JP2011134787A - ZnO系半導体装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ZnO系半導体の新規なn型ドーピング技術に係るZnO系半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ZnO系半導体装置の製造方法は、基板を準備する工程と、基板上方に、Zn、O、及びNを供給するとともに、必要に応じて、ZnOに添加することによりバンドギャップを変化させる元素を供給し、Nをドープすることにより、Nをドープしない場合に比べてn型キャリア濃度が増したn型伝導性を示すZnO系半導体層を形成する工程とを有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、n型ZnO系半導体層を有するZnO系半導体装置及びその製造方法に関する。
酸化亜鉛(ZnO)は、室温で3.37eVのバンドギャップエネルギを持つ直接遷移型の半導体で、近年、紫外光や白色光等の発光ダイオード(LED)等への応用が期待されている。また、原材料が安価であるとともに、環境や人体への悪影響が少ないという特徴を有し、産業的有用性が高い。
発光素子等の作製に必要となるn型ZnO系半導体の形成には、n型ドーパントとして例えばGa等のIII族元素が用いられる。ZnO系半導体において、多様なn型ドーピング技術が望まれる。
加藤裕幸,宮本和弘,佐野道宏"c面サファイア及びZnO基板上へのMBE−ZnO成長 −結晶の高品質化とn型ドーピング−"応用物理学会,結晶工学分科会第120回研究会テキスト,2004年,p.27−34
本発明の一目的は、ZnO系半導体の新規なn型ドーピング技術に係るZnO系半導体装置及びその製造方法を提供することである。
本発明の一観点によれば、基板を準備する工程と、前記基板上方に、Zn、O、及びNを供給するとともに、必要に応じて、ZnOに添加することによりバンドギャップを変化させる元素を供給し、Nをドープすることにより、Nをドープしない場合に比べてn型キャリア濃度が増したn型伝導性を示すZnO系半導体層を形成する工程とを有するZnO系半導体装置の製造方法が提供される。
Nをドープすることにより、ZnO系半導体層のn型キャリア濃度を増加させることができる。
図1は、MBE装置の例を示す概略断面図である。 図2は、第1の実験のサンプル構造を示す概略断面図である。 図3Aは、第1の実験のn型キャリア濃度及び比抵抗のフラックス比依存性を示すグラフであり、図3Bは、第1の実験のN濃度のフラックス比依存性を示すグラフである。 図4は、第2及び第3の実験のサンプル構造を示す概略断面図である。 図5A〜図5Cは、それぞれ、第3の実験のアンドープサンプル、第1、第2のn型サンプルに対するXRDの2θ−θ測定結果を示すグラフである。 図6は、第3の実験のp型サンプルに対するXRDの2θ−θ測定結果を示すグラフである。 図7Aは、第4の実験のサンプル構造(実施例及び比較例の発光素子)を示す概略断面図であり、図7B及び図7Cは、変形例の活性層構造の概略断面図である。 図8Aは、実施例の発光素子のN濃度の深さ方向プロファイルであり、図8Bは、実施例の発光素子の電流電圧特性を示すグラフであり、図8Cは、実施例の発光素子のELスペクトルである。 図9Aは、比較例の発光素子のGa濃度とN濃度の深さ方向プロファイルであり、図9Bは、比較例の発光素子の電流電圧特性を示すグラフである。
まず、本発明の実施例によるNドープZnO系半導体層等の形成に用いる分子線エピタキシ(MBE)装置について説明する。
図1は、MBE装置の例を示す概略断面図である。真空チャンバ1が、亜鉛(Zn)ソースガン2、マグネシウム(Mg)ソースガン3、ガリウム(Ga)ソースガン4、酸素(O)ソースガン5、及び、窒素(N)ソースガン6を備える。
Znソースガン2、Mgソースガン3、Gaソースガン4は、それぞれ、Zn、Mg、及びGaの固体ソースを収容するクヌーセンセルを含み、Znビーム、Mgビーム、Gaビームを出射する。
Oソースガン5、Nソースガン6は、それぞれ、例えば13.56MHzのラジオ周波(RF)を用いた無電極放電管を含み、Oラジカルビーム、Nラジカルビームを出射する。O源として、例えばOが用いられる。N源として、例えばNが用いられる。なお、N源として、NO、NO、NH等、Nを含む種々のガスを用いることが可能である。
なお、同一のソースガンにN及びOを導入して、同一のソースガンからOラジカルビーム及びNラジカルビームを出射することもできる。
真空チャンバ1内に、基板ヒータを含む基板ホルダ7が配置され、基板ホルダ7が基板8を保持する。基板8上に、所望のタイミングで所望のビームを供給することにより、所望の組成のZnO系半導体層を成長させることができる。
真空チャンバ1は、また、反射高速電子回折(RHEED)用のガン9、及びRHEED像を映すスクリーン10を備える。
ZnO系半導体は、少なくともZnとOとを含む。ZnOに、Znを置換するMgを添加することで、バンドギャップを広げることができる。ZnOと、Mgを添加したMgZnOを併せて、MgZn1−xOと表記する。Mg組成xは、Mgが添加されていないZnOでは0となる。また、ZnOの六方晶系が維持されるように、添加されるMgの上限の組成xは0.6程度である。
MgZn1−xOに、p型ドーパントとしてNを添加することができる。MgZn1−xOのn型伝導性は、n型ドーパントを特に添加しなくとも得ることが可能だが、n型キャリア濃度増加のためGaを添加することができる。
