JP2011123477A - 感光性ポリイミド樹脂組成物、フレキシブルプリント配線板及びその製造方法 - Google Patents

感光性ポリイミド樹脂組成物、フレキシブルプリント配線板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリイミドベースとその上に形成された導体パターンからなるフレキシブルプリント配線板に、塗布によりカバーレイ層を形成した場合に、カバーレイ層に対し、ポリイミドベース並びに導体パターンに対し良好な密着性を付与し、しかも、また、導体パターンの端子部に対応するカバーレイ層の領域をフォトリソグラフ技術により開口し、露出した導体パターンに直に電解メッキにより金属を析出させても、開口部内底隅から導体パターンとカバーレイ層との境界にメッキ液の差し込みを防止し、意図しない部分に金属メッキが析出してしまうことを防止する。
【解決手段】シロキサンポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤とを含有する感光性ポリイミド組成物に、ビスムチオールを配合する。
【選択図】図1

Description

本発明は、密着性及びメッキ耐性に優れた、フレキシブルプリント配線板に有用なカバーレイ層を与えることができる感光性ポリイミド樹脂組成物に関する。
フレキシブルプリント配線板を製造する場合、銅パターンが形成されたポリイミドベースの銅パターン側面に、ポリイミド樹脂にナフトキノンジアジド系感光剤とエポキシ系架橋剤とを配合してなる感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、得られた感光性樹脂組成物膜に対し、銅パターンの端子部が開口するように露光・現像処理を施し、更に加熱架橋処理を施すことにより、カバーレイ層を形成している。
ところで、フレキシブルプリント配線板は、有機物や無機物の積層構造をとる。このとき、積層体を構成する材料によっては、基板の反りを生じる懸念がある。従って、これらの配線板の反りを防ぐための重要なアプローチの一つとして、カバーレイ層自体の弾性率を低下させることが考えられる。この観点から、ポリイミド樹脂を構成する複数のジアミン成分の一つとしてシロキサンジアミンを使用することが提案されている(特許文献1〜3)。
特開2003−131371号公報 特開2008−216984号公報 特開2009−68002号公報
しかしながら、シロキサンポリイミド樹脂を使用した従来の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布することにより形成したカバーレイ層の場合、弾性率は低くなるものの、特に銅パターンに対する碁盤目試験などによる密着性評価が十分な場合であっても、銅パターンの端子部に対応するカバーレイ層の領域をフォトリソグラフ技術により開口し、露出した銅パターンに直に電解メッキにより金属を析出させると、開口部内底隅から銅パターンとカバーレイ層との境界にメッキ液が差し込み、意図しない部分に金属メッキが析出してしまうという問題があった。
本発明は、以上の従来の技術の問題を解決しようとするものであり、密着性及び電解直メッキ耐性に優れたカバーレイ層を、シロキサンポリイミド樹脂を使用した感光性ポリイミド樹脂組成物から塗布により形成できるようにすることを目的とする。
本発明者は、シロキサンポリイミド樹脂を含有する感光性ポリイミド組成物に、種々の複素環チオール化合物を配合することにより本願発明の目的を達成できるのではないかという仮定の下、種々の複素環チオール化合物をスクリーニングしたところ、電解直メッキ耐性を改善できないばかりか、メッキ前の密着性すら改善できない複素環チオール化合物がある中で、ビスムチオール(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)が上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、シロキサンポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤とを含有する感光性ポリイミド組成物であって、ビスムチオールを含有することを特徴とする感光性ポリイミド樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、基材上にメッキ被膜で被覆された端子部を有する導体パターンが形成されてなる基板と、該端子部を除く基板上に形成されたカバーレイ層とを有するフレキシブルプリント配線板であって、該カバーレイ層が、前述の本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物の層が架橋されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント配線板を提供する。
更に、本発明は、基材上にメッキ被膜で被覆された端子部を有する導体パターンが形成されてなる基板と、該端子部を除く基板上に形成されたカバーレイ層とを有するフレキシブルプリント配線板の製造方法において、以下の工程(a)〜(e):
(a)基材上に端子部を有する導体パターンを形成して基板を取得する工程;
(b)基板の、導体パターンが形成された側の面上に前述の本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物からなる感光性樹脂層を形成する工程;
(c)感光性樹脂層に対しフォトリソグラフィ処理を施すことにより端子部を露出させる工程;
