JP2011129568A - 電子部品の製造方法及び電子部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】メッキ液等の水分が素体内に侵入することを防止すると共に電子部品の実装不良及び製品寸法の増大を防止し、電子部品の信頼性を向上させることができる電子部品の製造方法及び電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品1の製造方法では、焼付電極16aを形成した後に、焼付電極16a全体を覆うようにメッキ層17を形成するメッキ層形成工程S6と、メッキ層17を酸素雰囲気中で加熱処理する酸化熱処理工程S7と、酸化熱処理工程S7の後、メッキ層17を還元雰囲気中で加熱処理する還元熱処理工程S8とを有している。これにより、緻密な外部電極を形成することができ、メッキ液の侵入を防止できる。また、従来よりも焼付電極16aの厚みを小さくすることができ、これに伴い外部電極3,4の外形寸法を小さくすることができるので、電子部品1の実装不良の発生及び製品寸法の増大を防止することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子部品の製造方法及び電子部品に関する。
従来の電子部品の製造方法として、グリーンシートと内部電極材料を交互に積層して焼成することによって形成した積層セラミックコンデンサ本体(素体)の端面を金属粉末、ガラス粉末及びチクソトロピック剤を含む電子部品用導電性ペーストに浸漬させてペースト膜を形成し、焼成して外部電極を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−190491号公報
上述の電子部品の製造方法においては、素体を形成した後、導電性ペーストに端部を浸漬させて焼成することによって外部電極を形成している。しかしながら、この製造方法では、浸漬後に素体を引き離す際、端面の中央位置付近で導電性ペーストが引っ張られることによって、ペースト膜の中央位置付近の厚みが大きくなる一方、素体の端面と側面の間の角部分付近の厚みが薄くなっていた。また、導電性ペーストを焼き付ける際に、金属粉末を完全に焼結させる条件とした場合、導電性ペーストに含まれるガラス粉末が過剰に析出するため、外部電極において緻密性を確保することができないといった問題がある。この結果、焼付工程後のメッキ工程において、薄くなった部分や緻密性が確保されていない部分からメッキ液等の水分が素体内に侵入する虞があった。従って、従来の製造方法によって製造された電子部品では、メッキ工程の際に素体内に侵入した水分の影響によって、電子部品の特性が劣化してしまう虞があった。
この点に関して、上記電子部品の製造方法においてペースト膜の角部分付近の厚みを確保しようとすると、これに伴って端面の中央位置付近及び素体の側面部分のペースト膜が更に厚くなってしまう。また、外部電極を緻密化することが困難であるため、外部電極(ペースト膜)を厚く形成せざるを得ない。その結果、端面の中央位置付近のペースト膜の厚みが素体の側面部分の厚みに対して大きくなるため、電子部品の実装時におけるチップ立ち等といった実装不良が発生する虞があった。更に、外部電極が大きくなることで、製品外形寸法が大きくなり、電子部品の小型化が困難になるといった問題があった。
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、メッキ液等の水分が素体内に侵入することを防止すると共に電子部品の実装不良及び製品寸法の増大を防止し、電子部品の信頼性を向上させることができる電子部品の製造方法及び電子部品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る電子部品の製造方法は、一対の端面と端面同士を連結する四つの側面を有する直方体の素体と、素体の端面側に形成された外部電極とを備える電子部品の製造方法であって、端面側に導電性ペーストを付与することによって、ペースト層を形成するペースト層形成工程と、ペースト層を焼き付けて、焼付電極を形成する第一焼付工程と、焼付電極全体を覆うように金属メッキ層を形成するメッキ層形成工程と、金属メッキ層を酸素雰囲気中で加熱処理する第一熱処理工程と、第一熱処理工程の後、金属メッキ層を還元雰囲気中で加熱処理する第二熱処理工程と、を有することを特徴とする。
