インクを適用するインクジェットの方式は制限されないが、ピエゾ方式のインクジェットプリンターに特に好適である。
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。なお、β型銅フタロシアニン顔料(B)の遊離銅イオン、水不溶性ポリマーの重量平均分子量、水分散体中の粒子の平均粒径及び粗大粒子数の測定は、以下の方法により行い、実施例及び比較例で得られた水系インクについて、以下の方法により保存安定性を評価した。
(1)β型銅フタロシアニン顔料(B)の遊離銅イオンの測定
試料10gをビーカーに取り、メタノール10ml、水9mlに塩酸1mlを混合して得た希釈塩酸溶液を少量を加え超音波槽で分散解膠後、前記と同じ割合で調製した希釈塩酸溶液を加えて全量1000mlとした。これを超音波槽で分散後、10分間煮沸し、ろ紙を用いて固形物を濾過し、該希釈塩酸溶液で洗浄、濾過液を合わせ適量に希釈して調整液を得た。この調整液の遊離銅イオンの量を原子吸光分光光度計(株式会社日立製作所製、Z−6100)を用いて定量した。
(2)水不溶性ポリマーの重量平均分子量の測定
溶離液として50mM CH3COOH(1級)を含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(G4000HXL+G2000HXL)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(3)水分散体中の粒子の平均粒径の測定
大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムのELS−8000(キュムラント解析)を用いて測定した。なお、測定する分散液の固形分濃度を3×10-3〜7×10-3重量%なるよう水で希釈して調整した。測定条件は、温度が25℃、入射光と検出器との角度が90°、積算回数が200回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。標準物質としてセラディン(Seradyn)社製のユニフォーム・マイクロパーティクルズ(平均粒径204nm)を用いた。
(4)水分散体中の粗大粒子数の測定
水分散体0.5mlを純水で5mlに希釈したものを試料とし、測定温度25℃でPARTICLE SIZING SYSTEMS社製の「アキュサイザー780APS」(測定条件:Injection Loop Volume:1ml、Flow Rate:60mL/min、Data Collection Time:60sec、Number Channels:128)を用いて、単一粒子光学検知法(SPOS法)により、水分散体中に含まれる粒子径0.51μm以上の粒子の数を粗大粒子としてその個数をカウントした。粗大粒子数の値が小さいほど良好である。
(5)水系インクの保存安定性
前記(3)水分散体中の粒子の平均粒径の測定法により、下記式より粒径変化率を求め、保存安定性を評価した。粒径変化率の絶対値が小さい方が、保存安定性が良好である。
粒径変化率(%)=((〔保存後の粒径〕−〔保存前の粒径〕)/〔保存前の粒径〕)×100
調製例1(β型銅フタロシアニン顔料(B)[1]の調製)
粗銅フタロシアニンブルー顔料(DIC株式会社製、商品名:Fastogen Blue TGR、一次粒子の粒径0.1〜10μm)1部、粉砕した塩化ナトリウム(平均粒径5μm)10部、ジエチレングリコール1部を双腕型ニーダー(株式会社井上製作所製、ソルトミリングニーダー、ブレードの配列:オーバラップ方式)に仕込み、90℃±3の条件で10時間混練(ソルベントソルトミリング)した。得られた混練物を80℃の1%塩酸水溶液100部中に入れ、1時間攪拌後、濾過し、顔料(A)を得た〔工程(1)〕。顔料(A)を次のように洗浄した。まず、温度80℃の温水を用意し、顔料1kgに対して1000倍の該温水を入れ、1時間攪拌し、フィルタープレス装置を用いて、重圧濾過を行い、濾過物を得た。その濾過物に対して、同じ洗浄を更に2回行った。乾燥、粉砕(スプレードライ)し、β型銅フタロシアニン顔料(B)[1]を得た〔工程(2)〕。得られた顔料を原子吸光分光光度計で測定したところ、遊離銅イオン含有量は250ppmだった。
調製例2〜5(β型銅フタロシアニン顔料(B)[2]〜[5]の調製)
調製条件を表1のとおり変更した以外は調製例1と同様にして、表1に示す遊離銅イオン含有量を有するβ型銅フタロシアニン顔料(B)[2]〜[5]を得た。
実施例1(顔料含有ポリマー粒子の水分散体の製造)
(1)水不溶性アニオン性ポリマーの合成
ステアリルメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルS)37部、スチレン(和光純薬工業株式会社製、試薬)19部、アクリル酸ブチル(和光純薬工業株式会社製、試薬)1部、メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製、試薬)15部、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S、数平均分子量:6000、固形分濃度:50重量%)14部(固形分換算)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(プロピレンオキシドの付加モル数:平均9モル、末端水酸基)14部からなるモノマー100部と、メチルエチルケトン30部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール、和光純薬工業株式会社製、試薬)0.2部、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))、和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65)1.3部を入れて混合し、混合溶液を得た。その合計量の10%を反応容器に入れ、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、混合溶液の残りの90%を入れ、反応容器中の混合溶液を75℃に維持し、攪拌下、滴下ロートから前記混合溶液を3時間かけて滴下しながら重合を行った。滴下終了から75℃で更に2時間維持し、80℃で1時間熟成させ、水不溶性アニオン性ポリマー(重量平均分子量37,000)のメチルエチルケトン溶液を得た。