(d)感光性樹脂層を架橋処理して架橋剤を架橋させ、それにより感光性樹脂層をカバーレイ層とする工程; 及び
(e)露出した端子部をメッキ皮膜で被覆する工程
を有することを特徴とする製造方法を提供する。
本発明の感光性シロキサンポリイミド組成物は、ビスムチオールを含有する。このため、ポリイミドベースとその上に形成された導体パターンからなるフレキシブルプリント配線板に、塗布によりカバーレイ層を形成した場合に、カバーレイ層に対し、ポリイミドベース並びに導体パターンに対し良好な密着性を付与し、しかも、また、導体パターンの端子部に対応するカバーレイ層の領域をフォトリソグラフ技術により開口し、露出した導体パターンに直に電解メッキにより金属を析出させても、開口部内底隅から導体パターンとカバーレイ層との境界にメッキ液の差し込みを防止し、意図しない部分に金属メッキが析出してしまうことを防止することができる。
図1は、本発明のフレキシブルプリント配線板の断面図である。 図2は、本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法の工程説明図である。 図3は、本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法の工程説明図である。 図4は、本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法の工程説明図である。 図5は、本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法の工程説明図である。
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、シロキサンポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤とを含有し、更に、ビスムチオールを含有する。このため、この感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布することにより形成されるカバーレイ層に、良好な密着性と電解直メッキ耐性を付与することができる。
ビスムチオールの感光性ポリイミド樹脂組成物における含有量は、少なすぎると電解直メッキ耐性が不十分となり、多すぎると導体パターンが銅パターンである場合に硫化銅の生成による銅パターンの黒変の発生が懸念されるので、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物を構成するシロキサンポリイミド樹脂は、ポリイミドを構成するジアミン成分として種々のシロキサンジアミンを使用したものであり、例えば、前出の特許文献1〜3に記載のシロキサンポリイミド樹脂を好ましく使用することができる。中でも、以下に説明する、主鎖にアミド結合を有する特許文献3のシロキサンポリイミド樹脂を、銅パターンなどの導体パターンへの密着性を向上させることができる点で好ましく使用することができる。
このようなシロキサンポリイミド樹脂は、以下式(1)で表されるアミド基含有シロキサンジアミン化合物を含むジアミン成分と、ピロメリットテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2´−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、及び1,2,3,4−シクロブタン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種の芳香族酸二無水物を含む酸二無水物成分とを、イミド化してなるものである。
ここで、シロキサンポリイミド樹脂の必須ジアミン成分であるアミド基含有シロキサンジアミン化合物は、式(1)の化学構造を有する。
Figure 2011123477
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立的に置換されてもよいアルキレン基であるが、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基を挙げることができる。置換基としては、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、フェニル基等のアリール基を挙げることができる。中でも、原材料の入手の容易さからトリメチレン基が望ましい。また、R及びRは同一であっても、互いに相違してもよいが、相違すると原材料の入手が困難になるため同一であることが望ましい。
また、mは1〜30の整数であるが、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜20の整数である。これは、mが0であると原材料の入手が困難となり、30を超えると反応溶媒に混ざらず分離するからである。一方、nは0〜20の整数であるが、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10の整数である。これは、nは1以上であると、難燃性に優れたジフェニルシロキサン単位が導入されることになり、導入されていない場合よりも難燃性が向上し、20を超えると低弾性への寄与が小さくなるからである。
式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物の数平均分子量は、m、nの数により変動するが、好ましくは500〜3000、より好ましくは1000〜2000である。