また、本願発明者らが発見したように、Nをn型ドーパントとして用いることもできる。後述のように、ZnO系半導体発光素子において、n型ドーパントとしてGaを用いると、Gaのp型半導体層への拡散等の不具合が生じるが、n型ドーパントとしてGaを用いずにNを用いれば、このような不具合が解消できる。
次に、第1の実験について説明する。第1の実験では、Nドープでn型伝導性が得られる成長条件について調べた。
まず、MgZn1−xO層成長におけるII/VIフラックス比について説明する。II族元素について、Znビームのフラックス強度をJZnとし、Mgビームのフラックス強度をJMgとする(なお、Mgが添加されない場合はJMg=0である)。VI族元素について、Oラジカルビームのフラックス強度をJとする。
MgZn1−xO結晶のO終端面へのZn、Mgそれぞれの付着しやすさを示す係数を付着係数kZn、kMgとし、Zn及びMg終端面へのOの付着しやすさを示す係数をkとする。このとき、Znの付着係数kZnとフラックス強度JZnとの積であるkZnZn、Mgの付着係数kMgとフラックス強度JMgとの積であるkMgMg、Oの付着係数kとフラックス強度Jとの積であるkは、それぞれ、基板の単位面積に単位時間当たりに付着するZn原子の個数、Mg原子の個数、O原子の個数に対応する。
VI族元素の付着係数を加味したフラックス強度kに対する、II族元素の付着係数を加味したフラックス強度kZnZn+kMgMgの比である(kZnZn+kMgMg)/kを、II/VIフラックス比と定義する。II/VIフラックス比=1がストイキオメトリ条件、II/VIフラックス比<1がVI族元素リッチ条件、II/VIフラックス比>1がII族元素リッチ条件である。VI族元素リッチ条件をOリッチ条件と呼び、II族元素リッチ条件をZnリッチ条件と呼ぶこととする。
なお、Zn、Mgのフラックス強度JZn、JMgは、堆積速度FZn、FMgから求めている。水晶振動子を用いた膜厚計を用いて、室温(冷却水温度15℃)におけるZn、Mgの堆積速度FZn、FMgの測定を、各セル温度を調整して実施する。堆積速度FZn、FMgを、計算により、Zn、Mgのフラックス強度JZn、JMgに変換することができる。
次に、図2を参照して、第1の実験におけるサンプルの作製方法について説明する。図2は、第1の実験のサンプル構造を示す概略断面図である。c面サファイア基板21を有機溶剤で脱脂洗浄後、MBE装置のチャンバ内の基板ホルダに取り付け、1×10−7Pa以下の高真空にした。高真空中で、800℃、30分の熱処理を施し、基板表面をクリーニングした。
次いで、基板温度650℃で、Mgビーム及びOラジカルビームをサファイア基板21上に照射して、厚さ8nmのMgOバッファ層22を形成した。Mgビームの照射は、フラックス強度JMgを1.0×1014atoms/cms(Mgの堆積速度FMgを0.025nm/s)として行った。Oラジカルビームの照射は、Oガスを流量2sccmで導入し、RFパワー300Wでプラズマ化して行った。
MgOバッファ層22により、その上に、+c面を露出するZnO層が成長可能となる。なお、このような極性制御方法は、特開2005−197410号公報の「発明を実施するための最良の形態」の欄に説明されている。
次に、基板温度を350℃まで下げ、MgOバッファ層22上に、Znビーム及びOラジカルビームを照射して、厚さ約30nmのZnOバッファ層23を形成した。Znビームの照射は、フラックス強度JZnを1.0×1014atoms/cms(Znの堆積速度FZnを0.016nm/s)として行った。Oラジカルビームの照射は、Oガスを流量2sccmで導入し、RFパワー300Wでプラズマ化して行った。
そして、一旦Znビーム及びOラジカルビームの照射を中止し、基板温度を850℃に上げて10分間アニールを行うことにより、ZnOバッファ層23の表面平坦性を改善した。
次に、基板温度を800℃まで下げ、ZnOバッファ層23上に、Znビーム、Oラジカルビームとともに、Nラジカルビームも照射して、厚さ約1000nmのNドープZnO層24を形成した。Oラジカルビームの照射は、Oガスを流量2sccmで導入し、RFパワー300Wでプラズマ化して行った。Nラジカルビームの照射は、Nガスを流量0.5sccmで導入し、RFパワー200Wでプラズマ化して行った。
NドープZnO層24の形成において、Oラジカルビーム及びNラジカルビームの照射条件が一定の下、Znビームフラックス強度JZnを1.6×1014atoms/cms〜2.0×1015atoms/cms(Znの堆積速度FZnを0.025nm/s〜0.31nm/s)の範囲で変えて、II/VIフラックス比を0.26〜3.24の範囲で変化させた。
Znビームフラックス強度JZn=6.3×1014atoms/cms(Znの堆積速度FZn=0.095nm/s)のときが、ストイキオメトリ条件(kZnZn=k)であった。
II/VIフラックス比(以下、単にフラックス比と呼ぶこともある)を変えた各サンプルについて、NドープZnO層24のn型キャリア濃度と比抵抗をホール測定で測定し、N濃度を2次イオン質量分析(SIMS)で測定した。
図3Aは、n型キャリア濃度及び比抵抗のフラックス比依存性を示すグラフであり、図3Bは、N濃度のフラックス比依存性を示すグラフである。