本発明に係る電子部品の製造方法では、焼付電極全体を覆うようにメッキ層を形成した後に、酸素雰囲気中で熱処理を行い、更にその後に還元雰囲気中において熱処理を行っている。金属メッキ層は、酸素雰囲気中において熱処理されることにより酸化し、水分やメッキ液等の残留物は、酸化分解、燃焼分解等によって離脱される。また、金属メッキ層内に形成された空隙やボイド等も、酸素雰囲気中の熱処理に伴う体積膨張により消滅させることができる。そして、還元雰囲気中において熱処理を行うことにより、緻密化された状態のまま金属メッキ層を金属に還元すると共に、焼付電極と金属メッキ層とを強固に結合することができる。これにより、緻密な外部電極を形成することができるので、従来のように、素体内へのメッキ液の侵入防止のために焼付電極を厚く形成しなくとも、素体内へのメッキ液等の侵入を防止することができる。そのため、従来よりも素体の側面における焼付電極の厚み(H寸法)、素体の端面の中央位置付近における焼付電極の厚み(T寸法)を小さくすることができ、これに伴い外部電極の外形寸法を小さくすることができるので、電子部品の実装時におけるチップ立ち等といった実装不良の発生を防止することができる。以上のように、メッキ液等の水分が素体内に侵入することを防止すると共に電子部品の実装不良及び製品寸法の増大を防止でき、電子部品の信頼性を向上させることができる
また、本発明に係る電子部品の製造方法は、第二熱処理工程の後、金属メッキ層を焼き付ける第二焼付工程を更に有することが好ましい。金属メッキ層は、第一熱処理工程において酸化され、更に第二熱処理工程において元の金属に戻る過程で初期の層の結晶構造が再構成されて緻密化される。この状態において、更に焼き付けることにより、金属メッキ層の焼結が進むので、外部電極の緻密化を更に図ることができる。
また、ペースト層及び金属メッキ層には、主成分としてCuが含有されている。このように、主成分としてペースト層及び金属メッキ層がCuを含有する場合、Sn、Niメッキ等の実装時のハンダ付け性を改善するメッキを施すことになる。この場合には、上述の電子部品の製造方法が特に有効であり、Sn、Niメッキ液が素体内に侵入することを確実に防止できる。
本発明に係る電子部品は、上述いずれかの電子部品の製造方法によって製造された電子部品である。上述の方法によって電子部品を製造することにより、従来の製造方法により製造された電子部品と比べて、外部電極の寸法、特に電子部品の外形寸法に影響する素体の側面に形成される外部電極の厚みと、素体の端面の中央位置付近における外部電極の厚みを小さくすることができる。これにより、本発明の電子部品は、従来の電子部品と同一の寸法としつつ、高容量、高耐圧に形成することができる。
本発明によれば、メッキ液等の水分が素体内に侵入することを防止すると共に電子部品の実装不良及び製品寸法の増大を防止し、電子部品の信頼性を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造された電子部品を示す断面図である。 電子部品の製造方法を示すフロー図である。 素体保持工程及びペースト層形成工程の工程内容を示す図である。 第一焼付工程及びメッキ層形成工程の工程内容を示す図である。 酸化熱処理工程及び還元熱処理工程の工程内容を示す図である。 第一焼付工程及びメッキ層形成工程後の素体を拡大して示す図である。 酸化熱処理工程及び第二焼付工程後の素体を拡大して示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1を参照して、本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法によって製造された電子部品の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造された電子部品を示す断面図である。