式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物は、分子の両末端部にアミド結合を有することから、それから調製されたシロキサンポリイミド樹脂にもアミド結合が引き継がれることになる。このため配線板の銅など導体部に対する、アミド基含有シロキサンジアミン化合物由来のポリイミド樹脂の接着性が向上する。
式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物は、以下の反応スキームに従って製造することができる。
Figure 2011123477
式(1)〜(4)中、R、R、m及びnは、式(1)において既に説明した通りであり、Xは塩素、臭素などのハロゲン原子である。
式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物の製造方法においては、まず、式(2)のジアミン化合物と、式(3)のニトロベンゾイルハライドを求核置換反応させて式(4)のアミド基含有ジニトロ化合物を形成する。この場合、例えば、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、トルエン等の溶媒中で式(2)の化合物と式(3)の化合物とを加熱混合することにより式(4)のジニトロ化合物を形成することができる(Organic Chemistry,第5版,283頁(Ed.Stanley H. Pine)参照)。
次に、式(4)のジニトロ化合物のニトロ基をアミノ基に還元する。これにより式(1)の新規なアミド基含有シロキサンジアミン化合物が得られる。ニトロ基をアミノ基に変換して式(1)の化合物が得られる限り還元方法に制限はないが、例えば安息香酸エチルとエタノールとの混合溶媒中、パラジウムカーボン触媒の存在下で式(4)の化合物を過剰の水素と接触させる方法が挙げられる(Organic Chemistry,第5版,642頁(Ed.Stanley H. Pine)参照)。
本発明で使用するシロキサンポリイミド樹脂を構成するジアミン成分中の式(1)で表されるアミド基含有シロキサンジアミン化合物の含有量は、少なすぎると無電解メッキ耐性が悪化し、多すぎると反りが大きくなるので、好ましくは0.1〜20モル%、より好ましくは0.1〜15モル%である。
ジアミン成分には、必須成分である式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物に加えて、反りを小さくするために式(2)のシロキサンジアミン化合物を含有させることができる。式(2)のシロキサンジアミン化合物の含有量は、少なすぎると反り防止の効果が十分でなく、多すぎると難燃性が低下するので、好ましくは40〜90モル%、より好ましくは50〜80モル%である。更に、ジアミン成分は、式(1)及び式(2)のジアミン化合物に加えて、ポジ型の感光性付与の基礎となるアルカリ溶解性を達成するために、3,3´−ジアミノ−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホンを含有することができる。3,3´−ジアミノ−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホンのジアミン成分中の含有量は、少なすぎるとアルカリ溶解性が得られず、多すぎるとアルカリ溶解性が高くなりすぎるので、好ましくは20〜50モル%、より好ましくは25〜45モル%である。
Figure 2011123477
式(2)中、R、R、m、nは、式(1)で説明したとおりである。
ジアミン成分として、式(2)及び3,3´−ジアミノ−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホンに加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、一般的なポリイミド樹脂のジアミン成分として使用されているものと同様のジアミン化合物(特許第3363600号明細書段落0008参照)を併用することができる。
シロキサンポリイミド樹脂を構成する酸二無水物成分としては、ピロメリットテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2´−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオエレン酸二無水物、及び1,2,3,4−シクロブタン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種の芳香族酸二無水物を含む酸二無水物成分を挙げることができる。中でも、ポジ型の感光性付与の基礎となるアルカリ溶解性を高める点から3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。
酸二無水物成分として、上述した化合物に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、一般的なポリイミド樹脂の酸二無水物成分として使用されているものと同様の酸二無水物(特許第3363600号明細書段落0009参照)を併用することができる。
本発明で使用するシロキサンポリイミド樹脂は、上述した式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物を含有するジアミン成分と、酸二無水物成分とをイミド化することにより製造することができる。ここで、ジアミン成分1モルに対する酸二無水物成分のモル比は、通常、0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1である。また、ポリイミド樹脂の分子末端を封止するために、必要に応じて、ジカルボン酸無水物やモノアミン化合物をイミド化の際に共存させることができる(特許第3363600号明細書段落0011参照)。