アンドープのZnO層は、1015cm−3のオーダ以下のn型キャリア濃度を示すことがわかっている。NドープZnO層は、特にフラックス比0.9以上で、n型キャリア濃度が1016cm−3のオーダ以上となって、アンドープZnO層に比べて顕著に高いn型伝導性を示し、n型キャリア濃度は、フラックス比が大きくなるほど高くなることがわかった。フラックス比0.9〜3.2で、n型キャリア濃度3.4×1016cm−3〜5.7×1017cm−3が得られた。
比抵抗は、フラックス比0.5程度で10Ωcmのオーダの最大値を示し、そこからフラックス比が大きくなると急減し、フラックス比0.9では10Ωcmのオーダに下がり、さらにフラックス比3.2では10−1Ωcmのオーダまで下がっている。
N濃度は、概ね、Oリッチ条件で低く、Znリッチ条件で高い。Oリッチ条件側で、フラックス比が低下するにつれ、N濃度は急激に減少する。Znリッチ側では、フラックス比が増えるにつれ、N濃度は増加するが、増加の傾きは緩やかになり飽和傾向を示す。フラックス比0.9以上で、1020cm−3のオーダのN濃度が得られている。N濃度が高いほどnキャリア濃度が高くなる傾向が見られる。
以上の結果より、Nドープで(アンドープよりも)n型キャリア濃度を高める(例えば1×1016cm−3以上とする)には、NドープZnO層成長におけるII/VIフラックス比を、0.9以上とすることが好ましいといえる。なお、II/VIフラックス比が0.9近傍では、II/VIフラックス比が少し低下するとnキャリア濃度やN濃度が急減するので、安定的に高いnキャリア濃度を得るという観点からは、II/VIフラックス比を1以上とすることが好ましい。
なお、II/VIフラックス比の上限については、以下のように考察される。高いフラックス比においても、Znリッチ条件であれば、Nドープn型ZnO層は成膜可能と考えられるため、用いる装置の制約による以外の特別なフラックス比の上限はないといえる。II/VIフラックス比は、II族元素についてZnビーム及びMgビームの堆積量、及び、VI族元素についてOラジカル生成に係るO2流量及びRFラジカルガンのパワー、により制御されるため、用いる成膜装置における、Znビーム量の最大値、Oラジカル量の最小値を定める条件により、フラックス比の上限値が決まる。一例を挙げるならば、55程度である。
次に、Nドープでn型伝導性を高めたZnOが得られる理由について考察する。N原子がZnOのOサイトを置換した場合、N原子はアクセプタとなりp型ドーパントとして働く。一方、例えばN分子がZnOのOサイトを置換した場合、N分子はダブルドナーとして振舞うと考えられ、これにより、NドープZnOがn型伝導性を示すと考えられる。ドープされたN濃度が高いほど、N分子ダブルドナーが生成されやすくなって、nキャリア濃度が高くなると考えられる。
次に、Nドープでn型ZnO層を得るのに好適な成長温度範囲について考察する。N分子ダブルドナーは、成長温度が高いほど、その熱エネルギーにより生成されやすいと考えられ、800℃以上の高い成長温度が好ましい。
また、フラックス比が0.9以上の、Znリッチまたはストイキオメトリに近い条件において、例えば700℃以下の低温は、ZnO層が3次元成長するので、結晶性の観点で好ましくない。2次元成長を得るには、少なくとも750℃以上の成長温度が必要で、800℃以上が好ましい。
膜中へのNの取り込みの観点からは、成長温度が1000℃を超えると、Nの付着係数が極端に低下するので好ましくない。以上より、Nドープでn型ZnO層を得るのに好適な成長温度範囲は、800℃以上、1000℃以下といえる。
なお、Nドープは、通常、p型ZnO層を得るのに用いられている。Nドープでp型ZnO層を得るのに好適な条件は、フラックス比が0.5以上、0.9未満の範囲で、成長温度が300℃以上、800℃未満の範囲である。
次に、第2の実験について説明する。第2の実験では、800℃より低い低温で成長させたNドープZnO層に対し、成膜後にアニールを施して、n型伝導性について調べた。
図4を参照して、第2の実験におけるサンプルの作製方法について説明する。図4は、第2の実験のサンプル構造を示す概略断面図である。洗浄されたc面ZnO基板31の+c面上に、基板温度300℃で、Znビーム及びOラジカルビームを照射して、厚さ30nmのZnOバッファ層32を形成した。そして、ZnOバッファ層32を高品質化させるために、900℃、20分のアニールを行った。
次に、基板温度を300℃とし、ZnOバッファ層32上に、Znビーム、Oラジカルビームとともに、Nラジカルビームも照射して、厚さ約500nmのNドープZnO層33を形成した。Oラジカルビームの照射は、Oガスを流量0.5sccmで導入し、RFパワー200Wでプラズマ化して行った。Nラジカルビームの照射は、Nガスを流量1sccmで導入し、RFパワー100Wでプラズマ化して行った。そして、Znビームフラックス強度JZnを2.0×1014atoms/cms(Znの堆積速度FZnを0.03nm/s)として、II/VIフラックス比が約1.3のZnリッチ条件で成膜した。
次に、Nガス雰囲気、900℃、10分、1気圧(101.3kPa)の条件で、NドープZnO層33にアニールを施した。アニール後のNドープZnO層33のN濃度は2.8×1020cm−3で、C−V測定によるn型キャリア濃度は2.0×1018cm−3であった。
このように、成長温度を800℃より低い低温としたNドープZnO層であっても、アニールを施すことにより、高いn型キャリア濃度が得られることがわかった。アニール温度は、800℃以上とすればよいであろう。また、アニール温度の上限も、1000℃程度であろう。