図1に示すように、電子部品1は、例えば、セラミックコンデンサなどの電子部品であり、複数の板状のセラミックグリーンシートを積層して一体化することによって略直方体形状に構成された素体2と、素体2の両端面に形成された外部電極3,4とを備えて構成される。素体2は、素体2の長手方向に向かい合って互いに平行をなす一対の端面2a,2bと、端面2a,2bと直交すると共に端面2a,2b同士を連結する四つの側面2cを有する。外部電極3は、一方の端面2a及び端面2aと直交する四つの側面2cの各縁部の一部を覆うように形成されている。この四つの側面2cを覆う部分の大きさ、すなわち、外部電極3の端面2aを覆う部分における厚みが最大となる位置と側面2cを覆う部分における端部との間の寸法(図1においてBで示される)を以下B寸法と呼ぶ。このB寸法は、例えば、0.5mm〜0.6mm程度に設定される。また、外部電極4は、他方の端面2b及び端面2bと直交する四つの側面2cの各縁部の一部を覆うように形成されている。電子部品1は、例えば、縦が1.9mm〜2.2mm程度に設定され、横が1.1mm〜1.3mm程度に設定され、厚みが1.1mm〜1.3mm程度に設定されている。なお、略直方体形状とは、直方体形状も含む。
外部電極3,4は、素体2の外面にCuを主成分とする導電性ペーストを浸漬方法(後述)によって付着させた後に所定温度にて焼き付け、更に電気メッキを施すことにより、形成される。電気メッキには、Ni、Sn等を用いることができる。
素体2は、図1に示すように、複数の長方形板状の誘電体層6と、複数の内部電極7及び内部電極8とが積層された積層体として構成されている。内部電極7と内部電極8とは、素体2内において誘電体層6の積層方向(以下、単に「積層方向」と称する。)に沿ってそれぞれ一層ずつ配置されている。内部電極7と内部電極8とは、少なくとも一層の誘電体層6を挟むように対向配置されている。実際の電子部品1では、複数の誘電体層6は、互いの間の境界が視認できない程度に一体化されている。この素体2は、内部電極7,8と誘電体層6とが交互に複数積層される領域である第一領域2Aと、第一領域2Aを積層方向に挟み込む一対の誘電体層6からなる領域である第二領域2Bとを有している。なお、第二領域2Bは、二対以上の複数の誘電体層6から形成されていてもよい。素体2には、端面2a,2bと側面2cの間の角部分9が湾曲して所定の曲率半径を有するように面取り加工が施されている。図示されていないが、側面2cの外縁の角部分も湾曲して曲率半径を有するように面取り加工が施されている。素体2の角部分9の曲率半径は、例えば0.05mm〜0.15mm程度とされている。
内部電極7,8は、例えばNiやCuなどの導電材を含んでいる。内部電極7,8の厚みは、例えば1μm〜5μm程度である。内部電極7,8は、積層方向から見て互いに重なりあう領域を有するような形状であれば、特に形状は限定されず、例えば矩形状などの形状をなしている。内部電極7,8は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。内部電極7は外部電極3と電気的に接続されており、内部電極8は外部電極4と電気的に接続されている。
また、図1に示すように、電子部品1において、素体2の第一領域2Aと第二領域2Bの境界部分、すなわち積層方向の最も外側の内部電極8の位置における外部電極3,4の寸法(図1においてFで示される)を以下F寸法とし、素体2の側面2cにおける外部電極3,4の寸法(図1においてHで示される)を以下H寸法とし、素体2の端面2a,2bの中央位置付近における外部電極3,4の寸法(図1においてTで示される)を以下T寸法とする。
図2に示すように、電子部品1の製造工程は、素体準備工程S1から工程を開始する。この素体準備工程S1では以下の処理がなされる。すなわち、誘電体層6となるセラミックグリーンシートを形成した後、当該セラミックグリーンシート上に内部電極7,8のパターンを導電性ペーストで印刷し、乾燥することによって電極パターンを形成する。このように電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを複数枚重ね合わせ、そのセラミックグリーンシートの積層体をそれぞれ素体2の大きさのチップとなるように切断する。続いて、ポリエチレン等の材料からなる密閉回転ポットに水と複数のチップと研磨用のメディアを入れて、この密閉回転ポットを回転させることによって、チップの角部分9の面取りが行われ、それぞれの角部分9が湾曲して所定の曲率半径を有することとなる(バレル研磨)。面取り加工を施したチップに所定温度で所定時間加熱処理を施すことによって脱バインダを行う。脱バインダを行った後、更に高温で加熱して焼き付けを行うことで素体2を得る。以上の処理によって、素体準備工程S1が終了する。