イミド化の条件としては、公知のイミド化条件の中から適宜採用することができる。この場合、ポリアミック酸などの中間体を形成し、続いてイミド化する条件も含まれる。例えば、公知の溶液イミド化条件、加熱イミド化条件、化学イミド化条件により行うことができる(次世代のエレクトロニクス・電子材料に向けた新しいポリイミドの開発と高機能付与技術、技術情報協会、2003、p42)。
以上説明したシロキサンポリイミド樹脂の好ましい態様は、以下の構造式(a)で表されるポリイミド樹脂を必須成分として含有する。また、以下の構造式(b)と構造式(c)のポリイミド樹脂を更に含有することが好ましい。
Figure 2011123477
本発明で使用する感光剤としては、従来よりポジ型レジスト組成物の感光剤として使用されているキノンジアジド系感光剤を好ましく使用することができ、例えば、ジアゾナフトキノン(DNQ)、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸と、低分子芳香族ヒドロキシ化合物とのエステル化合物、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2,3,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−及び4−メチルフェノール、4,4´−ヒドロキシプロパンとのエステル化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいキノンジアジド系感光剤としてはナフトキノンジアジド誘導体を好ましく挙げることができる。ここで、ナフトキノンジアジド誘導体の具体例としては、以下の化学構造式(F)、(G)、(H)で表されるナフトキノンジアジド誘導体等を挙げることができる。これらは二種以上を併用することができる。これらの中でも、高感度であるという点から化学構造式(G)のナフトキノンジアジド誘導体を好ましく使用することができる。
Figure 2011123477
なお、これらの化学構造式(F)、(G)及び(H)のそれぞれにおいて、複数存在する置換基Rの全てがナフトキノンジアジドスルホニル基であることが好ましい。他方、すべてのRがHであることはない。
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物における感光剤の含有量は、少なすぎるとパターン形成が困難となるおそれがあり、多すぎると膜物性が低下するおそれがあるので、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜30質量部である。
架橋剤としては、基本的にポリイミド樹脂の架橋剤として使用されているものを使用することができる。例えば、エポキシ樹脂類、ポリイソシアネート類、ベンゾオキサジン類、レゾール樹脂類などを挙げることができる。また、架橋剤の配合量は、少なすぎると膜物性が低下するおそれがあり、多すぎると感光性が低下するおそれがあるので、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
なお、架橋剤として広く使用されているエポキシ樹脂類やポリイソシアネート類の場合、ビスムチオールと反応し、樹脂組成物をゲル化させることが懸念されるので、主体的に用いることは避けることが好ましい。
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、必要に応じて、トルエン、γ−ブチロラクトン、トリグライム、ジグライム、安息香酸メチル、安息香酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶剤を含有することができる。中でも、印刷性が良好なγ−ブチロラクトン、トリグライムを好ましく使用することができる。なお、有機溶媒の使用量は、通常、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部である。
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、シロキサンポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤と、ビスムチオールと、必要に応じて有機溶剤、その他の添加剤、例えば、防錆剤等とを、常法により均一に混合することにより調製することができる。
以上説明した本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、以下に説明するフレキシブルプリント配線板のカバーレイ層に好ましく適用することができる(図1参照)。
このフレキシブルプリント配線板10は、基材1上にメッキ被膜2で被覆された端子部3を有する導体パターン4が形成されてなる基板5と、該端子部3を除く基板5上に形成されたカバーレイ層6とを有する。このカバーレイ層6は、本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物の塗布層を架橋されたものである。
基板5を構成する基材1としては、従来よりフレキシブルプリント配線板の基材として使用されている樹脂フィルムを使用することができ、例えば銅箔との線熱膨張係数が近似するポリイミドフィルムを好ましく使用することできる。このような樹脂フィルムの厚みは通常12.5〜25μmである。
基板5を構成する導体パターン4は、基材1上に積層された9〜35μm厚の銅箔等をフォトリソグラフ技術等の公知のパターニング技術で形成されたものである。