なお、NドープZnO層に対するアニールと、下方のZnOバッファ層に対するアニールとを、一緒に行うこともできよう。
第1の実験より、Nドープでn型伝導性を高めるには、成長温度800℃以上、1000℃以下が好ましいことがわかった。また、第2の実験より、成長温度が800℃より低くても、成膜後の800℃以上、1000℃以下のアニールによって、Nドープによる高いn型伝導性が得られることがわかった。これらの知見は、Nドープでn型伝導性を高めるには、NドープZnO層の成膜中または成膜後に、800℃以上、1000℃以下の熱処理を行うことが好ましい、とまとめることができる。
次に、第3の実験について説明する。第3の実験では、Nドープn型ZnO層の結晶構造について調べた。また、比較のため、Nドープp型ZnO層の結晶構造についても調べた。
再び図4を参照して、第3の実験におけるサンプルの作製方法について説明する。第3の実験のサンプルの積層構造は、第2の実験と同様である。洗浄されたc面ZnO基板31の+c面上に、基板温度300℃で、Znビーム及びOラジカルビームを照射して、厚さ30nmのZnOバッファ層32を形成した。そして、ZnOバッファ層32を高品質化させるために、900℃、20分のアニールを行った。
次に、ZnOバッファ層32上に、Znビーム、Oラジカルビーム、及びNラジカルビームを照射して、NドープZnO層33を形成した。NドープZnO層33の成膜条件を変えて、複数のサンプルを作製した。
Nドープn型ZnO層について調べた実験では、2種のサンプル(第1、第2のn型サンプル)を作製した。また、比較のため、Nラジカルビームを照射しないアンドープのZnO層33としたサンプル(アンドープサンプル)も作製した。
第1のn型サンプルのNドープZnO層33は、成長温度850℃とし、厚さ約500nm形成した。Znビームの照射は、フラックス強度JZnを9.9×1014atoms/cms(Znの堆積速度FZnを0.15nm/s)として行った。Oラジカルビーム及びNラジカルビームの照射は、同一のソースガンにOガス(流量2sccm)及びNガス(流量0.05sccm)を混ぜて導入し、RFパワー300Wでプラズマ化して行った。II/VIフラックス比は約1.2である。
第2のn型サンプルのNドープZnO層33は、成長温度950℃とし、厚さ約500nm形成した。Znビームの照射は、フラックス強度JZnを9.9×1014atoms/cms(Znの堆積速度FZnを0.15nm/s)として行った。Oラジカルビームの照射は、OソースガンにOガスを流量0.5sccmで導入し、RFパワー200Wでプラズマ化して行った。Nラジカルビームの照射は、NソースガンにNガスを流量1sccmで導入し、RFパワー100Wでプラズマ化して行った。II/VIフラックス比は約6.6である。
アンドープサンプルのZnO層33は、成長温度900℃とし、厚さ約500nm形成した。Znビームの照射は、フラックス強度JZnを9.9×1014atoms/cms(Znの堆積速度FZnを0.15nm/s)として行った。Oラジカルビームの照射は、OソースガンにOガスを流量2sccmで導入し、RFパワー300Wでプラズマ化して行った。II/VIフラックス比は約1.2である。
そして、Nドープp型ZnO層について調べた実験で作製したサンプル(p型サンプル)のNドープZnO層33は、成長温度600℃とし、厚さ約500nm形成した。Znビームの照射は、フラックス強度JZnを5.9×1014atoms/cms(Znの堆積速度FZnを0.09nm/s)として行った。Oラジカルビームの照射は、OソースガンにOガスを流量2sccmで導入し、RFパワー300Wでプラズマ化して行った。Nラジカルビームの照射は、NソースガンにNガスを流量1sccmで導入し、RFパワー100Wでプラズマ化して行った。II/VIフラックス比は約0.8である。
図5A〜図5C、図6はそれぞれ、アンドープサンプル、第1、第2のn型サンプル、及びp型サンプルに対するX線回折(XRD)の2θ−θ測定結果を示すグラフである。各グラフの横軸が回折角2θを度単位で示し、縦軸が回折強度をログスケールのcps(counts/seconds)単位で示す。
図5Aに示すように、アンドープサンプルでは、ZnOのc軸方向の格子定数に対応する回折ピーク(以下、単に回折ピークと呼ぶこともある)が回折角72.54度程度に現れている。アンドープサンプルに対してC−V測定を行った結果、n型キャリア濃度は7.0×1015cm−3であった。アンドープサンプルは、アンドープでもn型伝導性を示すが、n型キャリア濃度は1015cm−3程度のオーダで低い。
図5B及び図5Cに示すように、第1及び第2のn型サンプルでは、NドープZnO層の回折ピークが、基板のアンドープZnOの回折ピークよりも低角度側に表れている。第1のn型サンプルのN濃度は4.3×1019cm−3であり、C−V測定によるn型キャリア濃度は2.0×1016cm−3であった。また、第2のn型サンプルのN濃度は1.3×1020cm−3であり、C−V測定によるn型キャリア濃度は2.2×1018cm−3であった。
第3の実験のサンプルは、基板面内方向は下地のc面ZnO基板と整合した状態で成長している(a軸長及びm軸長は下地のZnO基板と等しい)。Nドープn型ZnO層の回折ピークが低角側に現れていることは、Nドープn型ZnO層のc軸方向の格子定数が、アンドープのZnOに比べて長くなっていることを示唆する(アンドープZnOのc軸長は0.52066nm)。