素体準備工程S1の後、素体保持工程S2が行われる。図3は、素体保持工程S2及びペースト層形成工程S3の工程内容を示す図である。この素体保持工程S2は、素体準備工程S1で準備した素体2を複数並べて保持する工程である。素体保持工程S2では、キャリアプレートなどの公知の保持治具50を用いて、素体2の一方の端面2aが下方を向くように他方の端面2b側において側面2cを保持する。
素体保持工程S2の後、ペースト層形成工程S3が行われる。ペースト層形成工程S3は、図3に示すように、保持冶具50で保持された素体2の端面2aを塗布用ベッド40に入れられた導電性ペースト41中に浸漬させることによって、ペースト層16を形成する工程である。このペースト層形成工程S3を行うことによって、端面2aを周り込ませて素体2の四つの側面2cにも導電性ペースト41を付着させることができる。これによって、ペースト層16が形成される。なお、導電性ペースト41は、Cuを主成分とする金属粉末からなり、ガラスを含有している。
ペースト層形成工程S3が行われた後、ブロット工程S4が行われる。ペースト層形成工程S3において、端面2a側を導電性ペースト41に浸漬させて引き上げると、付着したペースト層16が引っ張られて端面2aの中央位置付近の厚みが大きくなる。従って、ブロット工程S4では、ペースト層16をプレートに押付けて引き離すことによって厚みの大きな部分の導電性ペースト41を拭い取り、中央位置におけるペースト層16の厚みを薄くすることができる。導電性ペースト41を拭い取って乾燥させた後、第一焼付工程S5が行われる。第一焼付工程S5では、ペースト層16を例えば780℃で熱処理を行うことによって、図4(a)に示すような焼付電極16aを形成する。
第一焼付工程S5が行われた後、メッキ層形成工程S6が行われる。メッキ層形成工程S6は、湿式メッキ工法によって焼付電極16a上にメッキ膜を析出させてメッキ層17を形成する工程である。メッキ層形成工程S6においては、シアン化銅、硫酸銅、又はピロリン酸銅等にてメッキ浴を行い、図4(b)に示すように、メッキ層17を形成する。このとき、メッキ層17の厚みは、焼付電極16aを覆う程度の厚みであればよく、例えば3μm〜20μmである。メッキ層形成工程S6が行われた後、酸化熱処理工程S7が行われる。酸化熱処理工程S7は、酸素雰囲気中にてメッキ層17の熱処理を行う工程である。この酸化熱処理工程S7では、酸素雰囲気中の熱処理炉内においてメッキ層17が形成された素体2を例えば500℃にて加熱し、メッキ層17を酸化させると共に、メッキ層17の表面にCuO層18を形成する。この酸化熱処理工程S7における温度は、温度が低いとメッキ層形成工程S6における残留物の昇華、酸化分解、及び燃焼分解が不十分となり、更にメッキ層17のCuO化が不十分となる一方、温度が高すぎると焼付電極16aが過度に酸化され、更にガラス成分とCuOとが反応してしまうため、好ましくは300℃〜700℃であり、より好ましくは400℃〜600℃である。
酸化熱処理工程S7が行われた後、還元熱処理工程S8が行われる。還元熱処理工程S8は、酸化熱処理が施されたメッキ層17を還元雰囲気中にて熱処理を行うことにより、酸化されたメッキ層17(CuO)をCu金属に還元する工程である。この還元熱処理工程S8では、例えば水素を添加した窒素雰囲気中(還元雰囲気中)の熱処理炉内においてメッキ層17が形成された素体2を例えば500℃にて加熱して、酸化されたメッキ層17をCu金属に還元すると共に、メッキ層17の表面に形成されたCuO層18を連続した構造のCu金属層とする。この還元熱処理工程S8における温度は、温度が低すぎるとメッキ層17の還元が不十分となる一方、温度が高すぎると素体2の誘電体層6が還元されるため、好ましくは300℃〜600℃、より好ましくは350℃〜550℃である。