メッキ被膜2として、導体パターン4の端子部3に無電解メッキを施すことにより形成された無電解メッキ被膜(例えば、無電解ニッケルメッキ被膜、無電解金メッキ被膜)、そのような無電解メッキ被膜に更に電解メッキ被膜を積層した積層メッキ被膜(例えば、無電解メッキ被膜に電解金メッキ被膜を積層したもの)、導体パターン4の端子部3に直に電解メッキを施すことにより形成された電解直メッキ被膜(例えば、電解直金メッキ被膜)を挙げることができる。中でも、電解直メッキ耐性という本発明の効果の点から、電解直メッキ被膜を好ましく適用することができる。なお、端子部3は、フレキシブルプリント配線板10の使用目的等に応じ、導体パターン4において端子として指定された領域を意味する。
カバーレイ層6は、既に説明した本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物の塗布層を、樹脂組成物に含有されている架橋剤の作用により架橋したものである。塗布層の形成は、公知の塗布技術を使用して行うことができる。また、架橋は、架橋剤の種類等に応じ、加熱処理、光照射などにより行うことができる。
このようなフレキシブルプリント配線板は、以下の工程(a)〜(e)を実施することにより製造することができる。工程毎に説明する。
工程(a)
基材1上に、端子部3を有する導体パターン4を常法に従って形成して基板5を取得する(図2)。この場合、ポリイミドフィルム基材に銅箔が積層された銅張積層板を原反として使用することが好ましい。
工程(b)
基板5の、導体パターン4が形成された側の面上に本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物を、公知の塗布法により塗布して感光性樹脂層6´を形成する(図3)。
工程(c)
得られた感光性樹脂層6´に対しフォトリソグラフィ処理を施すことにより端子部3を露出させる(図4)。具体的には、感光性樹脂層6´上に、端子部3に相当する部分が開口したレジストマスクを形成し、露光し、アルカリ液で現像することにより、導体パターン4の端子部3を露出させる。
工程(d)
次に、感光性樹脂層6´を架橋処理して架橋剤を架橋させ、それにより感光性樹脂層をカバーレイ層6とする(図5)。架橋処理としては、架橋剤の種類等に応じて加熱処理や光照射処理が挙げられるが、好ましくはビスムチオールの分解点(156℃)を超えない温度で加熱処理することが好ましい。
工程(e)
次に、露出した端子部を、無電解メッキ及び/又は電解メッキ処理によりメッキ被膜2で被覆する。好ましくは電解直メッキ処理によりメッキ被膜2で被覆する。これにより、図1に記載のフレキシブルプリント配線板が得られる。
以下、発明を実施例により具体的に説明する。
参考例1(シロキサンポリイミド樹脂の調製)
(1)シロキサンジアミンの調整
冷却機、温度計、滴下ロート及び撹拌機を備えた2リットルの反応器に、トルエン500g、式(2)のシロキサンジアミン(R、R=トリメチレン; 商品名 X−22−9409、信越化学工業)200g(0.148mmol)、及びトリエチルアミン30g(0.297mol)を投入した。次いで、p−ニトロベンゾイルクロライド54.7g(0.295mol)をトルエン300gに溶解させた溶液を滴下ロートに投入した。反応器内を撹拌しながら50℃まで昇温した後、滴下ロート内の溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、昇温させ撹拌を6時間行い、還流下で反応させた。反応終了後、30℃に冷却し、800gの水を加えて強撹拌した後、分液ロートに移液し、静置分液した。5%水酸化ナトリウム水溶液300gでの洗浄を3回行い、飽和塩化ナトリウム水溶液300gでの洗浄を2回行った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、トルエン溶媒を加熱減圧溜去し、濃縮後、60℃で1日減圧乾燥した。得られたα−(p−ニトロベンゾイルイミノプロピルジメチルシロキシ)−ω(p−ニトロベンゾイルイミノプロピルジメチルシリル)オリゴ(ジメチルシロキサン−co−ジフェニルシロキサン)(以下、ジニトロ体)を、収量235g(収率96%)で得た。ジニトロ体は淡黄色のオイル状であった。
得られたジニトロ体112g(0.068mol)を、撹拌子、水素導入管及び水素球を備えた1リットルの反応器に、酢酸エチル180g、エタノール320g、及び2%パラジウム−炭素20g(含水率50%)を共に投入した。反応器内を水素ガス雰囲気下に置換した後、水素球圧力下に室温で撹拌を2日続けた。反応混合液から触媒をろ過除去し、反応液を減圧加熱下に濃縮した後、減圧下で60℃で乾燥を2日行い、淡黄色のオイルとしてα−(p−アミノベンゾイルイミノプロピルジメチルシロキシ)−ω−(アミノベンゾイルイミノプロピルジメチルシリル)オリゴ(ジメチルシロキサン−co−ジフェニルシロキサン)(本発明で使用するアミド基含有シロキサンジアミン化合物)を、収量102g(収率95%)得た。得られたアミド基含有シロキサンジアミン化合物のアミン価は69.96KOHmg/gであり、アミノ基当量は802g/molであった。なお、アミン価は、電位差自動滴定装置(AT−500、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。アミノ基当量は56.106/(アミン価)×1000により算出した。