c軸長の格子不整合度(Δc/c)は、N濃度が4.3×1019cm−3の第1のn型サンプルで0.028%(c軸長0.52081nm)であり、N濃度が1.3×1020cm−3の第2のn型サンプルで0.033%(c軸長0.52083nm)である。このことから、N濃度が増加するほどc軸方向の格子定数が長くなると推測される。
一方、図6に示すように、p型サンプルでは、NドープZnO層の回折ピークが、基板のアンドープZnOの回折ピークよりも高角度側に表れており、c軸方向の格子定数が、アンドープのZnOに比べて短くなっていることが示唆される。c軸長の格子不整合度(Δc/c)は、−0.010%(c軸長0.52061nm)である。p型サンプルは、N濃度が1.0×1020cm−3であり、C−V測定の結果がn型伝導性サンプルとは逆の傾きを持ち、p型伝導性を示した。
アンドープZnOに比べて、Nドープn型ZnOでc軸長が長くなり、Nドープp型ZnOでc軸長が短くなる理由について考察する。C. H. Park et al “Origin of p-type doping difficulty in ZnO: The impurity perspective”, PHYSICAL REVIEW B 66, 073202 (2002) や、S. Limpijumnong et al “Substitutional diatomic molecules NO, NC, CO, N2, and O2: Their vibrational frequencies and effects on p doping of ZnO”, APPLIED PHYSICS LETTERS 86, 211910 (2005) によると、Zn−Oボンド長は0.193nm、Zn−Nボンド長は0.188nm、Oサイトを置換したN分子(N 2+のボンド長は0.114nmである。
分子で置換された場合、ZnからNの中心まで(Zn−N+(N−N)/2)のボンド長は、Zn−Nボンド長にNボンド長の半分が加算された0.188nm+0.114nm/2=0.245nmと見積もることができ、Zn−Oボンド長(0.193nm)より長くなると考えられる。
このようなボンド長の関係により、Oサイトを1つのN原子が置換したp型伝導性の場合は、c軸長がアンドープより短くなり、Oサイトを2つのN原子が(N分子が)置換したn型伝導性の場合は、c軸長がアンドープより長くなると理解される。なお、格子不整合の値は、使用する基板や成長条件に依存すると考えられる。
ここで、第1〜第3の実験を踏まえて、Nドープn型ZnO層に好適なN濃度について考察する。第1の実験で説明したように、N濃度が高いほど、N分子ダブルドナーが生成されやすくなり、n型キャリア濃度が高くしやすいと考えられる。一方、結晶品質を良好に保つ観点からは、N濃度を低くしたい。
第1の実験では、熱処理温度(成長温度)を800℃としたとき、概ね、1020cm−3のオーダのN濃度で、1016cm−3のオーダ以上のn型キャリア濃度が得られた。
第2の実験では、第1の実験に比べ、熱処理温度(アニール温度)を900℃に上げたところ、N濃度2.8×1020cm−3でn型キャリア濃度2.0×1018cm−3のサンプルが得られた。
第3の実験でも、第1の実験に比べ、熱処理温度(成長温度)を850℃に上げた第1のn型サンプルで、N濃度4.3×1019cm−3に対しn型キャリア濃度2.0×1016cm−3が得られ、熱処理温度(成長温度)を950℃に上げた第2のn型サンプルで、N濃度1.3×1020cm−3に対しn型キャリア濃度2.2×1018cm−3が得られた。
なお、第2、第3の実験では、II/VIフラックス比もZnリッチ側として、n型キャリア濃度増加を図っている。
このように、熱処理温度を上げる等、条件の最適化を図ることにより、第1の実験に比べ、低いN濃度でも高いn型キャリア濃度を得ることができる。第3の実験の第1のn型サンプルの結果を踏まえると、N濃度が1×1019cm−3以上で、1×1016cm−3以上のn型キャリア濃度とすることが可能と考えられる。一方、結晶品質の観点から、N濃度の上限は、4×1020cm−3程度としたい。
このように、結晶品質低下を抑制しつつn型キャリア濃度を高めたいという観点から、Nドープn型ZnO層は、N濃度が、1×1019cm−3以上、4×1020cm−3以下の範囲であることが好ましい。
なお、第1の実験で考察したように、Nドープn型ZnO層は、熱処理温度800℃以上で得ることは可能であるが、低いN濃度で高いn型キャリア濃度を得やすいという観点からは、熱処理温度を850℃以上とすることがさらに好ましい。
以上説明したように、第1〜第3の実験では、(Mg組成x=0の)ZnOにNをドープして、良好なn型伝導性を得るための条件や、結晶構造等について考察したが、第1〜第3の実験で得られた知見は、ZnがMgで置換されたMgZnOへのNドープに対しても有効であろう。
次に、第4の実験について説明する。第4の実験では、n型半導体層としてNドープn型MgZnO層を用いたZnO系半導体発光素子(実施例の発光素子)を作製した。また、比較のため、n型半導体層としてGaドープn型MgZnO層を用いたZnO系半導体発光素子(比較例の発光素子)も作製した。
図7Aを参照して、第4の実験におけるサンプルの作製方法について説明する。図7Aは、第4の実験のサンプル構造を示す概略断面図である。
まず、実施例の発光素子の作製方法について説明する。洗浄されたc面ZnO基板41(n型伝導性を示す)の+c面上に、基板温度300℃で、Znビーム及びOラジカルビームを照射して、厚さ30nmのZnOバッファ層42を形成した。そして、ZnOバッファ層42を高品質化させるために、900℃、20分のアニールを行った。