還元熱処理工程S8が終了すると、第二焼付工程S9が行われる。第二焼付工程S9では、例えば700℃で熱処理を行うことによって、図5(b)に示すように外部電極3,4を形成する。第二焼付工程S9における温度は、温度が低すぎると焼結効果を十分に得ることができないが、温度が高すぎると素体2に与える熱負荷が大きくなるため、好ましくは500℃〜850℃、より好ましくは550℃〜800℃である。第二焼付工程S9が行われた後、メッキ工程S10が行われる。メッキ工程S10は、電子部品1の表面にNiメッキ層やSnメッキ層を形成する工程である。具体的に、このメッキ工程S10では、バレル内のメッキ液に電子部品1を浸漬させた後、バレルを回転させつつ電子部品1の表面にメッキが施される。以上によって、図2に示す工程が終了し、電子部品1を得ることができる。
次に、本発明の実施形態に係る電子部品1の製造方法の作用・効果について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、第一焼付工程S5及びメッキ層形成工程S6後の素体を拡大して示す図である。図7は、酸化熱処理工程S7及び第二焼付工程S9後の素体を拡大して示す図である。
従来の電子部品の製造方法にあっては、素体を形成した後、導電性ペーストに端部を浸漬させて(本実施形態のS5と同様の処理を行う)焼き付けることによって外部電極を形成していた。しかし、この製造方法では、浸漬後に素体を引き離す際、端面の中央位置付近で導電性ペーストが引っ張られることによって、ペースト膜の中央位置付近の厚くなる一方、素体の角部分付近の厚みが薄くなっていた。この結果、外部電極の厚みは、曲率半径を有する角部分付近で薄くなり、焼付工程後のメッキ工程において、薄くなった部分からメッキ液等の水分が素体内に侵入する虞があった。従って、従来の製造方法によって製造された電子部品では、メッキ工程の際に素体に侵入した水分の影響によって、電子部品の特性が劣化してしまう虞があった。特に、MLCC(Multi-Layer Ceramic Capacitor:積層セラミックコンデンサ)においては、メッキ液等が素体内に侵入して残留すると、信頼性、特に耐湿性が著しく低下する虞があった。
また、一般的に、焼付電極を形成する導電性ペーストは、Cuを主成分とする金属粉末からなり、素体(セラミックス)との付着性を確保するために低融点ガラスを含有している。低融点ガラスとしては、例えば融点650℃程度のSr−Al−Si−B−O系ガラス、Ba−Al−Si−B−O系ガラス、Si−Ba−Li-O系ガラス等をガラスフリットとして添加することが一般的である。ところで、この導電性ペーストにおいては、焼き付ける際に金属粉末を完全に焼結させる高温の条件にすると、低融点ガラスがCu電極内部から押し出されて、素体界面及び表面にガラスが過剰に析出してしまう。素体の表面に析出したガラスは、メッキ工程においてメッキ層の析出阻害層として働くため、均一でハンダ付け性の良いメッキ層の形成を阻害する要因となる。また、素体界面に析出したガラスは、素体の内部電極と焼付電極との電気的接続を阻害し、導通不良の原因となる。更に、Cu層内から過剰にガラスが押し出されることにより、素体と電極層との付着強度が低下し、電極剥離等の不具合の原因となる。このように、従来の電子部品の製造方法においては、素体内へのメッキ液等の侵入を防止するために焼付電極を完全に緻密化することは困難であるため、外部電極を厚く形成せざるを得なかった。
これに対して、本発明の実施形態に係る電子部品1の製造方法では、焼付電極16a全体を覆うようにメッキ層17を形成した後に、酸素雰囲気中で熱処理を行い、更にその後に還元雰囲気中において熱処理を行っている。メッキ層17は、酸素雰囲気中において熱処理されることにより酸化し、水分やメッキ液等の残留物は、酸化分解、燃焼分解等によって離脱される。また、メッキ層17内に形成された空隙やボイド等も、酸素雰囲気中の熱処理に伴う体積膨張により消滅させることができる。そして、還元雰囲気中において熱処理を行うことにより、緻密化された状態のままメッキ層17を金属に還元すると共に、焼付電極16aとメッキ層17とを強固に結合することができる。これにより、緻密な外部電極3,4を形成することができるので、従来のように、素体2内へのメッキ液の侵入防止のために焼付電極16aを厚く形成しなくとも、素体2内へのメッキ液等の侵入を防止することができる。