また、得られたアミド基含有シロキサンジアミン化合物について赤外吸収スペクトルと1H−NMRスペクトルを測定した結果、目的物を得たことを確認できた。なお、赤外吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR420、日本分光株式会社製)を用いて、透過法にて測定した。また、1H−NMRスペクトルは、NMR分光光度計(MERCURY VX−300、バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド)を用いて、重クロロホルム中で測定した。これらの結果を以下に示す。
IRスペクトル:
3450cm−1(νN−H)、3370cm−1(νN−H)、3340cm−1(νN−H)、3222cm−1(νN−H)、1623cm−1(νC=O)、1260cm−1(νCH)、1000〜1100cm−1(νsi−o
1H−NMR(CDCl,δ):
−0.2〜0.2(m、メチル)、0.4〜0.6(m、4H、メチレン)、1.4〜1.8(m、4H、メチレン)、3.2〜3.5(m、4H、メチレン)、3.9(bs、4H、アミノ基水素)、5.8〜6.3(m、2H、アミド基水素)、6.4(m、4H、アミノ基隣接芳香環水素)、7.1〜7.7(m、芳香環水素)
(2)シロキサンポリイミド樹脂の調製(式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物を全ジアミン成分中に1mol%含有する例)
窒素導入管、撹拌機、及びディーン・スターク・トラップを備えた20リットル反応容器に、シロキサンジアミン化合物(X−22−9409、信越化学工業株式会社)4460.6g(3.30mol)と、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA、新日本理化株式会社、純度99.70%)1912.7g(5.34mol)と、γ−ブチロラクトン287gと、参考例1で得たアミド基含有シロキサンジアミン化合物89.0g(54.3mmol、純度97.10%)との混合液、及びトリグライム2870gを投入し、その混合液を撹拌した。更に、トルエン1100gを投入した後、混合液を185℃で2時間加熱還流させ、続いて減圧脱水およびトルエン除去を行い、酸無水物末端オリゴイミドの溶液を得た。
得られた酸無水物末端オリゴイミド溶液を80℃に冷却し、それにトリグライム3431gとγ−ブチロラクトン413gと3,3´−ジアミノ−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン(BSDA、小西化学工業株式会社、純度99.70%)537.80g(1.92mol)とからなる分散液を加え、80℃で2時間撹拌した。そこへ溶剤量の調整のため524gのトリグライムを加え、185℃で2時間加熱還流させた。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、トラップに溜まったトルエン及び水を除去した。以上の操作により、アミド基を有するシロキサンポリイミド樹脂を合成した。得られたシロキサンポリイミド樹脂の実測固形分は47.5%であった。また、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量として63000であった。
得られたシロキサンポリイミド樹脂を、トリグライムとγ−ブチロラクトンとの混合溶媒(質量比9:1)で、樹脂固形分が50質量%となるように希釈し、シロキサンポリイミドワニスとした。
実施例1〜3、比較例1〜5
参考例1のシロキサンポリイミドワニスに、表1の配合表に従って、芳香族チオール化合物、ナフトキノンジアジド(4−NT−300、東洋合成工業(株))、防錆剤(CDA−10、(株)ADEKA)、ベンゾオキサジン架橋剤(BF−BXZ、小西化学(株))、レゾール樹脂架橋剤(BRL274、昭和高分子(株))を混合し、感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を調製した。
得られた感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を、ポリイミドフィルムベースの銅張積層板(エスパネックス、新日鉄化学(株))の銅箔面に、乾燥厚で10μmとなるように塗布して感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層に対し、フォトリソグラフ技術により、銅箔に達する開口部(0.3mm角)が形成されるように、高圧水銀灯から100mW/cmの光量で、積算光量1500mJ/cmで露光し、40℃の水酸化ナトリウム水溶液を用いてディッピング法で現像を行い、更に、200℃で60分のポストベークを行うことにより感光性樹脂組成物層を架橋処理してカバーレイ層とし、図5の構造の電解メッキ前サンプルを得た。
<密着性評価>
電解メッキ前サンプルのカバーレイ層に対し、1mm間隔で縦10マス×横10マスの碁盤目上にカットする。この碁盤目を覆うように18mm巾の粘着テープ(ニチバン(株))を貼り、引き剥がした場合に、碁盤目の全100マスのうち、残存するマスの数が80以上である場合を「G」、80未満である場合を「NG」と判定した。得られた結果を表1に示す。
<電解直メッキ耐性>
(イ)電解メッキ前サンプルの露出した銅箔に対し、シアン化金メッキ液(テンペレジストFX、日本高純度化学(株))を使用し、電流密度0.2〜0.4A/dmで0.3μm厚の電解直金メッキ被膜を形成した。銅箔とカバーレイ層との境界にメッキの差し込みが発生したか否か、目視にて観察した。発生しなかった場合を「G」、発生した場合を「NG」と評価した。得られた結果を表1に示す。