なお、ZnOバッファ層の成長温度、厚さは、300℃、30nmに限定されず、200℃〜400℃、10nm〜30nmの範囲であれば好ましい。また、ZnOバッファ層のアニール温度、アニール時間は、900℃、20分に限定されず、500℃〜1000℃、3分〜30分の範囲であれば好ましい。
次に、ZnOバッファ層42上に、成長温度950℃で、Znビーム、Mgビーム、Oラジカルビーム、及びNラジカルビームを照射して、厚さ約80nmのNドープn型MgZn1−xO(x=0.2)層43を形成した。Nドープn型MgZn1−xO(x=0.2)層43のN濃度は、9.0×1019cm−3程度であった。
Znビームの照射は、フラックス強度JZnを2.0×1015atoms/cms(Znの堆積速度FZnを0.3nm/s)として行った。Mgビームの照射は、フラックス強度JMgを4.3×1013atoms/cms(Mgの堆積速度FMgを0.01nm/s)として行った。Oラジカルビームの照射は、OソースガンにOガスを流量1sccmで導入し、RFパワー200Wでプラズマ化して行った。Nラジカルビームの照射は、NソースガンにNガスを流量1sccmで導入し、RFパワー150Wでプラズマ化して行った。II/VIフラックス比は約10.0である。
第1及び第2の実験で説明したように、成長温度を800℃以上とするとともに、II/VIフラックス比を0.9以上とすることが、Nドープn型MgZn1−xO層の形成に好ましい。なお、成長温度を800℃より低温とし、その後(上方のNドープp型MgZn1−zO層45の形成前に)800℃以上の熱処理を行ってもよい。
次に、Nドープn型MgZn1−xO(x=0.2)層43の上に、成長温度900℃で、Znビーム及びOラジカルビームを照射して、厚さ35nmのZnO活性層44を形成した。
なお、活性層にMgを添加することもできる。MgZn1−yO活性層は、下方のn型MgZn1−xO層と、後に形成する上方のp型MgZn1−zO層とに挟まれる。活性層へのキャリア閉じ込めの観点から、上下クラッド層のバンドギャップの方が大きくなるように、y<x、zとすることが好ましい。なお、Mg組成x、y、zの上限は0.6程度である(よって、0≦y<x、z≦0.6)。
なお、図7B、図7Cに示すように、変形例として、活性層44は、MgZn1−aO障壁層44bとMgZn1−bO井戸層44wを交互に重ねた量子井戸構造とすることもできる。障壁層のバンドギャップが、井戸層のバンドギャップよりも大きくなるように、b<aとする。
なお、活性層の成長温度は、900℃に限定されず、500℃〜1000℃の範囲であれば好ましい。成長温度が500℃より低いと、結晶性を高めることが難しく、成長温度が1000℃より高いと、Znの再蒸発が増え、成長レートが低下する。
次に、ZnO活性層44の上に、成長温度700℃で、Znビーム、Mgビーム、Oラジカルビーム、及びNラジカルビームを照射して、厚さ約80nmのNドープp型MgZn1−zO(z=0.2)層45を形成した。Nドープp型MgZn1−zO(z=0.2)層45のN濃度は、6.0×1019cm−3程度であった。
Znビームの照射は、フラックス強度JZnを6.6×1014atoms/cms(Znの堆積速度FZnを0.1nm/s)として行った。Mgビームの照射は、フラックス強度JMgを8.6×1013atoms/cms(Mgの堆積速度FMgを0.02nm/s)として行った。Oラジカルビームの照射は、OソースガンにOガスを流量2sccmで導入し、RFパワー300Wでプラズマ化して行った。Nラジカルビームの照射は、NソースガンにNガスを流量1sccmで導入し、RFパワー90Wでプラズマ化して行った。II/VIフラックス比は約0.8である。
なお、Nドープp型MgZn1−zO層の成長温度、厚さは、700℃、80nmに限定されず、300℃以上、800℃未満、5nm〜200nmの範囲であれば好ましい。
なお、発光ダイオード等の発光素子を作製する場合、少なくともホールキャリア濃度は1.0×1016cm−3以上は必要であるとされる。p型MgZn1−zO層にアクセプタとしてドープされるNは活性化率が低く、1.0×1018cm−3はドープしなければ有効なホールキャリアが得られていない。また、5×1020cm−3より多くNがドープされると、p型MgZn1−zO層に多くの欠陥が発生してしまい、リーク電流の原因となる場合がある。p型MgZn1−zO層のN濃度は、1.0×1018cm−3〜5×1020cm−3が好ましく、1.0×1019cm−3〜3×1020cm−3がより好ましい。
なお、p型のドーパントとして、Nの他に、V族元素であるPやAsを用いることもできる。また、LiやNaまたはCuやAg等のIA族元素、IB族元素を用いることもできる。さらに、これらを組み合わせて例えばNとP等、2元素以上を同時にドープすることもできる。なお、種々のV族元素の中で、NがOとのイオン半径が近く、安定的に置換がなされる。
次に、ZnO基板41の裏面上にn側電極48を形成し、Nドープp型MgZn1−zO(z=0.2)層45上にp側透光性電極46を形成し、p側透光性電極46上にp側ボンディング用パッド電極47を形成した。