そのため、従来のように素体2の角部分9における焼付電極16aの厚みを確保する必要がないので、これに伴い増大する素体2の側面2cにおける焼付電極16aの厚み(H寸法)、素体2の端面2a,2bの中央位置付近における焼付電極16aの厚み(T寸法)を小さくすることができる。これにより、外部電極3,4の外形寸法を小さくすることができるので、電子部品1の外形寸法の増大を抑えると共に実装時におけるチップ立ち等といった実装不良の発生を防止することができる。以上のように、メッキ液等の水分が素体2内に侵入することを防止すると共に電子部品1の実装不良及び製品寸法の増大を防止でき、電子部品1の信頼性を向上させることができる
また、図6(a)に示すように、ペースト層16を焼き付けて形成した焼付電極16aは、導電性金属粒子の焼結によって形成されているため、表面に凹凸が発生する。このとき、図6(b)に示すように、焼付電極16a上には凹凸を覆うようにメッキ層17が形成されるため、焼付電極16aの微小な凹凸を埋めて欠陥を補修する効果が得られる。また、メッキ層17を形成する際に、メッキ液及びメッキ層形成工程S6に起因する水分が焼付電極16aの空隙や素体2内、及びメッキ層17自体に残留することがある。この残留成分Sは、電解質であるため、Ni、Snメッキと同様に、素体2及び外部電極3,4内に残留することで電子部品1の信頼性を低下させ、特に耐湿負荷特性を劣化させる。
これに対して、本実施形態の電子部品1の製造方法では、メッキ層形成工程S6の後に酸性雰囲気中において熱処理を行う酸化熱処理工程S7を実施することにより、図7(a)に示すように、水分の揮発だけでなく、電子部品1の信頼性を低下させるメッキ液等の残留物Sが酸化分解及び燃焼分解によって素体2内から離脱されると共に、非昇華性の残留物を安定的な酸化物とすることができる。また、メッキ層17も酸素雰囲気中の熱処理によりCuO層化するが、このとき体積膨張によって層内に形成された空隙やボイド等の消滅効果が得られる。そして、還元熱処理工程S8を実施することにより、図7(b)に示すように、メッキ層17の表面に形成されたCuO層18が連続した構造のCu金属層になり、また、焼付電極16aと酸化処理されたメッキ層17とが金属への還元過程を経ることでより強固に結合される。これにより、外部電極3,4が緻密化されるため、素体2内へのメッキ液等の侵入が確実に防止される。
更に、還元雰囲気中において熱処理をした後に更に高温で焼き付けることにより、外部電極3,4が更に緻密化されると共に、前述の凹凸形状が緩和されて平坦化し、外部電極3において局所的に厚みを有する部分が修正される。これにより、電子部品1の製品寸法を小さくすることができる。なお、第二焼付工程S9における焼付温度は、還元処理工程S8において外部電極3,4の表面に緻密で連続したCu層が形成されているため、焼付電極16a等からのガラス浮きが発生せず、従来よりも高温で熱処理が可能となっている。その結果、外部電極3,4の更なる緻密化を図ることができる。
また、本実施形態の電子部品1の製造方法では、メッキ層17の厚みを3μm〜20μmとしている。メッキ層17は、その厚みが薄すぎると、焼付電極16aの表面の粗さや導電性ペーストに含有しているガラス浮きの影響によって不連続層となるおそれがある。一方、メッキ層17は、その厚みが厚すぎると、外部電極3,4の寸法が大きくなり、メッキ工程に要する時間が長くなるため非効率的であると共に、酸化及び還元熱処理時の応力によって剥離等の不具合が生じるおそれがある。しかし、メッキ層17の厚みを上記の厚みとすることにより、好適な外部電極3,4を形成することができる。
また、本実施形態の電子部品1の製造方法においては、外部電極3,4の表面にメッキの付着性を劣化させるガラスが発生しないので、より薄いメッキ層17でも十分な実装性を得ることができ、低コストで安定した実装性の電子部品1を製造することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