(2)顔料含有アニオン性ポリマー粒子の水分散体の製造
前記(1)で得られたポリマー溶液をメチルエチルケトンで、濃度50%に調整した溶液80部にメチルエチルケトン100部、5N水酸化ナトリウム水溶液の所定量、及びイオン交換水210部を加えて該ポリマーを中和(中和度62%)した。
次に、調製例1で得られたβ型銅フタロシアニン顔料(B)[1](遊離銅イオン含有量:250ppm)60部を加えて、ディスパー混合し、Microfluidics 社の高圧分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、180MPa)で15パス処理した〔工程(3)〕。
得られた分散物に、イオン交換水100部を加え、攪拌した後、減圧下、60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去した後、5μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、ザルトリウス社製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、顔料含有アニオン性ポリマー粒子(固形分濃度20.0%)を含むインクジェット記録用水分散体を得た。
得られた水分散体中の粒子の平均粒径は114nm、粗大粒子数は10000であった。結果を表1に示す。
実施例2〜3及び比較例1〜2(インクジェット記録用水分散体の製造)
実施例1(2)において、調製例1で得られたβ型銅フタロシアニン顔料(B)[1]を、調製例2〜5のβ型銅フタロシアニン顔料(B)[2]〜[5]に変更した以外は、実施例1と同様に操作を行い、インクジェット記録用水分散体を得た。結果を表1に示す。
実施例4〜6、及び比較例3〜4〔インクの製造〕
実施例1〜3、及び比較例1〜2で得られた水分散体40部に、グリセリン(花王株式会社製)10部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業株式会社製)7部、2−ピロリドン(和光純薬工業株式会社製)3部、アセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製:EO付加物(n=10))1部、プロキセルLV(S)(抗菌剤、アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社製)0.1部、イオン交換水38.9部を加えて水系インクを調製した。
得られた水系インクの保存安定性(粒径変化率)の評価結果を表1に示す。
Figure 2011137058
表1から、実施例1〜3の水分散体は、比較例1及び2の水分散体に比べて、粗大粒子が少なく、実施例4〜6の水系インクは、比較例3及び4の水系インクに比べて、保存安定性に優れることが分かる。

Claims (6)

  1. 遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)、水不溶性ポリマー、水難溶性有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理する工程(3)を有する、インクジェット記録用水分散体の製造方法。
  2. 前記工程(3)の前に下記工程(1)及び(2)を有する、請求項1に記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
    工程(1):粗銅フタロシアニン顔料を、中心温度80〜100℃、変動幅±4℃の条件下で、ソルベントソルトミリングして、β型銅フタロシアニン顔料(A)を得る工程
    工程(2):β型銅フタロシアニン顔料(A)を、洗浄処理し、遊離銅イオンの含有量が500ppm以下であるβ型銅フタロシアニン顔料(B)を得る工程
  3. 工程(2)の洗浄処理が、60℃以上の温水で洗浄するものである、請求項2に記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
  4. 水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーである、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
  5. 水分散体が、β型銅フタロシアニン顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子を含む水分散体である、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で得られる水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
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