n側電極48は、例えば、厚さ2nm〜10nmのTi層に、厚さ300nm〜500nmのAl層を積層して形成する。p側透光性電極46は、例えば、厚さ0.5nm〜5nmのNi層に、厚さ1nm〜20nmのAu層を積層して形成する。p側ボンディング用パッド電極47は、例えば、厚さ100nmのNi層に、厚さ1000nmのAu層を積層して形成する。なお、電極形成に、例えばレジスト膜等を用いたリフトオフを用いることができる。
その後、例えば300℃以上、800℃未満の酸化性ガス雰囲気中で、電極合金化処理を行う。合金化処理時間は例えば30秒〜10分程度である。以上のようにして、実施例の発光素子を作製した。
次に、比較例の発光素子の作製方法について説明する。洗浄されたc面ZnO基板41の+c面上に、基板温度300℃で、Znビーム及びOラジカルビームを照射して、厚さ30nmのZnOバッファ層42を形成した。そして、ZnOバッファ層42を高品質化させるために、900℃、20分のアニールを行った。
次に、ZnOバッファ層42上に、成長温度900℃で、Znビーム、Mgビーム、Oラジカルビーム、及びGaビームを照射して、Gaドープn型MgZn1−xO(x=0.2)層43を形成した。Gaドープn型MgZn1−xO(x=0.2)層43のGa濃度は、8.0×1017cm−3程度であった。
次に、Gaドープn型MgZn1−xO(x=0.2)層43の上に、成長温度900℃で、Znビーム及びOラジカルビームを照射して、ZnO活性層44を形成した。
次に、ZnO活性層44の上に、成長温度650℃で、Znビーム、Mgビーム、Oラジカルビーム、及びNラジカルビームを照射して、Nドープp型MgZn1−zO(z=0.2)層45を形成した。Nドープp型MgZn1−zO(z=0.2)層45のN濃度は、9×1019cm−3程度であった。
さらに、上述のように、p側透光性電極46、p側ボンディング用パッド電極47、及びn側電極48を形成して、比較例の発光素子を作製した。
図8A及び図9Aは、それぞれ、実施例の発光素子のN濃度の深さ方向プロファイル、及び比較例の発光素子のGa濃度とN濃度の深さ方向プロファイルである。深さ方向プロファイルの測定は、SIMSによる。
図8B及び図9Bは、それぞれ、実施例の発光素子の電流電圧特性、及び比較例の発光素子の電流電圧特性を示すグラフである。横軸は1目盛り2V、縦軸は1目盛り2mAである。
図8Cは、実施例の発光素子のエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルである。
図9Aに示すように、比較例の発光素子では、n型層のみにドープしたGaが、活性層及びp型層へ拡散している。Ga拡散に起因して、活性層では、結晶品質の低下が起こり、非発光再結合中心として働く欠陥が導入されて、発光効率の低下につながる。また、p型層では、結晶品質の低下に伴う欠陥の導入、及びGa混入によるn型キャリアの生成に伴って、p型キャリア濃度の低下、もしくはp型伝導性からn型伝導性への変化が起こってしまう。
また、図9Bに示すように、比較例の発光素子では、電流電圧特性の閾値が1V程度となっている。ZnOによりpn接合を形成した場合、電流電圧特性の閾値は3V程度が期待されるが、比較例の閾値はそれより低く、素子の特性がショットキーであることが示唆される。n型層のドーパントであるGaがp型層に拡散したことによる特性劣化と考えられる。比較例の発光素子では、電流注入による発光が観測されなかった。
一方、図8Aに示すように、実施例の発光素子では、n型層のドーパントであるNの活性層及びp型層への拡散が見られない。
また、図8Bに示すように、実施例の発光素子の電流電圧特性の閾値は、3V程度となっている。比較例と比べると、n型層のドーパントの外側への拡散が抑制されていることにより、素子特性が改善したものと考えられる。
図8Cに示すように、実施例の発光素子は、ZnOのバンド端付近からの発光と考えられる波長380nm付近の発光を示した。
以上説明したように、ZnO系半導体発光素子におけるn型ドーパントとしてNを用いることができる。n型ドーパントとして、Ga等のIII族元素は用いていない。従って、n型ドーパントとしてGaを用いたときに見られる拡散が抑制でき、発光素子の特性向上が図られる。
なお、ZnO系半導体素子を形成する基板は、ZnO基板に限らない。サファイア(Al)基板、炭化珪素(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、(*27)六方晶系MgZn1−xO(0<x≦0.5)基板、立方晶系MgZn1−xO(0.5<x≦1)基板、Si基板等を用いることも可能である。
なお、上述の実施例のMgZn1−xOエピタキシャル成長層において、Mg組成の上限は0.6とした。MBEのエピタキシャル成長は、非平衡条件下での成長となり、Mg組成0.6までは、六方晶のウルツ鉱構造と立方晶の岩塩構造とが相分離することなく、六方晶を維持した成長が可能なことを確認している。一方、MgZn1−xO基板では、平衡状態に近い条件で結晶成長が行われると考えられ、六方晶系のMg組成の上限は、0.6より低い0.5となる。
結晶性の良いZnO層を得るためには、格子不整合度の小さい基板ほど良く、特に好ましいのはZnO基板である。また、発光素子を作製する場合は、基板が活性層からの放射光を吸収してしまうことで素子からの光取り出し効率が落ちることを抑制するために、ZnOに比べてバンドギャップが大きいMgZnO基板を用いるのも好ましい。
+c面、−c面、a面、m面等、種々の基板表面上に、ZnO系化合物半導体層を成長させることができる。さらに、例えば+c面について、m方向やa方向にオフ角をつけた種々の基板を用いることもできる。また、上記基板上に、MgZnO層、ZnO層、GaN層等を厚さ1μm以上形成したテンプレートを用いてもよい。