本発明者らは、上述の製造方法により電子部品を作製した。外部電極を形成するため、導電性ペーストとして、電極ペーストA及び電極ペーストBを準備した。電極ペーストAは、Cu平均粒径2μm、固形分70wt%、粘度25Pas、アクリル系バインダペーストである。また、電極ペーストBは、Cu平均粒径2μm、固形分65wt%、粘度10Pas、アクリル系バインダペーストである。
(比較例1)
まず、素体の端面側に電極ペーストAを浸漬工法によって塗布し、焼き付け温度780℃で焼き付けて比較例1を得た。このとき、外部電極のT寸法は、68μmとなるように設定した。
(実施例1,4)
次に、素体の端面側に電極ペーストAを浸漬工法によって塗布し、焼き付け温度780℃で焼き付けて焼付電極を形成して、更にピロリン酸によるメッキ浴を用いてCuメッキ層を形成した。このとき、Cuメッキ膜(層)を狙い値10μmで析出させた。そして、酸素雰囲気中の熱処理炉において500℃にて酸化熱処理を行い、更に水素濃度3%の窒素雰囲気中の熱処理炉において500℃にて還元熱処理を行った。その後、窒素雰囲気中の熱処理炉において焼き付け温度700℃で焼き付けて、実施例1を得た。また、酸素雰囲気中の熱処理炉において500℃にて酸化熱処理を行った後に、水素濃度3%の窒素雰囲気中の熱処理炉において500℃にて還元熱処理を行い、実施例4を得た。
(比較例2,3)
また、実施例1と同様の方法にてCuメッキ層を形成した後、窒素雰囲気中の熱処理炉において焼き付け温度550℃にて焼き付けて、比較例2を得た。また、同様に、焼き付け温度を700℃として、比較例3を得た。
そして、比較例1〜3及び実施例1,4をそれぞれ複数個形成して、そのうち10個を抜き取り、断面を研磨した後に、金属顕微鏡にて外部電極の膜厚と緻密性とを評価した。また、100個を抜き取り、実体顕微鏡及び金属顕微鏡にて外部電極の表面の外観に異常がないかを確認した。
また、比較例1〜3及び実施例1,4に対して、電気メッキ法によってNiが4μm、Snが4μmとなるようにメッキを連続で形成した。このようにして得られた比較例1〜3及び実施例1を、プレッシャークッカー槽に投入し、121℃−湿度95%の雰囲気下で電圧印加を行う加速耐湿負荷試験(PCBT試験)を実施した。これらの試験によって得られた結果を表1に示す。
Figure 2011129568
表1に示すように、比較例1においては、端子外観に異常は見られなかったが、超加速耐湿負荷試験結果の結果、17%が絶縁抵抗不良となっていた。これに対して、本発明の電子部品の製造方法で作製した実施例1,4は、端子外観及び超加速耐湿負荷試験結果のいずれも全て正常な結果を得ることができた。また、還元熱処理後に焼き付け処理を実施した実施例1は、還元処理後に焼き付け処理を実施していない実施例4よりもさらに好ましい結果を得ることができた。なお、表1において、Tmaxは、T寸法の最大値であり、Hmaxは、H寸法の最大値である(以下、表2においても同様)。
また、比較例2,3においては、端子外観を確認したところ、端子の表面に結晶状の析出物が発生していた。また、超加速耐湿負荷試験結果の結果においても多数の絶縁抵抗不良が確認された。端子表面の析出物は、Cuメッキ時の残渣が焼結処理時(焼き付け時)に素体内部から析出され、窒素雰囲気中の熱処理では分解できずに残渣として残留したものであると考えられる。
(比較例4)
続いて、素体の端面側に電極ペーストBを浸漬工法によって塗布し、焼き付け温度780℃で焼き付けて比較例4を得た。このとき、外部電極のT寸法は、23μmとなるように設定した。
(実施例2,3)