(ロ)開口部周縁のカバーレイ層に18mm巾の粘着テープ(ニチバン(株))を貼り、引き剥がした場合に、カバーレイ層の剥がれが発生したか否かを目視にて観察した。発生しなかった場合を「G」、発生した場合を「NG」と評価した。得られた結果を表1に示す。
Figure 2011123477
表1から分かるように、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し、ビスムチオールを0.25〜1.0質量部の割合で含有させた実施例1〜3の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物の場合、電解直メッキの前における密着性に優れており、電解直メッキ耐性にも優れていた。
それに対し、ビスムチオールを始めとする芳香族チオール化合物を配合していない比較例1の場合、電解直メッキ前の密着性は良好なものの、電解直メッキ耐性に問題があった。ビスムチオールに類似するモノメチルビスムチオールを配合した比較例2の場合も、電解直メッキ前の密着性は良好なものの、電解直メッキ耐性に問題があった。
また、ビスムチオールと異なる他の芳香族チオール化合物を配合した比較例3〜5の場合、電解直メッキ耐性のみならず、電解直メッキ前の密着性にも問題があった。
本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物は、ビスムチオールを含有する。このため、カバーレイ層に対し、ポリイミドベース並びに導体パターンに対し良好な密着性を付与し、しかも、また、導体パターンの端子部に対応するカバーレイ層の領域をフォトリソグラフ技術により開口し、露出した導体パターンに直に電解メッキにより金属を析出させても、開口部内底隅から導体パターンとカバーレイ層との境界にメッキ液の差し込みを防止し、意図しない部分に金属メッキが析出してしまうことを防止することができる。よって、本発明の感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物は、フレキシブルプリント配線板に有用である。
1 基材
2 メッキ被膜
3 端子部
4 導体パターン
5 基板
6 カバーレイ層
6´ 感光性樹脂層
10 フレキシブルプリント配線板

Claims (7)

  1. シロキサンポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤とを含有する感光性ポリイミド組成物であって、ビスムチオールを含有することを特徴とする感光性ポリイミド樹脂組成物。
  2. ビスムチオールを、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部含有する請求項1記載の感光性ポリイミド樹脂組成物。
  3. シロキサンポリイミド樹脂が、式(1)で表されるアミド基含有シロキサンジアミン化合物を含むジアミン成分と、ピロメリットテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2´−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、及び1,2,3,4−シクロブタン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種の芳香族酸二無水物を含む酸二無水物成分とを、イミド化してなるものである請求項1又は2記載の感光性ポリイミド樹脂組成物。
    Figure 2011123477
    (式(1)中、R及びRは、それぞれ独立的に置換されてもよいアルキレン基であり、mは1〜30の整数であり、nは0〜20の整数である。)
  4. 感光剤が、以下の化学構造式で表されるナフトキノンジアジド誘導体の少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の感光性ポリイミド樹脂組成物。
    Figure 2011123477
  5. 架橋剤が、ベンゾオキサジン類又はレゾール類である請求項1〜4のいずれかに記載の感光性ポリイミド樹脂組成物。
  6. 基材上にメッキ被膜で被覆された端子部を有する導体パターンが形成されてなる基板と、該端子部を除く基板上に形成されたカバーレイ層とを有するフレキシブルプリント配線板であって、該カバーレイ層が、請求項1〜5のいずれかに記載の感光性ポリイミド樹脂組成物の層が架橋されたものであることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
  7. 基材上にメッキ被膜で被覆された端子部を有する導体パターンが形成されてなる基板と、該端子部を除く基板上に形成されたカバーレイ層とを有するフレキシブルプリント配線板の製造方法において、以下の工程(a)〜(e):
    (a)基材上に端子部を有する導体パターンを形成して基板を取得する工程;
    (b)基板の、導体パターンが形成された側の面上に請求項1〜5のいずれかに記載の感光性ポリイミド樹脂組成物からなる感光性樹脂層を形成する工程;
    (c)感光性樹脂層に対しフォトリソグラフィ処理を施すことにより端子部を露出させる工程;
    (d)感光性樹脂層を架橋処理して架橋剤を架橋させ、それにより感光性樹脂層をカバーレイ層とする工程; 及び
    (e)露出した端子部をメッキ皮膜で被覆する工程
    を有することを特徴とする製造方法。
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