なお、サファイア基板等の絶縁性基板を用いた発光素子では、基板裏面にn側電極を形成できないので、エッチングによりn型半導体層を露出させて、露出したn型半導体層上にn側電極を形成する。
なお、発光素子中のn型半導体層とp型半導体層の上下位置関係の組合せとして、基板側にp型半導体層が配置され、p型半導体層上方にn型半導体層が配置される構造も考えられる。
以上説明したように、MgZn1−xOにNをドープすることにより、Nをドープしない場合に比べてn型キャリア濃度を増加させることができる。なお、Nがn型キャリア濃度を増加させる効果は、MgZn1−xO以外のZnO系半導体に対しても期待できるであろう。
Mgは、必要に応じて、バンドギャップを広げるためにZnOに添加されるが、その他例えば、S、Se、Te、Cdを、バンドギャップを狭めるためにZnOに添加したり、Beを、バンドギャップを広げるためにZnOに添加したりすることができる。このようなZnO系半導体に対しても、Nドープでn型伝導性を増すことができるであろう。
なお、ZnO系半導体層をMBEで形成する技術について説明したが、その他の成膜方法を用いても、Nをn型ドーパントとしてZnO系半導体層にドープすることは可能であろう。その他の成膜方法として、例えば、パルスレーザ堆積(PLD)、有機金属気相エピタキシ(MOVPE)、有機金属化学気相堆積(MOCVD)等が挙げられる。
なお、ZnO系半導体に対するn型ドーパントとしてNを用いる技術は、発光素子以外にも、ZnO系半導体層を含む種々の製品(例えば、ZnO系トランジスタや、透明導電膜、圧電素子、熱電素子、紫外線センサ等)に用いることができよう。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
1 真空チャンバ
2 Znソースガン
3 Mgソースガン
4 Gaソースガン
5 Oソースガン
6 Nソースガン
7 基板ホルダ
8 基板
9 (RHEED用)ガン
10 (RHEED用)スクリーン
21 サファイア基板
22 MgOバッファ層
23 ZnOバッファ層
24 NドープZnO層
31 ZnO基板
32 ZnOバッファ層
33 NドープZnO層
41 ZnO基板
42 ZnOバッファ層
43 Nドープn型MgZnO層
44 活性層
45 Nドープp型MgZnO層
46 p側透光性電極
47 p側ボンディング用パッド電極
48 n側電極

Claims (9)

  1. 基板を準備する工程と、
    前記基板上方に、Zn、O、及びNを供給するとともに、必要に応じて、ZnOに添加することによりバンドギャップを変化させる元素を供給し、Nをドープすることにより、Nをドープしない場合に比べてn型キャリア濃度が増したn型伝導性を示すZnO系半導体層を形成する工程と
    を有するZnO系半導体装置の製造方法。
  2. 前記n型伝導性を示すZnO系半導体層を形成する工程は、II/VIフラックス比を0.9以上として、分子線エピタキシにより、Znビーム、Oラジカルビーム、Nラジカルビーム、及び必要に応じてMgビームを照射して、MgZn1−xO層を形成し、前記MgZn1−xO層の成長中または成膜後に、800℃以上の熱処理を行う請求項1に記載のZnO系半導体装置の製造方法。
  3. さらに、
    前記n型伝導性を示すZnO系半導体層上方に、Zn、O、及びp型ドーパントを供給するとともに、必要に応じて、ZnOに添加することによりバンドギャップを変化させる元素を供給して、p型伝導性を示すZnO系半導体層を形成する工程
    を有するか、または、
    さらに、
    前記基板上方に、Zn、O、及びp型ドーパントを供給するとともに、必要に応じて、ZnOに添加することによりバンドギャップを変化させる元素を供給して、p型伝導性を示すZnO系半導体層を形成する工程
    を有し、前記p型伝導性を示すZnO系半導体層上方に、前記n型伝導性を示すZnO系半導体層を形成して、
    ZnO系発光素子を形成する請求項1または2に記載のZnO系半導体装置の製造方法。
  4. 前記p型伝導性を示すZnO系半導体層を形成する工程は、成長温度800℃未満で、II/VIフラックス比を0.9未満として、分子線エピタキシにより、Znビーム、Oラジカルビーム、Nラジカルビーム、及び必要に応じてMgビームを照射して、p型MgZn1−zO層を形成する請求項2に従属する請求項3に記載のZnO系半導体装置の製造方法。
  5. 少なくともZn及びOを含むZnO系半導体層であって、Nがドープされることにより、Nをドープしない場合に比べてn型キャリア濃度が増したn型伝導性を示すZnO系半導体層を有するZnO系半導体装置。
  6. 前記n型伝導性を示すZnO系半導体層は、N濃度が1×1019cm−3以上である請求項5に記載のZnO系半導体装置。
  7. 前記n型伝導性を示すZnO系半導体層は、n型キャリア濃度が1×1016cm−3以上である請求項5に記載のZnO系半導体装置。
  8. 前記n型伝導性を示すZnO系半導体層は、Nがドープされることにより、Nをドープしない場合に比べて格子定数が長くなっている請求項5に記載のZnO系半導体装置。
  9. さらに、Nがドープされてp型伝導性を示すZnO系半導体層を有し、ZnO系発光素子である請求項5に記載のZnO系半導体装置。
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