また、素体の端面側に電極ペーストBを浸漬工法によって塗布し、焼き付け温度780℃で焼き付けて焼付電極を形成して、更にピロリン酸によるメッキ浴を用いてCuメッキ層を形成した。このとき、Cuメッキ膜(層)を狙い値6μmで析出させた。そして、酸素雰囲気中の熱処理炉において550℃にて酸化熱処理を行い、更に水素濃度3%の窒素雰囲気中の熱処理炉において550℃にて還元熱処理を行った。その後、窒素雰囲気中の熱処理炉において焼き付け温度750℃で焼き付けて、実施例2を得た。また、実施例2と同様の方法により、Cuメッキ膜(層)を狙い値10μmで析出させて、酸素雰囲気中の熱処理炉において550℃にて酸化熱処理を行い、更に水素濃度3%の窒素雰囲気中の熱処理炉において550℃にて還元熱処理を行った。その後、窒素雰囲気中の熱処理炉において焼き付け温度750℃で焼き付けて、実施例3を得た。
そして、比較例4及び実施例2,3をそれぞれ複数個形成して、そのうち10個を抜き取り、断面を研磨した後に、金属顕微鏡にて外部電極の膜厚と緻密性とを評価した。また、100個を抜き取り、実体顕微鏡及び金属顕微鏡にて外部電極の表面の外観に異常がないかを確認した。
また、比較例4及び実施例2,3に対して、電気メッキ法によってNiが4μm、Snが4μmとなるようにメッキを連続で形成した。このようにして得られた比較例4及び実施例2,3を、プレッシャークッカー槽に投入し、121℃−湿度95%の雰囲気下で電圧印加を行う加速耐湿負荷試験(PCBT試験)を実施した。これらの試験によって得られた結果を表2に示す。
Figure 2011129568
表2に示すように、比較例4においては、端子の外観を確認したところ、全てにおいて素体の角部分付近で電極が掠れた様な状態となっていた。これは、外部電極を焼き付けた際に、外部電極のCuと素体の内部電極のNiとが反応した反応層が、外部電極の薄い部分において外観異常として検出されたことが原因であると考えられる。また、比較例4においては、超加速耐湿負荷試験結果の結果においても、全ての電子部品において絶縁抵抗不良が確認された。これに対して、実施例2,3においては、端子外観及び超加速耐湿負荷試験結果のいずれも全て正常な結果を得ることができた。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、素体2において、端面2a,2bと側面2cの間の角部分9が湾曲して所定の曲率半径を有するように面取り加工が施されているが、本発明では、素体2の角部分9が必ずしも所定の曲率半径を有するように面取り加工が実施される必要はない。
また、上記実施形態では、ペースト層形成工程S3の後にブロット工程S4を行ったが、必ずしも必要ではなく、ブロット工程S4を行わずに第一焼付工程S5を行ってもよい。
1…電子部品、2…素体、2a,2b…端面、2c…側面、3,4…外部電極、16…ペースト層、16a…焼付電極、17…メッキ層、41…導電性ペースト、S3…ペースト層形成工程、S5…第一焼付工程、S6…メッキ層形成工程、S7…酸化熱処理工程(第一熱処理工程)、S8…還元熱処理工程(第二熱処理工程)、S9…第二焼付工程。

Claims (4)

  1. 一対の端面と前記端面同士を連結する四つの側面を有する直方体の素体と、前記素体の前記端面側に形成された外部電極とを備える電子部品の製造方法であって、
    前記端面側に導電性ペーストを付与することによって、ペースト層を形成するペースト層形成工程と、
    前記ペースト層を焼き付けて、焼付電極を形成する第一焼付工程と、
    前記焼付電極全体を覆うように金属メッキ層を形成するメッキ層形成工程と、
    前記金属メッキ層を酸素雰囲気中で加熱処理する第一熱処理工程と、
    前記第一熱処理工程の後、前記金属メッキ層を還元雰囲気中で加熱処理する第二熱処理工程と、
    を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
  2. 前記第二熱処理工程の後、前記金属メッキ層を焼き付ける第二焼付工程を更に有することを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
  3. 前記ペースト層及び前記金属メッキ層には、主成分としてCuが含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項記載の電子部品の製造方法によって製造された電子部品。
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